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vol.57:アイスランドのフェス、NYの七尾旅人

沢井陽子 Nov 18,2013 UP

 アイスランドは、ビョークやシガー・ロスの出身地というぼんやりしたイメージしかなかったのだが、行った人誰に聞いても「最高!」と言われる。毎年10月末から11月にかけて首都レイキャヴィックでおこなわれる、新しい音楽の祭典、アイスランド・エアウェイヴスに初参加した。
 今年は10/31~11/3。過去には、シンズ、ラプチャー、TV・オン・ザ・レィディオ、ファットボーイ・スリム、クラクソンズなど、ヨーロッパやアメリカからバンドが参加している。
 NYからは約6時間。時差も5時間なので、西海岸に行くのと変わらない。15年前に初めてSXSWに行ったときと同じような新鮮な感情が生また。

 エアウェイヴスは、著者が知っているCMJやSXSWなどのアメリカのフェスティヴァルと違い、質が格段に良い。家族経営な感じが好印象で、まだ世の中に知られていない新しいバンドをいろんな所で発見できる。
 飛行機はアイスランド・エアを利用したのだが、音楽プレイリストに「エアウェイヴス」があり、スケジュールのフライヤーがもれなく乗客に配られる。パーティへのお誘いも、「どう、エアウェイヴス楽しんでる?」などの10年来の友達相手のような気さくな招待状。現地の人に聞くと、この期間は特別で、これでもか、というぐらいショーを見て、浴びるほどお酒を飲むらしい。
 空港に朝の6時に着き、水が飲みたいと思ったら、水の隣に普通にビールが売られ、周りを見ると、待っている人もビールを飲んでいる。エアウェイヴスが終わった次の日、レコード店に人を訪ねて行くと、「彼は今日飲み過ぎでお休み」と言われた。エアウェイヴス休暇は公認なのか?

 「朝の4時、5つのクラブに行き、10の良いバンドを見て、15人の新しい友だちを作り、20回恋に落ちた。自分は疲れ、おかしくなってる。家に帰るつもりが、アフターパーティを探してる。ここにいることが信じられないし、すでに来年また来る計画をしている。今日はまだフェスの一日目だというのに」(http://icelandairwaves.is/about/
 というエアウェイヴスの文句がそのまま当てはまる。マジックとしか思いようがない。
 レイキャビックという町は、NYのウィリアムスバーグぐらいの大きさしかなく、どこでも徒歩30分以内で歩け、フェスティヴァルにはもってこいの町である。イギリスの標準時を使い、人口は約32万人でその1/3がレイキャヴィックに住んでいるという。自然がとても美しく、着いた日に、山がピンク色に染まっていたり、寒そうな山肌を見たとき、新しい土地を意識した。

 まずはハーパというハブになっている会場でリストバンドをピックアップ。リストバンドと一緒にもらえるギフトバッグのなかには、ブルーラグーンのスキンケアグッズ、66northのニットキャップ、gullビール、reykaウォッカ、アイスランディック・チョコレート、オパル・キャンディなどのアイスランドの代表グッズが入っている。これだけでも十分アイスランド気分。

 エアウェイヴスは、公式のショーでなく「オフヴェニュー」と呼ばれる場所でのショーが昼間からあり(これだけでも十分好きなバンドが見れる)、この5日間は朝から晩まで、バンドは5~10のショーをし、DJともなると1時間おきに違う会場でプレイする強者もいた。
 シアトルのカレッジラジオKEXPはCMJやSXSW、スペインのプリマベラなどで、いつも良いメンツを集めてパーティをするので、今回もたくさん行ったが、ラインナップは地元アイスランド・バンドも含め極上だった。まったく違う会場で偶然発見したバンド、Kithkin(シアトル出身)も、後からKEXP関連だったこともわかる。

 エアウエイヴスは、時間厳守だ。時間になると、きっちり次のアクトがはじまるし、演奏時間も大体20~30分ぐらい。次のバンドまでも余裕があるので、セットチェンジの間にもうひとつ別のショー行って帰って来れる。会場がそれぞれ近いのもよい。

 以下ずらーっとレポート。カタカナ表記に直せない会場はそのままアルファベットで残し、バンドの後に表記のない物は地元のアイスランド・バンド。

11/1(fri)
5:30 pm
サマリス(Samaris)
@アイスランドエア@スリップバリン(icelandair at slippbarinn)

 最初に行った会場はスリップバリン。夕方5時だというのに外にラインが出来、ようやく入るも身動きが取れない。入口でウエルカムシャンパンを頂きステージ前へ。
 サマリスは、クラリネット(女)、ヴォーカル(女)、エレクトロニクス(男)という変わった編成。ダウンテンポ・エレクトロニカと大胆なパーカッションビートを取り入れ、ビョークのような深く唸るようなヴォーカルが乗る。その結果、古代的で現代的、非現実なサウンドにダークでエイリアンな雰囲気を醸し出す。時差ぼけも吹き飛び、ステージ前でかぶり付きで見た。ヴォーカルのJófríðurは、パスカル・ピモンというバンドを双子の妹と組んでいて、こちらはアイスランドのオルヴォワール・シモーヌという感じ。
http://icelandairwaves.is/artists/samaris/

6:00 pm
ハーミゲルヴィル(Hermigervill)
@アイスランドエア@スリップバリン(icelandair at slippbarinn)

 一緒に行った友だちが「この次のアクトもいいよ」というので残ることにする。アイスランド・エアの機内で配られたスケジュールのカヴァー/エアーウェイヴのWEB表紙の男の子、ハーミゲルヴィル。
 「ハイ、マイフレンド!」とテルミンを演奏しはじめ、そのままユニークなライブ・エレクトロサウンドへ。彼の前にずらーっと並んだ、エレクトロニカ機材を器用に操り、会場で一番楽しそうに踊っているのが彼。最高のダンスフロア! まだ6時! 聞くと彼もバーンドセンレトロ・ステフソンなどのアイスランドの著名バンドにも参加している。アイスランド、すでにヤバい。
http://icelandairwaves.is/artists/hermigervill/

8:00 pm
ムーム(Múm)
@Fríkirkjan

 教会でムームのショーがあると聞いて、行ってみると人数制限で入れない。教会の前には人だかり。周りをうろうろしてみると、ガラス張りの窓から少し中が見える。同じことをしている人と「見たいよね~」と話しながら、ステージのすぐ横の窓から覗くと、グランドピアノやアップタイトベースが見え、音も聞こえるので、ナイス! と思ったが、寒すぎて10分で退散。アイスランドでビョークと同じぐらい名前が知られている彼らは、エレクトロニック・グリッチ・ビートとエフェクト、伝統的、非伝統的な楽器を特徴とし、厳かな場所でのショーが似合うバンドだ。
http://icelandairwaves.is/artists/mum/

8:50 pm
ロウ・ロアー(Low roar, アイスランド/アメリカ)
@イドノ(Iðnó)

 ブルックリンの知り合いミュージシャンから紹介してもらったバンド。かなり大きな会場で、前に行くのに苦労するが、3人のミュージシャンが誰も手を付けないジャンルを開拓する。エレクトロポップ、美しいフォークソングのシンプルな定番アレンジに、ミニマルトーンやドローンにポストパンク要素を混ぜ合わせた、新古が出会うアイディア。
http://icelandairwaves.is/artists/low-roar-isus/

11:00 pm
オマー・ソウレイマン (Omar Souleyman, シリア)
@ハーパ・シルファバーグ(Harpa Silfurberg)

 シリアの伝説、オマーさん。CMJでも見逃したので、今回は是非見たかった。1994年にデビューし、最近まで海外では知られていなかった彼だが、すでに500以上のスタジオ・レコーディングとライヴ・カセット・アルバムがあリ、いまではボナルー、サマーステージ、グラストンベリー、ATPなどのフェスティヴァルの常連。定番のアラビック・ヴォーカル・スタイルとエレクトロをミックスし、世界中の人たちを踊らせている。ハーパ(会場)で一番列が出来ていたのも彼。アイスランドでタンクトップになれたのも、ここの観客のノリの良さが桁違いだからか。
http://icelandairwaves.is/artists/omar-souleyman-sy/

11:30 pm
ゴート(Goat, スウェーデン)
@ハーパ・ノルデュロス(Harpa Norðurljós)

 ハーパの隣の部屋へ移動し、スウェーデンの覆面バンドを見る。これも今年5月にプリマベラに行った友達から絶対見たほうが良い、とお墨付きを頂いていた。スウェーデンのコーポロンボロと言われる村出身で住民がブーズー教信者である。全員覆面で、クリスチャン服装で、目に痛いほどカラフルで、ステージプレゼンス、すべてすごいが、演奏のうまさと、フロントの女の子2人の、何か(ブーズー教呪い?)に取り付かれたようなダンスで、崇拝精神さえ芽生える。
http://icelandairwaves.is/artists/goat-se/


11/2 (sat)

4:00 pm
キスィキン (Kithkin, アメリカ)
@ヘルマー・スクエア(Hlemmur Square)

 たまたま、通りかかった会場で発見したバンドはシアトル出身。ハイパーなリズミック・シンセとトライバル・ドラム、カオティック・ギターに、前に前に出るシャウト・ヴォーカル。ベースとドラマーが一緒にスティックを持って、叩き合うパフォーマンスは、インテンスでエネルギッシュ。ベーシストはスピーカーの上に乗って飛び降りたりした。
http://icelandairwaves.is/artists/kithkin-us/

4:00 pm
シーシーアイ(Sisy ey)
@ ジョア(jor)
 と呼ばれる、3人女子はアン・ヴォーグのようなディスコ・エレクトロ・ヴォーカル・グループ。通りかかった洋服屋で、ウィスキーショットが振る舞われ、子供も一緒に踊っている。女性3人女子とDJ。彼女たちの美しい声と新しいジャンルをミックスし、世界でひとつしかない面白い才能を開拓している。アイスランドの女の子は、みんな声が深くて芯がしっかりしている。ビョークみたいなユニークな歌手は、ここには多数いるのだろう。
http://icelandairwaves.is/artists/sisy-ey/

5:00 pm
サミュエル・ジョン・サミェルソン・ビッグバンド(Samúel jón Samúelsson Big Band)
@ラッキーレコーズ(Lucky Records)

 KEXにムームを見に行ったのだが、多すぎて入れず。そのまま待つのもなんなので、近所のラッキー・レコーズに行くと、ちょうど彼らがプレイしていた。レイキャヴィックのアフロファンク・バンド、14人は、みんな思い思いの派手衣装(メインガイは、黄色と緑と青の幾何学模様)で、狭いレコード屋を占領(何せ大人14人!)。トニー・アレン、ジミ・テナーなど、国際的アーティストとコラボレートしている彼らのショーは、ホーンがメインでおもちゃ箱をひっくり返したような楽しさ。子供が一番喜んでたかな?
http://icelandairwaves.is/artists/samuel-jon-samuelsson-big-band/

6:30 pm
ロックロ(Rökkurró)
@KEX

 ムームは見れずだったが、1時間後に戻ってくると、KEXPがロックロを紹介しているところ。5年間このエアウェイヴスを中継し、たくさんの素晴らしいバンドに出演してもらえて嬉しいと。ヴォーカルのクリスティンはティアラをつけ、キーボードの女の子はガイコツの手を自分の手に付けちょっとハロウィン気分。メランコリックなセレナーデは、自国の寒く荒廃した景観を奮起させるが、壊れやすく滑らかなヴォーカルでユニークな暖かみも浸透させる。ムームやオラファー・アーナルド(見逃した!)ともツアーをともにし、2枚目のアルバムは日本盤もリリースされている。
http://icelandairwaves.is/artists/rokkurro/

7:10pm
キラ・キラ(Kira Kira)
@ハーパ・カルダロン(Harpa Kaldalón)

 おさげの女の子クリスティンがキラキラ。遊び心あるビーツやエクスペリメンタル・ポップが、ダーティ・メロディや、雷のようなベースラインを作る。彼女は、エレクトロ音楽やアートのエクスペリメンタル集団/レーベル、キッチン・モータースの設立メンバーでもある。今回のライヴは彼女と3人の男の子編成。トランペッター2人とトロンボーン。ドローンなエレクトロニックスとホーン隊の音は、サウンドトラックのようで、心地の良い映画館のようなソファーと会場の暖かさで夢の中へ。
http://icelandairwaves.is/artists/kira-kira/

8:00 pm
ユリア(Ylja)
@ハーパ・カルダロン(Harpa Kaldalón)

 アイスランドのジプシー・バンド? 女の子2人がアコースティックギターとヴォーカル。つま弾きギターにハーモニーの綺麗な子守唄が合わさり心地よすぎ。この会場は眠りたい人にもってこい。ギターの男の子は、英語が出来なくてごめんと謝り倒してたが、飛行機の中でも聞いたのを覚えていた。耳に優しいバンドで、エアウエイヴスは、良い物はどんなジャンルでもカヴァーしている、とまたひとつ勉強。
http://icelandairwaves.is/artists/ylja/

9:00 pm
マック・デマルコ (Mac Damrco, カナダ)
@ハーパ・シルフバーグ(Harpa Silfurberg)

 最近のキャプチャード・トラックスの5イヤーズ・フェスティヴァルにも出演していた、すきっ歯がかわいいカナダ出身の22歳。個人的には、エアウエイヴスで見たかったバンドの上位。彼のキャラが最高で、ヴィデオもCDもすぐに虜になる。ユリアが終わって会場がすぐ上なので移動が便利。歌いすぎて、声がガラガラしていたが、最上のロックンロールで、客とのコール・アンド・レスポンスも最高!最後には「サーフィンしていい?」と丁寧に断った上、ガツンと客にダイブ。ベースとギタリストのコミカルなぼけ突っ込みも受ける。
http://icelandairwaves.is/artists/mac-demarco-ca/

11:00 pm
ゴールドパンダ(Gold Panda,UK)
@レイキャヴィック・アート・ミュージアム(Reykjavik art museum)

 ゴールド・パンダ、たったひとりの男の子がこんなにも多くの人を踊らせるのは凄い。宇宙、サイケデリック、インド・テイストな映像も合わさり、ステージに彼がいるだけで、何か惹きつけるものがたしかにある。ブロック・パーティ、サミアン・モービル・ディスコなどからリミックスのリクエストが来るなど、国際的に活躍するエレクトロ・アーティスト。オマーさんの次に、一番長く列に並んだ(外だったので寒かった!)アーティスト。この時に、ビョークが後ろを歩いていくのを見る。地元なのだなと。
http://icelandairwaves.is/artists/gold-panda-uk/

0:10 am
サヴェージズ (savages, UK)
@レイキャヴィック・アート・ミュージアム(Reykjavik art museum)

 ここに入る時に、かなり列に並んだが、実はゴールド・パンダでなく、サヴェージズ狙いだったのかな。いままでで最前列に一番カメラマンが多く、後ろの人が見えないので、3~4曲後カメラ規制が入ったぐらい。CMJでも何でも彼女たちのハイプは凄い。エモーショナルなトラッシュ・ロックで、最後には客の上にダイブしたり、一番前の客の波にもまれながらそこに立って歌ってた。ワイルドで生々しく、顔をパンチされたような臨場感がある。
http://icelandairwaves.is/artists/savages-uk/

1:00 am
ゾラ・ジーザス(Zola Jesus,アメリカ)
@Gamla Bíó

 ドアの規制がとても厳しい会場で、水も持ち込めなかった。彼女もキャプチャード・トラックスからのお勧め。ファッション雑誌から出て来たような格好の彼女と、ヴァイオリン、ギター、ベース、ドラム。ロシアン・アメリカンシンガーのゾラ・ジーザスは声がとても深く地底の底まで響きそう(そして何かを呼びそう)。フィーバー・レイやエックス・エックスなどとツアーを共にしていると聞いて納得。ここも映画館のように椅子がありシート制。最後を締めるには、もってこいのパフォーマンスだった。
http://icelandairwaves.is/artists/zola-jesus-us/


11/3(sun)

4:00 pm
シャイニー・ダークリー(Shiny darkly, デンマーク)
@ラッキー・レコーズ (lucky records)

 またお気に入りのレコード屋に戻ってきた。デンマーク出身の22歳の男の子の4ピース。ニックケイヴやイアン・カーティスに影響を受けたダーク・ナルコティック・ロック。しかもルックスも良い。シアトルのKEXPやLAのKCRWなどが取り上げているのも納得。
http://icelandairwaves.is/artists/shiny-darkly-dk/

5:00 pm
キスィキン (Kithkin, アメリカ)
@ラッキー・レコーズ (lucky records)

 昨日偶然に見たシアトルのバンドが次だったので、そのまま居残る。昨日の方が印象は強かったが、すべてのセットが見れ、今回エアウエィブスで一番の収穫かもとニヤニヤする。ベースとドラム(立ちドラム)がヴォーカルで、このエネルギーはただ者ではない。

6:30 pm
ハーミゲルヴィル (Hermigervill)
@KEX

 一番最初に見たお気に入りDJをリピート。エアウエイヴスの顔だけあり、これぞアイスランドのDJ。「みんな、エアウエイヴス楽しんでる?僕はこれが最後のショーだよ」と客とのコミュニケートも最高。ラップトップでビートを作りながら、テルミンを操り、キーボードを弾き、一番忙しく、一番楽しそう。

11:00 pm
ティルバリー(Tilbury)
@ガンミリ・ガウクリン(Gamli Gaukurinn)

 一瞬ダウンしたが、またショーに戻ってくる。ドラマティックでダークでビタースイート、という文句のバンドなのだが、ラフなTシャツ、ボタンダウン姿、どこにでもいそうなお兄ちゃん5人組。60年代ギターと80年代のダークシンセと新しいエレクトロを足し、ディビット・リンチの映画に出てきそうな、と形容されるが、誇張しすぎかな。ショーの後、気さくにしゃべってくれた。
http://icelandairwaves.is/artists/tilbury/

0:00 am
モーセズ・ハイタワー(Moses hightower)
@ガンミリ・ガウクリン(Gamli Gaukurinn)

 エアウェイブス最後のバンドは地元のモーゼス・ハイタワー。大人な雰囲気を醸し出す70年代のブルー・アイド・ソウル。2008年に「レッツ・メイク・ベイビーズ」というシングルでアイスランド・リスナーの注意を引いたらしいが「みんなが親戚」というアイスランドなので、今回のフィナーレに相応しい。メンバー(ホーン隊)キャラかぶり過ぎで、ダン・ディーコンがメンバーに4人いるかと思った。
ショーが終わっても、もちろん誰も帰らない。そのままバー/DJパーティへと変わる。
http://icelandairwaves.is/artists/moses-hightower/

 他にもマムットマックなど、見たいバンドはたくさんあったがすべて見切れず、体がもう一体欲しかった。エアウェイヴスは、バンドを発見するだけでなく、レイキャビック、アイスランドの素晴らしさの発見でもあった。人が親切で、エアウェイヴスが終わった後にもうひとつライヴに行ったのだが、そこではシガーロスのメンバーが普通に飲んでいて(しかも著者は見れなかったクラフトワークのショーの帰り!)、一緒に朝まで遊んだりした。その後レイキャヴィックを出て地方に行く機会もあったが、広大な自然、アメリカでも日本でも見たことのない空の色は言葉で言い表せないほどだった。
 最後に、レコード店で発見したアイスランドのダブ・エレクトロバンドのオイバ・ラスタは、CDを聞いたらはまり、最近毎日聞いている。この寒いアイスランドで、なぜラスタ・バンドなのか。9人という大所帯のバンドは今回見れなくて残念だが大丈夫、すでに来年来る準備をしているから。

 すべてのラインナップはこちら。
http://icelandairwaves.is/line-up/

 こちらはキスィキンと一緒に旅をしたKEXPのレポート。良い写真がある。
http://www.cityartsonline.com/articles/iceland-airwaves-festival-frozen-fairytale-island

 ここからは七尾旅人NYショー

 七尾旅人さんの初のNYショーが10月29日~30日に行われた。 こちらがスケジュール
 10/29 (tue) at Pianos 7pm $8
 w/ Diane Coffee (Foxgen) and Deradoorian (ex Dirty Projectors)
 158 ludlow street
 New York, NY 10012
 212-505-3733
 http://www.ticketweb.com/

 10/30 (wed) @ Cake shop 8 pm $10
 w/ Greg Barris and The Forgiveness, Eartheater, Bodega Bay
 152 ludlow street
 New York, NY 10012
 212-253-0036
 https://facebook.com/events/401758796619436

 公式2日はどちらもローワーイースト・サイドの会場。クラブとインディ・ロックな別々の顔を持つ会場のピアノスケーキショップ。それぞれ違うセットと対バンで、2日連続で見る価値は十分。ショーの後、ブルックリンでのオファーを2つ頂いたので、結果的に良かったし、違うタイプの観客にもアピールできたと思う。

10/29 (火) @ ピアノス

 NYではかなり早い7時にはじまる。
 共演バンドは、フォクシジェンのドラマーのディアン・コーヒー、元ダーティ・プロジェクターズのメンバーだったエンジェルのデラドーリアン。
 http://www.pianosnyc.com/showroom/diane-coffee-10292013

 この日は旅人さんが希望していたドラマーのライアン・ソウヤーとの共演。

 ライアンはボアドラムでも日本に行ったり、リィス・チャザムの200ギターの唯一のドラマーとして参加したりしている。
 http://www.villagevoice.com/2009-08-04/voice-choices/rhys-chatham/
 前日に彼が参加する新しいバンド、ヒッギンス・ウォーター・プルーフ・ブラック・マジック・バンドを押し掛け、ぎりぎりで出演許可を頂いた。

 7時過ぎに登場し、英語の音声で本人の紹介。衣装は羽織に下駄。“星に願いを”、“オーモスト・ブルー”など2~3曲弾き語りの後は、ライアン・ソウヤーが登場。後は、めくるめく宇宙戦のようなインプロの嵐。旅人さんはエフェクトを駆使し、歌い、動き回りながら、ライアンとのプレイを心から楽しんでいるように見える。それに煽られ、オーディエンスの熱気も上昇し、演奏が終わった後は、拍手が鳴り止まなかった。リハーサルもないのに、この絡みは、はじめて会ったとは思えない。ライアンも終わった後は珍しく上機嫌で、「次もプレイする事があれば誘ってね、いやプレイできなくても見に行くよ。」と。次のデラドーリアンもディアン・コーヒーも、「今日は旅人とプレイできて嬉しい」とステージで賞賛していた。

10/30 (水) @ケーキショップ

 ハロウィンが次の日ということもあり、コスチュームな人もいる。出演は旅人さんを入れて4バンド。
 ボデガ・ベイはまだ結成して4ヶ月という新しいアート・ロック・バンド。ベースとドラマーの女の子が(ハーフ)日本人、ギター&ヴォーカルが白人、ギターがラテン系という、いかにもブルックリンなバンド。
 アース・イーターはガーディアン・エイリアンのアレックスのソロで、ガーディアン・エイリアンのファンである著者は楽しみだった。ロシア~東欧な雰囲気のコスチュームにゴス系メイク、黒リップ、バンジョー弾き語り。彼女自身がアート作品である。このショーの後、旅人さんは、3日後のガーディアン・エイリアンのショーに参加しないか、というオファーを頂く。
 http://eartheater.org

 グレッグ・バリスは、NYのコメディアンで、普段はハート・オブ・ダークネスというバンドを率いるが、今回はフォーギヴネス名義で登場。「ハローレディス・アンド・ジェントルマン、グレッグ・バリーーーース!!!」の声を合図に大暴走が続く。メンバー全員が一曲ずつヴォーカルを取り、コメディあり、客とのコール・アンド・レスポンスありで会場を盛り上げる。
 gregbarris.com

 11時に七尾旅人さんの登場。今日は完全にソロ。昨日来たお客さんもちらほら見えた。何日間か前に亡くなったNYの偉大なミュージシャン、ルーリードの「ウォーク・オン・ザ・ワイルド・サイド」の日本語カバーも披露し、1曲1曲拍手喝采を誘った。英語がしゃべれなくてごめん、と日本語でMCをしたり、予定時間をオーバーしても演奏が続き、旅人さんがNYで表現したかった物、思い、などが痛いほどオーディエンスに伝わってきた。
 ふたつのオフィシャル・ショーの後、会場とバンドからふたつのオファーがあり、ひとつはライアンと三味線奏者(!)のトリオ、ひとつはガーディアン・エイリアンのショーにヴォーカル参加した。
著者は残念ながら、参加できなかったので(アイスランドにいた)、本人の感想がその都度、ツイッターでつぶやかれているのでご参考に。
 https://twitter.com/tavito_net

 フライヤーをたくさん撒いたり、共演バンドとも、たくさん話をしたが、みんな旅人さんとプレイできたのは素晴らしい経験だったとのこと。何でも自分で行うDIYなアメリカなので、実際来てプレイしてみないとはじまらない。今回はよい例だと思う。ライアンやその他のミュージシャンと旅人さんのショーの前の告知
 http://www.brooklynvegan.com/archives/2013/10/japanese_artist.html

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Profile

沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住20年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。

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