ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 夜、汗、ニコチン、酒、セックス、テクノ…… ──ドイツの国民的DJ、ウエストバムの半生と90年代レイヴの狂騒 (news)
  2. Nubiyan Twist - Jungle Run (review)
  3. Columns 追悼:KAGAMI (columns)
  4. Columns What’s the point of indie rock? インディー・ロックの核心とは何か (columns)
  5. Roma/ローマ - (review)
  6. Myriam Bleau - Lumens & Profits (review)
  7. JH1.FS3 - Trials And Tribulations (review)
  8. Columns JPEGMAFIA『Veteran』の衝撃とは何だったのか (columns)
  9. K A R Y Y N - The Quanta Series (review)
  10. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第3回 映画『金子文子と朴烈』が描かなかったこと (columns)
  11. 柴田聡子 - がんばれ!メロディー (review)
  12. sugar plant ──シュガー・プラントのワンマンライヴを目撃せよ (news)
  13. GRADIS NICE & DJ SCRATCH NICE - Twice As Nice (review)
  14. 中原昌也 ──作家デビュー20周年を記念し最新小説とトリビュート作品集が2冊同時リリース (news)
  15. C.EからリリースのカセットテープはPLOYのミックス (news)
  16. ブラック・クランズマン - (review)
  17. Norhern Soul ──『ノーザン・ソウル』、この最高な映画を見たらスリムのデニムを履けなくなる (news)
  18. TAKKYU ISHINO×WESTBAM ──STERNE15年目の夜、石野卓球×ウエストバム (news)
  19. The Comet Is Coming ──UKジャズのキイパーソン、シャバカ・ハッチングスのザ・コメット・イズ・カミングが新作をリリース (news)
  20. Sharon Van Etten - Remind Me Tomorrow (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > BBH- The Album

BBH

BBH

The Album

Seminishukei

Amazon iTunes

野田 努   Nov 14,2012 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 膨大なレコードからざっくりスライスして、さくさくと展開するところはJディラの『ドーナッツ』を彷彿させるが、『ジ・アルバム』はソウルというよりも『サージェント・ペパー~』の側だ。ヒップホップというよりはカクテル・ラウンジとさえ呼べる。とくに前半は、洒落ている。つまり、フライング・ロータスの新作以上に、こちらのほうがジェントル・ピープルだ。
 そんなわけで、『ジ・アルバム』が『ファンタズマ』や砂原良徳の隣に並んでいても驚かない。アートワークのデザインの方向性次第では、このアルバムはウータン・クランよりもディック・ハイマンさもなければドリーム・ポップのコーナーに分類されていたかもしれない。

 BBHとは、Bushmind + starrBurst + dj Highschoolの3人組で、日本のアンダーグラウンドなヒップホップ・シーンの......もはやベテランと呼べるのだろうか。ブッシュマインドは昨年、通算2枚目となるソロ・アルバムを出している。そのアルバム『Good Days Comin'』では、ラッパーたちの協力のもと、ここではとても書けないある種の真実を描いているが、BBHはそのインストゥルメンタルな展開とも言えるかもしれない。
 彼らは本当にいろいろなところから音を持ってきている。イージー・リスニング、サントラ、レゲエ、パンク、ロービットの効果音......雑多な音のなかから彼らいうところの「サイケデリック」を表現している。ここには、厳しいストリートの生存競争や都会の感傷、お決まりのメッセージやリアリズムなどから遠く離れた、桃源郷的とも言える心地よさがある。たとえば20曲目の"THENEONLIGHTSGLITTERSANDCHANTSTHROUGHTHENIGHT"などは、ソニック・ブームのヒップホップ・ヴァージョンとも呼べるようなもっとも印象的曲のひとつだが、いきなり20曲目に飛ばして聴くよりは、最初から順番に聴いていったほうが良い感じのアルバムだ。

 オウル・ビーツやブン、ブダモンク、フラグメントイーライ・ウォークスなどなど、2010年はドイツのレーベルが、そして2012年はフランスのネット・レーベルが日本以上に日本のビートメイカーを評価しているかのようなコンピを発表、オリーヴ・オイル以降の......と呼ぶのが的確なのかどうかはさておき、ビート・シーンにはたくさんの才能がごろごろしているようだ。他方では、クロックワイズも再活動すると宣言しているし、女性ビートメイカーのクレプトマニアックにも他ジャンルからの注目が集まっている。メインストリームではDJフミヤが楽しいアルバムを発表したばかりだ。そういうなかにあって、BBHは、他の誰とも違った、温かくドリーミーなアプローチを見せている。やや幻覚気味のイージー・リスニングだと思う。ある意味、いままでブッシュマインドとは縁のなかったリスナーにこそ聴いてもらいたい。

野田 努