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Lotus Plaza

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Spooky Action At A Distance

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橋元優歩   Apr 24,2012 UP
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 ギター・ミュージックは終わっている、というのはどのくらいの人びとの実感だろうか。『エレキングvol.5』の倉本諒氏のレポートではそのことがさらっと言及されていて、そうだよな、と共感したのだが、しかし「終わっている」というのはよくよくと考えればどういう意味だろう。いまギターをもちいた音楽にたまたまおもしろいものがないということなのか、それとも歴史の針が進んでギターでやれることの可能性自体がほとんどのこされていないということなのか。たとえばマーク・マッガイアの存在と輝きはほとんど後者を証すかのようにみえる。あれほどひたむきにギターそのものと向かい合い、長い時間をギターとともに過ごし、過去の音を学び、清新に胸を打つような演奏であるのに、方法自体にとくに新しいものが含まれていないのは、逆にギターにできることの限界点をあぶり出すものかもしれない。

 ロケット・パントはどうだろうか。彼自身はギターという楽器の可能性を伸張しようというようなアーティストとは異なる。それよりはギター・ロックというフォームを愛し、その引力に寄せられている。もちろん彼の音楽はそうした枠にはとどまらず、アンビエント的な要素や、反復性の強い曲づくりといいモータリックなビートといい、クラウトロックの影響などもあるだろう。それは昨今の流行でもありマーク・マッガイアらとも共有する部分である。しかしこの『スプーキー・アクション・アット・ア・ディスタンス』のB面などを聴けばジーザス・アンド・メリーチェインやベル・アンド・セバスチャンの影までもが浮かび上がってこないだろうか。筆者がこの作品にあえて見出したいのは、ディレイの煙幕の向こう、まるで亡霊のように立ち上がっては消える、グラスゴー的なギター・ポップである。それはディアハンターの名からも、ソロとしては1枚めとなる前作のイメージからも距離があり、両者の音響的な部分のさらなる展開を期待していたリスナーにはあまりおもしろくないと感じられるかもしれない。だが今作は、ソングライターとしてのロケットの愛すべき資質がはっきりうかがわれる作品であると思う。
 ディアハンターにおいても、ブラッドフォード・コックスと彼が何を分かっていたのかがみえてくる。ブラッドフォードの曲は彼の念のようなもので立っている。ロケットの曲は構成力で立っている。ロケットのロマンチックなギター・ワークはとても丁寧なものだ。本作は意外にもすっきりと整ったプロダクションを得ている。ギター ・ポップとはひとつの強力なフォームの名だ。フォームは愛され継承されていくものだ。仮にギターという楽器の可能性がすべて発見しつくされているのだとしても、ギター・ミュージックは消えはしない。ロケット・パントはそうした地平に立っているアーティストではないだろうか。

 ディアハンターのギタリストとして、またソロ名義のロータス・プラザとしても評価を得る青年ロケット・パント。ロータス・プラザとしてはじめての作品である前作『ザ・フラッド・ライト・コレクティヴ』は、ブラッドフォード・コックスらと高校の頃に組んでいたバンドの名だそうで、ブラッドフォードも打楽器で参加するほかいろいろとアイディアを提供していたというから、彼らのバンドやソロ作品全体には、音の上からも強いつながりがあると言ってよいだろう。
 だが『ザ・フラッド・ライト・コレクティヴ』のウォール・オブ・サウンド的なプロダクション、波うつディレイやギター・ループ、そこにまみれて不明瞭なロングトーンのヴォーカリゼーションといったものは、今作ではこざっぱりと払われている。薄暮のような音色は整然とし、ソングとしての輪郭がはっきりとみえ、明瞭なリズムをともなったロック・ナンバーへと変化している。B面の1曲目"モノリス"などから聴きはじめるとびっくりするかもしれない。
 B面を走り抜ける爽快なリズム感はじっさいこのアルバムの個性だといえるだろう。"リメンバー・アワ・デイズ"のくっきりとしたベース・ラインにもびっくりした。"イヴニングネス"冒頭のチラチラとした上ものを聴くまではすぐにロケットの名が結びつかないかもしれない。
 ジャケット・デザインも、白昼夢を思わせる幻覚的な前作のイメージをわずかに引きつつ、風船の束の存在によってこの画面外の、よりひらけた空間への展開を予感させている。個人的にはおおむね後半の曲が好きだが、A面ではよりどっしりとしたテンポで骨の太い楽曲がそろっている。ルー・リードっぽく歌われるヴォーカルも、こんな声だったのかと新鮮な思いだ。"アウト・オブ・タッチ"などは風格すらただよう。
 こうしたアルバムをつみかさね、ライヴも丁寧におこない、多くの人から愛されるソングライターになるというのは、ロケット・パントにとってよい未来につながる選択肢なのではないだろうか。

橋元優歩