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vol.72:モデスト・マウスの変わらぬインディの匂い

modest mouse

Yoko Sawai Mar 27,2015 UP

 モデスト・マウス──アメリカのインディを代表するバンド、実に息の長いバンドである。彼らの音楽は、ローファイ、エモ、ポストパンクなど多彩な音楽を混ぜ、独自のスタイルを突き通している。
 私がモデスト・マウスを初めて見たのは1998年、場所はシアトルだった。インディ・バンドを追って、毎日ようにショーに通っていた頃だ。UP Recordsの知り合いに紹介してもらったことを覚えている。
 アイザック・ブロックの荒々しいが沈着したヴォーカル・スタイルは魅力的で、たくさんのペダルを操り、スタディな演奏を淡々とこなしていく印象だった。
 その後も何度か見る機会があったが、彼らのスタイルは一貫していた。UPからリリースされた『This Is A Long Drive For Someone With Nothing To Think About』(1995年)と『The Lonesome Crowded West』(1996年)の2枚のアルバムはとくに好きで良く聞いていたが、いつの間にか、じょじょに、私はフォローしなくなっていた。
 2015年、モデスト・マウスは、8年ぶりに新しいアルバムを『Strangers To Ourselves』をリリースした。
 久しぶりということもあって、この新作は話題になった。アルバムを提げたショーがNYのウエブスター・ホールで開催された。私は、懐かしい思いで見に行った。
 ところが、彼らは昔私が知っているモデスト・マウスではなかった。第一、彼らがこんなに大衆に人気のあるバンドだということに驚かされた。なにしろ、1500人収容出来る会場が2日間ソールドアウトだ。しかもチケット代は$50(先日見に行ったポップ・グループでさえも$25)。会場のまわりにはダフ屋がたくさんいた。私もチケットを法外な値段で売り付けられそうになった。偽チケットもたくさん出回ったらしい。
 オーディエンスの平均年齢は30歳くらいだろうか。圧倒的に男が多い。どちらかというと、ニュージャージー辺りから出てきて、この日のショーのために良い服を誂えた感じの人たちだった。ヒップスター率は0。

 ショーは新曲を中心に演奏された。驚いたことに、アイザック・ブロックは17年前に見た時のスタイルとほとんど変わっていない。変わったのは、ステージ上にいるメンバーの数だ。ドラム3人、ギター3人、ベース1人、キーボード、チェロ、トランペットなどなど、およそ10人が常にステージにいる。アイザック側で彼のギターのチューンをしていた女性が、次の瞬間はステージでトランペットを演奏する。ドラムの後ろに控えていた男性が次の瞬間には、スレイベルを演奏する。メンバーは曲ごとに楽器をころころ変える。バンドというよりは、コミューンの音楽集団のようだった(スウェーデンのゴートを思い起こしつつ)。
 前方のオーディンスは、ほとんどの曲がシンガロングで、身動きが取れない状態で興奮している。レコード会社が陣取るバルコニーのVIP席もたくさんの人で埋まっていた。普段のショーではない、会場のウエブ・スターホールのオーナーまでが、バルコニーのコーナーを借り切って見に来ていた。

 ショーは、アンコールも含め、様々な楽器が飛び交う、派手なものだった。ミュージシャンの質も抜群で、それでいて全てアイザックの演奏が前に出るようになっている。17年前とスタイルがほとんど変わっていないのに(しつこい!)、この人気はなんなのだ。
 そして、もはや「インディ」とは呼べない規模なのに、アイザックからは「インディ」の匂いが消えない。モデスト・マウスという乗り物に乗り続ける彼の姿勢は、20年以上たっても変わらないのだ。
 彼の音楽は、真摯で、垢抜けず、心に突き刺さる。一貫したものがある。メンバーが代わっても関係ない。もう一度、モデスト・マウスのアルバムを聴きなおしてみよう。

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沢井陽子沢井陽子/Yoko Sawai
ニューヨーク在住16年の音楽ライター/ コーディネーター。レコード・レーベル〈Contact Records〉経営他、音楽イヴェント等を企画。ブルックリン・ベースのロック・バンド、Hard Nips (hardnipsbrooklyn.com) でも活躍。

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