Home > News > DJが描く日本のヒップホップ、DJ YAS著『ジャパニーズ・ヒップホップ第二世代——あるDJの証言』刊行のお知らせ

少なくとも1990年代まで、イギリスという国は大衆音楽文化(とりわけポップ・カルチャーと呼ばれるもの)の世界に向けての発信地だった。アメリカで生まれた音楽が母国で無視されていても、イギリスはいち早くすくい上げて、その良さを広めるだけでなく自国でヒットさせるぐらいの熱量/文化土壌がメディアにも現場にもあった。
ゆえに1980年代にUKのアンダーグラウンド・ミュージック(ポスト・パンク以降のいわゆるインディーズ)を聴いていた人間は、1986年には異星からやって来たような音楽を知ることになる。それもふたつ同時に。ひとつは、ファーリー“ジャックマスター”・ファンクの「Love Can’t Turn Around」(+シルク・ハーレー「Jack Your Body」)、そしてもうひとつは、エリックB.&ラキムのファースト・シングル「Eric B. Is President」。前者はシカゴで生まれたハウス・ミュージックで、後者はニューヨーク発のヒップホップというジャンル名の音楽だった。どちらの音楽においてもDJという役目が重要で、とくに後者では、聴いたほとんどの人がまず注目したのは、トラックを作っているエリックB.というDJとマーリー・マールのほうだった。
世の中の大衆音楽の決まりとしては、ステージの中央にはマイクを握った人物がスポットライトを浴びるものである。しかし、『ワイルド・スタイル』やなんかで2台のターンテーブルで「演奏」しているDJの光景は、古い価値観をひっくり返すには十分な破壊力があった。もちろんそこにはMC、ダンサー、グラフィティ・アーティストもいるわけだが、ヒップホップを初めて知ったときにほとんどの人が憧れたのは、視覚的にも音響的にもDJだった。
そして、「Eric B. Is President」の翌年には……あのおそるべき『Yo! Bum Rush The Show』が待っているのである
DJ YASは、ヒップホップが世界に知られて間もない頃、それと出会ったひとりである。高校時代、『宝島』の藤原ヒロシと高木完の連載で情報を仕入れ、45キングの来日時には前座のECDのステージも見た。DJ YASは、バイトして買った単車を売り、2台のターンテーブルとミキサーとレコードを手に入れた。そして魔法の扉を開けたとき、その向こう側にはDJクラッシュがいた——ここからはじまる物語は、日本で初めての、DJによる日本のヒップホップ史である。天才肌のMC、RINOとのランプアイ、DJ KENSEIらとのケムリ・プロダクションによるターンテーブルとレコードを使ったインプロビゼーション、DJ Quietstormとのサウンドの冒険「Tight」、MUROに教えられたレコードディグ、DEV LARGEとの7インチ探求、THA BLUE HERBとの出会い……。
1980年代後半から1990年代にかけて、日本のヒップホップがどのように発展していったのか、そのすべてではないが、いくつかの重要な場面がここには描かれている。ぜひ、読んでほしい。https://www.ele-king.net/books/012427/
俺のレコードを運んでいた男が、音を掴んだ。
煙の奥から立ち上がる、その証言に嘘はねぇ。
──DJ KRUSH
DJが目撃してきたヒップホップ文化の豊かさ、
これを読まずして日本語ラップもまた語れない。
──二木信(『The Crowd』編集長)
DJ YAS……黎明期からシーンを支えてきひとりのDJが、自らの言葉でそのすべてを語る!
80年代後半、DJ KRUSHのレコード持ちとしてキャリアをスタートさせた男が、やがてLamp Eyeを結成。その名曲「証言」は、90年代の “日本語ラップ第二世代” を代表する大ヒット作となった。
また、DJコレクティヴ「Kemuri Productions」を結成。ターンテーブルのみによる即興演奏という、DJプレイの新たな可能性を切り拓いていた。
ベテランのヒップホップDJが、ジャパニーズ・ヒップホップの内なる物語と、DJという生き方のすべてを激白する!
日本語ラップ・ファン待望の一冊です。
【主な登場人物/グループ】
KRUSH POSSE、MICROPHONE PAGER、LAMP EYE、KEMURI PRODUCTIONS、雷家族、えん突つレコーディングス……DJ KRUSH、MURO、RINO LATINA II、TWIGY、YOU THE ROCK★、DJ KENSEI、DJ QUIETSTORM、ECD、DEV LARGE、ECD、ILL-BOSSTINO、Shing02、45 King、高木完、ほか多数のラッパー、ラップ・グループ、DJたち……
四六判並製/272ページ
はじめに
第一章 DJのはじまり - Beginning
初めてのレコーディング/直感と決意/DJクラッシュ /レコードディグ開始
第二章 ランプ・アイ - LAMP EYE
DROOPY DRAWERS/リノとの出会い/命名、ランプ・アイ
第三章 『証言』 - Proof
「証言」完成/「証言」が世に出る/さんピンCAMP
第四章 煙と煙突 - Kemuri Productions
DJの可能性を探る集団誕生/DJセッション/「ひとつの未来」/『BEATS OF INCENSE』
第五章 独立 - 自分を信じて - Unshakable
ファースト・ソロ・アルバム『Light』/雷 - カミナリ/『SMOKING GUN』
第六章 イエローシグナル - Caution
ヒバチ・レーベル/寒川敏彦さんのレーベル/両親との生活/45キングの番組でオンエア/もうひとつの別れ
第七章 アフロと7インチレコード - Afro and 7inch
ワックス・アルケミー/デヴ・ラージ/アフロになる/父の言葉/ECDの言葉
第八章 TIGHT - 継続は力なり - Keep on moving
TIGHTの始まり/京都TIGHT/裏TIGHT/TIGHT 十五夜
あとがき
TIGHT年表
作品紹介 - Dicography
年譜 - Biography