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あと連絡が大変だったっす。セカンドでちょっと人数が減ったんで、忘れてたんですよね(笑)。途中で全員にメールして確認を取らなくちゃいけないんだって思い出したとき、発売の延期をちょっと考えましたね(笑)。
Bushmind SWEET TALKING SEMINISHUKEI/AWDR/LR2 |
■そういえば、少し前にトーフビーツのリミックスもやったじゃないですか? あれは、さすがにびっくりした。だって、トーフビーツの曲をブッシュマインドやRAMZAがリミックスしてるんだもん(笑)。
B:あれはスタイル・ウォーズというか、好きなアーティストを使ってどれだけ面白いことができるかをやらせてもらった感じですね。大阪のトラック・メイカーも参加したんで。
■いや、良い企画だと思いますよ。トーフビーツについてはどう思う?
B:才能があるなって思います。あの曲の構成は自分にはできないんで、勉強になりますね。好みじゃない部分もありますけど。
■ふだん向いているところが違うからね。でも、違うトライブが、リミックスという作業を通じて同じ盤にいることは良いよね。
B:ナード的な物も俺は良い物があると思うし、否定するつもりはないですよ。自分の好きものにもそういう音楽はあるし。ただ、音の鳴らし方とかで音色でちょっと物足りなくなってきちゃうかなって。彼のスタンスは好きですね。斜めに見ていそうな感じとか(笑)。
■そこへいくとブッシュマインドや〈SEMINISHUKEI〉って、決して人付き合いが得意なほうではないからねー(笑)。
B:そうなんですよ(笑)。だからいまいち広がんないっていうところがあるんすよね。
■それは8年経っても変わらない?
B:〈SEMINISHUKEI〉のメンバーでアルバムを出したのって、3、4人とかですよ。総勢30人くらいいるなかで。本当は仲間うちで作品を出して競い合うっていうのが俺の理想なんですけど、なかなか実現できないですね。あ、でもDJ Highschoolってやつが1ヶ月前にすごく良いアルバムを出したんです。かなり刺激になりましたよね。
■へー。
B:Highschoolはすごいっすよ。彼は、どんなジャンルでも興味を持ったらすぐに自分でやってみて、簡単な方法でかっこいい物を作ることができるんですよ。もちろん掘り下げもするんですけど。DJ以外にラップやハードコアのバンドもやっているし。
■いろんな人が参加しているんだけど、OVERALLというトラックメイカーも面白いと思った。
B:才能があるっすね。レコードの堀り方も尋常じゃなくて、DJもすごくいいんですよ。やっちゃんとクマと3人でミックスを聴いて、みんな「これはヤバい」ってなって、「〈SEMINISHUKEI〉に入ってもらおうか」って。2マッチ・クルー周辺の人間とも仲いいんで、その影響もでかいんじゃないかと思います。
■今回は、トラックメイカーも何人もフューチャーされているんだけど、これは土台となるものをタカアキ君が作って、それに手を加えてもらうの?
B:いや、その逆で、もらう方が多かったすかね。それを俺が料理してちょっと足したりとかループを変えたりですかね。OVERALLと作った曲はけっこうシンプルで、最初のピアノとサンプリングがOVERALLで、途中から入ってくる303を俺が入れた感じで、あとは展開を自分でアレンジしました。なんかひと味足すっていう。
■ひとりで黙々と作るよりは誰かとやっていた方が楽しい?
B:作業によりますね。細かい作業はひとりでやりたいです。ただ、その土台になったりする部分で自分にないものが入ったりすると展開が一気に変わったりすることがあるんですよ。たとえばハットを入れてもらったとか。そこから自分の発想が増えていったりもする。フィードバックが起きたときの感覚がすごく楽しいんです。バンドってひとじゃなくてみんなで作るじゃないですか? 僕はやったことがないんでわからないんですけど、そういう感じなのかなって。だからもちろん相性が悪いひととかはなかなかできなかったりするんですけど、気が合うと、あっという間に仕上がることもあるんで。
■今回の作品は、タカアキ君のなかで予定よりも伸びた?
B:完成は伸びましたね。ホントにギリギリでしたからね。ラップ取り終わった後にもトラックを最後までいじってた曲とかがあったんで。あと連絡が大変だったっす。
■それ、『Bright In Town』のときも言ってたじゃん(笑)。
B:セカンドでちょっと人数が減ったんで、忘れてたんですよね(笑)。途中で全員にメールして確認を取らなくちゃいけないんだって思い出したとき、発売の延期をちょっと考えましたね(笑)。
■はははは。それで井坂さん(担当A&R氏)に怒られたと?
B:いや、それで予定を見たら俺が1週間早く勘違いしていて。まだいける、みたいな。3枚目なんでサッとできるトラックメイカーを目指したかったんですけど。
■ジャケの絵は〈フューチャー・テラー〉でも書いているひとなんでしょう?
B:そうですね。本人たちは服飾をやっていたりしていて。ROCKASENとかもそうですね。同じクルーみたいです。
■アートワークに関してディレクションはしたの?
B:一応、ホークウィンドの『スペース・リチュアル』を(笑)。
■ホークウィンドって、ヒッピーだよ(笑)。
B:いやいや、レミーはヒッピーじゃないですよ!
■いや、レミーはヒッピーだよ(笑)。
B:まあ、時代的には、そういう要素もあったかもしれないですけどね(笑)。
■しかし、なんで『スペース・リチュアル』だったの?
B:サイケデリックの数ある名盤で、自分のなかではこれが金字塔なんです。今回は、そのくらいの作品を作りたかったんです。ワックワックにアートワークをお願いするのは決まっていたんで、じゃあ、何をお願いするのかってなったときに、彼らにこの絵を描き直してもらってリミックスしてもらったら面白いんじゃないかなって。ヒップホップのアルバムにホークウィンドっていう設定自体もないと思うんで。あとホークウインドのファンのひとが間違って手に取ったりしないかなっていう(笑)。
■それは感想を聞きたいね。
B:冒涜だとかいって、怒る人とかもいそうですよね(笑)。
■ところで、タカアキ君はなんでそんなにヒッピーを嫌うの? ヒッピーいいじゃん。ある意味では、俺らの先輩とも言えるよ。
B:まぁ、切り開いてくれたヒッピーもいたかもしれないんだけど、ラヴ&ピースで全部片付けるっていうのは、ちょっとなっていうのがあるんですよ。裏側がないっていう。その裏側が重要だと思っているんで。そこはあえて見せるものでもないと思いますけど。
■ブッシュマインドのドリーミーな裏側だね。
B:あと、俺が良いヒッピーに出会っていないんだと思います(笑)。面白いヒッピーに出会ったら、俺の考え方も変わるかもしれないですね。ダメなヒッピーってたくさんいるじゃないですか。こうありたいっていう理想像と自分が思うヒッピーの姿は全然違うというか、ある程度ひとぞれぞれの美学やルールが必要だと思うんですよ。そこがぶつかるのはしようがない。
■でも、8年後には変わっているかもしれないよ(笑)。
B:そこは確認させてください(笑)。「野田さん、8年経ちました」って(笑)。
■でもさ、タカアキ君は、60年代とかも好きそうじゃない?
B:サイケデリックも、やっぱりブルー・チアーとか。ブルー・チアーはヘルズ・エンジェルスじゃないですか。アイアン・バタフライは、ヒッピーっぽいすね。あのバンドは大好きですね。あの人たちに出会えたら、ヒッピーが好きになるかもしれないですね(笑)。
取材:野田努(2015年6月02日)