「UR」と一致するもの

interview with Lapalux - ele-king


Lapalux
Lustmore

Brainfeeder / ビート

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 今作制作中、ラパラックスはスタンリー・キューブリックの『シャイニング』に登場するバーのイメージが頭を離れなかったという。「昔のバーとか、ちょっと変わった仲間が集まって遊ぶような場所。あと、意識の中の煉獄というか、地獄の辺土というか……」。バーと煉獄は順接しないけれども、言わんとすることはなんとなく伝わるのではないだろうか。彼の音楽はいつもそうした「意識の煉獄」へと──切り離されずにわだかまる、精神や衝動や欲求のほうを向き、混沌と渦を巻くその中へと浸透していこうとする。けっして感情などを表現しすくいとるものではなく、その下にあるもの、それになる前の肉や生理と、それを統べようとする精神のかたまりへ向かって、しかし感情的にせまっていく。彼の音がただスムースでないのはそういうことだろう。それは、それがしばしば艶めかしいと評されながらもただセクシーでないのと同様である。

 デモ音源がフライング・ロータスの目に留まり、〈ブレインフィーダー〉との契約にいたったというラパラックスことスチュワート・ハワード。同レーベルからのデビュー・アルバムとなった『ノスタルシック』(2013年)には、たとえばジェイムス・ブレイクのように抽象化されたR&Bが、たとえばパテンのようにとらえどころのないビーメイクが、マシューデイヴィッドに通じるアンビエント・マナーが、あるいはテープ録音へのこだわりが、そして前後数年のあらゆるシーンに散見されたベッドルーム・プロデューサーたちのドリーミーで内向的なエクスペリメンタリズムが溶け込み、しかしそれらの一部としてシーンに回収されるには異質な個性として、このレーベルの独特なキャラクターとも相似した評価と称賛をえた。さて今作はというと、以下の回答を読みながらぜひ聴いてみていただきたい。ファースト・アルバム──名刺としての鮮やかさよりも、もっとぐっと踏み込んだラパラックス(lap of luxury=富と快適さの状態)らしさが取りだされている作品ではないかと思う。

 さて、ある意味では問答によって迫った以上の答えを導いているともいえる章末の余興にもご注目いただきたい。急なフリに応じてくれたラパラックス氏、ヴィーナス木津氏に感謝です。

■Lapalux / ラパラックス
UKを拠点に活動するプロデューサー、ラパラックスことスチュワート・ハワード。フライング・ロータスから称賛され、2010年に〈ブレインフィーダー〉とサイン、2013年にデビュー・フル・アルバム『ノスタルシック(Nostalchic)』をリリース。ボノボやアンドレア・トリアーナなど数々のリミックスでも注目を集め、時のプロデューサーとして活躍をつづける。

個人的にはソウルフルで心のこもった音楽を意図していて、それは過剰なセックス・アピールとはまったく別なものだ。

直接的に性愛が表現されているわけではないですが、あなたの音楽には奥深い官能性を感じます。これは意識して出てきているものでしょうか? また官能はあなたの音楽にとって重要なものですか?

Lapalux:もちろん重要だね。僕のサウンドは、“艶かしい”、“性愛”といった言葉といっしょに表現されることが多い。だけど、間違った文脈でとらえられてほしくはないな。べつにセクシーをアピールしてるわけじゃないんだ(笑)。自分が作る音楽がそういう響きを持っているだけだ。個人的にはソウルフルで心のこもった音楽を意図していて、それは過剰なセックス・アピールとはまったく別なものだ。官能的で艶かしいヴァイブズという表現がうまくまとまっていると思う。スムース・ジャズみたいな感じだけどジャズじゃない、変わったサウンド。そのサウンドには、僕が使っているさまざまな手法も貢献している。荒々しさが緩和され、デジタルっぽさもあまりなく、ガリガリしていない音。僕が音楽を作るときは、ソフトな面を表現するし、今回のアルバムでも、たとえば“パズル(Puzzle)”では、艶かしい感覚が表現されている。ずっとそれが自分らしい音楽だと思ってきた。僕はデリケートな人間だし、官能的だと思う。そういった雰囲気をアルバムやすべての作品に込めるようにしているよ。

テープ録音によるプロダクションにこだわってこられましたが、新作ではそれが可能なかぎりクリアになるよう工夫されているように感じました。あなたの理想の音像はどのようなものなのでしょう。何を基準にして音作りを行っているのでしょうか?

Lapalux:僕が音楽をつくるとき、つまり作曲して、パソコンに取り込んで、ミックスダウンするとき、すべてをその場の判断でやる。プロダクション、インストゥルメンテーション、ミキシングなどすべて自分でやる。大事なのは、音楽をパレットに見立てて作業するということ。さまざまなサウンドが載ったパレット。すべての要素がどのように交わってブレンドするか──そこを非常に真剣に考える。サウンドプロダクションの際に重点を置くのはその部分だ。それから、音がどのように作用しあうかということも大切だね。
そういうことを若い頃から長年やってきたおかげで、いまではどんなサウンドが、どんなサウンドに合うのかという理解が深まってきたと思う。反響してしまうような、まったくちがったサウンド同士でも、対比させるために並列させたりするかもしれない。理想の音像として答えらるのはそんなところかな。絵描きがたくさんある色を見て、どの色がどの色と合うかって、やっているようなものだよ。オーディオ的な体験であると同時に、ヴィジュアル的な体験でもあるんだ。

アナログ的な音へのこだわりという点ではどうでしょう?

Lapalux:いまでもオープンリールの機材や、不安定なテープデッキなんかを使っているよ。サンプルやサウンドバイトなどはいろいろな元から採っているけど。僕は音楽制作の方法をつねに変えながら音楽を作っていきたいと思っているから、楽器を買って使っては、また売ったりして、そのサウンドは二度と使えないようにする。ちょっと変わったプロセスだけど、個人的にはうまくいっている。当然のことながら、アナログとデジタル両方のサウンドを組み合わせている。僕は、機材をたくさん買い込んで、すべてがアナログであるべきと決めつけるタイプの人間じゃない。すべてアナログでなければ本物じゃない、なんて思っていないし。そうなると、ただの機材中毒だものね。たくさん機材を買っても、それを正しく使っていないかったり、正しく使っていてもあんまりサウンドが良くなかったりする。機材を買い込むのに夢中になる人はたくさんいる。僕はそうじゃない。僕は、機材をたくさん買えば買うほど、機材の技術的なことに気がまぎれてしまって、創造性が低下する方だ。それよりは、最小限のセットアップで自分らしい音楽を作りたい。僕は、エディティングにより重点を置く方だと思う。アナログの音をソースとして使って、パソコンに取り込み、加工して音を変える。音を曲げたり、音にフィルターをかけたり、デジタル化させる。僕は、初めから素晴らしいものを録音してエディットをしないタイプというよりも、悪い音に磨きをかけていくタイプなんだ。ローファイで劣化した音を磨いて良く聴こえるものにしていくのが好きなんだ。その過程に楽しみを感じるね。


ローファイで劣化した音を磨いて良く聴こえるものにしていくのが好きなんだ。その過程に楽しみを感じるね。

ヴォーカル入りの曲も、今作ではよりリッチで艶やかな質感になっていて、とても丁寧にヴォーカルそのものが生かされていますが、一方で“ミッドナイト・ピーラーズ(Midnight Peelers)”のヴォーカル・サンプルなどには著しく変調を加えていますね。声や歌というものに対してとくに神秘的な思いを抱かれているわけではないのですか?

Lapalux:(笑)神秘的な思い! もしも、ポップ・ミュージックで求められるようなクリーンでクリアなヴォーカルを録音しようと思ったら、もちろん可能なことだ。これは以前もインタヴューで話したことがあるけど、僕はヴォーカルもひとつの楽器として扱うようにしている。だから、その音を曲げたり、部分的に変えたりする。曲の中で、ヴォーカルのメッセージがどのように響くかということのほうが、ヴォーカルの音質の明確さや、ラジオでどう映えていっしょに歌えるかということよりも、はるかに大切だと思っている。だからヴォーカルの音も加工するし、さまざまなエフェクトをかけてみて実験する。とにかく新鮮なサウンドを生み出すことが大事なんだ。これはすべて僕の実験だ。でなければ、僕は同じようなサウンドを繰り返し作っているということになってしまう。それは僕をアーティストとして駆り立てない。だが、自分のトラックで、ヴォーカルはとても大切に取り扱っているつもりだ。僕の音楽の中で、ヴォーカルは音楽を引き立て、音楽はヴォーカルを引き立てる。このふたつを僕は平等に扱っている。


もっともラグジュアリーじゃないものか……。絶望、空腹かな(笑)。僕はその経験がある。ラグジュアリーからかけ離れた生活をして育った。

『ラストモア(Lustmore)』とはあなたの音楽についてとてもしっくりくる表現です。求めても求めてもどこか空腹感が残って、さらに欲しくなるような中毒性があると思います。これは、あなたご自身の性質にも当てはまることですか?

Lapalux:たしかにそうだね。プライヴェートでも、つねに変化を望んでいるし、居場所も変えたいと思っている。完璧を求めているという面も大きい。いつも、過去の自分を越えようとしている。そういった意味では競争心が強い。今回のアルバムの多くの曲は、過去の自分よりも上を行こうとして、つねに上を目指していたから、すごく辛かったし、思っていたよりも時間がかかってしまった。結果としてできたアルバムには、音楽を作るたびに上達しなければいけないと思う性格や、プライヴェートでも前進しなければいけないという思いが詰まっている。

音やジャケットのアートワークを通して、あなたの目指す「ラグジュアリー」の観念がだいぶわかってきたように思うのですが、さらに理解を深めるために、あなたが考えるもっともラグジュアリーじゃないものを挙げてみていただけませんか?

Lapalux:もっともラグジュアリーじゃないものか……。絶望、空腹かな(笑)。変な質問だな。完全に切羽詰まった感じや失敗。よくわからないよ。裕福な人生は、誰もが目指すところだと思う。みんな快適な生活を求めている。その逆といえば、不快な状況。選択肢がまったくない、金もない、家もない、何もない状況。そんな状況に陥ったことがある人はあまりいないかもしれないが、僕はその経験がある。ラグジュアリーからかけ離れた生活をして育った。僕たちの背景はさまざまだが、みんな成功しようと頑張っている。自分の人生を有意義なものにしようとしている。僕もそうしているし、昔、自分がいた状況からなるべく遠いところに行こうとしている。

なるほど、ところで前作から約2年の間、制作環境に大きな変化はありましたか?

Lapalux:かなりね。ファースト・アルバムのときはもうすでに何曲か曲ができていたし、あと数曲作ればよかった。EPとしてリリースすることもできたんだけど、デビュー・アルバムとしてリリースしたかったから曲を足したんだ。あれはあれでいいアルバムだったし、いまでも満足はしてる。でも変わったのは、このアルバムはより完璧さが増していること。ファースト・アルバムには、「あ、ここもう少し時間をかけてやればよかった」と思うところが数カ所あるんだ。でも、新作ではそういう部分がないし、やれるだけのことはやったと思う。だから2年もかかったんだよ。1曲に何度も何度も取り組んで、完璧にしようとしたから。自分が心から納得がいくまで作業したくてね。

なるほど。セカンド・アルバムは、やはり作るのが難しかった?

Lapalux:本当に大変だったよ。セカンド・アルバムがいちばん手こずるっていうのは事実。ずーっと集中しないといけなかった。ファーストよりもベターにもしたいし、でも同時に違うものも作りたいし……、新しいやり方も試したいし、でも自分らしさも残したいし……、そんな中でツアーにも出ないといけないから時間はないし。本当にてんてこ舞いだったんだ。とくにツアーはノンストップだったから、スタジオで過ごす時間がまったく取れなかった。ちょっとパニックになって、どうやって音楽を作ったらいいのか血迷ってしまったこともあったし。でも結果的にはその感覚は戻ってくる。だんだんコツをつかんで、作れるようになっていったんだ。


セカンド・アルバムがいちばん手こずるっていうのは事実。

ヴォーカルで参加したアンドレア・トリアーナ(Andreya Triana)とジャーディーン(Szjerdene)についてはどう思いますか?

Lapalux:ふたりとも素晴らしいと思う。個性的でユニークな声を持っていると思うし、そういうヴォーカルって見つけるのがすごく大変だと思うんだ。アンドレアの声はハスキーでトーンが崩れた感じがいいし、ジャーディーンは音と音の間にクレイジーなイントネーションがある。それが曲におもしろい流れを作るんだ。二人とも、すごくいい声をしていると思うよ。

作業はどんな感じでした?

Lapalux:ふたりとも、同じ空間て作業できたからよかった。メールを何度も送り合わなくてよかったし、いいものが生まれれば、それをそのまま捉えてつづけることができたからね。

ところで、音楽をはじめた当初はラップもやったりアコギの多重録音にも凝ったりしたそうですが、ラパラックス名義で活動をはじめたのは何年で、どのようなきっかけだったのでしょう?

Lapalux:自分でもハッキリとはわからなくて。自然な流れだったんだ。ギターを弾いたりいろいろやってて、たぶん18歳とか19歳くらいのときにコンピューターで音を作りはじめた。あ、もしかしたらそれよりもう少し若かったかもな。音を作ったり、レコーディングしたサウンドを編集したり……それと同時期にプログラムとかも勉強するようになったんだ。とにかく、何かをリリースするためとかじゃなくて、ただ好きで音を作ってた。で、大学になるともっとテープとかビート・ミュージックにフォーカスするようになって、その一年後に「フォレスト(Forest)」のEPを出したんだ。それが自分が初めてリリースした作品だね。そういう流れで進んでいって〈ブレインフィーダー〉と契約して……そんな感じだよ。

〈ブレインフィーダー〉には直接デモを送ったということですが、どんな音源だったのでしょう?

Lapalux:「Many Faces Out Of Focus」をプロデュースしている頃に同時に作っていた作品で、〈ブレインフィーダー〉から最初に出したEP「When You're Gone」の下書きみたいなものを作ってたんだ。あのEPにはすでに取り掛かっていたから、その中からのデモを彼らに送った。あとは、自分がどんなアーティストで、いままで何をやってきたかを軽く説明したんだ。そしたらすぐに返事が来たんだよ。

なるほど、音楽以外の道を考えたこともありますか?

Lapalux:スタジオ・エンジニアとかコンピュータ関係の仕事かな。というのも、小さいころから、たとえばラジカセを直すとか、家のオーディオ関係の配線とかそういうものに興味を持ってて、けっこういじったりしてたんだよね。きっとこの仕事してなかったら一日中電気工事とかしてるかもね(笑)。

ははは。映画のスコアを書いてみたいということでしたが、最近ご覧になった作品で心に残ったものや、音をつけてみたいと思った作品を教えていただけませんか?

Lapalux:最近は『バードマン』を観た。すごく格好よかった。映画のスコアもすごくいいと思った。映画全体に響いていた、ドラムやパーカッションの音がよかった。あるシーンでは、インストゥルメンテーションが素晴らしい部分があって、非常にパワフルだった。あと、けっこう前の映画だけど、ジェニファー・ロペス主演の『ザ・セル』を最近観た。ヴィジュアルがいい映画だったよ。彼女が特殊な能力を持っていて、他人の精神状態に入り込めるんだ。あの映画のスコアはぜひ書いてみたいと思った。


僕はいまでもギターを弾いているし、アコースティック音楽にも興味があるから、その可能性もなきにしもあらずということだ。

ギター・バンドのご経験もあるということでしたが、アコースティックな表現や生音のセッションでラパラックスの音楽をつくりたいと思うことはありますか?

Lapalux:まあね。僕はアルバムを作るとき、いままでとはちがったことをやりたいと毎回思っているし、友人にも今後、アコースティック寄りなものを作るという話はしているから、奇妙でくだらない(=trashy)フォーク音楽みたいのをやるかもしれない。未来はどうなるかわからないもんだ。僕はいまでもギターを弾いているし、アコースティック音楽にも興味があるから、その可能性もなきにしもあらずということだ。

知り合いの音楽ライターに占星術に詳しい人間がいるのですが、あなたの星座(と可能なら血液型)を教えていただけませんか? 今年の運勢や相性のよい星座をたずねてみたいと思います。

Lapalux:(爆笑)オーマイゴッド! まず、僕は自分の血液型を知らない。あと、自分の星座も定かではない。牡羊座だったかな。

誕生日はいつですか?

Lapalux:3月21日。

では魚座か牡羊座ですね。詳しくは調べてもらいましょう。

Lapalux:いや、牡羊座だと思う。血液型はまったくわからない。それって変かな?

日本で血液型占いは人気ですが、べつに知らなくても変じゃないですよ。血液型も4タイプしかないから一般論だと思います。あなたの運勢と相性の良い星座をお伝えしますね。

Lapalux:ドープだ! 待ちきれないよ(笑)。絶対教えてね!


ヴィーナス木津の星にきいて

ご依頼ありがとうございます。
3月21日でございますね。その日はちょうど魚座と牡羊座の境目にあたります(春分の日から牡羊座となります)。
星占いは太陽がその星座の領域に移動したタイミングで決まるのですが、年によって、あるいは生まれた場所によって、わずかに異なってまいります。
生年とその時間までわかると確実でございますが、イギリスでお生まれだということを考慮いたしますと、おそらく牡羊座かと思われます。
ということで、火の星座、牡羊座の占いで進めさせていただきますね。


☆牡羊座のあなた☆

生まれついて正義感が強く、闘いの星・火星の下に生まれた情熱の人です。
やや突っ走ってしまうこともありますが、その勢いでは人に負けることはありません。
開拓精神が旺盛ですので、誰もやったことのないことに果敢に挑むことができるでしょう。

さて、昨年の夏ごろから牡羊座は恋愛運が急上昇しています。
恋愛運と同時に、創作活動にも最高のときです。(星占いでは恋愛と創作を近いものだと考えるのです。)
まず自分が心からエンジョイできること、そんな自己表現に力を注ぐといいでしょう。
この運気は今年の夏まで続きますので、自分のなかで湧き出る創作への情熱を絶やさないことをおすすめします。
アルバムのタイミング、バッチリだったのではないでしょうか。
もちろん、意中の人へのアプローチにもいい時期です!
今年後半は、健康やルーティンワークの改善に適した時期ですので、何か日常的な運動を始めるといいかもしれません。

相性占いなんですが、
わたしとしましては、星が相性の「良い・悪い」を決めるのではなく、
星が生み出すマジックを個人がどのように受け止めるかが大切だと考えています。
そのことを踏まえた上で、
牡羊座と気が合う、感性が近いなと感じられるのは同じ火の星座に属する獅子座と射手座です。「熱い仲間」が結成できるでしょう。
また、機知に富む双子座も、あなたには魅力的に映ることでしょう。

(ヴィーナス木津)

DJ Soybeans - ele-king

最近購入&最高のパーティーでかかった1曲&そろそろ発売される盟友のフルアルバム

Crew of secret trafficking organization.
Also He is offering fabulous DJs at “Isn’t it?” that is small weekday party .
https://soundcloud.com/isnt-it-1

4/10 大阪Club Stomp "White Body"
https://club-stomp.com/
DJ:
oboco
OQ
DJsoybeans
AIWABEATZ
BIOMAN
LIVE:
NEWMANUKE
TECHNOMAN

4/11 大阪Club Circus "FACTORY"
https://circus-osaka.com/
DJ:
ALUCA
Matsuo Akihide
AIDA
Live:
Whan!
Albino Sound
DJ Soybeans

4/14 幡ヶ谷Forest Limit "Isn't it?"
https://forestlimit.com/fl/
DJ:
NODA
Sem Kai
DJ Soybeans

Sufjan Stevens - ele-king

 これは幼い日の夏の記憶にまつわるレコードである。そこにはいまよりも若い姿の家族がいて、太陽の光は眩しく、季節は永遠に終わらないように思えた……。誰の心にも、そんな夏がくすぶりつつ息づいているだろう。だがそんなパーマネント・ヴァケイションにも終わりはある。必ず。

あなたを許します、母さん
あなたの声が聞こえる
あなたのそばにいたい
でも、どんな道もいつか終わる
そう、どんな道もいつか終わる
“デス・ウィズ・ディグニティ”

 「尊厳死」と題された曲でスフィアン・スティーヴンスは、母親の死をそんなふうにそっと描写する。中年の入り口に立ったシンガーソングライターが実親の死を機に人生と向き合い、内省的なフォーク・アルバムを作るのは珍しいことではないかもしれない、が、『ピッチフォーク』のインタヴューで彼自身が語ったことによれば、事情はもう少し複雑なようだ。精神を病んでいた彼の母は彼がほんの赤ん坊のときに去ってしまい、以来彼女とは時間をともにすることはほとんどなかったという。だが幼少期のほんの数年だけ、彼女とその再婚相手と過ごした夏があった。キャリーとローウェル――それは幸福な夏の記憶だったと。
 そして時は過ぎ、スフィアンはかつて自分を「棄てた」母の死を前にして、答の出ない問いに結論を与える代わりに歌を歌っている。かすかな声で……「おまえが死者のためにうたう あの歌は何だろう?」

 スフィアン・スティーヴンスのこれまでの作品は、そのアレンジメントに重要な聴きどころがあった。管弦楽とエレクトロニカとアメリカの大地に埋もれていたフォークの、複雑で奇妙な出会い。そこに途切れのない糸を通して縫い付けていたのはイマジネイティヴで突飛ですらあるストーリーテリングであり、『イリノイ』では巨視的かつ多層的に中西部で生きる人びとの悲喜こもごもを描き出していた。対して本作はスフィアンにとってはフォーク回帰と位置づけられる作品で、変拍子もなくアレンジはごくシンプル、歌そのものを聴くアルバムだ。そして彼のアルバムにはこれまでも胸が締め付けられるような切ないフォーク・ソングがいくつか収められていたが、そんな曲たちだけが収められているのがこの『キャリー&ローウェル』である。
 本作を支えているのはストーリーテリングでもなければ巧妙な寓話や気のきいた引用でもなく、繊細な録音だ。先行して発表された“ノー・シェイズ・イン・ザ・シャドウ・オブ・ザ・クロス”一曲を聴くだけでそれははっきりした。その、ガラス細工のような微細な輝きには息を呑むしかなかった。親密な……というのはこういう音のあり方に使うものなのだろう。スフィアンそのひとの息づかいがバンジョーやギターの弦をはじく音と響き合うような曲がほとんどで、エレクトロニカ的な打ち込みもいくつかあるが、そのどれもがとても小さな音量で施されれている。僕は何度か街を歩いているときにイヤホンでこの歌たちを聴いたが、横を車が走っただけで音は簡単にかき消されてしまう……それはこのアルバムが、そんな煩雑な日常に埋もれそうになっている小さな記憶や感情を取り扱っていることとまったく同じだ。

 「あなたの幻とともにどうやって生きていける?/今すぐ自分の目をひきちぎればいい?/目にするものすべてが ふとあなたを思い出させる/今すぐ心をひきちぎればいい?/思うことすべてが ふとあなたに返っていく/あなたの哀しみから あなたを救ってあげたい(“ジ・オンリー・シング”)」
 本人にしか本当のところはわからないであろう個人的な由縁のあるモチーフが歌詞に溢れるなかで、ふとそんなふうに率直さが切なさをもたらす言葉がこぼれてくる。下ろされた鍵盤がやはり小さな音を鳴らす“フォース・オブ・ジュライ”ではまるきり子どものように、「ぼくの蛍」や「空にあるぼくの星」に声をかけ、そして……「僕たちはみんな死ぬんだ」とつぶやく。スフィアンはここではっきりと悲しみを見せている。それは深く、優しく、豊かな悲しみだ。自分のもとを去った母親に対して、それでも沸き起こる愛ゆえの。
 そしてまた、本作にはもうひとり重要な登場人物が現れる。ローウェル――ローウェル・ブラムス。スフィアンの血のつながらない(かつての)義父であり、〈アスマティック・キティ〉の共同設立者、そして実の父よりも父親の役割を果たしてくれたという彼に対して、“ユージーン”でスフィアンは歌う。「ぼくに泳ぎ方を教えてくれた人/ぼくの名前をちゃんと言えなかった/父親みたいに導いてくれた」、「そして今ぼくは ただあなたのそばにいたい」……この2分半にも満たない短い曲に、僕はずっと閉じ込められていたいと思った。そこではひとが誰かと偶然に出会って起こる奇跡のようなものが、いまにも消え入りそうなかすかな震えとして存在している。そしてそれを「歌」とスフィアンは呼ぶ――「歌をうたっていったいなんになる/その歌にあなたの声がけして届かないなら?」

 「むかしむかし」……タイトル・トラックでスフィアンは歌う。かつてアメリカの片隅で、壊れてしまった家族と疎遠になった親子の間でそれでも消えなかった愛、その記憶を彼は辿っていく。その意味では、歴史に跡を残すこともない無名の人びとの感情を豊かに湧出させた『イリノイ』も本作も同じだ。彼はか弱き人間への慈しみを忘れることはない。そしてこの勇敢な歌い手はいま、自分だけの悲しみを紐解いて、僕たちのもとに静かに差し出している。いまにも壊れそうなその揺らぎに耳を澄ませば、奥では夏の光が鮮やかに反射していることだろう。

interview with Tomggg - ele-king


Tomggg
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Butter Sugar Cream【通常盤】
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ElectronicDream PopJ-Pop

 音楽をつくる仲間たちがスカイプを通じて集まってきて、互いの音を聴かせあったり、作業工程を見せ合ったり、他愛ない話をしたりというコミュニケーションは、インターネットの黎明期にあっては夢のひとつだったのかもしれないけれど、いまではそうしたことを当たりまえのようにできる環境が、次々と次代のプロデューサーたちを育んでいる。インタヴューの最後になってほほえましく語られた、彼らのささやかな音楽コミュニティの話をきいたとき、日本ではなかなか根づきにくいとされるUSのインディ音楽カルチャーのスタイルが重なってみえるような気がした。友だちの家でライヴをやる、いつでもやる、仕事や生活と両立してやる、音楽やそのアーティストに興味がなくとも親密な場所であればいっしょに楽しむ……芸能としてしか音楽の活動場所を築きにくい日本ではなかなか難しいけれど、そうした生活レベルの楽しみ方も音楽の尊いあり方のひとつだ。モニター越しではあるが、ネット環境の飛躍的な進化とともにそれは思いのほか一般化されているといえるのではないか──。

 Tomgggといえば、歴史的なネット・レーベル〈maltine(マルチネ)〉からのリリースや、kazami suzukiのイラストのインパクト(サンリオと吾妻ひでおのハイブリッドだそうな……)、ラブリーサマーちゃんや禁断の多数決などのリミックス仕事も相俟ってか、ネットを主なステージとして、オタク、機材系ギーク、サブカル、ポップ・シーンをスタイリッシュに縫合する、時代性にあふれた若手プロデューサーのひとり……といったイメージを勝手に抱いていたが、今回話をきいて、案外本質はそんなところにないのかもしれないという気持ちがした。
 いやいや、そうした印象が事実であることもたしかだと思うけれど、それだけではただわれわれが時代を人格化するのに適した一体のハイプを見つけだしたというに過ぎない。彼がもっと素朴に音楽行為を愛好するカルチャーの末端にいるということ、「アタマ10秒でつかまないと生き残れない」などという世知辛いプロデューサー意識と同時に、たとえそれが売れようが売れまいが、確実に音楽が生きることを楽しむためのきっかけになっているということに、格別な親しみを覚える。初の全国流通盤となる今作EPが「お菓子」をひとつのコンセプトとするものであり、それを自身が「生きていく上で絶対必要なごはん……以外の食べ物」として音楽と結びつけて語るのは、だから、不必要・不健康なもの、奢侈といった自滅自嘲的な意味ではけっしてなくて、生きる主体として必要な栄養だという認識からだろう。表題曲“Butter Sugar Cream”は音の言葉のカロリーや凝り方のわりには存外素直な、そして素直すぎるよろこびの表現なのだ。

※インタヴューのラストでティーザー音源をお聴きいただけます

■Tomggg / トムグググ
1988年生まれ、千葉を拠点とするプロデューサー。公募型コンピレーション「FOGPAK」や自身のsoundcloudなどインターネットを中心に作品を発表、これまでのリリースに〈Maltine Records〉からのEP『Popteen』がある。2014年は禁断の多数決やラブリーサマーちゃん、Porter Robinsonのリミックスなどを手掛け、カナダのトラックメイカーRyan Hemsworthとの楽曲制作も話題になった。2015年3月〈Faded Audio〉より『Butter Sugar Cream』を発表。

すごく強く、音楽では食えないという思いがあったもので──いまもですが。

音大を出ていらっしゃるんですよね?

Tomggg(以下、T):そうなんです。

しかも、国立音大ってかなりガチだと思うんですが。

T:ガチで、しかも作曲を学んでいたという──(笑)

そうそう(笑)、作曲科なんですよね。それっていったい、どういう動機で何を目指して入る学科なのかなって。

T:そうですね、専門がコンピュータ音楽ってもので、アカデミックなほうのコンピュータ音楽になるんですが。具体的に言えばMax/MSP(マックス・エムエスピー)やらマルチ・チャンネルのスピーカーやらを使って、サウンド・プログラミングを行ったりしていました。もともとの入学の動機は、作曲もしつつ、そこの学科では録音とかPAとかっていうエンジニアリングもやっていたので、そういうことを学べたらいいなということだったんです。

エンジニアリング。ではゆくゆくは何か、音楽に関わる仕事をしたいなという気持ちがあったわけですか。あるいは、職業作曲家として?

T:作曲家……というほどのことを思っていたわけではなくて、もうちょっと裏方のことでしょうか。

へえー。16、17歳くらいの年ごろの少年の夢というと、裏方というよりは、ギターを手に、もっと前に出て行ってやるんだっていうほうが順当なような感じもしますけど(笑)。

T:ええ、ええ。

具体的にそういう道へ進もうと思いはじめたのはいつ頃なんですか?

T:えっと、すごく強く、音楽では食えないという思いがあったもので──いまもですが。

ハハハ! さすがシビアな現実認識が骨身に沁みた世代でいらっしゃる。

T:(笑)──でも、そんななかでも、実際的に職業にできるものは何かって考えたときに思いついたものですね。

なるほど。音楽に憧れる最初のきっかけがあったと思うんですが、それはどんなものなんでしょう?

T:小っちゃい頃はクラシックとかをやっていたんですけど、中学……高校生のときかな? 父親が何百枚も入るCDラックを持っていて、60~70年代のロックとかハードロックが多かったんですが、それを1日に1枚聴いていくっていう作業をずっとやっていて。


父親が何百枚も入るCDラックを持っていて、60~70年代のロックとかハードロックが多かったんですが、それを1日に1枚聴いていくっていう作業をずっとやっていて。

おお。いま図らずも「作業」って言葉が出ましたけれども。

T:そうそう(笑)、まあ、僕が中学くらいのときはBUMP OF CHICKEN(バンプ・オブ・チキン)とかL'Arc-en-ciel(ラルク・アン・シエル)とかって邦楽のロックを聴いていたんですが、その原点って何? って考えたときにこのへんのロックだろうと思って、父親のCDラックをひたすら聴いていたんです。うちにはパソコンとかなかったので、音楽の情報はほぼそこからのみという感じでしたね。

へえー。いちおう認識としては、好きなもののルーツへと遡るという行為だったわけですね。具体的に名前出ます?

T:いや、ほんとにディープ・パープル(Deep Purple)とかツェッペリン(Led Zeppelin)とか(笑)。父親はそのへんが好きみたいですね。

ハードロックなんですねー。メタルとかいかず。

T:そうですね。オールディな感じで。で、気になっていったのがキング・クリムゾンで。

あっ、そうつながるんですね。プログレにいったんだ。

T:聴いてすごくびっくりして。1曲のなかにあんなに詰め込んじゃっていいんだって気づいて。

ああ、なるほど。『宮殿』からですか?

T:そうですね、『宮殿』から入り……。あとは、父が棚に年代順に並べていたので(笑)。

(一同笑)

かつA to Zで入れてますね、それは(笑)。

T:それは曲をつくるひとつのきっかけになっているかもしれません。

なるほど、そうするとTomgggさんの音楽のわりと構築的な部分に理由がつく感じがしますね。

T:そうかもしれないですね。それまでは、ちゃんとつくられた曲というとクラシックだけしか知らなかったので。モーツァルト、ベートーベン……完成されているものですよね。でもキング・クリムゾンとかは別次元で変なものがつくられているという感じを受けて、でも同時にそこにこそ強度があると感じました。

ツェッペリンとかも、プログレに連なるようなところはありますよね。牧歌的なハードロックというより。……すごく思弁的だったり。

T:そうですよね。あと、クラシックのようにすっきりとした音じゃなくて、もっとノイズにまみれたものを聴きたくなってしまったところもあります。でも、音はノイジーでも美しく完成されていて。

クラシックはクラシックでお父さんのコレクションがあったりしたんですか?

T:そんなになかったですね。ピアノの先生に教えてもらったりです。

おっ。やはりピアノされてたんですね。そこで弾いてたのは……

T:古典的なものですね。

なるほど、印象派とかではない?

T:そこまで……いってなかったですね(笑)。印象派にたどりつくのは音大に入ってからです。

でも、古典よりとっつきやすくないですか?

T:うーん、そうでもなかったですね(笑)。

なるほど。Tomgggさんは2000年だと12、3歳くらいですかね。クラシック以外ではどんなもの聴かれてました?

T:SMAP(スマップ)とかですかね。テレビから流れてくる音楽です。

なるほど、お父さんのアーカイヴに手を出しはじめたのはその後ですか?

T:中学は、ほぼ音楽には興味がなかったんです。だから高校からですかね。陸上部に入っていて……しかも砲丸を投げていたという激ヤバなストーリーがあるんですが……。

ハハハ! それはヤバいですね。人はいつ砲丸に向かうんですか(笑)。

T:どこも人が多かったので、人のいないところを探したら砲丸だったというか(笑)。フォームはよかったらしいです。

フォームね(笑)。Tomgggの音楽を語るときのキーワードになるかもしれませんね。


空間に興味を持った理由のひとつが、音楽のなかにどれだけの音の情報を詰め込めるかということだったんですよ。

と、紆余曲折あって音大進学となるわけですが、「電子音響音楽と空間表現」ですか。ホームページのプロフィールかなにかで拝見したんですが、それが修論のテーマだったと。これはいったいどんな研究なんでしょう。

T:ヨーロッパのラジオ局からはじまって、現代音楽が盛り上がって、カセットテープやレコード……いわゆる電子音響、電気的に音楽が録音できるようになって。それ以降、音楽に何ができるようになったのかということをひたすら研究していました。そこでのひとつキーワードとしては「空間」。空間を使って作曲ができるかということを試みた人たちがいて、それがすごくおもしろかったんです。

部屋一個ぶん使うくらいの音響装置とかエフェクターとか、そういうもののことですか?

T:そういうのもありますけど、たとえば、お客さんとステージという関係を前提とすると、音楽が前から鳴ってくることが普通のことのように感じられますよね。でも後ろから鳴ってもいい。そういうことが可能になったんだという研究があって、それは具体的に何をしているかというと、たくさんスピーカーを使っていたりってことなんです。電気的な装置を使って、それをどこまで拡張していけるのか。そういうことをひたすらやりましたね……。

へえー。じゃあ、ハンダゴテが出てくるような研究というよりも、もう少しコンセプチュアルで抽象的なものについて考えていたわけですね。かたや、裏方でエンジニアやるってなると、ハンダというか、装置の中身の話にもなっていくと思うんですが。

T:そうですね……、サウンド・プログラミングをやって、ってくらいなんですが。自分でエフェクターをつくったりはしましたけどね。

では、その頃に学んだものはいまのTomgggの音楽に大きく影響を与えていると思いますか?

T:そうなんでしょう。空間に興味を持った理由のひとつが、音楽のなかにどれだけの音の情報を詰め込めるかということだったんですよ。2チャンネルのステレオの中だと、詰め込める周波数が限られているんですね。でも、そのスピーカーを増やしていけば、詰め込める量が増えていくじゃんってことに気づいて。

ははあ……、個数の問題なんですか。

T:どうなんですかね(笑)。2個よりも4個のほうが音を詰め込めるんじゃんって考えました。で、いろんなところから音がしたら、もっと表現も広がるなというふうに発展していったりとか。

なかなか頭が追いつかないのですが……。恐縮ながらすごく具体的なところでどういうことをやったという例がないですか?

T:そうですね(笑)、たとえばヘッドホンで聴いたときに音が左、右、左、右って音が移動するように聴こえるエフェクトがあるじゃないですか。あれをもっとぐるぐる回したいとか。

おお、音をぐるぐる回すってのは、それこそツェッペリンがすごく早くにやってたやつじゃないですか?

T:あ、ほんとですか。いちばんはじめが誰かわからないけど……。


大学を卒業すると同時にそういう研究はスパっと終わりにして。次にどんな音楽をやろうかというときにインターネットかなと思いました。

おお、何かつながったということにしましょうよ(笑)。ぐるぐるやったりしてたわけですね。ご学友というか、まわりの人はどんなことをやっていて、いまどんな仕事に就いているんですか?

T:まわり、何やってましたかね。MVとか映像が流行りだしたころだったので、それこそ「映像と音の関係」とか。ミシェル・ゴンドリー(Michel Gondry)とかいろいろ出てきましたし。

ああ、なるほど。真鍋大度さんだったりを目指すとか。こうしてお話をきいてくると、サブカルチャー的な部分との接点はありつつも、かなりハイブローなものからの吸収が大きいですよね。先日MiiiさんやLASTorderさんのお話をうかがったばかりなんですが、たとえばMiiiさんなんかがギークとしてのアイデンティティを持ちながら〈maltine(マルチネ)〉に接近していくのはよく理解できるんですよ。Tomgggさんはどうして〈Maltine〉なんでしょう?

T:本当に飛び石というか、大学を卒業すると同時にそういう研究はスパっと終わりにして。次にどんな音楽をやろうかというときにインターネットかなと思いました。imoutoid(イモウトイド)っていう、むかし〈maltine〉にいたアーティストがすごく好きだったんです。ああいう感じでやりたいなという。それでいろいろやっているうちにつながったというか。

なるほど! 音源を送ったりしたんですか?

T:いえ、そういうわけではなかったんですが、卒業してからずっと、インターネットの音楽ってどんな感じだろうって思って探ってたんですね。潜伏していた時期があるんですが、たとえばRedcompassくんがやっているFOGPAKっていうコンピのシリーズとか、そういうところと接点を持ったという感じです。何曲か送りました。

Redcompassさんも、いろいろなものをつないでいる方ですね。

T:そうですね。そうしているうちにtomadさんから連絡をいただいて。ボーエン(bo en)がはじめて来日するときに、リリパで出ませんかというふうに声をかけてくれたんです。もちろん、出ます出ますということで(笑)、それでここまできている感じです。

なるほどー。たとえば、とくにドメスティックなこだわりのない音楽をされている方だと、海外の好きなレーベルから出したいって気持ちもあったりすると思うんですが、そういうこともなく?

T:そうですね……、ネットを探っていたといってもとくに〈maltine〉以外に見えていたわけじゃないです。あんまりたくさん知らなかったかもしれませんね。

そうなんですね。tomadさんがつなげたものって、音楽というよりもヴィジュアルとかスタイルとか風俗とか、そのなかでのふるまいとして音楽もあるというか。そういうもの込みでのネット・カルチャーですよね。

T:ええ、ええ。

〈maltine〉がなくてもアルバムをつくってました?

T:ネット・レーベルがすごく流行っていたころだったので、僕も友だちと「やってみるか」っていうことになったりもしたんです。でも結局それもふるわず。

そうなんですね! 音源はタダだから経済的に成功してやるというような野心はあんまりないでしょうけど、わりとみんながネット・レーベルというものに夢をみた時期だった……?

T:そうですね、僕についていえば、関わってみたかったという感じでしょうか。


音楽をつくるなら歴史にアーカイヴされる必要がある、って思っちゃうんです。

なるほど。同時にパッケージの必要性とか、あるいは「アルバム」「シングル」ってかたちで音をまとめる意義も自然と問い返された時期だったと思います。〈maltine〉からの3曲入りの「Popteen」は、どういう意識です? アルバムとかシングルとか。

T:アルバムでもシングルでもないですね。ふるいかたちを借りればEPということになると思いますけれども。3曲くらいあればまあ、かたちにはなるかなというところで(笑)。2曲だとまとまりにかけますし。3曲だと「集団」だなって感じがします。

今回の『Butter Sugar Cream』は4曲+リミックスというかたちですよね。このサイズ感って、じゃあアルバムですか?

T:うーん、そうですね……。これでやっとひとつのものだぞという感覚が生まれましたかね。

へえー。まあ、10数曲入っていたりするじゃないですか、プラケに入ったCD、アルバムってものは。

T:10数曲あると聴かないんですよね(笑)。

ハハハ。そのへんはある種のユーザビリティみたいなものへの配慮もあるとか?

T:自分の制作ペースとかもあるんですけどね。僕、1曲をつくるのがけっこう大変なんで……。

寡作なんですね。音づくりに手間ひまをかけるから? アイディアが出てくるまでの問題?

T:どっちも……ですね。『Butter Sugar Cream』も結局10月くらいからつくりはじめて、2月のあたまくらいにやっとできたので。繰り返し聴くのに耐えられるかってことをよく考えます。

なるほど。

T:PC上では、何度もあたまから聴き返しつつつくるわけですから、それに耐えられるかというのは自然にイメージするところですね。「これ、つまんないな」っていうのは何度も寝かせました。

私は「俺の歌を聴け」世代というか。グランジとかが直撃で、ロックがまだまだ洋楽のメインストリームだったんですが、そこではもうちょっと「俺の歌」が優先されていたと思うんですね。客が何度も聴けるかどうかなんて知ったこっちゃなくて、まずそれが我(おれ)の音楽だってことが大事というか。そのへん、Tomgggさんとかは真逆で、すごいユーザー視点なんですねー。

T:ああー、なるほど。僕の大学の先生が「中毒性」ってことをよく言っていて。その言葉が今回の作品のお菓子のパッケージにもぴったりだなと思うんですが、何回聴いてもまた聴きたくなる、そういうものをつくれるかどうかってことを考えていましたね。それから、音大出だからだと思うんですけど、音楽をつくるなら歴史にアーカイヴされる必要がある、って思っちゃうんです。

ああ、はい。

T:音楽史っていうものがあって、そのなかにレジェンドな曲が配置されていて、それは何百年間も聴かれる曲で。……そういう思いも底にはあるのかなあって。

なるほど。いま、それこそネット環境だと、音楽はタイムラインのなかで一瞬で消費されたりして、そのスリリングなスピードがつくる側にもおもしろさを生んでいたりもしますよね。そんななかで何百年も残るものを目指すというのは、何か、Tomgggというアーティストのスタンスを知る上で見逃せないところかもしれませんね。

T:そうかもしれませんね(笑)。

このお菓子みたいなジャケだって。一回開ければ終わりでしょう(※)? それまた、替えのきかない一回的なものとして永遠に残ろうとするものだって解釈できますよね。


※市販の菓子のパッケージのように、ボール紙でできたジャケットを破るかたちで開封する

T:これは本当にお菓子のパッケージのイメージなんです。入口がお菓子、中身がCDという。お菓子だと、結局は中身が食べられて外側も捨てられちゃいますけど、音楽はなかなか消えない。

すごくきれいに考えられてる。それに、音楽の歴史を意識しているっていうのは、なにか貴重な証言をいただいた気がします。

T:それほど意識するというわけでもないんですけどね。でも俯瞰して見ちゃうというか、そういうところはどうしてもありますね。


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(歌詞のオーダーについては)甘いものを食べてる……部屋の中でひとりでお菓子を食べているというイメージでやってほしいと言ってたんです。



そこでこの『Butter Sugar Cream』ですが、甘味三段活用。もう、甘いぞーってタイトルですね。ワン・ワード?

T:ワン・ワードでいいと思います(笑)。

ハハ、この甘いものの三段重ねは、ご自身の音への自己評価なんですか?

T:ああー、なるほど、そうですね……。「バター・シュガー・クリーム」って言葉自体は、この歌詞をつくってくれた辻林(美穂)さんが使っていた言葉なんですよ、歌詞のなかで。僕としては、甘いものを食べてる……部屋の中でひとりでお菓子を食べているというイメージでやってほしいと言ってたんです。

あ、そこまで明確にディレクションされてたんですね。

T:そうですね。けっして相手がいないかたちで、甘いものを楽しんでいる状態というか。で、実際にできた詞のなかの「バター・シュガー・クリーム」って言葉がとてもよかったので、タイトルとして使うことにしました。あと、「シュガー・バター」だとウェブで検索したときにノイズが多そうなんですけど、「バター・シュガー・クリーム」だったらこれしか引っかからないし。

ハハハ。「バブルガム・ベース」なんて言ったりもしますけど、まあ、バブルガムとはニュアンスがちがうにせよ、「バター~」もポップで甘いってとこは共有してると思うんですね。そこで、ポップとか甘いとかって感覚が目指されているのは何なんですかね?

T:なんですかね、「カワイイ」を横にズラした感覚っていうんでしょうか。「カワイイ」を言い過ぎてしまうというか。手に余る感じをわりとポジティヴに表現してるんじゃないですかね。

ははー。それはなんか、咀嚼したい回答ですね。なるほど。しかしそもそもクリムゾンとツェッペリンからはじまって、行き過ぎたカワイイまでいったわけですか(笑)。

T:ははは。やっぱり、遠回りしたほうがおもしろいなっていうのはあります。ルーツがそのまま出るよりも。それから、たとえばノイズっていうものは一部の人にしか楽しまれないものだと思うので、せっかくならいろんな人が聴く場所でやってみたいという気持ちもありますね。お菓子ってみんな好きですよね。漬物とか、限られたひとの嗜好品みたいなものよりもそっちをやりたい。子どもも大人も食べられるようなものを使って発信したいです。

ということは、Tomgggさんの目指している音楽性は、Tomgggさんの考えるレンジ、リスナー層の幅に対応しているものだと。

T:そうですね。なんだろう、生きていく上で絶対必要なごはん、以外の食べ物。本当は食べなくてもいいもの、動物としてじゃなくて人間として必要な食べ物。お菓子ってそういうことですね。

ああ、人はパンのみにては……バター、シュガー、クリームなしには生きられないと。

T:重要ですね(笑)。

なるほど。ですけど、あえて反論するなら、たくさんのひとが快適で楽しめる感じの甘さであるには、『バター・シュガー・クリーム』はちょっと毒なくらい過剰に甘すぎませんか?

T:でも思いっきり濃くしないと。薄い甘さじゃ広がらないだろうなって思います。やっぱり10秒聴いてグッとくるかこないかの世界──インターネットってそういう場所だと思うんですけど、プレヴューで10秒、20秒、30秒って飛ばして聴かれるようなときに耐えられる甘さにしなきゃいけないわけですよね。


思いっきり濃くしないと。薄い甘さじゃ広がらないだろうなって思います。

(担当さんに向かって)……いまのミュージシャンって、ほんと大変ですね。

T:自分もそうだし、みんなもそうだと思うんですよね。

マジで絶句しましたよ。俺の歌を聴くまで待つとか、そんな悠長なことをいっていられないんだ。むしろ、あっちはお客様ってくらいの意識があるというか。

T:そうですね、自分もやっぱり聴く立場だし。SoundCloud(サウンドクラウド)とかも日々更新されるじゃないですか。時間をそんなに取れないから、こことこことここだけ聴く、みたいな。

盤を買いにレコ屋さんに行って掘ってきたりってするんですか?

T:サンクラ……ですね。それこそ高校生の頃はディスクユニオンのプログレ館に行ったりとかしてましたけど。

ハハハ。でもその頃は、ひととおり紙ジャケの再発ものがバンバン出ていて、聴きやすいし買いやすかったんじゃないですか? 解説も新しくついてるし。

T:そうですね。たしかに再発で新しく知るきっかけになったり。

そうですよね。プログレ館まで行くんなら、聴いてたのはイギリスのバンドとかだけじゃないんじゃないですか? アレア(Area)とか。

T:アレア聴いてましたね。もちろんヨーロッパからですけど、イタリア系も聴いて。オザンナ(Osanna)最高、みたいな。

ハハハ! マジですか。ジャズとか、ちょっとクラシックにも寄ってきますしね。頭おかしい合唱みたいのでアガったりとかしませんか。

T:どうですかね、マグマ(MAGMA)みたいのもやってみたいですけどね。

いいですねー。バーバーヤガッ、つって。それぎりぎりカワイイなのかな(笑)。

T:ははは。

でも訊いてみたかったんですよね。グロッケンとストリングスを禁止したら、Tomgggさんはどんなものをつくるんです?

T:やっぱひたすらマグマみたいになりますかね(笑)。ひたすら繰り返して……すげー盛り上がる、みたいな。

あははっ!

T:やっぱりいまのスタイルは、グロッケンとかストリングスでメロディをつくるっていうところなので、それを禁じられるとメロディをつくれないだろうから、ひたすら繰り返すっていう方向になるだろうなあ……。

いまもそういう方向がないこともないですけどね。カワイイをひたすら横すべりさせていって……

T:大袈裟な展開と音づかいにする。

ははは。そういえば、アナログな音への憧れとかないんですか? ヴィンテージなシンセとか。

T:ああー。はっきり言ってしまうと、シンセにそこまで憧れがなかったりもするんですよね。

ラスティ(Rusty)が好きって言っておられましたっけ。彼なんかはそういう憧れがちょっと逆に出てるのかなって感じもしますが。彼の音楽はどんなところが好きなんです?

T:はじめて聴いて、カッコいいなーっていうのがきっかけです。この感じがほしいなって。

音のカロリー高いですよね(笑)。

T:そうそう!

情報量も凝縮されていてね。逆に、チルな感覚ってないんですか?

T:僕は、重ねるというか、足し算で音楽をつくっていくタイプなんで、どちらかというとカロリー高めにはなりますかね。はじめの、スピーカーを増やして情報量を過密にするという話ではないですが。

ああなるほど、じゃ北欧シンフォニックみたいにね、異常なエネルギーで過剰な情報量をさばいていくかんじのポップス、やってほしいですね。

T:ははは、いいですね。

ポストロックとかは通ってますか?

T:そうですね、多少。ポストロックというかわかりませんけど、ゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラー(Godspeed You! Black Emperor)とかはカッコいいですよね。

ええー。なんだろう……素っ裸になったりしなきゃ。

T:いやいや、そんなストイックだったりはしないんですけど。あとはドンキャバ(Don Caballero)とか。

ええー! そうか、お話を聞いていると、意外に底に沈んでいるものがハードコアですね。手数の多いドラミングとかは、まあ、情報量ですかね。

T:ああ、ドラムがメロディみたいになっていますよね(笑)。好きですね。

なるほどなー。バターとシュガーとクリームの成分がわかってきました。


もともと人の声を切り取ってきてるわけなんですが……。ただ、ヴォーカルに還元したくないんですよね。

でも、じゃああの甘さっていうのは仮面?

T:甘い餅にくるむみたいな感じ。どんな中身でも、食べちゃえばわかんないでしょっていう(笑)。

ハハハ。でも甘いものは本当に好きなんでしょう? 戦略的な意図だけで劇甘メロディを入れている、ってわけじゃないですよね。

T:好きですよ。やっぱりそこは、たくさんのメロディがあったほうが楽しいなって思いますし。

うーん。なんか、食えないやつですね、ほんと。

(一同笑)

ご自身のピアノを生かしたいというような気持ちはないんですか? 作曲技法ってことではなくて、生音として取り入れたいというような。

T:そうですね、自分の曲をこのままバンドに変換できたりしないかなってことは考えたりするんですけどね。あまり生音に関心があるというようなことではないですね。

おお。そうか、譜面が書けるんですね?

T:書けますね。

ということは、バンドに手渡すということもできますね。それはそれで、おもしろい展開が考えられそうですね。この作品も2曲めとかにヴォーカル・サンプルが入っているわけですが、あれはトラックを渡してその上で歌ってもらうってことじゃなくて、声のデータをもらってつくっているんですか?

T:はい。素材としてもらって、それを打ち込んでます。

ボーカロイド以降の感覚ってあります?

T:そうですね。でもボーカロイドっていうよりも、僕はコーネリアスが好きなので、コーネリアスのヴォーカルの使い方ってあるじゃないですか? あれをどうにか僕なりのかたちでやってみたいという感じなんです。

一見、人間性みたいなものをばらばらにしてるような。

T:ええ、ええ。声らしき断片みたいなものがあって、声かどうかは一瞬わからないんですけど、やっぱ声でした、みたいな感じ。そういうイメージですね。

では、生の声への信仰があるのかどうかってあたりをうかがいたいんですけども、どうですか。生のヴォーカルのほうが尊いっていうような。

T:生の声のほうが言葉になるっていう感じはあるんですけどね。メッセージが強く出ますよね。ボーカロイドだとただ音色になる部分もあると思うんですけども。

ああ、なるほど。Tomgggさんのこの声の使い方は、声を音色にする方法論ではないんですか?

T:声を音色にしてるんですけどね……なんだろう、もともと人の声を切り取ってきてるわけなんですが……。ただ、ヴォーカルに還元したくないんですよね。

人が能動的に歌うものにしたくないという? 歌い手が歌う歌にはしたくない?

T:そう、メロディではあるんですけど、ヴォーカルを切り取ってきたときには、無機質な状態のほうがやっぱりおもしろいって思います。

なるほどなあ。人が歌う歌って、その人の人間性の限界みたいなものも出ちゃったりするじゃないですか。よくも悪くもとにかく情報量がノイジーで。……でも、そういう人間性みたいな部分がいらないわけじゃなくて?

T:そう、人間性もほしいんだけど、無機質さもほしいって感じですね。やっぱり、録音された素材はそれ以上広がりようがないじゃないですか。その状態を保ったままつくるというか。

そこには人格とかキャラクター性はない?

T:僕の曲だと認識されやすくなるためのひとつのキャラクター性ではあるかもしれないですね。持ち味というか。そういうものは生まれているかもしれません。どの曲にもちょっとずつ混ぜ込んであるんですよ。


ライヴでは前でぴょんぴょん跳ねているのが楽しいんですけどね。

なるほど。一方で、歌詞もきっちりついている“Butter Sugar Cream”ですが、これはさすがに「歌い手性」みたいなものも出ているかと思います。これは、「女の子ヴォーカルを歌わせる」っていうような意味でのプロデューサー意識はありました?

T:そうですね、さっきも少し触れましたけど、この曲は歌詞をつくるのにもけっこう口を出しているんです。あと、歌い方も指定してつくったものですね。いろいろ歌詞があって、最後「消えたりしない/溶けたりしない」って繰り返すのはぜったいやりたいと思っていました。

へえ、それは──?

T:あの音色でこんな言葉を入れたらおもしろいだろうなって。「歴史にちゃんと残るんだ」っていう気持ちにリンクするなという気持ちもありました。

ああ、なるほど、かなりコンセプチュアルなんですね。誰かシンガーを引っぱってきて歌わせたいという思いはあります? この作品でもフェニックス・トロイ(Phoenix Troy)さんがラップで参加されていますけど、トラックを提供して歌い手を歌わせるというふうに仕事を発展させていきたいというような。

T:そうですね。この2曲はうまくいったなとは思うんですけど、まだまだ発展はできるなと。

彼にラップを入れてもらったのはなぜですか?

T:これは、あちらからアプローチがあって。それで、こういうリリースがあるからそのなかに入れましょうっていうふうになりました。「お菓子がモチーフなんだ」みたいな話をして(笑)。

へえー。ボーエンさんもそうですけど、なんかそういう、日本人みたいな人たちいますよね。たんにインターナショナルだっていうことじゃなくて、日本人めいた人。

T:ははは。

しかし、Tomgggさんって、自身がすでに歌ってるというか、トラックがものすごく歌うでしょう?

T:そうですかね(笑)。

だから誰かに歌ってもらう必要がないようにも思うんですよね。こうやって歌い手と仕事をして、変化した部分もあったりしますか。

T:広がりましたね。いろんなメロディを重ねていくなかで、独自性のある声も出てくるし、さらにそこに自分の音が重なることで情報が増えるなっていう気持ちはあります。

Tomgggさんの場合、そもそもの夢の方向が裏方を向いていたわけですけど、裏から糸を引っぱって踊らせるっていうプロデューサー志向が、かなり若い人のなかで強いような印象があるんですよ。そのあたりはどうですか?

T:ははは、でもライヴでは前でぴょんぴょん跳ねているのが楽しいんですけどね。記号的なオモテというか、前に出てくる出演者でもあるというところはほしいはほしいですよ。

ああ、ぴょんぴょん跳ねてるっていいですね! 2曲めは、指をぱちんってやる音がサンプリングされてたりもするじゃないですか。ああいうのも不思議な空間性を生んでますよね。

T:音楽的に使わないであろう音色ってあると思うんですけど、それが普通の音楽に持ち込まれたらどうなるかっていうのを意識することはありますよね。エレクトロニカとかのモチヴェーションに近かったりするかもしれないですけど。ライヴでも、最近は曲と曲の間に雑踏の音を入れたりとかしはじめてます。


足、太い女の子が好きな人が聴く音楽になってほしいですね。

いまのスタイルだと、ある種箱庭的に、すべての要素を自分自身の手で決定してつくってるわけですよね。ジャケットのイラストはkazami suzukiさんで、〈Maltine〉からのEPでもお馴染みの方なわけですけれども、最初のころからすでにけっこうご活躍の方だったんですか?

T:どうなんだろう。〈Maltine〉のときが最初なんですけど、あのときはtomadくんが見つけてこられたんですよね。Tumblr(タンブラー)にいい感じの人がいるって(笑)。……やっぱりそこにはtomadがいるという。

ハハハ! すごい、さすが名プロデューサー。つなげますね。だってすでにTomgggさんの音と切り離せないようなものになってるじゃないですか。

T:そう、もうキャラクターが生まれているんで(笑)。

Tomgggさんから見て、kazamiさんの作品の客観的な評価はどんな感じですか?

T:なんていうか、ロリっぽい感じだとは思っていて。僕の曲──声のサンプルもそうなんですけどね。そういうオタクくささみたいなものが絵のなかに凝縮されていると思いました。やっぱり、本人も吾妻ひでおがどうとかって言ってましたしね。

ええー、そうなんですか。なるほど。……足、太いですよね。

T:そう。そう、足、太い女の子が好きな人が聴く音楽になってほしいですね。

ハハハ! またニッチなところに投げましたけども(笑)。いや、でもこれはもっと概念的な太さだとも思うんですよね。実際に太いってだけじゃなくて。

T:ええ、ええ。

この輪郭の崩れた感じとか。

T:カロリーを感じますね(笑)。

ハハハ、そうそう(笑)。どうです、こういう絵は詳しいほうですか?

T:いやー、詳しくはないですけど、でも実写とか写真とかそういうものよりはぜったいイラストがいいとは思っていたんです。

へえー。もし彼女に頼まなかったらどんなジャケになってたと思います?

T:どんなジャケになってましたかね(笑)! アクの強いイラストがよかったので……見つけてきてもらってすごくよかったですね。それから今回も思ったんですけど、キャラクターって重要だなと思いました。

キャラクターですか。

T:やっぱり強いです。どこにいってもついてくるものというか。逆に言えばどこにでも連れていける感というか。これ俺だよっていう感じで。

音楽性とか人格も宿っちゃいそうな……

T:それはあると思います。

それはおもしろいですね。可愛くてコンパクトな情報の運び屋になる。この絵をみるとTomgggさんの音が思い浮かびますからね。

T:いい出会いをいただいたんだと思います。最初は「ポムポムプリン」とかサンリオ系のキャラクターが好きだったみたいですよ。

へえー。

T:それがあるとき吾妻ひでおに出会って……

ハハハ。すごいなあ。でもサンリオもいま総選挙とかやってますからね。

(一同笑)

ポムポムプリンもセンターとらなきゃって、世知辛い時代ですよ(笑)。吾妻ひでおのほうにいってよかったんじゃないですかね。


ソウルフルな女性ヴォーカルはやりたいという気持ちもあるんですよ。

さてヴォーカルのほうですけど、tsvaci(ツバシ/辻林美穂)さん。彼女もまた音楽を専門的に学ばれてる方ですよね。プロとしてのお仕事もけっこうされている。

T:そうですね、まだ事務所には入っていないようなんですけども。いろいろ呼ばれてやってますよね。出会いは、tofubeats(トーフビーツ)が去年のいまぐらいだったか、ラジオでミックスを流したことがあって、そのなかに入っていたのがtsvaciさんの“You know…”っていう曲だったんですけど、それがよさそうだなって思って声をかけたんです。それから何か月も経ってやっと曲ができましたという感じだったんですけど(笑)。

戦略的に選ばれているのかもしれませんが、ロリっぽいものは素朴に好きなんですか?

T:うーん、いちばんイメージしやすかったんですよね。自分の音から。

ああ、音との相性ということですか。個人的な嗜好として好きな女性ヴォーカルの名前は挙がります?

T:やくしまるえつこに衝撃を受けて。

ああ、それは大きいですね。

T:太くてゆたかなアルトとかが素材としてあったとしても、それはピッチを変えてケロケロさせちゃうかもしれません。音に合わないから。

ハハハ、なるほど。じゃあ時代にチューニングしてるみたいな部分もあるのかもしれないですね。自分の趣味だけでやるとしたら別ってことですか?

T:うーん、どうでしょう。でもソウルフルな女性ヴォーカルはやりたいという気持ちもあるんですよ。

へえー。フェニックス・トロイさんとかも、グライムとか、あるいは白人ラッパーとかの雰囲気ではないですもんね。

T:自分のトラックに乗せたらギャップがあってすごいおもしろそうだなって思って。ほんとに、相手に合わせるんじゃなくて、こっちのやり方に合わせてもらうつもりでトラックを渡しました。

なるほどー。ちなみに男の人の声はケロケロさせなくてよかったんですか(笑)?

T:ははは、あれはあのまま乗せましたね。

男の人の声はケロケロさせたらどうなるんですかね。ていうか、女の子の声があふれていますけど、男の人の声ってなにかおもしろい展開ないんですかね。

T:はいはい(笑)、やっぱプログレやるしかないんじゃないですか。オペラを登場させるしか。

ハハハ! つながったー。男声合唱やるしか(笑)。

T:声で音圧を高めなきゃ。

挑戦はつづきますね。


放課後の部活というか、みんな社会人で、働いてるんですけど、土日は曲をつくって。

ちなみに〈PCミュージック〉とかはどうですか? 熱かったですか。

T:すごくグッときましたよ。雑な感じというか、軽率な感じというか。

はは、軽率な感じということなんですな(笑)。

T:ははは、このまま行っちゃうんだーみたいな感じですかね。雑なんだけど、何か新しいものを提示しているっていう、そういう気分を共有できました。

雑さは織り込み済みの評価なわけですね。雑っていうのは……ヴェイパーウェイヴみたいな露悪性があるわけではなくて、ただ雑、っていう感じ?

T:そのへんですかね。新しさと、あとはミックスの感じにも不思議な印象を受けてます。好きになりましたね。

〈Maltine〉の中ではとくに仲のいいアーティストって誰になりますか?

T:三毛猫ホームレスとかですかね。

素敵ですね! なんでしょう、楽理系というか、そういう部分での共感もあるんですかね。

T:あとはHercelot(ハースロット)とか。テクニカルな感じの人たちでしょうか(笑)。スカイプで作曲講座みたいなものが展開されてたりするんですよ。

いいですねー。

T:三毛猫、芳川よしの、Nyolfen(ニョルフェン)とか……、スカイプで日々会話してます。

つくってるときのPCの画面を全部見せるみたいな感じですか。内輪でしか公開しないもの?

T:そうそう、新曲をそこで批評しあったり。

楽しそう。オープンにしないのは、ショーではないという感じなんですかね。

T:うーん、そうですね。放課後の部活というか、みんな社会人で、働いてるんですけど、土日は曲をつくって、そういうところに集まる……。

いいですねー。部活の楽しさもあるし、テクニカルな交歓もある。

T:テクニックは……それぞれお互いのやり方を見ながらも、実際のところそれほどテクニックに興味がなかったりもするんですよね。音圧とかもみんなわりと、どっちでもよくて(笑)。

そうですか。それはほんとに……尊いというか。歴史に残る残らないという尺度とはまた別の次元で生きている音楽の例ですね。

T:そういう自覚があるわけではないですけど、そうかもしれませんね。歴史には残りたいですよ(笑)。



Bim One Production (e-mura & 1TA-RAW) - ele-king

国産Dub/Reggaeフェイヴァリット

スケジュールは以下にて。近日7inch、12inch、そして夏頃CDアルバム出ます。BIM!
https://www.bim-one.net

高木壮太 (CATBOYS) - ele-king

狂おしくも美しい曲を訪ねて

「午前3時のラウンジ・ファンク・バンド」CATBOYSのファースト・アルバム
『BEST OF CATBOYS vol.1』4月20日発売です。
問い合わせブッキングはcatboys@m02.itscom.netまで
スケジュール
4月17日きんようび 深夜 吉祥寺チーキー DJ
4月20日げつようび 20時 渋谷HMV インストア
4月25日どようび 深夜 渋谷 梅バー
5月02日どようび 深夜 青山蜂
5月05日こどものひ 深夜 渋谷クラブエイジア
5月22日きんようび 深夜 神宮前ボノボ】

Jamie xx - ele-king

 先日、ロメアのレヴューで野田が「UKからは何年かに1枚の素晴らしいハウスのレコードが出る」なぞと、調子こいてわめいていたそのアルバムこそ、6月3日発売予定のジェイミーXXのソロ・アルバム『イン・カラー』のことなのであった。
 ele-kingの2014年の大きな過ちのひとつは、ジェイミーXXの傑作シングル「 Girl / Sleep Sound 」を紹介しなかったこと。



 この美しいハウス・トラックは、アルバムの2曲目収録されている。
 vol.16の取材で、ジェイミーXXは彼にとっての最初が影響が「DJシャドウ、RJD2、そしてプラッド」と明かしている。すごく納得のいく話だ。DJシャドウ(ネタをディグする男)+プラッド(デトロイティッシュUKテクノ)、そしてUKガラージにベース・ミュージック……。
 言っておくけど、ジェイミーXXとは、ザ・XXというポップ・バンドのメンバーで、アンダーグラウンドのスターではない。そんな青年が、来日時にディスクユニオンでレアグルーヴを1時間以上も掘り続けるっていのは、本当にUKらしい。
 
 現在、ジェイミーXXとフォー・テットとのラジオでのDJプレイが公開されている。なんと、ジム・オルークやNHKコーヘイまで入っているぜよ! 

Jamie xx
In Colour(イン・カラー)

Young Turks / Hostess
6月3日発売予定


Amazon

interview with D.L - ele-king

MixCDFunkJazzHiphop

『FREEDOM JAZZ FUNK“Everything I Dig Gonna Be Funky”』
Track List
01. LES DEMERLE / A Day In The Life
02. PLACEBO / Balek
03. LES DEMERLE / Moondial
04. PLACEBO / Humpty Dumpty
05. PAUL HUMPHREY / Do The Buzzard
06. LEMURIA / Hunk Of Heaven
07. BILLY WOOTEN / Chicango (Chicago Land)
08. WENDELL HARRISON / Farewell To The Welfare
09. MANFREDO FEST / Arigo
10. LES DEMERLE / Underground
11. PLACEBO / Bolkwush
12. JAZZBERRY PATCH / Jazzberry Patch
13. SOUNDS OF THE CITY EXPERIENCE / Getting Down
14. MANFREDO FEST / Jungle Kitten
15. IVAN BOOGALOO JOE JONES / Confusion
16. LES DEMERLE / Aquarius
17. HOT CHOCOLATE / What You Want To Do
18. THE WOODEN GLASS featuring BILLY WOOTEN /Monkey Hips & Rice
19. BOBBY COLE / A Perfect Day
20. ROY PORTER SOUND MACHINE /Out On The Town Tonight

 いまやヒップホップのみならず、ファンクやレアグルーヴ、そして、和モノDJとしても活動し、ファンですらBuddha Brandとしての活動を忘れてしまうほどに、DJとしての圧倒的な存在感を見せつけているD.Lが老舗レーベル〈Pヴァイン〉と組んで、今冬、ミックスCD『FREEDOM JAZZ FUNK』をリリースした。「Everything I Dig Gonna Be Funky」=俺のディグったものすべてがファンキーになるとの副題のついたこのCDは、〈Pヴァイン〉が誇る極上の音源をミックスしたというだけにとどまらない、D.Lにしか生み出せない太くファンキーなグルーヴに溢れた特別なものに仕上がった。ヒップホップやレアグルーヴ、フリーソウルのリスナーにはおなじみの名曲たちがD.Lの手により、そのイメージを一新しかねないほどのサウンドを手に入れている。4月、その第2弾となる『FREEDOM JAZZ FUNK “Mellow Storm”』がリリースされるのを目前に、まずは“Everything I Dig Gonna Be Funky”と刻まれたこの驚くべきミックスCDについてじっくり話をきいた。

■D.L / ディー・エル
Illmatic Buddha M.C's、Buddha Brandのキーマンとして90年代の日本のヒップホップ・シーンに旋風を巻き起こす。2005年の改名以前はDev Large名義でMC、プロデューサー、DJ、執筆業など多岐にわたる分野で活躍。レコードディガーとしても定評があり、ヒップホップはもちろん、Soul、Funk、Jazz、Rock、日本の歌謡曲まで貪欲にレコード探求を続ける。

フリーダム・ジャズ・ファンクっていう言葉が浮かんできて、じゃこれで作ろうって感じになってって。

柳樂:まずこれはどういうコンセプトで作られたのかっていうところから、はじめてもいいですか。

D.L:気づいたら、こうなっていました。コンセプトは無かったんです。無かったっていうか、いろいろ緻密に、どういうのにしようか、こういう楽曲があるよ、こんなのもあるよみたいなことを言ってるときに、フリーダム・ジャズ・ファンクっていう言葉が浮かんできて、じゃこれで作ろうって感じになってって。曲ありきで、曲からいろいろこうイマジネーションが膨らんでった感じなんです。

柳樂:たとえば、キーとなる曲はどういう曲ですか?

D.L:もともとビリー・ウッテン(Billy Wooten)の“イン・ザ・レイン”を入れたかったんですよ。“イン・ザ・レイン”をいちばん最後に入れようみたいな感じで。でも、もうそれ無くなっちゃったんで、次の作品に入れると思うんですけど、このアルバムで言うとやっぱプラシーボ(Placebo)とレス・デマール(Les Demerle)、そうだな、そのへんが、すごく絶対入れたいものだなって。やっぱり最初の4、5曲めくらいの間に入れて、試聴機にかかったときにそこで引っかかるようなものになったらいいなと思ってたんです。

柳樂:プラシーボが3曲で、レス・デマールが4曲入ってますもんね。

D.L:そうなんです。この2組をピックアップしたかったんです。あとアイヴァン・ブーガルー・ジョー・ジョーンズ(Ivan Boogaloo Joe Jones)のこの“コンフュージョン(Confusion)”とか、ジャズベリー・パッチ(Jazzberry Patch)とか、そのへんのジャズ色が強いと思ってるんで。

柳樂:このミックスCDを何回も繰り返し聴いたんですけど、とくにびっくりしたのがレムリア(Lemuria)で、ぜんぜんイメージが違いますね。

D.L:あーそうですね、たしかに。

柳樂:D.L.さんの昔のインタヴューで「メロディアスで軽くないやつがいい」とかって、そういう軽くなくてファンキーでちょっと重いものが好きだみたいな話をされているんですよ。でも、レムリアって軽くてメロウな印象があったんですけど、ここに入っているレムリアはまったく印象が違ってて。だから、「こんなんだったっけ?」と思って何回も聴いたんですけど。プラシーボとかもそうですね。今回この並びで、このミックスでぜんぜん曲の印象が変わったのかなと。どういうイメージで作ったんですか?

D.L:最初から最後までだーっと行っちゃうのもおもしろくないので、2ヵ所か3ヵ所、パッと変えるところを作ろうと思って入れたのがレムリアと、マンフレッド・フェスト(Manfred Fest)。そこがすごい変わるところだったんですよね。あと、なんて言うのかな。これはあくまでも〈Pヴァイン〉が持ってるグレートな音楽の中で作った74分20曲っていう感じなんで、たぶんいつも出してる自分のミックスCDのときは、もっと究極にどういう音を出したいかっていうところで引っ張ってくるので、そういった意味でちょっとは違うかもしれないですね。もしかするとレムリアはこの選曲には、自分の『ゲットー・ファンク(Ghetto Funk)』シリーズだったら入らなかったかもしれない。
あと個人的に思ったのがやっぱり1曲目のこれ(“ア・デイ・イン・ザ・ライフ(A Day In The Life)”を死ぬほど聴いてたんですけど、具体的にこの作業に入るまで、作曲者がジョン・レノンとポール・マッカートニーだなんてぜんぜん知らなくて、これはすごいびっくりしましたね。たぶんそう思ってる人も多いんじゃないかな。まだ原曲は聴いてないんだけど、ジョン・レノンとポール・マッカートニーの。どういうものなのか。ただ、こっちのこればっかり聴いてるから、あの、たぶんわかんないだろうな、原曲聴いたとき。そんな気がしますね。

柳樂:ちなみに、このへんのレス・デマールとかプラシーボとかって、なんかサンプリングとかもされてるんですか?

D.L:自分は、してないです。

柳樂:ご自分でサンプリングネタとして使われる曲とかも入ってるんですか?

D.L:いや、あのね、いっつもそうなんですけど、なるべく使った後に入れるかなんかで、使おうと思ってるのは入れないときが多かったですね、いままで。〈ビクター〉で、前に2枚ほどやったのがあるけど、あれも使おうと思ってるのは入れなかったです。

柳樂:普段のDJで使う曲が多いですか?

D.L:ぜんぜん多いですね。都内でやるときはかけてます。最近は、地方に行くときは和モノの、頭のおかしいムード歌謡しかかけないで45分とか1時間半とかなんで。

柳樂:D.L.さんいま和モノですよね。このあいだディスクユニオンの和モノのセールで整理券1番だったらしいですね? 並んでるんだいまだにって思って。

D.L:でも、もっとすごい人たちがいますよ。DJじゃない、一般のおじさん。50いくつだって言ってたけど、ずーっと高校生のときに聴いてた昭和40何年の音楽を聴いてるって人。あそこ行きました? 新宿の昭和歌謡館(ディスクユニオン)。

これ、全部■■■■にしてるんですよ。

柳樂:行きましたよ。

D.L:異常ですよね。入った瞬間から。

柳樂:階段から異常ですよね。

D.L:うん、そうそう。

柳樂:いま和モノがいちばんやばいですもんね。

D.L:やばいですね。だからおれ和モノのコンピもやりたいんだよね。めちゃくちゃかっこいいのあるから。名盤解放同盟とか、〈Pヴァイン〉から出てたやつはCDも廃盤で高いんですよね。やりたいなぁ。

柳樂:ははは。僕もしばらくD.L=和モノっていうイメージがあったので、今回のジャズ・ファンクのミックスCDは逆に新鮮でしたね。

D.L:そうですね。こういうのも普通に聴くんですけどね。

柳樂:でもずっと和モノでまぁかなりプレイされて、けっこう長いじゃないですか。なんか和モノずっとかけてきて、逆にそれでこういうレアグルーヴの掛け方が変わったり、発見があったりみたいのってあります? ちょっと変わり種のジャズ・ファンクみたいなのも多いじゃないですか。プラシーボみたいなのも。

D.L:そうですね。

柳樂:そのへんって、カウント・バッファローズ感っていうか猪俣猛感っていうか、石川晶感っていうか。そういう普通のUSのジャズ・ファンクと違う感じのグルーヴみたいなものが、このミックスにはあるのかなっていうのを感じたんですよ。

D.L:たしかに、そうですね。プラシーボというよりも、マーク・ムーラン(Marc Moulin)とか変なのいっぱい入ってるじゃないですか。あっちから聴いてからプラシーボに行ったほうなんで、自分のDJではよくありがちなメインストリームのジャズ・ファンクとか70年代のUSモノじゃない感じは、モロしてましたね。そういった意味でカウント・バッファローズとかめちゃくちゃなことしてるから好きなんですけど、ある種似たものを感じていたと言えばそうですね。

柳樂:なんかその感じなのかわかんないですけど、ザラザラした感じっていうか、ちょっとアンダーグラウンド感って言ったら違うかもしれないですけど、すごい太くて尖った感じがあって。全体的に。

D.L:これ、そうとうやばいミックスしてるよね。もうほとんどヒップホップなんですよ。楽曲は全部ジャズだけど。あと、これ、全部■■■■にしてるんですよ。

柳樂:!?

D.L:●●●●した上で■■■■■ってて。だからよく言われるんですよ。なんか太いですよね、あんな太かったっけなぁって。

柳樂:なるほどね、なんか音がすごいなと……

D.L:いままでありがちだった作り方のミックスCDではないんですよ。なんでそうなったかっていうと、MUROのやつ聴いたんですけど、すごい良かったんで、自分のはもっとアンダーグラウンドにできないかなっていうのがあって。

柳樂:そうですよね。だから僕がいちばん聴きたかったのは、レムリアとボビー・コール(Bobby Cole)が、そんな曲じゃなかったじゃんっていうことなんですよ。ボビー・コールはなんか、こういうミックスCDに入る感じの曲じゃないじゃないですよね、どちらかというとフリー・ソウル系で、もうちょっとライトな、爽やかな。

D.L:そうですね。

柳樂:だけどすげー粗いし音も太いし、これどうなってんだろうって思って。どういうミキサーをどういじったらこうなるんだろうなって思って。

D.L:じつはそういう強い▲▲▲▲▲になってるんですよ。だいたいいままで『ゲットー・ファンク』みたいなミックスCD って3日かかったのはほとんどないんですよ。これは全部合わすと5日くらいいってるかな。

いままで『ゲットー・ファンク』みたいなミックスCD って3日かかったのはほとんどないんですよ。これは全部合わすと5日くらいいってるかな。

柳樂:でもいままでそんなやり方したことないですよね。『ゲットー・ファンク』とか『テキサス・デス・ロック(Texas Death Rock)』とかでも。

D.L:そうですね。毎回こんなすごいのできればいいんですけどね。でも悲しいのは、誰も知らないんですよ。こんなすごいことをやってるって。もしかしたら音がちょっと怪しいなって思ってても、まさかここまで絵を描いてこうなんだなって思う人はいないんで。

柳樂:すごいなぁ……

D.L:このCDに入っても入らなくてもいいんですけど、■■■■を作ってもらうときに、その■■■■が変わる瞬間に、前のDJがいて後ろの前のレコードをひねりつぶすくらいズドンとくるつくりにしてくださいと言うんですよ。だからその、どの状態でもどこに行っても、誰の順番の後でも先でも、あ、絶対この曲かかっちゃうと前の人がかわいそうだなとか後の人かっこつかないだろうなっていう作りにしてくれってよく言います。だから全曲そういう感じになってるんです、本当に。

柳樂:たとえばそれはどういうところだったりします?

D.L:太いとこですね。いちばん太いところさらに太く。ちょっと困っちゃうのは、実際たとえばプラシーボの“ハンプティ・ダンプティ(Humpty Dumpty)”、これとか、なんて言うのかな。■■■■のほうがすごい太すぎるので、アルバムで▽▽▽▽▽▽▽の方をかける前に俺のをかけちゃうと▽▽▽▽▽▽▽のほうがつぶれちゃう感じになっちゃうんですよ、すごすぎて。すごいイコライジングしてもなかなか合わないものになってしまってて、最近出た■■■■に対して、やりすぎると困っちゃうななんて。かけれなくなっちゃって。それはもう、また▽▽▽▽▽▽▽のやつを■■■■作ろうかななんて思ってるんですけどね。

柳樂:ちなみにこれまではどうしてたんですか?

D.L:まぁ普通にできる範囲でちょろっとイコライザーとかいじるくらいで、他にできることは無かったと思いますね。

柳樂:じゃあ本当にそれですごい変わったんですね。

D.L:そうですね。あの、たとえば、うーんどうだろうな。クボタタケシってわかります? あいつとか、あの、DJのときにCDも多用するんで、たとえば坪井くん(illicit tsuboi)が作った曲とかもいつもヘビー・ローテションで入ってて、ああいう感じでそういうプレイをする人は、自分で加工したものを自分リミックスでかけるんでしょうけど、俺はそういうのやらなかったから。DJ Krushとか(DJ シャドウの)“オルガン・ドナー(Organ Donor)”の、すごい、もうなんだろうな、空爆にあってしまったようなすごいドラムのやつかけてて、こういうのいいな、なんて昔思ってたんですけど、まぁ、ああいうのを、こんどはいいなって思うんじゃなくて■■■■でかけちゃおうかなとか思ってるんですけど、なんかそういうことができたらいいな。

細かく叩くとすごい埃が出てくる危ないミックスCDです。

柳樂:じゃあ、でもご自分でDJするときのためにリミックスとかはされない?

D.L:ぜんぜんしなかったですね。あ、でも、■■■■作って以降は、いろいろ出てないのをやってるんだけど。KrushさんがMUROとやってる、“チェイン・ギャング(Chain Gang)”って曲、■■■■にしたから、よくかけてますね。

柳樂:そっか、ずっとプレイは基本■■■■ですもんね。

D.L:そうですね。あとそうだな、もっと本当はね、ちゃんとグルーヴよりのものをやりたいって考えたときもあったんだけどね、なんて言うのかな。MUROがやったフリー・ソウルのやつにけっこうもう好きなのが入っちゃってて、何曲か、2曲くらい、被ってるのあるかもしれないけど、あまりに向こうと合うともう意味ないから、そういうのはあえてやめようって入れなかったんですけど。あれはもうすごいいい選曲で、むちゃくちゃ、さすがだよな……

柳樂:MUROさんを意識してたんですね(笑)。

D.L:普通に考えると、あのキング(・オブ・ディギン)が3枚出した後に俺がやると人気ないなで終わっちゃうのかも知れないけど。けっこう、もうすごいガチガチかっこいい曲入ってるから、MUROがやると。だからハチマキしましたね、心で。それで、こういうものができたって感じですね。買える人はこの時期タワーで買えるから、逃さないでくれと言いたいんですね。こういうのなかなか作らないと思うから。

柳樂:そうですよね。

D.L:細かく叩くとすごい埃が出てくる危ないミックスCDです。あ、それちょっとかっこいいね。

柳樂:ははは。ザラッとしててちょっとスモーキーな感じで。

D.L:はい、そういう感じもありつつ。買ったリスナーの方は自分で叩いて埃を出してくださいと。

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あのね、すごい好きなのはね、また〈グルーヴ・マーチャント〉ですけど、なんかいちばん最初に浮かぶのはいつもそれなんですけど、

D.L: そういえば、ぜんぜん話が違うんですけど、びっくりするくらいすごい女の子がいるんですよ、ヤマハのエレクトーン・コンクールに出た女の子が、ビリー・ウッテン(Billy Wooten)の曲を弾いたんですよ。ビリー・ウッテンがその子のすごいプレイをYoutubeで見て驚いたっていう。俺はこの子をプロデュースしたいなって思ったんですよね、連絡とって。ジャズの曲だけどヒップホップ的アレンジで何か足してって何かやりたいなと。

柳樂:これ、すごいっすね。

D.L:こんな女の子が。しかもこの曲だもんね。音なりだすと、凍っちゃうくらいすごい。

柳樂:上原ひろみだってヤマハのコンクールがはじまりですもんね。

D.L:この人と、なんかできないかな。

柳樂:それ最高じゃないですか。

D.L:連絡つかないかな。このYoutubeに上げてるのがたぶんお母さんなんですよね。アカウント名がそんな感じで。それでメール送ってみたんですけど、返事こないですね。見てないっぽいなと。

柳樂:ヴィジュアル的にもおもしろかったですもんね。エレクトーンだから、めっちゃ足踏んでるし。そもそもコンクールの雰囲気が、何も期待させない感じがいいですよね(笑)。

D.L:そう、逆にね、なんだよすごいじゃんって気になっちゃうもんね。まったく期待させないあの感じ。

柳樂:のど自慢大会で突然フリースタイルはじめるみたいな感じですもんね。突然何か起きちゃったみたいな感じで。これは、ここで呼びかけましょう!
ちなみになんか、ジャズで好きな曲を3つ挙げるとどんな感じですか?

D.L:あのね、すごい好きなのはね、また〈グルーヴ・マーチャント〉ですけど、なんかいちばん最初に浮かぶのはいつもそれなんですけど、あの、オドネル・リーヴィ(O'donel Levy)『ブリーディング・オブ・マインド(Breeding Of Mind)』に入ってる“ウィーヴ・オンリー・ジャスト・ビガン(We've Only Just Begun)”。ピート・ロックが使ってたけど、あれすごい好きですね。うーん、なんだろう、あ、ボビー・ハッチャーソン(Bobby Hutcherson) “レイン・エヴリィ・サーズデイ(Rain Every Thursday)”。ドーナツ盤が、めちゃくちゃ太いんですよ。70年代に出てるのにありえないくらい太くて、で昔からかけてたんですけど、これすごい好きですね。あとなんだろう。あれはもしかしたらジャズ・ファンク、ジャズじゃないかもしれないけど、“ザ・ダーケスト・オブ・ライト(The Darkest Of Light)”、“ラファイエット・アフロ・ロック・バンド(Lafayette Afro Rock Band)”の。すごい好きですね。

柳樂:やっぱヒップホップなセレクトですね。最近のジャズで好きなバンドいたりしますか?

D.L:そういえば、レコードで買ってそれいまだにかけてるんだけど、日本のジャズバンドで、ベースがすごい太くて、なんだっけな、あのグループ。大阪のグループで……4年くらい前に買ったんですよ。ヴィレッジヴァンガードの、イチオシみたいな感じでしたね。アナログは限定でネットで売ってて、普通のとこでは売ってなくてそこで買ったんだけど、それすごいかっこいいんですよね。

柳樂:Indigo Jam Unit(インディゴ・ジャム・ユニット)?

D.L:そう。かっこいいんですよ。ベースが効いててすごいかっこいい音してて。一回観に行きたいなって思ってるんだけどね。

柳樂:Indigo Jam Unitって、年齢的には普通にBUDDHA BRANDとか聴いてたりしそうですよね。

D.L:そうなんですかね。

柳樂:たぶん。僕もそうですけど、世代的に先にヒップホップがあってからジャズじゃないですか。たとえば、アメリカのジャズ・ミュージシャンでもいまはピート・ロックが好きとか、もうそういうやつらばっかりで。

D.L:あ、そうなんだ。

柳樂:ロバート・グラスパーとかだと、「いまのジャズ・ミュージシャンにどういう音楽聴けばいいかレコメンドしてくれ」って言うと、「J・ディラ全部と、スラム・ヴィレッジ!」とかそんな感じ。みんなヒップホップを子どもの頃に聴いてて、で大人になってから学校行ってジャズ勉強して、でそのあとジャズやりながらヒップホップっぽい音楽もやってるみたいなやつがすごい多くて。たぶん日本だったら、リスナーとしてMUROさんとかD.LさんとかのそういうミックスCDも聴いてて、いまはジャズもやって、みたいなそういう人、絶対多いですよ。黒田卓也さんって世界的なトランペッターがいるんですけど、彼はDJスピナがすごい好きで、とりあえずアメリカ行ったときに、ニューヨークで、スピナのイベントがあったから行ったとか言ってましたよ。

D.L:そうなんだ。みんな影響うけてるんですね、ヒップホップに。

柳樂:だからジャズ・ミュージシャンとかで人間発電所聴いてましたとか、自分でアルバム作って最後にD.Lリミックス入れたりとかそういうやつ絶対いますよ。

D.L: 機会があればやりたいなぁ。

柳樂:しかし、Indigo Jam Unitとかも普通にチェックしてるのが、すごいっす。

ロックは10年以上ずっと、いつかこの俺がデスロックって呼んでるジャンルをフリー・ソウルみたいにしてやるって思ってたんですよ。

D.L:ヴィレッジヴァンガードに行って、あれ、なんだこのベースって言って、ちょっと待ってってずーと聴いてて、あ、もうやばい買ってくって言って。最初、しょうがないからCD買ったんですよ。それで、読んだら郵便でレコード買えるって言うんで、なんだそっちも買うハメになるじゃないかよって言ってる間に買って、CDはもうあんまり聴いてないんですけど、レコードばっかり聴いて。両方買っちゃいました。

柳樂:どん欲だなぁ。和モノとファンク以外だとどういうの買います? いまだにいろんなジャンル買う感じですか?

D.L:買います。でもね、昔は「曲作ろう」と思って買ってたんで、このエレピのこの音が好きとかこのドラムが好きとかそういう感じで買ってたんで、そういう使わないレコードがどんどん増えてって、これはドラムのハコ、これはベースのハコ、これはシンセのハコって、ぜんぜん曲なんて作りやしないから、もうそういう買い方やめよっかなって。作ろうと思えばすごいの作れるんだけど、出すタイミングが時代が変わってきちゃって、90年代頭とか、いま買っとけば、あとで曲出してリクープできるとか思ってたけど、もう絶対できないんで。だから、うーんダメだなぁってなってきちゃって。

柳樂:それ、やばいネタだけ貯まってるっていうことですか?

D.L:うーんそうなんだよね。ぜんぜん使わなくなっちゃってるからね。いちばんそれで使わなくなっちゃっててやばくてやろうとしてるのが、ロックですね。もうロックは10年以上ずっと、いつかこの俺がデスロックって呼んでるジャンルをフリー・ソウルみたいにしてやるって思ってたんですよ。キーボードがよく聴こえるとか、ブレイクが多めとか、ファンキーに聴こえるとか、そういうのデスロックって呼んじゃってます。

柳樂:そっか、ロックのミックスCD出してますもんね。

D.L:あ、そういえば、俺、メタルのDJもやるんですよ。

柳樂:マジっすか。それは、どういう……?

D.L:それはね、年に2回か3回やってる……。

柳樂:どこでやるんですか。

D.L:〈Organ Bar〉です。

柳樂:へー。

D.L:クボタタケシもいっしょに回してますね、メタルを。あと近藤くんっていうデザイナーの。BB、えーとブラックベルトジョーンズDCっていうんですけど。BBJDCかな。あと、ファンクのDJの黒田さん。黒田さんは、ドーナツ盤でメタルを集めてるんですよ。だからドーナツ盤でメタルをかけるの。

メタルはメタルのマナーに則ってメタルの人になりきって当時の熱さを思い出すみたいなのじゃないと意味ないんで。

柳樂:メタルは何が好きなんですか。

D.L:俺が担当するのは、ジャパニーズ・メタルの時間って感じで、Loudness(ラウドネス)とか44 Magnum(44マグナム)とかEarthshaker(アースシェイカー)とか、いろんなそういう、恥ずかしいものをかけるのが大好きなんですよ。

柳樂:それを、ヒップホップっぽい感じで繋ぐんですか?

D.L:いやクボタはね、すごいヒップホップっぽくかけるんですよ。ビッグビート2枚がけとか。そういうのつまんないから俺は違うんですけどね。メタルはメタルのマナーに則ってメタルの人になりきって当時の熱さを思い出すみたいなのじゃないと意味ないんで。

柳樂:メタル・マナーのDJってどういうスタイルなんですか。

D.L:いや、高校くらいのときは、藤沢のギター・クリニック・スクールに44 Magnumの人が来てて、そのギターを観に行ったりしてた頃の視線でかけますね。その頃の視点でディープ・パープルをかけるとか、オジー・オズボーンをかけるとか、そういう感じですね。

柳樂:やっぱギターを大事にする感じで。

D.L:そうですね。

柳樂:そこやっぱ太いとかじゃないんですね。

D.L:違いますね。うるさいって感じですね。ギターをうるさく。

柳樂:ラウドな感じで。

D.L:そうですね、そうなんですよ。ほんとみんなそこですね。黒田さんもそうなんだけど、高校くらい……ヘビメタ・ブームだったときに、聴いてたメタルを俺たちがかけるみたいな感じで。30年振りにみたいな。

柳樂:メタルはメタル・マナーでかけるって発言やばいですね。かっこいい。

D.L:ダメなんだよ、メタルなのにヒップホップ的にかけちゃうのって。トリックとかやっちゃうんだよ、メタルで。ガーチキチキ、ガーチキチキとか。ぜんぜんダメで。そういうのはやっちゃダメなの。すごい上手くても、ヒップホップを通った人がやるメタルと違うんで。ヒップホップが無かった頃から最初にメタル聴いてた人たちは。

“ウォーク・ディス・ウェイ”とか。なんだろね、偽物っぽく聴こえてた。どっちかっていうと“ロック・ボックス”のほうがもっとロックだった。

柳樂:やっぱもとは当時普通に流行ってたメタルとかがお好きで?

D.L:そうですね。トップ40系から入ってメタル行って。アメリカ行って最初に、アメリカン・トップ40とかヘビメタが流行ってましたね。LAメタルとか。それが93年、4年くらいで、その時にもうランDMCの“サッカー・M.C.’s(Sucker M.C.'s)”とか出ちゃったから、並行して聴くようになって、それ以降、そっちばっか聴くようになって。だからメタルのほうが先でしたね、じつは。

柳樂:そういう話を聞くと、“ウォーク・ディス・ウェイ(Walk This Way)”でエアロスミスとランDMCが共演した時代のことも納得できますよね。

D.L:そうですね。あの頃はぜんぜんよく聴こえなかったんですけど、“ウォーク・ディス・ウェイ”とか。なんだろね、偽物っぽく聴こえてた。どっちかっていうと“ロック・ボックス”のほうがもっとロックだった。エディ・マルティネス(Eddie Martinez)のギターのソロが入ってて。あれはロックだと思ったけど。ビースティ・ボーイズがきて、なんかアリだなって思いましたね。レッド・ツェッペリン使ってたり。あと“ファイト・フォー・ユア・ライト(Fight For Your Right)”。どっちかっていうとロックの曲に聴こえちゃった、ラップの曲よりも。あれがすごい開いた感じですよね。

柳樂:やっぱビースティってけっこう衝撃的だったんですね。

D.L:もうニューヨークにいて、白人と思えないくらいレッド・アラート(DJ Red Alert)もみんなかけてましたね。あれはたぶん、ラッシュの力でしょうけど。ランDMCとマンツーマンでライブをやらせたり、ラジオとかも回ってたみたいだから、すごい、“ホールド・イット・ナウ、ヒット・イット(Hold It Now, Hit It)”っていう曲があるでしょ。「ホールドナウホールドナウ」っていう。あれがもう、ランDMCの“ヒット・イット・ラン(Hit It Run)”と“ホールド・イット・ナウ”が、五分五分のタイミングで必ずローテションで組まれてて、すごい流行ってましたね。『レイジング・ヘル(Raising Hell)』もすごい売れてたけど、だんだんビースティの『ライセンスト・トゥ・イル(Licensed To Ill)』のほうがすごい人気になっちゃって。でも、俺たちはそのへんの曲にはあんま反応しなくて、俺たちが反応してたのは、“スロウ・アンド・ロウ(Slow And Low)”でしたね。たぶん80くらいしかないピッチの。ウォーーーっていう、「let it go, let yourself go」っていうあのやつですね。あれをラジオだとWBSより、Kiss FMよりもっとちっちゃいWNEWっていう小さいラジオ局があって、そこのGhetto DJみたいなやつがいて、ナイス&スムース(Nice & Smooth)のアルバムをプロデュースしたオウサム2(Awesome 2)なんですけど、そいつらがかけてるすごい人気ないラジオ番組があって、夜中2時からやってて、そこでそれがかかってて、それを毎週みんなチェックしてたんですよ。ビースティはそっちだなって感じでやってて。

柳樂:小さい番組はやっぱりそういうディープな曲を。

D.L:そうなんですよ。あともう1つ、DNA&ハンクラヴっていうDJの番組があって。そっちはね、ウルトラ・マグネティックMC’s(Ultramagnetic MC's)のいちばん最初のシングルをリリースしてる会社をやってたんですよ、DNAインターナショナルって。そこでは、「あのpeter piper picked papersって言ってる曲聴いたか、あんなのワックだぜ」ってランDMCの“ピーター・パイパー(Peter Piper)”をディスってる曲があって、それをかけてて。自分たちもそのほうがかっこいいなって思ってて、でも世の中はもう間違いなくランDMCを推してるんですよ。確実にランDMCが8:2くらいで優勢なんだけど、その2くらいのもわもわってしてる人たちはそっちのラジオを聴いて、絶対いいこっちのほうがいいって言ってた、そんな感じでしたね。

〈プロファイル〉が実際とてつもない、〈デフジャム〉なんかよりビッグなレーベルだったって知らないと思うんですよね。

柳樂:その頃いちばん好きなヒップホップって何でした?

D.L:ヒップホップで、なにかな。〈プロファイル(Profile)〉がすごい流行ってたんですよ。プロファイルっていうレーベル。だから〈プロファイル〉系のものはすごい好きでしたね。ぜんぜん流行ってなかったけど俺が好きだったのはドクター・ジキル&ミスター・ハイド(Dr.Jeckyll & Mr.Hyde)の“ファースト・ライフ(First Life)”って曲とか、あとディスコ・フォー(Disco Four)。ディスコ・フォーはね、何のため、why、was I born、nah mean、ガキの頃からのクエスション、なんだっけなあの曲。それで使ってる曲なんだけど、“ザ・キング・オブ・ヒップホップ(The King Of Hip Hop)”って曲。〈プロファイル〉ばっかり聴いてましたね。

柳樂:D.Lさんに〈プロファイル〉のイメージってあんまないですね。

D.L:あの、なんて言うのかな。いま日本にいる人、あの頃18くらいだった人はいま40いくつだろうけど、そのときニューヨークに住んでなかったんで、たぶん、〈プロファイル〉が実際とてつもない、〈デフジャム〉なんかよりビッグなレーベルだったって知らないと思うんですよね。すごい、毎週ラジオからかかる新曲のやばいのって〈プロファイル〉だったんで。渋谷の、いまもうなくなっちゃったけど、駅降りるとフリーマーケットみたいになってたんですよ、昔。そこでニューヨークのラジオを誰かがたぶん送って、それを日本でダビングして売ってたんですよ。今日はWBS、来週はKissのとか、日付違いで、けっこう何十本もあって、わけのわかんない人がやってたんですよ。そういうので聴いてたら多少はわかるけど、そういうので聴いてなかったらほとんど入らないから、〈プロファイル〉がすごい流行ってたのはたぶん知らないと思うんですよね。〈スリーピング・バッグ(Sleeping Bag)〉とかもすごい流行ってたし、ジャンパー作るくらい流行ってたし、なんて言うのかな、その時期そのタイミングで、ピークだったように見えるレーベルっていっぱいあるんですよね。〈ワイルド・ピッチ(Wild Pitch)〉もそうだし。

柳樂:へー。

D.L:これあの、ぜんぜんこの話と違うんだけど、ウルトラマグネティックMC’sの〈ワイルド・ピッチ〉の“トゥー・ブラザーズ・ウィズ・チェックス(Two Brothers With Checks)”のときに、日本におれ、ウルトラ呼ぼうと思って仲良くなってて、そのビデオの中に出てるんですよ。野球やるシーンで、〈ワイルド・ピッチ〉の社長と奥さんと息子と。で、1人足りなかったんでおれが入って、ホームベースのところで、一塁はこの人、二塁はこの人、三塁はこの人、ホームベースはこの人みたいな感じで、そこで野球っぽいことをやってるシーンがあるんだけど、そういうのちょっと出てる。
まぁ、いま何を言おうとしたかって言うと、〈ワイルド・ピッチ〉もいまもう無いし、本当にあったのってくらい誰も覚えてない、何でもないレーベルなんですけど、当時は、あの、宣伝にTシャツを作って配ってたり、宣伝用のレコードジャケットのサイズの段ボールを道路脇の柱にホッチキスで止めたりして、ビギーの宣伝だぜみたいにやったり、ストリート・プロモーションみたいなことやってたんですよ。で、俺たちみたいなのは、それを剥がして持って帰っちゃうみたいな(笑)。日本ではレーベルもあんまそういうことやんないなって帰ってから思ったけど、あっちではしょっちゅうやってましたね。
ステッカーがあとすごいいっぱいあって、もう、もちろんそれはもう〈ワイルド・ピッチ〉も〈プロファイル〉も〈デフジャム〉もどこでもそうなんだけど、なんで12インチの宣伝ごときにこんな2パターンも3パターンもステッカー作っちゃうのかなって、わけんねーなってくらいいろんなステッカーを貼って、流行ってない頃から貼っちゃって、あたかもすごい流行ってるって勘違いさせながらラジオですごいプッシュするんで、それがすごい蔓延してく……みたいなやり方とか。(O.C.の)“タイムズ・アップ(Time's Up)”のときのステッカーもそうだけど──こういうなんか、手のやつなんですけど、それなんか流行る前からいろんなとこに貼ってあって、何なんだろうこれ「タイムズ・アップ」、時間だぜみたいなタイトルで何なんだろ何なんだろと思ってたらぐあーっと来て。そういうのやってましたね。すごいお金かけて、それがプロモーションになるのかわかんないけどやっちゃってましたね。

12インチの宣伝ごときにこんな2パターンも3パターンもステッカー作っちゃうのかなって、わけんねーなってくらいいろんなステッカーを貼って、

あと、渋谷のシスコの、当時プロモでがんがん売れるからどんどんプロモの12インチをとってくれとってくれってきてて、シスコのレコード送る担当やってたんだけど、当時のマンハッタンとかブルックリンとかクイーンズに、その街の、まぁなんて言うのかな、プロモ盤を一挙に握ってるような、怪しいガキとかが一杯いて、そいつらから2ドル50とかでプロ盤買えるんですけど、「4枚しか売っちゃダメだって言われてるから4枚しか売れないよ」って言ってるやつに「倍の5ドル出すから倍の10枚くれ」って言うとそいつらも金がないから「お前に売るけど内緒だぞ」みたいな感じで10枚くらい売ってくれるんですよ。でそれをシスコで日本に送って、クボタが日本で受け取ってニューヨークは俺がやるみたいな感じでずっとやってた時期があったんだけど、そういう感じで、お金を持ってるから日本人に売っちゃうっていうのはあんまりよくないけど、実際イギリス人と日本人しかがっつり買わなかったから、日本に流れた当時のプロモ盤っていうのはそういうふうにやってたんですよね。でそういうふうにプロモ盤をいっぱい持ってる彼らは、レコードも持ってるけど、そいつの家とかに行くとそれといっしょにステッカーを束でいっぱい持ってたんですよね、いろんなタイプの。それももらって日本に送っちゃってたんですけど、なんかね、プロモのやり方とか、昔はそんな感じだったんですよね。

柳樂:すげーなんかストリートの、地道なっていうか。

ある日、レコードを買いに行ってそのあと歩いてたらクール・キース(Kool Keith)がいて、電柱に登ってて、ウルトラ・マグネティックって書いてあるステッカーを貼ってて……一生懸命。

D.L:うん、本当そうだったね。もうストリートの地道のどうのこうのって話でいちばん狂ってるのが、ニューヨークで、ジャマイカ・アヴェニューっていうところがあって、クイーンズの。まぁジャマイカ人がけっこういてジャマイカの風俗とかもあったからそこはジャマイカ・アヴェニューって感じで呼んでたんだけど、そこである日、レコードを買いに行ってそのあと歩いてたらクール・キース(Kool Keith)がいて、電柱に登ってて、ウルトラ・マグネティックって書いてあるステッカーを貼ってて……一生懸命。何やってんだって言ったら、お前ジャパニーズだなって下りてきて、ぜんぜん面識ないのに「お前と俺はこうやってステッカー貼ってるときに会うから、女紹介してくれ」みたいな、すごすぎて(笑)。最初にクール・キースと話したのはそれだったんだよね。で、実際あの、“トゥー・ブラザーズ・ウィズ・チェックス”のビデオのときに、当時の、まだ誰も知らなかったウエダカオリと、●●の彼女だった人ふたりを連れてったんで、よく見るとライヴのシーンで日本人の女が二人いる。よく見るとカオリちゃんと、チッチっていう……。

柳樂:カオリちゃん?

D.L:DJ Kaoriです。日本人の女よんでくれって言われたから。そうそう。

柳樂:マジで。クール・キースが電柱登ってたってのもやばいですね。

D.L:登ってたし、他の、普通のプロモーションをやる子どもたちがステッカーを貼るかのように自分もやってたみたいな感じで。すごいですよ。そんなもんだったんですよね。やつらもきっと契約金とかもぽーんと入るんだろうけどすぐ使っちゃってぜんぜんお金なくなるから自分でそういうことやってるって感じで。

柳樂:へーすげー。そっちにいないと本当そんなのわかんないですもんね。

D.L:そうですね。

柳樂:すごいアンダーグラウンドだったんですね。

D.L:そうですね。そのビデオのときに、結局そのカットすごすぎて写んなかったんだけど、クール・キースがシマウマ柄の超ハイレグみたいになってる怪しいパンツはいて、背中にピンク色の空気ボンベみたいのしょってて、裸で変な帽子かぶって、すごい感じで出てきてライヴとかやったんだけど、あんまりかっこよくなかったんだよ、正直。で、そこカットされてたね。もう、ウルトラのメンバーもみんな凍っちゃってて。1人だけ、やっぱ狂ってるんだよね。

柳樂:狂ってますね

D.L:もうね、クール・キースはベルヴューっていう精神病院に入院してた時期があったり、頭おかしい時期があったんですよ。でも、日本に来たときも頭すげー悪くて。BUDDHA BRANDでクール・キースのオープニングみたいなライヴやったときが1回あって。ロックバンドの54-71のバックの演奏になぜかクール・キースが入るみたいなアルバムが出てて。そのときに、ポルノ映画ほしいから、ポルノ買いに行こうって言われて、それは付き合わなかったんだけど、子どもがミニカーを欲しいって言ってるから連れてってくれっていうんで中野のまんだらけに行ったんです。その時に、3000円くらいの、べつにそんな高くないミニカーをずーーっと30分くらい眺めててずーーっとなんか言ってて「これを買ってってやらないと、俺のポルノのお土産はけっこうあるから子どもに何も買ってかないと怒るから、買ってってやりたいけど俺はもっとポルノを買いたいからこれを買う自信はないなぁ」とかずっと言ってんだよ独り言。で、また買わずに他のとこぐるって回ってまたそこ戻ってまたこうやってこれを買わないとどーのこーのって、結局買わないで帰ったんだけど(笑)。やっぱ変態なんだよね。自分のポルノのお土産はけっこう買ってったのに、子ども用のお土産は結局買わなかったんだよ。

柳樂:狂ってますね

D.L:もっとすごいのがね、楽屋で俺と話してるときに、白人のアメリカ人の女がここにクール・キースいるからってのを聞きつけて楽屋に来て。俺はクール・キースと真剣な話してたんだけど、女が横に来てハーイって言いはじめたら、こっちで話してるのに、もう顔はほとんど女のほうばっか向いてて、だんだん話がつじつまが合わなくなってきて、もういつの間にか横に女が座ってきちゃって、もういいやインタヴューみたいな感じになっちゃって、いやインタヴューじゃないや、このビジネスのトークはまた今度にしよう、明日でもいいから。こっちが忙しくなったから、こっちでちょっと話するからみたいな感じになっちゃって。めちゃくちゃでしょ、これやっぱ変わってないな、昔のあーゆー感じで、色気違いだなって感じで……

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気づけば予定の時刻を超過していた。ミックスCDの話から、メタルDJ、そしてネットで見つけた新たな才能、アメリカでのヒップホップのプロモーションや親交のあったクール・キースの話まで、振れ幅の広い、ディープな話の連続だった。ちなみにここに掲載できた話題は半分にも満たない。いま、D.Lがとてつもなく危険なDJになっていることを我々の手ではここまでしかお伝えすることはできない。もし、そのさらなる答えが知りたければ、D.LのDJの現場に足を運んでほしい。そこにはファンク/レアグルーヴを自分の流儀でプレイするDJの究極の姿を見ることができるはずだ。

interview with Purity Ring - ele-king


Another Eternity - Purity Ring

ElectronicR&BDream Pop

Tower HMV Amazon iTunes

 デビュー・アルバムがリリースされ、フェス出演のためにはじめて来日したとき、彼らは近所の若い人か職場の後輩のような親しみやすさと素朴さをあふれさせていて、コリン・ロディックは「この服はミーガンの手作りなんだ」と黄色いズボンを示してみせた。このふたりがこの後〈フジロック(FUJI ROCK FESTIVAL)〉のステージに立つなど想像できない──つねにツアーの途上、というようなUSのインディ・アーティストたちのような活動とも異なり、本ユニットにおいてはベッドルームがとつぜんステージに直結してしまったというようなピュリティ・リングのたたずまいには、当時のドリーム・ポップの盛り上がりや、あるいはインターネットを前提とした音楽コミュニケーションを象徴するようなところがあった。

 ピュリティ・リング。カナダの男女デュオ。ネットで公開した音源が話題を集め、2012年に名門〈4AD〉からフル・アルバム『シュラインズ』をリリース。その後はレディ・ガガのオフィシャル・リミックスなど活動の幅が大きく広がった。同じくカナダのプロデューサーで〈4AD〉のレーベル・メイトでもあるグライムス(Grimes)にやや遅れるかたちで、しかしチルウェイヴやシューゲイズなど新しいサイケデリック・ミュージックの盛り上がりともシンクロしながら、同レーベルがふたたび輝いた時代を体現したユニットだ。
 それから約3年、今回取材に応じてくれたコリンの回答からは、純朴さや音楽に対する生真面目さは残しながらも、少しタフになった印象を受ける。新譜もまさにそんな印象だ。経験値の上がった無垢をどのように評価するか筆者には悩ましいところだが、『アナザー・エタニティ(Another Eternity)』はより多くの人に聴かれることになるだろう。

■Purity Ring / ピュリティ・リング
コリン・ロディック (Corin Roddick) とミーガン・ジェイムズ (Megan James)、カナダはハリファックス/モントリオールを拠点に活動する男女デュオ。ゴブル・ゴブル(現ボーン・ゴールド)のドラムとヴォーカルとして活動し、のちに独立して曲作りをはじめる。11年1月にインターネットで発表した音源が世界的な注目を浴び、英老舗レーベル〈4AD〉と契約、2012年7月『シュラインズ』で世界デビューを果たし、フジロック'12に出演のため初来日。ダニー・ブラウンやジョン・ホプキンスとの共演や、レディー・ガガの楽曲のオフィシャル・リミックスを行うなど精力的に活動。2015年3月にセカンド・アルバム『アナザー・エタニティ』がリリースされた。


俺もミーガンも映画を見たり本を読んだりはよくするし、テレビ・ゲームもする。あと、音楽を作る環境もよく変える(笑)。

ぐっとR&B色が強まりましたね。これは誰のアイディアなのでしょう?

コリン・ロディック(以下コリン):自分ではそんなこと考えなかったからさっぱり(笑)。最初のアルバムも、ドラムやプログラミング、使ったリズムのタイプとか、ヒップホップの要素はたくさんあったと思う。それとまったく同じリズムを使ったわけではないけど、今回のアルバムでもそういったリズムを使ってるから、そこかな? ニュー・アルバムではサウンドがもっとクリアになっているから、ヒップホップやR&Bの要素が前回よりもわかりやすくなっているんだと思う。自ら意識してR&B色を強めようとしたわけではないんだ。

あなたはもともとR&Bが好きでもあるんですよね。

コリン:そう。いろいろなタイプの音楽が好きだけど、その中でもR&Bはたくさん聴くよ。

その中でも自分の原点にあるような音楽とは?

コリン:うーん……難しい質問だな(苦笑)。パッとは思いつかないけど、お気に入りはジャネット・ジャクソン。だけってわけではないけど、彼女は王道だと思うし、素晴らしい作品をたくさん持ったアーティストだと思うから。

では次は、最近のR&Bで気になるものを教えてください。

コリン:そうだな……、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)のアルバムはいいと思った。前よりもポップになってはいたけど、まだまだR&Bだと思うし、去年の俺のお気に入りのアルバムのひとつ。今年はいいR&Bのアルバムがもっとたくさん出てくるんじゃないかな。

また、とくに今作についてつよい影響を与えるような体験や音楽、表現などはありましたか?

コリン:俺もミーガンも映画を見たり本を読んだりはよくするし、テレビ・ゲームもする。あと、音楽を作る環境もよく変える(笑)。だから、そういったいろいろなものから影響や刺激を自然と受けてるんだ。どうやってかはわからないけど、そのすべてが自然と自分たちの音楽に入ってくる。この音楽とかこの映画とか、ピンポイントでこれっていうのは説明できないけどね。意識はけっしてしてなくて、そういった日々のまわりにあるものが、自分の脳というフィルターを通して音に出てくるんだよ。

レディ・ガガのリミックスは、ガガさん本人があなたたちの音楽を気に入られたからですよね? 

コリン:ははは(笑)。そう思いたいけどね。俺たちのリミックスを気に入ったっていうのは実際に聴いたけど。あの経験はクールだった。リミックスのオファーが来たのは光栄だった。彼女は尊敬すべきアーティストだし、おもしろい音楽をたくさん作ってる。関わることができてハッピーだったね。

あなたたちのドリーミーで抽象的な音と、レディ・ガガさんのある意味では直接的な表現や音では、真逆ともいえる性質を持っていると思いますが、彼女の音楽を料理するにあたってどんなことを考えましたか?

コリン:俺のアプローチは、とにかく彼女のヴォーカルだけはキープして、そのまわりのものを剥ぎ取っていくというやり方だった。そこからまた自分で曲を再構築していきたいと思ったんだ。リミックスというより、自分のオリジナル・ヴァージョンを作る、みたいな感じ。新曲を作るみたいにね。それだけは取り掛かる前から決めていた。DJがプレイしたいような作品とか、普通のリミックスとか、そんなのはぜんぜん頭になかったんだ。だからあのリミックスは、レディ・ガガの作品にも聴こえるし、ピュリティ・リングのトラックにも聴こえると思う。

ご自分たちにはどんなことが求められていると思いましたか?

コリン:ぜんぜんわからなかった。何も言われなかったし、頼まれたってことは俺たちの音楽を気に入ってくれてるからなのかなってことくらいしかわからなかったね。彼女の音楽と俺たちの音楽に何か通じるものがあったのかもしれないし。いま振り返るとおもしろいな。あのリミックスをやったのは、『シュラインズ(Shrines)』(2012年、ファースト・アルバム)を完成させて、『アナザー・エタニティー(Another Eternity)』を作る前、つまりその二つの作品の中間地点だった。『シュラインズ』のサウンドには戻りたくないけど、同時にどんなサウンドを作りたいのかもわからないっていう、変な時期だったんだよね。自分の中で、いろいろと模索している時期だったんだ。

レディ・ガガの音楽は聴きます?

コリン:彼女の音楽は好きだよ。全曲ってわけではないけど。これはポップ・スター全員に言えることだと思う。いいヒットもあるし、あまり魅力的ではない曲もある。レディ・ガガのようなビッグなポップ・スターたちは、本当にたくさんの人たちと作業しているから、音楽がアルバムごとに、もっと言えばアルバムの中の曲ごとに変わってくる。サウンドの形が、誰と作業するかで変化するんだよね。だから、自分好みの曲とそうでないものが出てくるんだけど、俺自身が好きな彼女の曲は何度も聴いてるよ。

ジョン・ホプキンスとのコラボレーションもありました。こうした他のアーティストたちとの仕事や関わりは、あなたたちの存在感ばかりでなく、音にも影響を及ぼしたのではないかと思いますが、いかがでしょう?

コリン:ジョン・ホプキンスに関しては、最初に彼と仕事したのは『シュラインズ』の中の“Saltkin”っていう曲。あの曲のミックスをやっていたときに困ってしまって、彼に連絡をとって協力を頼んだら、彼も興味をもってくれていたからお願いすることにした。だから、あの曲だけが『シュラインズ』の中で自分がミックスしなかった曲なんだ。彼はあの曲におもしろい要素を加えてくれた。だからそこから彼と近くなって、またいっしょにやろうということになったんだ。ショーもいくつかいっしょにやったし、リミックスもしてくれたし、ミーガンも彼の曲で歌ったりして、彼とはけっこう関わってる。彼と俺たちっていうのは、クールなコンビネーションだと思うんだよね。彼のサウンドへの取り組み方は自分たちに合ってるし、これからも彼といろいろ作業していきたいと思ってる。彼は確実に俺たちのお気に入りのアーティストだし、メロディとサウンドデザイン両方で素晴らしい才能を持ったアーティストだから。

中にはインディをジャンルだと思ってる人もいるみたいだけど、俺はインディっていうサウンドはないと思う。サウンドはサウンドだから。

また、かつてふたりで小さな空間で作っていたような音楽といまの音楽の間にどのような差を感じますか?

コリン:どうだろう……。音楽がどこから来てるかっていう根本は変わらないと思う。前はベッドルームで、いまはビッグなスタジオで他のアーティストたちと共演したりしているけど、俺たちにとっては全部同じに感じるんだよね。サウンドがいまと昔でちがうのは当たり前だと思うし。アーティストとして自分たち自身も成長するし、自分たちをさまざまなやり方でより表現できるようになる。でも、結局それがどこから出てきているかっていうのは変わらないんだ。ファーストとセカンドでサウンドがちがっていたとしても、どちらが良くてどちらが良くないとか、そういうことは思わない。それは、自然な変化だと思うから。

「インディらしさ」というものをどんなものだと考えますか?

コリン:それは難しい質問だね。インディ=インディペンデントだから、やっぱり誰の力も借りず、全部自分たちでやるっていうことじゃない(笑)? そういう意味では、俺たちはインディじゃないと思う。レーベルもマネージャーもいるからね。俺たちのためにがんばってくれているチームがいるし、たくさんの人たちに協力してもらってるから。その中でも自分たちのやりたいことはやらせてもらっているけどね。でもおもしろいのは、俺たちのレーベルはメジャー・レーベルと見なされていないし、俺たちもインディ・アーティストと思われてるということ。でも俺自身は、自分たちをインディ・アーティストだとは思ってない(笑)。結局、あまりちがいはないんだと思うよ。中にはインディをジャンルだと思ってる人もいるみたいだけど、俺はインディっていうサウンドはないと思う。サウンドはサウンドだから。世の中には、本当に自分たちだけで何でもやっている真のインディ・アーティストもいるよね。俺が最初にバンドにいたときは、全部自分たちでやっていたから、当時は自分たちをインディ・アーティストって言ってた。でも、言葉そのものの意味を考えたらもうちがう(笑)。インディやメジャーかなんて、いまの時代誰も気にしてないんじゃない(笑)?

以前〈フジロック・フェスティヴァル〉で来日されたときは、手製のランタン型のシンセサイザーのようなものを使用されていたと思うのですが、そうしたD.I.Y.な方法は今作に何か反映されていますか?

コリン:DIYはつねに可能だと思うし、大切だと思う。前の『シュラインズ』のライヴ・ショーでは、照明とかカスタム楽器とか、すべてを自分たちで作った。あのランタンもそう。オンラインでオーダーして自分で作ったんだ(笑)。あれはかなりやりがいがあった。当時は自分たちしかいなかったからね。そういったDIY精神はつねに大切。いまはニュー・アルバムのショーを構成しているところなんだけど、ビッグ・スケールだから他の人たちにも手伝ってもらってるんだ。以前よりも忙しいのと、スケールが大きいぶん、自分たちよりもスキルがある人に任せたくて。それでもDIY精神はまだあって、すべてのプロセスに俺たちも関わっているし、アイディアは全部自分たちのもの。すべてを把握してるっていうのもDIYのひとつだと思うし、これからもずっと大切だと思う。今回のライヴは、また一から作ってるんだ。前回とコンセプトは似てるけど、スケールがこれまでにないくらい大きくなってる。いまはまだ準備中だけどね。

録音環境で前作ともっとも異なっていると感じるのはどのようなところですか?

コリン:録音環境ではあまりちがいは感じないけど、いちばんのちがいは音楽の書き方。前回はお互い別々の街に住んでたから、音を何度も送り合ってたんだ。でも新作では、ほとんど同じ部屋で作業することができた。だから、もっと結束力が強くなってる。その場ですぐにフィードバックを与え合ったり、いっしょに曲を書いたり。そのプロセスの変化は、ライティングへの意識を確実に変えたね。

次回もそのプロセスで?

コリン:同じスペースで仕事をするほうが確実に得だと思う。簡単だし、何かエキサイティングなことが起これば、それをそのまま捉えることができる。それって重要なことだと思うんだよね。もう遠距離で曲は作らないと思う。

リスナーとして他の音楽を聴いているときも、俺はあまり歌詞の内容に耳を傾けてない。気になるのは、音のトーンなんだよね。

“ビギン・アゲイン(begin again)”には月と地球の比喩が出てきますね。地球が女性側のことであるように感じられますが、地球=大地に母性のイメージをみているのでしょうか?

コリン:これはミーガンに訊いてくれる(笑)? 歌詞はすべて彼女が書いてるから。

わかりました(笑)。今作では何度か「地球」のモチーフがあらわれますし、前作にも共通することですが、あなたがたの詞には「世界」を歌う、スケールの大きいものが多いですね。そしてそうでありながらも、歌われているのは「あなた」と「わたし」の愛についてだけだとも言えるように思います。こうしたテーマはあなたがたの音楽にとって不可欠なものでしょうか? ……というのもミーガンにお訊ねしたほうがよさそうですね。

コリン:俺にはわからないな(笑)。これもミーガンに訊いた方がいい。

歌詞に関して、あなたが意見するときもあるんですか?

コリン:内容に関してはノー。でも、メロディに対して意見は言うよ。あと、歌詞の「サウンド」。この言葉の音はこのメロディには合わないんじゃない? とか。歌詞の内容じゃなくて、俺は言葉の音を気にするんだ。歌詞の意味に関しては、すべてミーガンの仕事だからね。

なるほど。歌詞の聴こえ方ということですよね? おもしろい。

コリン:そうそう。気づいたんだけど、リスナーとして他の音楽を聴いているときも、俺はあまり歌詞の内容に耳を傾けてない。気になるのは、音のトーンなんだよね。ヴォーカルと歌詞に関しては、そこにフォーカスするんだ。

今回の収録曲のそれぞれの長さについて、とくに意図したところはありますか?

コリン:曲はなるべく短くするようにしてる。4分以上の曲は個人的にあまり好きじゃなくて。自分が音楽を聴くときもそうなんだ。早くポイントに達する曲が好きだし、ずっとダラダラした音楽はあまり好きじゃない。だから、ベストは3、4分。それが俺にとっては自然なんだよね。作る時点で、長いものを編集して3、4分にするというよりは、いろいろな音を集めて一つにした時点でそれくらいの長さになってることのほうが多いんだ。

“アナザー・エタニティ”というのは現世を否定するような意味合いがありますか?

コリン:このアルバム・タイトルはアルバム内の“ビギン・アゲイン”っていう曲から来てるんだけど、その曲はアルバムの中間に収録された曲で、ある意味アルバムの中心なんだ。歌詞から来てるから、これもミーガンに訊いたほうがいい(笑)。俺にとっては、いろいろなことに対してオープンになって、ひとつひとつを冷静に考えると、物事はサイクルになっていて、あることが起これば次に何かが起こって、それがまた繰り返し起こるって感じがするんだけど……説明が難しいな。言葉では無理(笑)。

物事はサイクルになっていて、あることが起これば次に何かが起こって、それがまた繰り返し起こるって感じがする。

あなたがたの音楽は、非常にドラマチックでシネマティックなものだと思うのですが、この作品に音をつけてみたいというような映像作品はありますか?

コリン:実現できたらすっごくクールだね! 俺はSFや未来的な映画を見るのが好きだから、そういった作品のために音楽を作れたら最高。あとはヴィデオ・ゲームかな。俺の音楽の書き方もシネマティックだし、可能ではあると思う。俺たちの音楽は、3分間の音の旅みたいな、聴いていていろいろなエリアにワープできるような作品だから。いままで一度もそういう(映像に音をつける)経験をしたことがないから、いつか経験できるのがすごく楽しみ。

カナダではいまどんな音楽がおもしろいでしょう? また、あなた方自身は、UKとUSではどちらの音楽シーンに親和性を感じますか?

コリン:わからないな(笑)。ロックでも、メインストリームでも、ポップでも、アメリカで流行ってるものがカナダでも流行ってると思うよ。最近よく言われてるけど、俺もあまり場所で音楽を考えないタイプ。ジャンルもそう。シーンとかは意識してないし、いまはいろいろな場所の音楽をどこでも聴くことができるから、そういう見方はしてないんだ。

今日はありがとうございました。

コリン:ありがとう! また日本にいけるのを楽しみにしているよ。

SUBMARINE - ele-king

 TBSラジオ系『伊集院光 深夜の馬鹿力』を聴いていたら、番組の途中、おもしろいヒップホップの曲が流れていた。SUBMARINE“Midnight Tour Guide”である。すごくポップな曲だが、よく聴くとヘンテコでもある。「ここんとこほんともうトホホと声に出しちゃうほど脱力モード」という印象的なリリックではじまるこの曲は、その「脱力」な感じに、スチャダラパーなんかを思い出すが、声の感じやリリックの抒情性には、「あの小説の中に集まろう」(TOKYO NO.1 SOUL SET“More Big Party”)とラップするBIKKEを連想したりもする。フックでは、女性ヴォーカルがかわいらしく歌い上げており、エレピとギターとの絡み合いが爽やかで気持ちいい。そのフック部分が終わると、エレピとギターのループが細かくなって、ビートも少し変則的になり、トラックの展開がめまぐるしくなる。ポップで美しい曲だが、トラックに緊張感があって刺激的だ。ふいに前面に押し出されるベースにもドキッとする。

 そんな“Midnight Tour Guide”をリード・トラックに据えたのが、SUBMARINE『島唄』というアルバムだ。SUBMARINEは、MCの日渡正朗とトラックメイカーの新城賢一によって1999年に沖縄で結成されたグループである。本作は、以前から交流があったという□□□の三浦康嗣をプロデューサーとして迎えた、約8年ぶりの作品だ。ヒップホップ的なビート感は強く残しつつ、同時にヒップホップ的な様式美からかなり自由になったサウンドと構成が、とても新鮮に響く。そのあたり、□□□の感覚とも通ずるか。サウンド・プロダクションはけっして一筋縄ではいかないが、ポップでカラフルな音色に仕上がっているぶん、広いリスナー層にアピールする。とくに、歌モノやシンガーソングライターのファンには、ぜひ本作をチェックしてほしいと思う。本作を貫くメロディーラインやコーラス、アコースティック色を残したサンプルの数々などは、とてもSSW的な温かみがある。実際アルバムには、三浦によるピアノ弾き語りの“Midnaight Tour Guide”のヴァージョンまで収録されている。ビート・ミュージック的な側面からアコースティック的な側面まで見事に共存しているのが、本作の最大の魅力だ。
 このような作品世界を考えたとき、特筆すべきはやはり、7分半にも及ぶ大作“導かれし者たち”である。三浦以外にも、西尾大介(ALOHA)、小島ケイタニーラブ(ANIMA)、夙川アトム、伊藤豊(カズとアマンダ)を客演に迎えたこの曲は、サビでのケイタニーの唯一無二の歌声を中心に、ドタバタした生ドラムのサンプルやキーボードが響いて、温かく美しいサウンドが広がっている。ケイタニー含め、その他のゲスト陣もラップのようなヴォーカルのようなものを披露しており、ポッセカットのようになっているのが楽しい(ちなみに、ANIMAのファーストアルバムを聴いたとき、いつか小島ケイタニーラブのラップが聴いてみたい、と強く思っていたので、それが実現したのが個人的には嬉しい)。その他、“Angel”とその姉妹編のような“Beauty × Beauty”、あるいは“深海魚”など、温かみのあるトラックと日渡ののびやかなラップが、全編にわたって聴きどころである。

 とはいえ、このアルバム、やはりヘンテコなところもあって、先の“導かれし者たち”も、歌詞はひどい下ネタだったりする。あるいは、アルバム冒頭の“VAMPIRE EMPIRE”は、吸血鬼の立場からラップをした曲で、トラック自体もヴァンパイアをモティーフにしたものになっている。さらによくわからないのは“道”という曲で、ビズ・マーキーばりの(?)ヘタウマな歌声で行進曲のパロディが歌われている。うーむ、底知れない。冒頭にも書いたように本作のリリックは、「脱力」系で笑ってしまうものが多いのだが、それがしっかりと作り込まれたサウンドに乗せられているのが、またおもしろい。ポップに聴き流しているつもりでも、よく聴くと、「なんだ、この歌詞!?」みたいな。それは、SUBMARINEというグループが持つイタズラ心のようなものにも思える。心地よく美しいサウンドのなかに、チクリと刺激的。これがやけに中毒性があって、やめられない。本当に温かみのあるアルバムなのだが、温かいだけでは終わらない不穏さもしっかりと抱え込まれている。

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