ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Àbáse - Laroyê (review)
  2. Random Access N.Y. vol.132:NYではレコードのある生活が普通になっている (columns)
  3. Columns ジャズとアンビエントの境界で ──ロンドンの新星ナラ・シネフロ、即完したデビュー作が再プレス&CD化 (columns)
  4. Oval - Ovidono (review)
  5. Floating Points × Pharoah Sanders ──これはすごい! フローティング・ポインツとファラオ・サンダースの共作がリリース (news)
  6. King Krule - You Heat Me Up, You Cool Me Down (review)
  7. クリスチャン・マークレー - トランスレーティング[翻訳する] (review)
  8. Ehiorobo - Joltjacket (review)
  9. interview with Meitei 海外で評判の新進電子音楽家、日本文化を語る (interviews)
  10. Jenny Hval ──〈4AD〉へ移籍した北欧のシンガー/プロデューサー、ジェニー・ヴァルの新作が発売決定 (news)
  11. dj honda × ill-bosstino - KINGS CROSS (review)
  12. interview wuth Geoff Travis and Jeannette Lee 〈ラフ・トレード〉が語る、UKインディ・ロックの現在 (interviews)
  13. パフォーマンス:クリスチャン・マークレーを翻訳する - @東京都現代美術館 (review)
  14. Norhern Soul ──『ノーザン・ソウル』、この最高な映画を見たらスリムのデニムを履けなくなる (news)
  15. Parris - Soaked In Indigo Moonlight (review)
  16. interview with IO KoolBoyの美学 (interviews)
  17. 年明けのダンス・ミュージック5枚 - (review)
  18. Luke Wyatt & Dani Aphrodite ──ファッション・ブランドの〈C.E〉が2022年春夏コレクションに先駆けヴィデオを公開 (news)
  19. Space Afrika - Honest Labour (review)
  20. どんぐりず ──マッチョなシーンに風穴を開ける!? エレキング注目のラップ・ユニットが東京と大阪でライヴ (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Bushmind- Good Days Comin'

Bushmind

Bushmind

Good Days Comin'

Presidents Heights/Seminishukei/Pヴァイン

Amazon iTunes

野田 努   Aug 26,2011 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 いま日本にルードな音楽はあるのだろうか。何事にも屈したくはない町のちんぴらが楽しめるルードな音楽はどこにあるのだろう......。
 10代の頃、いっしょに遊んでいて楽しいのはちんぴらだった。彼らからは、ここにはとても書けないような楽しいことをずいぶんと教えてもらった。ザ・スペシャルズは町のちんぴらに共感するあまり、彼らの将来を案じた曲(まあ、カヴァー曲だが)、"ア・メッセージ・トゥ・ユー・ルーディ"でこう呼びかけている。「やんちゃばかりしないで、おまえは自分の将来を心配して生き方を変えたほうがいいぞ」
 が、しかし、いつの時代でもやんちゃな人間はいる。ちんぴらは、その嗅覚で彼らを受け入れてくれそうな場所をかぎ分けて、出入りする。僕は今年になって、近所のバーでひとりの若いちんぴらと知り合った。音楽が好きで、話せば気のよさそうに見えるところもあるが、目つきはかなり悪い。たまに近くの公園で会うと、軽い挨拶程度の会話をする。もしこんど会ったらこのアルバムを教えてあげよう。ブッシュマインドのセカンド・アルバム『グッド・デイズ・カミン』である。

 2007年の『ブライト・イン・タウン』は、いったい誰の作品なのかわからなくなるような、支離滅裂なまでにたくさんの人間が参加し、脈絡が不明なほど雑多な音楽性が並べられていたものだが、4年ぶりのセカンド・アルバムとなる『グッド・デイズ・カミン』は、これこそがブッシュマインドにとって本当のファーストなんじゃないかと思えるほど、アルバムらしいアルバムになっている。結束を固めたフットボール・チームのように参加者すべてがこのアルバムのいち部となっているように思える。
 『グッド・デイズ・カミン』はしかし、ルード(粗暴)な音ではない。禁欲的でもない。アルバムのタイトルとスリーヴ・アートが暗示するように、意外とも言えるほど滑らかで夢心地なチルアウト・ビートで統一されている。基本的にはヒップホップ・アルバムだが、はったりやお涙頂戴の湿っぽさ、ナルシズムや説教はない。それが彼らの流儀だと言わんばかりに、言葉でとくに何かを強く主張したいという感じではなく、どこまでも乾いたフィーリングがある。淡々としているようだがビートのアイデアは豊富で、ときにメロウで、陶酔を失わない。ウィズ・カリファとも似た......目つきの悪い町のちんぴらに笑顔をもたらしてくれそうなユーモアとグッド・フィーリングを持っている。
 Rockasenをフィーチャーした"Toilet MTG"は、さわやかなトラックのうえで少々ドジなストーンを実にコミカルに描いている。DUOがラップする"アスファルト"はユニークなビートを持った曲で、レゲエからの影響を感じる"no.03"、サックスのサンプリングをフィーチャーした"Blliliant"、まったくドリーミーな"10th & Wlof"、弦楽器のループがメロウに展開する"Archaeological Digging"のようなインストゥルメンタル曲も魅力的だ。なかには"G Dat E"のような4/4キックドラムを活かしたソウルフルなテクノ・トラックもある。少年Aによるラガマフィン調のラップをフィーチャーした"We Like A Sensi"は爆笑もので、CIAZOOがラップする"No Sleep Daydream"はブッシュマインドが目指すところのテクノとヒップホップとのサイケデリックな融合の試みが最大限に引き伸ばされている。

 僕のなかでこういう音楽は、ザ・クラッシュの"ルーディー・キャント・フェイル"をはじめ、ザ・スペシャルズやデキシード・ミッドナイト・ランナーズ、ポーグス、そしてザ・ストリーツのデビュー・アルバムに続くような、いわば不良のロマンティシズムの系譜として位置づけている。もしすべての人間がきっちりと規則を守っている社会があるとしたら、すべての学生や会社員が人から言われた通りにだけ動いたら、それは本当に心地よい場所と言えるのだろうか。そうした疑問が浮かぶとき、彼らは頼もしく思える。とはいえ僕は、くだんの若者にこんど会ったときにはダンディ・リヴィングストンが60年代に残したメッセージを最後に付け足すつもりではある。

野田 努