「Dom」と一致するもの

Rinbjö - ele-king

 菊地成孔が菊地凜子のアルバムをプロデュースすると聞いたとき、漠然とヴォーカル・ジャズのようなものを想像していたが、実際に発表されたRinbjö『戒厳令』は、かなりエグいヒップホップのアルバムだった。SIMI LABの面々やI.C.I、トラックにSHIRO TANAKAが参加するなど、JAZZ DOMMUNISTERS『BIRTH OF DOMMUNIST(ドミュニストの誕生)』の延長としても聴ける。とはいえ、もちろんそれだけにとどまらず、DJ TECHNORCHによるハードなガバのトラックがあったり、サウンドは多彩だ。

 菊地凜子が菊地成孔にプロデュースを頼んだとき、「エロくてエグいものを」という要望があったらしい。たしかに、一聴して「エグい」と、次いで「エロい」と思った。アルバム全編を貫く、頽廃的でセクシーなリリックのことではない。アルバム冒頭、“戒厳令 ft.菊地一谷”のトラックがエグいと思った。尖ったシンセがうねっていると思うと、ヴォーカルとベースが入ってくる。ヴォーカルはシンプルだが、なんだか全体的に不安定。同時に鳴らされるタメの効いた変則的なクラップ音が気持ち良くて、いい感じに体が痙攣してくる頃に、ブレイクで強いビートが来て、安心して頭が振れる。しかし、その背後にはシンセが飛び交っているので、どこか分裂的。菊地一谷(QN)のラップは、当然のことながら、アクセントの置きかたにエグさがある。これは、デフォルトだ。そして、その好き勝手に振る舞っているサウンドと、ヴォーカル&ラップが妙に溶け合っている感じが、とてもエロティックである。
 同じくSHIRO TANAKAがトラックメイクをしている“反駁 ft. Paloalt”は、“戒厳令”ほど複雑なリズムではないが、やはり音の数が多くて、シリアスながら楽しい。韓国人ラッパーのPaloalt(Hi-Lite Records)のラップは、後半に3連で盛り上がってくるところでテンションがあがる(3連で押していく感じに、同じ韓国のMC Snyperを思い出した)。エレキギターも新鮮に響いて良い。その他にも、SHIRO TANAKAのトラックを筆頭に、QN(“sTALKERs ft. N/K”“アニー・スプリンクル”)やHi-Spec(“MORNING ft. N/K, I.C.I”)、三輪裕也(“さよなら ft. OMSB”)など、本作のヒップホップのトラックは、音色もゆたかだし、音の配置のされかたも微妙なズラしが効いているし、展開もあるし、総じてエグさとエロさがある。エロさはともかく、このエグいビートの感覚がないと、もうしんどいと思うようになった。ヒップホップのトラックの基準は、ここまで来ている。サウンド解析については(サウンド解析以外についても)、TABOOのウェブサイトの自己インタヴューが詳しいので参照のこと。

 それで、エグさとエロさなのだが、これはなにかと言えば、やはりズレの感覚なのだと思う。ビートを聴きながら、そのビートに対して少しだけズレてみせる感覚。イクと見せかけてイカない素振り。まわりからすると、思わせぶりで勝手気ままな態度。かと思えば、周囲をドン引かせるくらいの変態性――要するに、マイナーな振る舞いである。そしてその意味において、なるほど菊地凜子という人は、正しくマイナーな存在である。  そもそも、Rinbjö(リンビョー)という名前の由来となった、地元でのあだ名が淋病だった、という嘘か本当かわからないエピソード(TBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波」より)が、まず周囲をドン引きさせるに十分だ。国際的な女優になり染谷将太と結婚してもなお日本に馴染んでいないような存在は、エグくてエロいトラックと相性が良くないわけがないのだ。一方、SIMI LABもSIMI LABで、マイナーな存在として社会を生きている。OMSBやDyy PRIDEは以前、ダブルでありながら日本語しか話せないことに対する劣等感を語っていたことがあった。まさに「普通ってなに? 常識ってなに?」(SIMI LAB “Uncommon”)という感覚が、彼らには貫かれている。ラップは、必ずしもマイノリティの表現であるべきだとは思わないが、マイナーな言葉であるべきだとは思う。これまで歌われてこなかったような言葉をあっけなく音楽として成立させてしまうのがラップという表現に他ならない(だからこそ、「だよねー」「だよねー」というオウム返しも歌詞として成立した)。そして、そういう言葉使いを突きつけられたとき、リスナーは「エグいなあ」と思うのだ。マイナーな存在としてのSIMI LABのラップとトラックは、そういうエグさに満ち満ちていた。
 だとすれば、本作のハイライトのひとつは間違いなく、3 bitchesによるマイクリレー“3b ft. MARIA, I.C.I”だろう。男性中心主義的なヒップホップにおいて、フィメール・ラッパーはつねにマイナーな存在でありつづけたが、この曲はさらに段階が進んで、日本語と英語を操る/操りきれないバイリンガルのbitchesの言葉が乱れ飛んでいる。しかも、途中にはジャパングリッシュで交わされる会話が延々と繰り広げられている。これにはアメリカ文学/ポピュラー音楽研究者の大和田俊之も関わっているみたいだが、これが素晴らしい。そういえば僕も、10年くらい前に渋谷のマクドナルドでこういう女子の会話を聞いたことがある。インターナショナル・スクールの仲間か、会話のなかでナチュラルに英語が混ざってくる感じが、とてもオシャレに響いた。マクドナルドの深夜バイトに、アジア系とアフリカ系が多くなってきた頃である。この、目を凝らせばどこにでもあるような特異な言葉が、音楽の言葉として成立したことは個人的にはけっこう感慨深い。まあ、いま考えれば、SIMI LABでほぼ達成されていたわけではあるが。あと、トリリンガルのTAKUMA THE GREATとか。
 このようなマイナーな言葉が――ここではとくに異言語のミックスされた言葉が――なにを撃つかと言えば、やはりドメスティックなカルチャーだろう。“空間虐殺 ft. オダトモミ”は、「地球の終わりなんて救うわけねえだろ、バーカ!」と(ややステレオタイプではあるが)セカイ系的なものを批判しつつ、「キモオタ撲滅するエージェンシー」を遂行する。DJ TECHNORCHのトラックはオタク文化にも親和性が高いハードコアなテクノだが(実際、DJ TECHNORCHには、オタク文化とハードコア・テクノの関係を論じた著作がある)、ここでは、その「強シンクロ」(菊地成孔・大谷能生『アフロ・ディズニー』)的なビートが攻撃性に転じているように聴こえるからおもしろい。ドメスティックなカルチャーは、内側と外側から攻撃されている。クールジャパンの悪口を言う気はあまりないが、どちらにエグさとエロさを感じるかと言えば、もちろんマイナーなズレの振る舞いであり、個人的にはそちらを好む。

 ちなみに言えば、べつにオタク文化が悪いわけではなくて、どんな文化であろうがガラパゴスがいけないのだと思う。自己インタヴューでの菊地成孔の言葉を借りれば、「マッチョな狭い世界での腕比べ。頭の固いファンの結束と消費。ジャズミュージシャンから分離した者として言わせてもらうならば、それは音楽の死を意味する」ということか。とりわけ、曲中で「切り裂けクールジャパン」と言われているように、異国とのミックスが乏しいカルチャーは寂しい。だから、ここで攻撃されているのは、成熟を避けてガラパゴス化したカルチャー全般のことなのだと思う。したがって、メッセージは「黙って割礼の列にお並びくださーい!」ということになる。
 盆踊りからオタ芸まで、ズレのないビートに合わせて、ズレのない振付をするのは、もう飽きた。マイナーな存在たちとともに、周囲とのズレに満ちたマイナーなステップで踊るほうがいい。そこには、エグさとエロさがある。クールなジャパンよ、戒厳令の夜が来たぞ。

ASHRA - ele-king

Moduleでの多国籍パーティ「Laguna Bass」でレジデントを務め、同時にトラック制作をスタート。14年NO/Visionist EPでIRMA recordsよりデビュー。09~2年間Jetset RecordsでのDJチャートを担当。6月位から新たにレギュラーパーティーやる予定です。徒然ここをチェック。
https://soundcloud.com/ashra-3
facebook.com/ashradj

3/16(月)TBA@Le Baron
4/25(土)TBA@Solfa
5/16(土)No Surface@ DJ BAR HIVE(小倉)

王道にDJで良くかけている/かけたいTOP10チャート

Frank Bretschneider - ele-king

 フランク・ブレットシュナイダーは東ドイツ出身の音楽家・映像作家である。1956年生まれで、あのカールステン・ニコライらとともに〈ラスター・ノートン〉の設立に関わっている人物だ(フランク・ブレットシュナイダーとオラフ・ベンダーが1996年に設立した〈ラスター・ミュージック〉と、カールステン・ニコライの〈ノートン〉が1999年に合併することで現在の〈ラスター・ノートン〉が生まれた)。

 ブレットシュナイダーは1980年代より音楽活動をはじめている。1986年にAG Geigeを結成し、1987年にカセット・アルバムをリリースした。いま聴いてみると奇妙に整合性のあるパンク/エレクトロ・バンドで、現在の彼とはまるでちがう音楽性だが、そのカッチリとしたリズムに後年のブレットシュナイダーを感じもする。その活動は東ドイツのアンダーグラウンドの歴史に大きな影響を残したという。
 そして1999年から2000年代にかけて、正確/複雑なサウンド・デザインと、ミニマルなリズム構造による「数学的」とも形容できるグリッチ/マイクロスコピックな作風を確立し、あの〈ミル・プラトー〉や〈12k〉などからソロ・アルバムをリリースすることになる。コラボレーション作品も多く、たとえば〈ミル・プラトー〉からテイラー・デュプリーとの『バランス』(2002)、〈12k〉からはシュタインブリュッヘルとの『ステータス』(2005)などを発表した(どちらも傑作!)。カールステン・ニコライ、オラフ・ベンダーとのユニット、シグナルのアルバムも素晴らしいものだった。また昨年(2014年)もスティーヴ・ロデンとの競演作(録音は2004年)を〈ライン〉からリリースした。

 2000年代中盤以降のソロ・アルバムは、おもに〈ラスター・ノートン〉から発表している。『リズム』(2007)や『EXP』(2010)などは、反復するリズム構造と、複雑なグリッチ・ノイズのコンポジションによってほかにはない端正なミニマリズムが実現されており、レイト・ゼロ年代を代表する電子音響作品に仕上がっている傑作だ。また、2011年にコメット名義でリリースした『コメット』(〈Shitkatapult〉)もフロア向けに特化した実に瀟洒なミニマル・テクノ・アルバムである。
 2013年、〈ラスター・ノートン〉からリリースした『スーパー.トリガー』は、カールステン・ニコライとオラフ・ベンダーのダイアモンド・ヴァージョンとも繋がるようなエレガント/ゴージャズなエレクトロ・グリッチ・テクノ・アルバムである。いわば「音響エレクトロ」とでもいうべきポップでダンサンブルな音響作品であり、彼の新境地を拓くものだった。

 そして、本年リリースされた新作において、その作風はさらに一転する。サージ・アナログ・シンセサイザーなどモジュラー・シンセサイザーを鳴らしまくったインプロヴィゼーション/エクスペリメンタルなアルバムに仕上がっていたのである。音の雰囲気としては2012年に〈ライン〉からリリースされた『Kippschwingungen』に近い(東ドイツのラジオ/テレビの技術センターRFZで、8台のみ開発されたという電子楽器Subharchordを用いて制作された)が、本作の方がよりノイジーである。アルバム全8曲41分にわたって、アナログ・シンセサイザーの電子音のみが横溢しており、電子音フェチ悶絶の作品といえよう。
 制作は2014年7月にスウェーデンはストックホルムのEMSスタジオに滞在して行われたという。じつはすでに2017年7月に、EMSでモジュラー・シンセを駆使する動画が公開されていたので、まさに待望のリリースでもあった。

 アルバム・タイトルはドイツ語で「形式と内容」という意味で、カオス(=ノイズ)を操作して、デザイン(形式化)していくという意味にも読み込める。ジャケットの幾何学的なアートワークや、アルバム・リリースに先駆けて公開されたMVにも、そのような「形式と内容=デザインとカオス」の拮抗と融合と反復とズレを感じることができるはずだ。

 この「フランク・ブレットシュナイダーによるモジュラー・シンセサイザーのみのアルバム」というある意味では破格の作品が成立した過程には、近年のモジュラー・シンセによるコンクレート・サウンドの流行も関係しているだろう。町田良夫からトーマス・アンカーシュミット、マシーン・ファブリックまで、サージなどのモジュラー・アナログ・シンセサイザーを用いた音楽/音響作品がひとつのトレンドを形成しているのである。
 しかし、そこはサイン派やホワイトノイズを用いて、リズミックかつ建築的なウルトラ・ミニマル・テクノを作り続けてきた電子音響・グリッチ界の「美しきミニマリスト」、もしくは「世界のミニマル先生」、フランク・ブレットシュナイダーの作品だ。「ツマミとプラグの抜き差しによるグルーヴ」とでもいうべき電子音が自由自在に生成変化を繰り返すのだが、そのフリーなサウンドの中にも、どこかカッチリとしたリズム/デザインを聴き取ることができるのである。とくにシーケンスとノイズを同時に生成させる4曲め“Free Market”にその傾向が随所だ。また、5曲め“Funkstille”や6曲め“Data Mining”などは、エレクトロニカ的なクリッキーなリズムも感じさせるトラックである。
 カオスと形式(=ノイズとリズム)に着目して聴くと、複数の音のパターンがモチーフになって変化していることも聴き取れてくる。その傾向は、1曲め“Pattern Recognition”、8曲め“The Machinery Of Freedom”に特徴的に表れている。いくつもの音のエレメントが反復・変化するモチーフとして展開していくさまが手にとるように(?)わかるだろう。
 そう、このアルバムで、フランク・ブレットシュナイダーが鳴らしている電子音は、インプロヴィゼーションであっても、どこかデザイン的なのだ。たとえば、3曲め“Fehlfunktion”のように極めてノイジーなトラックであっても、そこにデザイン化されたリズム(形式化)を聴取することが可能である。

 前作『スーパー.トリガー』における「80's的なゴージャズなエレクトロとグリッチ・ビートの融合」が2013年~2014年のモードだったすると、本作の情報量豊富なフリー・インプロヴィゼーション的電子ノイズの生成・運動感覚は、紛れもなく2015年のモードだ。もしかすると、現在のわれわれの耳は、電子音楽/音響の中にあるマシニックな形式性を侵食する音響の運動性・肉体性のようなものを求めているのかも知れない。その意味で、まさに「いま」の時代ならではのアナログ・シンセサイザー・アルバムである。現在進行形の電子音楽マニア、全員必聴と断言してしまおう。

 最後に。本作に関係する重要なプロジェクトして、フランク・ブレットシュナイダーがピアース・ワルネッケ((https://piercewarnecke.blogspot.jp/)と共同制作をした同名インスタレーション作品を挙げておこう(ふたりはベルリンで開催されたエレクトロニック・ミュージック・フェスティバル“CTM”でもパフォーマンスを披露したという)。このインスタ作品は、本作を思考する上で重要な補助線を引いてくるはずである。

SINN + FORM // Preview from Pierce Warnecke on Vimeo.


Ryoko Akama - Bruno Duplant - Dominic Lash - ele-king

 〈アナザー・ティンブレ〉は英国の即興/実験音楽レーベルであり、現在、この種のシーンにおいて大きな存在感を示しているレーベルでもある。その横断領域は広く、即興から電子(電気)ノイズ、現代音楽までも射程に入れており、非常に個性的なレーベル・キュレーションが行われている。
 なにしろレーベル初期にはデレク・ベイリーらとミュージック・インプロヴィゼーション・カンパニーで活動したヒュー・デイビスの作品集『パフォーマンス 1969 - 1977』や、音素材を極限まで切り詰め、聴覚/知覚への自覚的なプロセスを浮上させていく静寂の音響・音楽、ヴァンデルヴァイザー楽派の6枚組ボックス・セット『ヴァンデルヴァイザー・アンド・ソー・ヴァイタ―』までもリリースしているのである。また日本のICCで作品が展示された英国の実験音楽家スティーヴン・コーンフォードのアルバム(コラボレーション含む)も多数リリースされている。
 そう、いわば即興/実験/作曲の境界線を越えていくようなレーベルなのだ。ある意味ではマイケル・ナイマン著『実験音楽-ケージとその後』の思想を受け継ぐレーベルともいえよう。

 昨年2014年もジョン・ティルバリー、フィリップ・トーマスらの演奏によるモートン・フェルドマン『ツゥー・ピアノ・アンド・アザー・ピース 1953-1969』もリリースするなど、即興、ノイズ、電子音楽、現代音楽まで幅広く、かつ大量のリリースを続けていた(個人的にはベルリン・シリーズと銘打ったアーティスト・コラボレーション・シリーズにも注目)。また、英国のエクスペリメンタル・ミュージック・マガジンの老舗『ワイアー』誌の2014年トップ50内に選出されたマグナス・グランベルク率いるスクーゲン『ディスペアズ・ハッド・ガヴァンド・ミー・トゥー・ロング』と、ローレンス・クレイン『チェンバー・ワークス 1992 - 2009』も重要な作品だ。10人の演奏家によるスクーゲン(日本からは中村としまる、笙の石川高が参加)は、コンポジションとインプロヴゼーションを明確なコンセプトとともに両立させ、ローレンス・クレインは室内楽であった。両作とも即興と作曲への境界を越境している。インプロヴィゼーション/コンポジションが同時生成するようなレーベルの新しい志向=思考が明確になってきたのである。

 今回紹介するリョーコ・アカマ(VCS3シンセサイザー)、ブルーノ・デュプラント(パーカッション、トーン・ジェネレーター)、ドミニク・ラッシュ (ダブル・ベース、クラリネット、ラップトップ、パーカッション)らによる『ネクスト・トゥ・ナッシング』(2014)もまた純白のミニマリズムでインプロヴィゼーション/コンポジションを越境する素晴らしいアルバムである。まずは各メンバーのことについて簡単に書いておこう。
 リョーコ・アカマはAGFらとのユニット(The Lappetites)、カフェ・マシューズ、そしてエリアーヌ・ラディーグ(!)などとのコラボレーションでも知られる電子音楽家(https://www.ryokoakama.com/)。この『ネクスト・トゥ・ナッシング』でリョーコ・アカマが演奏するVCS3は、70年代にキング・クリムゾンやピンク・フロイドなどのプログレ・バンドに導入されたアナログ・シンセサイザーだが、本作では、それら伝説的なバンドの使い方とは異なり、静謐な音の層/霧のような音響が持続している(VCS3は、昨年発表のソロ・アルバム『コード・オブ・サイレンス』でも用いられていた)。

 そして、ブルーノ・デュプラントは精力的なリリースを続けるフランス人アーティストで、コントラバス、パーカッション、コンピューターなどを駆使したミニマルな作品/演奏を多数送り出している。自身もレーベル〈リゾーム〉を運営している(https://rhizome-s.blogspot.co.uk/)。ドミニク・ラッシュ はコントラバス奏者。彼は〈アナザー・ティンブレ〉からリリースされているヴァンデルヴァイザー楽派のアントワーヌ・ボイガーの作品『カントル・カルテット』などにも参加している(https://dominiclash.blogspot.jp/)。
 インタヴューなどを読むと、このアルバムを主宰したのはどうやらブルーノ・デュプラントのようだ。彼はこれまでもリョーコ・アカマなどとコラボレーションを行ってきたわけだが、その経験を踏まえつつ、さらに新しい音楽を生み出したかったようである。私見だが、このアルバムにおいてはトリオ編成における新しいミニマリズム/アンサンブルを追求しているように思える。

 1曲め“ア・フィールド、ネクスト・トゥ・ナッシング”はブルーノ・デュプラントによる曲で、淡い音色の電子音が持続する静謐な楽曲(このトラックが本アルバムのベーシックとなっているのではないか?)。持続とピッチの繊細なコントロール/コンポジションが素晴らしい。2曲め“グレード・ツー”はリョーコ・アカマの曲。透明な持続音に、ベースの点描的な音。鐘のような響き。電子音の層による静謐な音響アンサンブルだ。3曲め“スリー・プレイヤーズ、ノット・トゥギャザー”はドミニク・ラッシュの曲で、鐘のような響きから幕を開ける。日本の雅楽のような持続や、クリッキーなリズムも刻まれていく。そのうえフィールド・レコーディングされた風や空間のような音(多分、電子音主体のノイズではないかと思う)が鳴り響くのだ。この曲では、さらに音の層が増えており、即興/コンポジションのあいだに、音の揺らめきが生まれている。ラスト4曲めは、リョーコ・アカマによる“グレード・ツー・エクステンデッド”だ。電子音響的な高周波のチリチリしたサウンドが持続し、低音部分は震えるような持続をつづける。

 ブルーノ・デュプラントは「自分はヴァンデルヴァイザー楽派の音楽家ではない」と語っているが、たぶん、彼の目指すべき音は、サウンドのラディカリズムをミニマリズムとアンサンブルとコラボレーションによって生成していく点にあるのではないか。
 静寂と持続の音楽空間を誇る本作は、ほとんどファイル交換によって作り上げられたという。本作では演奏家は、同じ場所・時間で演奏・録音をしていない。しかし実際に会うことなく演奏・録音された本作は、その距離の効果によって独自のサウンドの磁場を形成しているように思えるのだ。反応のアンサンブルではなく、時空間を超えた「応答」のアンサンブル。リアルタイムの反応ではない以上、作曲と即興の境界線は無化していく。
 変わりゆく/移ろいゆく音響の饗宴。その古楽の一瞬の響きを引き延ばしたかのような響き。日本の能楽のような静寂と緊張。それは現代音楽的なコンセプチュアルなミニマリズムではなく、音自体の生成に拘る新しいミニマリズムといえよう。90年代と00年代の即興/音響シーンを経由した2010年代の音楽。ポスト・インプロヴィゼーションから新しいミニマリズムへ。そして、その音は、とても澄みきった響きを獲得しているのだ。

 最後に。ミニマルなイメージのジャケット写真もブルーノ・デュプラントによるものだという。このアルバムの音楽/音響を象徴する見事なアートワークである。

C.R.A.C. - ele-king

 このところ安部政権の好戦的な態度ばかりを見せつけられているせいか、戦意も失せるふぬけた音楽とユーモア(ないしは平和的エスニック・ジョーク)に飢えている編集部に、代官山ユニットから熱いメールが……。
 以下、そのメールです。

2015年、東京に全く新しいパーティーが誕生する。

伝説のCLUB VENUSのオーガナイザー久保憲司、そしてShufflemasterとTASAKAという2人のDJたち。
彼らの共通点は、2013年以来東京の路上を侵食しようとした極右排外主義デモに対抗してきた対レイシスト行動集団、C.R.A.C.(Counter-Racist Action Collective)のメンバーだということだった。

デザイナー、写真家、ライター、ミュージシャン、アーティスト、建築家、など多岐にわたる才能を内包し、東京の路上文化に多大な影響を及ぼしてきたC.R.A.C.が、満を持してパーティ”CLUB CRAC”をオーガナイズする。

レジデントはDJ Shufflemaster、DJ TASAKA、そしてDJ NOBUの3人。第1回のゲストにはECD+ILLICIT TSUBOI、MC JOE、ATS、AKURYOといったヒップホップ勢に加え、東京ハードコア・シーンからはPAYBACK BOYSが盟友BUSHMINDと共に参戦。さらに狂気のノイズ・アーキテクトENDON、スクリューのAIWABEATZ、そしてC.R.A.C.のメンバーでロゴのデザイナーでもあるDJ=1-Drink(ex.キミドリ/ILLDOZER/JAYPEG)が、真夜中のUNITを反ファシスト闘争の最前線へと変える。

ビジュアル面では、最近ではほとんどVJパフォーマンスをやらないDOMMUNEの宇川直宏がC.R.A.C.のために重い腰を上げるほか、The RKP(a.k.a. rokapenis)、映画『堀川中立売』の監督・柴田剛など強力すぎる面々が、音楽、文化、政治、そして路上の思想が交錯する未曾有のパーティ体験をもたらしてくれるだろう。

あいつらが論文を書いていたとき、俺たちはピットでモッシュし、フロアでダンスしていた。ナイトクラブで培われた身体の知性が、2月7日、代官山UNITに結集する。

Strictly Antifascist.
Music is The Weapon of The Future.


CLUB CRAC

DATE & TIME: Feb 7th (sat), 2015
DOOR OPENS at: 23:00
VENUE: UNIT (https://www.unit-tokyo.com)
FEE: 2000 yen in adv / 2000 yen with Flyer / 2500 yen at door / 3800 yen with T-shirt
TICKET: https://peatix.com/event/68703(通常前売)
       https://peatix.com/event/69652(Tシャツつき/1月19日発売)

LIVE PERFORMANCES:
 ECD+ILLICIT TSUBOI
 PAYBACK BOYS
 ENDON
 MC JOE
 C.R.A.C. (ATS, AKURYO, G.R.)

DJs:
 DJ NOBU
 BUSHMIND
 DJ Shufflemaster
 DJ TASAKA
 1-Drink
 AIWABEATZ

VJs:
 Ukawa Naohiro from DOMMUNE
 The RKP a.k.a. Rokapenis
 Shibata Go

FOOD:
 True Parrot Feeding Service

https://crac.club


The Pop Group - ele-king

 先日お伝えしたように、35年ぶりに帰ってきた、ブリストルのゴッドファーザー、ザ・ポップ・グループ。
 ここに、いち早く、ミュージック・ヴィデオをお届けしよう!


The Pop Group
マッド・トゥルース


 以下、マーク・スチュワート御大と監督を務めたアーシア・アルジェントのコメントです。


「“怒れる女司祭”ことアーシア・アルジェントは、俺たちが住んでいるこの狂ったゾンビ・ワールドでの同志のひとりだ。俺たちは共に闘うために生まれてきた。彼女は最高だよ!」 マーク・スチュワート 2015
“The priestess of provocation, Asia Argento is a kindred spirit in this crazy zombie world we live in, we were born to collaborate, she’s the bomb!” Mark Stewart 2015


 「ザ・ポップ・グループとのコラボレーションはまさに夢が叶ったとしか言いようがありません。この曲にはぶっ飛ばされました。このビデオに出てくるセットやシンボルはすべて曲と歌詞からインスパイされているの。無意識レベルで。私がイメージしたのは、永遠の子ども達のカラフルな魂が支配する世界。彼女達のクレイジーな愛をアート、すなわち生ける死霊のはびこる世界との霊戦を通して表現しました。
 このヴィデオに登場する子たちは私が最近撮った映画にも出ているの。私の娘、アナ・ルーもいるわ。私たちは自由と信頼の強い絆で結ばれています。
 そして35年ぶりのシングルの監督に私を選んでくれたとき、バンドが同じ自由を私に与えてくれました。
 私の映像と“マッド・トゥルース”が永遠につながっていられることを心から感謝します。」アーシア・アルジェント 2015

"Collaborating with The Pop Group is a dream come true. The track blew my mind: all the set-ups and symbols in the video are inspired on a subconscious level by the music and the lyrics. I imagined a world ruled by the colourful souls of eternal children, expressing their crazy love through art, a spiritual warfare against a world populated by the living dead.

The kids that appear in the video have worked also in the last movie I directed, including my daughter Anna-Lou. Between us there is a deep bond of trust and freedom.

The same freedom I was given by the band when they chose me to direct their first single in 35 years.

I am deeply grateful to have my vision entwined with MAD TRUTH for eternity."

Asia Argento 2015

 世界でもっともユニークなレコード店のひとつ、世界でもっとアンチ・ハイプなレコード店のひとつ、東京のロスアプソンが20周年を迎える。その祝祭(宴会?)のため、我らがコンピューマをはじめ、多くのDJやアーティストが花を添える。スペシャル&豪華なメンツが揃っています。ちなみにフライヤーは五木田智央、そのデザインは、紙エレキングの若きADの鈴木聖。リキッドルームに集合して、酒飲んで踊って、寒さなんか吹っ飛ばしましょう(なんて……)。

 バブルも弾け、大震災を経験し、不況の真っ直中をサーフ続行中のレコード屋、ロス・アプソンが20周年を迎えました。西新宿から幡ヶ谷へと移転し、新奇一転?フレッシュなバイブスを発見/発掘するべく躍起となり、未開の音楽をディグり楽しみ奔走してきた20年……って、んなもん最初から気持ちは何も変わっていないのですよっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! ということで、やっちゃいます!(唐突だなぁ……)黄金狂乱突破イベント「GOLD DAMAGE」の10周年復活祭!!!!!!!!!! そんでもってタッグを組むのは、リキッドロフトの名物イベント「COMPUMA 7HOURS LOFT」の主で旧友、DJコンピューマ!正に鬼に金(魔羅)棒の境地であります。突破ファイティングなライブ&DJ陣をバッチリ配置し、サンフランシスコ・アンダーグラウンドからは電子妖怪!?ラバー・オー・セメントを呼んだり、伝説のラジカセ屋TURBO SONICがドドドーン!とラジカセサウンドシステムを積んだり、そこでROBO宙さんがMCったり、PA担当はDOMMUNEのPAもやったりしているNancyだったり、トビトビ・レーザーライティングのYAMACHANGがいたり、美味しいフードを充実させたり、充実のラインナップで前売券はこのお値段だったり、さらに前売券購入者特典もあり(詳しくは○○○をみてね)で、まさにお得! 当日入場者にもゴルダメ・ステッカー付き!…というようなモリモリ盛りだくさんなあれこれを、2015年初頭の恵比寿リキッドルーム1階にて、あの頃のプリンス様よろしく“Let's Go Crazy”にブチ上げる所存ですっ!!!!!!!!!! は、は、這ってでも遊びに来てねぇ~~~~~~~~~~。
(山辺圭司/LOS APSON?)

LIVE:
INCAPACITANTS
RUBBER O CEMENT (from San Francisco) feat. 宇川直宏 (DOMMUNE)
KIRIHITO feat. 中原昌也 (HAIR STYLISTICS)
KEN2D SPECIAL SPECIAL
DOWNSHOT RIG[田我流 & KILLER-BONG]
藤井洋平 with Mr.MELODY & KASHIF

DJ:
DJ NOBU (FUTURE TERROR / Bitta)
HIKARU (BLAST HEAD)
BING (HE?XION! TAPES)
1-DRINK
Shhhhh
Q a.k.a. INSIDEMAN (GRASSROOTS)
DJ 2741
LIL' MOFO
威力

GOLD DAMAGE Deejay's: ヤマベケイジ/五木田智央/COMPUMA

MC: ROBO宙

FOOD: なるきよ/虎子食堂/南風食堂
SOUND SYSTEM (1F LOUNGE): TURBO SONIC ラジカセSOUND SYSTEM
PA: Nancy
LIGHTING: YAMACHANG

ARTWORK: 五木田智央/鈴木聖

2015.1.30 friday night
at LIQUIDROOM
open/start 23:59
adv (12.13 on sale!!!)* 2,500yen
door 3,500yen (with flyer 3,000yen)

*チケットぴあ[Pコード:250-935]/ローソンチケット[Lコード:74492]/e+/ディスクユニオン(渋谷CLUB MUSIC SHOP/新宿CLUB MUSIC SHOP/下北沢CLUB MUSIC SHOP/吉祥寺店)/JET SET TOKYO/Lighthouse Records/LOS APSON?/TECHNIQUE/虎子食堂/LIQUIDROOM

前売券購入者には特典としてMIX CD「How To GOLD DAMAGE」をプレゼント!特典は会場にて当日お渡し致します。

MIX CD「How To GOLD DAMAGE」とは…
2004年にごく少数配布販売された、GOLD DAMAGEレジデントDJのヤマベケイジ/DJ卍(五木田智央)/コンピューマの3人に、BLAST HEADのHIKARUを加えた4人による、リレー方式のハウ・トゥ・ゴルダメな幻のミックス!10年ぶりに復活します!

※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。
*You must be 20 and over with photo ID.

info
LIQUIDROOM
03-5464-0800
https://www.liquidroom.net/

more info
LOS APSON?
03-6276-2508
https://www.losapson.net/


 アイスランドのインディ・シーンが熱い? 2013年に、毎年11月にレイキャビックで開かれる音楽フェスティヴァル「アイスランド・エアウエイヴス」に行って以来、すっかりアイスランドの音楽にハマっているNY在住の沢井陽子。Randam Accese N.Y.番外編として、アイスランド・シリーズ行きます。ビョークの新作も発表されたし、アイスランド人気、日本にも押し寄せそうです。
 まずは、ジャスト・アナザー・スネイク・カルトというバンドのメンバー、ソーリのインタヴュー。アイスランド生まれで、アメリカ育ちの彼は、両国のインディ・シーンを知っています。

interview with Þórir(ジャスト・アナザー・スネイク・カルト)


取材に答えてくれた、
ジャスト・アナザー・スネイク・カルトの
Þórir(ソーリ)

まず自己紹介をお願いします。

Þórir(ソーリ):僕はジャスト・アナザー・スネイク・カルトというバンドのÞórir(ソーリ)です。エクセントリックなローファイ・サイケポップをプレイしています。https://snakecult.tiredmachine.com

どのくらいアイスランド(レイキャビック)に住んでいますか? 現地の生活について教えてください。

P:僕はレイキャビックで生まれ、子供から青年期にかけてアメリカで暮らしました。レイキャビックには5年前に戻ってきました。冬は長く気候は恐ろしいけど、家の中は暖かいので、創造的なことに集中したいなら最高の場所です。週末の夜は、知っている人全員が、同じバーでいるのを見かけます(笑)。とても居心地が良く好きだけど、アメリカが懐かしく感じるときもあります。アイスランドは、ニッチェなシーンを支持できないくらい人口が少ないけど、自分のことだけに集中出来るメリットがあります。アイスランドは不毛で、木や野生動物が懐かしく霜が多すぎます。夏のあいだ少し暖かくなったとしても、日中のある時点で温度がいきなり下がるから、セーター無しでは家から出られないです。

私は、2013年〜14年の「アイスランド・エアウエイヴス」時にレイキャヴィックに滞在し、ユニークなインディ音楽シーンと文化に魅せられました。アイスランドは、一度経済崩壊した国にも関わらず、少なくとも、同じように、経済的、将来の不安にさらされながら、活動している他の国のインディバンドたちに比べて、とても元気で活発なエネルギーがあります。それはなぜでしょうか。

P:銀行が崩壊する前、アイスランド人の生活にはバブルが繁栄していました。銀行と国民の大多数がお金を借り、無責任に投資し、その富がどこから来たのか誰も疑わなかったのです。崩壊時も、アイスランド人はそんなに貧困になりませんでした。自己破産して、自分の家や車を売った人もいましたが、食べ物に困ることはなかったし、むしろ物事は普通に戻りました。人びとは働いて借金を返さなくてはならなかったですが、仕事はあったし、社会保障もありました。
 銀行経済に失敗すると、アイスランド政府は、観光事業に力を入れはじめました。アイスランド通貨の価格が下がったので、観光客は行きやすくなりました。アイスランド自身は、魚とヴィデオゲーム以外、ほとんど生産能力がないので、外貨の流入は、アイスランド人の消費者運動に必要でした。政府はアイスランドと文化を外国に強く促進し、観光地をアピールしました。結果として、アイスランドのミュージシャンにもたくさんのサポートがあり、外国に進出することを助けてくれました。
 が、同時に政府は、近くしか見えていないことも多く、音楽会場を閉め、それをホテルや観光客のための物に建て替えました。観光客の季節には、本当のアイスランド人を、ダウンタウンで見かけることはありません。全員観光客なのです。家は、高い値段で観光客に貸されるため、夏の間だけでも、手頃な価格で住む所を見つけるのが難しくなりました。
 サンフランシスコやニューヨークで起こっていたような、同じ文化の死が、レイキャビックにも起こっているのはおかしいですね。いま、レイキャヴィックの音楽シーンは、黄昏時かも知れません。アイスランドの難しいところは、他にアーティストが行く場所が無いことです。アイスランドのアートや文化を海外に促進し、支持してくれても、住むのが難しくなって来ています。いずれは、バランスが取れるのかも知れませんが。
 音楽やアートを作るときは、やりたくてやるので、ほとんどの人は、そこにお金は絡みません。アイスランドにはミュージシャンをサポートする十分な人口はありません。退屈な大衆音楽を作っている一部の大物ミュージシャンをのぞいて、コンサートやレコードの売り上げで生活出来る人はいないのです。大多数のアーティストが、いつも金銭面で奮闘していますが、これは銀行が崩壊した前も後も、変わらないと思います。

レイキャヴィックに、マクドナルドやスターバックスがないのはなぜでしょうか?

P:経済的な理由からだと思います。他のフランチャイズは、アイスランドで経営するため、より利益を生む企業家でした。他にも、KFC、サブウェイなど多くの多国籍なチェーン店があり、ビジネスモデルを真似た地元のチェーンもあります。マクドナルドがクローズしたのは、フランチャイズのオーナーにとって、自分のハンバーガー屋でビジネスをする方が利益があったからだと思います。

アイスランドの人びとは、反グローバリゼーションを意識しているのでしょうか?

P:アイスランドは、極端な消費者優先主義者国です(ほとんどの欧米の国がそうだと思いますが、それ以上に)。グローバリゼーションを考える人もいますが、ほとんどは考えていないか、少なくとも真剣ではないです。アイスランド人は、環境や社会的に責任を追うたくさんの製品を作りますが、実際は違います。例えば、観光地のお店で売られているアイスランディック・セーターは、ほとんどが中国製で、「ファーマーズ・マーケット」なる意図的な欺き商標名で売られています。
 アメリカに住んでいたときは、アイスランド人の消費者意識に気づいていませんでした。対して、グラスルーツ音楽やアートに関わるアメリカの若者は、何かあると急速に進化します。こんなことはアイスランドではほとんど起こりません。
 アイスランドはEU加盟国ではないですが、ヨーロッパの経済地域にあります。党派の両端から見て、中道派はEUに加盟したいが、リベラル派と保守派は加盟したくないのです。中道派がEUに加盟したいのは、アイスランド政府が堕落していて、乱用を防止することで、利益を得た人びとから力を奪うからだと思います。排他的な漁業権のように、保守派はアイスランドのお金の利益を守りたいし、左翼は反グローバリゼーションの理由で反対していると僕は思います。

ビョークのニュー・アルバムが発売されましたが、ビョークはアイスランドでも特別人気があるのでしょうか? レイキャヴィックで、素晴らしいバンドをたくさん見た後では、ビョークも、アイスランドではごく普通なのでは、と思いました。

P:ビョークは伝説です。彼女は成功したポップスターであると同時に、真のアーティストで、いつもびっくりさせるような創造的な音楽を作っています。アイスランドでビョークに影響を受けていないミュージシャンを見つけるのは難しいと思います。

https://snakecult.tiredmachine.com



「Iceland Airwaves NOV 5-9 2014」レポート

 2013年に初めて行って、あまりの良さに2014年も自動的にアイスランド行きをブックしてしまった。
 ひとから何がそんなに良いのかと訊かれるが、とにかく人が温かく、街の小さいお店、大きな会場など、さまざまな場所で音楽を楽しめるところも良いし、何よりも、来てみるまで、何が起こるかわからないところにこのフェスの魅力がある。今回も、行き当たりばったりでバンドを見たが、アクシデントもありながら新しいお気に入りのミュージシャンにたくさん出会えた。

 今回は金曜日から現地入り、3日で総勢25のバンドを見た。Olena, Fufanu, Vorhees, Sin Fang, La luz, Godchilla, Unknown mortal orchestra, Ham, Anna soley, Mosi musik, Prins polo, Vok, Young Karin, Kaelan Mikla, Munstur, Spray Paint, Leaves, Odonis Odonis, Low Roar, Grisalappalisa, Perfect Pussy, Vintage Caravan, MC bjor, Just another snake cult, AmabadamA
 他にもチラッと見たバンドや、通りかかったバンドも少なくない。歩くとそこかしこで音楽が鳴っているので、音に吸い込まれるように入って行き、良ければステイ、ダメなら次。人気のあるバンドは大勢の人が入っているが、次のバンドまでの暇つぶしと言うこともある。エアウェイヴスのアプリケーションをダウンロードすると、いま何がやっていて場所がどこかなど全て把握できる。このアプリケーションが大活躍!
 以下、好きだったバンドをいくつかピックアップしてみました。

Vok
@ landsbankinn

まずはvok 。去年から噂は聞いていて、今回やっとライヴが観れた。
男2人、女1人、サックスとギター、エレクトロ、DJなど。ディストーションかかった、深い女の子のヴォーカルが良い。ビョークが生まれた町というのが納得出来る。
https://www.facebook.com/Vokband

Grisalappalisa グリサラパリサ
@gaukrinm

知り合いのレコード・レーベルの所属アーティストだったことで、たまたまキャッチしたが、すぐにエアウエイヴスのお気に入りになった。男6人組。ヴォーカル2人、サックス、ギター、ベース、ドラム、半端ないハイエナジー。キラキラのシャツを脱ぎ捨て半裸になるヴォーカル。聞けばそれがスタイルらしい。アグレッシブなフリーホイール・クラウトロック。
https://grisalappalisa.com

Just another snake cult
ジャスト・アナザー・スネイク・カルト
@ kaffbarinn

ランダムに出会ったローカル・バンド。様々なエレクトロ機材を使いつつも、ベースはローファイ・アコースティック。チェロや爪琴などの弦楽器を加えフリーキーなのにドリーミー。ライヴはドキッとさせられる面多し。
https://snakecult.tiredmachine.com

Low roar ロウローア
@gamla bio

アメリカ出身のライアンがアイスランドの引っ越して、ひとりぼっちの寂しさからこのバンドを作った。切なくて美しいレーザービームが似合うバンド。ライヴはストリング隊が美しく弦を奏で、オーケストラのようなスペクタクル。いまではビルボードまでが彼らをカヴァーするまでに。
https://www.lowroarmusic.com

Vorhees ヴォーチス
@bio paradis

NY出身のdenaのプロジェクトで、エレクトニックとギターをミックスした、サウンドコラージュ。Rachel coleyというNYのデザイナーが彼女のスタイルを担当し、ヘアリーなトップがよく似合っていた。mumのサウンドを担当していたゆかりで、9回ほど来日経験あり。只今日本語勉強中。
https://vorheesmusic.tumblr.com

Unknown mortal orchestra
アンノウン・モータル・オーケストラ
@bio paradis
会場に入るのも一苦労な人の多さ。外から覗いていたが、勇気を出して人混みの中へジャンプ。ライヴは3人編成。サイケデリックなシャープ・ソウルは、ヒップホップからインディロックファンまでを網羅し、一緒に歌っているファンもいた。イギリスのバンドだと思っていたら(なぜ?)、ルーベンは、ニュージーランドからポートランドに移住したらしい。
https://unknownmortalorchestra.com

Godchilla ゴチラ
@12 tonar

男3人組のコズミック/ドーム/ノイズ/サーフバンド。音は宇宙の様にヘビーで、来ている客は男が多かったが、ルックスが良いので、ファンが増えそう。
https://www.facebook.com/Godchillah

Ham ハム
@ KEX hostel

びっくり! アイスランドの伝説のヘビーロック・バンド。マスタード色のベスト、シャツ、パンツにシルバーのヘアーがヴォーカリスト。バンド全体がカッコよすぎて、エアウエイヴスってエレクトロが主流じゃなかった? と疑ってしまった。このショーがHAMのたった一回のエアウエイヴス・ショー。KEXPが盛り上がるのもわかった。
https://blog.kexp.org/2014/11/07/kexp-at-iceland-airwaves-day-3-ham/?fb_ref=Default&fb_source=message

ラジオ・ショーが終わっても10分ほどアンコールが鳴り止まず。アイスランドのレッド・ゼペリンは言い過ぎか?
https://facebook.com/svikharmurdaudi

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 レイキャヴィックの歩ける町の作りがこのフェスを可能にしているひとつだが、人びとの音楽に対する半端ない熱意、昼のショーは子供も参加できるしファミリーフレンドリー、10代のバンドもチラホラ、英語が通じる、人々の大酒呑み&パーティ好きで誰彼も受け入れる、と理由は様々だが、1日目で興奮がピークに達してしまうのだ。
 エアウエイヴスが終わると、人々はレイキャヴィックから抜け出し、南部やゴールデンサークル、ブルーラグーンなどの観光地、町をふらっと歩くだけで、自然の美しさに感謝し、時間がなければ近所の温水プールなど、アイスランドのアトラクションは後を絶たない。世界中からこのフェスティバルに来る人が後を絶たないのはよくわかる。何が起こるかは自分次第だが、素晴らしい音楽と感動に出会えるのは間違いない。来年は一緒にいかがですか? 

https://icelandairwaves.is

 先週バーンズ・アンド・ノーブルズ(本屋)に行ったら、今晩7時からミランダ・ジュライのリーディングがあると知った。映画監督、女優、音楽家、小説家、アーティスト、などマルチに活躍する彼女。最近では、ポートランドつながりか、スリーター・キニーの新しいアルバム(!)の「ノー・シティズ・トゥ・ラブ」のパロディ・ヴィデオにも出演していた。
 彼女の最新映画『The Future』を観たときは、ヘンテコだが、愛らしい作品を創る彼女が気になった。ウィリアムスバーグには「miranda」というイタリアン・レストランもある。彼女は、映画監督の前に、The Needというバンドと音楽をリリースし、〈キル・ロック・スターズ〉、〈Kレコーズ〉など、オリンピア、シアトル、ポートランドのバンドとも繋がりが深く、2000年にはthe Needも含む、周辺のバンドのコンピレーションを〈コンタクト・レコーズ〉からリリースしている。15年経っても、収録されているアーティストたちの活動には驚かされるし、これからも期待している。
 7時にバーンズ・アンド・ノーブルズに着いたときには、すでにに立ち見席も一杯。前回、ジョン・ウォーターズの「カー・シック」のリーディングに来たときもそうだったが、一番前(立ち見)に行くのはそれほど困難ではない。
 オーディエンスは、若い人から年配まで。後ろの方は、見るのを諦め、床に座り目を閉じてリーディングを楽しんでいる人もいた。ミランダは、パラグラフを飛ばし飛ばしで、途中で咳き込んだり、重要なシーンの前で「次のパートはお家で読んでね」など笑いも取りつつ、30分ぐらい朗読した。その後、オーディエンスとの質疑応答があった。彼女は、物語に順じ、子供に対しての質問や、小説を書いた理由など、ひとつひとつ丁寧に答えていた。朗読が終わっても帰らず、サイン会を眺めるファンがたくさん。こういう会に参加できることに喜びを感じる。

 別の日に、元ウィリアムスバーグ、現ローワー・イースト・サイドのギャラリー、カプリシャス88にアイスランドのアーティスト、ショップ・リフターのショーを見に行った。個人的にいま一番興味のあるアイスランドと繋がったので、タイミングもぴったり。
 ローワー・イースト・サイドとチャイナ・タウンがミックスする、このエリアは、ウィリアムスバーグで大人気のフライドチキン・レストラン、パイ・アンド・サイの2号店が出来たり、アイスランドがテーマのレストラン「スカール」があったり(バーテンダーはフランス人だったが)、何気に洗練され面白い文化を形成している。いまとなっては、ウィリアムスバーグより家賃も安いのだろう。チャイナ・タウンのごった煮な雰囲気のなか、このビルだけはソーホーのようなおしゃれな雰囲気。来ている人は、アーティスト、モデル、クリエイターなど。ファー、木、ビニールバッグ、旗、ヘア・エクステンションなどを使ったインスタレーションが展示され、個人的には、ヴィヴィッド・カラーのヘア・エクステンションを沢山使った作品が好きだった。色使いが、昔のマイティ・ロボット(現シークレット・プロジェクト・ロボット)やペーパーラッド()などを思い起こさせ、間近で見ると、そのテクスチャーが浮き出て、とても美しい。
 というか、これだけ作るの大変だっただろうな。ニューヨーカーがいつも黒ばかり着ているなかで、鮮やかなブルーの洋服を着た彼女は、チャーミングで、たくさんのゲストに囲まれていた。

 著者は最近、アイスランドの文化、音楽にハマっていて、アイスランドに引っ越したい衝動にもかられるが、NYにいると向こうからやって来てくれることが多々ある。以前、ポートランド、アセンス、オースティンなど小さな大学街のアーティストが好きで、引っ越したいと思ったが、NYにいると、彼らにも会えてしまった。マジカルな都市だ。

 ローワー・イースト・サイドから、ウィリアムスバーグ・ブリッジを渡り、近所に戻ると、知り合いが今日ユニオンプールでライヴをやるとのこと。ウィリアムバーグは終わった、と言ったが、今日も夜な夜なショーは開催されている。去る者は去る、残るものは残る。起きていることに、すぐにアクセス出来る環境にいれるのは、なんとも有難い。

https://mirandajuly.com

https://www.capricious88.com
https://shoplifter.us

Union-pool.com

Yoko Sawai
1/16/2015

interview with Panda Bear - ele-king

 2000年代のUSインディを代表するバンド、いやむしろ2000年代をUSの時代にしてきたアーティストたちを象徴する存在ともいえるアニマル・コレクティヴ。その双輪として彼らの音楽を駆動してきたのは、現在はそれぞれソロとしても活動しているエイヴィ・テアとパンダ・ベアという対照的な才能である。  といった説明はもうとくに不要かもしれない。いまではパンダ・ベアの新作、というだけでじゅうぶんに盤を手にする理由になる。そうなるだけの作品を彼は残した。『パーソン・ピッチ』(2007年)──かの逸盤はさきの10年のシーンに広がるサイケデリックの大きな水脈の上流にあって、それいちまいでチルウェイヴの胎盤にもなったのだ。

 その彼ことノア・レノックスの5枚めとなるソロ・アルバムはその名も『パンダ・ベア、死神に会う(パンダ・ベア・ミーツ・ザ・グリム・リーパー)』。「死神」にはリテラルな「死」ではなく、「その存在がなくなってしまう前に新しい何かに変化する」イメージが重ねられていると彼は話してくれた。かたちを変えて続いていく命というモチーフは、そもそもアニマル・コレクティヴと名乗る彼らの中に共通する感覚なのかもしれないが、とくにレノックスには色濃いように思う。

 もしあなたにとっての「アニマル・コレクティヴ」が、たとえば『フィールズ』の“グラス”や“パープル・ボトル”のエクスペリメンタリズムだったとしたら、あなたが聴いているのはおそらくエイヴィ・テアだろう。『センティピード・ヘルツ』(2012年)なども筆者からすればエイヴィ色の強いアルバムという印象だ。対して『キャンプファイア・ソングス』(2003年)や『サング・トングス』(2004年)などはパンダ・ベアの息づかいを強く感じる。というか、実際に息が……ノア・レノックスの声がたっぷりと注ぎ込まれたアルバムになっている。
 テアが吹き込むのが瞬間的な生命感の横溢だとすれば、レノックスが吹き込むのはまさに彼のロングトーンそのものともいえる、連続的な息=生き。いま子どもを育てる時間の中で、生活がふたつあるように感じるという彼は、今作において、そのいくつもの命の重なりをヴォーカルの層となして水平に広げていく。彼のいう死=変化はあくまでそのなかでゆっくりと生起していくのだと感じる。大鎌を手にするおどろおどろしいはずの死神は、いまはまるでそれを櫂のようにあやつり、なめらかに時を運んでゆく水先案内人のよう。“トロピック・オブ・キャンサー”などに感じるのは、そうした水平方向への流れをもったサイケデリアだ。かつてはループのなかに夢と無限を見出していた、ミニマルな彼の音楽性は、もしかするとここでひとつの方向をめざしてリニアに延びていくという無限を得たのかもしれない。年齢をかさねてパンダ・ベアが出会ったのは、むしろ生きることをみちびく死神……「思ってねーよ」って言われるとしても、そこはそう、空想したい。

■Panda Bear / パンダ・ベア
米NYを拠点に活動するバンド、アニマル・コレクティヴの中心的メンバーのひとり、パンダ・ベアことノア・レノックス。アニマル・コレクティヴとして現在までに9枚のスタジオ・アルバムを、パンダ・ベアとしては4枚のソロ・アルバムを発表。ソロの3作めとなる『パーソン・ピッチ』(2007年)は米音楽批評サイト「Pitchfork」の年間チャートにおいて第1位を獲得するなど、個人のキャリアにおいても高い評価を得ている。

僕にとって、プロデューサーという面でいちばん強く影響されているのは確実にダブ・ミュージックだからね。


Panda Bear
Panda Bear Meets The Grim Reaper

Domino / ホステス

Indie RockPsychedelicAmbient Pop

Tower HMV Amazon iTunes

今作は『キング・タビー・ミーツ・ロッカーズ・アップタウン』や『オーガスタス・パブロ・ミーツ・リー・ペリー・アンド・ザ・ウェイラーズ』からインスピレーションを得たアルバムだとのことですね。ダブに接続する要素は『パーソン・ピッチ(Person Pitch)』の頃から強かったと思いますけれども。

ノア・レノックス:『パーソン・ピッチ』にかぎらず、ダブとの接続は毎回あると思うよ。僕にとって、プロデューサーという面でいちばん強く影響されているのは確実にダブ・ミュージックだからね。ああいうタイプのサウンドを聴いて以来、自分が唯一プロデュースしたと思えるサウンドが、ダブのようなサウンドだったんだ。

意識的にダブに接近するのは今回がはじめてではないと。

レノックス:はじめてではないね。でも、今回が他の作品よりも影響が濃く出ているっていうのはあるかもしれない。前からやってはいたけど、もっとわかりにくかったんじゃないかな。リヴァーブやディレイは普段から使っているし、そういった部分は自分にとってジャマイカのプロデューサーとのリンクなんだ。

そうしたプロデューサーたちの作品とはどのように出会って、どのようなところに惹かれたのでしょう?

レノックス:はじめて出会ってから馴染むまでには、じつは時間がかかっていて。18歳のとき、当時いっしょに住んでたルームメイトがダブの大ファンで、彼が聴いてたのを耳にしていたときは、僕はあまり理解できなかったんだ。で、彼があるときキング・タビーの『ルーツ・オブ・ダブ』っていうレコードをくれて、それをヘッドフォンで聴きながら歩くようになってからすぐにファンになった。ダブの深いベース音やザラついたハイハットとスネアのコンボ、リズムやサウンドが大好きになって、すごく特徴のあるサウンドだなと気づいたんだ。ちょっと湿ったような、雨っぽいフィーリングがあるところが魅力的だったんだよ。

今作はリズムが強調されたアルバムでもあると思います。わたしは“シャドウ・オブ・ザ・コロッサス(Shadow of the Colossus)”や“ロンリー・ワンダラー(Lonely Wanderer)”など、過去作もふくめあなたの3拍子や8分の6拍子の曲が大好きなのですが、こうした曲はメロディからできるのでしょうか?

レノックス:今回のアルバムに収録された曲に関しては、最初にできたのはリズム。あとはインストやアレンジを経て、いちばん最後にメロディができるっていうプロセスだった。
 僕がよくやったのは、最初にドラム、そしてシンセのようなインストのサウンドを作ったりサンプルを作って、そこからそれをレゴのブロックのように組み立てていくっていうやり方。その組み合わせ方に変化を加えていくんだよ。基本的には、音を何度も聴いて、そこに小さな捻りや変化を加えていった。で、そうしていくうち、何ヶ月も後になってやっとメロディが頭に思い浮かびはじめるんだ。望遠鏡で何か遠いものを見ていて、焦点が合わないとボヤけてはっきりと見えないでしょう? 最初はそんな感じ。でも、要素や色がわかってくるとはっきりはっきりとイメージが見えてくる。そうやってメロディができていくんだよ。ゆっくりとしたプロセスの中で、メロディやリズムや歌詞がナチュラルに浮かんできて、自然と形を成していく。僕は、あまり計画をたててメロディを作ることができないんだ。曲ができ上がるまで待たないといけないんだよね。

ゆっくりとしたプロセスの中で、メロディやリズムや歌詞がナチュラルに浮かんできて、自然と形を成していく。

テクノなどはあまり聴かれませんか?

レノックス:よく聴くよ。ダブと同じくらいインスピレーションを受けてる。ハウスのような、他のフォームのダンス・ミュージック、クラブ・ミュージックよりもテクノを聴いてる。ヒップホップもそうだね。そういった音楽にはつねに影響を受けてるんだ。

ダフト・パンクとのコラボレーション曲(“ドゥーイン・イット・ライト(Doin' it Right)”)は16ビートでしたが、リズムにおいて意識したことや、新しく気づいたことはありましたか?

レノックス:作っていくうちに、ブレイクを使うことにフォーカスを置こうという方向性がだんだん見えてきた。リズム的に、もっと揺れるような、力のこもりすぎていないものを作りたいっていうのもあったね。リズムに関して意識したのはそこ。あとは、僕は普段から、典型的ではないちょっと変わったリズムを作るのが好きなんだ。

今回の録音はさまざまに場所を変えて行ったそうですね。『パーソン・ピッチ』などには「ベッドルームの中で世界を体験する」というような感覚があるのですが、今作は「いろいろな場所でただひとつのノア・レノックスを体験する」というアルバムのように感じました。複数の場所で録音したのはなぜでしょうか?

レノックス:レコーディングではなくて、いろいろな場所で曲を作ったんだよ。ほとんどは家で作って、その他はツアー中。何度か家を引っ越したりもしたから、それで点々とした感じになる。引越しのたびにスタジオをセットアップしてね。あるときはビーチの近くに住んでいて、そこのガレージにスタジオを作って作業していたし、街に住んでいたときは、そのアパートの地下室にスタジオを作って作業をした。あとは、ツアー中のホテルだね。たくさん移動していたからそうなったんだ。
 最終的なレコーディングはちゃんとした場所でやりたかったから、自分の場所ではなくて、ヴィンテージの機材や何百ドルもするギアがある場所を借りたよ。そういう環境はいままであまりなかったけど、ずっとやってみたいと思っていて、今回やっと着手したんだ。

普通のピアノには聴こえないからもしれないけど、あれが僕がアルバムのなかでいちばん気に入っている楽器の音色だね。(“クロスワーズ”)

前作にひきつづいて、プロデューサーにソニック・ブームを迎えていますが、彼と試した音作りやアイディアでとくに印象深いことはどんなことですか?

レノックス:ピートは、サウンドを普通では思いつかないような場所に持っていってくれるんだ。彼は普通とはちがう何かを感じとれる。人の耳をくすぐるというか、そういうサウンドを作ることができるのが彼。ピートにはいろいろな才能があるけど、その部分は僕なんかよりかなり優れていると思う。彼の才能の中でも、目立ったクオリティだね。

今回もサンプラーを中心とした曲作りでしょうか。生音の素材がもちいられることが減ったようにも思いますが、いまの録音スタイルについて教えてください。

レノックス:サンプラーを中心としたっていうのは、もちろんこのレコードと『パーソン・ピッチ』をつなぐ要素ではある。でも、『パーソン・ピッチ』のほうがもっとそれに徹していたね。マイクを使ったのはヴォーカルを録るときだけで、あとはすべてハードウェアやコンピュータの中で作業したから、ライヴ・サウンドは本当にわずかだったんだ。『トムボーイ(Tomboy)』はその逆で、ライヴ・パフォーマンスが多かった。全部にマイクを使ったわけじゃないけど、より多くギターの生演奏が使われているからね。
 今回のレコードに関しては、マイクが少ないという点では『パーソン・ピッチ』に帰還している。でも、今回はパーカッションは自分でやったりしてるから、そこはちがうんだ。

一方で、くるみ割り人形のサンプリングなど、ブラスやハープ、ピアノなども中盤では印象的に登場します。楽器の音色としてもっとも好きなものは何ですか?

レノックス:“クロスワーズ(Crosswords)”っていう曲があるんだけど、あれを作っていたときはスタジオにグランドピアノがあって、あのピアノ・パートが“クロスワーズ”の曲の印象を変えたんだ。それまではなかった「個性」を曲に吹き込んでくれた。普通のピアノには聴こえないからもしれないけど、あれが僕がアルバムのなかでいちばん気に入っている楽器の音色だね。

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今回初めて意識したのは、「自分についてだけを書かない」ということだった。それは、いままでのどの音楽ともちがう。

“ミスター・ノア(Mr Noah)”とはあなたのことですか? ファンキーで、タイトな生ドラムも入り、アルバムのなかではもっともやんちゃなグルーヴを感じる曲ですが、あなたのドラマーとしてのアイデンティティが反映されていると捉えるのは的外れでしょうか?

レノックス:そう。自分のことだよ。セルフ・ポートレイトみたいな曲。ドラマーとしてのアイデンティティか……考えたことなかったな。リズム的にはかなりシンプルだと思うけど。

今作中、もっともパーソナルだと思われる曲と、もっとも自分のこれまでのアーカイヴから離れていると感じられる曲を教えてください。

レノックス:今回初めて意識したのは、「自分についてだけを書かない」ということだった。今回は、自分だけの考えや経験とはちがうものを書きたかったんだ。それは、いままでのどの音楽ともちがう。もちろん、曲を書きはじめるときは自分の考え方や経験からスタートするけど、そこから歌詞にひねりを加えたり、フレーズを変えたりしていった。今回は自分のことに関しては語りたくなかったから、みんなが経験したり、誰でも考えるようなことにフォーカスしたんだ。誰もが抱える問題や葛藤、喜びとかね。自分以外の人と、よりコミュニケーションがとれるように。

詞の内容に引っぱられて作られた曲はありますか?

レノックス:それはないね。クールだなと思うアイディアを見つけて、曲の一部で使おうかな、と思うこともある。でも、詩を書いてそこから曲を作るってことはまずない。さっきも言ったように、僕はその方法がわからないからね。

『Panda Bear Meets The Grim Reaper』というのは、とても可愛らしい、愉快なタイトルだと思いました。あなたにとって「The Grim Reaper(死神)」とはどのようなものですか?

レノックス:このアルバムはコンセプト・アルバムではないんだけど、このタイトルは文字通りの「死」を意味しているんじゃなくて、変化を表しているんだ。何かが変化して、その存在がなくなってしまう前に新しい何かに変化する、みたいな。今回のアルバムの曲がそんな感じだからね。永遠になくなってしまうんじゃなくて、変化して生まれ変わる、というか。

このタイトルは文字通りの「死」を意味しているんじゃなくて、変化を表しているんだ。

死神、精霊、生物(Animal Collective)、あなたにまつわる音楽にはそうした自然と超自然のモチーフがとけあって存在していますね。きっとあなたにとって親しいイメージであり、あなた独特の生命観なのだと思いますが、そうしたものに向かうルーツはどんなところにあったと思いますか?

レノックス:自分たちも動物だからだと思う。僕たちもそういったものの一部だから。だからそういったことについて考えるし、音楽にも反映されるんだと思う。動物が持つ衝動と人間の衝動には似ている部分もあるし、逆に動物だけが持つ能力もあるし。人間って路頭に迷ったりするけど、動物は天真爛漫だったり。そこが魅力的なんだ。

あなたのソロ作品はアートワークも素晴らしく、いつも何らかの象徴性をそなえた、とても喚起的なヴィジュアルが用いられていました。今回はうって変わって、タイポグラフィ的なものになっています。これにはあなたからのディレクションがあったのですか?


『Panda Bear Meets The Grim Reaper』のジャケット

レノックス:そうだよ。でも、あれを作ったのはピートの友人のマルコ。ピートと僕のツアーのポスターを作ってくれたのが彼で、そのデザインがすごくよかったから、彼にいくつかデザインしてみてくれと頼んだんだ。そしたら、すごくたくさんアイディアを送ってきてくれてね。その中から、いちばん印象的だったものを使うことにした。他のも素晴らしかったから、そのうち使うと思う。タイトルの単語の頭文字を取って使う(PBMGR)っていうのは僕のアイディアだったけど、あとは全部マルコがデザインしてくれたんだ。

以前にもインタヴューさせていただいたことがあるのですが、そのときあなたは、ポルトガル(ヨーロッパ)は古い歴史を持っていて、アメリカが新しい国だと感じるとおっしゃっていました。ヨーロッパに住まうことで、音楽の歴史性を意識することはありますか?

レノックス:いまはインターネットがあるから、どこからでも、何にでもアクセスできる。だから、どこに住んでいようと何かに影響されずにはいられない時代だと思う。自分のオリジナルだと思っても、それは必ず自分が触れたことのあるものからきているわけだしね。

土地のトラディショナルな音楽から影響を受けることはありますか?

レノックス:住んでいれば触れてはいるから、もちろん影響はされていると思う。でも、自分がどう影響されているのかはわからない。何かに影響されていたとしても、それをコピーしようとは思わないし、その影響が反映されていることに気づいたら、そこに必ず変化を加えるようにしてるんだ。

新しい音楽に触れるのはインターネットを通してであることが多いですか?

レノックス:そうだね。あとは友だちはまわりにいる人たちから情報をもらったり。

業界にいると、情報量がすごそうですね。

レノックス:そうなんだ。音楽に詳しい人がまわりにたくさんいてくれてラッキーだと思う。

『ヤング・プレイヤー(Young Prayer)』や『パーソン・ピッチ』に戻るという意味ではないのですが、次はぜひアコースティックな作品を聴きたいです。いかがでしょう?

レノックス:ははは(笑)。ギターと自分でツアーしたいっていう夢はあるんだ。いまは、機材をいくつも運んで移動するのが面倒くさくて(笑)。だから、バンドとギターでツアーするのって魅力的なんだよね。いつか実現させると思う。いろんな意味でやりやすいと思うから(笑)。

生活がふたつある感じかな。ひとつは自分のためで、もうひとつは他人のため。親になると、世界がガラっと変わるよ(笑)。

差支えがなければ教えてください。お子さんは家庭教育と学校教育のどちらでお育てになりたいと思いますか?

レノックス:状況によるね。あとは教師がどんな人かによる。どちらも善し悪しがあると思うから、本当にそのときの環境によると思う。僕の子どもは一人はあまり社交的じゃないから、そういう場合は学校にいってそういうスキルを身につけるのもいいと思うし、もう一人はその逆だから、まわりにある学校の環境や教師によっては家庭教育もいいかもしれないし。場合によるね。

前作のジャケットでは聖母が涙を流していましたが、あなたにとって「父」というとどんな存在で、どんなモデルやイメージを思い浮かべますか?

レノックス:それはつねに変わるんだ。父親になる前はぜんぜんちがうイメージを持ってたけど、なってからそれは変わったし、いまだに変化しつづけてる。まだ自分でもわからないんだ。状況によって変わるんだよね。子どもがいるといないじゃ、生活の視点がまったくちがう。自分の人生を生きているのに、そうじゃないというか……(笑)。生活がふたつある感じかな。ひとつは自分のためで、もうひとつは他人のため。親になると、世界がガラっと変わるよ(笑)。自分は学校に通っていなくても、通っているリズムで生活するわけだからね。

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