ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Loraine James ロレイン・ジェイムズの“ポップ”な冒険 | ——来日直前インタヴュー
  2. Vladislav Delay Quintet - Vd5 | ヴラディスラフ・ディレイ
  3. Columns Boards of Canada ボーズ・オブ・カナダの帰還  | ──その軌跡、その影響、そして13年ぶりの新作『Inferno』をめぐって
  4. UKインディ・ロック入門──ポスト・パンク、ギター・ポップ、スカとダブ編
  5. Fusion Core ──1999年のデビュー・ミニ・アルバムがアナログ化
  6. Columns Boards of Canada ボーズ・オブ・カナダの帰還 | ──その軌跡、その影響、そして13年ぶりの新作『Inferno』をめぐって(後編)
  7. Columns Jeff Parker ジェフ・パーカー・ETAカルテットの挑戦 | ──原雅明と蓮沼執太による対話
  8. R.I.P. 横田進  | Susumu Yokota / ススム・ヨコタ
  9. Crack Cloud ──カナダのインディ・バンド、クラック・クラウドの来日公演が決定
  10. Brian Jackson - Now More Than Ever | ブライアン・ジャクソン
  11. interview with Mouse on Mars 僕たちはダブを、ジャンルではなく社会的なものとして捉えたい | ——リー・ペリーとの共作を発表したマウス・オン・マーズ、インタヴュー
  12. Loraine James - Detached from the Rest of You | ロレイン・ジェイムズ
  13. 異次元の常識──パンク/ハードコアの思想とメッセージ
  14. Cornelius ——コーネリアスのライヴ・ドキュメンタリー映像「“Dream in Dream” Tour Document Episode 1」公開
  15. EACH STORY -THE CAMP- 2026 ──自然のなかで「深く聴く体験」を追求するイベントが今年も開催
  16. Tocago、恵比寿KATAにて待望のワンマン・ライヴ開催を決定
  17. The Leaf Library - After the Rain, Strange Seeds | ザ・リーフ・ライブラリー
  18. GEZAN - I KNOW HOW NOW
  19. FESTIVAL FRUEZINHO 2026 ──気軽に行ける音楽フェスが今年も開催、マーク・リーボウ、〈Nyege Nyege〉のアーセナル・ミケベ、岡田拓郎が出演
  20. interview with Silent Poets 12年分のエモーション

Home >  Reviews >  Album Reviews > Romare- Projections

Romare

Club JazzDeep House

Romare

Projections

NInja Tunes/ビート

Amazon iTunes

野田努   Mar 24,2015 UP
E王

 わかるよ、わかる、10年後にもしハウス・ミュージックのカタログ本が刊行されたら、これはこの時代の名盤として紹介されるだろう。悪いがこれは良いアルバムだ。サンジェルマンの『ブールバール』がそうであるように、ムーディーマンのファースト・アルバムやセオ・パリッシュの『ファースト・フロア』がそうであるように、ハウス界隈のみならず、ときが経てば、クラブ・ジャズ/ヒップホップ界隈からも再発見されるだろう。
 イアン・オブライアンの最良の瞬間がそうであるように、ロメアのファースト・アルバムは、ブラック・アトランティック的ロマンティシズムに満ち満ちている。
 デトロイトのアンドレスとも共通する匂いがある。ヒップホップ的コラージュが彼の手法であり、そこから浮かび上がるのはソウルとグルーヴだ。

 ロメアとは、ロンドン在住のアーチー・フェアハーストなる人物のプロジェクトで、その名前をアフリカン・アートの作家ロメア・ビアーデンから取っている。彼の評判はおよそ2年前、ブリストルの〈ブラック・エイカー〉(いまもっともイケてるレーベルのひとつ)からシングルを発表して、じょじょに広まった。それらの作品は、彼のアフリカ起源の音楽のアーカイヴを紐解きながら、ひとつひとつ検証し、現代のクラブ・ミュージック(フットワークからUKガラージまで)として応用した結果だった。UKのクラブ・ミュージクらしいアプローチである。
 そして、この度、うまいことニンジャ・チューンが引っこ抜いて、本作『プロジェクションズ』をリリースしたというわけだ。

 僕は、最低でももう1枚、UKからは何年かに1枚の素晴らしいハウスのレコードが出ることを知っている(そして、もしもフローティング・ポインツがアルバムを出すようなら、もう2枚となる)。その作品との比較で言えば、ロメアは、よりディープで、よりスモーキーで、より温かく、そして繰り返すが、アフリカに根ざした音楽からの影響がより濃く滲んでいる。
 ロメアのやり方は、必ずしも新しくはない。しかし、アルバムとしての完成度は高く、ここにはクラブ・ミュージックの滑らかで美しい側面が凝縮されているように思う。感情が揺さぶられ、発展するという、最高にエーモショナルなハウス体験が保証されている。
 今月末に刊行する紙エレキングの「UK特集」をやりながら、あらためて思ったのは、音楽に詳しいことはUKらしさの一要素である、ということだ。そして、いくら時代は変われど、彼らはアメリカのソウル・ミュージックを掘り続けている。思い出し欲しい。オレンジ・ジュースのファースト・アルバムはネオアコの古典だが、同時にそれがブルーアイド・ソウルだったことを。つまり本作『プロジェクションズ』は、ベースメント・ジャックスのアルバムは中古屋に売ってしまったけれど、ムーディーマンは手放せないという人が聴いて間違いないのだ。

野田努