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LA NINA

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二木 信   Aug 31,2012 UP
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E王

 ジョン・リーランドの、抜群に読み応えのある『ヒップ――アメリカのかっこよさの系譜学』(篠儀直子+松井領明訳)という大著に拠れば、パティ・スミスはかつてこう言ったという。「女というボディのなかでではなく、作品というボディのなかで、アーティストとしての自己主張をする必要があった」と。クールな言葉だ。

 さらに、1976年、彼女は作家のニック・トーシュに次のように語った。少々長いが、引用したい。「かたくなな女は凡庸な芸術しか生み出さない。凡庸な芸術なんかに用はない。......ポエトリー・リーディングでわたしが『プッシー(pussy)』という言葉を言うと、どこかのばか女が必ず立ち上がり、『プッシーという言葉について、あなたはどう定義しているんですか?』とかみついてくる。わかるもんですか、ただのスラングよ。プッシーと言いたくなったらそう言うだけ。ニガーと言いたくなったらそう言うし。誰かがわたしのことをすげえビッチと言ったとしたら、それもクールなこと。アメリカ人であるって、そういう言葉を使うことよ。なのに、あの堅物の運動家たちときたら、わたしたちのスラングを責め立てる。苛々するわ」。このカッコイイ発言に付け加える言葉、あるいは異論があるだろうか? 僕は、「その通りです!」と同意するしかない。

 〈ブラックスモーカー〉が初めて制作したコンピレーション・アルバム『LA NINA』は、女性アーティストの作品集である。パティ・スミスの発言に倣って言えば、ここに集結した女性たちは、作品というボディのなかでアーティストとしての自己主張を展開する豪傑な女たちだ。僕は彼女たちの音楽から、引用したパティ・スミス的なパワフルな態度を感じる。音は一様にハードコアで、彼女たちは、愛想笑いのような生ぬるい態度を一切見せない、自由奔放で、怒りたければ怒るし、嘆きたければ嘆く、笑いたければ笑う。やりたいことを貫き通す凄みと強さいうものが音からビシバシ伝わってくる気がする。

 音楽的にも、ダブやラップ、テクノやハウスといったダンス・ミュージック、ノイズや実験的な電子音楽と多彩だ。2007年のアリ・アップの来日ツアーに参加し、ドライ&ヘビーのサポート・メンバーでもあるジャー・アンナの物憂げなダブ"ILLUMINATOR"から幕を開け、その後に続くのは、〈セミニシュケイ〉のイレブンによる〈ON-U〉を彷彿させる硬質で、重厚な"Installation DUB"だ。妖しい雰囲気を演出するラテン・ジャズ風のヒップホップ"Ill sleeping blues"の黒光りのするトラックは、ヒップホップ・グループ、デレラのDJであるヨーコa.k.a.ジルによるものだ。この曲の殺気立ったラップで知られることになるであろうミチノからは、往年のダ・ブラットに通じるやんちゃな魅力を感じる。デレラからは、MCのミホ、ラッパー/シンガーのマクシーも参加している。ルミとシミ・ラボのマリア、クレプトマニアックによる"LA NINA"は、[music video] ♯1で紹介した通り、タイトル曲にふさわしい強力な一発だ。
 ラキラキ・ワズ・真保☆タイディスコの型破りな電子音楽"HIMMEL"から実験的な領域に突入するこのコンピには流れというものがある。サナエによる遊び心のある愉快なサウンド・コラージュ"48stomach to the smell of sense"のインタルードを挟んで、クレプトマニアックのスペーシーなソロ曲"GET UP W"が私たちをディープなところへ引きずりこんでいく。
 そして後半、さらに怒涛の展開が続くのだ! 原発と放射能汚染に翻弄されるこの国で鳴らされるクロスブレッド(リエ・ラムドールとマユコのユニット)の怒りのテクノ・ミュージック"stress test"から世界中を飛び回るDJ、シホ・ザ・パープルヘイズのトライバル・ハウス"gold dust flowers"へ、そして、ノイズ・ロック・バンド、タッジオのドラマー、あらきとくわまんによるユニット、コケティッシュ・マーダー・ガールズの獰猛なエレクトロニック・ミュージック"T.M.W.B.H"から関西アンダーグラウンド・シーンで異彩を放つドッドドの時空を歪めるノイズ"1999"へとなだれこんでいく。ハードにぶっ飛ばし続けて、最後の最後で、ヨーコa.k.a.ジルとマクシーのソウルフルな"he said"が柔らかい着地点を用意してくれる。

 参加アーティストによる個性的なアートワークも面白い。初回限定盤にはクレプトマニアックのアートブックレットがついてくる。
 クラブやライヴハウスの現場に多くの女性の表現者たちがいることを考えれば、『LA NINA』は時代の必然とも言える。このようなコンピが成立するということは、この背後でより多くの才能がひしめき合っているということでもある。また、本作の音にある種の一貫性があるということは、シーンらしきものが存在するということでもある。何よりもこれは、親しみやすくキュートだ。

 9月7日には西麻布の〈イレブン〉で『LA NINA』のリリース・パーティがある。スペシャル・ゲストDJはノブとヒカルで、ザ・レフティ(キラー・ボング+ジューベー)のライヴもあるが、コンピには参加していない女性DJやダンサーやVJも出演する。名前を見れば、デコレーションやフードにも気合いが入っているのがわかる。これは見逃したくない。〔『LA NINA』特設HP http://blacksmoker.net/la-nina/

二木 信