「ele-king」と一致するもの


DJ TASAKA
UpRight

UpRight Rec.

Tower HMV Amazon

 DJ TASAKA、4枚めのアルバム『UpRight』の発売を目前に、今週末にはリリース・パーティが開催される。「国会前でのハードなプロテストのアフターとしても、2015年夏の幕開けに相応しい、スペシャルな夜になりそうだ」(久保憲司)。パーティは映画上映からはじまるなど、作品同様、丁寧にコンセプトされていることがうかがわれる。会場ではアルバムの先行販売も予定、みなさんもよき夜を。

■BLEND is beautiful presents
ACT UP RIGHT

7.17 FRI OPEN 22:00
at SOUND WAVE BE-WAVE
1-15-9 Kabukicho Shinjuku 03-5292-0853
2,000yen at door

PART 1 22:30~
UNITED IN ANGER A HISTORY of ACT UP 映画上映(日本語字幕付き)
HIV/AIDSの時代を生き抜くために、人種や階級ジェンダーの枠を超えて力を合わせて社会の変革に挑んだ人々、ACT UPの非暴力抵抗運動は、HIV/AIDS危機にある米国政府やマスメディアを動かした。このドキュメンタリーは、大切な人を失う哀しみを育み、人とのつながりの中で生きる力を持ち、セクシーでエネルギッシュなACT UPの姿を映し出す。
監督:ジム・ハバード Jim Hubbard プロデューサー:サラ・シュルマン Sarah Schulman

PART2 24:00~
B1F
DJ TASAKA long set, Kinue Itagaki Yoshino, MC JOE

LOUNGE DJ
Lark Chillout, KUMA the SURESHOT, showgunn

FOOD
True Parrot Feeding Service

SHOP
DJ TASAKA アルバム先行発売。ZINE希望的工具販売。


Hocori、とは? - ele-king

 あるいはあまりプロモーション展開をしなくとも──名が伏せられ、レコード屋のインディ・コーナーの一隅にひっそりと面出しされているくらいでも、『Hocori』は人々の手に取られるようになるのではないだろうか。ネットレーベル発の才気あふれるプロデューサーやユニット群のひとつとして、あるいは“東京インディ”の新しきピース、と謳われていても違和感がないかもしれない。“Lonely Hearts Club”や“God Vibration Instrumental”などは無名性とともに再生されるとき、もっとも時代性を発揮するように思われる。できることなら期待のデュオの登場だ、その音源がユーチューブで公開されている、とだけ紹介してみたい。そしてどうぞご一聴を。素敵な音楽が聴こえてきます。

“Lonely Hearts Club”Music Video

 MONOBRIGHT の桃野陽介(Vo / Gt)とgolf / SLEEPERS FILMで活動する関根卓史のユニット、Hocoriが7月15日(水)にリリースする1st mini album『Hocori』より、リード・トラック「Lonely Hearts Club」のMusic VideoをYouTubeにて解禁した。

 このMusic Videoは、Hocoriの持つシティ・ポップやエレクトロ・ポップをベースに置きながらも、ブラックミュージックのスパイスを取り込む作品の方向性にいち早く注目した、NY生まれのファッションマガジン NYLON JAPANのプロデュース及びディレクションによる作品で、モデルの田中シェンと遊屋慎太郎[ユウヤシンタロウ]が起用されている。

 田中シェンはモデルとしてNYLON JAPANだけでなく、GINZAや装苑など人気ファッション誌にも多数登場し、「JINS × niko and...」のイメージビジュアルなども務め、Instagramで50,000以上のフォロワーを誇る人気急上昇中のモデル。さらに彼女はイラストレーターとしても注目されており、Music Video内で着用している彼女自身がデザインしたTシャツもNYLON JAPANが手がける作品ならではのポイントだ。また、遊屋慎太郎[ユウヤシンタロウ]もBRUTUSを始めとしたファッション誌やカルチャー誌などでのモデル活動だけでなく、アパレルブランド「sulvam」のコレクションビジュアルにも登場するなど目が離せない。
 一目でグイッと引き込む強い視線を持ち、濃厚な空気感を纏う2人のモデルが「Lonely Hearts Club」の楽曲の情景と妄想的要素をNYLON JAPANならではの個性を尊重したスタイルで表現していて、楽曲同様に“新しいセンス”を感じさせる作品となっている。なお、2人のMusic Videoへの出演は本作品が初となる。
 さらに、6月にラフォーレ原宿にて行われたポップアップショップや、先日、パリで行われたJAPAN EXPOでも話題となった、新進気鋭のデザイナー 手嶋幸弘氏が手がける「誰かのヒーローになれる服」をコンセプトに展開しているアパレルブランド〈ユキヒーロープロレス〉が今度は大阪・阪急うめだに進出! スペシャルコラボレーションによる限定盤『Tag』[タッグ]も併せてここで発売されることも決定した。これは1st mini album『Hocori』のリリースに先駆けて発表されていた全3曲入りCDで、関根卓史がこの盤のために手がけたオリジナルミックスが収録されていて、収録楽曲の歌詞や世界観からインスピレーションを受けた手嶋幸弘氏がジャケットデザインを手掛けた。遠方のため入手できなかった関西圏の方はMusic Videoを観てからぜひチェックして、それぞれが描き出す世界観を楽しんで欲しい。

■オフィシャルサイト
https://hocori.jp/

Twitter  https://twitter.com/info_Hocori@info_Hocori
Instagram  https://instagram.com/mmnskn/@mmnskn

■リリース情報

『Tag』
発売日:2015年6月18日(木)
品番:CNBN-01
価格:¥1,000(tax out)
収録楽曲:1. Lonely Hearts Club(Tag mix) / 2. Tenkeiteki Na Smoothie(Tag mix) / 3. God Vibration Instrumental
※ユキヒーロープロレスポップアップショップ限定販売

『Hocori』
発売日:2015年7月15日(水)
品番:CNBN-02
価格:¥1,500(tax out)
収録楽曲:1. Intro / 2. God Vibration / 3. Lonely Hearts Club / 4. Tenkeiteki Na Smoothie / 5. Alien / 6. Kamone

取扱店:タワーレコード(渋谷、新宿、梅田NU茶屋町、名古屋パルコ、札幌ピヴォ、仙台パルコ、福岡パルコ、広島)、タワーレコードオンライン、音楽処、MUSIC SHOP PICK UP、more records

■「God Vibration」Music Video


■ユキヒーロープロレスショップ情報

オフィシャルサイト  https://yukihe-ro.jp/
オフィシャルFacebook https://www.facebook.com/yukihero.prowrestling
※7月29日(水)~8月4日(火)まで、大阪・阪急うめだにてポップアップショップをオープン


SAKANA - ele-king

いつでも聴きたい元気が出る曲。

年代ジャンル問わず、いつになっても好きな曲、アガる曲を10曲選んでみました。
賑やかな曲ばかりですが、何よりラップものと女性ボーカルものにとにかく弱いです。

<Profile>
ダブステップ、グライム、ジューク、トラップを軸にベース・ミュージックを包括したパーティRAGEHELLを、2012年にK.W.A, YTGLSと共に始動。並行して、NODA、Zatoと「T.R Radio」開始。月に1度、ツイスト気味なDJミックスをライブ配信中。考えるより感じることに重きを置き、音楽と接する。
Soundcloud » https://soundcloud.com/sakanasakana
RAGEHELL » https://www.facebook.com/Ragehelltokyo
T.R Radio » https://mixlr.com/tr–2/

<出演情報>
KAHN & NEEKがブリストルより初来日いたします。是非遊びに来てください!
https://www.ele-king.net/news/004545/

2015/07/24 (FRI)
BS0 1KN
KAHN & NEEK Japan Tour in Tokyo
会場:
Star Lounge (渋谷)
時間:
Open/Start: 24:30
Act:
KAHN & NEEK / GORGON SOUND from Bristol
Bim One Production (Roots/Dancehall Set)
Soi Production (Jungle Set)
100mado 〈Back To Chill〉(Dubstep&100bpm)
SAKANA 〈Ragehell/T.R Radio〉(Weightless Set)
Host MC:Ja-ge
Sound System:eastaudio SOUND SYSTEM
料金:
advance: 3000yen (ドリンク代別途500yen)Limited 150!!!
door: 4000yen (ドリンク代別途500yen)
チケット情報:
https://bs-zero.tumblr.com/ticket
Web: https://bs-zero.tumblr.com/
TW: https://twitter.com/_b_s_0_
FB: https://facebook.com/BS0TOKYO
YouTube: https://bit.ly/BS0YouTube

R.I.P. 横田進 - ele-king

 テクノ/ハウス/エレクトロニカのプロデューサーとして国内外に多くのファンを持つ横田進が、3月27日、長い病気療養のすえ永眠したことが最近わかった。音楽関係者との接点を持たなかったご遺族が、先日、遺品整理中に見つけた関係者からの手紙を頼りに報告があった。54歳だった。

 横田進は、ハウス・ミュージックに触発されて、90年代初頭から本格的な音楽活動をはじめている。初期の作品、1993年にドイツの〈ハートハウス〉からリリースされたFrankfurt-Tokio-Connection名義の12インチ・シングルは、都内の輸入盤店でも話題になった。当時勢いのあったジャーマン・トランスの重要レーベルからのリリースだったということもある。が、何よりも、無名の日本人がいきなり海外のレーベルから作品を出すことがまだ珍しかった時代のことだった。いまや音楽は世界に開かれている──そんなオプティミスティックな気配がアンダーグラウンドなシーンでは広まりつつあったころの、象徴的な出来事だった。横田進は、当時のレイヴ・カルチャーのグローバルなうねりに与した最初の日本人アーティストのひとりだった。
 そして、この20年以上のあいだ、横田進の音楽は国内外で高く評価されることになる。とくに90年代末から00年代初頭にかけての横田人気はすごかった。ぼくは、あるイギリス人ライターから「自分が取材したいのはDJクラッシュとススム・ヨコタ」と言われたことがあったし、海外メディアに「レディオヘッドを聴いてなぜヨコタを聴かない」と皮肉られたこともあった。

 横田進は、90年代は主に〈サブライム〉レーベル、90年代末からは自身のレーベル〈スキントーン〉とロンドンの〈LOレコーディングス〉といったインディ・レーベルを拠点に活動を続けていたが、2006年はハリウッド映画の『バベル』に楽曲を提供するなど大きな舞台でも活躍している。そして、結局のところ彼は、およそ22年間の音楽生活のなかで、35枚以上のアルバムと30枚以上のシングルを残した。2012年の『Dreamer』が遺作となったので、より正確に言えば、20年間にアルバムとシングル合わせて70タイトル近くも出したことになる。ひたすら音楽を作り続けていたとも言えるだろう。

 ぼくが横田さんと初めて会ったのは、1993年の初頭だったと思う。場所は麻布か青山あたりのクラブで、知り合いに紹介された。その日、(当時のクラブ・カルチャーがそうだったように)閉店までいた連中みんなで青山デニーズに行って話し込んだりしたが、そのときは横田さんとは挨拶程度しかしなかった。
 2回目に会ったのは1993年の12月末の、麻布イエローでのUR初来日ライヴのフロントアクトを横田さんが務めたときだった。ステージ上にはTR909と2台のTB303ほか数台のアナログ機材が並んで、それらを操作する横田さんの隣ではマコトさんという、これまた実に存在感のある人が長髪を振り乱し、一心不乱に踊っていた。まさに“あの時代”のひとこまだ。
 他にも、いろんな場面を思い出す。1994年7月ラヴ・パレード期間中には、ベルリンのトレゾアというクラブで会った。横田さんは、名誉ある、日本人としては最初のラヴ・パレード出演者だった。
 もしセカンド・サマー・オブ・ラヴなるものが日本にも上陸して、風景をひっくり返すような勢いで、あり得ないほどの狂騒と信じられないくらいの恍惚を伝播させながら、それを体験した人たちの生き方や音楽に関する考えを変えてしまったとしたら、のちに自己否定することになるとはいえ、横田さんは間違いなくそのひとりだった。1994年に発表した『アシッド・マウント・フジ』は、わずか2年で日本にレイヴ・カルチャーが根付き、そしてシーンが生まれたことの証明だ。(そして、そのアルバムが出たばかりの頃、横田さんにサインをねだった19歳の美少年こそ、後に〈メトロジュース〉を始動させる塚本朋樹だった)

 横田さんには名作がいっぱいある。90年代で言えば、デトロイト・テクノに傾倒したころのプリズム名義の『メトロノーム・メロディ』はクラシックだし、トリップ・ホップを取り入れた『キャット、マウス&ミー』やフレンチ・タッチに共振した『1998』も忘れがたい。



 1997年の秋、ぼくは取材のため、初めて横田さんの家に行った。池尻大橋の古い木造一軒家の二階に住んでいた頃で、909や303はもうなかった。「そういうものを所有していると前に進めないから売ってしまった」と彼は言った。
 ほかに印象に残っている言葉を抜き出してみる。「この環境が貧乏な自分にはぴったり」「堕天使のイメージに憑かれている」「もうクラブ・シーンや業界のしがらみが嫌になって、ほんとど人に会わず、公園にいったり、猫としゃっべたりしている」「散歩とプールと図書館が日課」「昔はよかったんなんて言ってもしようがない」「スピリチュアルなものにも興味がない」「ジョイ・ディヴィジョンばかり聞いている」
 そのとき横田さんはこんなことも言った。「ぼくは将来、粉になりたい。粉はふっと吹いただけでバラバラになって、もう元のカタチには戻れない。ぼくは死ぬ直前に白い粉になりたい。いまは粉になるためのプロセスだと思っている」(以上、『ele-king vol.16』より)
 すごいことを言う人だなと思った。そして、このころから横田さんの作風も確実に変わっていった。
 この取材以降、ぼくと横田さんは打ち解けて、会話するようになった。なんどか飲みに行ったこともある。いちどある飲み会で、ぼくが席を立ったとき思わずビールをこぼしていまい、近くに座っていた女性(たしかモデルかなんかだったな)の洋服に思い切りかけてしまったことがあった。それで、ぼくがただただ狼狽しているときも、「ヨコタはいっさい表情を変えなかった」と同席したイギリス人が感心したものだった。
 青山通り沿いのギャラリーで、横田さんのヴィジュアル作品を集めた個展が開かれたこともあった。自身のレーベル〈スキントーン〉をスタートしたころで、彼の最高傑作の1枚であろう、アルバム『SAKURA』(2000年)がとくに海外で大きな評判となっていたころだった。



 90年代末から、ぼくはわりとコンスタントに──といっても1年に1回ぐらいだが──横田さんと会っていたような気がする。
 初めて横田さんの立川のご実家を訪ねたのは、2004年だったと思う。以来、ぼくは2009年までのあいだ1年に1回は横田さんの家に行って、缶ビールを飲みながら横田さんの話を聞いた。

 横田さんの創作活動は、経済面で言えば、ある程度は恵まれていたと言えるだろう。彼のCDは、とくに00年代以降は、作ればほぼ確実に海外に流通していたし、それなりの数が売れていたはずだ。音楽だけでやっていけるだけの稼ぎはあったと思う。海外からもライヴのオファーは毎年のように来ていたし、ビジネスクラスさえ用意されていた。それでも、すでに体調を崩されていた横田さんは、すべてのオファーを断っていた(ぼくはそれを聞いて、いつも「もったいない」とぼやいていたのである)。

 横田さんはある意味頑固者ではあったけれど、裏表のない正直な性格の人で、いつもありのままの自分でいる人だった。高尚な話からわりと他愛もない話までいろいろ話してくれたけれど、ぼくにはどうしても踏み込めないところもあった。それはひと言で言えば、彼の美学に関することだった。
 横田さんはいわゆるアーティスト肌の人で、ロマンティストだった。彼には自分の生きるべき世界があった。生活のにおいのしない人だったし、人付き合いが下手で、べたべたした人間関係を好む人でもなかった。ダンス・カルチャーという、むせかえるほどの人ばかりの世界に、横田さんみたいな人がよくいたものだとあらためて思う。シーンとの接触を持たせなかったこの10年の作品には、クラブ・ミュージックとしての機能性はなく、そしてその代わりに横田さんの美しいと感じるものすべてが詰め込まれているが、最後の最後まで彼がダンス・ビートを捨てることはなかった。 

 ぼくは横田さんと同じ時間を過ごせたことを誇りに思う。繰り返す。セカンド・サマー・オブ・ラヴなるものがもし日本にあったのなら、横田さんは、その時代を代表するひとりだった。そして、数年後には自己否定したように、その終わりの象徴的な人でもあったのだ。彼が言ったように、それは粉となって風にさらされ、もう元のカタチには戻れない。そのはかなさのようなものが、横田さんの音楽にはたしかにある。ハウスをやろうがアンビエントをやろうが、あるいはトランスをやろうが。



Statement

It is with great sadness that we announce the death of Susumu Yokota who passed away on 27th March, 2015 at the age of 54 after a long period of medical treatment.

We are deeply thankful to the people who listened to and supported Susumu's music during his lifetime.

Please accept our sincere apologies for the delay in this announcement, as we were until recently unacquainted with Susumu's music industry contacts.

14 July, 2015
Susumu Yokota's family

Please contact Yokota’s family and close friends on:
yokota4ever@gmail.com
*English mails are accepted.

 

訃報

2015年7月14日

アーティスト、横田進はかねてから病気療養中のところ、2015年3月27日、54歳にて永眠いたしました。
生前、進の音楽を聴いて下さった方々に深謝するとともに、私ども遺族に進の音楽関係の方々とのご面識がなかったがため、このようにご報告が大変遅れてしまったことを深くお詫び申し上げます。

横田進 姉

遺族・関係者へのご連絡は、メールにて以下のアドレスにお問い合わせください。
yokota4ever@gmail.com
Please note that English mails are accepted.

 ……というのは、現場の人にはいまさらの言葉らしいのですが、ワタクシ野田は、このところ、尊敬する赤塚不二夫先生の生誕80周年(9月14日)に合わせた出版物のために、60代後半から70代にかけての大先輩方の貴重なお話しを聴いてまわり、それを原稿にまとめているのです。それは、この国の70年代サブカルチャーの重要な局面の話です。
 で、その最中に、隣の隣の席にいる橋元が、「ワイキキ・ビート(平均年齢21)はすごいっすよ!」とか、「ワイキキ・ビートがわからないようじゃ、マズいっすよ!」とか、しゃらくさいことを言いやがるわけですよ、これが。
 ぼくは洋楽ファンだけれど、なにもかもが舶来趣味というのには大いに抵抗があります。若いスターが日本のシーンから登場することは、健全だと思います。ところが、ことインディ・ロック・シーンにおいてここ数年気になっていたのは、やれピッチフォークで紹介されたとか、いわゆる「本場のお墨付き」ばかりを気にする向きが目に付くことです。それこそマズいです。相倉久人さんの1950年代の秋吉敏子さんへの厳しさを復習しましょう。
 欧米と日本との差は、耳の差と言うよりも、(世代や商業性やいろいろ越えた)包容力の差です。そんなわけで、ぼくも橋元に負けじと、90年代生まれの子たちの音を聴いてみました。そのなかで、「格好いい」と思ったバンドをここではふたつ紹介しましょう。


RIKI HIDAKA & jan
Double Happpiness In Lonesome China

STEREO RECORDS

D.A.N.
D.A.N. EP

P-VINE

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 まず、広島のSTEREO RECORDSから気合いの12インチ・レコードでリリースされたRIKI HIDAKA & jan『Double Happpiness In Lonesome China』。若いふたりの才能の結晶といいますか、これ、とんでもなくサイケデリックな世界が展開されます。表向きにはゆるくて恍惚としたギター・サウンドなのですが、曲のなかには底知れぬトリップが待っているのです。とにかく、素晴らしい名盤が誕生しました。ライヴ見たいです。

 もうひとつ、今回紹介したいのは、D.A.Nというバンドです。人気イラストレーターにしてカタコトのリーダー、ドラゴンくんがPVを作っていますが、彼らの音は……本当にモダンです。敢えてたとえるなら、チルウェイヴとジェイミーXXの溝を埋めるバンドです。こちらもまだシングル「D.A.N. EP」を出したばかりですが、そうとう期待が持てそうな人たちです。

 冒頭にて報告した仕事のなかで、高名なジャズ・ピアニストの山下洋輔さんにもお会いできました。山下さんの最初のエッセイ集にはこんな言葉があります。「ジャズの現場で、音を発する側に参加している者がそこで聴いてもらいたいのは『音』であって、どんな言葉でもない」(『風雲ジャズ帖』)
 若き日本のインディ・ロックも、もはや「言葉(意味)」よりも音なのかもしれないなと、ぼくは思ったのです。いや、あるいはスタイルのみあれば他いらないとでも言うのでしょうか、橋元さん。うん、それもひとつの更新のされ方ですよね。あるいは、そこからほかに何か導き出せるのでしょうか……注目したいと思います。

Congo Natty×Caspa来日ツアー2015 - ele-king

 コンゴ・ナッティの去年の来日公演は素晴らしいイベントでした。DJマッドの技巧派ダブステップ・セットのあとに、レベルMCとコンゴ・ダブスがステージに現れ、ボブ・マーリーの“スリー・リトル・バーズ”が流れ、ジャングルで揺れ、戦士たちの歴史が語られ……。あの日のフロアはいつも以上に国際色豊で、若者とベテランが入り交じっていました。ジャングルの持つ求心力はすごいです。あの光景が今年も見られますよ!

 しかも今回はダブステップの王様、キャスパが登場します。彼の曲でダブステップを聴きはじめたという方は多いのではないでしょうか? キャスパのレーベル〈ダブ・ポリス〉からはいくつものクラシックが生まれました。キャスパの重低音を操る力は今日も健在。先日発表されたニュー・アルバム『500』は、全体を凶器のようなドラムとベースが貫いています。アルバムのミックスの展開もすさまじい! イギリスでもなかなか見られない組み合わせが実現するdbsのステージですが、この日もその歴史を更新することでしょう。

 クラナカa.k.a 1945やパート2スタイル・サウンドといった、ラガをキーワードにジャングルとダブステップをつなぐアツい日本勢にも期待大。おそらく当日はレベルMCとともにライターを灯すことになるので、おひとつ持参することをおすすめします!

【東京公演】
UNIT 11th ANNIVERSARY
DBS "JUNGLE BASS SESSIONS"
CONGO NATTY x CASPA

2015.07.18 (SAT) @ UNIT
open/start 23:30
adv.¥3,300 door ¥3,800

feat.
CONGO NATTY a.k.a REBEL MC & DJ CONGO DUBZ
CASPA

with:
KURANAKA a.k.a 1945
PART2STYLE SOUND
JUNGLIST YOUTHS
DJ DON
JUNGLE ROCK

saloon:
KAN TAKAHIKO
NESSILL
HELKTRAM
SHINTARO

info. 03.5459.8630 UNIT
Ticket outlets:6/6 ON SALE!
PIA (0570-02-9999/P-code: 266-620)
LAWSON (L-code: 72753)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/https://www.clubberia.com/store/

渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)
TECHNIQUE(5458-4143)
GANBAN(3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)
Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)
JET SET TOKYO (5452-2262)、
disk union CLUB MUSIC SHOP (5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)
Dub Store Record Mart (3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)
disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

info. 03.5459.8630
UNIT >>> www.unit-tokyo.com
DBS >>> www.dbs-tokyo.com

【大阪公演】
7/19(SUN/祝前日)
出演:CONGO NATTY a.k.a REBEL MC & DJ CONGO DUBZ
CASPA
And more..
OPEN:23:00~
ADV:3,000yen DOOR:3,500yen
チケット情報
Peattix https://ptix.co/1ImJiDm
チケットぴあ P-CODE(267765)
ローソンチケット
イープラス https://eplus.jp/

会場:CIRCUS
〒542-0086 大阪府大阪市中央区西心斎橋 1-8-16 中西ビル 2F
TEL:06-6241-3822
https://circus-osaka.com

■ CONGO NATTY a.k.a REBEL MC (Congo Natty Recordings, UK)

ルーツ・レゲエを根底にヒップホップ、ラガの影響下に育ったレベルMCは、'80年代後半からスカとハウスのミックス等、斬新なブレイクビートサウンドで注目を集め、『BLACK MEANING GOOD』('91)、『WORD, SOUND AND POWER』('92)でジャングルの青写真を描く。また92年にボブ・マーリーの"Exodus"のリミックスを手掛ける。Tribal Bass、X-Projectレーベルを経て、JJフロスト、DJロンと共にCONQUERING LION名義で活動、ラガ・ジャングルの中核をなす。'94年にジャングルの総本山となるCongo Nattyを設立、自らもコンゴ・ナッティを称す。『A TRIBUTE TO HAILE SELASSIE I』 を始め、数多くのリリースを重ね、'02年にはMCテナー・フライをフィーチャーした『12 YEARS OF JUNGLE』を発表、初来日を果たす。'05年は足跡を伝える『BORN AGAIN』、'08年には入手困難なシングルをコンパイルした『MOST WANTED VOL.1』をリリースし、レベル自らDJとして新たなパフォーマンス活動に乗り出す。近年は息子のDJコンゴ・ダブス、ヴォーカルのナンシー&フェーベらファミリーも広がり、Glastonbury、Womad、Outlook等のフェスに出演。'13年にBig Dadaからアルバム『JUNGLE REVOLUTION』をリリースし、ルーツ・レゲエとジャングルのヴィジョンを深く追求する。レーベル名の"CONGO"はアフリカの民族音楽の太鼓、"NATTY"はラスタファリアンに由来し、彼らの音楽のインスピレーションは主にこの2つの要素から来ており、真のアイデンティティーはもちろんJAH RASTAFARIである。
https://congonatty.com/
https://www.facebook.com/CongoNattyOfficial
https://twitter.com/CongoNattyRebel

 

■ CASPA (Dub Police / Sub Soldiers, UK)

西ロンドン出身のキャスパはジャングル、ヒップホップを聞き育ち、UKガラージに触発され、DJを開始、トラック制作にも着手する。04年に自身のレーベル、Storming Productionsを立ち上げ、Rinse FMでのラジオショーも始まる。05年にはダブステップに特化したレーベル、Dub Policeを設立、自身の作品やNタイプ、ラスコ等のリリースでダブステップ・シーンの一翼をになう。07年にはラスコと共にロンドンのクラブ/レーベル、Fabricに迎えられ、DJ Mixシリーズ『FABRICLIVE.37』を手掛け、さらには新レーベル、Sub Soldiersからも精力的なリリースを展開する。08年にはGlastonbury, Global Gathering, Big Chill, Glade等のビッグフェスに出演した他、北米、ヨーロッパ各国をツアー。09年、1st.アルバム『EVERYBODY'S TALKING, NOBODY'S LISTENING!』をFabricからリリース、ダイナマイトMCらのラッパーをフィーチャーしたドープ&ファンクネスな世界を築く。12年にはザ・プロディジーのキース・フリントをフィーチャーしたシングル、"War" が大反響を呼び、13年に同曲を含む2nd.アルバム『ALPHA OMEGA』をDub Policeから発表する。その後も勢いは留まらずDub Policeのリリースは100タイトルを越し、キャスパ自身は新たなるヴィジョンとムーヴメントを生むべく制作を重ね、15年6月に待望の3rd.アルバム『500』がリリースされる。
https://caspa500.com/
https://www.dubpolice.com/
https://www.facebook.com/caspadubstep
https://twitter.com/Caspadubstep
https://soundcloud.com/caspaofficial


GODFLESHが再結成後2度めの来日! - ele-king

 マスター・マインド・オブ・インダストリアル・メタル、ゴッドフレッシュ(GODFLESH)が再結成後2度めの来日を果たそうとしている。ゴッドフレッシュが2010年にジャスティンKブロードリック、G.Cグリーンのデュオ編成での再結成、2014年にEP「Decline & Fall」を、そして完全新録アルバム「A World Lit Only By Fire」を発表、驚愕も冷めやらぬ約3年振りの来日公演をおこなう。

 エクストリーム・ミュージックに留まらないボーダレスな活動をおこなう東京が誇るデュオニュソス主義者ども、エンドン(ENDON)が今回のツアーの全サポートをおこなうだけでなく、東京公演ではレベル・ファミリア(REBEL FAMILIA)や、JK FLESHのワン・オフ・ショウではゴス・トラッド(GOTH-TRAD)が出演するなど、ゴッドフレッシュの存在がさまざまなシーンにおいて多大な影響を与えてきたことを物語る内容となっている。

 それはゴッドフレッシュはもちろんのこと、ヘッド・オブ・デイヴィッド(Head of David)にフォール・オブ・ビコーズ(Fall of Because)をはじめ、アイス(ICE)やテクノ・アニマル(Techno Animal)とジャスティンとグリーンがこれまで手掛けてきたプロジェクトがインダストリアル・ミュージック・シーンにとっていかに重要な存在であったのか、2015年現在われわれが目撃することのできる数少ないチャンスでもあるということだ。

■GODFLESH Japan tour 2015
with direct support:ENDON

**shows**

07/17(金)東京:代官山Unit w/ REBEL FAMILIA
open 18:00 / start 19:00
前売 6,000yen / 当日 未定 (ドリンク代別)
問い合わせ: Unit 03-5459-8630

07/18(土)愛知:名古屋今池Huck Finn
open 18:00 / start 19:00
前売 5,500yen / 当日 未定 (ドリンク代別)
問い合わせ: Huck Finn 052-733-8347 / Jailhouse 052-936-6041

07/19(水)大阪:東心斎橋Conpass
open 18:00 / start 19:00
前売 5,500yen / 当日 未定 (ドリンク代別)
問い合わせ: Conpass 06-6243-1666

**ticket**
4/18(土)より下記にて発売
東京: ぴあ(P:261-396)、ローソン(L:76756)、e+、会場
名古屋: ぴあ(P:261-317)、ローソン(L:47027)、e+、会場
大阪: ぴあ(P:262-227)、ローソン(L:55434)、e+、会場

■JK FLESH one-off show in Tokyo 2015
07/21(火)東京:渋谷O-nest w/ GOTH-TRAD, DREAMPV$HER
open 18:30 / start 19:00
前売 4,000yen (ドリンク代別)
問い合わせ: O-nest 03-3462-4420

**ticket**
05/02(土)より下記にて発売
東京: ぴあ(P:261-556)、ローソン(L:76926)、e+、会場


interview with Holly Herndon - ele-king


Holly Herndon
Platform

4AD / ホステス

ElectronicExperimental

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 エレクトロニック・ポップ・ミュージックの最先端としてのたたずまい、そして谷口暁彦氏やスペンサー・ロンゴといった同時代のミュージック・シーンと同調するメディア・アーティストとの見事なコラボレーションによって、ホーリー・ハーンダンの存在はポスト・インターネット時代のPCミュージックにおける多様性のひとつを提示してみせている。2012年に発表された彼女のソロ・デビュー・アルバム『ムーヴメント』での単独制作から、多くの作家がコラボレーターとして参加する今作『プラットフォーム』へ。それはアーティストとオーディエンスのヴィジョンや思考がインターネットを介して渾然一体と化した、スーパーフラットな音源作品として仕上がっている。

 ただし、残念ながら著者はホーリー・ハーンダンのライヴ・パフォーマンスは未見なので、果たしてそれがメディア・アートして如何ほどの強度を有しているのか気になるところである。近年、彼女のプロジェクトはオランダのデザイン・スタジオ、〈メタヘヴン(Metaheaven)〉のマット・ドライハーストとの共同制作として主に展開中であり、ひとりのエレクトロニック・ポップ・アーティストからアート・コレクティヴへと拡張され、そしてSNSを利用したオーディエンス巻き込み型のライヴ・パフォーマンスの噂などから想像を膨らませてみれば、彼女はヴァーチャル・アイコンとして自身の分身を増殖させているとみて間違いなさそうだ。さて、このインタヴューに答えてくれたホーリー・ハーンダンとは一体どの彼女なのだろうか。

テネシー州生まれ。10代の頃にダンス/テクノ・シーン の中心地ベルリンで数年を過ごし、アメリカに帰国。カリフォルニアにあるミルズ・カレッジにてエレクトロ・ミュージックとレコーディング・メディアの博士号を取得、またエリザベス・ミルズ・クローザーズ・アウォードの最優秀作曲賞を受賞。2012年に〈RVNG〉からデビュー・アルバム『ムーヴメント』をリリース。米名門スタンフォード大学の博士課程においてMax/MSPやその他幾多のプログラムを使用し、さらにエクスペリメンタル・ミュージックの可能性を追求。日本人アーティスト谷口暁彦やMat Dryhurstらとのコラボレーション経験を経て、2015年に〈4AD〉より新作『プラットフォーム』を発表する。

私は「1980年以降の実験音楽と録音メディアにおける美学」っていう新設のクラスのカリキュラム作りをしたの。

Max/MSPによる制作を主体としているそうですが、具体的にどういったプログラムやプロセシングを用いているのですか? 差しつかえなければお聞かせください。

ホーリー・ハーダン(以下HH):そのときによって変わるわ。いくつかの特定のプロセスや楽器にはMax/MSPを使っていて、そのほかにたくさんのフォーリー・サウンド(効果音)を自分で録音してプロセスしている。アレンジや実験をするのにはAbleton Liveを使って、自分の声をいろいろな形でのインプットとして使ってもいる。Maxはパワフルなツールだけど、ときにはそれ以上に万能なツールが自分の身体だったりするわ。

では何を研究しているのですか?

HH:いままでのところ、わたしがスタンフォードで過ごした時間は、基本的にコースを受けることが中心になっているわ。私は「The Aesthetics of Experimental Music and Recording Media since 1980 (1980年以降の実験音楽と録音メディアにおける美学)」っていう新設のクラスのカリキュラム作りをしたの。クラスメイトのヴィクトリア・チャンといっしょにこのクラスを作るのはとても楽しかったわ、音楽のプログラムで現代のエレクトロニック・ミュージックを分析するっていうのはよくあることじゃないから。
いまはちょうどアドバイザーたちといっしょに私の研究テーマを絞り込んでいるところだけど、まだ最終段階まで達していないから、完全にかたちになるまでその話をするのは避けておきたいわ。
(センターは)ジョン・チャウニングがFMシンセサイザーを発見したあとに創設されたの。彼はアーティストとして自分自身のテクニックを試行錯誤する中でこの発見をしたから、センター自体の指針も人々がそれぞれの好奇心を追求することができるようにするためのサポートをするってことで、そういうものを奨励するということが、とても深い美意識と技術的な結果をもたらすことができるという信念があるの。ものすごく特別な場所よ。

ヴェイパー・ウェーヴ・ムーヴメントをどのように捉えていますか?

HH:正直に言ってあまりよく知らないの、ときどきそれが私自身の音楽に関連があるって書かれているのを読むくらいで。いろいろなミュージシャンたちが焦点を当てているものの中の、類似する特徴をまとめて呼ぶための言葉なのかもしれないけれど、もしもそれがムーヴメントなのであれば、私はその一部ではないと明言できるわ。私は自分の音楽がなにか特定のムーヴメントに属しているとは思っていないし、私自身の好奇心を追い求めることがいままでずっと私の目標でありつづけてきたの。

どのプロジェクトもそれぞれまったく違った重要な会話だと思っている。

これまで谷口暁彦(Akihiko Taniguchi)氏やMetahavenによるヴィデオクリップでインターネットやデジタル情報を介したメタ空間があなたの音楽のヴィジュアル・イメージとして強く推しだされていますね。彼らの映像作品とあなたの音楽制作において共有するコンセプトとは何でしょうか? また彼らとの過去の共作を経て、あなたの制作に変化を及ぼした部分があれば教えてください。

HH:コラボレーションによってちがうわ。アキヒコ(Akihiko Taniguchi)とのコラボレーションは素晴らしくて、彼の美意識と触覚的なDIYテクノロジーへの興味、そして身近なものへの美的感覚にはとても共感を覚えているの。私も家の中などの環境でたくさんレコーディングをするし、それが彼の作品にとてもぴったりだと思う。私がプライバシーや親密さについてよく考えていたとき、彼の個人用デスクの環境に重点を置いた表現はそれらのテーマを美しく詩的に補完してくれるように感じた。
Metahavenはそれとはまったくちがったコラボレーションのプロセスよ。私は彼らが作品に新しいデジタルな美的感覚を取り入れることや、私自身も自分の作品でやろうとしている、政治的な話題の中にデザイン性を組み込むやりかたを見つけることへのこだわりに、とても刺激を受けた。私たちは『プラットフォーム(Platform)』のコンセプトの基礎になる部分の多くで緊密に協力したし、ビデオやその他のプロジェクトではアーティストのマット・ドライハーストも参加してコラボレーションしたわ。彼らのことは素晴らしい仲間としてみているし、どのプロジェクトもそれぞれまったく違った重要な会話だと思っている。
これらの要素は単なる音楽の飾りではなくて、どれも作品の必要不可欠なパーツだって理解することが大事なの。“コーラス”のヴィデオは曲と切り離せないものだし、“ホーム”もそれは同じ。これら(のビデオ)は単純に機能的なプロジェクトや、宣伝のためのプロジェクト以上のものなの。

『プラットフォーム』ではスペンサー・ロンゴ(Spencer Longo)との共同制作を行なったそうですが、具体的にどのようなものでしょうか?

HH:スペンサーは付き合いの長い友人で、私は彼のツイッターアカウント(@chinesewifi)で彼がはじめた「ワード・スカルプチャー」にインスピレーションを受けた。それが示唆しているものはシンプルで、もしも彼がアート作品を140文字で説明できて、それが私たちの心の中に存在することができるなら、それを実際に物体として作る必要はあるのか? っていうことなの。彼の説明文はすごく鮮烈で、それらの作品をそれ以上発展させる必要があるのか、という概念に対する挑戦になっていた。私たちは2013年12月にロサンゼルスで会って、彼は大量のテキストを作り、私はそれに合わせる曲を書いたの。楽しくてスピーディーなプロセスだったわ。
彼がその曲のために書いたテキストは、インターネット上のプライベートな瞬間、たとえば深夜にオンラインで靴下を見ながら「購入」ボタンの上で逡巡しているときのような、ブラウジングを収益化するために研究されることの多い瞬間にインスパイアされているの。あなたに「購入」をクリックさせる完璧なデザインをするために、誰かが多大な努力を払っている。彼はある意味でそういった瞬間を取り戻しているようなものね。

“ロンリー・アット・ザ・トップ”は世界の上位1パーセントの富裕層に向けて書かれたクリティカル・ASMRよ。

ASMRに触発されたトラックが収録されているとききました。どのような部分に共感されたのでしょうか?

HH:ASMRは人々がインターネットを介した、身体的な刺激を伴う親密性に関与するということのとても興味深い例になっている。海を越えて、誰かが他の誰かの身体にチクリとした感覚を与えられるかもしれない、なんてなかなか美しいアイデアだと思うし、そういったアイデアを中心として、それらのコミュニティがいかに調和がとれて、支え合うようなものになっていったかを見てとても力づけられた。去年の夏にクレア・トランと会って、私たちは「クリティカル・ASMR」を書いてみるっていうアイデアを思いついたの──このテクニックを使って、アクティヴィスト的なメッセージを身体に伝えることができるんじゃないかっていうことに対する考察としてね。“ロンリー・アット・ザ・トップ”は世界の上位1パーセントの富裕層に向けて書かれたクリティカル・ASMRよ。

「ホーリー・ハーダン」という名義はあなた個人のプロジェクトから、ある種複合的なプロジェクトに変容していっているのでしょうか?

HH:それこそが『プラットフォーム』の背景にあるアイデアなの。これは私の活動で、私がこれらすべてのプロジェクトを指揮しているんだけど、刺激を与えてくれる人々をどんどん巻き込むために、活動を拡大させていっている。それが私自身の作品をよりよいものにするのと同時に、音楽産業の仕組みの、より透明性が高くて正直な姿を映し出すことにもつながっていると思う。あまねくアルバムというものは、多大なコラボレーションと他の人たちからのインスピレーションを含んでいるんだし、私はそれを祝福することを選んでいるだけよ。他の人たちからのインスピレーションを認めたり、自分の活動を他の人たちに対して開いても、これが私自身の作品であることに変わりはないと思う。私はただ、自分ひとりでコンピューターに向かって曲を作ることが少し刺激に欠けるように感じはじめただけなの。

あまねくアルバムというものは、多大なコラボレーションと他の人たちからのインスピレーションを含んでいるんだし、私はそれを祝福することを選んでいるだけよ。

「プラットフォーム」の中にあなたの過去の人生経験や体験、宗教観や哲学などのパーソナリティが反映しているものがあれば具体的に教えてください。

HH:答えるのが難しい質問ね。私は特定の宗教に属してはいないし、特異な哲学的傾向を持っていて、それはもちろん自分の体験から生まれたものでもある。私は物事に対してオープンな方で、それは私がアメリカの南部出身で、大人になってからのほとんどの年月を教育の機会を求めて旅して回って過ごしてきたことを象徴していると思うし、私が自分のプロセスをできる限り透明性の高いものにすることにこだわってきたことにもそれが表れていると思う。透明性を支持することは、私が体現する基本的な哲学上の立場だと思うし、それが私が子どもの頃から抱いてきた楽観的な感覚をもたらしていると思う。物事はよりよくなることができるし、それはとくに私たちが世界の中で学んで行動することに対してオープンでいるならなおさらよ。

残念ながら僕は未だにあなたのライヴ・パフォーマンスを観れておりません。ライヴではリアルタイムのヴィジュアル・プロセシングはおこなっていますか? またあなたが目指すライヴ・パフォーマンスとはどのようなものでしょうか。

HH:私のいまのショウはリアルタイムのビジュアル・プロセシングを組み合わせたもので、アキヒコ・タニグチが開発した、3D空間の部屋の中でオブジェクトや不思議なものの集まりを作ることのできるシステムを使っているの。とてもパフォーマンス性の高いシステムよ。それがハイテクな面で、ローテクな面はマット・ドライハーストによるもので、彼のやることはすべてデータ・マイニングを基礎にしている。彼はソーシャルメディアのツールを使って誰がその場に来るかを予測して、テキスト・エディットを使って観客の中の人々についてのストーリーを書くの。これはコミュニケーションのプロセスを、時には居心地の悪いほど、そして時にはユーモラスなほどダイレクトなものにしている。アキヒコのプロセスもマットのプロセスも、10年前には不可能だったと確信を持って言えるし、どちらも最新のテクノロジーを極端に異なった方法で使っていて、興味深いわ。

アキヒコのプロセスもマットのプロセスも、10年前には不可能だったと確信を持って言えるし、どちらも最新のテクノロジーを極端に異なった方法で使っていて、興味深いわ。

ホーリー・ハーンダンとして今後、レコードやCDフォーマット以外の作品、たとえばウェブ・コンテンツやインスタレーションなどを発表する予定はありますか?

HH:ええ、私は過去にもたくさんのアート作品を作ったことがあるし、この夏にはハンブルクにある博物館のためのインスタレーションに取り組んでいて、その他に2つほどのウェブ・プロジェクトにも参加している。レコードは私の活動のひとつの重要な側面だけれど、私にとっては異なる分野の間で自分のあらゆる好奇心を追求するために時間を費やすことが大切なの。それが私を自分の作品に対してエキサイトしつづけさせてくれるわ。

フィジカル・インストゥルメントによる電子音楽は陳腐だと思いますか?

HH:場合によるわ。時にはそうだと言えるし、ほかの場合にはそんなことはない。ケース・バイ・ケースね。私は厳格主義者じゃないの。長い間、ラップトップでパフォーマンスをするのはダサいこととして扱われていたから(幸いなことにそれは変化しつつあるけど)、私はラップトップ・ミュージックを弁護しなければならなかったけど、だからといってフィジカル・インストゥルメントに否定的なバイアスを持っているわけではないの。何であれ、最良の作品を作るために必要なものを使うっていうだけのことよ。

私にとっては、それを作った年について語る作品を作る方が、なにか「タイムレス」なものを作るために気を揉むよりもはるかにいい。そういうのってシニカルで無難なやり方をしなければ、意識的に到達できない目標だと思うの。

現在の自分の作品が10年後にどのように評価されるか考えることはありますか?

HH:そういうことは考えたことがないわ。私は一時的な作品を作ることを恐れてはいないの。私にとっては、それを作った年について語る作品を作る方が、なにか「タイムレス」なものを作るために気を揉むよりもはるかにいい。そういうのってシニカルで無難なやり方をしなければ、意識的に到達できない目標だと思うの。もちろん、あとから振り返って私が何か価値のあるものに貢献したと思えたらそれはいいことだと思うけれど、それが起きるチャンスは、こういうことに神経を使うことで制限されてしまうと思う。私たちには10年後に何が問題になるかなんてわからないし、だからこそいま作る必要があると感じる作品を作るという選択肢しかないわ。

過去の音楽活動を振り返って、自身がローカル・ミュージック・シーンに属していたと思える時期と場所はありますか? もしありましたら、それはどんなものだったでしょうか? またなければ、あなたにとってそういったシーンとの距離とはどのようなものだったでしょうか?

HH:私は2000年代後半頃にベルリンのDIYノイズ/インプロ・シーンに属していたことがあったんだけど、そのシーンは現代音楽にとって多大な形成的影響を与えたと思う。いまはまったくちがう作品を作っているたくさんの素晴らしいミュージシャンたちが、その頃ノイズ・レーベルからテープをリリースすることで活動をはじめたの。オークランドとサンフランシスコではインダストリアル/エクスペリメンタル・ミュージック・シーンの一部であると強く感じたし、いくつものバンドで演奏した。いまはそういうことははるかに減ったわ、私には尊敬する仲間たちがたくさんいるけど、多少私自身のスペースに場所を移したと思いたいな。たくさんのミュージシャンたちがエクスペリメンタルの分野からクラブへと移っていったけど、私たちはみんなそれぞれ音としてはとてもちがっているし、とてもちがった方向へと進んでいる。リスペクトはあるけど、必ずしもそれをシーンとして認識はしていないの。

Are you still clubbing ?

HH:それほどしていないわ。よくクラブで演奏するからクラブで過ごす時間は長いけれど、かなり忙しくなってきて、自由な時間のほとんどは、読書か新しい作品作りに費やしているの。この夏は多少クラブに行けるといいと思っているわ、四六時中仕事しすぎてしまいそうで心配だし。

快速東京 - ele-king

 この天気、嫌ですよね〜。湿度は高いし、外で遊べないし。さてさて、このしけたご時世に、気前のいい話が舞い込んで来ました。
 いまや若者から絶大なる共感をかき集めていると言われるロック・バンドの快速東京は、本日7月6日の22時より、ニュー・アルバムを無料ダウンロードにてリリースします。アルバム・タイトルは『レッドブルー』。録音場所はレッドブル・スタジオ。こちらに最新インタヴューが載っています。(DL情報も記載アリ)
 https://www.redbullstudios.com/tokyo/articles/kaisoku-rapid-recording-free-download-with-kaisoku-tokyo
 無料だし、友だちにも教えてあげましょう。
 なお、このアルバム・リリース記念として7月17日の金曜日、新代田FEVERにてワンマンライヴもあります。これまた無料です(ただし、2ドリンク代がかかります)。
 チケットはメール予約のみで、ごめんなさい、もう間に合わないかもしれないけど、いちおうメールアドレスを。(kaisoku_ticket@fever-popo.com
 

15.07.17 (Fri) 快速東京ワンマン“おおいそぎ”
at新代田FEVER
OPEN19:30/START20:00
ADV ¥0(+2drink)
ーーーーー
<快速東京HP>
kaisokutokyo.com

interview with The Orb(Alex Paterson) - ele-king


THE ORB
MOONBUILDING 2703 AD

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 ジ・オーブの新譜が、すごく良い。これはちょっとした事件だ。彼らの作品だから当たり前のこと? もちろん、そうだ。だが、もはやその名を知らぬもののないアンビエント・テクノの第一人者であり、20年以上も活動しつづけるベテランが、こんなにも新鮮で、それでいて濃厚で、そのうえ生き生きと音の遊びとファンタジーを満ち溢れた現在進行形のアルバムを生み出したのだ。ここにはカビの生えたアンビエント・テクノなトラックなど1曲たりともない。

 同時にベテランだからこそ作り得る味わいも魅力的だ。まるで20世紀音楽の濃厚なスープとでもいうべきか。テクノを基調に、ダブ、ジャズ、ディスコ、エレクトロ、電子音楽、サントラ、ムード音楽など、さまざまな音楽のダシが見事に溶かされた絶妙な味わいがたまらない。「ミュージック・コンクレート・テクノ」とでも形容したいほどである。
まさに彼らのスキルのすべてが投入されたかのような驚異的な本作。あの傑作『オルヴス・テラールム』(1995)に匹敵するアルバムだとも思うのだが、どうだろうか?

 今回、われわれはジ・オーブのアレックス・パターソンに、この新作について質問を投げかけてみた。ブラックユーモアを繰り出しつつも、彼はこの作品への手ごたえを語っている。SF、月、〈コンパクト〉、制作の日々、サンプリング、ビート、DJ、盟友トーマス・フェルマンのことなど、本作をより深く聴くためのカギが、ここにある。壮大な20世紀音楽のカオスの中に込められた「音楽」とはいったい何か?

■The Orb / ジ・オーブ
アレックス・パターソンを中心に結成され、現在はトーマス・フェルマンとの二人体制にて活動、アンビエントやダブをキーワードにハウス/テクノのあり方を追求しつづけてきたベテラン、ジ・オーブ。両者の完全コラボ・アルバムとして〈KOMPAKT〉からリリースされた『OKIE DOKIE IT'S THE ORB ON KOMAPAKT』から10年、ジ・オーブ名義のフル・アルバムとしては『BAGHADAD BATTERIES』以来6年振りとなる、全世界待望のニュー・アルバム『MOONBUILDING 2703 AD』が本年2015年発表された。

グルっと大きくサイクルが周回した一枚というか。本作に至る道のりというのは長く複雑なストーリーだったんだ。

通訳:もしもし。

アレックス・パターソン(以下AP):うん?

通訳:取材をはじめてもオッケーですか? なんだか眠たそうな声ですけども……。

Ap:いや〜、大丈夫。俺はいつもこういう感じなんだ。

わかりました。それでは最初の質問です。新作『ムーンビルディング 2703 AD』は、大変素晴らしいアルバムで感動しました。さまざまな音楽的な要素を詰め込みつつも最高にジョイフルで快楽的。この作品が、これまでのアルバムと比べて、もっとも「変わった」と思うのはどのような点とお考えでしょうか?

Ap:うーん、もっとも変わったところといえば、ここしばらく俺たちはジ・オーブ以外の人びとといろんなコラボレーションをやってきたんだ。リー・“スクラッチ”・ペリーとかデイヴィッド・ギルモア、そしてユースといった面々だな。
 ところがこの新作は俺たちだけで作ったアルバムだ。その意味では『バグダッド・バッテリーズ』(2009)に非常に近い。あれはごく小さなイギリスのレーベルから発表したために、とても露出度が低くて、ほとんど知られていないような作品なんだけども――。だけど今回の自分たちは、このアルバムをプロモートするのに最適なレーベルを選んだっていうのかな。〈コンパクト〉のことだけど、彼らとは2005年にいっしょにアルバム(『オーキー・ドーキー・イッツ・ジ・オーブ・コンパクト・ディスコ』)をやったことがあってね。あのアルバムもトーマス(・フェルマン)と俺のふたりだけで作った作品だったから、その意味でもグルっと大きくサイクルが周回した一枚というか。そうはいっても、俺たちがいわゆる「成熟した」ってわけじゃなくて、ジ・オーブの最初のアルバム5枚でやったあらゆる要素を引っ張ってきて、それらを用いつつ、より新しく、かつ、もっとハッピーなサウンドをクリエイトしてみたっていう。

制作にはどれくらい時間がかかりましたか?

Ap:ハッハッハッハッハッ! まあ、実際、信じられないくらい長い時間がかかったよ!ほぼ4年を費やした……というのも、このアルバムと並行してほかのプロジェクトにも取り組んでいたからね(長く息を吸い込む)。
 もともとはロンドンにある〈コヴェント・ガーデン・オペラ・ハウス〉(※ロイヤル・オペラ・ハウスのこと)のために、とある音楽作品を作っていたんだ。ところが保守党(Tories)が最初に政権を握ったところで(※2010年に行われた総選挙。保守党党首デイヴィッド・キャメロンが英首相に就任し、今年の総選挙でキャメロンは再選され首相2期めに入っている)、連中は緊縮財政政策の名の下にいろんな規則や規制、予算削減案を打ち出していった。そこで芸術活動に対するさまざまな政府助成金も打ち切りになり、俺たちもまた――まあ、なにも俺たちだけって意味ではなくて――、そのプロジェクトそのものが立ち消えになってしまった。
 で、オペラ・ハウス側はそれまで作ってきた音楽の一部を俺たちに返却することになり、そこで俺たちはその音楽ピースの中からなんとなく「オペラ的」と呼んでいた要素群を排除して、こうして『ムーンビルディング 2703 AD』というアルバムが手に戻ってきた、ということだ!
 だから、本作に至る道のりというのは長く複雑なストーリーだったんだ。しかも、この企画(最初のオペラ企画および『ムーンビルディング 2703 AD』)と並行して、俺たちはリー・“スクラッチ”・ペリーとも仕事していたわけで。

通訳:この4〜5年は非常に多忙な時期だったようですね。

Ap:ああ、そうだね。それに、俺たちはその間にツアーもやっていたわけで。その忙しさのツケは、いま、間違いなく回ってきてるわけだけど(笑)。

俺はそのとある本から視覚的なインスピレーションを受けた。『月を作ったのは誰?』 ってタイトルのものなんだ。……「コンスピラシー本」に近いものだと思うけど。

今回のアルバム、音の変化がシーンの変化のようでとても映像的、というか映画を観ているような感覚になりました。何かインスピレーションを受けた映画などはあるのでしょうか?

Ap:いや、映画はないな。ただ、ある本があって(ちょっとおかしそうに)……。ということは、俺はそのとある本から視覚的なインスピレーションを受けた、音楽的なアイデアを本からもらったってことになるのかな? ともかく、その本は『フー・ビルト・ザ・ムーン?(Who Built The Moon?)』(「月を作ったのは誰?」)ってタイトルのものなんだ(※クリストファー・ナイト、2005年)。

通訳:いわゆる科学系の論文/リサーチ本なんですか? それともフィクションやSF本?

Ap:そうだなぁ、それよりも「コンスピラシー本」に近いものだと思うけど。

通訳:(爆笑)最近出版された本なんですか?

Ap:ああ、わりとまだ最近の本だよ。グーグルで調べてごらん。すごく興味深い本だから。で、あの本の大まかな内容というのは、月にまつわる神話というか、「地球の培養器としての月」という考えを述べたもので。
 月というのは、かいつまんでいえばそういう役割を果たしているんだよ。月によって地球の潮の満ち引きも生じているんだし、時間の測定にも月の満ち欠けが使われている。だから、俺たちは月の動きに従って生きているわけだ。で、月の周期にあたる28日間の中で、俺たちにはさまざまなことが起きる。それで、あの本の説は「われわれが知るこの月というのは人類のために造営されたもの、人類が現状どおりに棲息するために存在する惑星である」といった固定したアイデア/セオリーを打ち破って、何通りもの別のセオリーを導入するものだっていうね。「ほかにもこういう場所は何千も存在するにちがいない、月は無数に存在するんだ」って考え方だよね。
 で、そうした月のような存在は、スーパー・エイリアンたち、人類の文明を作り出した「超宇宙人たち」によって造り出されたものだ、と。

とても興味深いお話です(笑)。では次の質問です。本作は『オーキー・ドーキー・イッツ・ジ・オーブ・コンパクト・ディスコ』以来、久しぶりに〈コンパクト〉からのリリースですよね。もう少しだけその経緯などを教えてください。

Ap:そうだね、自然な流れだったよ。今回は俺たちとしても「〈コンパクト〉が出したいのなら、ああ、ぜひ!」って感じだったし。〈コンパクト〉との1枚めのアルバムは、「俺たちが〈コンパクト〉のために作品を作るとしたらこういうものだ」というのを提示する内容だったっていうのかな。
 だけど今回の新作は、そうした「規則」みたいなものにいっさい縛られなくてよかった。とくに4曲めの“ムーンビルディング 2703 AD”がそうなんだけど、あのトラックは曲が進むにつれてものすごく妙な感じになっていく。ほとんどジャズというのか、一部にダブまで混じってくる。だから「ひとつのミックス/音楽の混交体」として考えれば、ある意味すごいミックスなんだけど、そうは言ってもやっぱり最終的に多彩な要素を持つミックスの中にもテクノ・ビートの鼓動は一定してドクドク続いている。それに天使の奏でるような美しいストリングスだって聞こえるわけだし。うん、ほんと、これ以上、いうことなしだろ? ってもんだよ。

「ひとつのミックス/音楽の混交体」として考えれば、ある意味すごいミックスなんだけど、そうは言ってもやっぱり最終的にテクノ・ビートの鼓動は一定してドクドク続いている。

で、〈コンパクト〉そのものについていえば、そもそも俺たちとの相性は最高なわけだ。いうまでもなく、音楽作品のリリースを通じて彼らのことはとてもよく知るようになったし、それにトーマス(・フェルマン)は、アーティスト個人として2000年代初頭あたりから〈コンパクト〉と付き合いがあったんじゃないのかな?
 だから今回彼らとやることになったのは、古い友人に久々に再会して、そこでまたいい感じでウマが合った、みたいなもので、万事好調。それに〈コンパクト〉の連中もこのアルバムをすごく気に入ってくれている。うん、それは素晴らしいボーナスだよ。というのも、俺たちは――というかこのプロジェクトの進行そのものが、当初の予定よりもずいぶん遅れていたから。

通訳:〈コンパクト〉は、あなたたちをしっかりサポートしてくれている、と。

Ap:ああ、まったくその通り。ばっちり支援してくれてるし、それにこうした関係というのは、双方向に作用するものだから。

『ムーンビルディング 2703 AD』というアルバム名にはどのような意味、もしくはイメージが込められているのでしょうか?

Ap:それはさっき触れた本について話した部分ってことになるよね。オービアンズだとか、月は地球の培養器だとかいうアイデアとか。それにSF本をたくさん読んでいるような人間なら、彼らなりにSFな物語を作り上げることができる。べつに書物にかぎらずSF映画たくさん観ているってことでもでもいいんだけど。その手の本の書き手としては、フィリップ・K・ディックは非常に良い作家だ……。もちろん、いま言ったのはあくまでSF界のわかりやすい「たとえ」として挙げただけのことだよ。べつに彼(=P.K.ディック)がこのアルバムの参照点になってる、というわけじゃないんだ。それよりもこの作品ではさっき話した『フー・ビルト・ザ・ムーン?』って本、あれが大きい。

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リー・“スクラッチ”・ペリーはもうとにかく完全なる「天才」だったね。で、ミスター・ギルモアに関して言えば、彼は「閉じた孤高の人」って感じだったというか。


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メタリック・スフィアーズ』(2010)でデイヴィッド・ギルモア、『ジ・オーブザーバー・イン・ザ・スターハウス』(2012)でリー・ペリーとコラボレーションを行いましたが、それらの経験が本作に与えた影響などはありますか?

Ap:そうだなあ……フブブブブブブゥ〜ッ・ブルルルルブブブッ!(と唇を震わせながら、考え込んでいる模様)どうなんだろう? そういうのって簡単には答えにくい質問というか、というのも、何もかもがお互いに影響・作用しているわけだし、波紋みたいなもので、何もかも誰もかもが影響しあうし、いま、君のやることだってすべてに影響を与えているわけだし(笑)。
 だけど、まあ、リー・“スクラッチ”・ペリーのほうが、実際に「誰かと出会った!」って体験だったといえるかな。というか彼と対面する前から、彼の音楽からもそういう衝撃は感じていたんだけど。対してデイヴィッド・ギルモアは、なんだかんだいっても「ピンク・フロイド」だったっていうかな。
 えー、ともあれ! 彼らと実際にいっしょに仕事してみた経験がどうだったかと言えば、「英雄視している人間には、(会うと幻滅させられるから)実際に会わないにかぎる」ってのはよく聞くフレーズだけども、そのうちのひとり──これはリー・“スクラッチ”・ペリーのことだけど、彼はもうとにかく完全なる「天才」だったね。で、ミスター・ギルモアに関して言えば、彼は「閉じた孤高の人」って感じだったというか。「(重々しい口調で)俺様はデイヴィッド・ギルモアだ」みたいなノリで(笑)。こっちはグウの音も出ないよな。まあ、彼に対して失礼にならないように説明したまでだけども(笑)。
 ああ、そうだ! つい先週の話だったんだけど、ピンク・フロイドの現時点での最新作を共同プロデュースしたユースから連絡をもらってね。彼は目下のところデイヴィッド・ギルモアの新作ソロの共同プロデュースみたいなことをやっているところで、そのデイヴィッドの新作曲のリミックスをいくつかやってみないか、と誘いを受けたばかりなんだ。

通訳:おお、そうなんですか。

Ap:ジャジャーン! ジャーナリストさんにはうれしい「ホットな」ニュースじゃない?

通訳:これは明かしてもいんですか?

Ap:ああ、べつにかまわないんじゃないの?

俺たちも成熟して、いまやこうしてさまざまな歌のエレメントをひとつにして、その上で映画めいたシナリオへとまとめることができるようになったわけだよ。

今回のアルバムのトラックは、かつてのジ・オーブのスタイルを踏襲するかのように4曲とも長尺ですね。

Ap:オールド・スクールに陥らないようにしたってことだよ!(※このスタイルはジ・オーブの古典的なスタイルなので反語的な冗談)。
まあ、こういう構成にした点について、現時点ではいっさい批判の声は上がってなくてね。といずれこのアルバムが一般に広まることで、将来的には何らかの批判もされるだろうとは思うけど、そうは言ってもこのアルバムは非常に好調だし、そのうちに俺たちの耳に入ってくるであろう批判の声が届く前の、いまのこの段階では、聴いた誰もが気に入ってくれている。素晴らしいことだ。
 で、アルバムの曲を長いものにしたのは意図的なものだ。あれらの楽曲をオーパス(クラシック音楽で使われる作品番号:opのこと)みたいなものにしたかったんだ。要するにクラシック音楽作品のそれだよね。4分台の曲だとか6分台の曲っていうふうに。これはダンス・トラックです、これはポップな曲です、という具合に切れ切れで表示されるものではなく、これはひとつの「オーパス」であり、トータルな音楽作品なんだ、と。
 だから俺たちも成熟して、いまやこうしてさまざまな歌のエレメントをひとつにして、その上で映画めいたシナリオへとまとめることができるようになったわけだよ。その「映画的」という点は、すでに君自身も指摘してくれた話なわけで。うん、われながら今回は巧みにやれたなと思う(笑)! そう感じられること自体、いまの音楽界においては「ナイスなボーナスがついてきた」ってことなんだけどさ。
 で、そうだなあ、あとはもう映画むけのいい音楽を探している日本の映画プロデューサー氏が声をかけてくれるのを待つのみっていうか。こっちは準備万端だからね、お待ちしてます! (冗談っぽい、うさん臭い客引きを思わせる口調で)「これ、いいでしょ? どうです? やってみません?」(笑)。

通訳:プロデューサーの誰かがこのインタヴューを読んでくれるのを祈りましょう!

さまざまな音楽的な要素、テクノからエキゾ/エスノ、ディスコからダブまでが1曲の中に詰め込まれており、まるでミックスCDを聴いているように驚き満ちていました。このような長いトラックを作っていくにあたって構成のようなものを決めて作っていったのですか? それともいくつかの断片のようなものをDJのように繋いでいく手法だったのでしょうか?

Ap:そもそも、これはすべてサンプリングから成り立っている作品だ。俺が言いたいのはそれだけだな。で、そこから君たち自身で回答を導き出してもらいたいな。それくらいシンプルな話だよ。
 まあ、サンプリングだという点は、どれも非常に巧妙に隠してあるし、俺たちは何もかもすっきりと小綺麗にまとめていったわけだけども。

通訳:なるほど。アルバムの制作にこれだけ長い時間がかかったのも、道理なわけですね。

Ap:そうそう! ほんとそう。4年もかかったっていう。

ポップ・ソングの構成というのは「ヴァース/コーラス/ヴァース/コーラス/コーラス/コーラス/フィニッシュ!」みたいなものだけど、対してこの作品というのは、なんというか、すべての要素が思うままにいろんな方向に向かっていき、しかも好き勝手に戻ってくるみたいな構成で(笑)。

今回、ビートの組み方や音色が(とくに2曲め“ムーン・スケープス2703 BC”など)、これまでのジ・オーブとはちがう印象を受けました。新しいビートを創るということを意識されましたか?

Ap:っていうか、それはつねにそうなんだって! 俺たちは絶対に同じサウンドは繰り返し使わないし、トラックごとに別のサウンドへ、いや、サウンドばかりかBPMや楽曲の構成すら変えていく。その変化というのも君が前の質問で指摘してくれたことだけども。
 で、まあ、この話は今回のアルバム向けの取材で、毎回出てくる一種の「繰り返しのテーマ」みたいなものになっていてね。ひとつの曲の枠組みの中に、さらにまた別の構成が入れ子のように含まれているんだ。ポップ・ソングの構成というのは「ヴァース/コーラス/ヴァース/コーラス/コーラス/コーラス/フィニッシュ!」みたいなものだけど、対してこの作品というのは、なんというか、すべての要素が思うままにいろんな方向に向かっていき、しかも好き勝手に戻ってくるみたいな構成で(笑)。だからなんだよ、曲の尺がいちいち長いのも。それ以外に理由はないし。自分たちでもこういう作品をやっていてハッピーだし。同時に人びとも大いに喜んで聴いてくれてる気配もあって。
 うん、俺たちとしてもこの作品でいい成果を達成できたと思っているんだよ。(批判が出てこない)いままでのところは、ってことだけども。

4曲め“ムーンビルディング 2703 AD”はどこかモンドでエキゾチカな雰囲気から始まり、まるで世界旅行と時間旅行と音楽旅行を同時にするような感覚を味わいました。まるで「アンビエント・テクノのマーティン・デニー」のような雰囲気でした。

Ap:それは素晴らしい褒め言葉だね。

この曲を作るうえでコンセプトのようなものはありましたか?

Ap:うーん、俺とトーマスとの作業の仕方は、とても流動的で自然に流れるようなものなんだよ。俺たちの場合はあれこれ話し合ったりすることなく、とにかくやってみる。だから、俺たちふたりはいったんスタジオに閉じこもるとほかの誰も寄せつけなくなる。ガールフレンドも友人連中も消える。すべて追い払ってしまうんだよ。で、食べ物なんかもスタジオ内に持ち込んで、そうやって文字どおりスタジオに5日間住み込みで、ひたすら作業する。
 それはものすごくハードな作業だよ。俺たちは、スタジオに詰めている間は大体朝10時か11時ごろに起きて作業を開始して、午後2時ごろに昼食のためのブレイクを挟んで4時ごろにスタジオに戻る。そこから、サッカーの中継が混じることもあるな。じつは俺たちはどっちも大のサッカー・ファンなんだよ。だからテレビでサッカーの試合を観戦したりもする。ってのも、スタジオにいる間は何もかもから切り離されているわけで、ああやってサッカー試合を見ることで頭のスウィッチをしばし切ってリラックスできるし、テンションの高い状態から離れられるからね。
 で、またスタジオ作業に戻り、夕食をとった後に午前2、3時ごろまで仕事を続ける。そうして再び朝が来て、前の日と同じ作業パターンを繰り返す。で、作業の3、4日めあたりには、それまでの成果を聴いてもらうべく、ほかの人間をスタジオに呼ぶこともあるかな。俺たちはいつだってこういうやり方で作ってきたんだ。そうだなあ、かれこれこういうプロセスを20年近く続けてきたことになる。だからコンセプトっていうのは、俺たちが1日くらいをかけて何かに取り組んでいるうちに徐々に明らかになってくるようなものだ。しかもそこから実際にレコーディングするのに1年くらい費やす。

俺たちふたりはいったんスタジオに閉じこもるとほかの誰も寄せつけなくなる。ガールフレンドも友人連中も消える。文字どおりスタジオに5日間住み込みで、ひたすら作業する。

 このアルバムは完成させるまでに非常に長い時間がかかった作品だし、じつは、はじめた時点で手元にあったオリジナルのパーツを、俺たちは取り去ってしまったんだよ。そうした箇所は消えてしまって、もはや存在しない。そもそものアイデアはガイダンス程度というか、絵を描くときに近いっていうのかな。最初に描いた素描はあるわけだけど、その上に絵の具を重ねるからスケッチは見えなくなってしまう。だからほんと自分自身に見えているものの大まかな輪郭/ガイドラインに過ぎないんだ。ところがそうやって続けていくうちに、俺たちふたりにはやがてより大きな全体図が浮かび上がってくる。どうだ、参ったか! ってもんだよ。

日本盤にはボーナストラックが“ムーン・クエイク 1””、“ムーン・クエイク 3 ”の2曲が収録されています。これはアウトテイクのようなものでしょうか?

Ap:いいや、ちがうね。ってのも、俺たちはライヴでたくさんのミックスをやる。便宜上、番号をつけて呼ぶことにすれば、“ムーン・クエイク 2”だの“-4”、“-7”といった具合に、このいわゆる“ムーン・クエイク”・ミックス群がいくつも存在するんだ。それこそ35秒のものだってあるし。
 というわけでいろんな類いのサンプルを、エイブルトン上で曲の最後か何かにまとめて突っ込んで、俺たちはそのままレコーディング作業を続行していくことにした。自分たちでも何が出てくるかわからない状態のまま、いま言った特定のサンプル群のどのパーツが顔を出すか見てみることにした。“ムーン・クエイク”・ミックスの一部は、そういう過程の中から生まれたものなんだよ。要するに完全なるインプロってこと。コンピューターの能力を試すべくやってみた、そういうものだね。

では、“ムーン・クエイク 2”も存在する?

Ap:存在する……のかもしれないよ? あー、うん、俺には聴いた覚えがあるね。

ここ2、3年で何度かフランスを旅したことがあったんだけど、たぶんあの国にはいま現在でベストなクラブ・シーンが継続中だと思う。

これまでのジ・オーブは、作品ごとに「イギリス的」か「ドイツ的」といった音楽的な印象がありましたが、今作はイギリス的な雰囲気の中にドイツ的なビートが絡むように感じました。今回のアルバムではどんな景色をイメージしましたか?

Ap:そうねえ、「月世界に暮らす人びと」ってものじゃないの? で、それもまた、いま君が言ったような「ドイツ的/イギリス的」って考えから離れようってことだったんだろうし。
 そうは言ったって、俺たちはどちらも、それぞれにドイツの音楽から、そしてイギリスの音楽から影響を受けているのは間違いなくて。ただ、一方で俺はレゲエ・ミュージックから強く影響を受けたし、対してトーマス(・フェルマン)はジャズから大きく影響された。かつ、俺たちはどちらもアメリカ産ヒップホップを愛してもいる。それに俺はもうちょっとクールな領域も好きで、たとえば日本からは実験的なバンドがいくつも出て来たし、彼らはすごく興味深いと思っているよ。
 それにここ2、3年で何度かフランスを旅したことがあったんだけど、たぶんあの国にはいま現在でベストなクラブ・シーンが継続中だと思う。だからフランスの連中はドイツを越えたってことなんだけど、なのに誰もフランスのいまのクラブ・シーンについては語ってないっていう(笑)! それって奇妙な話だよな。だけど、俺たちにとっての最近のベストなショウ、過去3年間でのベスト・ギグと言えば、ひとつはパリ。もうひとつはリヨンで行ったライヴのふたつだったね。うん、彼らは素晴らしいよ。

今回のアルバムには不思議と「50年代」の雰囲気を感じました。50年代のSF映画やモンドなエキゾチックな電子音楽が現代のテクノでよみがえったような。50年代的な雰囲気を意識されましたか?

Ap:いや、それはなかったね。ただ、潜在意識の中ではそういうことは起きるものだろうっていう。ってのも俺たちはどっちも50年代生まれだから(笑)。それで充分な答えになってるんじゃないの?

通訳:なるほど(笑)。

Ap:うん、っていうか、見事な回答だよな。以上。

サンプリングという行為そのものを理解できるか? っていう。ミュージシャンの多くは、サンプリングが何なのかをまったく理解していないからね。

今回のアルバムでもサンプリングを多用されている、ということでしたが──

Ap:そうなのかもね〜(笑)?

先ほどそうおっしゃっていたので、サンプリングを多用したアルバムと考えることにして(笑)、サンプリングはサウンドにどんな効果をもたらすものですか?

Ap:サウンドそのものへの効果は極めて小さいものだよ。だから、サンプル音源の中からちょっとしたビートや細かなノイズだけを選び出して、それらをもとに俺たち自身のオリジナルな音楽を作り出していくわけだから。ドラム・キットを所有してドラムを叩きまくるってのに、ちょっと似てるんだ。要するに俺たちは細かなサンプル群をバシバシぶっ叩いて、そこから自分たちの音楽を作っている。

通訳:サンプリングからまったく別の音楽を作り出すというのは、気の遠くなるような作業ですね。

Ap:いや、だけどもサンプリングに長けた人間にとっては、あれはすごく有用なテクニックなんだよ。やるのが難しいかどうか云々といった話ではなくて、とにかくサンプリングという行為そのものを理解できるか? っていう。ミュージシャンの多くは、サンプリングが何なのかをまったく理解していないからね。で、そういう状況は俺としては大いに好都合! ってもんだ。うん、ほかの連中が無知なままの世界ってのは、俺は大歓迎だ。
 だからってなにも「サンプリングを使いこなせるからその人間は賢い」って言いたいわけじゃないんだよ。ただ、ほとんどの人間は「ビート」が何かをわかっちゃいないからね! 彼らはテンポを維持することすらできないし、したがって、彼らはDJをやることもできない。というのも、DJをやるときはふたつの異なるトラックをミックスするわけだし、テンポがズレてたらそれすらできないだろ? で、俺はたまたま、そういうことができるスキルを持った人間のひとりだっていう。
 だから俺たちがスタジオで作った音源のマッシュアップをやってみるときにしても、俺たちはその場でさまざまなリズム群を作り出すことになるわけだけど、ふたりとも自動的にわかるんだよ。同じピッチと同じチューニングへと、すぐに落ち着くことができる。というのも、俺たちはその面をしっかりとモノにしているから。
 だから(薄笑い)、4小節くらいのループを引っ張ってきて、それをサンプリングするみたいなお手軽なものじゃないってこと。俺たちがやっているのは、それこそミリ単位の、1秒程度の微小なサンプル音源っていうレベルの話だし、そこからその音源を別の何かに置き換えることだってできるし、もっと大きな何かへと発展させることも可能なんだ。ほんの小さい、短いサンプル音源がハイハット・サウンドにまで化けることだってあるんだしね!

4小節くらいのループを引っ張ってきて、それをサンプリングするみたいなお手軽なものじゃないってこと。

通訳:それは辛抱強い作業ですね……。

Ap:辛抱強さというのはいい性質だよ。で、まあ、基本的に俺たちは、あらゆる類いの音源をベースにして、それらをワイドなハイハット・サウンドにまで膨らませていった。だから、(サンプリングを使えば)何だってやりたいようにやるのが可能だ。とはいってもいま挙げたのはあくまで「例」であって、サンプリング・ソースは何も音楽作品に限った話じゃないしね。日常的なありふれた音からだって、サンプルをやることはできるんだよ。

最後の質問です。このアルバムに限らずですが、おふたりが長く共同作業をしていくうえでコツのようなものはありますか?

Ap:それぞれがちがう国で暮らすってことだね。

通訳:しょっちゅう彼と顔を付き合わせないですむ、という(笑)。

Ap:その通り! キモはそういうこと(笑)!

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