ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. KMRU - Peel (review)
  2. Katalyst ──LA拠点の精鋭ジャズ・コレクティヴが初のアルバムをリリース (news)
  3. Tricky - Fall to Pieces (review)
  4. BLYY - Between man and time crYstaL poetrY is in motion. (review)
  5. interview with A Certain Ratio/Jez Kerr マンチェスター、ポストパンク・ファンクの伝説 (interviews)
  6. Global Communication - Transmissions (review)
  7. Oneohtrix Point Never ──OPNがニュー・アルバムをリリース (news)
  8. YPY - Compact Disc (review)
  9. interview with Saito テクノ夫婦 (interviews)
  10. ralph ──気鋭の若手ラッパーがファーストEPをリリース、プロデュースは Double Clapperz (news)
  11. Boris ──初期作品2作がジャック・ホワイトのレーベルよりリイシュー (news)
  12. interview with Diggs Duke 偽りなきソウルを追い求めて (interviews)
  13. interview with Phew いまは本当に、日常を繰り返すこと。それを自分に決めています (interviews)
  14. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  15. Run The Jewels ラン・ザ・ジュエルズは何がすごいのか (interviews)
  16. special talk “和レアリック”対談 (interviews)
  17. Boldy James / Sterling Toles - Manger on McNichols (review)
  18. Bruce Springsteen ──ブルース・スプリングスティーンが急遽新作をリリース、発売日は大統領選直前 (news)
  19. Special Interest - The Passion Of (review)
  20. interview with Wool & The Pants 東京の底から (interviews)

Home >  Regulars >  Random Access N.Y. > vol.79 :ディアハンター、3日間のNYショーをレポート- Deerhunter NY 3 shows 2015

Random Access N.Y.

Random Access N.Y.

vol.79 :ディアハンター、3日間のNYショーをレポート

Deerhunter NY 3 shows 2015

沢井陽子 Dec 11,2015 UP

Deerhunter
@ Rough trade 12/7
@ Irving plaza 12/8
@ Warsaw 12/9

 2015年、私がもっともよく聴いたアルバム3枚のうちの1枚がディアハンターの『フェイディング・フロンティア』だ。今回は、この力作を引っさげての、3日間のNYショー(全てソールドアウト)をレポートしよう。

 1日目は、ジュークリー(jukely.com)のイベントだった。つまり、一般客は入場できないのにソールド・アウト。
 ジュークリーとはメンバーのみがさまざまなイベントのゲスト・リストに載せてもらえるウェブサイト。月に$25払うと100以上のショーにアクセスできる。いまのところニューヨークを含む17都市で展開されていて、多彩なジャンルを網羅、メンバーでないとどんなショーがあるかわからない。
 さて、NYツアー1日目は、キャパ500ぐらいの、ディアハンターにとっては小さいハコだが、バンドにとってはウォームアップと言ったところでちょうどいいのかもしれない。
 ブラッドフォード・コックスのソロ・プロジェクト、アトラス・サウンドがすべてのショーのオープニングを務める。ギター、キーボード、マラカス、ヴォーカル、ドラム……すべてはフリーキーな即興で、何が出るのかわからない。毎日が新しく、ときには狂気さえ感じらる。アトラス・サウンドは、ブラッドフォードの可能性をとことん試す場なのだろう。
 そして、ディアハンターの登場。ブラッドフォードはキャップを被り、黄色のジャケットを着ている。メンバー3人も50年代風のグランジーな出で立ちで、この凸凹感が良い。ライヴは、ロケットが歌う“Desire Llines”でスタートした。
 ブラッドフォードは上機嫌で、ブルックリンに帰ってこれて嬉しいこと、ジュークリー、ラフトレードについて(どのdiscが好きだとか)、NYの最近について(グラスランズ、デス・バイ・オーディオはどうした?)などの会話を観客と楽しんでいた。
 誰かに「ナイスジャケット!」と突っ込まれると「グッドウィル(古着屋、スリフトストア)だよ」と言って、「NYにはグッドウィルはあるのか?」と訊く。で、自分の電話を出すと「僕はグッドウィルのアプリを持ってるんだ」と、お喋りしながら23丁目にあることを確認。ギターのロケットに「明日は早起きしてショッピング行かない?」と話しかける。なんだかんだと結局彼は、20分以上喋り続けていた。
 ブラッドフォードは、いままでにも(観客からのリクエストで)“マイ・シャローナ”のカヴァーを1時間プレイしたり、オーディエンスをステージに上げてキーボードをプレイさせたり、観葉植物をステージにあげそれとプレイ(?)したり……してきている。
 それで肝心のライヴだが、新曲の演奏が4曲ほどあって、あとは昔の曲、ファンにはお馴染みの曲が並ぶ。
 アンコール前の“Nothing Ever Happened”では10分以上に渡るジャムを展開。アンコールの“Ad Astra”では、ブラッドフォードはベースを弾く。ラストの“Fluorescent Grey”では10分以上におよびインプロヴィゼーションを見せたが、2時間弱のショーでは、他にも多くの場面で即興があった。

 2日目の会場のアービング・プラザは、キャパも1000人と昨日の2倍はある。オフィシャル・ショーの1日目ということもあり、バンドも気合が入っていた。
 8時にはアトラス・サウンドがはじまる。ライヴ開始の5分前にやって来たブラッドフォードは、ドアのセキュリティにバッチリひっかかっていた。で、お客さんに「この人、いまからステージだから」と擁護してもらう始末……。
 ディアハンターのショーはスムーズだった。ブラッドフォードのトークもほとんどなく(ホテル・プラザについてのみ。この日がアーヴィング・プラザだからか?)、ライティングによるサイケデリック感も増し、バンドも良いグルーヴに乗っていた。即興は危なっかしいところもあるのだが、音の厚さもバランスも良く、なにかと綺麗に着地する。私は、そのシューゲイズなグルーヴ感にずっと包まれていたかった。
 ライヴを終えた後のアフターパーティでは、ドラマーのモーゼス(aka moon diagrams) が、いまNYで一番いけてる会場、ベイビーズ・オール・ライトが運営するエルヴィス・ゲストハウスというバーでDJをした。

 3日目最終日は、グリーンポイントのポーリッシュ・ナショナル・ホーム内にあるワルソウでのショーだった。ポーリッシュの会場なので、ポーリッシュ料理が食べられる(ピエロギがオススメ)。
 長いラインを抜け、中に入ると、すでにアトラス・サウンドがはじまっていた。私は一番前に行く。そして、昨日や一昨日も来ていた人たちの会話に挟まれる。「今日は『Monomania』からの曲もやって欲しいね」「昨日は“Helicopter”後の最後の曲のインプロがよかったなー」「“Fluorescent Grey”ね。やっぱり“Nothing Ever Happened ”がどうなるかだよねー」など……まあ、濃い会話だ。
 隣の男の子が、「今日のアトラス・サウンドは1曲だけ彼の曲で、他は全部インプロだったよ」と教えてくれた。ちなみに最前列は男の子がほとんどで、ショーがはじまると、ずっとシンガロング。
 一番前で見ると、ブラッドフォードのペダルの多さやモーゼス(ドラム)のロボットのようなドラミング、ロケット(ギター)の落ち着きぶりがよくわかる。ジョシュ(ベース)のグルーヴもね。
 その晩のブラッドフォードとロケットはともにストライプ・シャツ着ていた。たまたまだろうが、その服は、たしかにグッドウィルで売っていそうだ。
 ライヴ終了後は近くのダンス・クラブ、グッドルームで再びモーゼスのDJがあった。4ADの社長も上機嫌。これにてNYショーはすべて終了。

 3日間のライヴはほとんど同じセットリストだが、しかし彼らのショーは1日1日違う。ブラッドフォード曰く「僕らは実験的バンドだよ。だって僕のiPod を1時間ずっと聞きたいかい?」
 何が出るかわからないヒヤヒヤ感と隣り合わせに、彼の音楽への真摯な姿と才能はショーからヒシヒシと伝わってきた。アーヴィング・プラザでの“Nothing Ever Happened”は、この曲を新たなレベルに高めた、最高のロング・ヴァージョンだった。
 グルーヴに乗ったバンドは火がついたように走り続ける。ディアハンターはいま新しい伝説を作っている。

■Setlist (Irving plaza)
Desire Lines
Breaker
Duplex Planet
Revival
Don't Cry
Living My Life
Rainwater Cassette Exchange
All The Same
Take Care
Nothing Ever Happened
Encore:
Ad Astra
Cover Me (Slowly)
Agoraphobia
Helicopter
Fluorescent Grey

http://deerhuntermusic.com

Random Access N.Y. - Back Number

Profile

沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住20年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。

COLUMNS