ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Laraaji ──ララージがまさかの再来日、ブライアン・イーノとの名作を再現 (news)
  2. Aphex Twin ──エイフェックス・ツイン最新公演のライヴ・ストリーミングが決定 (news)
  3. interview with (Sandy) Alex G 塩と砂糖の誘惑 (interviews)
  4. Leo Svirsky - River Without Banks (review)
  5. Squarepusher, Oneohtrix Point Never & Bibio ──〈Warp〉30周年イベントが開催決定! スクエアプッシャー、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、ビビオが一挙来日 (news)
  6. Columns JPEGMAFIA『Veteran』の衝撃とは何だったのか (columns)
  7. イギリスでは高校生に授業参観でレイヴの歴史を教えています (news)
  8. interview with For Tracy Hyde シティ・ポップ・リヴァイヴァルから「シティ」を奪還する (interviews)
  9. Lafawndah - Ancestor Boy (review)
  10. For Tracy Hyde - New Young City (review)
  11. BJ The Chicago Kid - 1123 (review)
  12. interview with Kindness 音楽である必要すらないんです (interviews)
  13. BLACK SMOKER × Goethe-Institut Tokyo ──ベルリンの壁崩壊30周年を機に、総合舞台芸術作品『BLACK OPERA』が開催 (news)
  14. Tohji ──いま若い世代から圧倒的な支持を集めるラッパーが、初のミックステープをリリース (news)
  15. interview with Yosuke Yamashita 誰にでも開かれた過激 (interviews)
  16. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第8回 電車の中で寝転がる人、ボルタンスキーの神話 ――2019年8月11日に見たものの全て (columns)
  17. Philip Bailey - Love Will Find A Way (review)
  18. Flying Lotus ──フライング・ロータスの単独来日公演が決定 (news)
  19. interview with The Comet Is Coming ボリス・ジョンソンの名を言うだけで口が腐る (interviews)
  20. Columns ララージ来日直前企画 ──ニューエイジの巨匠、その歩みを振り返る (columns)

Home >  Regulars >  Random Access N.Y. > vol.22:人生はライヴ・ツアー――ジ・オー・シーズを知ってる?

Random Access N.Y.

Random Access N.Y.

vol.22:人生はライヴ・ツアー――ジ・オー・シーズを知ってる?

沢井陽子 Nov 30,2011 UP

Thee oh sees, total control, doomsday student, the beets
@285 kent ave
Nov.17.2011


Thee Oh Sees
Carrion Crawler / Dream
In the Red Records

AmazoniTunes

 チケットはソールドアウトだし、最初はとくに乗り気でなかったというのに、午後10時ぐらいになると私は会場に向かっていた。会場に着くと、いちど入場して、そしてスタンプをもらった人までもが再入場できなくなっている。ドアの兄さんは、暴動が起こる寸前のようにみんなから文句の攻撃を浴びさせられていて、かなりかわいそうだった。いずれにしてもかなり大変な状態なのだろう。
 仕方なく、私は隣の会場のグラスランズでひと休みする。このふたつの会場は隣合わせで私はよく行ったり来たりしている。
 そこでのライヴを見いつつ15分ぐらいが経って、もういちどトライしようと外にでる。するとドア付近で怒っていたかたまりが、いち列にきちんと並んでオーガナイズされているで。少しずつ列は動いているようだ。罵声を浴びさせていたキッズのひとりは、入るときに「さっきは怒鳴ったりしてごめん」とお兄さんに謝っている。よく見ると、その日のオーガナイザーのトッドPが入場を規制している。さすがだなと思っていると、彼はウィンクしながら私をこっそり裏から入れてくれた。

 場内はサウナかと思うほどの熱気だった。何も見えないので、とりあえず頑張っていちばん前に行こうする。が、人が多すぎて動けない。
 すると場内をウロウロしているトッドPがいたので、彼の背中についてなんとか最前列まで行けた。そしてトータル・コントールの最後の演奏がが少し見れた。
 というか、この状態でひとつのバンドの演奏が保つのだろうかと思うぐらい場内は息苦しい。そして案の定、ジ・オー・シーズ(Thee Oh Sees)がはじまった瞬間には集団は大揺れに揺れ、スピーカーは倒れ、人が上から降って来る。危険な状態だ。私はなんとか壁際に移動する。それでも人がどんどん攻撃的にぶつかってくる。後方を見ても大変な数の人だ。ライトニング・ボルトの観客と同じようなタイプだが、もう少し若いし、圧倒的に男が多い。

 ジ・オー・シーズ(theeohsees.com)は、最近(5月ぐらい)新メンバーとしてインテリジェンスのラーズ・フィンバーグを迎え、5ピースになった。ニューアルバム『Carrion Crawler/ The Dream』も11月15日に〈In the Red〉から、リリースされたばかりだ。マーチ(物販)テーブルには、そのリリース以外にシルクスクリーンのツアー・ポスター($20)、ゲロをはいてる(?)ジ・オー・シーズのキャラのイエローとブラックTシャツ($15)、ライトに照らされたその先には、そのスマイル・キャラが浮かび上がっている。たしかすべてJPDのデザイン。ディテールは細かく、しかも可愛いので、思わず買ってしまう。

Photos by Eric Phipps for Impose Magazine
http://www.imposemagazine.com/photos/thee-oh-sees-at-285-kent

 ジ・オー・シーズの楽曲自体はそれほど攻撃的というわけではないのだが、どうしてキッズはこんなにエキサイトしているんだろう。トッドPは「何かあれば、すぐに音楽はストップする」とアナウンスしている。そのあいだにも暴れすぎているキッズを横目に、いまにも倒れそうな大型スピーカーを必死になって抑えているキッズがいる。ステージのJPDはあまりにもフロアがキチキチなので、「あがって来いよ」とキッズを煽っている。
 そしてステージはキッズで溢れ、これって逆ライトニング・ボルト? と思わず笑ってしまう。しかしたしかに、フロアの威圧感が少々マシになった。JPDはステージから「ビールないかな?」と言っている。ステージからバーまでは、人が多すぎてまず行き来できそうにない。
 いよいよスピーカーの音が出なくなった。しばらくその状態で演奏していると、手にビールを持ったトッドPがステージに颯爽と現れる。そして大急ぎでスピーカーの抜けたコードを探して、無事に音を戻す。フロアからは大声援だ。彼こそはインディー救世主。ジャンクヤード、クイーンズの端のダイブバー、工場スペース、冷蔵庫屋......どこでも普通にショーをオーガナイズしている。

 7~8曲目で私は、暑さと危険感で外に出た。人を掻き分けて外へ出るのに余裕で5分かかった。外ではまだ人が待っている。そしてまだ人が入ってきている。物販をもういちど見に行こうとしても、そのまわりで踊っているキッズ達がいて、テーブルにも近寄れない。どういうことだ!

 とにかく、ふたたび最前列には戻れない。隣のグラスランズに移動する。そこのスタッフたちとしばらくハングアウトしていると、トッドPが現れ、「キッズたちがナッツ(気が狂ってる)になってるの見たい?」と言う。
 私は彼のあとについていく。道を回ってこう行くとここに出るのねと、285 kent aveのステージの真裏に来た。たしかにキッズが大暴れの真っ最中だ。ハラハラと、気が気でなかっただろう彼の顔にもやっと笑顔が見えていた。
 ジ・オー・シーズのショーは何回も見ている。新しいとは思わないのだが、いつも見たくなる。彼らがニューヨークにいると聞くと、憑かれたようにショーにきている。今回何度も名前を出しているが、ライトニング・ボルトと同じように、何か大きな魅力がある。ちなみに彼らは同じ時期のRISD(ロード・アイランド・スクール・オブ・デザイン)出身。私は10年ほど前の同じ日に、偶然彼らに出会った。比べたくなくてもつい比べてしまう。この話は機会があればぜひ。

 翌日(nov.18)はマンハッタンのル・ポワソン・ルージュでのショーだ。そして、それを終えると彼らは北へ向かう。今回のツアーは(w/トータル・コントロール、)11月4の日オースティンのファン・ファン・ファン・フェストを皮ぎりに、サウスを東へ、イーストコーストを北へ、ミッドウエストを通り、西海岸に戻るという丸1ヶ月強のツアー。サンクスギビング・デーはさすがに休んだそうだが、その前日(シカゴ、ダブルショー)も次の日(ローレンス)も演奏している。ジ・オー・シーズはほとんどツアーが生活である。1年に3~4回はツアーをしている。それがジ・オー・シーズというバンドなのだ。

Random Access N.Y. - Back Number

Profile

沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住16年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。

COLUMNS