「ele-king」と一致するもの

interview with Satoshi Tomiie - ele-king


Satoshi Tomiie
New Day

Abstract Architectur

House

Tower HMV Amazon

 ハウス・ミュージックの生みの親、フランキー・ナックルズにその才能を認められ、ハウス・シーン興隆の時代から現在まで世界の第一線で活躍しつづけるサトシ・トミイエ。90年代に世界中のハウス/R&Bファンから熱い支持を受けたデフ・ミックス・プロダクションズで不動のキャリアを確立した彼は、その豪華でソウルフルな表現から離れることをみずから選び、脱皮するようにスタイルを変化させてゆく。
 日本人でありながら、黒人文化から派生したハウス・シーンの中心で活躍した彼にとって、歌、とはなにか。なぜ徹底的に音を削ぎ落としてゆくのか。PCでのDJからレコードに回帰して見えてくるものや、いまだからこそアナログ機材に向き合うおもしろさ──。先日発表されたばかりのセカンド・アルバム『New Day』について、そして現在のハウス・シーンの状況も含めた幅広い内容について訊ねることができた。

東京出身のDJ、プロデューサー。1989年、故フランキー・ナックルズとの伝説のコラボレーション作「Tears」でデビュー。NYへ渡りDEF MIX PRODUCTIONS の一員としてハウス・ミュージックの礎を築き、ロバート・オーウェンズなどのアーティストとのコラボや、『Renaissance: The Masters』シリーズなどのミックス作品の発表、坂本龍一、デヴィッド・ボウイ、マイケル・ジャクソン、マドンナ、マライア・キャリー、U2ら有名アーティストへのリミックス・ワークなど、25年を超えるキャリアをつねに一線で活躍してきた。2015年、セカンド・アルバムとなる最新作『New Day』をリリースする。

いまは何でもできるから、逆に何でもできないほうに行ったのかもしれないです。

今回アルバムを聴かせていただいて、以前からの印象もあるのですが、ものすごく削ぎ落された曲作りを追求してらっしゃる印象があり、またシカゴ・ハウス的な雰囲気も感じました。収録曲のリミキサーにシェ・ダミエ(Chez Damier)やロン・トレント(Ron Trent)、DJスニーク(Sneak)といったシカゴ勢も起用していますし。でもデフ・ミックス・プロダクションズ(Def Mix Productions)に加入してバンバンやってらっしゃった頃のトミイエさんとは対極的な音ですよね。ただ、その当時もシカゴ・ハウス、というものも存在していたわけで……。この当時のトミイエさんにとっては、シカゴ・ハウスというのはどんなふうに聴こえていたのでしょう?

サトシ・トミイエ(以下S):たぶん、ちょうどこのときは、そういう流れが80年代の中盤から終わりにかけて盛り上がったあとだったので、ちょっと違うものをやりましょう、みたいなところはあったのかなと。時代的にも、すこし音を重ねる感じのプロダクションが流行っていましたよね。いろんなNYのリミキサー、たとえばマスターズ・アット・ワーク(Masters At Work)でも、ちょっと音が重なった感じで、すごいメロディがいっぱいあって。あと(シカゴ・ハウスに対して)こんなにシンプルでいいの? みたいな気持ちでしょうか。じつはそっちの方が難しかったりするんですけどね、ミニマルの方が。でも作っているほうは、時代的に考えても機材がいっぱい使えるようになって、かつそれで一日50万もするスタジオで作業をするのがわりと普通になるなかで変わっていったんじゃないでしょうか。

ただ、いまのトミイエさんはひとつひとつの機材やハードウェアと向き合って、シカゴ・ハウス的というか──たとえばラリー・ハード(Larry Heard)がシンセとか、打ち込みのものでしかできない美学みたいなものを追求していったような方法をとっておられるな、という印象があります。

S:いまはDAWだから、回しっぱなしにして、適当にやって、「いまのよかったな」ってところを取って、そこから曲を構築するみたいなことができる。以前もテープでできたけど、ループとか、その場でサンプラーで録って、とか、えらく面倒くさかった。だからそういうところよりは音のレイヤーなんかで違いを出そう、というほうが多かったですね。たぶん、そういう意味では使える機材にも左右されているのかもしれない。
で、いまは何でもできるから、逆に何でもできないほうに行ったのかもしれないです。制限があった方がチャレンジしようとするので。たとえば、シンセひとつでどこまでできるか、とか。実際はシンセひとつだけじゃなくて、DAWがあって、そのなかでいろいろできるから、なにかを中心にしていろいろ足していこうというようなこともできるし。で、あとはやっぱりこう、マウスで編集したりだとか、すごく感覚的ではないし。

そう、その、「感覚的」っていうところに最近は向かってるのかな、というイメージがすごく強いですね。

S:そうですね、もともと感覚的ですけどね(笑)。で、たとえばマウスだったら1回に1個のパラメータしか動かないのに対して、手だといくつか同時にできたり。いわゆる偶然性みたいなものを、いまはどんどん記録できるので。音をどんどん足さなきゃならないんじゃないかって迷っている時期もあったんですよ。この少ない機材でいいのか、みたいな。でもなるべく音を削ぎ落す方向に行って、それがいまはもう、迷いがなくなった。最初のアルバムが出て、ちょうど15年経ったんですけど、その間にどんどん音が薄くなっていったから。で、ひとつひとつの音をこう、立たせるほうにね。

今回のアルバムは、家で聴くと優しい印象もありますが、大バコで機能する鳴りを考えてらっしゃるなと思ったんですよね。トミイエさんはもう何千人規模の場所でのギグも多いですから、じゃあどういう音が鳴って気持ちいいのか、とか、そういう点をすごく意識してらっしゃるなあとは感じたんですけれど。

S:まあ、そうなんですけれども、音楽によって全部が大バコ対応ではないから。とはいえミキシングとかエンジニアリングは、もう、一生勉強なので。いまでも「こうすればいいのか!」という発見はあるし。僕はエンジニアリングの教育は受けてなくて、人がやっているのを見て、「ああ、こうやってやるのか」みたいに学んでいったので、けっこう適当なところもあるんです(笑)。


ミキシングとかエンジニアリングは、もう、一生勉強なので。

そのあたりが、いま楽しい、っていうことなのですかね?

S:そうですね、楽しい。またそうやって突き詰めると、アナログのアウトボードがいっぱい欲しいな、とか思ったりね。(実際は)プラグインでほとんどやってますけど、アナログをわっと並べるみたいなのも楽しそうだな、とか。でもメンテも大変だしね。メンテは大変だよ、もう、暑くなるしね。

Instagramで、ウーリッツァを弾いてらっしゃいましたよね。ウーリッツァとかもけっこうメンテナンスとかって大変ですよね?

S:ローズも以前から持ってるんだけど、ウーリッツァのほうがリードが折れやすいので、それもあって最近までゲットしなかったんです。いまでもパーツは買えるし、パーツ自体大した金額ではないんですけどね。アンプも含めて基本的な構造はシンプルなので直そうと思えばけっこう自分でもいけそうですけど。

今回ウーリッツァでソロを弾いたものも入れてらっしゃいますよね。“Odyssey”とか。

S:“Cucina Rossa”はリアルなウーリッツァ弾いてますが”Odussey”のソロには間に合わなかったので、あれは、ヴァーチャル音源。手で弾いてますけどね。でも、そう言ってしまうと結局のところはプラグインでいいじゃん、っていう話になるんだけど、実機はやっぱり楽しいので。そういうところですね。突き詰めれば、できるかできないか、ではなく、楽しいか楽しくないか、というところにいってしまいますよね。

“Cusian Rossa”でチェリストの方に多重録音してもらったとのことですが、そういう手間というのも楽しいというか、それがおもしろいという部分もあるということですね。

S:もちろん。以前ならオーケストラで、「せーの!」ってやってたことを一人のミュージシャンでできる。すごいなあと思いますね。しかもスタジオは3~40年前のスタジオで、そのときあったのと同じ機材でね。まあ、ああいうことができるのはPro Toolsがあるからなのだけど。
でも、当時やろうと思わなかったのは、同じ作業をするのにテレコが3台とか4台とかいるから、 作業効率的に考えてむしろオーケストラ25人雇った方が早い、みたいな。そういうテクノロジーの進化とこれまでにある技術の融合というところが、まあ、おもしろいかなと。で、いろいろできるからこそ、音がどんどん減ってゆく。

生音を今作に入れたのは、そのストリングスだけですか

S:結局そうですね、他にやってないですね、たぶん。

あとはもう、シンセと、ドラム・マシンと。

S: そうそう、そうですね。


やっぱり自分が楽しめないものは、人に対しても説得力がないと思うから。

トミイエさんを昔から知ってらっしゃる方には、デフ・ミックス・プロダクションズ(Def Mix Productions)ってピアノの印象がすごく強いので、トミイエさん自体にもピアノのイメージがあるかと思います。でも、ピアノを使った作品ってあんまり作っていないですよね。

S:まあ、一回やったからいいかな、っていうところがあるかな。

ダンス・ミュージックにおいて、ピアノの使われ方のパターンがけっこう決まってきてしまっている……っていったら変なんですけれども、そういうところにチャレンジ性がないからやらないのかな、って思いました。

S:そうですね、その通りです。

なんかもう、バンバン、と(和音を)打って、バンバンと盛り上げて、軽くヒットになってしまう。そういうことはできてもやらない、っていう話ですよね。

S:たぶん、自分自身アガらないと思うので。それをやってもね。

では基本的には自分自身がアガることしか、やれないっていう?

S:まあ、じゃないと音楽がよくならないと思うので。やっぱり自分が楽しめないものは、人に対しても説得力がないと思うから。「あんまり美味しくないと思うけど、どうぞ」みたいな(笑)。作っている人は「まあまあかな、でもみんな好きらしいしどうぞ」みたいな感じだとね。

でも、トミイエさんも感じてらしてらっしゃると思うんですけれど、多くのクリエイターが、売れるだろうからっていう要素を、「これが売れるよね」っていう感じでつくっていたりもしますよね。

S:いや、どうかなあ

純粋に楽しんでやってると思います?

S:EDMとかで売れてるものを作る人たちは、あの曲を作るのがすごい楽しいんだと思いますよ。

ああ、でもスティーヴ・アオキ(Steve Aoki)とかデヴィッド・ゲッタ(David Guetta)とかも、これからはディープ・ハウスをやる、なんて言っていたという話も聞きますよね。

S:飽きたんじゃない(笑)? 新しいディープ・ハウスっていわれているものを聴いたけれど、EDM延長線上にある感じで、少し地味になったヴォーカル・ハウスというか。そういうやつを長く聴いている人が聴くと、なにこれ? みたいな。

あの、〈スピニン・レコード(Spinnin’ Records)〉から出ている曲が、「ハウス」って書いてあるけど、音はEDMじゃん、っていう?

S:そうそう。だから、たぶん、ブランドを変えてるだけで。

私はそれが、売れつづけたいのかなっていうふうにみえちゃうんですよね。

S:まあ、それはそうでしょう。でも、トランスをやっている人が、「俺の音楽はトランスではない」って言っているようなこともあると思うんですよね。ずっとトランスで終わりたくない、っていう。以前に比べたらぜんぜん人気がなくなってきてるから、そう言われたくないというのもあるんじゃないかな。
あとはもう、やってて飽きたとか。まあ、やってる音楽は同じで、レーベルだけ違う、ってことじゃないかな。こう、ステッカー張り替えてね。


いつの時代もあることだけど、「ハウス」だと売れないけど「テック・ハウス」って付けると売ける、とかね。

まあ、そういう感じは言えますよね。ハウスって言った方が売れるんじゃないか、っていう。

S:そうそう。なんか、いつの時代もあることだけど、「ハウス」だと売れないけど「テック・ハウス」って付けると売ける、とかね。〈Beatport〉とかのタグ付けで。それで今度は「テック・ハウス」じゃなくて「ディープ・ハウス」という名前が売れ線ということになると、同じ音楽なのに「ディープ・ハウス」って付ける。

そうですね、試聴してても、「ディープ・ハウス」と「ハウス」、ジャンル分けで聴いても、なんかもう意味がわからなくなってくる(笑)。

S:そうそう。マーケティングがかなり絡んでくるから。でも音楽そのものはそんなに変わらなかったりするので。

そうなんですよね。トミイエさん自身としては、タグ付けするとしたら今回のアルバムはどれにしますか?

S:もう、昔からずっと、「いまどんな音楽やってるの?」「ハウスです」みたいな。結局は「ハウスです」って言ってますね。〈Beatport〉でもそうしていると思いますよ。でも、たとえばマーケティングにおいては「ディープ・ハウス」にしろとか、そういうのはあるかもしれないですね。

私はタイトル曲の“New Day”が本当に好きなんですよね。10年前とかに主流だった、まあいまでも私が聴いているUSハウスとかはそうですけれど、こう、歌ががーって盛り上がったら同じようにトラックが盛り上がって、という歌ものハウスとは対照的で。“New Day”はヴォーカルにしても、歌い上げるというよりはちょっと抑制されたというか、すごく繊細というか。で、トラックもそれに合わせていっしょに盛りあがっていくというよりは──

S:淡々としている。

ええ、逆に熱を冷ましていくことで美意識が生まれていくというような。本当に、トミイエさんは歌ものがお上手だな、と思うんですよね。

S:じつは、そんなに好きじゃないかもしれないですね。歌を作るのが。

そうなんでしょうね、って思うんですけれど。

S:(笑)


ヒップホップのときがそうだったんだけど、やっぱり、文化から入っていかないと簡単に理解できないような気がして。

その、歌っていうものに熱を入れすぎてないと言うと言いすぎかもしれませんが、歌をひとつの楽器のような解釈で考えていらっしゃるから、ああいうバランスができるのかなって思っていて。

S:そうです、その通りです。歌物は、たとえばソウルフルな歌物とかも過去にはやってたんですよね。でも、そういうのが実際にできる/できないではなく、なんて言うのかな……、ちょっと文化的な問題もあるから、ブラック・カルチャー的な。音楽が好きでも、自分がやるとなるとちょっと違うかな、というところもあるし。いわゆる「ソウルフル・ハウス」みたいなね。昔はけっこうあったでしょう? 黒人白人問わず、ソウルフルな歌のやつで。

もうTraxsourceでいまでもバンバンだしているような。

S:そうそう。で、ヒップホップのときがそうだったんだけど、やっぱり、文化から入っていかないと、簡単に理解できないような気がして。たとえばコミュニティ感とか。ヒップホップなんて本当にね、地元のあんちゃんが集まって、ムーヴメントを作り出したというようなところがあるでしょう? で、音はカッコいいけれど、そういうところで最終的には入っていけないのかなっていうのもあって、ヒップホップからハウスにいったんです。はじめはヒップホップでスクラッチやってたのね。それで、ハウスに出会ったときに、こっちの方が合ってるかも、って思った。それは、もっと音中心というか、なんて言うのかな、匿名性があったからというか。解ります?

わかります、もっとこう、ひとつの人種だったり文化だったりに固執していないような感じというか?

S:なんか、自分的に近いような気がして。

教会で歌ってる、みたいなのや、ポジティヴに生きよう、とか、そういうところで自分は生まれ育っていない、という?

S:そうそう。だから音楽そのものにとどまらない、ヒップホップのカルチャーそのものが自分の文化じゃない気がして。自分は生まれも育ちも東京の郊外でヒップホップのコアな文化とはもちろん無縁(笑)、どんなに音がカッコいいと思っても、音の先にあるカルチャー的なものは遠くにいるしやっぱりちょっとわかんないよな、って思っていました。黒人音楽への興味や憧れからダンス・ミュージックに入ってきてるんだけれど、最終的には、そこのコアなカルチャーの一員ではないので。ただそこから生まれてきた音楽や方法論とかは好き、っていうことなんだけど「これはもしかして、俺のやることではないかもしれない」っていうのは、やってみてわかったことです。少しずつエレクトロニックなほうに行ったのはその反動ですね。

ただ、最近の〈Beatport〉でウケている、たとえばテール・オブ・アス(Tale Of Us)みたいな感じの──私はああいう世界観は好きなんですけれども──

S:自分も好きですけど、音楽的にはロック方面から来てる感じしますよね。たとえば、〈ライフ・アンド・デス(Life & Death)〉とか。あとはテクノとかでも最近人気な人たち。言ってみればプログレッシヴ・ハウス的な。

マセオ・プレックス(Maceo Plex)とか?

S:マセオ・プレックスもそうだし。文脈的にいうなら、ダンス・ミュージックといっても、いわゆるソウル・ミュージック系ではなくてどっちかというとロックだと思うので。だからビートが似てて、使ってる楽器も似てるけど、いわゆるソウルフルさとは違う印象。

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少ない音でいかにおもしろくするか、っていうほうに行ってますね。「グルーヴ感、命」みたいな、方向なんですけど。


Satoshi Tomiie
New Day

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そうですね、でもその“New Day”に関しては、黒か白かというよりはなんか違う──わからないんですけれど、黒いという印象ではなかった。

S:あれもヴォーカリストがロックの人だし。ソウルフルなものというよりも、なんかこう、ああいうヴォーカルが、当時作ってたものに合ったので、ばっちりかな、って。

そういうロック的な歌で、“New Day”みたいなヴォーカルものをつくるっていうことに対してはどうですか。バンバン作っていこう、っていう感じでもあまりない?

S:ない。ないっすね(笑)。

やっぱり、インストをこう。

S:インストで、より、音を少ない方向に。まあ、少ない音でいかにおもしろくするか、っていうほうに行ってますね。「グルーヴ感、命」みたいな、方向なんですけど。

ただ、やっぱりフロアで機能するグルーヴ感っていうのを作るとなると、どうしても足したくなりますよね。

S:そうですね、その通りです。

それを、足さずに足さずに、いかに作っていくかっていうことですね。

S:まあ、フロアで機能するだけのグルーヴは残しつつ、っていうことです。そこがメインで。で、無駄なものじゃないんだけど──あってもいいんだけれど、なくてもいいものってありますよね? そのなくてもいいものを削ぎ落していったときに、何ができるかなっていうことも考えているかもしれません。まあ、たとえばドラム楽器。自分の作った曲のなかでも「あれ、これってこの3トラックだけ聴くとカッコいいな、で、この、これとこれ、この3つのトラックを足すと、ぜんぜん違ったグルーヴ感だな」って、そういうのがあるでしょ。その3トラックで聴いているグルーヴ感みたいなところをちょっと延ばして、そしたらどこまでできるかな、みたいな。そういうことがおもしろいなって思います。逆に、機械でいろいろできちゃうから、音が少ない方が一音一音が立っていく。そっちのほうがおもしろいなあって思わないですか?
本当に、何でもいいから作れ、っていうのは簡単だから。ループとかそのへんにいくらでも落ちてるし、できあいのものもいっぱいあるし。音なんて、前みたいに一生懸命作らなくてもいいし。だったらね、逆にそういうほうがやってておもしろいわけじゃないですか。
でもアルバムに関して言えば、「ダンスフロアで機能する」という、自分のやってきた音楽の前提が見えるものではありますね。曲と曲がフロウするように、という。DJセットでやる場合も、1曲掛かって、その一方でぜんぜん関係ない曲が掛かって、ってなっちゃうと、踊ってるほうも踊りにくいしね。それを自分の作品でやるには、こうかな、って。

えっと、アルバムの中でもアシッド音を? ええとTB-303、いまはTB3を使ってらっしゃるんですかね?

S:TB3持ってないです。TB303昔から持ってて当時から使ってますけど、アシッド音はSH-101でもけっこう近い音出せるし、あと、Jupiter-8でもやったし。いろんなので出せるからいろんなシンセでやってます。


当時最初聴いたときに、なにこれ、延々と同じシンセが鳴ってて、ドラムがときどき出たり入ったりして、で、12分とかあるでしょう? あの頃に聴いて「ああ、すごいな」と思った印象があって。

12年に〈Systematic〉から出されてた“Straight Up”を聴いたときも思ったのですが、すごく上品で洗練されたアシッド・ハウスを作られている印象があって。トミイエさんにとってのアシッド音って、どういう位置づけなのでしょう?

S: DJピエール(DJ Pierre)の〈トラックス(TRAX)〉のやつとか(※)、当時最初聴いたときに、なにこれ、延々と同じシンセが鳴ってて、ドラムがときどき出たり入ったりして、で、12分とかあるでしょう? あの頃に聴いて「ああ、すごいな」と思った印象があって。
※フューチャー(Phuture)/“Acid Trax”

あ、それに対しての衝撃みたいなものは、もちろんあった、と。

S:もちろん。最初は何がカッコいいのかぜんぜんわかんないぐらい「なにこれ!?」 みたいなところから入っていって(笑)。逆にまったく新しいスタイルのものって、そういう反応もあると思うんですよね。で、アシッド・ハウスもいろいろあるから、いろいろ聴いていくうちに、あ、なるほど、ってなんとなく文脈が見えてきました。たぶんTB-303を買ったのは、二束三文、3万円しなかったような時代、80年代だったような気がしますが、その時から持ってはいても、やっぱり打ち込むの大変だし、MIDIもついていないし、シンクがめんどうだし、みたいなところもあって。SH-101と同時にスタジオには置いてあったのですが、長い期間放ったままでぜんぜん使わなかったですね。

最近TB3などのAIRAシリーズが出ましたが、シンクがしやすくなりましたよね。先日Rolandのスタジオにも行かれたみたいですが、どうですか? 実際に触ってみて。

S:(AIRAシリーズは)いくつか持ってますよ。System-1と、TR-8を買いました。TR-8はアップグレードすれば1台でドラム・マシーン4台分の音が出て便利だし、いろいろ機能がついていて、デジタルだからあたりまえだけどメンテナンスしなくていい。自分が持っている909より音がシャキッとしているんだけど、たぶん、909の実機も新品を買った時点ではあれに近い音がしたんだろうと思うんですよね。30年も経っていると、コンデンサーとか駄目になりますからね。自分のTR-909はかなり「枯れた」音がしてましたが、いまメンテナンスしてもらっているので、帰って来たときどんな音になってるか楽しみですね。TR-8とかはライヴとかで使えたらいいなとも思っています。

そういえば、7月にパリでケリ・チャンドラー(Kerri Chandler)といっしょにDJをやりますよね。

S:やりますね。

ケリ・チャンドラーは、最近はあまり日本には来てないのですが、以前来日していた際はブースに機材をならべて、DJ中にキーボードを弾いたりしていました。

S:うん、やってましたね。

で、今度いっしょにされるということで、ライヴという話もありましたけれど、DJ中にたとえばそういった、ビートとシンクできるAIRAみたいなものを使って、ぱっとしたインスピレーションをDJに組み込むというのは考えてらっしゃいますか?

S:DJに組み込むというよりは、やるならちゃんとライヴでやりたい。きっとDJ中にやると中途半端になってしまうので。DJをコンピューターでやって、っていうだけならば可能かもしれないけど、レコードもかけてとなると、「ああ、レコード終わっちゃった」みたいになってしまいそうで(笑)。ライヴでやることについては考えています。アルバムの曲でもいいし、またまったく別のちがう曲を用意してもいいし。でもライヴを、聴く感じの場所ではなくダンスフロアでやるならば、もう少しそれに対応した曲を新しく作ったほうがいい気もします。


全部(ライヴを)ハードウェアでやったらおもしろいかも、という話をしてます。

ビートにエッジが立っている、という感じの?

S:そうですね、ダンスフロア対応の、グルーヴ的なものを意識した曲。あともうひとつ考えてるいのは、イビザに住んでる友だちのトゥッチーロ(Tuccillo)が機材オタクで、ほんとうにハードウェアが大好きみたいで、たくさん持っているから、そんな彼と、全部(ライヴを)ハードウェアでやったらおもしろいかも、という話をしてます。そのための曲を作って、ハードウェアだけでライヴをやろう、っていう。
でも、またさっきの話に戻るけれど、シンクの問題という点だけでも、ハードウェアが前より使いやすくなったと思いますね。昔はバッチリ合わなかったから。シカゴ・ハウスのレコードとか聴いていると、ずれていくでしょ? たとえばあの、リル・ルイス(Lil Louis)“フレンチ・キス”だと、フィルインが曲のあいだじゅう、ちょっと遅れて鳴ってる。あれはあれで、味、なんですけどね。ただ、いまはコントロールが簡単になったから、ハードウェア使っても、そういうストレスが少ないからいい。メンテナンスしてるあいだに、「あ、今日一日終わっちゃった」で、明日になったら「もういいか」みたいなことが、やっぱりありましたから。

実際にはいま1曲にどのくらいの時間を使っているんですか?

S:時期的には2年経っているのもあるし、そうでないのもあるし、もっと長いのもありますね。やったりやらなかったり、あと、やってみて、うーん、やっぱりちょっと置いておこうって放置して、何ヶ月たってからまたやる、みたいな。だから、実働は3日程度かもしれません。逆に、短い時間にたくさん作る、という方法も、ちょっとちがった方向でおもしろいかな、とは思うんですけどね。ぱぱぱっと作れる、熟考していない曲。早く作れる人は、本当に早い。グティ(Guti)とかもすごい早い、音質とか、エンジニアリングとか、まったく気にしていないから(笑)。早いから数多くの曲ができるし、そうなるとたくさんリリースしたくなる。でも、そんなにリリースもできないから、結局ライヴや自分のパフォーマンスでしか使わない曲が増えていく、っていう。
でも、早く作るか、時間をかけて作るか、というのは、クオリティ・コントロールをどこにもっていくか、ということだから。僕は性格的に、ぱっとできたものを、こんなものでいいや、っていうのはできない質なんです(笑)。でも、それでできたほうがいい場合もあるのでしょうね。パッとできたもの。それはそう思います。

わかりました。ちょっとDJの話もききたいのですが、最近アナログを買ってらっしゃいますよね。トミイエさんはレーベルもやってらっしゃるから、必ずしもレコードのほうが音がいいってわけではないっていうのを知っていると思うのですが、それでも最近アナログを使いはじめるようになったっていうのはどうしてなのでしょう?

S:理由いろいろありますけど、いちばん大きいのは、デジタルで売っていない、アナログでしか出ていない曲がけっこうあるから。以前はレコード屋さんにときどき行って、アナログ・オンリーのレコードを買ったら、それを録音してデータにしてTraktoで掛けて、というのを繰り返していたのですが、面倒で。だったら最初からレコードで掛けたらいいじゃん、って思ってやってみたら、やっぱり楽しかった。そこからレコード屋に行く回数も増えていって。あと、いまはヨーロッパでのベースでもあるパリでは、レコ屋にチャリで行けるっていう地の利も働いてますね。


僕は基本的には、いまここにいるところがベースだって感じです。今日は東京だし。

今作がリリースされるのは〈アブストラクト・アーキテクチャー(Abstract Architecture)〉というトミイエさん自身の新しいレーベルで、NY/ベルリンがベースだそうですね。

S:レーベルの拠点について言わなきゃいけないからそう言いましたけれど、僕は基本的には、いまここにいるところがベースだって感じです。今日は東京だし。

あの、今作はリミキサーにベルリンの系のリミキサーとかを起用されてますし、ベルリン・ベースとのことですし、最近アナログも買っているそうなので──

S:ファッションっぽいよね(笑)。

いえ、ファッションぽいというか、ベルリンでの活動を考えてらっしゃるのかな、と。ベルリンでDJをするときにパソコンでDJをするとブーイングされるという話をよく聞きますし、そういう状況を意識しての動きなのかな、と。

S:じつはいまレーベルを手伝ってもらっている人が、フランス人だけれどベルリン・ベースなんです。それで(レーベルの拠点について)ああいう表現になった。でも、ヨーロッパのなかでプレイする場所がかたよっていたりするから、いままでそんなにやってないところで、もっとプレイしたいな、というのはあります。ベルリンもそうだし、パリとか。実際には、年に1回ギグがあるかないか、とか、そういう場所がけっこうある。ドイツ、フランスが、なぜかとても弱いんで。

なんか(その2つの国は)アナログが強いイメージはありますね。フランスもなんかちょっとそういうイメージがあります。

S:僕自身は、どんなフォーマットでDJしなくてはいけないっていうことはなくて、べつにTraktorでもいいじゃん、その人が好きなフォーマットでやればいいと思うのだけど。昔は100%レコードだったけれど、いままたレコードを掛けはじめると、レコードってコンピューターでの掛けかたと違ってくるのでそれがけっこうおもしろかったりするんですよね。デジタルだと、基本的にはプロモでもらっているのも毎回同じレーベルだし。デジタルにはない、みんなが持っていないものを探したい。少し違った物を混ぜることによって、いままで馴染みがある音楽に対して違った見方もできるし。
つまり、音楽的におもしろいほうに行った、っていうことです。実際にレコード屋にいくと「こっちのジャンルの方面に行くと、こんなものがあるんだ」みたいなことがデジタル配信とは違った方向で解りやすくていいし、自分でもリリースするようになったら、「どんなの出てるかな」って意識するじゃないですか。デジタルで、プロモをもらってBeatportで買い物する、みたいなのとは、また別のカルチャーがある。でも、ちょっと、「エリート的」な部分もあるから。

アナログが、っていうことですよね。

S:うん、俺のほうが偉いんだ、みたいなのが見える。それがちょっと鼻につくけれど(笑)。


(カセットは)昔は音が悪くて嫌だったけど、いまは逆に他のものが音がいいものばかりだから。

今回カセットも作るじゃないですか。カセットも、アナログも似たような感じがありますよね。

S:そういったちょっとしたエクスクルーシヴ感もあるよね。

「カセットで持ってるんだぜ」みたいな感じですよね。

S:それよりも今回アルバムをカセットでリリースしてみようと思うきっかけになったことがあって。実家にはいま母親が一人で住んでいるんだけど、一人だし一軒家からマンションに引っ越そうってなったときに、物をいろいろ整理しなきゃいけなかった。そうしたら子どもの頃に聴いてたジャズのカセットがいっぱい出て来て。NYに持って帰って当時録音したライヴのテープとか聴いてたら、軽く20年近く使ってなかったメディアだけに、知ってるのに新鮮、っていう再発見。制限がある音も独特なんだけど、ああいう昔のメディアをおもしろがってくれる人が世の中にいるし、それならば作ってみよう、ということになった。カセット自体は昔親しんだメディアなので、こんなところに戻ってきたんだな、というのもあります。スタジオ作業とかでも、テープの独特の質感とか生かせたらおもしろいかもとか思ってます。

カセットの鳴り、ということですよね。

S:昔は音が悪くて嫌だったけど、いまは逆に他のものが音がいいものばかりだから。

いまのようにクリアじゃないぶん、よけいに心地いい?

S:そう。たぶん、アナログ/レコードを好きなのは、それが理由でもある。同じようにちょっと高域の音が出ない感じで、あたたかくて。まあ実際には制限があるからなんだけれど。すこし上がひずんだりするのが楽しいし、カセットもその意味ではアリかな、と思いますね。

マスタリングに関しては全部同じですか?

S:マスタリングは、使ったスタジオでは全部で3種類作ってくれたんです。1つめは普通のデジタルの卓を通したもの。2つめが、ミキサーからハーフ・インチのテープを通して一回録音したものを再生して、またミキサーに戻したもの。そうすると、テープのサチュレーションがかかったりして違った効果が得られる。それから、デジタル配信用の音が大きいマスタリング。つまりマスタリングの行程でも、アナログというのを意識してました。でも、ちょっとテッキーな“0814”っていう曲の場合だと、テープを通すとアナログっぽすぎて上が丸くなりすぎてしまったので、ミキサーから直球のものを使いました。曲に合わせてマスタリング方法を選んで、それらをまとめて、ひとつのアルバム・パッケージにしたんです。そういう行程もおもしろいなあ、と思って。前にはなかった形だし。

では、3つのマスタリングの種類の中から、曲ごとに選んでいったんですね

S:あ、でも(配信用の)パキッとした物は使わなかったです。

これからの配信のリリースでも使わないんですか?

S:使わないですね、というのは、テープを通したものと、そうでないものでアルバムを組んでいったから。テープを通したものは配信用のマスタリング処理をしていないんです。
でも、音が大きいほうがいいですか?

(A&R)栃折氏: いや、とくに問題は。

S:まあでも、配信とか、音が大きい方がいいのかな?


試聴サンプルは配信対応のパキッとしたのを提出する、というのも手かもしれない。で、実際にダウンロードしてもらうのは、ちゃんとした音、というか、音圧を上げる処理をしすぎていないもの。

デジタル配信がはじまった当初は、音が大きいほうが、音がいいように聴こえてしまう感覚は否めませんでしたが、最近は試聴する側も聴きなれているので、パキッとするからいい、っていう印象も薄れてきた感じはします。

S:でも配信の試聴は、結局、ビットレートが低いから、もしかしたら音がデカくなる処理をしたほうが、iTunesとかの試聴用サンプルに出すのにはいいのかもしれない。

曲を試聴をしているときに、コンプがきつめで大きな音の曲が続いた後に、コンプがゆるめの曲が流れると、ちょっと弱い感じに聴こえてしまう、って言うことですよね。

S:そう考えると、試聴サンプルは配信対応のパキッとしたのを提出する、というのも手かもしれない。で、実際にダウンロードしてもらうのは、ちゃんとした音、というか、音圧を上げる処理をしすぎていないもの。サイトによっては1分の試聴用を出すところがあるでしょ、そこならできるから。TraxsourceやBeatportは勝手に(試聴用ファイルを)作るから、そういう対応はできないけれど。そうそう、ドイツのアナログ売っているDecks Records (https://www.decks.de) から、1分の試聴サンプルを要求されて、めんどうだなあ、って思いながら作ったんですよね。ディストリビューターに作ってくれって言われて。レーベル運営ってけっこう、音楽以外にやることがいっぱいあるんですよね。

(レーベル業務を)自分でやってらっしゃるんですか?

S:ほぼ自分でやってます、アシスタントみたいなのはいるけど。細かいこともけっこうありますね。まあ、自分でやらないと気がすまないっていうのもあるんですけど。大変です。
でも、このアルバムが(新レーベルの)一発めだから、まだそんなにやることが膨大というのではないし、ディストリビューターがやってくれるところもあるので、なんとかなるかと。(このレーベルについて)考えているのは、展示が入れ替わる、ギャラリー的なことを目指していて。いまはこの時期で、いまはこのアルバムの展示をやっていて、いろいろアルバムに関するものとかもあって、次は人とのコラボレーションを、というような。自分でギャラリーを持って、そこで展示をやる感じですね。普通のレコード・レーベル、というより、プロジェクトに近い。つまり、「次はこの人、その次はこの人」といったかたちでいろんなアーティストのリリースをするトラディショナルなレーベルとは、ちがうかもしれないです。普通に、A&Rをやって、デモを集めて、みたいないつもの形は、〈SAW Recordings〉でいままで通りやればいい。新しいレーベルでは、そうではないことをやろう、と。
それにしても今回は、タイミングといろんな人に恵まれて、よかったですね。ヴィジュアルもカッコいいのができたし。リミキサーとかも、いいタイミングで、いろんな人とできたという。ありがたいことです。


(東京は)音を作っている人もかなり増えたし、外国に行っちゃった人も含めて、シーンみたいなものも前よりおもしろくなっていると思う。他のメインな街に比べるとパイは小さいけれど、好きな人がずっと続けている、みたいなところもいいと思います。

先日、トミイエさんといっしょに来日したマーヤン・ニダム(Maayan Nidam)の“New Day”のリミックスは、いつ頃のリリースになるんですか?

S:いま”New Day”のビデオを作ってるんですけど、マーヤンのリミックスは、それを含めたパッケージでおそらく冬に近い頃になると思います。で、他にもいくつかリミックスを依頼しているので、それがまとまり次第ですね。その前にもう一枚、アルバム・サンプラーみたいのをリリースするんだけれど、それはまあ夏、8月ですね。“Landscape”って曲で、自分とフレッド・P(Fred P)がリミックスしています。ヴァイナル・オンリーで出るんですけど。「サンプラー」と言っても、1曲のヴァージョン違いを収録しているのだから、ちょっと「シングル」っぽいですね。日本は先行発売で早かったんですけど、アルバムが6月に出て、8月にアナログが出て、という流れでアピールしていこうかと。

リミキサーの人選は、アナログの鳴りがわかっているアーティストに依頼した、ということなのでしょうか?

S:というよりは、この曲にはこの人が合うかな、って選んでいったのが、結果的にはアナログを掛けたり、長くやったりしてる人になった。たとえばロン・トレントも長くやってるから、ぴったりの音になったし。あまり「flavor of the month(いま旬のもの)」的な人よりは、長くやっていて、わかっている人のほうに振れたから、結局は流行っぽいひとはリミキサーにはいなかったですよね。ただ、自分自身も、まさか20何年やっていて、ロン・トレントにお願いするとは思わなかった。

親交はあったのですか?

S:20年くらい前になんかいっしょにやろうよ、って話をしたんですけれど、それがやっと実現した感じですかね。

最後に、トミイエさんから見た東京というのはすごい窮屈に感じるとは思うのですが──

S:いや、僕がはじめた頃から20何年経ってるので、アーティスト、音を作っている人もかなり増えたし、外国に行っちゃった人も含めて、シーンみたいなものも前よりおもしろくなっていると思う。他のメインな街に比べるとパイは小さいけれど、好きな人がずっと続けている、みたいなところもいいと思います。
あと、インターナショナルに活動している海外のDJが、東京に来るとけっこうみんな楽しい思いをして、帰ったらみんなに「東京よかった」って自慢してるんですよね。いまは DJが世界中にあふれてるから、中途半端なレベルだと東京に呼んでもらえなかったりすることも多いと思う。だから、東京に行ければステイタスだし、「東京は最高だった」と自慢する。それはうれしいことだし、そうやって言ってもらってるうちに、東京でどんどん楽しいこと、おもしろいことをやっていって、シーンを上げていく感じに出来たらいいんじゃないかな。日本がクールだとみんなに思ってもらえているうちにね(笑)。


interview with HOLYCHILD - ele-king


ザ・シェイプ・オブ・ブラット・ポップ・トゥ・カム
ホーリーチャイルド

ホステス

Electro Pop

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 フェニックスやドーター、マムフォード&サンズなどを擁する〈グラスノート〉からデビューする、フレッシュな男女デュオをご紹介しよう。彼らの名はホーリーチャイルド。トラックを手掛けるルイス・ディラ―と、歌詞とヴォーカルを担当するリズ・ニスティコによるLA在住のユニットだ。結成は2011年だが、あっという間に大手各社から話が持ちかけられ、2013年には同レーベルからシングルを発表、フル・アルバムのリリースとなる今年はアップルウォッチのCMに楽曲が使用されたことでも話題になった。

 そのくだんのCM起用曲“ランニング・ビハインド”は、キューバ仕込みだというルイのパーカッション・センスが発揮されたトラックだが、実際に使用されている箇所がリズム・パートのみだというのはなかなか大胆なディレクションだ。華やかなリズのパフォーマンスはこのデュオの重要なキャラクターであって、そこがばっさりと落とされているのは少し驚きである。
 だが、軽快なハンドクラップに導かれて跳ねるその楽しげなリズムの中には、空気の色をぱっと変えるように魅力的なリズの呼吸がたしかに感じとられる。さすがにMIAにまでは比較できないとはいえ、トライバルな要素やイメージを北半球的な物質文化へのカウンターとして表現しようとするリズのマインドは、ルイのリズムと対になってぴたりと息をそろえる。彼らは自らの音楽を「ブラット・ポップ(Brat Pop)」と称し、社会や世界の状況に対して彼らなりのスタンスと見解、そして反抗のモチヴェーションを示してみせる。

 正直なところを言えば、彼らのその世界観やメッセージにママゴトのようなナイーヴさがあることは否定できない。しかしこの取材からも伝わってくるように、彼らが正直な若者たちで、おそらく音楽に対する考え方も真面目なのだろうということは想像するにかたくない。その点では、本当に素直でのびやかな、健康的な音楽だ。パッション・ピットとのツアーについても触れられているが、まさにパッション・ピット以降のエレクトロ・ポップを基本フォーマットとするアーティストたちのなかで、非常に広い間口と垢抜けた存在感を放つデュオであることは間違いない。

■HOLYCHILD / ホーリーチャイルド
ワシントン D.C.の大学で出会ったリズ・ニスティコとルイス・ディラーによる男女ユニット。2011年に結成。USの〈グラスノート(Glassnote)〉と契約し、2013年にシングル“ハッピー・ウィズ・ミー”でHype Machineのチャート1位を獲得。ビルボードが「2014年に見るべき14アーティスト」に選出するなど注目を浴びる。パッション・ピットとともにアメリカ・ツアーを行ったほか、二ューヨークの〈MOMA〉でもライヴを行うなど活動を広げ、2015年フル・アルバムのリリースとなった。

大学では音楽を学んでいたのですか? どのような領域を修められたのでしょう?

リズ:私もルイも、メインの専攻は国際情勢だったの。国際政治とか、世界の歴史を勉強していたのよ。あと、私は副専攻でイタリア文学とダンスを勉強していて、ルイは副専攻でジャズを学んでた。私はもともとずっとダンスを習っていて、将来はダンサーになろうと思っていたんだけど。でもルイに出会って音楽を作るようになってから、それがすごくしっくりきたのよね。音楽も大好きだったから、すごく自然に感じたの。それ以外では、私は絵も描いていて、ニューヨークのギャラリーに出展したりしていた。ルイは、ホーリーチャイルドをはじめる前もいくつかのバンドで演奏していたのよ。

卒業後は音楽でやっていこうと思っていたのですか?

ルイ:音楽でやっていこうと思いはじめたのは、いちばん最初に書いた曲“ベスト・フレンド”をレコーディングした後だったね。僕はまだ大学にいて、リズはもう卒業してた。最初の曲をレコーディングしたら、その出来がすごくよかったんだ。それを聴いたときに電気が走ったというか、ふたりとも何かを感じたし、目指すものが見えた気がした。リズは、本当はその後LAで音楽プログラムを勉強する予定だったんだけど、その話を蹴ってホーリーチャイルドの活動を続けることにしたんだ。2、3年前くらいかな。そこまでは何も定まっていないプロジェクトだったんだけど、あの曲をレコーディングしてから、すごくしっくりきて。僕も大学院に行こうか迷っていたんだけど、ふたりとも何もかもを止めてホーリーチャイルドとして活動することに決めたんだ。ありがたいことにいまはフルタイムでこの活動ができているし、こんなふうにインタヴューもしてもらえて、すごく光栄だよ。

〈グラスノート〉と契約するにいたったきっかけは?

リズ:あれは本当に忙しい時期だった。当時は、ユニバーサルからソニー、コロンビアまで、とにかくアメリカ中のメジャー・レーベルと話をしていたの。その中の一つが〈グラスノート〉だった。いろいろなレーベルと話をするのはおもしろかったわ。みんな私たちに興味を持ってくれていたから。でも〈グラスノート〉の人たちと会えたのは本当によかった。私たちの音楽を本当に理解してくれていたし、みんないい人たちだし、レーベル自体が素晴らしいレーベルなんだもの。もし契約していなかったとしても、彼らのようなレーベルが存在してるってだけでうれしい。だから彼らと契約することにしたの。いまのところ、すごくうまく行ってる。彼らって、本当に最高なのよ。

〈グラスノート〉と出会ってからは、すぐに契約を決めたのですか?

リズ:ニューヨークで彼らに会ったんだけど、私たちのショーに5回連続で来てくれたの。それも1週間以内の話よ。次の週彼らと話して、来週LAに帰るって話したら、「君たちと契約したいから、LAに書類を送るよ。目を通しておいてくれ」って言われたの。LAに帰ってから1週間後に書類が送られてきて、そこから1ヶ月くらい交渉期間があって契約が決まった。だから時間にして2ヶ月くらいかかってるんだけど、すごく早く感じたわ。普通は6~8ヶ月かかったりするから。

音楽制作上でのおふたりの役割分担について教えてください。

リズ:時と場合によってちがうの。私が先に何か思いついたり、ルイがアイディアを持ってきたり、いろいろよ。お互いにそれを送り合って、それをもとにいろいろ音を作って乗せてみるの。曲の作り方は毎回ちがうけど、曲作りに関わる割合が50/50っていうのはどの曲でも変わらない。あといつも同じなのは、私が歌詞を書いて、ルイがプロデュースすることね。それはそれぞれ一人でやるの。

ジャケットのアートワークではお札を口にまるめ込んでいる写真が印象的ですが、資本主義を揶揄するような意味合いがこめられているわけですよね。

リズ:もちろん。資本主義って、お金とか美、惹きつけられるもの、セレブ、名声とか、そういういうわたしたちが語っているテーマのすべてに関係していると思う。資本主義が人を競わせるし、たくさんの広告が物質主義を促しているし、間違った「理想の」女性の身体、男性の身体を作り出して、その体系であることをよしとしている。そういうのって、資本主義と全部結びついていると思うし、わたしたちは確実にそれに反対してる。このジャケットからそれを理解してもらえて、すごくうれしいわ。

では、商業音楽はどのようにその「おカネ」から自由であることができると考えますか?

リズ:すごく難しいことよね。わたしとルイは、ポップ・ミュージックを作ってるっていうのは百も承知なの。そうやってまず音楽業界に入って、人に聴いてもらうチャンスを得てから、自分たちの伝えたいことを伝えようとしている。わたしたち自身、ポップ・ミュージックが大好きだから、ホーリーチャイルドの曲もすごくキャッチーではあるし、もし完全にエクスペリメンタルな作品を作ったら、みんなに届かなかったり、理解してもらえないっていうのも理由の一つ。人に届けるためには、ビジネスの中にいることも必要だったりするのよ。でも、そんな中でも、わたしたちは心から誠実でいようと心がけてる。それをつづけることで達成できて、その自由を手に入れることができるようになるんじゃないかしら。すごく難しいことだとは思うけどね。

わたしとルイは、ポップ・ミュージックを作ってるっていうのは百も承知なの。人に届けるためには、ビジネスの中にいることも必要だったりするのよ。(リズ・ニスティコ)

タイトルの「ブラット・ポップ(Brat Pop)」という言葉も問題提起的なものかと思いますが、あなたがたの定義する「ブラット」はどのような存在ですか? あなた方自身の自己像?

ルイ:自分たちの音楽をちょっといたずらなユーモアで表現した言葉なんだけど……君が話す?

リズ:わかった。「ブラット・ポップ」っていうのは、わかりやすく言えば「サーカスティック・ポップ・ミュージック」って感じなんだけど、ポップ・ミュージックっていうのは社会的な主張で、私たちはそれに反して「ブラット・ポップ」なの。私たち自身の文化の中から見たジェンダーや男女の役割、お金とか自己愛のことを話していて、それを私たちのやり方で定義しようとしているのよ。生意気に、何かに「反して」いるからブラットなの。本当は、12歳以下の生意気な子どもにだけ使われる言葉なんだけど、わたしたちがやっている音楽は、ポップだけどお決まりのポップ・ミュージックとは少しちがう自分たちだけのサウンドだし、そういう意味で私たちの音楽は皮肉的で従順ではないから「ブラット」という言葉をつけたのよ。私たちがやっていることに合った言葉だと思う。何をしてるの? って訊かれても、答えは100%ポップではないもの。私たちの音楽には、ポップ以上のものがある。ポップの形式を使いながら、自分たち自身のやり方で音楽を作っているから。

ルイ:何年か前に誰かがブログで「ブラット・ポップ」っていう表現を使っているのを見たんだ。それを見て、すごくしっくりきたんだよね。ホーリーチャイルドの音楽にはピッタリの言葉だと思った。「ブラット・ポップ」なんて言葉、聞いたことなかったけど、言葉を見ただけでコレだと思ったんだ。僕たちがやっていることのすべてを捉えた言葉だと思ったね。

生意気に、何かに「反して」いるからブラットなの。本当は、12歳以下の生意気な子どもにだけ使われる言葉なんだけど。(リズ・ニスティコ)

あなたがたが他に「ブラット」だと感じるアーティストを教えてください。また、よく聴いている音楽について教えてください。

リズ:マリーナ&ザ・ダイヤモンズ(Marina & the Diamonds)と……もっともっといると思うんだけど、いま思いつくのは彼女。でも、ポップをやりながらそれ以上のことをやっているアーティストはすべて「ブラット」だと思う。

ルイはどうですか?

ルイ:そうだな……。

リズ:TNGTは?

ルイ:たしかに。

リズ:彼ら最高よ。

ルイ:〈PCミュージック〉のアーティストとか。あとレックス(Rexx)も。ジャック・ガラート(Jack Garratt)もだし……。

リズ:スフィアン・スティーヴンス(Sufjan Stevens)も。

ルイ:そうだね。スフィアン・スティーヴんス。

リズ:アーケード・ファイアもそうね。

ルイ:アラバマ・シェイクスも。

リズ:アラバマ・シェイクス! 絶対そうね。

アラバマ・シェイクスのアルバムは非常に歓迎されていますね。

ルイ:彼らの進化のしかたが好きなんだ。ブラットさを残しつつ、セカンド・アルバムでは変化をつけて、ファースト・アルバムとはまたちがう作品をつくり出した。アラバマ・シェイクス・サウンドは健在なのに、すごく成長が見えるところが素晴らしいと思ったね。だから聴いていて本当にエキサイティングだったし、プロダクションもパフォーマンスも最高だった。

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ドラミングはキューバで学んだんだ。本当にたくさんのことを知ったよ。(ルイス・ディラ―)


ザ・シェイプ・オブ・ブラット・ポップ・トゥ・カム
ホーリーチャイルド

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あなたがたは他のアーティストや音楽の歴史を気にするタイプのミュージシャンだと思いますか? それとももうちょっと直感的?

ルイ:両方だと思う。

リズ:そうね。私たちは音楽やアートに尊敬の念を持っているし、生まれてからずっといろいろな音楽を聴いてきたし、音楽の歴史にも興味を持ってきた。だから詳しくはあるのよ。でも、部屋に入って音楽を作り出すと、そういうことよりも自分たちの感情のほうが素直に出てくるの。結果的に、そういった歴史や他のアーティストの音楽を超えた、すごくエモーショナルで直感的なものができあがる。この音楽が好きだから自分たちもこういうコード進行でいこうとか、そういう作り方はしないの。

ルイ:そう。で、さっきも言ったように、自分たちの中にある知識や興味が自然と曲に出てくるんだ。音楽の歴史を知識として持ちつつ、そのときに自分が感じているものがそのまま曲に反映されるんだと思う。

MIAやボンジ・ド・ホレ(Bonde do Rolê)といったアーティストへの共感があったりしますか?

リズ:ボンジ・ド・ホレは知らないわ。ごめんなさい。

ルイ:MIAはブラット・ポップのクオリティを持ってると思う。彼女の曲の歌詞には社会的なメッセージも込められていると思うし。プロダクションや社会論評という意味で、彼女からはインスパイアされている。

リズ:ヴィジュアル面でもインスパイアされるわ。彼女って、音楽だけでなくヴィジュアル、メッセージでも境界線を押し広げていると思う。すごくアヴァンギャルドよね。それって私たちがやろうとしていることと同じなの。だから、インタヴューを受けるときに彼女の名前がよく出てくるんだけど、似てるって思われるのはうれしいことだわ。

何が美しいか、なぜそれが美しいと思うかは人によってちがうし、何に価値を見出すか、何を変だと思うかも人によってちがう。そのちがいって本当は自然で普通のことなのよね。(リズ・ニスティコ)

リズさんのなかに、同じ女性の表現者としてリスペクトする人やお手本となる人はいますか?

リズ:マドンナね。彼女はポップ・ワールドのイメージをいい意味で変えたと思うから。彼女もすごく反抗的よね? それが、当たり前とされているものに対する人々の考えを変えたと思う。しかも、すごく大きいスケールでそれをやっているところにインスピレーションを受けるわ。彼女を見たり、過去のインタヴューを読んだりして、彼女がそれをどのようにしてやってのけたのかを学びたいの。私たちもあのレベルに到達できたら素晴らしいと思う。
何が美しいか、なぜそれが美しいと思うかは人によってちがうし、何に価値を見出すか、何を変だと思うかも人によってちがう。そのちがいって本当は自然で普通のことなのよね。食べ物に関する考え方もそう。この食べ物を食べれば、自分の身体がこう見えるからこれを食べるっていう考え方が私にとってはすごくフラストレーションなの。食べることって自然なことのはずでしょ? すごく簡単なことだし、当たり前で自然なことなんだから、そこまで深く考えるべきじゃないと思う。そういうことに関してマドンナくらいのスケールで世界と話すことができたら最高だわ。

ディラ―さんはドラミングを学んでこられたということですが、具体的にどんなかたちで学んでこられたのでしょう?

ルイ:ドラミングはキューバで学んだんだ。本当にたくさんのことを知ったよ。ありすぎて答えるのが大変だな……長くなるから短くまとめると、とにかくドラムに関すること全般を学んだ。ドラミングと歌だね。人間がいちばん最初に奏でた音楽っていうのはドラムと声だったわけだけど、キューバではその考えが強くて、だからパーカッションやドラムに人々がどう反応してきたとか、そういうことについても学んだんだ。それはキューバに限らず世界中の人々のリアクションにも通じると思うし、パーカッションには根源的なクオリティがある。人が美しいものを聴いたときの反応も同じだと思うし、そういうのは勉強になったね。あとはアフロ・キューバン・ドラムのテクニックについても学んだけど、それはまた専門的な話になるからやめとくよ(笑)。

本作には生ドラムやライヴ録音がフィーチャーされているというわけではありませんよねあなたが学んだものの中でとくに本作に活かされている要素はどんなものだと考えますか?

ルイ:アフロ・キューバン・ミュージックの基本的なリズムはクラーベっていうリズムパターンなんだけど、僕たちの音楽にそのリズムは大きく影響していると思う。意識してそうしているわけじゃないけど、たくさん勉強したから、自然とそれが出てくるんだ。あとは……なんだろうな。とにかく向こうで学んだのは、音楽においてリズムとドラムとパーカッションがいかに大切かということだったから、僕らの音楽の中でも自然とそれが軸になっているのかもしれないね。何かをずっと勉強してると、それがDNAの一部になると思う。だから、自分でとくに意識しなくても、それが滲み出てくるんだ。

音楽業界って本当に競争社会なのよ。一方からはああなれって言われたり、またちがう人たちからはこうなれって言われたり、何をやったらいいのかわからなくなる。でも彼らみたいに自分のやりたいことを貫いている人たちを見ると、私もそうしていいんだって思える。(リズ・ニスティコ)

パッション・ピットといっしょにツアーを回られているということですね。パッション・ピットの作品の中でいちばん好きなものを教えてください。また、彼らに学ぶものはありますか?

ルイ:最初のアルバムの『マナーズ』。ほんっとにいいよね。リリースされたときもそうだし、いまでも大好きなアルバムなんだ。いい曲が詰まってるし、あの作品で、彼らは自分たちのジャンルをつくり出してると思う。あの後、彼らみたいな音楽をやろうするミュージシャンたちがたくさん出てきたんじゃないかな。インディ・ポップの世界で自分がしたいことをしてるっていうところがすごくいいと思うね。とにかく僕はあのアルバムが大好きだし、革新的な作品だと思う。そういう点ですごくインスパイアされているから、パッション・ピットといっしょにツアーに出れるなんて、すごく光栄だよ。楽しくなるだろうな。

リズ:パッション・ピットももちろんだし、マドンナ、MIA、ノー・ダウトもジョン・レノンもそうだけど、みんな、自分たちの特徴を保ちつつ進化してる。やっぱりそこにいちばんインスピレーションを受けるわ。何かで成功しても、それにすがって繰り返そうとはしない。それに自分の意志に従ってると思う。音楽業界って本当に競争社会なのよ。一方からはああなれって言われたり、またちがう人たちからはこうなれって言われたり、何をやったらいいのかわからなくなる。でも彼らみたいに自分のやりたいことを貫いている人たちを見ると、私もそうしていいんだって思える。私にとってはそこがいちばん影響されるわね。これからツアーに出て、パッション・ピットからもっといろいろと学ぶのが楽しみだわ。

アップル・ウォッチのCMソングに起用されたということですが、アップルやアップル・ウォッチの価値観や未来像には共感しますか?

リズ:アップルってすごく革新的で創造力に富んでいると思う。すでに大きい会社でありながら、自分たちがやっていることに落ちつかず、つねに限界を超えた何かを作り出そうとしているのが素晴らしいと思うわ。すごくクールよね。だから、自分たちの曲が起用されてすごく光栄だった。

なるほど、今日はありがとうございました。

リズ:こちらこそありがとう! インタヴューしてもらえて、すごくうれしいわ。

ルイ:日本でみんなに会えるのを楽しみにしているよ!

interview with Low Leaf - ele-king


LOW LEAF
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 2000年代よりロサンゼルス周辺の音楽シーンはおもしろく刺激的なサウンドを作り出してきたが、とくに近年はフライング・ロータスをはじめとした〈ブレインフィーダー〉勢の活躍がクローズアップされることが多い。フライ・ローも参加したケンドリック・ラマーの『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』、同作やフライ・ローの『ユー・アー・デッド』でも演奏したカマシ・ワシントンの『エピック』、サンダーキャットの最新EP「ザ・ビヨンド / ホエア・ザ・ジャイアンツ・ローム』など、今年の話題作もLAが中心だ。
 そんなLAから、またひとり注目すべきアーティストが登場した。フィリピンの血筋のロウ・リーフは、ハープ、ギター、ピアノなどを演奏し、またビートメイカー、シンガー・ソングライターとマルチな活動を行う若い女性アーティストだ。彼女の名前が知られるきっかけとなったひとつに、フライング・ロータスの2010年作『コスモグランマ』でのキーボード演奏がある。また、2014年はマーク・ド・クライヴ=ロウの『チャーチ』でハープを演奏し、キング・ブリットとの共作「ア・ライト・ウィズイン(A Light Within)」も出している。自身でも自主のEPやアルバムをいろいろ発表しており、2011年の『クリサリス(Chrysalis)』はLAのビート・シーンにも通じる要素を持つ作品で、たとえば〈ブレインフィーダー〉のティーブズなどに共鳴するところも感じさせていた。また、〈ロー・エンド・セオリー〉でもライヴをし、ラスGなどとロンドンの〈ボイラー・ルーム〉に出演するなど、LAのビート・シーンとはいろいろ繋がりも見られる。

 今回、日本デビュー作となるアルバム『アカシャーレイ』のリリースを機に、ロウ・リーフへのメール・インタヴューを行った。そこでLAシーンの話などもいろいろ訊こうと思ったのだが、どうやら彼女自身は「ある特定のシーン」にカテゴライズされることを望んでいないようだ。マーク・ド・クライヴ=ロウらとの共演にしても、LAという土地が作用したのではなく、彼女いわく「同じ原子が自然に惹かれ合った」とのこと。その出で立ちからしてそうなのだが、どうもスピリチュアルなライフ・スタイルを持つ人のようだ。また他者との比較で、LAで活動する中国人女性アーティストで中国版ハープにあたる古典楽器の古筝演奏家ベイ・ベイや、女流ハープ奏者の先人でフライング・ロータスの大叔母にあたるアリス・コルトレーンや、ドロシー・アシュビーなどの話題を振ろうと思ったのだが、そうしたことも避けられてしまった。彼女のアーティストとしてのスタンスとして、他者との比較や関係性で音楽を評価されるのではなく、あくまでオリジナルな存在としてありたい、そんな自身にこだわる姿が言葉の端々から伝わってくる。

■Low Leaf / ロウ・リーフ
LA を拠点とし、ハープ奏者、ギタリスト、シンガー、ビートメイカーとして活動する女性マルチ・アーティスト。フライング・ロータスの『コスモグランマ』にはキーボードで、マーク・ド・クライヴ=ロウの『チャーチ』にはハープで参加、最近ではラスG など、一時期を“LAビート・シーン”とのつながりを深める。2012年のセルフ・リリース・シングル「GiGA GAiA ‎」以降、いくつかの作品リリースによってゆっくりと注目を集めている。先般、2014年に発表されたものの、アナログ・メディアと配信でしかリリースのなかった作品『アカシャーレイ』のCD盤が日本盤としてリリースされた。

思いつくかぎりのどんな血統なんかよりも、木や植物や自然が私の同族のように最近は感じる。

ロサンゼルスのフィリピン系アメリカ人とのことですが、どのような環境で育ち、音楽を作るようになったのでしょうか?

ロウ・リーフ(Low Leaf、以下LL):ロサンゼルから30分ほど離れたヴァレイというところで育ったの。クラシック・ピアノを弾いていて、曲はギターで書いてテープレコーダーで録音していて、それからすぐにパソコンに移行したけど、それは私が16歳のとき。18歳のときには独学でビートを作っていたわ。

アメリカで活躍する東南アジア系の女性アーティストでは、マレーシア出身のシンガー・ソングライターのユナなどがいます。また、LAなどカリフォルニアにはフィリピンはじめ東南アジアやアジア系の人も多く、とくにフィリピン系ではターンテーブリストのDJ Qバートが有名です。あなたもそうしたコミュニティから出てきたアーティストと言えるのではないかと思いますが、自身ではルーツであるフィリピンという国について、どのような意識を持っていますか?

LL:まず私自身は神の創造物であり、この現世では一時的な身体の中に収められたものだけど、そもそも人間も動物も神聖な存在なのよ。自分の直接の先祖たちには申し訳ないけど、思いつくかぎりのどんな血統なんかよりも、木や植物や自然が私の同族のように最近は感じる。だって私はたしかに過去の出来事から生まれたわけだけれど、それに縛られているわけじゃないでしょ。私は曲を毎日書いていて、自分の本当のルーツは16世紀にスペインのフェリペ2世が、フィリピン諸島をそう名づけるよりずっと前の宇宙に拡張していくわけ。そして、ロサンゼルスでは人間や思想に多様性があるから、とても興味深い場所だと思う。自分はここに身を落ち着つけていて、周囲の人との繋がりも感じるんだけど、同時にどこか外国にいるような気分にもなる。

ハープ、ギター、ピアノなどを演奏し、またビートメイカー、シンガー・ソングライターとマルチな活動を行っていますね。ピアノは幼少時代のクラシックのレッスンで身につけたそうですが、それ以外はほぼ独学で身につけたのですか?

LL:クラシック・ピアノを習っていて、時間がたつとバッハやベートーベン、ショパンを弾くようになったの。ギター、ハープ、それとビート・メイキングの方法は、曲を作っていくなかで独学で身についたものよ。

その頃に影響を受けた音楽、好きだったアーティストなどは?

LL:う~ん、そのときにとくに聴いていた曲を限定するのは難しいわ。いままで私が聴いてきたものすべてが、自分の耳をかたちづくって拡張もしてくれたのよ。だから、特定の誰から影響を受けたというわけではないわ。


深く聴けば聴くほど、ひとりのアーティストと他のアーティストたちとのちがいは、けっしてシンプルなものじゃないってわかるでしょう?

ロサンゼルスの外部の人間が、よく「LAビート・シーン」とラベル付けしてしまう偏見や憶測についてどのように感じますか?

LL:それって外国とのインタヴューでよく訊かれるトピックなのよ。外からの視点だと、革新的でクリエイティヴな部分に目がいきがちで、そうしたことがたくさんあるように映るものなの。それでエレクトリック・ミュージックの音楽家をひとつにまとめてしまうことは仕方ないかなって思う。これはロサンゼルスに限らず、世界のどこでも同じだと思う。
そして、どんなジャンルでもいいんだけど、深く聴けば聴くほど、ひとりのアーティストと他のアーティストたちとのちがいは、けっしてシンプルなものじゃないってわかるでしょう? ジャズの世界だと、熟練した耳がなければプレイヤーのちがいが聴き分けられないようにね。同じような音を持ったアーティストが山ほどいることもたしかだけど、どんなタイプの音楽にも深く聴けるものって絶対にあるよね。たとえそれが、ある人たちからは嫌われているタイプのものだとしてもね(笑)。

あなたの作品を振り返ると、2012年の「GiGA GiGA」はエレクトリックなビート感が強く、同年の「アルケマイジング・ドーン(Alchemizing Dawn)」はフォークなどの要素が強いオーガニックな作品集で、2013年の「アンアースリー(UNEARTHly)」はスペイシーなエレクトロニカ・サウンド、2015年の新作『Diwata Mantraz vol. I』はメディテーション・ミュージックという具合に、作品ごとにさまざまなスタイルを見せていますね。どれもがあなたの世界だと思いますが、どうしてこんな多彩な音楽が生まれてくるのでしょう?

LL:いちばん新しいリリースが、いつもそのときどきの「私」にもっとも近い音なんじゃないかな。いまままでリリースしたものは、当時の私のスピリチュアルな成長の記録にすぎない。だからその意味では、それらは永遠に私の音だとも言えるし、もうそうじゃないとも言える。地球上で生きているかぎり、新たなヴァイブレーションが巻き起こり、そこで私は実験を繰り返して音楽を作っていくと思う。


地球上で生きているかぎり、新たなヴァイブレーションが巻き起こり、そこで私は実験を繰り返して音楽を作っていくと思う。

2014年に制作された『アカシャーレイ』は、“Umaga”に代表されるように、あなたの持つ民族的、土俗的な要素がもっとも色濃く表れたアルバムではないかと思います。また、“Bahay Kubo”や“2b1wd Eternal”などフィリピンのタガログ語で歌う作品もあり、アルバム・タイトルはサンスクリット語でエーテルを意味する「アカーシャ」と、タガログ語で捧げものを意味する「アレイ」から来ています。フィリピンに捧げた作品集とのことですが、それによって土着的なモチーフの作品が生まれてきたのでしょうか?

LL:『アカシャーレイ』はフィリピン人へのヴァイブレーションに満ちた貢物にしたかったの。2012年にフィリピンの森で超自然的な体験をしたんだけど、そのときから自分自身のフィリピン人としてのルーツが何なのかを明らかにしたいと渇望するようになって、そこからインスピレーションを得た。市街地から離れて探検をはじめてしまえば、森はとても神秘的な場所だったわ。だからアルバムはいまもまだ生きている、そしてもうこの世にはいない両方の先祖に捧げているの。

“Rise Up”や“2b1wd Eternal”は民族音楽やミニマル、そしてサイケやクラウト・ロックなどの要素がミックスされたユニークな作品です。カリフォルニアはそもそもサイケ発祥の地で、あなたにもそうした要素が自然に備わっているのでしょうか?

LL:それはちがう。サイケデリックな様式だとかドラッグなんかじゃ、私の音楽が生まれてくる場所のほんの表面にしか触れることができない。そこは天国のようなとても神聖な領域で、そこから私の音楽はインスパイアされて湧き出てくるのよ。そして、私もまだ完璧にそこへ辿り着いたわけでもない。

『アカシャーレイ』はフィリピン人へのヴァイブレーションに満ちた貢物にしたかったの。

 サイケについての質問は、サンフランシスコ出身のピーキング・ライツにも共通するものを感じたからだったのだが、ロウ・リーフのスピリチュアリズムは一般的なサイケ感覚とはまったく異なるものだということがわかるだろう。『アカシャーレイ』全体を見ると、民族的モチーフをエレクトロニック・サウンドに取り入れることに成功しており、近年の作品ではクラップ・クラップの『タイー・ベッバ』、モー・カラーズの『モー・カラーズ』、イベイーの『イベイー』などと同列で語ることができるものだが、もちろんロウ・リーフの中にはそんな観点など存在しないだろう。そして、“セット・ミー・フリー”や“アズ・ワン”はシンガーとしての魅力が詰まった曲で、とくに“アズ・ワン”にはポップなフィーリングが感じられる。“Kami Ang Mga Tao”の歌声はビヨークを感じさせるものだ。同世代の女性アーティストでは、ハイエイタス・カイヨーテのナイ・パーム、ソニームーンのアンナ・ワイズなど、ポップ性と実験性、それと牧歌性や幻想性を同居させる人がいるが、ロウ・リーフもそうしたユニークな個性を持つシンガーだ。“アセンション(Ascension)”にはサン・ラーを思わせるコズミックで混沌とした世界があり、最後は牧歌的な“ライフ・イズ・ピース”と、『アカシャーレイ』はロウ・リーフがいままで発表してきたアルバムの中でも、極めて幅広い表情を見せてくれる作品集となっている。また、自然や宇宙などをより意識した作品集で、その点ではシアトルのジーサティスファクションなどに近い雰囲気を感じる。

 いずれにしても、彼女はそうした比較を好まないので直接的な質問はしなかったが、そのかわりに最近よく聴くもの、インスパイアされるものとして、自然界の音、クリスタル・シンギング・ボウル(メディテーション用のお椀のような楽器)、ワールド・ミュージックなどを挙げていた。そして、次回作についてもすでに制作を進めているようで、〈フレッシュ・セレクツ〉から夏の終わりか秋の頭ぐらいリリースする予定とのこと。彼女いわくいままでで最高傑作になるとのことなので、そちらも期待したい。

〈ATP〉が次の時代に見つめるもの - ele-king

 オール・トゥモローズ・パーティーズ(ATP)といえば、2000年代のインディ・ミュージックを語る上で避けて通ることのできないフェスである。2001年のモグワイを皮切りとして、各時代の曲がり角に立つアーティストたちにキュレーターを務めさせてきたこの催しは、時を経るごとに、ただ音楽の祭典であるという以上の意味合いを強めるかに見える。それは、ポスト - ロックの地平に、ノイズ、サイケデリック、エレクトロニカ、フォーク、ヒップホップ……その他さまざまなエクスペリメンタリズムを合流させ、先の15年の音楽史においてもひとつの揺るぎないパラダイムを築いたといえるだろう。
 さて、そのATPのレーベル〈ATPレコーディングス〉から、スクリーミング・ティー・パーティーのKoichi Yamanohaによるエクスペリメンタル・フォーク・プロジェクト、グリム・グリムのデビュー・アルバムがリリースされることが発表された。日本人アーティストのリリースとしては初となるそうだが、名だたるバンドの作品をリリースし新たな音を世に問うてきたATPが、次の時代に何を見ようとしているのか、その視線の先に注目したい。
 というわけで、8月に国内盤がリリースされるデビュー・アルバム『ヘイジー・アイズ・メイビー』の無料試聴のお知らせです。

世界中で数多くの音楽ファンやアーティストから高い評価と信頼を得る英国発・音楽の祭典オール・トゥモローズ・パーティーズ(ATP)のレーベルからリリースされる初の日本人ソロアーティスト、グリム・グリムのデビュー・アルバムが6/22~6/29と期間限定で全曲試聴開始!

8月5日には日本盤の発売も決まり、元Canのダモ鈴木やTOY、Faust、Veronica Fallsのメンバーなどグリム・グリムを指示する各アーティストや著名人から声が集まっている。日本盤ボーナス・トラックにはともにロンドンを拠点に活動している盟友BO NINGENをバックバンドにフィーチャリングし、カトリック教会の聖堂でレコーディングされた楽曲を収録。

世界で活躍する孤高の天才が世に放つアシッド・フォークの傑作、ぜひ聴いてみてください!

■全曲視聴サイト
https://www.loudandquiet.com/2015/06/exclusive-stream-the-debut-lp-from-grimm-grimm/

■最新ミュージック・ビデオ「Tell The Truth」
https://youtu.be/LN90PyBs2aU

■コメント

狂騒のお茶会から飛行船で一人飛び立つ。それは宇宙船だった。
砕けた鏡を集めて作った自家製の万華鏡。それが歌だった。
不条理のループを越えて届けられた、時代の声。
コウヘイ・マツダ(BO NINGEN)

憂愁で美しいハーモニーに、エキセントリックで掴みどころのないエレメントが絶妙に溶け混ざった楽曲達。例えていうなら、突然恋に落ちて動けなくなった感覚に似ているわね。 
ジェラルディン・スウェイン(Faust)

Koichi Yamanohaによって創られる普遍的な音楽を他のアーティストと比べたり、過去に発生したムーヴメントでカテゴライズしたり比べるのは難しい。
奴は右足を過去に、左足を未来に突っ込んでいる。
ジェイムズ・ホーア (Veronica Falls)

彼の音楽には、魔法にかかったみたいに惹きつけられる力がある。呪われたオルゴールを開けて、そのメロディーを一度聞いたら二度と忘れられないだろう。
トム・ドゥーガル (TOY)

グリム・グリムを聴きながら
夢は永遠に続き 宇宙の中にとけ込んで行きます。
ダモ鈴木(ex- Can)

つい口ずさんでしまう普遍的な名曲の数々。Hazy Eyes Maybeは聴き終わると、もう一度はじめから聴きたくなるアルバム。
サイモン・フィン(Simon Finn )

「狂気に満ちた夢。怯えながらも、わたしはその夢に惹かれ続けている。Grimm
Grimmの無垢なメロディーを唱えるたびにわたしはその狂気に満ちた夢に引き込まれていく。」 
多屋 澄礼(Twee Grrrls Club)

永遠に響き渡る、アシッドで洗われたその至福
英NME紙

グリム・グリムは独りの男が、心の風車を静かに廻して奏でた音
英Q Magazine

カンタベリーのトラッド・フォークに、ダークで 不確かな無重力感がミックスされた奇跡のサウンド。
英国LOUD AND QUIET紙

■Grimm Grimm / Hazy Eyes Maybe
グリム・グリム / ヘイジー・アイズ・メイビー

発売日 : 2015年8月5日(水)
定価 : ¥2,300 + 税
品番 : PCD- 93925
解説:岡村詩野 / 歌詞対訳:Kayoko Haruyama
<収録曲>
1.Kazega Fuitara Sayonara (MV有)
2.Tell The Truth (MV有)
3.Driving Overflow
4.Teleportation
5.Last Word Is Mine
6.Hazy Eyes Maybe (MV有)
7.Robert Downey Syndrome
8.Walk Into The Cold Water With You
9.Knowing
10.Youth From Muswell Hill (MV有)
+ 日本盤ボーナス・トラック

■Grimm Grimmプロフィール
グリム・グリムは2010年に解散したイギリスのロックバンド、スクリーミング・ティー・パーティーのKoichi Yamanohaによるエクスペリメンタル・フォーク・プロジェクト。日本詩、英詩両方の曲があり、美しくも憂愁あふれる楽曲を主体に、透明感ある歌声にテープ・ディレイがかかったアコースティック・ギター、アナログ・シンセサイザーがサイケデリックでドリーミーな独特な世界感へ広がりをみせる。14年夏にはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズ等が設立したピックポケット・レコーズから7inchシングル「Kazega Fuitara Sayonara / Tell The Truth」をリリース。そしてデビューアルバムとなる今作はDIY精神溢れる姿勢により数多くの音楽ファンやアーティストから高い評価と信頼を得る英国発・音楽の祭典オール・トゥモローズ・パーティー(ATP)が運営するATPレコーディングスからリリースされる。



Hot Chip
Why Make Sense?

Domino / ホステス

Electro-popIndie Rock

Tower HMV Amazon iTunes

 考えすぎてるよね、「意味が必要かい?」なんてタイトル。「僕たちよりいいものと取り換えなよ」とか「燃え尽きる」とか――結成からおよそ15年が経つバンドにそんな穏やかでない言葉を明るく歌われると、ファンとしてはちょっと……。だけど、悩む大人の男たちの姿はちょっとセクシーかもしれない。バンドのいじけたような態度は前作のたくましさの裏返しのようにも思われる。デビューのころに漂わせていた「負けている」意識がアルバムに通底しているとも感じるが、その感覚と、ボーナス・ディスクの“バーニング・アップ”で、放送禁止用語がデビュー作以来ひさびさに(しかもサラッと)歌われていることとは無関係じゃないだろう。一時はキッズを騒がせたポップ・スターも30代半ばにさしかかって、これ以上バンドをどうしていいかわからない、ちょっとムシャクシャしてたってことだろう。自信たっぷりに振る舞っているようにみえて、じつのところ頭の中(In Our Heads)は、悩み(Why Make Sense?)でいっぱいだったと。タイトルは自分たち自身の「意味」を求めて悩んだことを暗に示している。

 前作『イン・アワ・ヘッズ』のアグレッシヴさ(逞しさ)は影を潜め、今作『ワイ・メイク・センス?』のサウンドはバンド史上もっともソフト、スムース、スウィート。仕事で疲れている人間にもやさしい。セカンドのころを思わせるシンセ使いの“クライ・フォー・ユー”や、スティーヴィー・ワンダー節の効いた“スターテッド・ライト(Started Right)”、可愛らしいベース・ラインとモリッシーの曲へのオマージュっぽい歌詞が印象的な“イージー・トゥ・ゲット”。この3曲のファンキーさと無邪気さを聴いて、いっしょに歌っていると心が軽くなる。とはいえ、白眉は冷たくシリアスな“ニード・ユー・ナウ(Need You Now)”――この曲がアルバム最大の聴きどころ。冷たい世界の中で、小さく震える心。ホット・チップの名曲には、いつもそんな心の震えが描かれているように思う。高揚とも焦燥ともつかないアップテンポなビートと、その上を滑るように歌うアレクシスの不安げな声。ホット・チップの持ち味は、この穏やかでない心の「震え」を捉えていることだと僕は思う。

 バンドを後ろから支えてきたフィリックス、バンドの前に立って歌ってきたアレクシス。フィリックスがおおらかにバンドのことを見つめていて安心したので、アレクシスにはもっとパーソナルな音楽との関係について訊ねた。

■Hot Chip / ホット・チップ
ロンドンを拠点に活動する5人組エレクトロ・ポップ・バンド。2000年の結成以降、自主でリリースした「メキシコEP」等が注目され、2004年のデビュー・アルバム『カミング・オン・ストロング』の成功によって世界的な存在へとステージを上げる。これまでに5枚のアルバムをリリース。〈フジロック'10〉でのパフォーマンスなど、ライヴでの評価も高い。曲作りのメインとしてバンドを牽引するのは、アレクシスとシンセのジョー・ゴッダート。今回インタヴューに応じてくれたのは、ヴォーカルのアレクシス・テイラーと、ドラムマシンのフェリックス・マーティンだ。メンバーがそれぞれ活発にソロ活動も行っている。

フィリックス編!

「己であれ」(Be what you are)
──Hot Chip “Why Make Sense?”(2015)

ひさびさの新譜でしたね。時間がかかった理由は何でしょう?

フィリックス:そうだね、僕らはいままでだいたい2年ごとのペースでアルバムを出しつづけてきたから、今回は普段より長い時間がかかったと言えると思う。理由はたぶん、『イン・アワ・ヘッズ』の世界ツアーを2年やったから、ツアーが終わった頃には疲れきっていて、次のアルバムのための曲もできていなかったからかな。アルバムを作るのには大抵1年くらいかかるからね。それと、僕らはそれぞれの別プロジェクトに集中する時間がほしかったっていうのもあるよ。僕のバンド、ニュー・ビルドや、ジョーのツー・ベアーズとかもあって、忙しかったのさ。

前作から3年経ちました。おっしゃるように各メンバーのソロが活発でしたし、メンバーも多くなったりなど、モチヴェーションというところでホット・チップとしての録音や活動は以前と変わりましたか?

フィリックス:メンバー? ああ、ロブは10年くらい前からときどき関わっていたけど、ドラムのサラ・ジョーンズは新しく加わったメンバーと言えるかな。そうだね、ある程度変化していると言えるんじゃないかな……たとえばアル・ドイルの作詞やソングライティング面での影響力が大きくなったし、バンドのサウンドにもバンドの変化が表れていると思う。でもそれはホット・チップのこれまでのアルバムにも言えることだよ。僕らはいつもバンドの外で他のプロジェクトをやって、そこからのインスピレーションをまたバンドに持ち帰ってくるんだ。

デ・ラ・ソウルを迎えることになった経緯、録音の様子を教えてください。また、なぜ他の曲ではなく“ラヴ・イズ・ザ・フューチャー”を歌ってもらったのでしょう?

フィリックス:たしかジョーが最初にそのアイデアを思いついたんだ。なにかこれまでのアルバムでやっていない新しいことをしてみたくてさ。それで僕らのレーベルに、彼(ポス)に連絡してもらうように頼んでみたら、彼からいいよって返事がきた。あの曲にした理由は、んー……あの曲がいちばんわかりやすくヒップホップっぽいビートだったし、テンポもちょうどよかったからかな。全体の雰囲気がぴったりだったんだ。他の曲でもよかったんだけど、ポストゥノゥスとのコラボレーションにはあれがしっくりきた。

スクリッティ・ポリッティもアレクシスさんたちと同様、優れたソングライターですね。どんなところに共感しますか? またどの作品が好きですか?

フィリックス:スクリッティ・ポリッティが好きなのはおもにアレクシスだから、僕にはちょっと答えにくい質問だけど……彼はかなりアヴァンギャルドなバックグラウンドからきていて、ちょっと変わった人なんだけど、それでいてメインストリーム・ポップの位置にいるから、僕らは彼に一種のつながりを感じるんだ。かなり非凡で、エキセントリックなイギリス人アーティストだよ……いや、正確に言うとウェールズ人か。

どんなかたちのアートであれ、いいアートっていうのにはユーモアと真面目さは混ざり合って共存しているものだと思うけど、僕らの音楽もそれと同じことだよ。

毎作、洒落た皮肉が隠されていますが、今作最大の皮肉は?

フィリックス:もちろん僕らはいきなり大マジメになったりしたわけじゃないし、今回のアルバムにもたくさん茶目っ気やふざけた要素が入っていると思う、いつも通りにね。でも、皮肉っていうのはどうだろう……。正直、僕らがどういうふうに皮肉と関わってきたかよく分からないな。皮肉っていうと、何かを笑ったり、笑いものにするために何かを引っ張り出してきたり、あるいは自分のやっていることに対して真剣じゃなかったりっていうことを想像する人が多いよね。僕らは遊び心を持っているし、自分たち自身についてそんなにしかつめらしく構えているわけじゃないけど、特別に皮肉っぽいわけでもないと思う。すべてジョークのつもりでやってるわけでもないし。どんなかたちのアートであれ、いいアートっていうのにはユーモアと真面目さは混ざり合って共存しているものだと思うけど、僕らの音楽もそれと同じことだよ。

バンド中、いちばんファンクに影響を受けているのは誰ですか?

フィリックス:たぶんいちばんはアレクシスかな、昔からプリンスやスティーヴィ・ワンダーがすごく好きで、彼らがアレクシスにとっての主なインスピレーション源になっていると思うから。

あなたがたは、無理に若づくりすることもなく、また枯れることもなく、自然に音楽をつくっているように思います。人気バンドとしてのプレッシャーもあるかとは思いますが、どうしてそのようにいられるのでしょう?

フィリックス:人気の点では、僕らはとてもラッキーなことに、一気にブレイクしたりせず、かなりゆっくり堅実に成長してきたから、それをプレッシャーに感じたことはないよ。僕らの音楽を聴いてくれる人たちがいるっていうことにとても感謝しているんだ、それって当たり前のものではけっしてないからさ。だから、それに圧倒されたり、それが音楽を作るうえで障害になったことはないし、むしろ作ったものを聴いてくれる人たちがいるっていうことはエキサイティングだよ。それに僕らはただ自分自身に正直でいて、なにか本来の自分たちとはちがうイメージを作ったりしたことはないから、そのおかげで若さをキープしようと苦労したりすることもなくすんでいるよ。でも僕らもまだ30代前半から半ばくらいで、まだ年金暮らししているわけでもないし、あと数年は時代遅れにならずにいられるんじゃないかな。

僕らはただ自分自身に正直でいて、なにか本来の自分たちとはちがうイメージを作ったりしたことはないから、そのおかげで若さをキープしようと苦労したりすることもなくすんでいるよ。

「あと数年」?

フィリックス:ははは、いや、ずっとおもしろいことをやりつづけられるアーティストやミュージシャンもたくさんいるし、要はいい音楽を作れるかどうかってことさ。僕の個人的な気持ちとしては、前回の『イン・アワ・ヘッズ』と今回のアルバムは僕らが作った中で最高の作品だと思うから、もしも僕らがこのままおもしろい音楽を作りつづけられるならずっと続けていくと思うし、そうしたら人々にはそれに付きあってもらうことになるね(笑)。

ジミー・ダグラスとの仕事の様子やエピソードを教えてください。

フィリックス:ジミーとの仕事は直接対面でのやりとりはまったくなかったんだ。僕らが彼にトラックを送って、彼がひとりでミックスをしたから、会うことはできなかったよ。でもその成果には僕らみんなとても満足している。

2枚組になった理由は?

フィリックス:正直そのへんについて僕はよく知らないんだ。でも、アートワークについては前回もアルバムのジャケットになった写真を手がけてくれたニック・レルフとのコラボレーションだよ。今回は、誰もが自分だけの色やデザインを持つことがコンセプトになっているんだ。アルバムを買う人みんなが所有する楽しみを感じられるようにしたくてさ。

ホット・チップからダンス・ビートがなくなることはありますか?

フィリックス:うーん……(しばらく考える)、アレクシスはこれまでに自分のソロ名義でいっさいダンスミュージックと関わりのない音楽を何度かリリースしていると思うけど、ホット・チップはこれからもずっとダンス・ミュージックとの何かしらの関わりは持ちつづけると思うよ。僕らのやっていることに欠かせない要素だからね。次のアルバムがいきなり『ホット・チップ アンプラグド』になって、僕らがウクレレを爪弾いてる、なんていうのは想像できないな。ダンスっていうテーマは維持しつづけると思う。

タイトルは誰の提案ですか?

フィリックス:タイトルはもともと曲の歌詞の中で生まれてきたんだ、だから提案というか思いついたのはアレクシスさ。

また、タイトルの問いかけに対するあなたの答えは?

フィリックス:はははは(笑)。あれは、答えがない質問なんじゃないかな。あれが指しているのは、「make senseする(意味を成す、つじつまが合う)必要なんてあるのか?」、「どうして僕らは自分たちのやっていることが道理にかなっていないといけない、と感じてしまうのか?」、「ただ楽しもう、馬鹿なことをしようよ」っていうことだからさ。

いまのロンドンのクラブはどんな様子ですか?

フィリックス:いまのロンドンのクラブ・シーンは、サウンドも多様だし、すごく刺激的でおもしろいDJたちもたくさんいる。行くべきところさえわかっていれば、まだまだイノベーションは起こっているしコミュニティも健在なんだ。ただ、〈プラスティック・ピープル〉が閉店してしまうのは残念だね。僕らにとっても、他のいろいろなアーティストにとっても重要な場所だったから残念だけど、きっとまた新しくおもしろいものが生まれてくると思う。最近たくさんの新しい規制ができて、クラブの運営が難しくなっているんだ。売春やドラッグの取引がクラブ内であったらその責任も負わなきゃならないし、プロモーターやクラブのオーナーにとっては厳しいビジネスだよ。

スリーフォード・モッズはご存知ですか? 差し支えがなければ教えてください。彼らの音楽をどう思いますか?

フィリックス:ああうん、知っているよ。彼らはポストパンク/ヒップホップみたいな感じのバンドで、あまり他にはないサウンドを持っているよね。要はかなりクレイジーなサウンドだけど、彼らは他の人がどう思うかは気にしないみたいだ(笑)。けっこうパンクで、現代のイギリスでの生活がいかに腐ってるかみたいなことを、放送禁止用語満載で歌っててさ。彼らはクールだよ、とても頭が良い人たちなんだと思うな。

今回僕らはいままでにないほど時間をかけて、納得のいくサウンドを追求したし、僕にとってはこのアルバムは僕らがいままでに作ったなかで最高のアルバムだと思っているから、満足しているといえるね。

フェリックスはテクノやハウスがお好きだと思いますが、チープなサウンドだった初期から比べ、ホット・チップはどんどんバンド・サウンドが強くなっています。今回のアルバムについて、フェリックスとしてはサウンド面で満足していますか?
じつはもっと別のアイディアがあったりしませんか?

フィリックス:うーん、そのとおり僕はテクノやハウスが好きだけど、もともとそういう音楽がバンド自体にとってすごく大きな影響を与えているわけではないんだ。ライヴのときにはよりダンスっぽい面が出てくるかもしれないけど。ただジョーやアレクシスにとっても、昔のハウスはこれまでずっとインスピレーションになっていたと思うけど、今回彼らはテクノやハウスよりも、自分たちのルーツであるヒップホップやR&Bに戻りたかったんだ。サウンド面についていえば、今回僕らはいままでにないほど時間をかけて、納得のいくサウンドを追求したし、僕にとってはこのアルバムは僕らがいままでに作ったなかで最高のアルバムだと思っているから、満足しているといえるね。

ニュー・ビルドはフェリックスが舵を切っているバンドかと思いますが、次作の構想はありますか?

フィリックス:いろいろとプランはあるよ。いちばん最近は僕らの曲“プア・イット・オン(Pour It On)”のビデオを作ったんだけど、とても気に入っている。だからちょうどそこでいったんピリオドを打って、しばらく休みをとるいいタイミングになったんだ。でも僕とアルはスタジオを共有していて、いつも次のニュー・ビルドのアルバムがどんな音になるかについて話をしているよ。ある程度、自分たちを新しく作り替えるようなものになると思う、これまでとはちがったサウンドや、いままでやったことのないことに挑戦したいんだ。次のアルバムができるまでに時間はかかるかもしれないけど、まちがいなく活動を続けてはいく予定だよ。僕らはまだ自分たちがどんなバンドなのかはっきり定まってはいないと思うから、まだ具体的にどうやるかはわからないけど、いったん白紙に戻して新しいことをやるつもりさ。

今後のフェリックス自身の野望を教えてください

フィリックス:野望か……答えるのが難しいな、僕は音楽においては自分が想像したよりもはるか先に到達してしまった感じがするから、そんなに野望っていうものはないような気がする。何かちがうことをしたいなとは思っているし、作曲をしてみたり、音楽以外のこともやってみたいと思っているよ、僕個人的に思っているだけだけどね。ホット・チップとしては、おもしろい音楽を作って世界中を旅しつづけられるといいな。それって素晴らしいことだし、それ以上に望めることなんてそんなにたくさんないよ。いまもツアーをしているし、日本でのショウはまだ何も具体的に決まっていないけど、決まるといいな。できるとしたら、今年の終わりか来年のはじめになると思う。

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アレクシス編!

他のなによりも、音楽は僕に幸福感と生きている実感を与えてくれる


Hot Chip
Why Make Sense?

Domino / ホステス

Electro-popIndie Rock

Tower HMV Amazon iTunes

ホット・チップが自主制作の『メキシコ・EP』を2001年にリリースしてから14年が経ちました。初期のホット・チップをどう評価しますか?

アレクシス:ひんぱんに聴くわけじゃないけど、何曲かはそれなりにオリジナルでナイーヴかもしれないし、いいんじゃないかと思う。でも、何曲かはよくないね! ジョーはいまでも思い浮かぶようなとてもいい曲をいくつか書いたと思う。初期の曲で僕のお気に入りは“マロウ”と“ヒッティン・スキットルズ”だな。

バンドをはじめてからメンバー間の友情はどのように変化しましたか?

アレクシス:幸運なことに、僕たちはいまだにいい友だちだし、楽しい時間をいっしょに共有している。16才のときほどいっしょにいるわけじゃないけど、いまでも親しい仲だよ。

あなたはデビューから現在にいたるまで、キャリアを通してシンガー・ソングライターでありつづけてきました。ファンはみな、あなたの歌声を愛していると思います。そんなあなたが初期のアバウト・グループにおいて、なぜ歌や曲作りを放棄して即興演奏に向かったのでしょう?

アレクシス:僕は純粋な即興音楽を作りたかったんだ。さらに言えば、すでにある曲を即興で演奏することには惹かれなかった。そんなことをしてもいいものにはならないと思ったんだ。とはいえ、即興演奏に興味をもちながらも同時に曲を書いてもいたよ。
 なにより僕はアバウト・グループの4人でいっしょに演奏することで何が起こるのかを見たかったんだ。曲作りを放棄したというよりも、チャールズ・ヘイワードとパット・トーマスとジョン・コクソンとのコラボレートであることが大切だったんだ。

僕はコレクターだ。大好きなミュージシャンの音楽をもっと聴きたいというか、とくにそのミュージシャンのキャリアにおいて僕が最高だと思う時期の音楽を探しているんだ。

あなたは服や骨董も好きですが、ブートレッグのコレクターでもあります。とくにジョージ・ハリスンの『オール・シングス・マスト・パス』のデモ音源にとても感銘を受けていましたね。未完成のデモ録音の質感に対して憧憬のようなものを持っているのでしょうか?

アレクシス:そう、僕はコレクターだ。未発表のものをいつも欲しているわけではないけど、というより、大好きなミュージシャンの音楽をもっと聴きたいというか、とくにそのミュージシャンのキャリアにおいて僕が最高だと思う時期の音楽を探しているんだ。
 ブートレッグを集め出したのはとても若いころで、ちょうどプリンスのとてもとても有名な『ブラック・アルバム』がブートで流出されたころ(1987~88年)。カムデン・マーケットで『ブラック・アルバム』のブートを探し歩いているうちに、『クリスタル・ボール』や『カミール(Camille)』や『クルーシャル(Crucial)』とか……他の非公式/アウトテイクのコレクションを見つけたんだ。なかでもお気に入りの曲は“オールド・フレンズ・フォー・セール(Old Friends 4 Sale)”と“ウィットネス・フォー・ザ・プロセキューション(Witness 4 The Prosecution)”だね。プリンスのブート同様に他のミュージシャンのアウトテイクを集め出したのは、実際それから数年後のことなんだ。
 プリンス史上でもいわくつきの“ウォーリー(Wally)”というアウトテイクがあって、彼がレコーディングしたあとにそれを全部消してしまって、後日、イチから再レコーディングしたとされている。僕はそれがとっても聴きたいんだけど、たぶん永遠に無理なんだろうね。
 ちなみに、ホット・チップにも未発表曲がたくさんある。いい曲もいくつかあるよ!

あなたのソロ作やアバウト・グループでは、音楽が未完成のままにされているように思えます。ホット・チップでの完成度とは非常に対照的です。音楽を完璧に仕上げることから解放されたいという気持ちがあるのでしょうか?

アレクシス:ちょうど『ラブド・アウト』を作りはじめたときに、日本のバンド=マヘル・シャラル・ハシュ・バズのライヴを観たんだ。彼らの短くて未完成な響きの曲にいくらか影響されたよ。そのうち何曲かは8秒くらいしかない曲もあった! 他にも、ポールの『マッカートニーⅠ』や『マッカートニーⅡ』。とくに前者は未完成な音楽に光を当ててるよね。あと、『ライク・フライズ・オン・シャーベット(Like Flies On Sherbert)』をはじめアレックス・チルトンのレコードにも触発された。
 それで、自分が作っている音楽は、「調理しすぎ」ないで素材を活かしたほうがいいんじゃないかという気がしはじめたんだ。何曲かはどう完成させればいいのかわからなかったんだと思うけど、それ以外の曲に関しては、プロダクションをつけ足したり再録音したりリメイクしたりして曲の持つよさが削れてしまうのが恐くて、わざと素材のままにしておくことにしたんだと思う。やり直しを繰り返して魅力が損なわれないようにしたかったし、録音の最中の即興の要素に興味があったから。
 完璧に仕上げることがベストのときもある。だけど、仕上げることで、楽しんで作っていたはずの音楽が退屈なものに感じられてしまうときもあるんだ。

愛は、それについてどう考えたり感じるかによっていつも変質しているものだよ。誰もがいつだってその秘密を明らかにしたり知ろうと試みている……。

ホット・チップにおける「LOVE」という言葉の意味は変化していると思います。とくに『ワン・ライフ・スタンド』と『イン・アワ・ヘッズ』の間で、愛を乞う立場から、相手へ助言や愛を与える立場へと変わりました。そして、『イン・アワ・ヘッズ』の音と歌詞はとても自信に満ち溢れていました。なにがあなたたちを強くしたのでしょうか?

アレクシス:愛は、それについてどう考えたり感じるかによっていつも変質しているものだよ。誰もがいつだってその秘密を明らかにしたり知ろうと試みている……。
 なにが僕たちが強くさせたかという問いにはどう答えればいいかわからないな。もし僕たちが強いのだとしたら、ビーチ・ボーイズとほうれん草を組み合わせたからかな?

今作『ワイ・メイク・センス?』ではR&Bやソウルの影響が色濃く感じられます。これは意図的しての結果でしょうか?

アレクシス:そうでもないんだ。アルバムとは、つまりなにを残してなにを外すかの結果だ。僕たちはいつだってR&Bを愛してきたし、3曲においていつもより影響が顕著なだけだよ。でも『カミング・オン・ストロング』や『ジ・ウォーニング』での影響と同じくらいだとも思う。ジョーはコマーシャルなディープ・ハウスのリヴァイヴァルにちょっと嫌気がさしてるみたいだけど、それがこれまでとくらべて違いを生んでいるのかもしれない。

今作のアートワークは非常にシンプルでパワフルですね。線のズレがまったく別の絵柄を生んでいます。ホット・チップが歩んできた道のり、あるいはその音楽を表しているように思えます。作者の現代アーティスト=ニック・レルフは、これまでもホット・チップやあなたのソロ作品やTシャツをデザインしていますね。ニックの作品のどんなところが好きなのでしょうか?

アレクシス:ニックは素晴らしいアーティストだ。彼の作品が大好きだよ。彼はとても想像力が豊かで、聡明で、なすことが論理的なんだ。だけど、彼の作品がなぜそうなっているのかというディテールをすべて解き明かすのは簡単じゃない。彼は、ポピュラーなカルチャーとあまり知られていないカルチャーのなかでも僕たちの大好きな要素を参照している。ホット・チップととても相性が良いし、僕は彼と仕事をする前からファンだったと思うし、幸運なことだよね。変わった見方をすれば、僕にとってニックとオリヴァー(・ペイン)はなんだか音楽のデュオのようにも見えるんだ。

※筆者註:ニック・レルフとオリヴァー・ペインは2人組で活動し現代アート界で名を成したが、現在は別々で作品を発表している。

〈Angela Federico〉の“Everything She Wants” Tシャツ。〈Spruce〉60年代オリジナルボディの『ピーナッツ』(スヌーピー)のスウェット。〈キツネ〉の10年くらい前のジーンズ。〈リーヴァイス〉のヴィンテージのポケット付パーカー。〈Vuokko〉の……

スリーフォード・モッズのことは知っていますか? またどう評価しますか?

アレクシス:彼らのことは話に聞いているし、記事を読んだこともあるけど、まだ音楽を聴いたことがないんだ。

新しい音楽でお気に入りのものはなんでしょう?

アレクシス:“マキシマム・ビジー・マッスル”と“クラップトラップ”という曲を作ったジョー(Joe)(https://www.ele-king.net/review/sound_patrol/001231)。

最近のお気に入りの洋服を教えてください。

アレクシス:〈アンジェラ・フェデリコAngela Federico〉の“Everything She Wants” Tシャツ。
〈Spruce〉60年代オリジナルボディの『ピーナッツ』(スヌーピー)のスウェット。
〈キツネ〉の10年くらい前のジーンズ。
〈リーヴァイス〉のヴィンテージのポケット付パーカー。
〈Vuokko〉のジャンプスーツ。
〈Supreme〉のジャンプスーツ。
〈TSPTR〉のスヌーピーのバックパック。
ジョージ・マイケル『Listen Without Prejudice』のスウェット。
〈Primark〉のスウェットとショーツ。

あなた自身に賞を与えるとしたら、どんな賞ですか?

アレクシス:もっともリハーサルをしないソロ・パフォーマーかな?

現在の野望を教えてください。

アレクシス:夢で新曲をつくること。

(筆者註:おそらくポール・マッカートニーが“イエスタデイ”を夢で書いたという話を基にした発言でしょう。)

Why Make Music?

アレクシス:Music makes me feel happy and alive more than anything else.
(他のなによりも、音楽は僕に幸福感と生きている実感を与えてくれるから。)

Matmos - ele-king

 木津毅と言えばマトモス、マトモスと言えば木津毅。ユーモアの込められたミュジーク・コンクレートの発想で1枚のIDMポップを作り上げたのは、ハーバートよりもマトモスが先だよ。先にやればいいってものじゃないけれど、実際、マトモスの片割れはハーバートのレーベルから作品出しているし、その音の採取において政治性をヒモづけてもいる。ゲイ・カルチャーの表現においても、一芸に秀でている。ビョークも一時期マトモスとはべったりだった。
 そんなマトモスが久しぶりに来日する! 四国の高知にも行くそうだし、関東では秩父でやるというから、これは観光もできるし、楽しそうだ。梅雨が明けていることを祈る。

 1年間の沈黙の後、満を持して行われる今回の「東京BOREDOM」は、ビョークのリミックスを手がけた事でも知られる実験的電子音楽デュオ”Matmos"と、ゲームパッド、ジョイスティックによる自作コントローラーでノイズとストロボライトを操る、アメリカ、ボルチモアのノイジシャン“Jeff Carey”を招いてのスペシャル版。
 舞台となるのは、埼玉県は秩父市のライヴハウスLadderLadder。その周辺の古着屋なども使っての観光地ヴァージョン。
 他の出演も、PHEW、切腹ピストルズ、YOLZ IN THE SKY、SuiseiNoboAz、ドラびでお等と超個性的な上に、当日は、秩父最大の夏祭り「秩父川瀬祭り」も行われているとのことなので、ライヴハウスの中と外両方でお祭り気分を堪能出来そう。
 また7/18には、「東京BOREDOM #11東京」と題して、今回のMATMOSのツアーの中打ちと、秩父のボアダムへ繋ぐ意味でのオールナイト・パーティが行われる。MATMOS来日ツアーのチケット(及び半券)を持参された方はチャージフリーで入場出来るとのこと。

7/20(月祝) 東京BOREDOM#11<秩父>
@秩父LadderLadder&STUDIO JOY&anbai works(古着屋)
11:30/12:30 ¥2500/¥3000(+1drink)

MATMOS (U.S.A)
JEFF CAREY (U.S.A) ×ドラびでお
PHEW
切腹ピストルズ
in the sun
GROUNDCOVER.
SuiseiNoboAz
ビイドロ
YOLZ IN THE SKY
HAVE A NICE DAY!
Bossston Cruizing Mania
GOMESS
mmm
マヒトゥー・ザ・ピーポー(GEZAN)
とうめいロボ
原嶋卓哉
DOTAMA【術ノ穴】
エンヤサン【術ノ穴】
ヒロネちゃん【術ノ穴】
ifax!【BLACKSHEEP】

<DJ>
DJ MEMAI
DJ:COGEE【BLACKSHEEP】
DJ:SUNGA【BLACKSHEEP】
kussy(fragment)【術ノ穴】

<VJ>
eetee
GENOME
…and more!!!!!

<DECO>
COLORgung【BLACKSHEEP】
<LASER>
NxOxT【BLACKSHEEP】

7/18(土All night) 東京BOREDOM#11<東京>
@下北沢THREE
23:30/24:00
charge:¥2000(+1drink)/女性¥1500(+1drink)
MATMOSツアーチケット持参:2drink\1000のみ

transkam
worst taste&specialmagic
HALBACH
otori
HIKO×bonstar
ニーハオ!
galcid+齋藤久師
GuruConnect (skillkills)
※スペシャルゲスト有り!

<FOOD>
SPICE ADDICTS
eetee

<VJ>
IROHA
GENOME

Matmos & Jeff Carey Japan Tour 2015 スケジュール

7.17 落合 Soup
7.18 西麻布 Super Deluxe
7.19 東高円寺 二万電圧
7.20 秩父 ladderladder
7.23 心斎橋 CONPASS
7.24 京都 METRO
7.25 高知 DAHLIA

 

東京BOREDOM
オフィシャルサイト
https://tokyoboredom.tumblr.com
Facebookページ
https://www.facebook.com/tokyoboredom

Matmos & Jeff Carey Japan Tour 2015
オフィシャルサイト
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Booty Tune presents DJ PAYPAL Japan Tour 2k15 - ele-king

 シカゴのジュークは、瞬く間に世界的な音楽になった。UK、日本、そしてUSからベルリンへ。とくに DJラシャド以降は、「DJラシャド以降」という言い方が通用するほど、シーンは世界規模で拡張しているのだ。その中心には、シカゴのTEKLIFE がある。
 いや、しかし、DJ Paypalというネーミングが最高ですね。Paypalこそまさしく悪魔的なシステムです。深夜酔っぱらって、いつの間にかレコードやCDを買っていたなんてことはザラです。現代消費社会の象徴です。それをDJネームにするとは……なんて不遜な人でしょうか。
 しかも、この人のDJは、そうとうにポップなようです。
 これは期待するかありません。7月19日(東京)〜20日(大阪)です。みんなでこの謎のDJを冷やかしつつ、彼のハッピー・ジュークを楽しみましょう。

 世界を沸かす覆面ジューク DJ、ついに来日!
 ついに謎のジューク DJ が来日を果たす!  ジューク好きの間で密かに話題になりはじめた 2012年の活動開始から、この3年でまたたく間にシーンの中心に躍り出た、正体不明の覆面トラックメーカーDJ Paypal。その人を食ったDJ ネームゆえ、出演時はいつもTシャツを頭から被り、その素顔を見せることは決してない。最近、ネット決済会社の本家 Paypal から名称の未許可使用のクレームを受け、フェイスブックでも強制的に名前を変えさせられるほど、知名度も アップ中。
 大ネタを惜しげもなく使いまくる、老若男女問わず踊らせるアッパーかつポップなディスコ・スタイルは、北欧の Slick Shoota とともに現行パーティ・ジュー クのひとつの到達点と言える。自身のレーベル〈MallMusic〉からリリースされたファースト・シングル「Why」に収録された“Over”がクラブ・ヒット。さらに、新世代ベースを牽引するレーベル〈LuckyMe〉からもシングルをリリー スし、Machinedrum、Ikonikaらの著名アーティストたちのサポートを受けながら、UKベースやドラムンベースなど、ジューク・シーンに留まらない幅広い活躍を見せ続けている。2014 年からは現在のジューク・シーンの中心とも言える、シカゴ最大派閥の TEKLIFE クルーにも所属。UK の老舗レーベル〈Hyperdub〉の10周年コンピレーションにもその名を連ねた。
 今回の来日公演は Booty Tune が主宰となり、東京の大阪の 2 箇所で公演。日本勢の出演者陣もジューク・シーンをはじめ、タイトな顔ぶれがそろう。会場は、 日本フットワーク・ダンス・シーンの総本山「Battle Train Tokyo」の恵比寿KATA と大阪 Circus。全日本のジューク・ファンが待ち望んだ、ヨーロッパ最強のジューク・アーティストの来日公演。アッパーでハッピーなジュークに乗っ て、Let Me See Yo Footwork!!!

【東京】
Still Pimpin' feat.DJ Paypal
会場:KATA + Time Out Cafe & Diner [LIQUIDROOM 2F]
日程:7 月 19 日(日/祝前日)22:00~
出演:DJ Paypal (TEKLIFE, LuckyMe/Berlin, Germany)、D.J.Kuroki Kouichi、Guchon、TEDDMAN、D.J.APRIL(Booty Tune)、Dx (Soi Productions)、SUBMERSE、Boogie Mann (SHINKARON)、食品まつり aka Foodman、Kent Alexander(PPP/Бh○§†)、Frankie Dollar & Datwun (House Not House)、Dubstronica(GORGE.IN)、 Samurai08、コレ兄(珍盤亭)料金:Door Only ¥2,500 (With Flyer ¥2,000)

【大阪】
SOMETHINN vol.12
会場:CIRCUS
日程:7 月 20 日(月/祝日)19:00~
出演:DJ Paypal (TEKLIFE, LuckyMe /Berlin, Germany)、D.J.Fulltono (Booty Tune)、Keita Kawakami (Dress Down)、Hiroki Yamamura(Booty Tune)、AZUpubschool (Maltine Records / Sequel One Records)etc...
料金:TBA

■DJ Paypal(TEKLIFE, LuckyMe / Berlin, Germany)
アメリカ出身、ベルリン在住、本名不詳の謎の覆面トラックメーカー。DJ Spinn と故 DJ Rashad によって結成された世界的クルー「TEKLIFE」のメンバー。2012 年頃から徐々に頭角を現し始め、その後 Machinedrum、Jimmy Edger、Ikonika、Daedelus らからの熱烈なサポートを受け、そのキッチュな 名前に違わぬプロップスと実績を積み上げてきた。イーブンキック主体のサン プリングジュークを得意とし、アッパーかつポップなトラックメイキングで、 Juke/Footwork の枠を超え、多くの DJ に愛されている。これまでも前出の アーティストのほか、同じ TEKLIFE の盟友、DJ Earl や DJ Taye、DJ Rashad らのほか、Nick Hook や Sophie などともコラボ、リミックスワーク などを手がけている。
※20 歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。(You must be 20 and over with photo ID.)


 今年で6年目に突入するギャラリー、KATA夏目前の恒例催事!(これが終わると1年も折り返し!!早っ!ヤバっ!!なのですが……)
 この夏、幡ヶ谷より新天地へ移転予定のレコード&CD&あれこれショップの老舗中の老舗"LOS APSON?"さんとのタッグで開催の「LOS APSON? x LIQUIDROOM presents T-SHIRT! THAT'S FIGHTING WORDS!!! 2015」。
 今回も多数のアーティスト/ブランドが一堂に会して、6月26日(金曜日)から3日間の限定開催。
 今回はユーズド(古着)のラインナップも加わり、ますます熱を帯びること間違いナシ!!
 日々の場内BGMはオリジナル・スタイリンなDJが揃い踏み。最終日には隣接のTime Out Cafe & Dinerにて、今年1月に当店1階メインフロアにて実に10年ぶりの復活となった「GOLD DAMAGE(通称ゴルダメ)」のジャパン・ヴァージョンも開催でまさに隙なし!
 そしてそして、今回のLOS APSONさんのTシャツ・デザインは五木田智央が担当! モリモリ盛り盛りの内容にてよろしくお願い申し上げます。

LOS APSON? x LIQUIDROOM presents
T-SHIRT! THAT'S FIGHTING WORDS!!! 2015

 1年とは早いものです。身震い系ゾクゾク〜〜〜っとすると思ったら、もう「T-SHIRT! THAT'S FIGHTING WORDS!!! 2015」の季節がやって参りましたっ!!!  ウギャーーーっと喜んでいいのか、戦(いくさ)が始まった焦りなのか、分からなくなっている私・ロスアプソン店主ですが、とにかくやりますよ〜〜〜、今回もギンギン・ビンビンにっっっ!!!

 今年は新作Tシャツの出品メンツを厳選し、ネクスト・レベルを模索!?!?  そして、ラインナップの目玉としては、レベルの高い? ユーズドのラインナップを充実させる予定です!!!  一着しか無いカッコいいユニーク古着は、争奪戦間違い無しでしょうね……。
 っつーーーことで、今年も楽しみにしていて下さいねっ!

 あ、最終日には、Time Out Café & Dinerスペースにて、オヤGパワー全開で今年復活した「GOLD DAMAGE」の“ジャパン!”ヴァージョン(和モノ&デビシルのJAPAN縛り)もやりますので、そちらもご期待下さいっ!!!(山辺圭司/LOS APSON?)

【Artists / Brands】
LOS APSON? / ackkyAkashic / ALCHEMY WORKS / amala / BLACK SHEEP / BOMBAY JUICE / BOOZE DESIGN WORKS / BREAKfAST / BUGPIPE / CELEBS / COMPUMA (SOMETHING ABOUT) / COREHEAD / DANCE HOLE by ヒューヒューボーイ / DJ DISCHARGE (Unconscious When) / DJ YOGURT (UPSET REC) / dublab.jp / ECD / FEEVER BUG / forestlimit / GEE Print / HE?XION! TAPES / ifax! / Indyvisual / JINTANA & EMERALDS / KEN2D SPECIAL / KIZM / KLEPTOMANIAC / LIBRARY RECORDS / MANKIND / MGMD A ORG. / midnightmealrecords / noise / PARANOID / PARTIZAN25 by WOM / PART2STYLE / SAMPLESS / SEMINISHUKEI / SHOGUN TAPES / SONIC PLATE / Summer Shot / SUMMIT / TACOMA FUJI RECORDS / Telepathy / TENT / Tetsunori Tawaraya / TEXACO LEATHERMAN / TURBO SONIC / Vincent Radio / VOVIVAV / WACKWACK / wacky COLORgung / WDsounds / 2MUCH CREW / 37A (PANTY) / 373 / 86ed / GRASSROOTS / LEF!!! CREW!!! / TRASMUNDO / ChillMountain / TWENTY SEVEN / MORE (DAY IN DAY OUT) / TARZANKICK!!! / mink / ESSU / CosmicLab. / TADZIO / KIRIHITO / 威力 / 大井戸猩猩 / 河村康輔 / 五木田智央 / 竹本侑樹 / ヘンタイワークス / 嫁入りランド / LIQUIDROOM

2015.6.26 friday→28 sunday
KATA[LIQUIDROOM 2F]
15:00-22:00
entrance free

■DJ Time@KATA[17:00-22:00]*28日(日曜日)のみ15:00-22:00
▼6.26(fri) feat. DJ DISCHARGE, KEIHIN, DJ YOGURT
イケイケ・ドンドンなDJメンツに声をかけました。ディープで華やかな一夜となることでしょう〜。皆さん乾杯しましょう〜♪
▼6.27(sat) feat. Shhhhh, BING (HE?XION! TAPES), 威力
奇祭の秘宝達を招集しました。ほんわかヘンテコ&異次元最先端を感じながら、Tシャツをお選び下さい。レッツ・ホニャララ!
▼6.28(sun) feat. SHOGO TSURUOKA (TURBO SONIC)
「GOLD DAMAGE 2015 Let's Go Crazy」にてラジカセ・インスタレーションをカマしたTURBO SONICの旦那が、とんこつラーメン風?ディスコにて、開店からラストまでの7時間ロングセットに身震いチャレンジ! レア体験を、お見逃し&お聴き逃し無くっ!

★Special Party!!!@Time Out Café & Diner[15:00-22:00]
▼6.28(sun) feat.『GOLD DAMAGE ジャパン!』
10年ぶりのゴルダメ復活地の階上にて、ゴルダメ・トリオが「ジャパン!」縛りで、またまたやらかします! チーママchampagneshowerに、今話題の(?)B2BユニットCocktail Boyzを迎え、和モノ&デビシルのJAPANのみの限定選曲にてバター・サロン作戦を試みます!
溶けてしまう虎は、ダ〜レだっ!?

GOLD DAMAGE Deejay's:ヤマベケイジ (LOS APSON?), 五木田智央, COMPUMA
Guest DJs:champagneshower (CELEBS), Cocktail Boyz[Q a.k.a. INSIDEMAN & KENKEN from KEN2D SPECIAL]

info
KATA https://www.kata-gallery.net
Time Out Café & Diner 03-5774-0440 https://www.timeoutcafe.jp
LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net


New Order - ele-king

 

 シカゴ・ハウス、デトロイト・テクノ、石野卓球、この3つに多大な影響を与えたポストパンクのUKのバンドは? 答:ニュー・オーダー。毎週月曜日の朝になると頭のなかでかかっている曲は? 答え:ブルー・マンデー。女(男)と別れる度に聴く曲は? 答:リグレット。

 ピーター・フック抜きのニュー・オーダーのライヴの評判がやたら良かったし、オールドファンにはまさかの〈ミュート〉レーベル移籍の第一弾です。ここは期待しちゃいましょう。ニュー・オーダーの10年ぶりのオリジナル・アルバムが9月23日にリリースされることが決まりました。アルバムのタイトルは『ミュージック・コンプリート』です。
 メンバーは、バーナード・サムナー、ジリアン・ギルバート、スティーヴン・モリスの3人+新ベーシストのトム・チャップマン、フィル・カニンガム。全11曲のうちの2をトム・ローランズがプロデュース、うち1曲を共作しています。アートワークはもちろんピーター・サヴィル。
 2000年代に入ってからの2枚のアルバムが、どちらかと言えばロック色が強かったものの、最近のジェイミーXXのアルバムのように、ダンス・ミュージックがポップ・カルチャーとなっている現状において、マンチェスターの大物がどのような作品を出してくるのか、注目したいと思います。

 続報を待て!

(※なんと、ele-king booksからはバーナード・サムナーの自伝『Chapter and Verse - New Order, Joy Division and Me』の翻訳本を新作と同時期に刊行する予定です)

interview with Cornelius - ele-king


Cornelius
攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.music by Cornelius

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坂本真綾、Cornelius
あなたを保つもの/まだうごく

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V.A.
攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE/新劇場版 Music Clips:music by Cornelius

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 小山田圭吾a.k.a.コーネリアス。
 彼と初めて会ったのは1990年だから、いまから25年前ということになる。25年の歳月は世界の様相を激変させたけれど、どんなときも自然体を守り、自分の生き方と時間軸を保ちながら、音楽的にもめざましい進化を遂げたコーネリアスの軌跡は、アーティスト・ネームの由来となったSF映画に因んで「この惑星の霊長類史上稀にみる」と形容したくなるほど稀有なものがある。

 2006年の『Sensuous』以来、オリジナル・アルバムこそリリースされていないが、インターナショナルなオファーが絶えないリミックスやCMワークス、Eテレの教育番組『デザインあ』の音楽制作、salyu ×salyuなどのプロデュース、そしてYoko Ono Plastic Ono Band、YMO、高橋幸宏&METAFIVEなどのメンバーないし準メンバーとしての活動を通じて積み重ねてきたコラボレーションの数々は、不在を感じさせるどころか、他に例を見ないほど充実している。

 彼が約3年間に渡って音楽を手がけた、89年の原作発表以来25周年を迎える日本におけるサイバー・パンクの金字塔的作品『攻殻機動隊』の前日譚『攻殻機動隊 ARISE』も、現在オンエア中のTVアニメ『攻殻機動隊 ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』ならびに映画『攻殻機動隊 新劇場版』をもって、一連のシリーズを完結する。
 作品の舞台は近未来――といってもいまからわずか12年後の――2027年の日本だが、坂本慎太郎との共作によるそれぞれの主題歌、“あなたを保つもの”と“まだうごく”は、映像作品のテーマ・ソングという役割を超えて、なぜか2015年現在の日本を覆う不穏な空気に対するアンサー・ソングのように響いてくる。

ほら 見て 今までの 約束 破棄された
新たな この世界 あなたを 保つものが
あな たの あな たが
あな たを あな たに
あな たの あな たが
あな たを あな たに
してる
“あなたを保つもの”

 しばらく会えずにいる間も、彼が創造する音楽はいつも近くに在った。
 心が波立つとき、彼の音楽に耳を傾けると、平穏な気持ちを取り戻す。感覚を研ぎ澄ませたいとき、彼の音楽に全身を浸せば、マインドのセットアップが完了する。
 ぼくにとって彼の音楽は、「自分を保つもの」として欠かすことができない。

 いま、ぼくらが生きるこの国で、奇妙な事態が進行している。
「今から おきる ありとあらゆる現実を 全部 見て 目に 焼き付けよう」
 4年前、坂本慎太郎と小山田圭吾が、salyu × salyuというプロジェクトで発したメッセージが、いま再び、別の意味合いを帯びはじめている。

どこまでも どこまでも 続く道を
すこしずつ すこしずつ 歩くために 理由がいる

まだ うごく
まだ みえる
“まだうごく”

 どこからか声が聞こえる。
 自分のゴーストに従え、と。


■コーネリアスが手掛ける「攻殻機動隊ARISE」シリーズの劇中曲
世界中のクリエイターに影響を与え、映像作品としても革命的なインパクトを残し、歴史にその名を燦然と刻む傑作SFアニメ映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995年)。その“生誕”──士郎正宗による原作『攻殻機動隊』25周年を記念して、今週末より長編アニメーション映画『攻殻機動隊 新劇場版』が公開される。同作は、現在放送中のテレビアニメ『攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』とともに「攻殻機動隊ARISE」シリーズの完結編となり、そのラストを締めくくるテーマソングを、同シリーズのサントラを手掛けてきたコーネリアスと主人公・草薙素子を演じる坂本真綾とが彩る。
Salyuや青葉市子から、ショーン・レノン、高橋幸宏までを迎え、坂本慎太郎が詞を提供することでも話題となった、このスペシャル・コラボレーションによる一連の音楽作品は、2枚のサントラ盤をはじめとしたいくつかのリリースによって楽しむことができる。川井憲次、菅野よう子からの連続性の上に、新たな“攻殻”の音世界が築かれていることがはっきりと感じられるだろう。このたび発表されるのは『攻殻機動隊 新劇場版O.S.T by Cornelius』ならびにシングル『あなたを保つもの / まだうごく』、そして貴重なライヴ映像等を収めたミュージック・クリップ集『攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE/新劇場版 Music Clips:music by Cornelius』。どこから観て、どこから聴いても特別な作品群だ。

■Cornelius / コーネリアス
フリッパーズ・ギター解散後、1993年から開始された小山田圭吾によるソロ・プロジェクト。ソロ・デビュー22年を迎え、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなどますます幅広く活動する。2008年にリリースされた「Sensurround & B-Side」がグラミー賞のベスト・サラウンド・サウンド・アルバムにノミネート。「UNIQLO」「CHANEL」などのCMや「デザインあ」(NHKEテレ)といったTV番組ほか、映像とのコラボレーションも多い。https://www.cornelius-sound.com/

これまで僕がコラボレーションしてきた人たちが、ここに集まった、っていう感じはあるかな。

小山田圭吾(以下、小山田):すごい久しぶりだよね。ライヴでチラッと会うくらいだもんね。

北沢夏音(以下、北沢):そうだね。何回かそういうこともあったけど……。

小山田:いや、もう20年くらいは取材とかしていないんじゃない(笑)?

北沢:……かもしれない。つねに取材はしたかったんだけどね。音も聴いていたし、小山田くんの活動はつねにフォローしてる。

小山田:取材してたといっても、いちばんやったのはフリッパーズの頃だよね。

北沢:うん。だけど、『バァフアウト!』を創刊してしばらくのあいだ、コーネリアスのデビューから少なくとも『69/96』までは必ず取材してた。

小山田:そうだそうだ。それも20年近く前だからね(笑)。

北沢:『Fantasma』のときは『クイック・ジャパン』でクロス・レヴューする企画があって、ぼくは映画『渚にて』の終末観と重ね合わせて原稿を書いたことまでハッキリ覚えてるんだけど、取材が実現したかどうか……してないかもね。

小山田:そうか。不思議だね。

北沢:あんまり久しぶりだから、どこから切り出していいかわからないけれども。そうだな、まず、今回の『攻殻機動隊 新劇場版O.S.T by Cornelius』の音源を頂いてから、もうずーっと聴いてる。たんなる劇伴ではない、アルバムとしてのトータリティをすごく感じる。このサントラ盤自体、小山田くんがこのところ行ってきた、いろんな人たちとのコラボレーションの集大成といえるものになっていて、その精華がギュッと集約されてる。それだけでも十分すぎるくらい価値がある素晴らしいアルバムになっていると思った。
この『攻殻機動隊ARISE』のシリーズのサントラについては、前に出ているもの(※『攻殻機動隊ARISE O.S.T.』)も買って聴かせてもらってたんだけど、今作は前作とのつながりもありつつ、もっと広がりがあるというか。坂本真綾さんがヴォーカルをとるTVアニメ『攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』のオープニング・テーマ“あなたを保つもの”と『攻殻機動隊 新劇場版』主題歌“まだうごく”という核になる2曲がまずあって、だけどそれだけじゃなくて、高橋幸宏さんがヴォーカルの“Split Spirit”とか、ショーン・レノンがヴォーカルの“Heart Grenade”とか、既発の曲もピタッとハマっているし、アルバム全体がものすごく起伏に富んでいる。環境音楽的なアプローチだったり、ミニマルやノイズ、はたまたアグレッシヴでエッジィなギター・ロック・サウンドが聴けたり、曲想もヴァラエティに富んでいて、最後まで飽きずに聴けるし、繰り返し楽しめる。

小山田:よかった。

北沢:ぼくは、ショーンと合作した“Heart Grenade”がすごく好きで。メロディとか展開は完璧にコーネリアスなんだけど、ショーンが詞を書いて彼の世界観が投影されることによって、普遍的なモダン・ポップに仕上がっていて、最高だなと思った。今回『攻殻機動隊OST 2』をまとめるにあたって、どういう構想があったの?

小山田:うーん。まぁ、とくに構想というのはなくて、基本はサントラなんで、映画の劇伴と主題歌を集めたものなんだけど。『OST 1』はボーダー1(※攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain)と2(※攻殻機動隊ARISE border:2 Ghost Whispers)で、今回の『OST 2』はボーダー3(※攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears)、4(※攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone)と劇場版ということで。「ボーダー1」は全部で50分ある最初のやつで、比較的多くの曲が必要だったから、(それを作った時点で)もうある程度のヴァリエーションが出揃ってて──だから1、2で“『攻殻』の劇伴”というのはすでにあったんだけど、3、4と劇場版で少しずつ曲が増えていったという感じ。それぞれの映画にテーマがあって、それに沿う形で曲ができていった感じかな。

北沢:その核にあったのは、やっぱりオープニングとエンディングのテーマ?

小山田:まぁ、そうですね。毎回エンディング・テーマがあって、それは主題歌ということで、映画によって多少内容が変わってくる、っていう感じなんだけど。


サイバー・パンク的なSFにYMOが与えた影響ってあるんだろうね。日本の未来感みたいな。そういう意味でも、僕がやってきたコラボレーションと、『攻殻機動隊』の世界観がハマったなっていう感じ。

北沢:おそらくSalyuのプロデュースをやったことから、現在にいたる流れがはじまったんじゃない? salyu × salyuの『s(o)un(d)beams』(2011年)の中の曲は前作のOSTに起用されてなかったっけ。あれはちがうか。

小山田:『s(o)un(d)beams』の中の曲じゃなくて、『攻殻機動隊』用の書き下ろし(※salyu × salyu“じぶんがいない”)だったんだけど。ちょうど「ボーダー1」をやる前にsalyu × salyuのプロジェクトをやって。それでSalyuに「最近何やってるの?」って訊かれて「『攻殻機動隊』のサントラやるんだよ」って話をしたら、彼女がこの映画をすごく好きだったみたいで、じゃあ、って頼んだという流れで。今回のも含めて、これまで僕がコラボレーションしてきた人たちが、ここに集まった、っていう感じはあるかな。
偶然かどうかはわからないんだけど、Salyuが『攻殻機動隊』を好きだったり、ショーンにも(ヨーコ・オノ・プラスティック・)オノ・バンドのライヴでロンドンに行ったときに『攻殻機動隊』の話をしたら、彼も観ていて好きだったみたいで、そういう縁があった。幸宏さんはさすがに観てなかったんだけど、以前のシリーズで“ソリッド・ステイト・ソサイエティ”っていう話があって(※『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』)。

北沢:そのタイトル、モロにYMOだ。

小山田:そう。ああいうサイバー・パンク的なSFにYMOが与えた影響ってあるんだろうね。日本の未来感みたいな。そういう意味でも、僕がやってきたコラボレーションと、『攻殻機動隊』の世界観がハマったなっていう感じ。

北沢:ミレニアム以降、『Point』(2001年)を分岐点に小山田くんの楽曲の作り方が変わって、『Sensuous』(2006年)にいたるまで、その方法論を発展させてきた過程というのは、すなわちひとつの音をどう響かせるか、それを研ぎ澄ませてきた過程だという気がするんだけど。そういうなかで自分の声や言葉の響き、作詞についても新しいアプローチをして、その流れでSalyuとのコラボもあって。やっぱりすごく大きかったと思うのが、坂本(慎太郎)くんとの共作をそこでスタートさせたことかなと。共作のきっかけは?

小山田:それは僕から提案したんじゃなくて、Salyuが「(作詞は)坂本くんがいい」って言ったんだけどね。僕も坂本くんがいいなと思っていたんけど、バンドがちょうど解散したばっかりで。

北沢:ゆらゆら帝国はもうなかったんだね。(※2010年3月31日付けで解散を発表)

小山田:あんまり活動をやっていないし、(そんなときに)頼むのもどうかなって思っていたんだけど、Salyuが「坂本さんがいい」って言ってるからお願いしたら、やってくれるって。


視点が、僕としてはすごく共感できる。客観性を絶対に失わないで、ユーモアみたいなものも含んでて。いままで坂本くんが作ってきたものを含めて、そう思うんだけど。

北沢:小山田くんと坂本くんの共作のやり方って、先に坂本くんの詞があるわけじゃないよね? 彼自身のいつものスタイルも詞先じゃないっていうし。彼とどういうふうに共作したのか、あらためて教えてほしいな。

小山田:salyu × salyuのときは、僕がデモ・テープみたいなものを持って行って、アレンジも全部できていて、メロディ・ラインもシンセで入っている音源をSalyuにまず渡して。Salyuがそこにデタラメな──自分が発語したい言葉で仮メロを入れるんだけど、それは何語でもなくて、メロディに対して彼女が発語したい言葉を歌っているっていうすごい変なもので。それを坂本くんが聴くと、何か空耳的にいろいろ聴こえてくるらしいんですよ(笑)。それを歌詞の言葉に置き換えるみたいな作業だったのね。
salyu × salyuの頃はそういう作業だったんだけど、今回の『攻殻』に関してはデモ・テープを坂本くんに渡して、あとはとくにディレクションもなく、わりと好きに書いてもらった。でもその前に『攻殻機動隊』のDVDボックスを渡して観てもらって、なんとなくその世界観を掴んでもらってから、後はおまかせっていう感じだった。「じぶんがいない」(※「border.1」エンディング・テーマ)っていう曲に関しては、言葉がパズルみたいになってて、声が入り組んでいって、言葉が増えていくことによって、メロディができていくみたいな……。

北沢:「き、き、き、きく、きく、きおく」みたいな感じ?

小山田:うん。一文字で意味があって、二文字でも意味があって、三文字でも意味がある、みたいな言葉があったら当てはめてほしい、とかは(坂本くんに)言ったけど。

北沢:小山田くんからお題を出した?

小山田:うん。で、それ以外の曲に関しては、何もディレクションはなかったかな。

北沢:それにしてはものすごくジャストな詞だよね。しかも“あなたを保つもの”を聴いたとき、これは作詞が小山田くんだと言われたら信じちゃうような、わりと小山田くんっぽい感じも入ってるなって。最初にもらったとき、小山田くんはそう思わなかった?

小山田:うーん。そうかな?

北沢:自分ではあんまり?

小山田:「うで ゆび あし つめ」とか?

北沢:うん、そういうところも。

小山田:まぁわかるけど。メロディを作ってる人が僕だし、あんまり“日本語のポップス”(の常道)じゃないところに言葉を当てはめようとすると、そういう言葉が入るのかなっていうのは。でも、僕にはできないようなものにはなっていると思うんだけど。そこはやっぱり坂本くんの力。

北沢:“あなたを保つもの”だと、どの言葉がとくに坂本くんっぽいと思った?

小山田:うーん。具体的にはわからないけど、ホントに上手いなと思うんだよね。言葉のはめ方もそうだし、歌ってて……というか、発語して気持ちいい、みたいなところをまったく損なわないで、なおかつ文章としてもおもしろくて、深い意味も感じられるような歌詞の言葉を作れる人だと。しかも視点が、僕としてはすごく共感できる。客観性を絶対に失わないで、ユーモアみたいなものも含んでて。今回だけじゃなくて、いままで坂本くんが作ってきたものを含めて、そう思うんだけど。


「あなたを保つもの」、つまり「ゴースト」っていうものを、いろんな角度から言っている、ってことだと思うのね。そのなかで坂本くんのいままでやってきたことと重なる部分もあって、それがまたいろんなかたちで出てきているっていう。

北沢:“あなたを保つもの”と“まだうごく”を聴いて感じたのは、もともと彼自身のなかでも、「幻」(ゴースト)がかなり大きなテーマとして存在していたんじゃないかということ。坂本君の最初のソロ・アルバムのタイトルが『幻とのつきあい方』だし、一方『攻殻機動隊 ARISE』のシリーズを通してのオープニング・テーマが“GHOST IN THE SHELL ARISE”でしょう?
それで、「幻ってなんだろう?」と考えたときに、英語の「ghost」には「幻影」や「幽霊」のほかに、キリスト教的な「聖霊」という意味もある。これを日本的に解釈すると、草木に宿る「精霊」とか「死者の魂」、さらには人間の内奥にある魂(ソウル)や精神(スピリット)をも「ゴースト」と呼んでいいだろう、とぼくは思う。もしそうであるなら、「あなたを/保つもの」、あるいは「あな/たを/あな/たに/してる」ものとは、人間の五体に備わっているさまざまな器官のみならず、目に見えない、フィジカルではない霊的なもの――つまり、「体を/捨てても/あなたを/保つもの」――の力によって、人は自分自身を保ち、命と心を支えられているんじゃないか、と。そういう想いをこの2曲の詞から感じた。
それが当たっているかどうかは坂本くんに訊かないとわからないけど(笑)、ぼく自身はその考えにまったくうなずけるというか、自分はきっとそうだな、って思ったりもした。小山田くんは、自分が何によって保たれていると思う?

小山田:なんだろうね(笑)。うーん。

北沢:こういう質問は面倒臭いかもしれないけど、ちょっと訊いてみたかった。

小山田:うーん、よくわからないな。


坂本真綾とコーネリアスによるシングル『あなたを保つもの / まだうごく』のジャケット。カバー・イラストは詞を提供した坂本慎太郎が自ら手掛けている。


北沢:体を捨ててもあなたを保つもの。

小山田:この映画のテーマ自体がそういうものっていうか。(草薙)素子っていう主人公がいて、(生まれる以前に)“義体”っていう体にされてて。

北沢:サイボーグ?

小山田:サイボーグ……、まぁサイボーグなんだよね。生まれながらにサイボーグで、ゼロ歳児の義体っていうところ(出生)から、「自分を保つものはいったい何なんだろう?」ってつねに悩んでいるというか。その魂みたいなものを映画のなかでは「ゴースト」と呼んでいるんだけど、基本的なテーマがその「あなたを保つもの」っていうこと。で、坂本くんの詞に関しても「あなたを保つもの」、つまり「ゴースト」っていうものを、いろんな角度から言っている、ってことだと思うのね。世界観やテーマもはっきりしているから、そのなかで坂本くんのいままでやってきたことと重なる部分もあって、それがまたいろんなかたちで出てきているっていう。

北沢:“まだうごく”には、「昔は幻に/名前がついていた/ひどく大切な/もののように」という一節があったり、「素敵な人たちは/先に行ってしまった」っていうフレーズがあったりするけど。なんか、それこそ石橋英子さんがジム・オルークさんたちとやっているバンドの名前「もう死んだ人たち」(石橋英子 with もう死んだ人たち)じゃないけど、もう死んでいる人たちの音楽を聴いていることが、やっぱり坂本くんは多いみたいで、それも小山田くんとの対談で言っていた気がするんだけど……。

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©士郎正宗・Production I.G / 講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
『攻殻機動隊 新劇場版』6月20日(土)全国ロードショー
https://kokaku-a.jp/


ゴーストは見たことある? (北沢夏音)

ないです(笑)。UFOはあります。 (小山田圭吾)

北沢:実際に、偉大な人たちが、いまこうしている間にもどんどん死んでいって、でもぼくらはそういう人たちからインスピレーションをもらったり、励まされることがよくあるし。そういえば「自分のゴーストに従え」というメッセージが今回の『攻殻機動隊 新劇場版』にもあるね。

小山田:うん。出てくるよね。

北沢:(唐突に)ゴーストは見たことある?

小山田:ないです(笑)。UFOはあります。

北沢:どこで見たの?

小山田:タイで見ました。出そうでしょう?(笑)

北沢:都心部で?

小山田:ちょっと田舎の方ですよ。

北沢:チェンマイとかあっちの方?

小山田:いや、チェンマイまではいかないですけど、けっこう20人くらいで見たのでたぶん本物だと思うんですけど。自分ひとりだと自信がなくなるけど(笑)。

北沢:変な話だけど、守護霊が自分にいるとしたら何だと思う?

小山田:守護霊? なんだろうね。ぜんぜんわかんない(笑)。

北沢:(笑)そういうオカルティックな方面にはぜんぜん興味なかったっけ?

小山田:自分の守護霊に関してとか?

北沢:うん。

小山田:うーん、あんまわかんないですね。聞いたこともないです。UFOには興味があります。


流行っているものがあんまりよくわからないんで(笑)。いまは流行りも多様化しているじゃないですか。

小山田さんは、普通に新譜とか聴かれるんですか?

小山田:うーん、ちょいちょいですね。

最近は何かチェックされた新譜はありますか?

小山田:最近……何かチェックしたかな。名前が最近覚えられないです(笑)。

(笑)。それは再発とかじゃなくて新しい人の名前ですか?

小山田:新しい人の。新譜でもけっこうダウンロードで買ったりすると、コピペしてポンってやって名前を覚えないパターンが多くて。

北沢:気にしなくなっちゃうんだ。

小山田:うん。ぜんぜん気にしなくなっちゃうね。でも昔に比べたらあんまり買わないですね。まぁ、ちょいちょい聴いてるけど。

買われるものに関しては、どういうタイミングで「これがほしい」って思うんですか?

小山田:ネットを見ていて、とかユーチューブを見ていて「あっ、いいな」って思ったものとか。

じゃあ、巷でクラウト・ロックがリヴァイヴァルしているとか、インダストリアルがリヴァイヴァルしているとか、あるいはエイフェックス・ツインが昨年大復活したり、フライング・ロータスの存在感もジャンル横断的に大きかったとか、そういうようなことは感じていますか?

小山田:フライング・ロータスは、最初のやつは聴いた。去年出したやつは聴いてない。

そうなんですか。去年のは、ちょっとキング・クリムゾンというか、プログレっぽくなっていたりもするんですけど、いま挙げたようなものの全部の要素が今回の『攻殻機動隊 新劇場版』のサントラから感じとれるんですよね。小山田さんはたぶん絶対に意識されていないでしょうし、わざわざ追ってもいらっしゃらないとは思うんですが、全トラック中にごく自然にトレンドが溶け込んでいる感じがして、すごいなぁと。

小山田:あっ、たしかにクリムゾンっぽいのはちょっとあるかもね(笑)。

北沢:あるある。あとインダストリアルっぽいのもある。

小山田:うん、インダストリアルっぽいのもあるね。

エイフェックス・ツインっぽいのもありますよね。

小山田:あっ、エイフェックスっぽいのもあるかもね。

そういう時流みたいなことって今作を作るうえで意識されてたんですか?

小山田:流行っているものがあんまりよくわからないんで(笑)。いまは流行りも多様化しているじゃないですか。

それはありますね。今月何を聴けばいいかなんて、昔とちがって共有できない事柄ですよね。

小山田:うん。わかんないじゃん。自分のなかの流行りはなんとなくあるけど。いま、何が流行ってんだろう? わかんないや。インダストリアルも流行ってんの?

北沢:まぁ、密かにそういう潮流はあるよね。


インダストリアルと『攻殻機動隊』の親和性はけっこうある気がする。マシーンと(融合する)未来感みたいな。

小山田:どういうの? TG(スロッピング・グリッスル)みたいなの?

なかにはありますよ。話し出すと長いですが……。

北沢:シューゲイザーとチルウェイヴとドリーム・ポップの行末に、インダストリアルがどーっと流れ込んできた感じがする。

あとテクノも最近は聴こえてくるんですけど、そういうものが結びついている気がしますね。

北沢:ベース・ミュージック隆盛の反面、ここのところずっとふわふわしてる音が来てたけど、さすがに甘口に飽きたのか少し尖った音の方に流れが変わってる気がする。

小山田:インダストリアルとかは昔は聴いていたし、クリムゾンとかはそんなには聴いていないけど、エイドリアン・ブリューが入ってからのクリムゾンは好きで。

北沢:エイドリアン・ブリューって、小山田くんっぽいよね。音の遊び方、トリッキーなギターのフレージングとかユーモアのセンスが。

小山田:その前はあんまり聴かないんだけど、『ディシプリン』三部作くらいが好き。インダストリアルと『攻殻機動隊』の親和性はけっこうある気がする。マシーンと(融合する)未来感みたいな。

北沢:あるね。このサントラにも破裂音とかけっこう入ってるし。

クリムゾンみたいな要素がいまをときめくアーティストからふと聴こえてくる、その理由については意識されてないとしても、それが時代の差し色だったのは間違いないと思うんですね。そんな感性が自然に入っているところが、いま現在の新譜としてもすごいな、って思ったんですけど。そのあたりの手応えはどうですか?

小山田:もちろんこれは『攻殻機動隊』のサウンドトラックなんだけど、それと切り離してもアルバムとして聴けるものに構成したいと思っていて。単に劇伴の曲を並べているだけじゃなくて、アルバム用にリサイズしたり、ミックスしたりしてる曲もあったり、これに入っていない曲もたくさんあったりして、そのなかからアルバムとして聴けるようなエディットや選曲をしてるんだよね。
世界観が統一されているのは、もちろん作品の映像があってこそなんだけど、自分が自由に作りたいものを作るとなると、もうちょっと多面的で、興味も移りがちになって……、ここまでひとつのトーンで作品を作ることって、ひとりでは難しいのね。だけど、依頼があって限定された条件のなかでやるからこそ、こういうわりと世界観が統一されたアルバムができたんだなって思う。それが自分のなかではよかった。自分の作品だとやりたいことがいろいろ出てきちゃったりするんだけど、必ずしもそれがいいことじゃないなっていうか(笑)。


もちろんこれは『攻殻機動隊』のサウンドトラックなんだけど、それと切り離してもアルバムとして聴けるものに構成したいと思っていて。

北沢:それは、プロデューサーとしての小山田くんがそう思うってこと?

小山田:うん。まぁそうだね。今回やってみて思ったんだけど、そういう限定された条件で作ることによってしか生まれない作品っていうものもあるな、って。

北沢:『攻殻機動隊』のシリーズで、小山田くんが自分をヴォーカリストとして起用しないのは、自身のソロ作品と区別するため?

小山田:区別するためっていうわけじゃないんだけど。(しばし黙考して)まぁ、それもちょっとはあるかもね。なんか、自分とコーネリアスとその他の作品の境界線が、自分でもよくわからなくなってきていて(笑)。

北沢:溶けてきているよね(笑)。だんだん交じり合ってきたような。

小山田:何がどうなっているのか自分でもわからなくなってきていて、果たしてこれをコーネリアスと言っていいのか、小山田圭吾の作品なのか、それもよくわからない。でもそれを区別するとしたら自分の歌だってことは、あるといえばある。あと、あんまり自分の歌に責任が持てないっていうか(笑)。自分が歌うことはいつでもできるし、こういう機会がせっかくあるなら、いままでコラボレーションしてきた人とまたやるのもいいかなっていう。

北沢:たしかに、そういう人たちがサントラの一部として自然にハマっているからね。前に青葉市子さんとやった“外は戦場だよ”(※「border.2」エンディング・テーマ)は、本当にぞっとするような怖い歌詞だと思うけど、それが彼女のえもいわれぬクワイエット・ヴォイスで歌われると、よりリアリティが増すとも言えるし、聴いている自分も当事者になったような感覚が伝わってくる。青葉さんならではの不思議な憑依感というか。これはたしかに他の人には歌えない、演奏できないような曲だと、一度聴くとそう思ってしまうね。

青葉さんはじめ、いろんな女性ヴォーカリストが歌っておられますけれども、今回の坂本真綾さんは、歌い手として、あるいは素材として、どういう存在でしたか? 声優さんということは意識されましたか?

小山田:別に、いつも通りに作っていたんですけど。すごく歌が上手で、クセのない良い声だよね。すごくやりやすかったですよ。女優さんだからといっても、むちゃくちゃ強い個性があるっていう感じでもなくて、わりと水みたいにいろんなものに変われる部分もあって。歌録りは非常に速かったですね。

では、アプローチとしては他の女性ヴォーカルと変わることなく?

小山田:うん。ぜんぜん。

声を純粋に音として捉えている部分もあると思うんですね。それぞれの歌い手さんにもそういう意味でのちがいがあると思うんですけど、曲をつくる上で意識せざるを得ない差はなかったですか?

小山田:えーっと、歌い手さんに合わせて作るっていうこともあんまりなくて。それよりも楽曲に合わせるというか。ただ、salyu × salyuに関してはわりと歌をたくさん使ったり、コーラスだとか声を組み替えたりすることはこれまでもやってきたことだったんだけど、今回も(坂本真綾さんに)そういうことをやってみたりだとか。(青葉)市子ちゃんのときは、逆にそういうことはやらないとか。

北沢:青葉さんに関しては、彼女が自分で詞や曲を書いて歌うシンガー・ソングライターであるというところを尊重しようという気持ちがあるのかな?

小山田:市子ちゃんだったら、基本はギターと歌だけで成立するような世界をやってて、コーラスを重ねたりすることもあんまりなく、さらっとひと筆書きみたいなメロディが合うかなとか。Salyuの場合はコーラスとかもやるし、普通の一本の線みたいな歌も歌えるし、歌に特化した人だから、いろんなアプローチができると思う。真綾さんの、とくに“まだうごく”とかはシリーズ最期の劇場版だったので、スケール感のある歌ものをやって、彼女の声の質感みたいなものがちゃんと聴けるといいかな、と思って作った。
歌い手さんの条件によって変わることは、それくらいの意味ではあるけど、まぁそんなにはないと言えばない、というか。その時々の映画の内容によってだったり、いろんな条件が重なってこういう結果になっていると思う。

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劇場版の最終作なので。基本は悲しい話なんだけど、そのなかの微かな希望が印象に残るようにイメージしてたな。

北沢:小山田くんは、タイアップありきで楽曲を作っても、絶対にタイアップっぽくならないよね。小山田圭吾オリジナルのコーネリアス・サウンドの強度が前提にあるからこそ、そういうことができるんだろうね。歌い手のキャラクターとか、声の存在感に引っ張られると、たぶんそうならないんだけど、ホント不思議だよね。リミックスを集めた『CM』のシリーズも毎回楽しみにしてるんだけど、誰のどんな曲を手がけても、完璧にコーネリアス・サウンドになってしまうものね。そのオリジナルなサウンドの進化の過程がコーネリアスの歴史そのものになっている。誰とやっても負けないよね。それは字義通りの勝ち負けではなくて、相手に引っ張られることがほとんどない気がする。これは引っ張られたという例はある?

小山田:そうだなぁ(笑)。誰かに引っ張られるってことがどういうことなのかわからないんだけど(笑)。あくが強い……。

北沢:そういうことじゃないんだけどね(笑)。さらっとしてるのに、小山田くんの色は強烈だよね。

小山田:音の入れ方が独特、っていうのはあるのかもしれないけどね。

北沢:タイム感も独特だし。“まだうごく”はシンセ・ベースの使い方がすごくかっこいい。ゆっくり歩いている感じのウォーキング・テンポでこれは絶妙だなって思った。こういう技をパッと出してくる人はなかなかいないからね。

小山田:地味な感じでしょう(笑)?

北沢:いや、地味だとは思わないなあ。かっこいいよ。

小山田:けっして派手じゃないじゃない? テンポものろいし。

北沢:まぁ、布袋(寅泰)さんみたいな感じの派手さはないよね。

小山田:まぁ布袋さんではないと思うけど(笑)。いちおう劇場版の最終作なので。基本は悲しい話なんだけど、そのなかの微かな希望が印象に残るようにイメージしてたな。

北沢:いろんな仕事を小山田くんはやってるけど、そのすべてが真のコラボレーションになっているのが素晴らしいと思う。「これはおもしろそうだからやってみようかな」っていう判断の基準はあるの?

小山田:うーん……、勘ですね(笑)。野生の勘。なんとなくヤバそうなのはわかるんですよ、話をきくだけでも。これはちゃんとできそうだなとか、これは無理とか。

先ほどは、それは「縁」だともおっしゃっていましたね。

北沢:どこかで似たもの同士が集まったような雰囲気があるね。ある種の同族というのかな。

小山田:同族……なのかな(笑)。まぁでも、一部分では波長が合っているわけだから、そういう意味ではいっしょなのかもしれない。


これまではすごいストイックだったし。「音をなるべく鳴らすんじゃない」みたいな。でもいまはそういう気分じゃない。もうちょっと遊びがある感じというのかな。

北沢:ところで、最近の小山田くんはどういうモードなの? 『Point』のときはかなりミニマリズムを極めた感じがあったのが、『Sensuous』ではまた少し色づいてきた。僕はファーストからそれぞれの作品ごとに愛着があるけど、やっぱり『Sensuous』が小山田くんの作品のなかでいちばん好きだし、コーネリアスとしての決定版みたいな感じがしたのね。さらにその先を行くものを作るのは大変なことなのかな、と思ったりもするんだけど。でも、こうやっていろんなコラボレーションを重ねることで、自然に歩みを先に進めてきたようなところもあるから、この先どんな世界を見せてくれるのかすごく楽しみなんだ。

小山田:最近のモードとしては、どうなんだろうな(笑)。でも、『Point』や『Sensuous』よりも余裕がある感じというのは、なんとなく。

北沢:張り詰めてない感じ?

小山田:そうそう。緊張感みたいな部分ももちろんあるけど、もう少しゆとりがある感じがいいなって。これまではすごいストイックだったし。「音をなるべく鳴らすんじゃない」みたいな。でもいまはそういう気分じゃない。もうちょっと遊びがある感じというのかな。

北沢:いまのこの時代の空気を小山田くんはどういうふうに感じているのか、小山田くん自身の声と音で聴いてみたいよ。

小山田:いまの空気……。なんとも言えないね。なんとも言えない感じが続いてる、っていう感じだね(笑)。


いまの空気……。なんとも言えないね。なんとも言えない感じが続いてる、っていう感じだね(笑)。

北沢:何かものすごく大きな転換期、ターニング・ポイントに差し掛かってるような、コーナーを曲がっちゃう寸前みたいな切迫感があるし、その先はどうなるんだろうな、って。

小山田:漠然とした不安がつねにあるみたいな。それはずっとそうだけど。

北沢:それこそ、3.11の後、3月29日にsalyu × salyuの“続きを”をセッションした映像をネットにアップしたよね。あれなんかすごく不思議な、おそろしくジャストな曲として響いた。

小山田:そうだね……。あれは本当にそう思ったね。

北沢:あれは本当に、「呼ばれちゃって」できた曲なんじゃないかって。

小山田:震災直後のタイミングであのアルバム(『s(o)un(d)beams』)が出たんだけど、地震の頃にちょうどミックスとかマスタリングをしてたんだよね。震災の後、しばらくあんまり音楽を聴けなかったんだけど、仕事でしょうがないから聴いたりしてて。で、なんか坂本くんのつくった歌詞が頭の中に入ってくると、完全にいまの状況を歌ってるとしか思えないような内容だったんで、すごくびっくりしたことを覚えてる。坂本くんもきっと自分でびっくりしたんじゃないかな。そういう時代のムードを敏感に感じることのできる人だから、そういう偶然って、起きちゃうときは起きちゃうんだと思った。


震災の後、しばらくあんまり音楽を聴けなかったんだけど、仕事でしょうがないから聴いたりしてて。で、なんか坂本くんのつくった歌詞が頭の中に入ってくると、完全にいまの状況を歌ってるとしか思えないような内容だったんで、すごくびっくりしたことを覚えてる。

北沢:歌の歌詞が時代を予見してしまうことって、歴史的にこれまでにもあったことだと思うんだけど──

小山田:歌は世につれ世は歌につれ、って。そういうことはあるからね。

北沢:もう4年前か。でも毎年毎年、あの曲がだんだん近くに聞こえてくるような感覚ってないかな? 遠ざかっていけばいいものでもあるのに、逆にちょっと大きく聴こえてくるところが、ぼくにはあるのね。それは不気味なんだけど、この曲のすごさがどんどん巨大化する生き物のように……まるで竜みたいに感じられることがあるというか、繰り返し覚悟を問われているような感じがして。小山田くんにとっても、“続きを”はいまだに特別な曲だったりする?

小山田:うん。あの曲はすごく特別な曲だな、って思ってる。坂本くんといくつかsalyu ×salyuのプロジェクトで作ったんだけど、どれもすごく気に入ってて……。

北沢:去年の11月に、日本科学未来館で開催した『攻殻機動隊』25周年記念のライヴ・イヴェントでは、坂本くんに「出演しない?」って声をかけてみたりしなかったの?

小山田:しない(笑)。つねに「ライヴはもうやらない」って言ってるし。

北沢:たしかにね。彼はいつもそう言ってるんだけど、やっぱり観てみたい気持ちもある。

小山田:そりゃそうだよ。


『攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE/新劇場版 Music Clips:music by Cornelius』
2014年11月24日に開催された日本科学未来館にて行われたイヴェントの模様やスタジオ・ライヴなども収録。
高橋幸宏&METAFIVE(小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井)による“split Spirit”では胸の熱くなるライヴ・パフォーマンスを目の当たりにすることができる。

北沢:あのライヴ・イヴェントのキュレーションは小山田くんだから、坂本くんに声をかけて断られたのか、彼の気持ちを慮って声をかけなかったのか、どっちかなと思って。

小山田:しょっちゅう彼もそう言われてるだろうし、その度に「もうライヴはやらない」という話も聞いてるから、ぼくが誘うまでもなく、やりたくなったらやるんだろうな、って思ってる。

北沢:(高橋)幸宏さんと(鈴木)慶一さんのザ・ビートニクスみたいに、ふたりでユニットを組んでみるという発想はないの?

小山田:うん。ぜんぜんない。

(一同笑)

北沢:たしかに想像つかないもんな。


(劇中に出てくる)感情の幅がわりと限定されているぶん、ひとつの感情でいくつかのヴァリエーションをつくらなきゃいけないってことがあって。

北沢:ところで、いまの気分で小山田くんが好きなサントラというと?

小山田:なんだろうね(笑)。

北沢:去年日本公開された、スカーレット・ヨハンソン主演の『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(ジョナサン・グレイザー監督、2013年)という映画を観たんだけど、その音楽をミカチュー(Micachu)っていう女の子がやってたんだよね。

小山田:あ、ミカチューっているね。

北沢:うん、坂本龍一さんとかも評価してる。そのミカチューが、ミカ・レヴィ(Mica Levi)名義でサントラを手がけているんだけど、弦のチームをびしっと揃えて、ある意味、小山田くん的な──エクスペリメンタル、かつ“環境”的なアプローチで、弦を使って緊張感あふれる音色をひりひりとつくり上げてるの。それは聴いてみたらいいかもしれない。

新しい作品も映画館に観にいったりされますか?

小山田:たまには行きますよ。

サントラとして音楽を意識したりしますか?

小山田:まあ、全体で観ちゃうかな。でもサントラだけ持ってるのに映画は観たことない、みたいなものもあるからね(笑)。そういう聴き方もできるほうがいいなあ、と思うけど。

北沢:『インヒアレント・ヴァイス』(ポール・トーマス・アンダーソン監督、2014年)もおもしろかったよ。サントラはレディオヘッドのギタリスト(ジョニー・グリーンウッド)が劇伴を担当していて、1970年のロサンゼルスが舞台だから、その頃の古い曲とかもいろいろ入ってるんだよね。

『攻殻機動隊ARISE』というひとつの作品が展開するのに沿って、サントラもこうしてアルバム2枚を重ねているわけですが、その上で今回の『攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.』と『攻殻機動隊ARISE O.S.T.』を分けているものがあるとすると何でしょう?

小山田:どうなんだろうな……。必要になってくる曲にはヴァリエーションがあって、基本はこういう映画だから、そこに表れる感情の種類がある程度は限定されてくるんだよね。“緊張感”とか“悲しみ”とか“バトル”とか。いきなりギャグが入ってくるようなことはなくて、笑いの要素は少ない。そういうのが「1」「2」の中でだいたい出揃って。だから今回のサントラの方に入っているのは、それにいくつかプラスして、という感じ。「3」「4」「5」に関しては、どっちかというとメロウな話が多くて……(草薙)素子のラヴ・ストーリーとか。だからわりとピアノの曲とかアンビエントとかが多いかもしれない。それは自分で振り分けたというよりは、映画の内容によって、という感じかな。

北沢:たしかに“感情”って大きいよね。音って感情によって決まるようなところがある。劇伴ってそういうものなのかもね。

小山田:うん。感情とか雰囲気とかね。その中でも、(劇中に出てくる)感情の幅がわりと限定されているぶん、ひとつの感情でいくつかのヴァリエーションをつくらなきゃいけないってことがあって。

北沢:なるほどね。同じ曲でもメイン楽器を変えることで、いろんなヴァリエーションをつけたりとか。

小山田:そうそう、いろいろと。このサントラに入っているもの以外にもいろんな曲があって。入っているものでも、たとえば“Moments In Love”っていう曲にはピアノのヴァージョンとハープのヴァージョンのふたつがあって、それ以外にもいくつも──いろんなサイズだったり、リズムトラックが入っているものだったり、メイン楽器がちがっていたり――いろんなヴァージョンがたくさんあるのね。その中からこのアルバム用にエディットしたものが入ってる。


れをやっているとき「ちょっとアート・オブ・ノイズっぽいな」っていう要素があると思ってた。そういう元ネタはけっこうあるんだよね、曲のタイトルに。

北沢:“Moments In Love”ね。このタイトルも小山田くんがつけたの?

小山田:そうです。まあ、もとはタイトルってものが存在してないから。

北沢:坂本くんが詞を書いたものは坂本くんがタイトルを?

小山田:うん。

北沢:“Moments In Love”って聞くと、ふと頭の中をアート・オブ・ノイズがよぎるな(笑)。

小山田:うん、もちろん。そうです。

北沢:〈ZTT〉にもサントラもどきみたいな盤があったような気がする。

小山田:ちょっと〈ZTT〉っぽさもあるかもしれない(笑)。

北沢:トレヴァー・ホーン的な。

小山田:うん、あるかもね。これをやっているとき「ちょっとアート・オブ・ノイズっぽいな」っていう要素があると思ってた。そういう元ネタはけっこうあるんだよね、曲のタイトルに。

北沢:うんうん(笑)。「No.9」って付いてる曲が2曲あるけど、これはやっぱりビートルズの……。

小山田:それは、「9課(公安9課)」っていう設定があるからだね。

北沢:ああ、そうか! こんなふうに一曲一曲、全曲のタイトルの元ネタを訊けたらすごく楽しいんだけど、残念ながら時間が来てしまった……!!


Cornelius
攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.music by Corneliu
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坂本真綾、Cornelius
あなたを保つもの/まだうごく

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V.A.
攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE/新劇場版 Music Clips:music by Cornelius
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