「TT」と一致するもの

ROCKASEN - ele-king


 ROCKASENは、DJ/プロデューサーのBUSHMINDの作品にもフィーチャーされている千葉出身のヒップホップ・グループで、2010年にリリースされ、評判となったファースト・フル・アルバム『WELCOME HOME』はいまでも日本語ラップ・シーンのなかで独特の個性を放っている。彼らの面白さはまず音楽的な幅広さにあるが、それはアメリカの物真似ではなく、彼自身の折衷主義によって成り立っている。独特の浮遊感があり、テクノやハウス・ミュージックの感覚もそこには含まれる。言葉は、自己主張するものではない。なにげない日常描写が彼らのリアルを伝達するが、どこかつねに半分夢の中なのだ。
 そして、その新作、つまりセカンド・アルバムは無料配信されることになった。これがまたROCKASENらしく、メロウで柔らかさのある、本当に心地良くポジティヴで、キャッチーでありドリーミーであり、クオリティの高い作品なのだ。アートワークも良いし、これが本当に無料でいいの?
 というわけで、この機会にぜひDLして聴いて欲しい。

ROCKASEN
Two Sides of
ASSASSIN OF YOUTH
配信開始日:2017年2月17日(金)
配信サイト:bandcamp(https://rockasen.bandcamp.com) / AWA / Apple Music / Spotify


01. Intro A *
02. Always There
03. Deez
04. Till Up
05. Dokomademo
06. Intro B
07. Good Catch
08. Hard Drive
09. Strain
10. Dot B

Produced & mixed by Bushmind
*Produced by Issac & Bushmind
Mastered by Naoya Tokunou
Artwork by Wack Wack

Ron Morelli & Will Bankhead - ele-king

 Skate ThingとToby Feltwellがディレクターを務めるブランド〈C.E〉が半年ぶりにクラブ・イベントを開催します! 日時は3 月10 日(金)、場所は渋谷Contact。今回のイベントはブルックリンのレーベル〈L.I.E.S.〉とUKのレーベル〈The Trilogy Tapes〉との共同開催となっており、〈L.I.E.S.〉のオウナーであるRon Morelliが初来日を果たします。〈The Trilogy Tapes〉を主宰するWill Bankheadも参加。さらにスウェーデンからはSamo DJを、上海からはTzusingを迎えるというのだから、これは熱い夜になること間違いなし! 一足先に春の息吹を感じ取っちゃいましょう。

Tinariwen - ele-king

 昔から欧米ではアフリカ音楽に強い関心が寄せられてきたのだが、昨今はその中でもマリ共和国の音楽に注目が集まることが多い。特に有名なものが、マリに住むベルベル人系のトゥアレグ族に伝わるタカンバなどの伝統音楽をルーツに、現代性を取り入れていったソンガイ・ブルースで、俗に「砂漠のブルース」と形容される。今はソンガイ・ブルースを演奏するアーティストもいろいろ紹介されるようになったが、その認知を高めた要因のひとつとして、ティナリウェンの2011年のアルバム『タッシリ』が第54回グラミーのワールド・ミュージック部門でアウォードに輝いたことが挙げられる。マリ北東部のキダルを拠点に、1979年から長い活動をおこなうティナリウェンだが、アルジェリア南部のサハラ砂漠内にあるタッシリでレコーディングされた『タッシリ』は、アメリカからウィルコとTVオン・ザ・レディオのメンバーが参加した。ティナリウェンは2000年代よりヨーロッパやアメリカを含めたワールド・ツアーを重ね、欧米のミュージシャンには彼らのファンが多かったのだが、そうしたところから実現したセッションだった。もともとデビュー時から西欧音楽の要素をアフリカ音楽にミックスすることに長けていた彼らだが、『タッシリ』ではそうしたオルタナ・ロック・バンドとのジャム・セッションにより、自身のバンドとしての存在意義を再確認することになった。また、『タッシリ』の収録曲はフォー・テットやアニマル・コレクティヴなどによってリミックスされ、それによってダンス~クラブ・シーンからも注目されるようになった。

 しかし、そのグラミー受賞の発表に先駆けた2012年1月、マリ北部で長年にわたり独立を目指してきたトゥアレグ族が民族蜂起する。対するマリ政府の政情不安定につけこんだ軍部がクーデターを起こし、そこからアル・カーイダ系武装組織との抗争へと発展。ついにフランスなどの欧米諸国の軍事介入によって戦乱状態となった。現在は西アフリカ諸国の支援による安全保障下にある状態だが、紛争は今も絶えてはおらず、戦乱や無政府状態がもたらした難民や貧困といった社会問題が山積している。こうした社会情勢により“故郷を奪われる”ことになったティナリウェンは、2013年のワールド・ツアーの間にアメリカで『エマール』を録音。レッチリのジョシュ・クリングホファーから、ファッツ・カップリン、マット・スウィーニー、ソウル・ウィリアムズらと共演した『エマール』は、流浪のミュージシャンとなったティナリウェンの、故郷への情景と亡国に対する社会批判などに溢れたものだった。

 『エマール』から3年ぶりのスタジオ録音となる『エルワン』も、そうした故郷マリ共和国に対する政治的・社会的メッセージが込められたものである。ツアーの合間に米カリフォルニアのジョシュア・ツリー国立公園(2014年10月)と、アルジェリア国境に近い南モロッコ(2016年3月)で録音がおこなわれた。ジョシュア・ツリー国立公園内のランチョ・デ・ラ・ルナは、『エルワン』でも用いたスタジオで、周囲の環境はサハラに似た砂漠地帯。前作に続いてマット・スウィーニーほか、ウォー・オン・ドラッグスのカート・ヴァイル、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジに関わってきたアラン・ヨハネスとマーク・ラネガンなど、ティナリウェンに共鳴するミュージシャンが集まった。モロッコではオアシス地帯のムハミドにキャンプを張り、現地の若手ミュージシャンやガンガ(ベルベル人によるグナワのミュージシャン集団)のバンドを呼び寄せ、セッションをおこなった。ツアーやレコーディングでメンバーが入れ替わり、流動的なミュージシャン集団のティナリウェンだが、今回の『エルワン』では昔から参加するベテラン主要メンバーのイブラヒム・アグ・アルハビブ、アルハッサン・アグ・トウハミ、アブダラー・アグ・アルフセインと、比較的若手にあたるエヤドゥ・アグ・レシェ、エラガ・アグ・ハミド、サイド・アグ・アヤドという構成で、そうした新旧世代の音楽観、音楽性が融合されているところもティナリウェンの特徴だ。そして、『タッシリ』以降のティナリウェンの作品には、アメリカなど外部のミュージシャンたちとの邂逅による活性化がある。

 “Tiwàyyen(ティワイェン)”は、ティナリウェン特有の4本のイシュマール・ギターが奏でるメタリックなアフロ・ブルース。パーカッシヴでダンサブルなビートの“Hayati(我が人生)”や“Assàwt(タマシェクの女の声)”とともに、ティナリウェン・サウンドのエネルギッシュでパワフルな側面が表われた楽曲であり、西欧音楽への柔軟なアプローチが生きている。イシュマール・ギターとエレキ・ギターが協奏する“Sastanàqqàm(お前に問う)”もファンクやロックの影響が色濃く、ドクター・ジョンにジミ・ヘンドリックスを想起させるところがある。ディストーションを施した歪んだギターの音色も彼らの持味で、ドープなサイケデリック・サウンドの“Fog Edaghàn(山頂)”にはドアーズやヴェルヴェット・アンダーグラウンドに通じる世界がある。ヴードゥー教の儀式のような“Imidiwàn N-àkall-In(同郷の友ら)”、イシュマール・ギターとパーカッションやハンドクラップがミニマルな雰囲気を作り出す“Talyat(少女)”、瞑想的なムードの“Nànnuflày(充足)”は、ティナリウェンのミスティックなテイストが表われた楽曲だ。一方、“Nizzagh Ijbal(俺は山中で暮らしている)”や“Ittus(我らのゴール)”の枯れた味わいには、ブルース特有の悲しみや苦しさが込められており、故郷を失ったティナリウェンの心の叫びがダイレクトに伝わってくる。インド音楽に通じるピースフルなムードに包まれた“Arhegh Ad Annàgh(俺は伝えたい)”も、愛する人たちを奪われた苦悩から生まれた曲である。“Ténéré Tàqqàl(テネレの成れの果て)”の歌詞に登場する象は、アルバム・タイトルの『エルワン』にもなっている。古代アフリカでは神聖な象徴として崇拝された象だが、ここでは先祖代々の伝統や生活、民族の絆などを踏みにじる荒々しい獣として描かれる。それは民兵や軍事ゲリラ、多国籍軍や傭兵部隊などを比喩しており、民族独立の闘士でもあるティナリウェンの怒りが込められている。

Visible Cloaks - ele-king

 ヴィジブル・クロークスは、ポートランドを拠点に活動をするニューエイジ・アンビエント・ユニットである。メンバーは、スペンサー・ドーランとライアン・カーライルのふたり。スペンサー・ドーランは00年代に、プレフューズ以降ともいえるサイケデリックかつトライバルなアブストラクト・エレクトロニカ・ヒップホップをやっていた人で、00年代のエレクトロニカ・リスナーであれば、知る人ぞ知るアーティスト。スペンサー・ドーラン・アンド・ホワイト・サングラシーズ名義の『インナー・サングラシーズ』など愛聴していた方も多いのではないか。
 その彼が、〈スリル・ジョッキー〉からのリリースでも知られるドローン・バンド、エターナル・タペストリーのライアンと、このような同時代的なニューエイジ・アンビエントなユニットを結成し、アルバムをリリースしたのだから、まさに時代の変化、人に歴史ありである。

 そう、ここ数年(2010年代以降)、いわゆる80年代的なニューエイジ・ミュージックが、エレクトロニカ/ドローン、OPN以降の、新しいアンビエントの源泉として再評価されており、ひとつの潮流を形作っている。そのリヴァイヴァルにおいて大きな影響力を持ったのが、オランダはアムステルダムの〈ミュージック・フロム・メモリー〉であろう。同レーベルは80年代のアンビエント・サウンドを中心とする再発専門のレーベルで、なかでもジジ・マシンを「再発見」した功績は大きい。じじつ、ジジ・マシンのコンピレーション盤『トーク・トゥー・ザ・シー』は日本でも国内盤がリリースされるほど多くのリスナーに届いた。そのピアノとシンセサイザーの電子音を中心とした抒情的で透明で美しい音楽は、現代にニューエイジ・アンビエントという新しいジャンルを作ったといっても過言ではない。まさに「過去」が「今」を作ったのだ。再発レーベルとしては、理想的な成功である。

 その〈ミュージック・フロム・メモリー〉がリリースした、唯一の日本人アーティスト・ユニット作品がディップ・イン・ザ・プールの『On Retinae』の12インチ盤であった。ディップ・イン・ザ・プールは、1980年代から活動をしている甲田益也子(ヴォーカル)と木村達司(キーボード)によるユニットで、日本でも根強い人気とファンがいるし、1986年には〈ラフトレード〉からデビューを飾ってはいるが、しかし、それをニューエイジ・アンビエントの文脈と交錯させた〈ミュージック・フロム・メモリー〉のセンスは、やはり素晴らしい(ちなみに香港のプロモ盤がもとになっているらしい)。だが、ふと思い返してみると、日本の80年代は、細野晴臣をはじめ、安易な精神性に回収されない音楽的に優れたニューエイジ/アンビエント的な音楽が多く存在した。それはときにポップであったり、ときに実験的であったりしながら。

 ヴィジブル・クロークスのスペンサー・ドーランは、そんな80年代の日本音楽のマニアなのだ。細野晴臣、小野誠彦、清水靖晃らを深く敬愛しているという。彼らの楽曲を用いた「1980年~1986年の日本の音楽」というミックス音源を発表しているほど。当然、ディップ・イン・ザ・プールの音楽も愛聴していたらしい。そして、本作『ルアッサンブラージュ』は、そんな日本的/オリエンタルな旋律やムードが横溢した作品に仕上がっている。そして、先行シングルとしてリリースされた“Valve (Revisited)”は、ディップ・イン・ザ・プールとの共作であり、甲田益也子がヴォイスで参加。アルバム2曲めに収録された“Valve”には甲田益也子が参加しているのだ(ちなみに、“Valve (Revisited)”は国内盤にはボーナス・トラックとして収録)。

 ここで思い出すのだが、昨年、戸川純が復活し、ヴァンピリアとの共演盤にしてセルフ・カヴァー・アルバム『わたしが鳴こうホトトギス』をリリースしたことだ。同時期に『戸川純全歌詞解説集――疾風怒濤ときどき晴れ』も刊行されたこともあり、本盤は、かつて戸川マニアのみならず若いファンからも受け入れられ、大いに話題になったが、こちらは「ニッポンの80年代ポップス/ニューウェイブ」再評価における総括のように思えた。
 対して、ヴィジブル・クロークスにおける、ディップ・イン・ザ・プール/甲田益也子参加は、たしかに80・90/2010世代の新旧世代の共演なのだが、文脈はやや異なり、ジジ・マシン再評価以降ともいえる近年のニューエイジ/アンビエント文脈にある。先に書いたように、ディップ・イン・ザ・プールがジジ・マシン再評価の流れを生んだ〈ミュージック・フロム・メモリー〉からリイシューされたことも考慮にいれると、ヴィジブル・クロークスがやっていることは、世界的な潮流である「80年代ニューエイジ/アンビエント文脈」の再解釈なのだろう。そこにおいて、日本の80年代的なニューエイジ・アンビエント、そしてそのポップ・ミュージックが重要なレファレンスとなっているわけだ。〈ミュージック・フロム・メモリー〉からのリイシューや、本作におけるディップ・イン・ザ・プールの参加は、その事実を証明しているように思える。

 くわえて本作には、ディップ・イン・ザ・プール/甲田益也子のみならず、現行のニューエイジ/アンビエント文脈の重要な電子音楽家がふたり参加している。まず、昨年、〈ドミノ〉からアルバムをリリースしたモーション・グラフィックス。あのコ・ラのサウンド・プロダクションを手掛けたモーション・グラフィックスだが、彼が昨年リリースしたアルバムにも、どこか80年代の坂本龍一を思わせる曲もあった。また、〈シャルター・プレス〉などからアルバムをリリースする現在最重要のシンセスト/電子音楽家Matt Carlsonも、参加しているのだ。

 アルバム全体は、ニューエイジ的なムードのなか、現代的な音響工作を駆使し、現実から浮遊するようなオリエンタル・アンビエント・ミュージックを展開する。非現実的でありながら、どこか80年代末期の日本CM音楽のようなポップさを漂わせている。あの極めて80年代的な「日本人による、あえてのオリエタリズム」を、外国人が参照し、実践すること。そのふたつの反転が本作の特徴といえよう。
 本作に限らず現在のシンセ・アンビエントは、80年代中期以降の音楽/アンビエントをベースにしつつ、そこに2010年代的な音響を導入し、アップデートしているのだが、本作などは、アルバム全編から「1989年」的な感覚が横溢しているように思える(たとえば、細野晴臣の『オムニ・サイト・シーング』を聴いてみてほしい)。

 余談だが、この80年代初期から後期へのシフトは重要なモード・チェンジではないか。それは「バブル感」の反復ともいえる。ちなみに、80年代と一言でいっても、前半と後半では随分と違う。いわゆる日本のバブル経済は1985年のプラザ合意以降のことで、世間的にその実感が伴ってきたのは、「株投資」と「土地転がし」が(一時的に)一般化した80年代末期(1988年~1989年あたり)だったはず。
 そう、最近のいくつかの音楽には、この「景気の良かった時代」への憧憬があるように思えるのだ。それこそ大ヒットしたサチモスは、1989年くらいの初期渋谷系(と名付けられる以前。田島貴男在籍時のピチカート・ファイヴ)的なもののYouTube世代からの反復だろう。そういえば、ディップ・イン・ザ・プールの『On Retinae』も1989年だった。

 あえていえば、本作(も含め、近年の音楽)は、「景気が良かった時代の音楽を、景気が悪く最悪の政治状況の時にアップデート」することで、「景気が良かった時代への夢想や憧れ」を反転するかたちで実現しようとしているとはいえないか。つまり、30年以上の月日という時が流れ、新鮮な音楽としてレファレンスできる時代になったわけである。
 これは、若い世代には80年代という未体験の時代への憧憬も伴うのだろうが、私などがこの種の音楽を聴くと歴史の平行世界に紛れ込んだような不思議な感覚を抱いてしまうのも事実だ。しかしこの感覚が重要なのだ。つまり、リニアに進化する歴史の終わりという意味を、現在の音楽は体現してまっているのだから。これこそポストモダン以降の、アフター・モダンというべきで状況ではないか?

 ヴィジブル・クロークスも同様である。逆説的なオリエタリズムの反転。景気の良さへの憧憬。経済の上部構造と下部構造のズレ。その結果としてのニューエイジ・ミュージックのリヴァイヴァル。そこにレイヤーされるOPN以降の精密な電子音楽の現在。
 それらの複雑な文脈が交錯しつつも、仕上がりは極めて端正で美しい電子音楽であること。それが本作ヴィジブル・クロークス『ルアッサンブラージュ』なのである。1曲め“Screen”の細やかな水の粒のような美麗な電子音を聴けば、誰の耳も潤されてしまうだろう。

 本作は、ニューヨークの名門エクスペリメンタル・レーベル〈RVNG Intl.〉からのリリースだ。つまり文脈といい、リリース・レーベルといい、近年のニューエイジ・アンビエントの潮流における「2017年初頭の総決算」とでも称したい趣のアルバムなのだ。非常に重要な作品に思える。

 2017年早々に、南アフリカの最西南端の都市のケープタウンに行って来た。元ルームメイトが南アフリカ人で、彼の兄がケープタウンで音楽ライターをしていると言うので、音楽シーンを紹介して貰おうと思ったのだ。NYからヨハネスバーグまで16時間、そこからさらに2時間のフライトで、ケープタウンに降り立った。天気も良いし景色は最高。左手には山があり、右にはビーチが広がる。アフリカ大陸、最南端のポイント、喜望峰に行ったり、ワイナリーに行ったり、サーフィンをしたり、思う存分自然を楽しんだ。
 こんな平和で自然な場所に、興味深い音楽シーンがあると聞いた。南アフリカは、そもそもヨーロッパから入って来たハウス・ミュージックが人気で、私が好きなインディロック・ミュージックというのはまったく聞かない。南アフリカで、いま人気があるのは、gqom(ゴム)ミュージックで、その発祥は、ケープタウンではなく、東にあるダーバンらしい。勿論ケープタウンでも、若者達が集まる観光地エリア(ロングストリート、ループストリート、クルーフストリート辺り)では、大勢の人が集まり、大音量の音楽がかかり、活気に溢れていた。空港近くのタウンシップという貧しい地域には、朝から晩までダンス・ミュージックがかかり、キッズ達がたむろしていた。車で近くを通ると「窓を閉めろ」「物はやるな」と同乗者に注意されるのだが、そのタウンシップで、ゴム音楽やシャンガーンなどの南アフリカ・スタイルの音楽が生まれている。

 南アフリカは、ヨーロッパの影響を受けていると書いたが、音楽と人、自然に魅せられ、何度も南アフリカを行き来している(なかには移住した)ヨーロッパ人を何人か知っている。彼らは「いま、ヨーロッパのクラブ文化において、新しく新鮮なものを求められていて、ゴムの感覚は並外れている」と声を揃えて言う。ノルウェイで、音楽ディストリビューション会社で働くTrond Tornesもそのなかの一人。彼はここ10年の間に20回以上も南アフリカに来ていて、ダンス・ミュージックに精通している。
「南アフリカには、ハウス・ミュージック文化が入ってくる前に、独自の音楽とダンス文化があったし、90年代には自由への戦いが南アフリカであり、オーガナイズされた国の抗議者は至る所で団結していた。南アフリカのアンダーグランド音楽は、70年代後期のパンク・シーンのように、いつも海外の文化に影響を受けていたし、90年代には、ガレージ音楽やハウスがNYやシカゴから入って来た。南アフリカの新しい世代は、まさにアパルトヘイトが歴史で、新しい文化的な定義にニーズがある新しい社会に乗っかろうとしているんだ。プロデューサーたちは、ハウスをただコピーするだけでなく、自分達の独自の物を作った。例えば、テンポを下げたり上げたり(124 bpmから106bpm)、歌を加えたり、ベースラインを入れたりね。そしてクワイトが生まれ、いまはゴムが台頭している」
と熱く語る。

 ゴム音楽発祥のダーバンで音楽フェスティバル/国際音楽コンファレンス、「KZNミュージック・インビゾ」をオーガナイズするSiphephelo Mbheleは、南アフリカの音楽シーンをよく知る人物。この2人に、南アフリカの音楽(主にゴム)について語って貰った。

Pic credit: Thanda Kunene / Courtesy of Imbizo festival


インタビュー : Siphephelo Mbhele (KZN Music Imbizo)
https://www.kzn-musicimbizo.co.za/


まず自己紹介をお願いします。

Siphephelo Mbhele:僕は、Siphephelo Mbhele。南アフリカのダーバンと言う都市でKZN Music Imbizoと言う音楽フェスティバルをオーガナイズしている。今年(2017年)で9回目、8/31-9/2に開催される。世界中から音楽関係者が集まり、音楽や映画を発表したり、音楽機器のデモンストレーションをしたり、意見交換会をしたり、プロデューサーの研究室があったり、様々な可能性を試している。

南アフリカ版SXSWみたいなものですね。その南アフリカで、今話題はゴム(gqom)ですが、それについて教えて下さい。

Siphephelo Mbhele:ゴムは、ここダーバンで生まれた音楽のジャンルで、ハウス・ミュージックにブロークン・ビートやカットされたボーカル、チャンティングが入っている。ハイテンポで、大体はベースラインがなくて、DIYで、低予算のストリートサウンドで、何にも似ていないパターンで作られた、騒々しいトライバル音楽のコレクション。なんて、ゴムは、実はベース・キック(ダフ音)の音から来てるんだよ。

Pic credit: Thanda Kunene / Courtesy of Imbizo festival

ゴムは、何から影響されてスタートしたのでしょう。

Sphe:主にテクノロジーに帰するね。ほとんどのゴム音楽は、プロダクションを学んだ若者たちの深いループで出来ている。ソフトウエアへのアクセス権を通して、ファイルを共有するウエブサイトはスパークし、たくさんの人が、音楽を作れると信じてる。もうひとつの重要な要因は、ダーバンの人は、ダンスが好きなこと。ダンス音楽の、いろんな種類を見つけたかったら、ダーバンは完璧な所だよ。ヨハネスバーグは、クワイト(Kwaito-アフリカの音とサンプリングを組み込んだハウス・ミュージック)を90年代から2000年中盤にもたらしたのだけど、クワイト音楽が、そのアピールをなくした時、ダーバンが音楽を復活させた。なので、「ダーバン・クワイト」と呼ばれたものは、非常に商業的になり、誰もが作っていた。そして別の音楽が、タウンシップから成長して来た。それがゴム(gqom)音楽。ほとんどの初期のゴム音楽は、主にエクスタシーについてで、音楽は、タウンシップから出た町のなかの、薄汚い所でプレイされ、ミニバス・タクシーによっても広められた。

ゴムとクワイトでは、共通する所はありますか? どちらも南アフリカの音楽スタイルですよね。

Sphe:そうだね。クワイトが出てきた時のように、最初ゴムには悪い印象がついていた。ゴムも、クワイトのように、タウンシップ・キッズの実験で、音楽遊びだったし、音楽の流通は存在せず、いまでさえメジャーの企業は、つかまえることが出来ない。こういうことは今年は変わると思うけど。すべての動きは、洋服、タウンシップのスラング、ダンス、そして主に楽しい時間(歌詞は大体エクスタシーを含む)に関してで、ゴムは、自己表現の必要性から出て来たんだ。

ゴムはどのように広まっていったのでしょうか。

Sphe:ゴムは、特に、何人かのプロデューサー/ビートメイカーが、大きなレコードレーベルにサインしてから、少しずつ評判を得てきた。ミックス、マスターされてない、リッチなループをベッドルームで作る輩からのね。レーベルのAfrotainmentを通して、何年もかけ、全国に知れ渡った曲も少しはあったかな。そして2016年、この国の一番のヒット曲は、ゴムの「Wololo」だった。環境は変わり、ゴム音楽プロデューサーは、ベッドルームから抜け出し、いまでは、合唱音楽(聖歌隊)やヒップホップや他とコラボレーションしているよ。

ゴムは、純粋に南アフリカの現象ですか? それとも、南アフリカ以外の場所でも起こり得るのでしょうか?

Sphe:音楽には、地元のタッチが入っているけど、エレクトリック・ダンス音楽から影響されたもので、David Guettaのような、DJ/プロデューサーから広められた。

少し前に話題になった、シャンガーン・エレクトロとは関係ないのですか?

Sphe:南アフリカのタウンシップ(Soweto)で生まれたシャンガーン・エレクトロは、独自の発展を遂げたダンス音楽のスタイルで、地元のフォーク伝統を再現している。早いテンポで、ハードに、ハイパーに、電子的なニューウェイヴで、パフォーマーは、コスチュームやマスクを被ったりすることもある。プロデューサーのNozinjaによって世界的に広められたけど、ゴムとは直接関係してない。どちらも新しい動きだけどね。

ゴムDJのなかで、南アフリカ以外の、海外でプレイした人はいますか?もしいるならどこで、どのようなフィードバックがありましたか。

Sphe:Dj LAGは、ケープタウンのブラックメジャーによって、マネッジされていて、海外でもたくさんプレイし評価を得ている。事実上、地元では知られてないんだけど。The Rude BoyzとDj LAG に加えて、数人がこの4月にNYでプレイするよ。レッドブルに呼ばれてね。Spoek Mathamboも、音楽を海外に広めるのに重要な役割を果たしてる。僕は過去2年ぐらい、アフリカ中を旅をしたんだけど、南アフリカの音楽は、いつも取り上げられていて、Addis Ababa (Ethiopia) / Gaborone (Botswana)からRabat(Morocco)まで、ゴムはいつもプレイリストに入っていた。

ゴムでは、どのDJに注目すればいいですか?アップデートされたプレイリストはありますか?

Sphe:ほとんどどのアーティストは、www.audimack.comに載ってるけど、Datafile Hostからのリンクにもまだたくさんいるよ。チェックした方が良いDJは、Dj LAG, Dj Nkoh, Babes Wodumo (singer Wololo), Madanone, Rude Boys,Distruction Boys (producers Wololo), Sainty Baby, Nokzen, ManiqueSoulなどだよ。

どのクラブに行けば、キチンとしたゴム音楽が楽しめますか?

Sphe:Havana(ダーバン, CBD)、101(ダーバン, CBD)。

これから、ゴムはどうなっていくでしょうか。世界中から新しいトラックが出てくるのでしょうか。

Sphe:プロダクションの質は向上し、バトルも実験的なレベルで向上するだろうね。アフリカ中がそうなるのが見えるし、新しいダンスの形が伴うだろう。この動きには、たくさんの可能性があるし、メインストリームのディストリビューションを通して、簡単に世界中に広まるだろうね。

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質問作成&翻訳聞き手: Trond Tornes (phonofile)
https://phonofile.com/

質問作成 & 翻訳: Yoko Sawai

2017 DOMMUNE<02/14火>
■19:00-24:00 ele-king books Presents
戸川純歌手生活35周年バレンタイン5時間スペシャル
「戸川純全歌詞解説集」重版記念番組!「疾風怒濤きょうは晴れ」
LIVE:戸川純 with Vampillia 
DJ:テンテンコ(戸川純 PLAY ONLY) / BROADJ# BROADJ#2148
TALK:戸川純、宮沢章夫、三田格、野田努、Vampillia、おおくぼけい(アーヴァンギャルド)
テンテンコ、石塚BERA伯広(戸川純 / プノンペンモデル / VIDEO rODEO / 電車)

■約20年振りのメディアへの登場となる戸川純!歌手生活35周年記念番組!
ele-king books Presents DOMMUNE『疾風怒濤きょうは晴れ』
2016年に入って新たに3つのプロジェクトをスタートさせた戸川純。これまでのソロ活動に加えて、戸川階段、戸川純 avec おおくぼけい、戸川純 with Vampilliaと、それは多面的な方向性を示し、またしても多重人格的な動きになっている。さらには活動を再開させたTACOのライヴや年末に亡くなったピエール・バルーとも最後のデュエットを共にし、対バンの数も限りない。音楽だけでなく、蜷川幸雄に捧げた追悼文も大きな話題を呼び、初めて認めた短歌が年末の「歌壇100選」に選ばれるなど、文才も絶好調。年末には過去に書いた歌詞の解説集「疾風怒濤時々晴れ」もよく売れている。この度、DOMMUNEでは、そんな戸川純の歌手生活35周年を記念したバレンタイン5時間スペシャルを企画!!なんと、この番組は、戸川純自らの意思では十数年振りのメディアへの登場となる!!現在の活動について、音楽仲間や宮沢章夫らと語り尽くし、そして、なんと、歌手活動35周年記念盤「わたしが鳴こうホトトギス」を共に製作したVampilliaとライヴも実現!!!!史上空前のDOMMUNE5時間ブチヌキ戸川純スペシャル!!!超絶必見です!!!

「戸川純全歌詞解説集―疾風怒濤ときどき晴れ」 (ele-king books)
戸川純 with Vampillia「わたしが鳴こうホトトギス」

■2017 02/14 19:00-
● ENTERANCE : 2,500YEN
● OPEN : 18:50頃(第1部~第2部入れ替え無し! 番組途中入場OK! 再入場不可! BARあり!)
● 〒150-0011 東京都渋谷区東4-6-5 ヴァビルB1F / TEL : 03-6427-4533

Jacques Greene - ele-king

 いかにビッグになりすぎることなく成長するか。それが〈LuckyMe〉の野望である。すでにバウアーというスターを抱える同レーベルにとって、次にどんな手を打つかというのはきっと大きな問題だったに違いない。そんなかれらの手の内のひとつが、いま明らかになった。
 〈Night Slugs〉から巣立ち、これまで〈LuckyMe〉を軸に作品を発表してきたハウス・プロデューサー、ジャック・グリーン。レディオヘッドによるフックアップから5年半のときを経て、ついに彼のファースト・アルバムがリリースされることとなった。タイトルは『Feel Infinite』。一体どんなアルバムに仕上がっているのか、楽しみに待っていようではないか。

Jacques Greene
ジャック・グリーン待望のデビュー・アルバム
争奪戦必至のスペシャル・エディションで日本先行リリース決定!

〈Uno〉、〈3024〉、〈Night Slugs〉、〈LuckyMe〉といった気鋭レーベルからリリースしてきた諸作が高い評価を受け、『ピッチフォーク』の「Songs of the Decade」に選ばれた2011年の“Another Girl”、ハウ・トゥー・ドレス・ウェルをフィーチャーした2013年の“On Your Side”、2016年のクラブ・アンセム“You Can’t Deny”などヒットを飛ばしてきたジャック・グリーンが満を持してデビュー・アルバムをリリース!!

本作はクラブ・カルチャーの桃源郷的なアイデアがもとになっており、クラブによるクラブのためのクラブ音楽でる。いままでにレディオヘッド、サンファ、ティナーシェ、そしてシュローモといったアーティストとコラボ、またはリミックスをしてきたモントリオール生まれのジャック・グリーンが、2年以上の歳月をかけて制作した、キャリア史上最もパーソナルな感情表現に満ち溢れた作品。2016年にサプライズ・シングルとしてリリースしたソウルフルなテクノ・トラック“You Can’t Deny”や、ユーフォリックなキラー・チューン“Afterglow”などを筆頭にR&Bのヴォーカル・チョップは新しいクラブ・サウンドとしてグリーンの代名詞にもなったが、本作では原体験であるマスターズ・アット・ワークのディスコ文脈の影響を自らの作品に反映させ、2017年のハウス・ムードを予見する傑作がここに誕生した。また500枚限定の国内流通盤は世界に先駆け、3/17に先行リリース、ボーナス・トラックがDLできるスペシャル・カードが封入される。

Jacques Greene | ジャック・グリーン
モントリール出身、ニューヨークを経由し、現在はトロントを拠点とし活動するプロデューサー。〈LuckyMe〉をはじめ、〈UNO〉、〈Night Slugs〉といったレーベルからの諸作をリリース。『ピッチフォーク』「Songs of the Decade」に選ばれた2011年の“Another Girl”、ハウ・トゥー・ドレス・ウェルをフィーチャーした2013年の“On Your Side”、2016年のクラブ・アンセム“You Can’t Deny”などヒットを飛ばしてきた。さらには、レディオヘッド、ジミー・エドガー、コアレスなどへのリミックスの提供など、これまで数多くの作品を発表。2017年には待望の1stアルバム『Feel Infinite』をリリースする。

label: LUCKYME / BEAT RECORDS
artist: Jacques Greene(ジャック・グリーン)
title: Feel Infinite(フィール・インフィニット)
release date: 2017/03/17 FRI ON SALE ※日本先行発売

国内流通仕様帯付盤CD
BRLM41 / 解説書封入

[ご予約はこちら]
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002143

[Tracklisting]
01. Fall
02. Feel Infinite
03. To Say
04. True feat. How To Dress Well
05. I Won’t Judge
06. Dundas Collapse
07. Real Time
08. Cycles
09. You Can’t Deny
10. Afterglow
11. You See All My Light
+ DL CARD

ECD × 空間現代 - ele-king

 僕は買ったよ。かつて“言うこと聞くよな奴らじゃないぞ”に勇気づけられたから。もちろんそれだけじゃないけど、でもあの時代にあの曲が、僕(=小林)のようなうだつのあがらない人間たちの小さな救いとなったことは間違いない。そう確信しているから。

 現在がんで闘病中のラッパー、ECD。去る2月8日、彼とその家族を支援するべく空間現代がドネーション・アルバムを発売した。タイトルは『Live at Waseda 2010』で、2010年に早稲田祭でおこなわれた空間現代とECDとの共演ライヴが収録されている。
 アルバムは現在 Bandcamp にて購入可能となっており、今後空間現代の運営するライヴ会場などでCD-Rとしても販売される予定。制作費を除く売り上げの全額がECDに寄付される。


空間現代が、闘病中のラッパー・ECDを支援するため、ドネーション・アルバムを発売する。
2010年におこなわれ大きな反響を呼んだ、ECDと空間現代の早稲田祭でのコラボレーション・ライヴの音源を収録。
Bandcampにてデータ販売をおこなうとともに、空間現代のライヴ会場および空間現代が運営するライヴハウス「外」にてCD-Rでも販売予定。制作費を除いた売上の全額をECDに寄付する。

アーティスト:ECD + 空間現代
アルバム・タイトル:『Live at Waseda 2010』
https://kukangendai.bandcamp.com/album/live-at-waseda-2010

価格:1,000円(税込)
発売日:2017年2月8日
フォーマット:bandcampにてデータ販売、今後ライヴ会場にてCD-Rでも販売を予定

1. トニー・モンタナ + 関係ねーっ! × 通過
2. I Can't Go For That + Born To スルー × 痛い
3. ECDECADE + 天国ROCK × まだ今日
4. Rock In My Pocket + 地球ゴマ × 少し違う

○収録日
2010年11月7日(日)
《早稲田祭Live》
会場:早稲田大学早稲田キャンパス7号館218教室
企画者 小林伸太郎/録音 住野貴秋/PA 宋基文
○マスタリング:noguchi taoru
○ジャケットデザイン:古谷野慶輔

Wiley - ele-king

 Wileyが〈CTA Records〉から通算11枚目のスタジオ・アルバムをリリースした。このアルバムをレヴューする前に、彼がなぜグライムの「ゴッドファーザー」と自らを呼ぶに至ったか紹介したい。
 Wileyがのちにグライムと呼ばれる音楽の原型となるサウンド「エスキービーツ」を作りあげたのは、その語源となった「Eskimo」のリリースから数えれば15年前のことである。ファースト・アルバム『Treddin’ On Thin Ice』に収録されている“Wot Do U Call It?(なんと呼ぶ?)”では、彼のサウンドがガラージ、2ステップ、アーバンと呼ばれることを否定し、まだ名もなきこの音楽と「ともに行こう」とラップした。2001年頃からチャラいUKガラージが突然変異したようなサウンドを、自身のレーベルでリリースし続け、2005年に〈Boy Better Know(BBK)〉に加入した。〈BBK〉には昨年マーキュリー賞を受賞したSkepta、JME、Jammerなど今のグライムを牽引するMCが所属している。Wileyはエスキービート、そして「グライム」と呼称される重たく凍えるような、チープでメロディックなサウンドを作り上げた。

 しかし、Wileyのキャリアはそのあと順風満帆ではなかった。

これが俺たちが今いるところだ
クルーの皆はまるで、トンネルの中みたいだ。
ファミリー、それこそが俺たちの気にかけることだ。
文字通り、レーベルがくれる金なんて無い、クソだ。
全く意味がない。
[“Speaker Box”冒頭のSkeptaの言葉]

 このSkeptaの言葉は、メジャー・レーベルから支持されない音を作ろうとするWileyの苦悩とも重なる。
 2011年に表現を取り戻すべくメジャーを離れ、「Stepフリースタイル」シリーズを開始、Twitterでフリー・ダウンロードで20曲を公開した(*1)。
 今回のアルバムはこの「Stepフリースタイル」シリーズを思い出させる。レーベルと関係なく「やっていく」インディペンデントな姿勢を感じるとともに、「Stepフリースタイル」にトラックを提供した若き才能あるプロデューサー、Preditahや盟友Dot Rottenは今作にも参加し存在感を放っている。
 トラックは全体的にトラップらしいラウドなビートとグライムの定番ホーンやベースラインが重なり、時折無国籍なメロディが顔をのぞかせる。

俺の顔を覗き込むなら、ボスを目にするだろう
クラウドの側を見るなら、モッシュを目にするだろう
ボブ・マーリーとピーター・トッシュのようにやる
これがスピーカーボックスのエスキーボーイ
[“Speaker Box”]

 Rap Geniusで歌詞を読んでみると、全体的にギャルやブリンブリンのアクセサリーといったテーマは控えめで、代わってどのように他のMCより優れているか、そして音楽を作り、成り上がったかについてラップしている。
 前者はグライムのクラッシュ(レゲエから影響を受けたMCバトル)にあるような、MC同士が切磋琢磨する文化から来ているだろう。後者は純粋にWiley自身の真面目さからきているように思える。アルバムの後半、TR.15“Lucid”やTR.16“Laptop”では、彼自身が10代の頃からノートパソコンで曲を作り、フリー・ダウンロードで公開することなど、インターネットを用いてファンに音楽を届けることを大切にする真摯さが伺える(*2)。
 MCの客演では、TR.11“On This”でフィーチャーされたIce Kidが良い。彼は十代の頃からWileyにフックアップされているが、フローのテクニカルさが客演陣の中でも際立っており、140というスピードの奥深さを感じさせる。また、TR.07“Pattern Up Properly”でフィーチャーされたJamakabiのパトワ混じりのMCも一周して今っぽくて好きだ。

Wiley、Chip、Ice Kidが出演するWestwood TVのビデオ(2007年)

 同世代、後続のMCやプロデューサーを刺激し、シリアスに音楽をやり続けるワイリー。
 「この音楽をやっていこう」、彼が2004年に発したメッセージとアクションがこのアルバムに結実した。

(セールスの)数字を俺たちに言ったって意味ない
俺たちは彼らを見ているからだ
俺たちが経験してきたことなんて
今のキッズは経験する必要のないやり方で
このことに没頭しているんだ。
[“Speaker Box”最後のSkeptaの言葉]

*1 ちなみに、このシリーズの“Step 20”はZombyが近年リメイクし、「Step 2001」として〈XL Recording〉からリリースされた。
*2 ちなみにWileyは以前インタヴューで、“Eskimo 2 (Devils Mix)”が収録されたレコードのヒットで車を買ったと話している。ブリティッシュ・ドリーム!

MNDSGN×Ryu Okubo - ele-king

 昨年〈ストーンズ・スロー〉からアルバムをリリースした、MNDSGN (マインドデザイン)。オオクボリュウがミュージック・ビデオを手掛けたことでも話題になりました。この度、INS Studioでは、MNDSGN の来日を記念して、2017年2月17日 (金) から2月21日 (火) までのあいだ、展覧会「Ryu Okubo EXHIBITION "Alluptoyou"」を開催します。MNDSGN「Alluptoyou」ミュージックビデオのためにオオクボが描いた、1000枚に及ぶエアブラシ原画や、絵コンテ、制作道具を展覧いたします。展示中の原画はすべて購入可能なほか、MNDSGN 関連のLP、CD、Tシャツなどの販売もあり。

オオクボリュウの原画展が開催!
1000枚に及ぶエアブラシ原画や、絵コンテ、制作道具を展覧
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Ryu Okubo EXHIBITION "Alluptoyou"
- Artwork from the Mndsgn & Stones Throw Music Video -
2017年2月17日(金)– 2月21日(火)
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Ryu Okubo EXHIBITION "Alluptoyou"
- Artwork from the Mndsgn & Stones Throw Music Video -
会期: 2017年2月17日 (金) - 2月21日 (火)
時間: 12:00 ‒ 20:00
会場: INS Studio (東京都渋谷区円山町 28-8 B1F)
入場料: 無料
URL: ins-stud.io
協力: SPACE SHOWER NETWORKS INC.

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