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〈FUTURE FREQUENCIES FESTIVAL 2026〉出演者解説

〈FUTURE FREQUENCIES FESTIVAL 2026〉出演者解説

──ジョイ・オービソン、セイバーズ・オブ・パラダイス、ノサッジ・シング×真鍋大度、ロレイン・ジェイムズほか

文 河村祐介 Jun 19,2026 UP

 高輪ゲートウェイ〈MoN Takanawa〉内のスペース〈Box 1000〉をメイン会場に7月11日(土)、7月12日(日)の二日間に渡って繰り広げられるフェス〈FUTURE FREQUENCIES FESTIVAL〉。メディア・アート/音楽の分野で長らく刺激的な活動やキュレーションなどをおこなってきた真鍋大度、そして〈Warp〉や〈Ninja Tune〉、〈ON-U Sound〉、そしてある意味で世界的なインディ・レーベルを束ねる〈Beggars Group〉などなど、エッジーな海外からの音楽を紹介・招聘してきたBEATINKが仕掛ける、アート/音楽/テクノロジーと、さまざまな分野を横断する新たなフェスだ。

 本稿は7月11日(土)の出演メンツを中心に解説し、このイベントの魅力を紹介する。

 まず、ヘッドライナーは待望の来日となるUKベース・ミュージック・シーンの、もはや重鎮、ジョーイ・オービソンだ。2000年代末、アンダーグラウンドにおけるポスト・ダブステップの流れのなかで、まさにダンスフロアの真ん中で頭角を現したDJ、アーティストと言えるだろう。ハーフステップ・ダブステップの隆盛により、一度は忘れ去られたUKガラージのグルーヴ感をシーンに強烈に思い出させた2009年「Hyph Mngo」でシーンに躍り出た。現在ほどテクノやハウス、ベース・ミュージックがそこまで交叉していなかった時代に、ある意味でその先取りをした感覚もある。以来、先鋭的なブロークン・テクノやベース・ミュージックをコンスタントに12インチで、自身の〈Hinge Finger〉を中心にリリース。そしてDJとして着実にキャリアを積んでいった。
 そして2021年には〈XL Recordings〉から初のアルバム・サイズの作品として、ミックステープ『still slipping vol.1』をリリース。同レーベル所属の朋友とも言えるオーヴァーモノとともに、名実ともにUKのベース・ミュージック・シーンの代表的なアーティストとなった。ちなみに『still slipping vol.1』のジャケットに写る女性は、彼をレイヴに誘った実際の叔母の写真を使用していて、それこそ彼の出自を表明したデザインとも言えるだろう(ちなみに別の親戚筋には、叔父にベテラン・ジャングリスト、レイ・キースがいる)。また最近ではリル・ヨッティ、フレッド・アゲイン、プレイボーイ・カーティなどとも共演するなど、新たな領域にも表現の幅を広げているが、やはり彼の本領はDJにある。『still slipping vol.1』以降もシングル単位でのリリースは、その現れではないだろうか。そんな彼のDJプレイを見逃さない手はないだろう。

 またUKのベース・ミュージック・シーンからもうひとり注目のアクトとして紹介したいのは、ロレイン・ジェイムス。ダブステップ~ベース・ミュージックの老舗にして名門〈Hyperdub〉で2019年にアルバム・デビューして以来、作品ごとに着実に新たな表現に挑戦し、別名義のWhatever the Weather名義も含めて、評価を高め続けている。つい先日も「そこにきたか!」と思わずのけぞってしまった、グリッチ・ビートと現代的なベース・ミュージックを融合させ、ゲスト・ヴォーカリストたちをフィーチャーした新作『Detached from the Rest of You』をリリースしたばかり。ここ数年コンスタントに来日しているので、そのライヴも定評があるが、かの新作の直後、本フェスでどのような演奏をするのか楽しみでならない。

 本イベントはスペース〈Box 1000〉にておこなわれるのだが、ここの公式ページにあたれば、スペースの紹介として「ステージ全面にLEDが設置された最新のシアター空間」とある。この文言で真っ先に超絶なライヴ体験が予想されるのが主宰の真鍋大度とノサッジ・シングによるコラボレーション・ライヴだ。2000年代末にフライング・ロータスとともにLAの伝説的イベンド〈Low End Theory〉でしのぎを削って頭角を現したノサッジ・シングは、真鍋とは彼のMVでのコラボに端を発して、こうしたオーディオ・ヴィジュアルのコラボ・ライヴ・プロジェクトとして発展。これまでに〈コーチェラ〉や〈ソナー〉など大型フェスにも出演し、高い評価を受け続けている。まさにオーディオ・ヴィジュアルが融合した最新体験がそこには用意されているだろう。

 そしてある人にとっては30年ぶりの遭遇になるかもしれない、まさかの復活を果たしたバンド、セイバーズ・オブ・パラダイスプライマル・スクリームのプロデュースにて一躍有名になりながらも、地下の実験的なテクノ・シーンに自らの身を投じるために故アンドリュー・ウェザオールが1992年、UKハウスを定義したジ・アルーフのジャグズ・クーナー&ゲイリー・バーンズと組んだのが本ユニットだ。リミキサー・プロジェクトとしてスタートしながら、実験的ダブ・サウンドの金字塔的アルバム、セカンドの『Haunted Dancehall』(1994年)をリリースした頃より、一時的にライヴ・バンドとして活動していたが、1995年、当時新宿にあった〈リキッドルーム〉のライヴを最後にその活動に終止符を打っている(このライヴのダブ・ミックスはエイドリアン・シャーウッド)。ウェザオールの没後、昨年(2025)、突如ワールド・ツアーを発表し30年振りに活動を再開して、ついに待望の来日となる。この日は〈CLUB SET〉と銘打たれているがどのようなセットになるか楽しみだ。

 第2弾の出演者発表では、上記ロレイン・ジェイムスとともにもう2組のアーティストが発表されている。昨今、海外でも人気の高いアーティストを輩出しているソウルのアンダーグラウンド・エレクトロニック・ミュージック・シーンから、まさにロレイン・ジェイムスやジョイ・オービソンのようなUKベース・ミュージックの影響を受け、自らの音としてエッジーに構築、少し前に来日ライヴも披露したマウント・エックスエルアールも登場。そしてオリジナル音源はもとより、さまざまな舞台や最近では話題となった『国宝』の音楽を手がけるなど劇伴でも多方面で活動する原摩利彦の出演も決定している。どちらかと言えばダンス系のイベントで彼がどのような表現を見せるのか楽しみだ。

 UKダンス・ミュージックのトップランカーから、アンダーグラウンドなベース・ミュージック・シーンのレフトフィールド・アクト、刺激的なオーディオ・ヴィジュアル・プロジェクト、さらにはUKダンス・シーンのレジェンドまで幅広いサウンドが楽しめるひと晩の体験となるだろう。

Profile

河村祐介/Yusuke Kawamura河村祐介/Yusuke Kawamura
1981年生まれ。渋谷区幡ヶ谷出身。2004年~2009年『remix』編集部、LIQUIDROOM勤務やふらふらとフリーを経て、2013年より、OTOTOY編集部所属。その他、テクノ、ダブ方面などを中心にプラプラと書いたりしています。監修本に『DUB入門――ルーツからニューウェイヴ、テクノ、ベース・ミュージックへ』(2024年)がある。

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