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大倉 翼   Jun 05,2013 UP
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 高校時代、ディアハンターの『マイクロキャッスル』と『ハルシオン・ダイジェスト』にやられてしまった。そう書いただけで、そんなにハッピーな人生を送ってきていないということをほんの少しおわかり頂けるだろう。いまだにそうだが、僕は目の前にある現実を直視できるだけの強さを持ち合わせていない。だから僕は10代半ばにして自分の居場所を探すことを諦めてしまった。というよりは逃げ場を探しはじめた。そこから僕の音楽への冒険がはじまった。
 ディアハンターの『マイクロキャッスル』を聴きながら真夜中に散歩をした。ドリーミーな世界に守られるように。それは僕にひとときの安息を与えてくれた。

 『モノマニア』が発売された。アルバムがリリースされる少し前、ディアハンターがナイトショーでタイトル曲をパフォーマンスした映像を見た。衝撃的だった。ブラッドフォードはジョーイのようだし、指に包帯を巻いている。最後には、スタジオを飛び出した。それは僕にとって初めてのロックンロールの暴走をリアルタイムで感じた瞬間だったかもしれない。僕の友人はその映像を見た日、僕との約束をすっぽかし、パソコンをぶっ壊し、アコースティック・ギターも少し壊した。彼はブラッドフォードのせいだと言った。僕らはまだロックンロールに熱狂することができる。

 アルバムは"Neon Junkyard"で幕を開ける。初めて聴いたときはこれこそディアハンターだと思った。それがたとえ、前作までの僕らを包み込んだリバーブが消え去っていたとしても。

「ガラクタの中から光を見つけるんだ」
 『モノマニア』は、ブラッドフォード・コックスの救われることのない魂の叫びで溢れているが、同時に現実のなかでもがき続けるという強さもたしかに感じる。4曲目の"Pensacola"では、ロックンロールという古さを身にまとった新たなディアハンターが顔を見せる。9曲目は僕の友人を奇行へと走らせた悪名高きタイトル・トラック。曲の半分以上を長々と反復するアウトロが占める。これぞディアハンター。これまでのサウンドとはかけ離れているかもしれないが、兼ねてからブラッドフォードはディアハンターをロックンロール・バンドであると言い続けていた。

 僕は1995年生まれで、僕の音楽体験は最初から過ぎ去ったムーヴメントを追体験し、思いを馳せることではじまった。しかし、00年代後半からシーンに出てきたディアハンターやガールズ、ザ・ドラムス、ノー・エイジといったインディ・バンドに青春時代、リアルタイムで触れることが出来たのはとても誇らしいことだと思う。
 ディアハンターの新たな旅立ちを心から祝福するとともに、僕らは夜には"Neon Junkyard"に集まり、ガラクタのなかから光を見つけよう。僕らの世代にはディアハンターがいる。これは絶望を分かち合うためのアルバムではない。

大倉 翼