ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. lilbesh ramko - Ramko Helvetica | リルベッシュ・ラムコ
  2. The Fall ——上村彰子著『ザ・フォールの素晴らしき世界』が刊行
  3. Smith & Mighty ——ブリストル・サウンドのオリジネイター、スミス&マイティが久しぶりにアナログ盤をリリース
  4. Eli Keszler and Alpha Maid ──〈MODE〉が贈る2026年最後のプログラム、イーライ・ケスラーとアルファ・メイドの来日公演
  5. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  6. R.I.P. 近藤等則 月に吠えたラッパ極道 ──トランペッター近藤等則の格闘半世紀
  7. Arab Strap - Half-Told Tales | アラブ・ストラップ
  8. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  9. Columns #15:「すべてのロックンロールに反対してやる」 ──『UKインディ・ロック入門』刊行のお知らせ
  10. Eden Aurelius - Entre Nous / emer ft. Ugnė Uma - You and Me | エデン・オーレリウス、エメル、ウグネ・ウマ
  11. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  12. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  13. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  14. ゲーセン波乱万丈の100年史
  15. ジャパニーズ・ヒップホップ第二世代──あるDJの証言
  16. Protomartyr - Hotel Usona | プロトマーター
  17. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  18. Helen - Linda's Head | ヘレン
  19. METHOD MOTEL - @名古屋・栄CENTRAL
  20. Li Yilei Japan Tour 2024 ——中国人サウンドアーティスト/作曲家リー・イーレイの初来日ツアー決定

Home >  Columns > Dum Dum Party 2012- 好き、好き、大好き、これ重要

Columns

Dum Dum Party 2012

Dum Dum Party 2012

好き、好き、大好き、これ重要

――Dum Dum Party 2012で考えたこと

文:菊地佑樹  写真:熊沢 泉 Aug 01,2012 UP

 7月1日、〈河口湖ステラシアター〉で開かれた「Dum Dum Party 2012」は、ビッグ・フェスティヴァルが当たり前のこのご時世で、原点回帰をうながすような内容だった。

 Dum Dum Llpがヴァセリンズを呼んだ理由は、好きだからだ。2009年に設立されたこのイヴェント会社の名前は、ヴァセリンズの代表曲"Dum Dum"から取られている。「当初からいくつかバンドを呼びたいと思っていたけれど、まさかこんなに早く彼らを呼べると思っていなくて、早い段階で最終地点に着いてしまったような感じがしているね(笑)」と、今回の招聘について、Dum Dum Llp代表の富樫陸氏は話してくれた。
 今回のイヴェントのプロモーターでもあるOffice Glasgowの安永和俊氏はこう語る。「もちろん商業的に成功しなくてはいけない部分もあるけれど、まず企画する側が好きなバンドを呼んで、バンドを好きな人たちが会場に集まる。そして日本のことが好きなアーティストがライヴをする。ハッピーでしかないからね。当たり前のようだけど、それがいちばんでしょ」
 Corneliusの小山田圭吾氏は今回のイヴェントについて、富樫氏に向かいこう言ったそうだ。「これ、完全に富樫君のイヴェントだよね(笑)」

 日本の大きなイヴェント(フェスティヴァルなど)は、このようなシンプルなモチヴェーションを失ってはいないだろうか。ミュージック・フェスティヴァルとはそれを好きな人たちが好きな文化のためにはじめたもので、その主役は"音楽"と"リスナー"だったはずだ。
 僕も自分でイヴェントを開催したことがある。現在もいくつかのイヴェントのお手伝いをする機会があるので、企画する側の苦労などは(その規模によってかなり違うが)、ある程度は理解はしているつもりだ。自分が思っているようにアーティストは集まらないし、集客などはとても不安だった。経済的なリスクがつねにある。
 しかし、「イヴェントをなぜ企画するのか」というもっとも大切な命題にぶつかったとき、意外と答えは簡単に見つかる。好きだからやる。イヴェントは、その音楽を輝かせる手段、ルーティーンでは決して味わえない自由な空間を創造することなんだと僕は思う。
 ここ5年くらい、僕も毎年のようにいろいろなフェスティヴァルに出かけている。近年はそのイヴェントに「参加している/共有している」というよりも、「普段見れないアーティストを見に行っている」という感覚のほうがどうしても強い。いわゆるショーケースとして受け止めている。そういう意味で7月1日の「Dum Dum Party 2012」は、自分も忘れていたフェス的なものへの初期衝動を喚起させてくれたのだった。

 当日は、ヴァセリンズの"Dum Dum"と相対性理論の"Qkmac"が収録された、限定のスプリット 7インチ・シングルが発売されていた(もちろん即ゲット)。そうそう、この日出演者はスティーヴィー・ジャクソン、ヴァセリンズ、相対性理論、ゲストに小山田圭吾。流行やビッグネームに頼らない、企画側の愛情がわかる、面白い組み合わせだったと思う。だいたい平日の月曜を翌日に控えた日曜日の夕方から山中湖でやるイヴェントには、本気で好きな人しか来ないだろう(笑)。

 スティーヴィー・ジャクソンはベル・アンド・セバスチャンよりも内省的で、もの哀しくも、やさしく包み込むような歌声が良かった。山地特有の天候が独特の雰囲気を醸し出し、ちょっとグラスゴーの風景を空想してしまった。

 スティーヴィー・ジャクソンがリード・ギターとして入ったヴァセリンズは、フランシス・マーキーのチャーミングな赤いスカートが華々しかった。ところ"Oliver Twisted"で演奏がはじまると、そんな可愛い印象は一転。ファズのかかった挑発的なギター・サウンド、ユージン・ケリーとフランシス・マーキーによる男女ツイン・ヴォーカルに乗せられながら、ステージは矢継ぎ早に展開。"Molly's Lips"では小山田圭吾と安永和俊が登場、ホーンを演奏した。"Son of A Gun"あたりから座っていたリスナーも立ち上がり、踊りはじめた。"Dum Dum"を演奏する前のMCで、Dum Dum Llp関係者などに感謝の言葉を述べた。会場は拍手に包まれ、"Dying For It"がはじまった。

 相対性理論は、リヴァーヴのなかで溶け合うふたつのドラムが躍動的だった。ボサノヴァ風のアレンジや、やくしまるえつこのヴォーカリゼーションは魅惑的だった。小山田圭吾をギターに迎えたその日最後の曲、"ムーンライト銀河"は白眉だった。甘いノイズ・ギターは、どこまでも遠くへ続くようだった......。それは企画側の愛情のこもった気持ちの良いフェスティヴァルに相応しい幕引きだった......。

Profile

菊地佑樹/Yuki Kikuchi菊地佑樹/Yuki Kikuchi
1990年生まれ。2011年からSTYLE BAND TOKYOにスタッフとして参加。2012年よりライヴ・イヴェント「BATTLE AnD ROMANCE」を自らオーガナイズ。春先には平成生まれだけが集まれる新しいパーティ、BOYS & GIRLS CLUBを開催予定。

COLUMNS