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Home >  Interviews > interview with HOLYCHILD - “ブラット(やんちゃなガキ)”が世界を回す

interview with HOLYCHILD

interview with HOLYCHILD

“ブラット(やんちゃなガキ)”が世界を回す

──ホーリーチャイルド、インタヴュー

橋元優歩    取材協力:ホステス   Jun 30,2015 UP

ザ・シェイプ・オブ・ブラット・ポップ・トゥ・カム
ホーリーチャイルド

ホステス

Electro Pop

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 フェニックスやドーター、マムフォード&サンズなどを擁する〈グラスノート〉からデビューする、フレッシュな男女デュオをご紹介しよう。彼らの名はホーリーチャイルド。トラックを手掛けるルイス・ディラ―と、歌詞とヴォーカルを担当するリズ・ニスティコによるLA在住のユニットだ。結成は2011年だが、あっという間に大手各社から話が持ちかけられ、2013年には同レーベルからシングルを発表、フル・アルバムのリリースとなる今年はアップルウォッチのCMに楽曲が使用されたことでも話題になった。

 そのくだんのCM起用曲“ランニング・ビハインド”は、キューバ仕込みだというルイのパーカッション・センスが発揮されたトラックだが、実際に使用されている箇所がリズム・パートのみだというのはなかなか大胆なディレクションだ。華やかなリズのパフォーマンスはこのデュオの重要なキャラクターであって、そこがばっさりと落とされているのは少し驚きである。
 だが、軽快なハンドクラップに導かれて跳ねるその楽しげなリズムの中には、空気の色をぱっと変えるように魅力的なリズの呼吸がたしかに感じとられる。さすがにMIAにまでは比較できないとはいえ、トライバルな要素やイメージを北半球的な物質文化へのカウンターとして表現しようとするリズのマインドは、ルイのリズムと対になってぴたりと息をそろえる。彼らは自らの音楽を「ブラット・ポップ(Brat Pop)」と称し、社会や世界の状況に対して彼らなりのスタンスと見解、そして反抗のモチヴェーションを示してみせる。

 正直なところを言えば、彼らのその世界観やメッセージにママゴトのようなナイーヴさがあることは否定できない。しかしこの取材からも伝わってくるように、彼らが正直な若者たちで、おそらく音楽に対する考え方も真面目なのだろうということは想像するにかたくない。その点では、本当に素直でのびやかな、健康的な音楽だ。パッション・ピットとのツアーについても触れられているが、まさにパッション・ピット以降のエレクトロ・ポップを基本フォーマットとするアーティストたちのなかで、非常に広い間口と垢抜けた存在感を放つデュオであることは間違いない。

■HOLYCHILD / ホーリーチャイルド
ワシントン D.C.の大学で出会ったリズ・ニスティコとルイス・ディラーによる男女ユニット。2011年に結成。USの〈グラスノート(Glassnote)〉と契約し、2013年にシングル“ハッピー・ウィズ・ミー”でHype Machineのチャート1位を獲得。ビルボードが「2014年に見るべき14アーティスト」に選出するなど注目を浴びる。パッション・ピットとともにアメリカ・ツアーを行ったほか、二ューヨークの〈MOMA〉でもライヴを行うなど活動を広げ、2015年フル・アルバムのリリースとなった。

大学では音楽を学んでいたのですか? どのような領域を修められたのでしょう?

リズ:私もルイも、メインの専攻は国際情勢だったの。国際政治とか、世界の歴史を勉強していたのよ。あと、私は副専攻でイタリア文学とダンスを勉強していて、ルイは副専攻でジャズを学んでた。私はもともとずっとダンスを習っていて、将来はダンサーになろうと思っていたんだけど。でもルイに出会って音楽を作るようになってから、それがすごくしっくりきたのよね。音楽も大好きだったから、すごく自然に感じたの。それ以外では、私は絵も描いていて、ニューヨークのギャラリーに出展したりしていた。ルイは、ホーリーチャイルドをはじめる前もいくつかのバンドで演奏していたのよ。

卒業後は音楽でやっていこうと思っていたのですか?

ルイ:音楽でやっていこうと思いはじめたのは、いちばん最初に書いた曲“ベスト・フレンド”をレコーディングした後だったね。僕はまだ大学にいて、リズはもう卒業してた。最初の曲をレコーディングしたら、その出来がすごくよかったんだ。それを聴いたときに電気が走ったというか、ふたりとも何かを感じたし、目指すものが見えた気がした。リズは、本当はその後LAで音楽プログラムを勉強する予定だったんだけど、その話を蹴ってホーリーチャイルドの活動を続けることにしたんだ。2、3年前くらいかな。そこまでは何も定まっていないプロジェクトだったんだけど、あの曲をレコーディングしてから、すごくしっくりきて。僕も大学院に行こうか迷っていたんだけど、ふたりとも何もかもを止めてホーリーチャイルドとして活動することに決めたんだ。ありがたいことにいまはフルタイムでこの活動ができているし、こんなふうにインタヴューもしてもらえて、すごく光栄だよ。

〈グラスノート〉と契約するにいたったきっかけは?

リズ:あれは本当に忙しい時期だった。当時は、ユニバーサルからソニー、コロンビアまで、とにかくアメリカ中のメジャー・レーベルと話をしていたの。その中の一つが〈グラスノート〉だった。いろいろなレーベルと話をするのはおもしろかったわ。みんな私たちに興味を持ってくれていたから。でも〈グラスノート〉の人たちと会えたのは本当によかった。私たちの音楽を本当に理解してくれていたし、みんないい人たちだし、レーベル自体が素晴らしいレーベルなんだもの。もし契約していなかったとしても、彼らのようなレーベルが存在してるってだけでうれしい。だから彼らと契約することにしたの。いまのところ、すごくうまく行ってる。彼らって、本当に最高なのよ。

〈グラスノート〉と出会ってからは、すぐに契約を決めたのですか?

リズ:ニューヨークで彼らに会ったんだけど、私たちのショーに5回連続で来てくれたの。それも1週間以内の話よ。次の週彼らと話して、来週LAに帰るって話したら、「君たちと契約したいから、LAに書類を送るよ。目を通しておいてくれ」って言われたの。LAに帰ってから1週間後に書類が送られてきて、そこから1ヶ月くらい交渉期間があって契約が決まった。だから時間にして2ヶ月くらいかかってるんだけど、すごく早く感じたわ。普通は6~8ヶ月かかったりするから。

音楽制作上でのおふたりの役割分担について教えてください。

リズ:時と場合によってちがうの。私が先に何か思いついたり、ルイがアイディアを持ってきたり、いろいろよ。お互いにそれを送り合って、それをもとにいろいろ音を作って乗せてみるの。曲の作り方は毎回ちがうけど、曲作りに関わる割合が50/50っていうのはどの曲でも変わらない。あといつも同じなのは、私が歌詞を書いて、ルイがプロデュースすることね。それはそれぞれ一人でやるの。

ジャケットのアートワークではお札を口にまるめ込んでいる写真が印象的ですが、資本主義を揶揄するような意味合いがこめられているわけですよね。

リズ:もちろん。資本主義って、お金とか美、惹きつけられるもの、セレブ、名声とか、そういういうわたしたちが語っているテーマのすべてに関係していると思う。資本主義が人を競わせるし、たくさんの広告が物質主義を促しているし、間違った「理想の」女性の身体、男性の身体を作り出して、その体系であることをよしとしている。そういうのって、資本主義と全部結びついていると思うし、わたしたちは確実にそれに反対してる。このジャケットからそれを理解してもらえて、すごくうれしいわ。

では、商業音楽はどのようにその「おカネ」から自由であることができると考えますか?

リズ:すごく難しいことよね。わたしとルイは、ポップ・ミュージックを作ってるっていうのは百も承知なの。そうやってまず音楽業界に入って、人に聴いてもらうチャンスを得てから、自分たちの伝えたいことを伝えようとしている。わたしたち自身、ポップ・ミュージックが大好きだから、ホーリーチャイルドの曲もすごくキャッチーではあるし、もし完全にエクスペリメンタルな作品を作ったら、みんなに届かなかったり、理解してもらえないっていうのも理由の一つ。人に届けるためには、ビジネスの中にいることも必要だったりするのよ。でも、そんな中でも、わたしたちは心から誠実でいようと心がけてる。それをつづけることで達成できて、その自由を手に入れることができるようになるんじゃないかしら。すごく難しいことだとは思うけどね。

わたしとルイは、ポップ・ミュージックを作ってるっていうのは百も承知なの。人に届けるためには、ビジネスの中にいることも必要だったりするのよ。(リズ・ニスティコ)

タイトルの「ブラット・ポップ(Brat Pop)」という言葉も問題提起的なものかと思いますが、あなたがたの定義する「ブラット」はどのような存在ですか? あなた方自身の自己像?

ルイ:自分たちの音楽をちょっといたずらなユーモアで表現した言葉なんだけど……君が話す?

リズ:わかった。「ブラット・ポップ」っていうのは、わかりやすく言えば「サーカスティック・ポップ・ミュージック」って感じなんだけど、ポップ・ミュージックっていうのは社会的な主張で、私たちはそれに反して「ブラット・ポップ」なの。私たち自身の文化の中から見たジェンダーや男女の役割、お金とか自己愛のことを話していて、それを私たちのやり方で定義しようとしているのよ。生意気に、何かに「反して」いるからブラットなの。本当は、12歳以下の生意気な子どもにだけ使われる言葉なんだけど、わたしたちがやっている音楽は、ポップだけどお決まりのポップ・ミュージックとは少しちがう自分たちだけのサウンドだし、そういう意味で私たちの音楽は皮肉的で従順ではないから「ブラット」という言葉をつけたのよ。私たちがやっていることに合った言葉だと思う。何をしてるの? って訊かれても、答えは100%ポップではないもの。私たちの音楽には、ポップ以上のものがある。ポップの形式を使いながら、自分たち自身のやり方で音楽を作っているから。

ルイ:何年か前に誰かがブログで「ブラット・ポップ」っていう表現を使っているのを見たんだ。それを見て、すごくしっくりきたんだよね。ホーリーチャイルドの音楽にはピッタリの言葉だと思った。「ブラット・ポップ」なんて言葉、聞いたことなかったけど、言葉を見ただけでコレだと思ったんだ。僕たちがやっていることのすべてを捉えた言葉だと思ったね。

生意気に、何かに「反して」いるからブラットなの。本当は、12歳以下の生意気な子どもにだけ使われる言葉なんだけど。(リズ・ニスティコ)

あなたがたが他に「ブラット」だと感じるアーティストを教えてください。また、よく聴いている音楽について教えてください。

リズ:マリーナ&ザ・ダイヤモンズ(Marina & the Diamonds)と……もっともっといると思うんだけど、いま思いつくのは彼女。でも、ポップをやりながらそれ以上のことをやっているアーティストはすべて「ブラット」だと思う。

ルイはどうですか?

ルイ:そうだな……。

リズ:TNGTは?

ルイ:たしかに。

リズ:彼ら最高よ。

ルイ:〈PCミュージック〉のアーティストとか。あとレックス(Rexx)も。ジャック・ガラート(Jack Garratt)もだし……。

リズ:スフィアン・スティーヴンス(Sufjan Stevens)も。

ルイ:そうだね。スフィアン・スティーヴんス。

リズ:アーケード・ファイアもそうね。

ルイ:アラバマ・シェイクスも。

リズ:アラバマ・シェイクス! 絶対そうね。

アラバマ・シェイクスのアルバムは非常に歓迎されていますね。

ルイ:彼らの進化のしかたが好きなんだ。ブラットさを残しつつ、セカンド・アルバムでは変化をつけて、ファースト・アルバムとはまたちがう作品をつくり出した。アラバマ・シェイクス・サウンドは健在なのに、すごく成長が見えるところが素晴らしいと思ったね。だから聴いていて本当にエキサイティングだったし、プロダクションもパフォーマンスも最高だった。

質問作成・文:橋元優歩(2015年6月30日)

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