「CE」と一致するもの

Various Artists - ele-king

 以下本文--------------------
"原稿投函完了!!ビーチボーイズなんて聴いてんじゃねー!!って勢いで書きました。"

 菊地佑樹 Yuki Kikuchi ?@kikuchi1968xx 2012年6月8日 - 6:55 Echofonから
https://twitter.com/kikuchi1968xx/status/210852388863606785

 例えば、僕も含め平成生まれエレキング読者の人間がアナログ・レコードを買うようになるのは、当たり前なのだが、ノスタルジア(懐旧)に浸るためではないだろう。ノスタルジアの対象となる時代など我々はまだ持ち合わせていない。生まれたときから「バブルというのがあって...それがはじけて....」/「関西で大変な地震」/「てるくはのる」/「宅間守」/「ビン・ラディン」などなど.....が幼少の頃から刷り込まれていた。いや、簡潔に言おう。まだ若いからだ。ノスタルジアなど知らない。
 話がぶっきらぼうに逸れましたが....つまり、生まれたときから音楽といえばCDだったので、アナログ・レコードなどは見たことがなかったし、父親がもっていたドアーズや矢沢永吉のCDを邪険にあつかって傷をつけて再生できなくなるようにしたのが「懐かしい」くらいだ。そんなCDかMDはたまたMP3のデジタルデータしか知らない子供だった人間が物心ついて、青春の時代にアナログ・レコードを手にし「演奏」して思ったことは(アナログ・ターンテーブルの説明書には〈再生〉ではなく「演奏」と記述されている)、「こんな音聴いたことない!」ということ。つまり、新しい感覚。

 さて、本ウェブサイトに掲載されているトュー・ウーンデッド・バーズ『Two Wounded Birds』のレヴューについてだと思われる菊地氏の冒頭の言葉が、今日まで僕の胸につっかえていた。目の覚めるような思いだった。例えばYouTube上でも地域/年代問わずあらゆる音楽が平坦に並んでいるこのご時世に、あえてザ・ビーチ・ボーイズのような誰もが否定しようのない(また、してももう意味がない)ものから、敢えて忌避する意志を示さなければならない強迫観念が籠められているのを感じ、それに恐怖し、しかし、同時に自分はその観念を必要としている気がしたからだ。
 そうだ。2012年8月1日現在において、ザ・ビーチ・ボーイズは単なる金持ちジジイの同窓会バンドめいてるにも関わらず、久々の新作は好評で、アメリカ・ツアーだけでなく来日公演まで果たそうとしている。また、若いバンドについてのレヴューを読んでも、音楽性に言及されるときザ・ビーチ・ボーイズは頻繁に引き合いに出されている。例えば、CDショップで配布されているようなフリーペーパーでインディーのロックやポップのディスク・レヴューなんかでも散見されるのだ。

 「ビーチボーイズなんて聴いてんじゃねー!!」

 しかし、おそらくレヴューされるアーティスト側もザ・ビーチ・ボーイズを好んで聴いているのだ。レヴューする側も、ファルセットをふくむ美しいハーモニーとくれば、アーティストもリスナーもザ・ビーチ・ボーイズが頭に浮かんでしまう。そこでフォー・フレッシュメンとはならないのだ。そういえばブライアン・ウィルソン自身、「ロックにハーモニーを取り入れた最初のバンド」だとDVD『アン・アメリカン・バンド』で語っていたっけ.....。

 89年に東京に生まれ育っている人間(例えば僕)が60年代アメリカの音楽であるザ・ビーチ・ボーイズをノスタルジアとして聴くことは難しいが、ヴァーチャルなノスタルジーに浸ってしまう可能性はある。2011年に作られた音楽を数えるほどしか聴かず、ザ・ビートルズとザ・ビーチ・ボーイズとレッド・ツェッペリンに胸を焦がされていたのだとしたら......これはヴァーチャルなノスタルジーだったのだろう。僕は中学生のころからザ・ビーチ・ボーイズばかり聴いてきた。つい最近もUKオリジナル『Sunflower』のアナログを購入して喜んでいるような人間だ。野田編集長にはこう言われた。「斉藤くんは若いのに、ホント、古いのが好きだよね、おじさんとしては嬉しい限りだよw」。うっ.....僕は返す言葉もなくグラスの底のビールの一滴ほどを口に滑らせるしかできなかった。

 そして後日、野田編集長から「斎藤くん、これ好きでしょ」と渡されたのが、本作、英仏ジョイントの新興レーベルである〈ZAPPRUDER〉のコンピレーションCDだ。レーベル〈もしもし〉や〈キツネ〉あるいは同じく英仏レーベルである〈ビコーズ・ミュージック〉を容易に彷彿とさせる、潮っけのあるシンセサイザーが全編で鳴り渡っている。そうですよね。いま夏ですし、僕はホット・チップとかザ・ビーチ・ボーイズが大好きだから、こういうの好きです.....。
 しかし、この音楽は、ヴァーチャルではなく、完全なノスタルジーだ。これこそがノスタルジーだ。初めて1曲目を再生したとき、2009年ごろに渋谷のライヴハウスなんかにこういうのっていなかったかななどと思った。ところがどっこい、実際にはそれどころではないことが、2曲目がはじまった瞬間にわかった。この音楽は聴いたことがある。ゼロ年代のシンセ・ポップ、ああ、すばり〈ビコーズ・ミュージック〉のメトロノミーじゃないか! そして、ほんのひとかけらのホット・チップ。日本で言うなら、シグナレス? なぜ、まだ若い僕が、2012年の音楽を聴いて、4年前の音楽を懐旧しなければならないのか!

 その2曲目、実際にメトロノミーとの人脈をもつナスカ・ラインズ(NZCA/LINES)の"Okinawa Channels"の響きは、海外からの旅行者が沖縄で(あるいは、そのヴァーチャルなノスタルジアで)チルアウトしてるというよりも、毎年のように沖縄に旅行している在日の日本人が、帰りの車のなかで「もう来年は違うところに行こう....」という気持ちを胸に秘めておきながらも結局かれこれ5年くらいは毎年決まって沖縄に来てしまっているかのような倦怠感がある。なんという直近のノスタルジア(追憶)。そして、その旅行者は次の新たな旅行先を見つけることが出来ないままで、きっと来年も沖縄に旅行をするのだ。これこそが恐ろしくリアルで卑近のノスタルジアである。歳である。ああ、ザ・ビーチ・ボーイズを聴いてヴァーチャルで悦に浸っている若者などまだ可愛いものだ。 よく聴けば、サビでもこう歌っている。

 沖縄、ちゃうの? 日本にいようよ(アウーウーウウウウー)。時差ねえし便利よ.......(アウーウーウウウウー)。
 沖縄、ちゃうの? 日によるよ(アウーウーウウウウー)。そろそろ行かねばの....(アウーウーウウウウー)

 そう、ナスカ・ラインズは、エレクトロ・ポップが80年代のリヴァイヴァルだとか言われるのとは違い、もはやその数年前の直近のエレクトロ・ポップを懐かしんでいるのだ。
 懐かしまれてしまったメトロノミーも昨年に3年ぶりのアルバム『The English Riviera』を発表しているが、ナスカ・ラインズは彼らを撃ち落とす姿勢なのかもしれない。ベッドルーム・ポップとしての納まりのよさは、バンドのフィジカルなグルーヴを強調してしまうメトロノミーよりも、ソロ・ユニットであるナスカ・ラインズのほうに軍配が上がるだろう。ルックスも同じくナスカ・ラインズ。しかし、ウォッシュト・アウトの轍を踏まないようにしなくてはならない。まだまだ、これからだ。

 コンピの前半は、この夏まっ盛りにして、部屋のなかあるいはときたまウェッサイ/G-FUNKを模したようなトラックに乗りながら、2~3年前の夏へのノスタルジアが後頭部に疼き出してしまっているボーイズのR&B風の合唱で占められている。その様を、この8月に〈もしもし〉(日本版は9月19日Tugboat Records/P-VINE)から『The Palace Garden』をリリースするビート・コネクション(Beat Connection)がありふれた諧謔でオチをつけている。

 僕の想像し得るかぎり最高のヴァージョン
 ....がまさに起こったところさ
 海岸で僕は立っている
 でも砂のなかにいるのはつらい
 そしたら、彼女は僕の手を握って
 「私についてきて」と言うんだ
 
 夕暮れのなかで彼女を見つけた
 だけど、それはまったくの夢
 僕が計画したんだよ
 銀幕の上で
Beat Connection "Silver Screen (Dreamtrak Diamond Sound)"(2011)

 コンピ後半には、ステファロー(Steffaloo)/クラス・アクトレス(Class Actress)/レインボー・アラビア(Rainbow Arabia)/ソーヴェイジ(Sauvage)らが「浮女子」感の溢れる歌声とトラックで、「あなたを腕の中で抱きしめていたい」「あなたがいないと寂しくなってしまう。わたし待つわ」「あなたがフリーじゃないことは知ってる。問題ない。ただ、あなたの夜を私にちょうだい」なんて歌ってくれているけども、見つかった分の収録曲の歌詞を読んだが、浮女子が期待してやるほどの男子はこのCDのバンドのなかにはいないだろう。リスナーの男子にもいないかもしれない。ソーヴェイジに続いて、フレンチ・フィルムス(French Films)"Pretty In Decadence"の本当に本当に気の抜けたサーフ・ロック・サウンドが聴こえてしまうくらいだから。

 気をとり直すために(天国からの?)階段を降りたけど
 売り渡すような魂(ソウル)も僕には残ってなかった
 
 自助、純血人種、旧約聖書
 ラインに沿って歩くのは
 健康な人を狂わせる
 おお、なんて素晴らしい、素晴らしい人生
 
 メイン・ストリートを歩くたびに
 僕にはわかる
 僕はむしろこんな感じでいたいのさ、ベイビー
 吸血ブルースに愛国心を示したりするよりも
French Films "Pretty In Decadence"(2011)

 なんだかんだで20回以上も通して聴いてしまったので、このCD自体すでに懐かしいものになっていく。浮男子、おどけてばかりいないで、しっかりいこう!

interview with Heiko Laux - ele-king

 ハイコ・ラウクスはジャーマン・テクノを体現するような人物だ。テクノ黎明期に多感な10代を過ごし、周囲の誰よりも早くシンセサイザーとドラムマシンで楽曲制作を開始。94年に地元ヘッセン州の小さな町でレーベル〈Kanzleramt〉を立ち上げた。それがスヴェン・フェイトの目に留まり、フランクフルトの伝説的クラブ、〈Omen〉のレジデントに抜擢される。99年にはテクノ・キャピタルとして勢いを増していたベルリンに拠点を移し、変わらぬ情熱と熟練のスキルで制作活動とDJ活動ともに精力的に続けている。

 数ヶ月前、宇川直宏氏に「今年もFREEDOMMUNE 0 <ZERO>やるから、いいテクノDJブッキングしてよ!」と言われて真っ先に思い浮かんだのが彼だった。実際に出演が決まり、〈eleven〉でのアフター・パーティと大阪〈Circus〉でもそのプレイを披露することになったハイコに、ベルリンで話を聞いた。テクノ・ファンならすでにお馴染みのベテラン・アーティストだが、3年ぶりの来日ツアーに先駆けて、これを読んでその素晴らしいプレイのイメージを膨らませて頂ければ幸いだ。


ドイツのテクノもデトロイトの影響を受けてはじまったようなものだからね。そのデトロイトの人たちはクラフトワークに影響を受けていたりするわけだけど。


初めまして。もうすぐFREEDOMMUNE 0 <ZERO>に出演のため来日されますが、私があなたをブッキングしたんですよ。その経緯から少し話させて下さい。実は、きっかけは今回共に出演するDVS1をEle-Kingのために昨年インタビューしたことだったんです。

ハイコ:へえ? どういうことかな?

彼が、90年代にあなたをミネアポリスに呼んだことがあって、その縁であなたに〈Tresor〉でDJする機会をもらったと言っていました。それが初めてベルリンでプレイした体験だったと。

ハイコ:ちょっと待って、いまもの凄い勢いで頭の中の記憶を呼び戻してるから... でもDVS1という人は知らないな。前は違う名前でやっていたのかな?

あれ? 覚えていないですか? それは意外ですね。ではその事実関係は日本で再会した際にDVS1本人と確認して頂きましょう。いずれにせよ、その話を聞いたのが昨年のちょうど同じ頃で、そのすぐ直後にあなたが〈Berghain〉に出演していたので、初めて聴きに行ったんです。

ハイコ:ああ(ニヤリ)、あの日あそこに居たのか。あれは......かなりいいセットだった。

めちゃくちゃ凄かったです(笑)。それで一発でヤラれてしまったんですよ。そのときに、「この人を日本にブッキングしよう」と思ったんです!

ハイコ:そうか、ありがとう。実はね、公にはしていないんだが、CLR Podcastに提供したミックスは、あの日のセットの中の2時間分なんだ。あそこのクラブは録音だの撮影だのに関してはとてもうるさいからね、ここだけの話だけど! うん、あれはかなりいいパーティだった。

2009年の〈WIRE〉に出演して以来、日本には行ってませんものね?

ハイコ:そうなんだよ、だからもの凄く楽しみにしている。そろそろ行きたいと思っていたところだよ。

それまでは、わりと定期的に来日してましたよね?

ハイコ:2000年か2001年くらいから、ほぼ1年おきには行っていたね。

これまでの来日体験はどうでしたか?

ハイコ:いい思い出しかないよ。日本は大好きだ。僕は食べるのが好きなんでね、食べたいものがあり過ぎて困るくらいだ(笑)。初めてスキヤキを食べたときなんて、発狂するかと思ったよ! ヤキニクとか、コウベビーフとか...... とにかく日本の食べ物のレヴェルの高さは凄い! もう6回くらい日本には行ってるけど、毎回驚きがあるね。

ちょっと音楽の話に戻しましょうか(笑)。実は私は90年代のテクノについてデトロイトのことはある程度知っているんですが、ドイツのことはほとんど知識がないので、ぜひその頃の話、そしてあなたがどのような体験をしてきたのか教えて頂きたいんです。

ハイコ:まあドイツのテクノもデトロイトの影響を受けてはじまったようなものだからね。そのデトロイトの人たちはクラフトワークに影響を受けていたりするわけだけど。

バイオグラフィーによれば、ファーリー・ジャックマスター・ファンクの「Love Can't Turn Around」に衝撃を受けて音楽をはじめたとのことですが?

ハイコ:そうだね、まああの曲は一例だけど、ああいうサウンド、いわゆるTR-909のドラムととてもシンプルなベースだけであれだけパンチのある曲は衝撃だった。ああいう音が部分的に使われている曲は聴いたことがあったけれど、シカゴハウスからはそれまで感じたことのない凝縮されたエネルギーを感じたんだ。「俺はこれをやりたい」と思ったんだよ。

それはラジオで聴いたんですか?

ハイコ:いや、クラブだよ。当時は兄がDJをしていたので、まわりの子たちよりも早くクラブに行くことが出来たし、家にそういうレコードがあった。シカゴ・ハウスやUKノアシッド・ハウスなどだね。それ以外はまだポップ・ミュージックしかなかったけれど、あの頃はポップ・ミュージックのシングルにもB面に風変わりなダブ・ミックスなどのインスト・ヴァージョンが入っていた。そういうシンプルなグルーヴの音楽を好んでいたね。特定のサウンドを上手く組み合わせれば、とても少ない音で凄い威力のある曲が出来上がるというところに魅了された。

かなり早い段階から自分の曲を制作することに興味を持っていたようですね?

ハイコ:ああ、もう10代半ばから。小さなバイクに乗れるようになった頃に、最初のキーボードを買いに行ったのを覚えているよ。14歳とかじゃないかな。

その歳ですでにクラブに行って、制作も始めていたんですね?

ハイコ:ああ、地元のバート・ナウハイムという小さな町から、兄の車に便乗してフランクフルトのクラブに出入りしていた。あの頃聴いたDJといえば、スナップ(Snap!)のプロデューサーのひとりだったミヒャエル・ミュンツィッヒなどだね。彼はいつも、ド派手な衣装で現れた。インディ・ジョーンズみたいな帽子を被ったり......毎週違う格好で(笑)。でも誰よりもクールな音楽をかけていた。彼はビートマッチ(曲のピッチを合わせる)だけでなく、ハーモニーをミックスしていたのが印象的だった。前の曲のブレイクのときに、例えばピアノのハーモニーが入っていたとしたら、次の曲のBPMの違うイントロのハーモニーと混ぜるんだ。そこから全然リズムが変わったり。それがとても新鮮だったね、「こういうことも出来るんだ」と思った。いまそういうやり方をする人は全然いない。でも僕は、いまでも選曲をするときにハーモニーで選んだりするよ。他に僕が体験したことと言えば、クラブ〈Omen〉の盛衰だけれど、それもバイオグラフィーに書いてあることだね。

当然、DJとしてスヴェン・フェイトからも大きな影響を受けていますよね?

ハイコ:完全に。スヴェンとの出会いは、僕のキャリアのターニング・ポイントになったから、特別な存在だね。あの頃は誰もが〈Omen〉でプレイすることを目標にしていた。だから僕も自分から「やらせて下さい」なんて野暮なことは聞かなかった。その代わり自分でレーベル(〈Kanzleramt〉)を始めて、曲を出すようになった。そしたら、96年にスヴェンがライヴをやらないかと誘ってくれたんだ。そしてライヴ出演したら、またやって欲しいと言われて、「実は僕はDJもやるんです」と言った。当時、金曜日がスヴェンの日で土曜日が外部のゲストDJがプレイしていた。その土曜日に何度かやったところ、「金曜日にお前の枠をやるから、好きな奴を呼んでパーティをやれ」と言われた。だからサージョンやニール・ランドストラムなどを呼んで一緒にやっていた。店が閉店するまで、それを続けたんだ。

ライヴもやっているんですね? それは知りませんでした。

ハイコ:実はそのときと、すぐ後に一度「POPKOMM」(かつては毎年開催されていたドイツ最大の音楽見本市)だけで、それ以来全然やっていないんだ。他のアーティストとコラボレーション、例えばテオ・シュルテと一緒にやっているオフショア・ファンクなどでは何度かやっているけど、ソロは全然やっていない。それも最後にやったのは2008年だ。その後はDJしかやっていないね。でも、今年のADE(Amsterdam Dance Event)で久々のライヴを披露する予定だよ。とても楽しみだけど、ライヴとなると途端にナーヴァスになる(笑)。

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僕はたしかにラップトップを使っているけど、間違いなくDJをしているからね、そこが違うんだと思う。僕はちゃんと曲を「触っている」。それが鍵なんだよ。こういうシステムを使うと、オートシンクも簡単に出来るけど、それをやってしまうとDJの醍醐味がなくなってしまう。

少し意外なのは、あなたがハウスから音楽の道に入ったということですね。テクノ一辺倒なのかと思っていたので。

ハイコ:というか、あの頃はテクノというものが存在していなかったんだよ。デトロイト・テクノもシカゴハウスの影響で出て来たものだからね。テクノへと加速していったのは90年代初頭のことだよ。

そういう流れのなかで、あなた自身もよりテクノに傾倒していったと?

ハイコ:そういうこと。だからテクノ・ブームがやって来る少し前に、すでにこういう音楽に脚を踏み入れていたのは、幸運だったと思う。周りがテクノに目覚めた頃には、すでにシンセサイザーやドラムマシンに親しんでいたからね。だからテクノが確立される前から、テクノをどうやって作るのかは分かっていた。ハウスを速くして、テクノのエネルギーを足せば良かったんだ。

そう考えると、あなたはドイツにおける第一世代のテクノ・アーティストと言えますね。

ハイコ:やはり僕よりも、スヴェン・フェイトやジェフ・ミルズやDJヘルの方が僕よりも先にやっていたけれどね。僕の出身の小さな町では輸入盤のレコードを売る店なんてなかったから、それほどたくさん聴けたわけではなかったし。アンダーグラウンドな音楽は、大都市に行かないとアクセスできなかった。僕がレコードを買っていた隣町の店なんて、半分が自転車屋で、店の半分がレコード・コーナーになっていたからね(笑)。レコードを売るだけでは、まだ商売にならなかったからだ。〈Omen〉の前身だった〈Vogue〉というクラブで、スヴェンを聴いたり、90年代に入ってからジェフ・ミルズやジョーイ・ベルトラムのプレイを聴いた。
 それでデトロイト・テクノに開眼して、「そうか、こんなことも出来るのか!」と思ったね。特に、ジェフ・ミルズを見たときは度肝を抜かれた。プレイしたレコードを次々と背後に投げ捨てながらプレイしていた(笑)。傷がつくとか、そういうことを気にせずにバンバン投げ捨ててたね......そういうクラブが身近にあって、本物のアーティストを間近で見て体験することが出来たのはとても幸運だったと思う。ジェフがヨーロッパで初めてやったのは〈Omen〉だったんじゃないかな。当時は、フランクフルトがドイツのダンス・キャピタルだったからね。ベルリンの壁が崩壊してからは、フランクフルトとベルリンのライヴァル関係がしばらく続いた。もちろん、その後ベルリンが勝つことになるわけだけども...... 90年代前半はほぼ同等のレヴェルだった。その競争意識が、音楽にもプラスに働いたと思う。

なるほど。そういう環境の中で、あなたのDJスタイルも築き上げられていったわけですね。あなたも当時のジェフのようにターンテーブル三台を操ることで知られていましたよね?

ハイコ:そうだね。かつては、三台使ってレコード1枚あたり2分くらいだけ使ってどんどんレイヤーしていくスタイルをやっていたけど、いま(のレコードで)同じことをやっても上手くいかない。ただテクニックを見せびらかすだけみたいになって、せわしなくて聴いている方は楽しめないと思うんだ。お客さんも世代交代しているからね。でも三台使ってプレイするのは楽しいから、またやろうと思っている。新しい使い方を考えているところだ。一時期は、なるべく展開や要素を削ってどこまでできるか、というプレイに挑戦していたんだけど、それも退屈になってしまって。だって、二台だけだと、あいだの5分間くらいやることがなくて(笑)。
 いまはSeratoを使ってプレイしているけど、Seratoが面白いのはレコードの好きな部分を好きなようにループできるところ。この機能を使うと、レコードとはかなり違ったことが出来る。また、Seratoの場合、曲の途中で停止しても、また好きな瞬間から狂いなく再生することができるから、曲の抜き差しが正確に、より自由に出来るようになった。レコードだと、ミュートできても曲の尺は変えられないから終わるまでに何とかしなければいけないというプレッシャーがある。でも、Seratoなら、好きなだけブレイクをホールドして、好きなタイミングで曲を戻すことが出来る。Seratoのおかげで、アレンジメントの幅が広がったと思うよ。
 いまはCDJ三台と、それぞれに効果音などを入れたUSBスティックも使ってさらに自由な組み合わせが出来るようにしている。だから単なるDJというよりは、サンプラーを取り入れているようなプレイだね。「遊び」の幅が広がった。今はブースで暇を持て余すこともなくなったよ(笑)。またDJすることが楽しくなっている。一時期は楽しめなくなっていたのも事実なんだけど、今は自分でも楽しめる新しいプレイの仕方を確立しつつある。

私は個人的にヴァイナルDJを好むことが多く、とくにテクノやハウスに関してはラップトップDJに感心することは滅多にないんですが、あなたのプレイは別格だと思いました。レコードでやっているようなライヴ感というか、臨場感がありましたし、長い経験を感じさせる確かなスキルがわかりました。

ハイコ:わかるよ、僕も同じだから。僕はたしかにラップトップを使っているけど、間違いなくDJをしているからね、そこが違うんだと思う。僕はちゃんと曲を「触っている」。それが鍵なんだよ。こういうシステムを使うと、オートシンク(自動的にピッチを合わせる機能)も簡単に出来るけど、それをやってしまうとDJの醍醐味がなくなってしまう。自分の手で合わせるからこそ、そこにエネルギーが生まれるんだ。ソフトウェアでプログラムされてしまっていると、そのエネルギーがない。完璧にシンクされた曲を次々と並べていくなんて、簡単過ぎるし何の面白味もない。やっている方もつまらない。その場の思いつきで新しいことを試していくことが面白いんだからさ。僕はフォーマットではなく音楽を重視するから、何を使ってプレイしているかはこだわらない。音源がCDでもラップトップでも別にいいと思う。それを使って何をするか、が問題なんだよ。いまはラップトップを使うのが面白いから、しばらく使ってみるつもりだ。

先ほどフランクフルトとベルリンがライヴァル関係にあって、いまはベルリンがその競争に勝ってテクノ・キャピタルになっているという話が出ましたが、その両方を見て来たあなたはベルリンの現状をどう受け止めていますか? ここ数年でテクノはさらにリヴァイヴァルした印象がありますけど?

ハイコ:とくに何とも思わないな(笑)。自分が幸運だとは思うけれどね。ごく自然なことだと思う。街やそのシーンの勢いというのは移り変わりがあり、より活気があるところに人が集まって来るのは自然なこと。テクノのシーンに関わりたいなら、ベルリンにはそういう仕事がたくさんあるし、その上観光客も大勢やってくる。ここにいればいろんな人に会えるし、活動の場を作っていける。レッド・ホット・チリ・ペッパーズからジョージ・クリントンまで、みんなやって来るから観ることが出来る。生活費も安いしね、これほど条件が整っていて、ニッチなアーティストにまで機会が与えられている街は他にない。これはテクノに限ったことではないし、他のジャンルも、演劇やアートに関しても同じだ。さらにベルリンはとてもリラックスしていて競争がない。周りを蹴落とそうとするような人はいない。そしてとてもリベラルだね。僕は99年にベルリンに移って来たけど、一度も後悔したことはないよ!

 

【来日出演情報】
8/11 FREEDOMMUNE 0 <ZERO> @ 幕張メッセ
8/17 AFTER FREEDOMMUNE +1<PLUS ONE> @ 東京eleven
8/18 CIRCUS SHOW CASE @ 大阪Circus

【リリース情報】
Jam & Spoon - Follow Me (Heiko Laux SloDub)
https://www.beatport.com/release/follow-me!-remixes-2012/924547
発売中

Sterac - Thera 1.0 (Newly Assembled by Heiko Laux) of "The Secret Life on Machines Remixes" on 100% Pure vinyl/digi with Ricardo Villalobos, Joris Voorn, Vince Watson, 2000 and One, Joel Mull, ...
2012年8月発売予定

Rocco Caine - Grouch (Heiko Laux & Diego Hostettlers 29 Mix) (12"/digi Drumcode)
近日発売予定

Heiko Laux & Diego Hostettler - Jack Up Girl (12"/digi on Christian Smith's Tronic TR89)
近日発売予定

Heiko Laux - Re-Televised Remixed (12"/digi on Thema Records NYC)
original and remixes by Lucy, Donor/Truss
近日発売予定

Heiko Laux & Luke - Bleek (on Sinister, 4-tracker V/A with P?r Grindvik, Jonas Kopp & Dustin Zahn)
2012年秋発売予定

Mark Broom & Mihalis Safras - Barabas (Heiko Laux Remix)
other remixers: Slam
近日発売予定

JET SET - ele-king

Shop Chart


1

Onur Engin - Night Images (Glenview)
イスタンブールの大人気リエディターOnur Enginによる話題作が遂に入荷。お馴染みとなった"Glenview"からの本作は、先にリリースされたリエディット・アルバム『Music Under New York』からのリミックスEp!!

2

Dj Dez A.k.a Andres - New World / Brain (Root Down)
AndresがDj Dez名義でブラックネス漂う7インチをリリース!洗練されたサンプリング・センスとスモーキーでファットな音の鳴りが光る傑作トラックを収録したダブル・サイダーです!

3

Det & Ari - Honved Hassle Ep (Editainment)
Tiger & Woods等の作品でお馴染みEditainmentが送り出す新生デュオDet & Ariによる最新作!

4

Nas - Life Is Good (Def Jam)
プロデュースにはSalaam RemiやNo I.d.が中心となって制作され、他にもBuckwild、Justice League、Swizz Beatz、Heavy D(!)という豪華布陣が集結!

5

Invisible - Rispah (Ninja Tune)
バンドに参加したのをきっかけにHerbertプロデュースでAccidentalからリリースを重ねてきた幼馴染トリオThe Invisivleが名門Ninja Tuneへと電撃移籍してぶっ放す待望の2nd.アルバム!!

6

Rimar - Closer (Bella Union)
『Higher Ground』が即完売したフロウティン・メロウ・ビーツ・クリエイター、Rimar。またまたUk/Bella Unionから限定ヴァイナル出ました

7

Time And Space Machine - Good Morning - Inc.Coyote Remix (Tirk)
90年代ニュー・ハウスシーンで一時代を築いたNuphonicのサブレーベルとして知られるTirkから、異才Richard NorrisによるプロジェクトTime & Space Machineによる最新作!

8

V.a. - Midnight Riot Volume 2 (Midnight Riot)
前作が予想以上の注目を集めたことで早くもレーベルとして独立したMidnight Riotから送り出すシリーズ第二弾!

9

Maylee Todd - Hieroglyphics Remixes Ep (Do Right! Music)
トロントのシンガーMaylee Toddによる話題傑作「Hieroglyphics」のリミックスEp!! Tall Black GuyとMakeoverによるリミックスをカップリングした12インチ!!

10

Dj Kentaro - Contrast (Ninja Tune)
5年振りにリリースされた2ndアルバムが待望の2lpにてリリース!Dj Krush、D-styles、Kid Koala等が参加です!

JAPONICA - ele-king

Shop Chart


1

Moody a.k.a. Moodymann - Why Do U Feel EP KDJ / US / 2012/8/1
推薦盤!<KDJ>42番!一連のMOODY名義での新作3トラックスEPが緊急リリース!瞬殺だったMO MOODY名義でのプロモ盤収録トラック"I GOT WERK"正規リリース、そして極上のソウルフルKDJハウス2トラックも!絶品でございます。

2

Idjut Boys - Cellar Door Smalltown Supersound / NOR / 2012/7/25
推薦盤!待望のLP入荷しました!ディスコ・ダブのパイオニアにして現行クラブ・シーンにおける最重要DJデュオIDJUT BOYS、約20年に及ぶキャリアの中で初となるオリジナル・フルアルバム!

3

DJ Dez a.k.a. Andres - New World / Brain Root Down / JPN / 2012/8/3
推薦盤!J DILLAの意思を継ぐデトロイトの至宝ANDRESによるDJ DEZ名義でのストレートなインスト・ヒップホップ7"!大阪のレコードショップ「ROOT DOWN RECORDS」レーベル第1弾。

4

Afro Latin Vintage Orchestra - Last Odyssey Ubiquity / US / 2012/7/23
推薦盤!フレンチ・アフロ・ファンク・バンドAFRO LATIN VINTAGE ORCHESTRAが名門<UBIQUITY>より待望のサード・アルバム!土着エッセンス薫る極上のラテン/アフロ/カリブ・ジャズファンク特上盤。

5

James Curd & Centrone - It's Hot Up In Hell EP G Swing / US / 2012/8/1
推薦盤!スウィング~ジャイヴな漆黒ジャズ・ハウス~ロービート!絶品です◎シカゴのベテランJAMES CURD主宰<GREENKEEPERS>傘下の<G-SWING>再始動後のリリース第6弾!

6

Derrick Harriott / Susdan Cadogan - Let It Whip / Juicy Fruit Ximeno / US / 2012/7/21
推薦盤!80'Sメロウ・ブギー/ソウルの絶品レア・レゲエ/ラヴァーズ・カヴァー!第1弾も最高すぎた、レゲエ・ジャーナリストDANNY HOLLOWAYによる再発専門レーベル<XIMENO>第2弾!

7

Cro-magnon - Riding The Storm (Idjut Boys Remixes) Jazzy Sport / JPN / 2012/7/25
推薦盤!IDJUT BOYSリミックス!今年一月に待望の復活を遂げたCRO-MAGNON、彼等のライブ定番にしてダンス・フロアを熱くする傑作"RIDING THE STORM"リミキシーズ12"!

8

The Rongetz Foundation - Gogo Soul feat. Gregory Porter Heavenly Sweetness / FRA / 2012/7/28
推薦盤!レーベル・イチオシの注目フレンチ・ビートメイカーGUTSリミックス収録!多国籍スピリチュアルジャズ・ユニット=THE RONGETZ FOUNDATION新作。feat. GREGORY PORTER!

9

Psychemagik - For Your Love Psychemagik / UK / 2012/8/1
ブラジリアン・クラシックJOYCE"ALDEIA DE OGUM"のダンス・グルーヴ・エディット!鉄板級のリリースが続くPSYCHEMAGIKオウン・エディット・ライン新作。夏を感じさせるグッド・エディット◎

10

Moodymann - Classics Vol.4 Unknown / UK / 2012/7/19
フリーDLアルバム「PICTURE THIS」収録トラック"PRAY 4 LOVE"がアンオフィシャルながらアナログ化!

Las Malas Amistades - ele-king

 僕の生まれ育った町は、全国でも有数のサッカーどころとして知られている。小学校に入学すると、クラスのほとんどの子供は、3年生になると学校に唯一あった運動部のサッカー部に入る。運動場にはゴールがあり、昼休みにはサッカーをやる。このようにサッカーが盛んであることは、ただその人口が多いというだけの話ではない。そのスポーツに対する考え方も多様化し、深まることも意味する。僕の生まれ育った町には「外に出さないサッカー」を目指している指導者がいる。そう、つまり、ピンチのときもDFは外に出さない。極論すれば、コーナーキックはサッカーの本質ではないという発想だ。スポーツが勝負事であることを念頭におけば無茶な考えに思われるかもしれないが、スポーツを芸術と見るなら、創造的で、前衛的な考えだ。外に出さないサッカーが目指すのは、足(あるいは肩や頭)が手のように自由に動き、ボールを自在に扱える世界だ。
 もっともこの前衛的な発想は、勝利至上主義の前で一掃される。ゆえに少年サッカーという、それでもわりと勝利至上主義から自由な領域で試される。僕はスポーツは、やるのも見るのも好きだが、オリンピックでいまひとつ面白くないのは、勝ち負けにしか脚光が当たらないことだ。柔道が良い例。僕が日本の柔道を好きなのは、僕が南米のサッカーが好きなのと同じ理由からで、そこに美学があるからだけれど、オリンピックではその美学は弱点となり、相手はそこを突いてくる。勝負事としての緊張感はあるが、美学の点では面白くない試合ばかりだ(※この話と清水エスパルスが勝てないこととは関係ありません)。

 ラス・マラス・アミスタデス(悪友という意味)は1994年、コロンビアのボゴタにて、1994年に映画科に通う学生によって結成されている。結成当時はセルジュ・ゲンズブールとキャプテン・ビーフハートに影響されたそうだが。『VICE』という雑誌が「スペイン語で歌っているヤング・マーブル・ジャイアンツみたいだ」と書いたので、そのフレーズが日本でも広がっているようだが、実際はヤング・マーブル・ジャイアンツというよりはキャレクシコに似ている。複数のアコースティック・ギターのアンサンブルを基調とした漂泊の感覚を持ったDIYミュージックだ。
 このアルバム『マレサ』は、〈オネスト・ジョンズ〉からは3枚目となるが、2007年に『パティオ・カツオ』というアルバムが3枚目のアルバムだとBBCは書いているので、BBCを信じるなら本作が4枚目となる(初期の5~6年の録音を編集した『ラ・ムジカ・デ・ラス・マラス・アミスタデス』が最初のアルバムだという)。
 〈オネスト・ジョンズ〉から初めてのリリースとなった2005年の『ハーディン・インテリオール』や『パティオ・カツオ』では、カシオトーンやドラムマシン、玩具っぽいパーカッションなどを駆使している。音楽はよりローファイで、遊び心があり、トン・ゼーっぽくもある。が、新作『マレサ』は勝手が違う。ほとんど全編に渡って、アコースティック・ギターの音(たまにハーモニカ、控え目に電子音や鍵盤、パーカッションなど)で構成されている。3分から1分ほどの短い曲が28曲も収録されている。

 アングロサクソン文化圏において、スペイン語のポップは、クンビアやキューバ音楽のような伝統的な音楽と違って、音楽としての面白味がよほどなければ受け入れられないとBBCは言っている。ラス・マラス・アミスタデスは、広く言えばトロピカリア(トロピカリズモ)の相続人でもある。スペイン語を知らない僕に歌詞の中身までは知りようもないが、レーベル側は音と歌を聴けばわかると言っている。希望とメランコリー、そして怒りが聴こえるでしょう......と。

 『マレサ』は70年代前半のカエターノ・ヴェローゾのような美しさを持っている。ラテン的な感傷が時代の生々しい風のなかから聴こえる。僕はこのアルバムの1曲聴いて、買うことに迷いはなかった。ラス・マラス・アミスタデスの音楽と同様に、サッカーや柔道も美さを忘れないで欲しい。メダルの数ばかりを報道するテレビの醜悪さを見ながらつくづくそう思った。ちなみに『マレサ』とは、雑草という意味。

 7/31火曜日の朝、突然やってきた知らせ。「オリヴィア・トレマ・コントロールのビル・ドスが逝去」
 アセンスのローカル新聞フラッグ・ポールのゲイブ・ヴォディッカがいち早くツイートすると、『ブルックリン・ヴィーガン』も「これが嘘であって欲しい」と祈りながら、アップデートをはじめた。
 そのツイートから数時間後、オリヴィア・トレマ・コントロールのオフィシャル・サイトが、「We are devastated by the loss of our brother Bill doss. We are at a loss for words.(僕達の兄弟分、ビル・ドスの逝去に打ちひしがれ、言葉を失っています)」とコメントを載せる。チャンクレットなど、他のサイトでも、どんどんアップデートがはじまり、真実として受け止めるしかなかった。

 私もその日は、何も手に付かなかったが、彼との思い出を少しでもシェア出来たらとここに書いて見る。

 オリヴィア・トレマ・コントロールを初めて知ったのは、私がLAにいた1996年のことだった。その頃、アップルズ・イン・ステレオの『ファン・トリック・ノイズメイカー』が日本のトラットリアからリリースされ、私も大好きで聴いていたので、彼らのショーに行った。そのときの対バンがミュージック・テープスとオリヴィア・トレマ・コントロールで、アップルズ・イン・ステレオを見に行ったにも関わらず、私はこのふたつの対バンにいままでにない感動を覚えた。これがきっかけで、日本ではまだ知られていない、こういった素敵なアメリカのインディ・バンドを紹介していこうとレコード・レーベルをはじめた。彼らとの出会いで、自分の進んで行く道を確認したのだ。

 彼らとたちまち友だちになった私は、彼らの住むアセンスに滞在することになる。いまでも1年にいちどは里帰りしている。

 私が住んでいたのは、ビルのバンド・メイトで、エレファント6の中心人物のウィルの家だった。そこでは毎日のようにオリヴィア・トレマ・コントロールの練習がおこなわれていた。ビルはリーダー的役割で、まわりに気を使い、心優しく、まだ英語もろくにしゃべれなかった私の面倒を見てくれた。オリヴィアにインタビューするときは彼が答えてくれた。初来日したときに、みんなで渋谷を散策したのが、つい最近のように思い出される。

 彼らは2010年再結成し、先月6月のノースサイド・フェスティヴァルでNYでプレイした。そのとき久々にビルと会って、これからのオリヴィアの活動などについて話した。「ヨーロッパは、すでに決まっているから、次は日本にも行きたいね。この(ノースサイド)次は、シカゴのピッチフォーク・フェスだから、来るなら言ってね。ゲストにいれるから」とウィンクされたのが、最後の会話になった。
 エレファント6に関する記事をまとめようと、彼用のインタヴューもすでに送り、会ったときに「インタヴュー返すの遅れてゴメン! ツアーから帰ったらすぐに返すよ」と言われたのに、返って来ないインタヴューになった。

 彼のお葬式は8/4(土曜日)アセンスの音楽会場である40ワットでおこなわれる。オリヴィアも良くプレイした馴染み深い場所だ。彼の家族は、地元の音楽家支援サイトに寄付ページ(nuci's place)を設けている。彼にお花、愛を贈りたい人は、こちらへ。 https://www.nuci.org/help/donate-online/

 ビルは、クリアな声でハーモニーを大事にする、素晴らしいシンガーだった。暫くはオリヴィア・トレマばかりを聴いてしまうんだろう。
https://m.pitchfork.com/features/afterword/8908-bill-doss/
(写真の下の文章の最後の"here"をクリックすると、ビルの素晴らしい作品集が聞ける)

 最初にアッタチした写真(01/02)は、1996年に彼らを始めてLAで見た時に撮った物。写真ケースに入れたら、くっついて離れずNYに移っても、ずっと私の部屋に飾られている。その他、アセンス時代の思い入れのある写真。書きかけのUS POP LIFE本を仕上げなければ。

 レスト・イン・ピース、ビル
 安らかにお眠り下さい。

 Rest in peace Bill Doss
 8/1/2012 Yoko Sawai

FREE DOMMUNE - ele-king

 みなさんご存じのように、来週末の8月11日には幕張メッセでFREEDOMMUNE0<ZERO> のリターン・マッチが開かれます。何でしょうか、宇川直宏の根性というか、精神力というか、ガッツというか、とにかく尋常なパワーではないことは事実ですよね。人並みはずれたエネルギーには、本当に敬服します。まったく恐ろしい男です。

 屋内でやるので、天候によって中止になることもないでしょう。昨年のことが10年前のことのようにい思われますが、あのとき泣いた人も安心して行くことができます。良かった、良かった。
 やっぱりどんなフェスティヴァルでも「第一回目」というのは特別な楽しみがあり、特別な緊張感があるものです。
 さてさて、どんなことになるのやら......

 開演前に「FREE ele-king TV Vol.21」をやることになりました。早い時間ですが、冷蔵庫で冷やしたビールをぐいっとやりながら、笑ってやってください。よろしくお願いします。それでは11日にお会いしましょう。

●17:00-18:00「FREE ele-king TV Vol.21」
"FREEDOMMUNE0<ZERO> A NEW ZERO開会宣言"
出演:野田努(「ele-king」編集長)、三田格(音楽評論家)、
松村正人(元STUDIO VOICE編集長)、磯部涼(音楽評論家) 、宇川直宏(DOMMUNE主宰)

DJ END (B-Lines Delight / Dutty Dub Rockz) - ele-king

B-Lines Delight/Dutty Dub Rockz主宰
栃木のベース・ミュージックを動かし続けて10数年。へヴィーウェイト・マッシヴなDrum&BassパーティーRock Baby Soundsystemを主宰。同時に伝説的なレコード・ショップBasement Music Recordsでバイヤーを務め栃木/宇都宮シーンの様々な下地を作った。現在はDutty Dub Rockzに所属、北のリアルなベース・ミュージックの現場を作り出すべくスタートしたパーティーB-Lines Delightを主宰している。
https://soundcloud.com/dj-end-3
https://b-linesdelight.blogspot.com/
https://duttydubrockz.blogspot.com/

B-Lines Delight 2nd Anniversary Special!!!!!No.1ダブステップ・パーティ、Back To ChillよりGOTH-TRADとENAを迎えて開催します!

B-Lines Delight×BACK TO CHILL
2012.09.29(sat) @SOUND A BASE NEST
Special Guest:GOTH-TRAD [DEEP MEDi MUSIK/Back To Chill] / ENA [IAI/Cylon/7even/HE:Digital/Horizons]
info : https://b-linesdelight.blogspot.jp/ https://club-nest.com/

DJ END REWIND CHART


1
Ryoichi Ueno - Blast - Dub
https://snd.sc/QLZlus

2
Kahn&Neek - Percy - Bandulu Records

3
Champion - Crystal Meth - Butterz

4
Djrum - Mountains Pt.1(Pedestrian's Pirate Radio Remix)/Turiya(Tessela Remix) - 2nd Drop

5
Alex Coulton - Bounce/Bounce(Pev Version) - 999YTIVIL

6
Bandshell - Dust March - Hessle Audio

7
Trusta - Feels So - Swamp81

8
Falty DL - Hardcourage - Ninja Tune

9
Kowton - Des Bisous - Pale Fire

10
Outboxx - Ep - Immerse

Dum Dum Party 2012 - ele-king

 7月1日、〈河口湖ステラシアター〉で開かれた「Dum Dum Party 2012」は、ビッグ・フェスティヴァルが当たり前のこのご時世で、原点回帰をうながすような内容だった。

 Dum Dum Llpがヴァセリンズを呼んだ理由は、好きだからだ。2009年に設立されたこのイヴェント会社の名前は、ヴァセリンズの代表曲"Dum Dum"から取られている。「当初からいくつかバンドを呼びたいと思っていたけれど、まさかこんなに早く彼らを呼べると思っていなくて、早い段階で最終地点に着いてしまったような感じがしているね(笑)」と、今回の招聘について、Dum Dum Llp代表の富樫陸氏は話してくれた。
 今回のイヴェントのプロモーターでもあるOffice Glasgowの安永和俊氏はこう語る。「もちろん商業的に成功しなくてはいけない部分もあるけれど、まず企画する側が好きなバンドを呼んで、バンドを好きな人たちが会場に集まる。そして日本のことが好きなアーティストがライヴをする。ハッピーでしかないからね。当たり前のようだけど、それがいちばんでしょ」
 Corneliusの小山田圭吾氏は今回のイヴェントについて、富樫氏に向かいこう言ったそうだ。「これ、完全に富樫君のイヴェントだよね(笑)」

 日本の大きなイヴェント(フェスティヴァルなど)は、このようなシンプルなモチヴェーションを失ってはいないだろうか。ミュージック・フェスティヴァルとはそれを好きな人たちが好きな文化のためにはじめたもので、その主役は"音楽"と"リスナー"だったはずだ。
 僕も自分でイヴェントを開催したことがある。現在もいくつかのイヴェントのお手伝いをする機会があるので、企画する側の苦労などは(その規模によってかなり違うが)、ある程度は理解はしているつもりだ。自分が思っているようにアーティストは集まらないし、集客などはとても不安だった。経済的なリスクがつねにある。
 しかし、「イヴェントをなぜ企画するのか」というもっとも大切な命題にぶつかったとき、意外と答えは簡単に見つかる。好きだからやる。イヴェントは、その音楽を輝かせる手段、ルーティーンでは決して味わえない自由な空間を創造することなんだと僕は思う。
 ここ5年くらい、僕も毎年のようにいろいろなフェスティヴァルに出かけている。近年はそのイヴェントに「参加している/共有している」というよりも、「普段見れないアーティストを見に行っている」という感覚のほうがどうしても強い。いわゆるショーケースとして受け止めている。そういう意味で7月1日の「Dum Dum Party 2012」は、自分も忘れていたフェス的なものへの初期衝動を喚起させてくれたのだった。

 当日は、ヴァセリンズの"Dum Dum"と相対性理論の"Qkmac"が収録された、限定のスプリット 7インチ・シングルが発売されていた(もちろん即ゲット)。そうそう、この日出演者はスティーヴィー・ジャクソン、ヴァセリンズ、相対性理論、ゲストに小山田圭吾。流行やビッグネームに頼らない、企画側の愛情がわかる、面白い組み合わせだったと思う。だいたい平日の月曜を翌日に控えた日曜日の夕方から山中湖でやるイヴェントには、本気で好きな人しか来ないだろう(笑)。

 スティーヴィー・ジャクソンはベル・アンド・セバスチャンよりも内省的で、もの哀しくも、やさしく包み込むような歌声が良かった。山地特有の天候が独特の雰囲気を醸し出し、ちょっとグラスゴーの風景を空想してしまった。

 スティーヴィー・ジャクソンがリード・ギターとして入ったヴァセリンズは、フランシス・マーキーのチャーミングな赤いスカートが華々しかった。ところ"Oliver Twisted"で演奏がはじまると、そんな可愛い印象は一転。ファズのかかった挑発的なギター・サウンド、ユージン・ケリーとフランシス・マーキーによる男女ツイン・ヴォーカルに乗せられながら、ステージは矢継ぎ早に展開。"Molly's Lips"では小山田圭吾と安永和俊が登場、ホーンを演奏した。"Son of A Gun"あたりから座っていたリスナーも立ち上がり、踊りはじめた。"Dum Dum"を演奏する前のMCで、Dum Dum Llp関係者などに感謝の言葉を述べた。会場は拍手に包まれ、"Dying For It"がはじまった。

 相対性理論は、リヴァーヴのなかで溶け合うふたつのドラムが躍動的だった。ボサノヴァ風のアレンジや、やくしまるえつこのヴォーカリゼーションは魅惑的だった。小山田圭吾をギターに迎えたその日最後の曲、"ムーンライト銀河"は白眉だった。甘いノイズ・ギターは、どこまでも遠くへ続くようだった......。それは企画側の愛情のこもった気持ちの良いフェスティヴァルに相応しい幕引きだった......。

Moritz Von Oswald Trio - ele-king

 パレ・シャンブルグの再結成――東京公演を楽しみしていた私は前の週は気もそぞろだったのに、なぜか当日にはすっかり忘れ、幕張から代官山をハシゴする「オヤジ殺し」はまぬがれたものの、忘却という(かボケというか)別の意味のオヤジ殺しにわが家でくつろぎながら苛まれていたことにさえ気づかない有様だったが――に参加しなかったモーリッツ・フォン・オズワルドに、ヴラディスラヴ・ディレイ名義のサス・リッパティとサン・エレクトリックのマックス・ローダーバウアーとを加えたトリオの3作目。『Fetch(フェッチ)』とは「連れて来る」の意で、派生的に「(聴衆などを)魅了する」という語意を含む(『ジーニアス英和辞典』)が、ファーストの『Vertical Ascent』(2009年)、昨年の『Horizontal Structure』に続く本作でも、長尺のきわめて抽象的なアンサンブルを聴かせるトリオの基本路線に異同はない。つまるところ、ジャズのスタイルを借りたテクノをダブで再生したミニマル・ミュージック。ゼロ年代ダンス・カルチャーの共通言語のひとつであったベーシック・チャンネルの方法論を展開した、ほとんど至高の職人芸ともいえる細部を味わえるかいなか、そこにこのアルバムを聴く醍醐味がある、と書くと、またぞろオヤジ殺しかよ、とかいわれそうだが、とはいっても、まるで耳の毛細血管を流れる血の音を聴くように細かく脈動する、聴くことの楽しみを鼓舞する音楽を無視する道理はない。

 たとえば、冒頭の"Jam"にはトランペットをフィーチャーしている。ところがそれはジャズでいうソロイストの役目を担わない。MVOTは唯一のメロディ楽器を煙幕の向こうに追いやり、フューチャー・ジャズ的な構成要素と、パーカッション、シンセサイザー、ノイズ、エレクトリック・ベースのハーモニクスなどとの位置関係を転倒(ダブ)させることで、簡単にそこに収斂させはしない。さきほど、「ジャズのスタイル」と書いたが、援用されているのは即興の方法論と合奏の形態であり形式ではない。ここでは、リズムの磁場/重力に対置されたワウモノすべてがスポンテイニアスにソロをリレーしていく。その縦軸の力に対する横軸の運動はダンスミュージックそのものであるばかりでなく、ジャズの、とくにプレ・フュージョン期からフューチャー・ジャズまでの底流ともいえるエレクトリック期以後のマイルスのモーダルな手法を彷彿させる。つまり、演奏は自由に展開する(ようにみえるが)グルーヴとモードが舫となる。その綱引きこそファンクネスである。MVOTはテクノでありミニマルでありダブであるが、いずれにも偏らず、むしろその綜合として、ジャズやファンクの"原理"に接近していったのは、人名をグループ名に冠するというジャズ的な(と断定することができないけれども)命名であらかじめ表明されていた......というか、私はここでようやく思い出したが、そんなことは"Vertical Ascent(垂直上昇)""Horizontal Structure(水平構造)"といったタイトルにとっくに掲げていたのでした。

 だったら『Fetch』はどうなのかといえば、言葉の意味は前段に書いた通り。ところが、"Pattern""Structure"(『ライヴ・イン・ニューヨーク』では"Nothing")に番号を振っただけのそっけなかった曲目には『Fetch』では"Jam""Dark""Club""Yangissa"と、テーマないしは情景を思わせるタイトルが付されている。"Jam"はジャム・セッションを、"Dark"はヘヴィなグルーヴがとぐろを巻く曲のムードを指すのだろうし、四つ打ちの"Club"はタイトルの通りのクラブ仕様。三連符のボトムと打楽器の刻みと遠くに鳴るホーンがエキゾチックな幕引きの"Yangissa"はMVOTがこれまでも試みてきた(『Vertical~』の"Pattern 3"など)ワールドミュージック的手法の拡張版だが、ヴィラロボスやジョン・ハッセルを思わせる(とすると、"Jam"のハーモニクスの使い方はどう考えても『Possible Music』あたりのパーシー・ジョーンズを意識しているとしか思えない)ムードにはしかし、ここではないどこかに向かう浮ついたところはない。むしろ、すべての要素を繋留するリズムこそ彼らの真骨頂であり、MVOTの磁場が「連れて来た」記号はその上をゴースト・ノートとして彷徨するのである。
 そういえば、"Fetch"には「生き霊」の意味もあったのだった。
 Rhythm & Fetch...

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