ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Albert Karch & Gareth Quinn Redmond - Warszawa | アルベルト・カルフ、ガレス・クイン・レドモンド
  2. Wool & The Pants - Not Fun In The Summertime | ウール&ザ・パンツ
  3. ele-king vol.34 特集:テリー・ライリーの“In C”、そしてミニマリズムの冒険
  4. Columns 和音を刻む手 ——坂本龍一のピアノ音楽——
  5. Shabaka ──一夜限り、シャバカの単独来日公演が決定
  6. Nujabes Metaphorical Ensemble & Mark Farina ──ヌジャベスの音楽を未来につなげるイヴェント「flows」、会場ではマーク・ファリナのミックステープが先行販売
  7. Columns Squarepusher 蘇る00年代スクエアプッシャーの代表作、その魅力とは──『ウルトラヴィジター』をめぐる対話 渡辺健吾×小林拓音
  8. John Carroll Kirby ──ジョン・キャロル・カービー、バンド・セットでの単独来日公演が決定
  9. PAS TASTA - GRAND POP
  10. Columns エイフェックス・ツイン『セレクテッド・アンビエント・ワークス・ヴォリューム2』をめぐる往復書簡 杉田元一 × 野田努
  11. interview with Wool & The Pants 東京の底から  | 德茂悠(ウール&ザ・パンツ)、インタヴュー
  12. Jabu - A Soft and Gatherable Star | ジャブー
  13. Tyler, The Creator - Chromakopia | タイラー、ザ・クリエイター
  14. Motohiko Hamase ──ジャズ・ベーシストの濱瀬元彦による、またもや日本のアンビエントの隠れ名盤が復刻
  15. Tomoyoshi Date - Piano Triology | 伊達伯欣
  16. interview with Coppé なにものにも縛られない宇宙人、コッペ降臨 | アトムTMからプラッド、ルーク・ヴァイバート、DJ KENSEIまでが参加したリミックス盤
  17. Columns Nala Sinephro ナラ・シネフロの奏でるジャズはアンビエントとしての魅力も放っている
  18. interview with Sonoko Inoue ブルーグラスであれば何でも好き  | 井上園子、デビュー・アルバムを語る
  19. interview with Neo Sora 映画『HAPPYEND』の空音央監督に(主に音楽の)話を訊く
  20. interview with Kelly Lee Owens ケリー・リー・オーウェンスがダンスフロアの多幸感を追求する理由

Home >  Interviews > interview with Bushmind - 夢見るアーバン・ミュージック

interview with Bushmind

interview with Bushmind

夢見るアーバン・ミュージック

──ブッシュマインド、インタヴュー

野田 努    写真:小原泰広   Jun 02,2015 UP

Bushmind
SWEET TALKING

SEMINISHUKEI/AWDR/LR2

Hip HopTechnoDowntempo

Amazon iTunes

 街は死んでいる。かつては僕たちの遊び場だった街が。
 いま僕たちが街にいるのには、消費者であることが条件付けられている。渋谷系リヴァイヴァルだって? とんでもない、90年代はセンター街の入口のキノコの屋台が、やって来る外国人を驚かせていたほどだ(笑)。渋谷駅構内では毎週、当時の日本で最高のディジェリドゥ演奏者がパフォーマンスを聞かせていた。コンビニで買ってきた缶ビールを飲みながら、僕はいつも地ベタに座っていた。そんな公共性が残っていたのが1990年代の渋谷で、あの時代がリヴァイヴァルするなんてことは、僕にはとても想像できないな。

 街は僕たちの遊び場だった。ブッシュマインドの2007年のデビュー・アルバムのタイトルは『Bright In Town』=「街の輝き」。まごうことなき街の音楽。ceroも歌っている、いわば「失われた街」の生存者。そして、ブッシュマインドはいまでも街の音楽をやっているひとり。泣くことも嘆くこともなく、たんたんとドリーミーに。

 不良の匂いをさせているところも良い。不良というのは悪人のことではない。管理を拒む者のこと。管理サッカー、管理野球、管理社会……を拒むと言うことは、試合中、臨機応変に自分で判断しなければならないということだから、実は(とくに日本人には)難しい。(シカゴなんかは、管理されることもなく、むしろ臨機応変に自分で判断しかしないから、あんなに多彩なゲットー・ミュージックが生まれるのだろう)
 ブッシュマインドは、そういう意味で本当に自由にやっている。新作『SWEET TALKING』は全21曲が収録されているが、もうひとつ重要なのは、ここに30人以上の人間が参加していることだ。そこにいる30人は、トレンドやハイプなどとは無関係の人たち。『Bright In Town』もそうだったように、いろいろな人たちと繫がることでしかこのアルバムは成立しない。街で出会い、街で遊んでいる人たちと。

音楽が怒りのはけ口だとか、俺はそういうのはとくにないんですよね。ムカついたときに音楽を作るとかもほとんどないですし。俺にとっては、音楽は楽しむものって思っています。

新作『SWEET TALKING』は、いままででベストだと思いました!

Bushmind(以下、B):マジっすか、ありがとうございます!

ブッシュマインドってさ、ヒップホップをベースにテクノを取り入れてるっていう風によく語られてて、たしかにその通りなんだけど、僕はドリーミーなチルアウトってイメージを持っているんですよね。で、まさに今回のアルバムはそれを突き詰めたっていうか。『Bright In Town』からずっと継続されているものなんだけど、それを今回のアルバムはいろんな意味で発展させ、研磨している。素晴らしいと思いました。

B:アップデートするってことをすごく意識しました。過去と似通っちゃわないようにっていうのと、できるだけいろんな引き出しを見せるということ。頭のなかで考えたことをうまく曲に反映できた手応えはありますね。
 こうしたいとか、こうやりたいとかっていうのを、パソコンで細かくいじれるようになって。いままでは一旦サンプリングで強引に形を作って、そっから正解を見つける感じだったんですけど、今回は思ったところにいきやすくなったっすね。技術的にはまだまだ全然ですけど、ここ3年でかなりいろいろ覚えられたので。

8年前とは違うぞっていう。

B:そうです(笑)。

ブッシュマインドらしさがすごく出てるよね。13曲目とか、16曲目とか、本当に良い感じのチルアウト・ヒップホップというか。サイケデリックというよりは、チルアウトでありドリーミーなんだよね。前に会ったときはアンチコンからすごく影響を受けているって言っていたけど、アンチコンはもっと実験っていうかさ。

B:ちょっとアート的なね。

そうそう。ブッシュマインドはもっと陶酔的じゃない?

B:そうですね。単純に音楽として楽しめるようにっていうのは考えてやっていますね

ストリートから来るタフな感覚はあるんだけど、同時にドリーミーでチルアウトな感覚が一貫してあるというのは何でだろう?

B:好きなんですよ。何も考えないで作ると自然とその方向へ行っちゃって。

『Bright In Town』(2007年)でブッシュマインドの印象を決定づけたのって、やけのはらとやった"Daydream"だったと思うんだよね。で、ブッシュマインドは、あの曲で表現した感覚をさらに自分に引き寄せて、どんどんブラッシュアップしていったよね。『Bright In Town』の次に『Good Day Commin'』があったでしょう? あれって3.11の年(2011年)だったんだよね?

B:そうですね。

まだショックが生々しかった時期だったよね。いたるところでネガティヴな感情が表出していた時期に、「良い時代がやってくる」というアルバム名の、しかもあれだけドリーミーでスモーキーな……(笑)。

B:はははは。

だって、あの時期だよ。あの時期に『Good Day Commin'』を出すというのは、やっぱりそこにはブッシュマインドなりの時代へのスタンスっていうかさ。

B:そこはけっこう分けていますね。音楽が怒りのはけ口だとか、俺はそういうのはとくにないんですよね。ムカついたときに音楽を作るとかもほとんどないですし。俺にとっては、音楽は楽しむものって思っています。

ある意味では、あの時期にあれってリスキーだと思ったんだよね。

B:いろいろ起きているなかで、おちゃらけてるみたいな(笑)。

わかってて、あえてというか?

B:自分はああいうドリーミーな部分が好きなんだけど、その裏にハードコアな熱い部分をチラ見せするみたいのが、真っ正面には見せない感じが理想ですね。アーティストを追っかけていても、実はムチャクチャ喧嘩っぱやいとかムチャクチャおっかないとか見せてない、裏の一面があるアーティストがすごい好きで。自分が不良じゃない分、そうゆう人には憧れがありますね。

それは本当の自分じゃないと?

B:はい。

今回の『SWEET TALKING』もそうだけどさ、『Bright In Town』や『Good Day Commin'』にしても、タイトルからして、桃源郷の方へ行くじゃない(笑)?

B:だから俺、今回もかなり意識しましたね。“bright”、“good”ときて、さて次はどうしようかなって(笑)。

はははは。

B:でもなんで好きな部分がそっちの方向なのかというのと……。うーん、なんでですかね。

サイプレス・ヒルというよりは、ナイトメアズ・オン・ワックスなわけでしょう?

B:そこを隠したいというのと、俺はできるだけいろんなひとに聴いてもらいたいというのがあって。そういうポジティヴな方向のほうがよりたくさん聴いてもらえるかなって。

みんなはそこで「グッド・デイズ・カミン」ではなく「バッド・デイズ・カミン」って思っているわけじゃないですか?

B:そうなんですかね。自分は楽しく過ごしたいっていうのがあるんで。自分の音楽にそういうネガティヴな要素を入れたいとはそんなに思わないんですよね。作っていてほんと楽しいんで。

今回のアルバムでも、テクノのビートっていうかさ、ヒップホップのトラックメイカーだったらまず作らない曲も入ってるよね。BPMもダンス・ミュージックのテンポだったりするし。

B:そうですね。

アシッド・ハウスっぽいのもあるんだけど。

B:今回は303を多用してますから。偽物ですけどね(笑)。いやぁ、もう楽しくなっちゃって。本当にあの機材はすごいんですよ。ついつい使いすぎちゃった。自分の好きな音とフレーズを決定づけてくれるというか。キラキラしたコードも出やすいというのもあって。

取材:野田努(2015年6月02日)

123

INTERVIEWS