ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 山口美央子 - トキサカシマ (review)
  2. 彼女は頭が悪いから - 姫野カオルコ (review)
  3. BOOMBOX&TAPES ──カセットテープ愛好家に送る豪華なジンが創刊 (news)
  4. Mike - War in My Pen (review)
  5. The Book of Drexciya ──ドレクシアの神話を描いたグラフィック・ノヴェルが制作 (news)
  6. Eartheater - IRISIRI (review)
  7. Mira Calix ──ミラ・カリックスが新作EPをリリース (news)
  8. Allysha Joy - Acadie : Raw (review)
  9. ZULI - Terminal (review)
  10. 山口美央子 - 月姫 / 山口美央子 - NIRVANA / 山口美央子 - 夢飛行 (review)
  11. Anderson .Paak - Oxnard (review)
  12. interview with BES & ISSUGI 100% HIP HOP、その交差と反応 (interviews)
  13. Binkbeats ──エイフェックス“Windowlicker”のカヴァーで注目を集めた異才、ビンクビーツのCDがリリース (news)
  14. Mark Stewart ──マーク・スチュワートによるポストパンク時代の傑作が10曲もの未発表音源付きでリイシュー (news)
  15. Norhern Soul ──『ノーザン・ソウル』、この最高な映画を見たらスリムのデニムを履けなくなる (news)
  16. interview with Colleen 炎、わたしの愛、フリーケンシー (interviews)
  17. 編集後記 編集後記 (2018年12月28日) (columns)
  18. interview with Cornelius 新作『Ripple Waves』を語る (interviews)
  19. Columns 坂本龍一の『BTTB』をいま聴いて、思うこと (columns)
  20. Elecktroids ──ドレクシアがエレクトロイズ名義で残した唯一のアルバムがリイシュー (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > BBH- The Album

BBH

BBH

The Album

Seminishukei

Amazon iTunes

野田 努   Nov 14,2012 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 膨大なレコードからざっくりスライスして、さくさくと展開するところはJディラの『ドーナッツ』を彷彿させるが、『ジ・アルバム』はソウルというよりも『サージェント・ペパー~』の側だ。ヒップホップというよりはカクテル・ラウンジとさえ呼べる。とくに前半は、洒落ている。つまり、フライング・ロータスの新作以上に、こちらのほうがジェントル・ピープルだ。
 そんなわけで、『ジ・アルバム』が『ファンタズマ』や砂原良徳の隣に並んでいても驚かない。アートワークのデザインの方向性次第では、このアルバムはウータン・クランよりもディック・ハイマンさもなければドリーム・ポップのコーナーに分類されていたかもしれない。

 BBHとは、Bushmind + starrBurst + dj Highschoolの3人組で、日本のアンダーグラウンドなヒップホップ・シーンの......もはやベテランと呼べるのだろうか。ブッシュマインドは昨年、通算2枚目となるソロ・アルバムを出している。そのアルバム『Good Days Comin'』では、ラッパーたちの協力のもと、ここではとても書けないある種の真実を描いているが、BBHはそのインストゥルメンタルな展開とも言えるかもしれない。
 彼らは本当にいろいろなところから音を持ってきている。イージー・リスニング、サントラ、レゲエ、パンク、ロービットの効果音......雑多な音のなかから彼らいうところの「サイケデリック」を表現している。ここには、厳しいストリートの生存競争や都会の感傷、お決まりのメッセージやリアリズムなどから遠く離れた、桃源郷的とも言える心地よさがある。たとえば20曲目の"THENEONLIGHTSGLITTERSANDCHANTSTHROUGHTHENIGHT"などは、ソニック・ブームのヒップホップ・ヴァージョンとも呼べるようなもっとも印象的曲のひとつだが、いきなり20曲目に飛ばして聴くよりは、最初から順番に聴いていったほうが良い感じのアルバムだ。

 オウル・ビーツやブン、ブダモンク、フラグメントイーライ・ウォークスなどなど、2010年はドイツのレーベルが、そして2012年はフランスのネット・レーベルが日本以上に日本のビートメイカーを評価しているかのようなコンピを発表、オリーヴ・オイル以降の......と呼ぶのが的確なのかどうかはさておき、ビート・シーンにはたくさんの才能がごろごろしているようだ。他方では、クロックワイズも再活動すると宣言しているし、女性ビートメイカーのクレプトマニアックにも他ジャンルからの注目が集まっている。メインストリームではDJフミヤが楽しいアルバムを発表したばかりだ。そういうなかにあって、BBHは、他の誰とも違った、温かくドリーミーなアプローチを見せている。やや幻覚気味のイージー・リスニングだと思う。ある意味、いままでブッシュマインドとは縁のなかったリスナーにこそ聴いてもらいたい。

野田 努