Home > News > Primal Scream - ——90年代初頭のまばゆさ、その青写真としてのプライマル・スクリーム『デモデリカ』
「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」のように、たった1枚のレコードが世界の見方を変えてしまうことがポップ・ミュージックの世界では起こりうるが、プライマル・スクリームの「ローデッド」もそんな1枚だった。世界の見方、見えはじめた景色、考え方、これから聴きたい音楽、これから着たい服、そして行きたい場所、そういったものすべてを変えてしまった。イギリスだけの話ではない。日本においてもまったくそうだった。若者文化を決定的に変えてしまった、これほどパワフルな曲はそうあるものではない。そして、それに続いた壮大な「カム・トゥギャザー」は、いまが変革の季節であることを、念を押すかのように言い聞かせた。ソウルフルな「ドント・ファイト・イット・フィール・イット」は同じようにアンセムとなり、「ハイヤー・ザン・ザ・サン」のサイケデリアに誰もが昇天した。こうした一連の奇跡的なシングルのリリースを経て、『スクリーマデリカ』は1991年9月にリリースされた。レイヴ・カルチャーの時代のまったく新しいサイケデリア、いわば90年代の『ペット・サウンズ』、つまり時代の金字塔である。
しかしながら、そのデモトラック集が出ると聴いて、正直なところとくに気持ちが上がったわけではなかった。なにせ、まあデモ集なのだ。収録されているアンドリュー・ウェザオールによる“シャイン・ライク・スターズ”のふたつのリミックス(ひとつはまったくの未発表)は聴いてみたいけどねと、そんなようなたいした期待もなく『デモデリカ』を聴きはじめたわけだが、ひとことで言えば、もうすっかり感動してしまった。ここにあるのは『スクリーマデリカ』に収録された曲のいわば青写真であり、それらの多くは、あのアルバムの高揚感を思えば意外なほどメランコリックで、内省的だったことがよくわかる。『スクリーマデリカ』の中心部にあるのは、決して単純な多幸感でもわかりやすい連帯感でもなかった。また、バンド演奏によるそれらの最初の姿からは、それぞれの曲に込められた元のアイデア(ゴスペルだったり、カーティス・メイフィールドだったり、Pファンクだったり、シーズだったり、ビーチ・ボーイズだったり)がよくわかる点も面白い。こうした聴き方は『スクリーマデリカ』をすでに愛聴した経験があるから可能なわけで、この時期のプライマル・スクリームに思い入れがある人には声を大にして推薦したい。完成品はもちろん逸品だけれど、ウェザオールたちに加工される前の生々しいその姿もまた魅力的だった。
ブックレットにはジョン・サヴェージによる長いライナーノーツ(日本語訳)があり、また、メンバーによる詳細な全曲解説(ボーナストラックは除く)もある。これらも充分一読に値します。
Primal Scream
Demodelica
Columbia/ソニー
※日本盤は10月27日発売
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今日(昨日?)日本版発売だったかー。サブスクで聴いたけど、これは買いたくなる素晴らしさだった。Primal Scream ——90年代初頭のまばゆさ、その青写真としてのプライマル・スクリーム『デモデリカ』 | ele-king… https://t.co/p3mOqkYrF7@MarHear 10.28 01:53
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