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昨年末、ファンカデリックは33年ぶりの3枚組33曲入りのオリジナル・アルバムを発表した。ジョージ・クリントンはいまはもうデトロイトにはいないが、彼の地にPファンクが存在したことは、デトロイト・テクノを語る上で強調し過ぎてもいいくらい重要である。「デトロイト・テクノとは、エレヴェイターのなかでクラフトワークとジョージ・クリントンが鉢合わせになった音楽」とはデリック・メイの名言だが、その「ジョージ・クリントン」の部分、すなわちモータウンとキング牧師の記憶、すなわちレベル・ミュージックとしての黒人音楽というコンテキストは、デトロイトならではのメルクマールであり、そういう意味でホアン・アトキンスとは、文字通りのゴッドファーザー・オブ・デトロイト・テクノだ。
“ノー・UFOズ”は、ハウスとエレクトロ(=クラフトワーク)を融合した最初の曲だと評価されているが、同時にリリックには、Pファンクのセンスが注がれている。ダマされるな、UFOはいる(希望はある)、飛べ……この「飛べ(fly)」には、ハイになるイメージと飛翔するイメージが重なっている。
いまならこの曲こそ重要だったと言えるのだが、当時はいろいろなものがいちどにどさっと来てしまったので、紛れてしまったのだろう。あるいは彼の政治性は70年代的なものを引きずった古くさいものに見えてしまったのかもしれない。アシッド・ハウスの時代では、ひたすら踊るのに歌詞は邪魔だった。
モデル500名義でのアルバムとしては、1999年の『Mind And Body 』以来の4枚目(うち1枚はベスト盤だから、オリジナル・アルバムとしては3枚目)となる。マイク・バンクスとアンプ・フィドラーという、Pファンクを知るふたりが参加した本作は、まさに「クラフトワークとジョージ・クリントンが鉢合わせた」音楽としてのデトロイト・テクノだ。1曲目の“ Hi NRG”から順に聴けばいい。ファンクとテクノ、あやゆる要素をひとつのまとめた“ノー・UFOズ”の頃のアトキンスがいる。6曲目の“GROOVE”では、“マゴット・ブレイン”のエディ・ヘイゼルじゃないかと錯覚してしまうであろうギターソロが挿入される。
アルバムのほとんどはクラフトワーク『コンピュータ・ワールド』のアフロ・アメリカン・ヴァージョンだが、作品にはミニマル・テクノがあり、驚くべきことにダブステップへのリスペクトもある。新生〈R&S〉は、5年前に、みんが知るところの青と銀色のスリーヴでモデル500の新曲をリリースしたものだが、あれはたしかに粋だった。これが俺たちのルーツだ。レーベル側の主張が見える。「CMYK」がヒットしていた頃だったからなおさら。
アルバムの最後は、2012年に〈R&S〉からシングルとしてリリースされた“ Control”。クラフトワークが歳を取らないように、モデル500はいまも現役のマンマシンだ。電子音に命を吹き込み、リスナーの感情を発展させる華麗なマシン・ファンク。しかもこれはデトロイトでしか生まれない音なのである。
野田努