Home > Regulars > Random Access N.Y. > vol.99:またしてもディアハンターです- ディアハンター @Elsewhere 5/15/2018/ @Le Poisson Rouge 5/16/2018
沢井陽子 May 24,2018 UP
ディア・ハンターはもう何10回と見ているが、同じ内容のショーはない。ボールルーム・マーファとメキシカン・サマーがオーガナイズするマーファ・マイス。バーニングマンに音楽要素がもっと入ったフェスティヴァル、ワークショップだ。そのミュージシャン・イン・レジデンスに選ばれたのが、ディアハンターのブラッドフォード・コックスとケイト・ル・ボン。
ケイト・ル・ボンは、マニック・ストリート・プリチャーズ、ネオン・ネオン、スーパー・ファーリー・アニマルズなどとのコラボレーションで知られる引っ張りだこのシンガー・ソングライター。ウエールズ出身で、現在LA在住。最近は、ホワイト・フェンスのティム・プレスリーとドリンクスとして活動している。で、マーファ・マイスのセッションは〈メキシカン・サマー〉からEPとしてリリースされる。そしてブラッドフォードはそれだけでは終わらない。ディアハンターのニュー・アルバムのレコーディング中だった彼は、マーファ・マイスの開催地であるウエスト・テキサスにバンドを呼び寄せると、ケイト・ル・ボンにプロデュースさせてアルバムをレコーディングした。
そして、そのニュー・アルバムが届く前にニューヨークで2日間のショーが催された。ブルックリンのエルスホエア、マンハッタンのル・ポワソン・ルーグ、どちらのライヴもソールドアウト。ニュー・アルバムの曲が聞けるということで、みんなの期待も大きかった。
1日目はほとんどMCもなく、新曲、ヒット曲を組み合わせのウォームアップ・ショー。2日目は調子が出てきたのか、ブラッドフォードは喋る喋る。自分のギターのノイズが気になると、5回ぐらい曲をやり直し(”element”)、その曲についての説明をし(氷河期についてらしい)、アルバムについての説明をした。
アンコールで何曲かプレイした頃には、すでに1時間半以上経っていた。ショーも終わりかというところで、「良いアイディアがある」と言って、フロアから友だち(=アニマル・コレクティブ)を呼び、自分のiPhoneから彼らに曲を選ばせて再生するが、それでは物足らず、結局みんなでジャムることに。エイビー・テアがヴォーカル、ディーキンがサンプラー、ジオロジストがキーボード、そしてディアハンターという、インディ・ファンよだれ物のラインナップがじつげん。そこにオープナーのシンディ・リー(元ウーメン)も加わり、20分ほどのジャムが続いた。
さすがと言うか、録音しなかったのを後悔するほどインプロのほうが活き活きしている。観客も、予期しない展開に大ノリで歓声を送った。
終わった後もブラッドフォードの喋りは続いた。今回のショーでは300本限定の10曲入りのカセットテープ、「The Double Dream of Spring」が発売されたが、1日目でソールドアウト。ブラッドフォードは、それを転売業者から決して買わないようにと呼びかける。で、この音楽はみんなの物だからと言って、自分のiPhoneからカセットの曲を流したままショーを終える。
ちなみに、欲しい人には、サインアップすればカセットが送って貰えるようになっていた。いつもヒヤヒヤさせられるが、ディアハンターのショーはだから見逃せない。
Yoko Sawai
5/23/2018