Home > Interviews > interview with HOLYCHILD - “ブラット(やんちゃなガキ)”が世界を回す
ドラミングはキューバで学んだんだ。本当にたくさんのことを知ったよ。(ルイス・ディラ―)
ザ・シェイプ・オブ・ブラット・ポップ・トゥ・カム ホーリーチャイルド ホステス |
■あなたがたは他のアーティストや音楽の歴史を気にするタイプのミュージシャンだと思いますか? それとももうちょっと直感的?
ルイ:両方だと思う。
リズ:そうね。私たちは音楽やアートに尊敬の念を持っているし、生まれてからずっといろいろな音楽を聴いてきたし、音楽の歴史にも興味を持ってきた。だから詳しくはあるのよ。でも、部屋に入って音楽を作り出すと、そういうことよりも自分たちの感情のほうが素直に出てくるの。結果的に、そういった歴史や他のアーティストの音楽を超えた、すごくエモーショナルで直感的なものができあがる。この音楽が好きだから自分たちもこういうコード進行でいこうとか、そういう作り方はしないの。
ルイ:そう。で、さっきも言ったように、自分たちの中にある知識や興味が自然と曲に出てくるんだ。音楽の歴史を知識として持ちつつ、そのときに自分が感じているものがそのまま曲に反映されるんだと思う。
■MIAやボンジ・ド・ホレ(Bonde do Rolê)といったアーティストへの共感があったりしますか?
リズ:ボンジ・ド・ホレは知らないわ。ごめんなさい。
ルイ:MIAはブラット・ポップのクオリティを持ってると思う。彼女の曲の歌詞には社会的なメッセージも込められていると思うし。プロダクションや社会論評という意味で、彼女からはインスパイアされている。
リズ:ヴィジュアル面でもインスパイアされるわ。彼女って、音楽だけでなくヴィジュアル、メッセージでも境界線を押し広げていると思う。すごくアヴァンギャルドよね。それって私たちがやろうとしていることと同じなの。だから、インタヴューを受けるときに彼女の名前がよく出てくるんだけど、似てるって思われるのはうれしいことだわ。
何が美しいか、なぜそれが美しいと思うかは人によってちがうし、何に価値を見出すか、何を変だと思うかも人によってちがう。そのちがいって本当は自然で普通のことなのよね。(リズ・ニスティコ)
■リズさんのなかに、同じ女性の表現者としてリスペクトする人やお手本となる人はいますか?
リズ:マドンナね。彼女はポップ・ワールドのイメージをいい意味で変えたと思うから。彼女もすごく反抗的よね? それが、当たり前とされているものに対する人々の考えを変えたと思う。しかも、すごく大きいスケールでそれをやっているところにインスピレーションを受けるわ。彼女を見たり、過去のインタヴューを読んだりして、彼女がそれをどのようにしてやってのけたのかを学びたいの。私たちもあのレベルに到達できたら素晴らしいと思う。
何が美しいか、なぜそれが美しいと思うかは人によってちがうし、何に価値を見出すか、何を変だと思うかも人によってちがう。そのちがいって本当は自然で普通のことなのよね。食べ物に関する考え方もそう。この食べ物を食べれば、自分の身体がこう見えるからこれを食べるっていう考え方が私にとってはすごくフラストレーションなの。食べることって自然なことのはずでしょ? すごく簡単なことだし、当たり前で自然なことなんだから、そこまで深く考えるべきじゃないと思う。そういうことに関してマドンナくらいのスケールで世界と話すことができたら最高だわ。
■ディラ―さんはドラミングを学んでこられたということですが、具体的にどんなかたちで学んでこられたのでしょう?
ルイ:ドラミングはキューバで学んだんだ。本当にたくさんのことを知ったよ。ありすぎて答えるのが大変だな……長くなるから短くまとめると、とにかくドラムに関すること全般を学んだ。ドラミングと歌だね。人間がいちばん最初に奏でた音楽っていうのはドラムと声だったわけだけど、キューバではその考えが強くて、だからパーカッションやドラムに人々がどう反応してきたとか、そういうことについても学んだんだ。それはキューバに限らず世界中の人々のリアクションにも通じると思うし、パーカッションには根源的なクオリティがある。人が美しいものを聴いたときの反応も同じだと思うし、そういうのは勉強になったね。あとはアフロ・キューバン・ドラムのテクニックについても学んだけど、それはまた専門的な話になるからやめとくよ(笑)。
■本作には生ドラムやライヴ録音がフィーチャーされているというわけではありませんよねあなたが学んだものの中でとくに本作に活かされている要素はどんなものだと考えますか?
ルイ:アフロ・キューバン・ミュージックの基本的なリズムはクラーベっていうリズムパターンなんだけど、僕たちの音楽にそのリズムは大きく影響していると思う。意識してそうしているわけじゃないけど、たくさん勉強したから、自然とそれが出てくるんだ。あとは……なんだろうな。とにかく向こうで学んだのは、音楽においてリズムとドラムとパーカッションがいかに大切かということだったから、僕らの音楽の中でも自然とそれが軸になっているのかもしれないね。何かをずっと勉強してると、それがDNAの一部になると思う。だから、自分でとくに意識しなくても、それが滲み出てくるんだ。
音楽業界って本当に競争社会なのよ。一方からはああなれって言われたり、またちがう人たちからはこうなれって言われたり、何をやったらいいのかわからなくなる。でも彼らみたいに自分のやりたいことを貫いている人たちを見ると、私もそうしていいんだって思える。(リズ・ニスティコ)
■パッション・ピットといっしょにツアーを回られているということですね。パッション・ピットの作品の中でいちばん好きなものを教えてください。また、彼らに学ぶものはありますか?
ルイ:最初のアルバムの『マナーズ』。ほんっとにいいよね。リリースされたときもそうだし、いまでも大好きなアルバムなんだ。いい曲が詰まってるし、あの作品で、彼らは自分たちのジャンルをつくり出してると思う。あの後、彼らみたいな音楽をやろうするミュージシャンたちがたくさん出てきたんじゃないかな。インディ・ポップの世界で自分がしたいことをしてるっていうところがすごくいいと思うね。とにかく僕はあのアルバムが大好きだし、革新的な作品だと思う。そういう点ですごくインスパイアされているから、パッション・ピットといっしょにツアーに出れるなんて、すごく光栄だよ。楽しくなるだろうな。
リズ:パッション・ピットももちろんだし、マドンナ、MIA、ノー・ダウトもジョン・レノンもそうだけど、みんな、自分たちの特徴を保ちつつ進化してる。やっぱりそこにいちばんインスピレーションを受けるわ。何かで成功しても、それにすがって繰り返そうとはしない。それに自分の意志に従ってると思う。音楽業界って本当に競争社会なのよ。一方からはああなれって言われたり、またちがう人たちからはこうなれって言われたり、何をやったらいいのかわからなくなる。でも彼らみたいに自分のやりたいことを貫いている人たちを見ると、私もそうしていいんだって思える。私にとってはそこがいちばん影響されるわね。これからツアーに出て、パッション・ピットからもっといろいろと学ぶのが楽しみだわ。
■アップル・ウォッチのCMソングに起用されたということですが、アップルやアップル・ウォッチの価値観や未来像には共感しますか?
リズ:アップルってすごく革新的で創造力に富んでいると思う。すでに大きい会社でありながら、自分たちがやっていることに落ちつかず、つねに限界を超えた何かを作り出そうとしているのが素晴らしいと思うわ。すごくクールよね。だから、自分たちの曲が起用されてすごく光栄だった。
■なるほど、今日はありがとうございました。
リズ:こちらこそありがとう! インタヴューしてもらえて、すごくうれしいわ。
ルイ:日本でみんなに会えるのを楽しみにしているよ!
質問作成・文:橋元優歩(2015年6月30日)
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