MOST READ

  1. 弟の夫 - 田亀源五郎 (review)
  2. Call And Response Records ──日本はじつはインディ・ロックの宝庫 (news)
  3. Shobaleader One──スクエアプッシャー率いる覆面バンドがアルバムをリリース、来日公演も決定 (news)
  4. Peaking Lights - The Fifth State Of Consciousness (review)
  5. Between the Borders ──下北で日曜の昼過ぎから、BUSHMIND企画のイベントあり (news)
  6. interview with Arca 夏休み特別企画:アルカ、ロング・ロング・インタヴュー(2) (interviews)
  7. interview with Jeff Paker 話題作『The New Breed』のメンバーとの来日ライヴ直前スペシャル (interviews)
  8. KANDYTOWN - ──キャンディタウンがついにメジャー・デビュー (news)
  9. Molecule Plane - SCHEMATIC (review)
  10. Jeff Parker - The New Breed (review)
  11. special talk : ジョン・グラント × 田亀源五郎 - 何を歌い、どう描くか──ゲイ・アーティストたちのリアリティ (interviews)
  12. 子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から - ブレイディみかこ (review)
  13. special talk : Shota Shimizu × YOUNG JUJU 特別対談:清水翔太 × YOUNG JUJU (interviews)
  14. Juana Molina──フアナ・モリーナの来日が決定 (news)
  15. Jlin - Black Origami (review)
  16. !!! (Chk Chk Chk)──チック・チック・チックがニュー・アルバムをリリース (news)
  17. Kelela ──新世代R&Bシンガー、ケレラがついにデビュー・アルバムをリリース (news)
  18. Young Fathers - ──いまUKが面白い理由その2──ヤング・ファーザーズ、ただいま新作を全曲試聴できます (news)
  19. Klein ──ブラック・エレクトロニカの俊士、クラインが〈ハイパーダブ〉と契約! (news)
  20. Lorde - Melodrama (review)

Home >  Regulars >  Random Access N.Y. > vol.77:NYのラフ・トレードは良いところ- Rough Trade-Little Wings/Weyes Blood

Random Access N.Y.

Random Access N.Y.

vol.77:NYのラフ・トレードは良いところ

Rough Trade-Little Wings/Weyes Blood

沢井陽子 Sep 25,2015 UP

 雨の木曜日、リトル・ウィングスを見ようとラフ・トレードにやって来た。リトル・ウィングスは、カイル・フィールドのバンド名。サンフランシスコ在住のアーティスト、サーファー、自由人。2年前にケーキ・ショップで初めて見たときから、この人は存在が伝説、と密かに追い続けてきた。ビル・カラハン、ボニー“プリンス”ビリー、ニュートラル・ミルク・ホテル、そしてボブ・ディランなどを思い起こさせる、ブルージーでフォーキーなシンガー・ソングライター。
 リトル・ウィングスは、今年5月に、ウッシストから11枚目のアルバム「エクスプレインズ」をリリースした。ショーではリアル・エステイトのメンバーが参加したり、場所によって自由にバンドを変形する。
 会場は、8割入りぐらいで年齢層は30代~。グリーンポイント辺りに住んで、サーフィンが好きそうな男女が目立った。カイルは優しい息遣いのする歌を話しかけるように歌い、ときには観客に話しかける。彼の歌を聞くというより、流れに任せる彼の生きざまを聴く感じである。

 共演は、〈メキシカン・サマー〉から作品をリリースしているウェイス・ブラッド。彼女はジャッキー・オー・マザー・ファッカーのメンバーとしてツアーしたり、アリエル・ピンクの『マチュア・シームス』でヴォーカルを披露している女の子である。本名ナタリー・マーリング、見た目も歌も、ゾラ・ジーザスを思い起こさせるが、こちらはもう少し浮遊感があり隙がある。

 着いたときはウェイス・ブラッドの真っ最中だったが、外のレコード・ストアはまだ空いていて、意外にも購買意欲を奮い立たせた。N9ストリートの川岸にあり、繁華街からは少し離れ、不安になったところでサインが現れるこのお店は、雨とライヴだからか人は少なく、ひとりの店員とお客さんが雑談している中で、黙々とアイホンを眺めるユダヤ人のおじさんや、リトル・ウィングスまで時間潰しをしているカップルなどがいた。
1週間後の週末に戻ると、ライヴの合間を埋める人や、メインドラッグ・コーナーで機材を試す人、真剣にレコードを選ぶ人など、ボチボチ賑わっていた。95パーセントが男子。
店を一周してみたら、アザー・ミュージックでは見つからないような、イギリスのバンドのレコードも多く(ロイヤル・へディック、フートン・テニス・クラブ、アーリー・マンマルなど)、広さもありかなり楽しい。
インディ・ロック、ヒップホップ、エレクトロニック(イースト・インディア・ユース、ミリー・アンド・アンドレア、ボーズ・オブ・カナダ)、ニューウェイヴ、ポストパンク(あるいはクラフトワーク、ゲイリー・ニューマン)、ジャズ、フォーク、カントリー(クリス・ポッター、スティーブ・ガン)、ソウル(ディアンジェロ、アル・グリーン)、ラフトレ・エッセンシャル(リバティーンズ、MC5、スリント)などジャンルに分かれ面だしになっていて、古いものから、定番、最新リリースまでほど良く抑えている。
トートバッグやTシャツなどのグッズも何気なくおいてあり、試聴に使うヘッドフォンはbowers& wilkinsで、周りのノイズを完璧にシャットアウトし、聴こえの違いにすぐに欲しくなる。もちろんその場で購入できる。今時レコード屋で試聴なんて誰がする、と思いなかれ。このヘッドホンで聴くと、いつも聴いている音楽が何倍にも輝く。

 2Fは本のコーナーで、アート本、音楽本、有名人インタヴュー本、文学物、アート、音楽雑誌、プロテスト、アウトドア、豆知識、セックス、ドラッグ、ロックンロールコーナーなど興味深い品揃え。本を見ていると、店内音楽より、隣のバックルームのバンド演奏が丸聞こえなのだが。

 ラフ・トレードでは、バワリープレゼンツがショーをブックし、カスピアン、ユース・ラグーン、マリタイム、ジュリア・ホルターあたりのバンドがブックされていて、土曜日のお昼や、ランダムな夜にはプロモーション・イベントもやっている。イベントのときは人も多いが、普段はひっそりしているので、真剣にレコードを選びたい人にはお勧め。カフェもあるし、フォト・ブースもあるし、アート・ギャラリーも、NYとロンドン気分が一度に味わえる秘密の隠れ家。この立地(駅から結構遠い)だが、来る価値は十分にあり。

www.roughtradenyc.com

Random Access N.Y. - Back Number

沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住16年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。

COLUMNS