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let us talk about a battery - ele-king

20年前にアンビエント・ハウスを開拓したアレックス・パターソン、それから20年後に『アンビエント・ミュージック 1969―2009』を上梓した三田格、そしてパターソン博士によって人生を変えられたホワイ・シープ?が一堂に会する。

 トーマス・フェルマンも同席するとは聞いてなかった。なんだよ。頭の中では「スキゾフレニア」が流れはじめる。はじめましての握手をすると、パレ・シャンブール「ヴィア・バウエン・アイネ・ノイエ・シュタット」を口ずさみたくなってくる。いや、そうと知ってれば、あの不可解な『ロウフロウ』(04)をもう一度、聴いてから来たのに。ダブリーと組んで西海岸のアンダーグラウンド・ヒップ・ホップにアプローチしようとしたのはなぜだったのか。翌年にリリースされたジ・オーブ『オーキー・ドーキー』とはあまりにも明暗が逆で、何がどうしてどこがどうなっていたのか、気になって仕方のないアルバムだったというのに。

 そして、対談の相手であるホワイ・シープ?がやって来ない。もう、かれこれ30分近く待たされている。まったく偉くなったものだよな。ホワイ・シープ?がジ・オーブを待たせるなんて。民主党が政権を取ったんだなと実感する時はこんな......いや。

 時間つなぎに僕はたまたま持っていた『アンビエント・ミュージック 1969―2009』をフェルマンにプレゼントする。在庫が少なくなっているので(つーか、版元は2週間で品切れです)、無闇と渡せる数はないのだけれど、こういう時にはやっぱり役に立つ。僕が持っていたレコードの袋を指差して何を買ったのか見せてというような人である。アレックス・パタースンは自分の写真を見て笑い転げているだけだったけれど、熱心にページをめくっていたフェルマンはハットフィールド&ザ・ノースを見つけて「これ、好きなんだよ」という。ああ、なるほど。モーリツ・フォン・オズワルドがイーノ/ハッセルなら、トーマス・フェルマンは帽子畑。ある意味、とてもわかりやすい。

 ホワイ・シープ?がついに駆け込んできた。入ってくるなりジ・オーブ『バグダッド・バッテリーズ』に収録されている「サバーバン・スモッグ」を聴きながら走ってきたと皆にアピールする。
「これは走るのにピッタリの曲ですね」
「ありがとう」とフェルマン。
「はあ、はあ、はあ......」
 最悪のスタートである。

 気を取り直そう。

「ラヴィン・ユー」の通称で親しまれたジ・オーブのデビュー・シングルがリリースされたのは1989年。「20周年、おめでとうございます」と僕がいうと、ご機嫌になるかと思いきや、アレックス・パタースンは頭痛薬を飲みはじめる。昨日、ステージから転落して足が痛い上に歯も痛むらしい。そして、しみじみと「よくここまでやってこれたと思うよ」と感慨深げに頷いている。ジ・オーブのファースト・アルバム『アドヴェンチャーズ・ビヨンド・ザ・ウルトラワールド』を聴いて「僕の人生は変わりました」とホワイ・シープ?がいうと「僕の人生もだよ」とパタースンが切り返す。「こんなことがポップ・ミュージックでできるとは思わなかった」とホワイ・シープ?が続け、しばらくは思い出話。「レーベルに2万ポンドやるから2週間でつくれといわれたんだ」とか、パタースンがその頃、働いていた〈EGレコーズ〉が関心を示さなかったから自分たちで〈ワウ!ミスター・モドー〉を立ち上げたというような話。詳しくは『アンビエント・ミュージック 1969―2009』を立ち読みでもして下さい。

 そして、一気に20年後の世界。

「『オーブセッション』は過去の発掘音源をリリースするためのシリーズだと思っていた」と僕がいうと、フェルマンが得意げに「ルールは破られるためにあるんだよ」という。『バグダッド・バッテリーズ』は新録にもかかわらず「オーブセション」の3作目としてリリースされている。「じゃー、次にどんなルールを破るんですか?」と訊ねると、フェルマンは「次はオペラに取り組むんだ」という。その時は冗談だと思っていたが、実はこれは本当のことで、すでに作業にも取り掛かっているらしい。「昨日の夜もテレビでオペラを観ていたんだ」

「『バグダッド・バッテリーズ』はいつになくシリアスですよね?」と僕が続けると、パタースンはやや困ったような面持ちで「『プラスティック・プラネット』という環境映画のためにつくった曲はそうだね。映画の性格に由来しているところはあると思う」といって、『オーブセッション ヴォリューム2』を指差し、「これはジャケットが紙」、『バグダッド・バッテリーズ』は「これはプラスティック」とだけいった。『プラスティック・プラネット』は人類がプラスティックをつくりはじめてから人間の精子が減りはじめているということを報告するドキュメンタリー映画で、このまま行くと人類は......という内容のものらしい。「必ずしも映画を観る必要はないよ。映画には使われているけれど、サウンドトラックというわけではないから」

 オープニングとエンディングはベイシック・デャンネル風。みんなでジャム・セッションをやっている最中にキリング・ジョークのポール・レイヴンが亡くなったという報せが入り、そのまま彼の追悼曲になったものもある。「レイヴンズ・リプライズ」である。

「バグダッド・バッテリーズ」というのは3000年前につくられていた電池のことで、でも、「この時期にバグダッドという地名を使うということは、やはり戦争のことが頭にはあったんでしょう?」と訊くと、パタースンは「ジ・オーブはユーモアを大切にするグループだからね。そうだとは言いたくないけれど、そんな昔から文明を持っていた地だということを知ってもらうことで何かしら考えてくれたらとは思うよね」と、積極的には話したがらない様子。「20年前にも『ピース・イン・ザ・ミドル・イースト』というシングルを変名でリリースしていましたよね?」と深追いすると、「ああいうことは変名でやるんだ。あの時は湾岸戦争だった」と、これも口数は多くない。そう、メッセージの投げ方は婉曲的だけど、「バグダッド・バッテリーズ」や「ウッドラーキング」はとてもファンタスティックな曲で、それゆえにとても考えさせられる。ちなみに最近の遺跡調査の結果、チグリス・ユーフラテス文明はかなり高度な民主主義のシステムを有していたこともわかっている。

 後半はホワイ・シープ?との対談で僕はほとんど口を挟まなかった。そちらの方は動画でご覧下さい。ヴォイス・サンプルにこだわるホワイ・シープ?は真面目な顔で「ユーモア、ユーモア」と繰り返し、ジ・オーブはユーモラスな語り口で真面目な話をしてくれたという感じだろうか。そして、アレックス・パタースンは収録が終わってからどんどんユーモラスなキャラクターに変身し、1時間後には手のつけられない怪物と化していた! どこが歯が痛いって! ごぼう! ごぼう! ...って、そう叫んだかと思うといきなり観はじめたユーチューブがもはやなんだかさっぱりわからないし!

intervew with 2562 - ele-king

正直言うけど、ミニマル・テクノにはいっさい肩入れしたことはないんだ。それよりも僕はソウルフルなデトロイト、あるいは生でディープなハウスを好む。

 去る11月17日、代田橋の〈FEVER〉に七尾旅人のライヴを聴きに行ったとき、偶然にも中原昌也と会って、その雑談の途中、なぜか話が2562のセカンド・アルバムに......。そうです、いまではすっかりオランダのダブステッパーとして認知されてしまったデイヴ・ハイスマンスによるダブステップ・プロジェクト、2562のセカンド・アルバム『アンバランス(Unbalance)』が本当に面白い。

 1年前の、2562名義によるファースト・アルバム『エイリエル(Aerial)』は、欧米でも日本でも「ダブステップとミニマル・テクノとの出会い」と評価されたものだけど、どうやらこのオランダ人はそれが気にくわなかったらしい。以下、簡単ではあるけれど、来日前に彼にメール・インタヴューを試みて、いろいろわかった。あー、そうか、それで今回の新作『アンバランス』は、解釈の仕方によっては、音に酔うことを拒んでいるようにさえ聴こえるのだ。

 それはファーストとは全然違うし、同じオランダ人で、同じようにハウス/テクノからの影響をダブステップに混ぜるマーティンの、今年出たファースト・アルバムとも全然違う。マーティンの耳障りの良いダブステップ・ハウスと比較して、2562のほうはまさにバランスを失っているようだ。が、それは際どいところでデトロイティシュなファンクとして成立している。ダンス・ミュージックとして踊れるけれど、関節を逆に曲げてしまいそうである。

 とにかく、シングルとして先行リリースされた「Love In Outer Space」が象徴している。人はこのトラックを聴いて、まさかこれがダブステップだとは思わないだろう。強いてジャンル分けするなら、テクノが妥当だ。僕ならモデル500あたりのエレクトロの近くに並べる。とはいえ、それでもこのグルーヴ――ややつんのめるような、もたついたビート感覚は確実にダブステップ以降のものではある。そしてそれはクラウトロックのように真っ直ぐ進んでいく感覚ではなく、やたら曲がりくねったりしうながら進んでいるのか戻っているのかよくわからない感覚......、関節を逆に曲げて踊ってしまいそうな......。
 手短に言えばエレクトロ・スペース・ファンク、ただしものすごくユニークなそれ......である。

こんにちわ、このメール取材を受け入れてくれたありがとう。最近はDJで忙しい?

秋はホントに忙しかったよ。数週間前にオーストラリア・ツアーから戻ってきたばかりなんだ。その前は、イギリスでもずいぶんとプレイしたな。こんど日本でやるギグが今年最後になる予定だ(注:取材は来日前にしている)。12月は家でリラックスしながら、新しい作品を作りたいと思っている。

僕は一度だけデンハーグに行ったことがあるよ。クリーンな町だったという印象を持っているんだけど。

ホント? きっと天気が良かったんだね(注:実際に良かった)。僕はあの町が好きだけど、同時に、ちょっと退屈で灰色な感じにも思うんだ。でもそれが良いことでもある。あまり面白味のない町だから、自分のことに集中できるんだよ。

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そもそもあなたはどうやって音楽のシーンに入ったの?

基本的に、ダンス・ミュージックが好きなんだ。ひとつの種類の音楽だけを聴いてきたわけじゃないけどね、ダンス・ミュージックは10代の頃からずっと好きだった。90年代初頭にハウスにハマって......だけどプロダクションを覚えたのはずいぶん遅くて、わずか6年前さ。僕は心底音楽を作りたいって思っている、それも以前にはないような新しいものをね。で、ダブステップにもその過程で出会ったんだよ。とても興味を抱いた、2005年ぐらいだったかな、シーンのなかに多くの実験が繰り広げられていたんだ。でもね、ハウスとテクノがいまでも僕のホームだ、自分ではそう思っている。

何歳ですか?

30歳。

2562って名義は......?

ハーグで昔住んでいた僕のエリアコード。もう引っ越してしまったけど、その家の部屋でずいぶんと音楽を作った。アルバム(Unbalance)に収録した"Narita(成田)"がその家で仕上げた最後のトラックだったな。1年前に日本に来たときに作りはじめた曲なんだよ。

A Made Up Sound名義とDogdaze名義について教えて。

A Made Up Soundは僕のなかでもっとも長いプロジェクト。僕にとってまさにハウスやテクノといったエレクトロニック・オリエンティッドな音楽をやるときの名義だ。2562はベース・ミュージック。このふたつの名義の作品はたまに近づくことがある、だけど僕のなかでは明白に分けて考えている。Dogdaze名義はサンプル主体のプロジェクトだったけど、もうこの名前は使わない。2562の新しいアルバムのなかでその名残りが聴けるよ。

ブリストルの〈テクトニック〉からリリースすることになった経緯を教えてください。

〈テクトニック〉が、僕が最初に2562の音源を送ったレーベルなんだ。何故かと言えば、僕は彼らの音が大好きだから。ここ2年、2562は〈テクトニック〉から出している。レーベルをやってるピンチも最高のヤツだし、他のレーベルを探すなんて考えられないね。

2562が出てきたときダブステップとミニマル・テクノの混合だってみんな評価したよね、そのあたりのバックグラウンドについて話してください。

正直に言うけど、ミニマル・テクノにはいっさい肩入れしたことはないんだ。それよりも僕はソウルフルなデトロイト、あるいは生でディープなハウスを好む。90年代半ば以降はドラムンベースやブロークンビーツも好きだった。〈メタルヘッズ〉や〈リーンフォースド〉......というかそのシーンのすべてが。

あなたのシングル「Love In Outer Space」がホントに好きでね、この音楽からはデトロイティッシュなフィーリングを感じましたよ。モデル500、UR、カール・クレイグ......。

それは、ありがとう。実際のところ、このトラックは2年前にエレクトロ/テクノのトラックとして作りはじめたんだよ。しばらく放っておいて、こないだの夏に完成させた。デトロイト・テクノは大好きだ。90年代、僕はまだ若過ぎて、それをリアルタイムで聴いていなかった。だから、追体験したんだよ。デトロイトはテクノのルーツだ。だから、テクノに影響される――それはデトロイトに影響されるってことを意味するんじゃないのかな。

セカンド・アルバム『Unbalance』のコンセプトについて訊きたいんだけど。

アルバムは『Aerial』が出る前から作りはじめている。あのアルバムが出たとき、実はまったく嬉しくなくて、もうとにかく新しいことをやりたかっただけなんだよ。正直言って、作りはじめたときはコンセプトはなかった。わかっていたことと言えば、自分が何か違うことをやりたがっていたこと。そのひとつの例が、昔自分がやっていたサンプル主体の音作りだったりするんだ。

タイトルを『Unbalance』としたのは?

最初にそのタイトルの曲ができたんだ。アルバムの多くのトラックは僕に落ち着きのなさを与え、その言葉がアルバムのタイトルにするに相応しいと思った。自分の音楽について心理学的な説明をするのは好きじゃないけど、たとえばの話をしよう。ある日突然自分の作品が世間から注目されて、毎週末ギグ(DJ)のために飛行機に乗るような生活になってしまう。それはその人の人生にものすごいインパクを与えてしまうものなんだよ......。

マーティン(Martyn)は古い友だち?

彼の音楽は大好きだよ。

ふたりとも似ていると思うんだけど。つまり、ハウス/テクノからの影響をダブステップに混ぜているという点が。

知り合ったのはこの2年。音楽を通じて知り合ったんだよ。彼の音楽は本当によく聴いている。人が僕たちふたりを比べたがるのはわかるよ。同じオランダ人だし、同じようにハウスとテクノが好きだし、似ていると感じるのはわかるんだけど、僕自身はまったく別物だと思っているんだ。だいたい彼のほうが僕なんかよりもメロディアスだし、キャッチーなフックがあるでしょ。ハハハハ。

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あなたの音楽でもっとも大切なものは?

作った音楽による。クラブ・トラックならグルーヴとエナジーをもっとも大切にする。アルバムにおいては物語性を重視するよ。音楽が語り出して、聴き手を最後まで惹きつけていく、それが僕の目指すところだ。おそらく緊張感はそのために必要なんだ。ただし、リスナーに感情を押しつけるようなことはしたくない。むしろ自由に解釈できる余白を残しておきたい。

おそらく人は、いまでもダブステップを内向的でダークな音楽だと思っています。しかし、現実的にはダブステップは加速的に多様化しています。ダブステップの将来に関するあなたの意見を聞かせてください。

僕は最近は、ダブステップに関してはそれほど注意を払っていないんだ。だから将来については何とも言えないな。ただ、最近はとても多くの興味深いベース・ミュージックが出ているように思う。それらはどんなカテゴリーにも当てはまらない類のものだ。それは実に健康的なことだよ。そしてそこには多くの実験が繰り広げられている。本当に早く、再び、ことが動いているんだ。

 2562のセカンド・アルバム『アンバランス』を聴いていると、いちど売れてしまったことでなおさら彼のなかの欲望が増幅したことを感じる。今年彼がA Made Up Sound名義で出したシングルも良さそうなんだよな~。本当は、僕はシングル「Love In Outer Space」のB面が好きなのだ。アルバム未収録のその曲"Third Wave"は、はっきり言ってデトロイト・テクノそのもの、実に格好良く決まっている。

 仕事の場面で誰かを誰かに紹介することは多い。このところ、そのような場面でいきなり自分のことを克明に「説明」する人が増え、いささか面食らっている。え、なんで、それ、いま、必要? ......と思った時にはもう遅い。それは売込みとも違うし、本人に自覚があるのかすら怪しい。とにかく僕からしてみれば突拍子もなく、リアクションがまったく思いつかない。困ったとしかいいようがない。

 菊地成孔がフロイトを持ち出した辺りからそれははじまっていたのかもしれない。僕の記憶ではECDがまずはそれを新たなステージに上げ、海猫沢めろんや香山リカがその後に続き、『モーニング・ツー』ではじまった新連載を読むと、西島大介も同じことをはじめようとしているように見える(雨宮処凛や吉田アミもそうなのかな?)。そう、00年代に人気が出た人たちは、なぜかこぞって「自分語り」に手を染めている。西島の連載を指して僕がそういうと、NUの戸塚くんは「そういえば佐々木敦の新書も自伝に読めなくもない」といい、それを聞いていたタキシムが「実際に、次は自伝を書いているようですよ」と会話に割り込んできた。本当かどうかは知らない。すでに自伝として読めなくもない本が書かれているというのだから、それで充分だろう。僕たちはその時、クアトロにいた。31年ぶりに聴いたフューの演奏が終わり、初めて聴く前野健太のステージがはじまる直前ではなかったかと思う。自分探しの90年代から自分語りの00年代へ。『SPA!』の中吊り広告じゃないんだから。

「自分はない」というのが80年代の流行りだった。蓮見重彦の文章からは主体を指し示す指示代名詞が消えてなくなり、思想界というところでは「私は」とか「僕は」と書く人は跡形もいなくなった。例外は粉川哲夫と栗本慎一郎だけで、僕はこの2人にフィリップ・K・ディックについて書いてもらうことにした(『あぶくの城』)。フィリップ・K・ディックの小説もまた主体がはっきりしていないものが多い。『ヴァリス』が4重人格の話ではないかと思うようになったのは、だいぶ後のことだった。

 自分について語る人は、だから、あまりいなくなってしまった。それまでは全共闘の昔話が主流だった。その代わりにモノについて語る人が増え、10年も経たないうちに「おたく」というタームが広まった。それもまた異常なことだと認識されることになっても、自分の話をする人が戻ってきたわけではない。合コンで自分のことばかり話す人が嫌われるのと同じようなものだろう。ジャック・ラカンやマリリン・モンローの「自分語り」なら聞きたかった人たちもそれなりにいただろうけれど、どう考えても一般にその流れが戻ってくるとは思えない。自分の話をひとつの例として、ある種の普遍性に還元するんだという意気込みがある場合もあるだろう。マイケル・ジャクスンや『ベンジャミン・バトン』のようにあまりにも特殊な話なので、単なる自分語りとは違うんだと主張する向きもあるだろう。それぞれの動機というものはわからないし、そこまで踏み込む気はない。しかし、それは同時多発的に増え、いまや、僕の会議の席にも押し寄せてきている。少しばかり辟易とさせてもらうことは許してもらえるだろうか。

 ECDも海猫沢めろんも香山リカも西島大介も佐々木敦もすべてに目を通して共通していえることがあれば、この文章も締まったものになるはずだったけれど、しまった......どれも読んでいなかった。とくに友だちのことはあまり詳しく知りたくないということもある。クラブで知り合った人たちとは、いつも、そのように付き合ってきたし、その方がいざとなったら助け合うことは容易だから(ほかではどうなのか知らないけど、クラブで知り合った友人たちはよくわかっていないからむしろ助け合っているとしか思えないことが多い。よく知っていたらとても助ける気にはならないとでもいうように)。そういえば、クアトロのライヴで前野健太がMCで話していた『ライヴ・テープ』を観て、彼が吉祥寺の街を歌いながら歩き続けるシーンはとてもよかったのに(それだけの映画なんだけど)、エンディング近くになって監督が前野健太に歌をはじめた動機を尋ねることですべてが台無しになってしまったような気がした。

彼が歌いながら歩いているシーンはさながら「ひとりサウンドデモ」で、誰ひとり彼のことを振り返らないことや、誰も彼の歌を聴こうとしないために、外に出て大声で歌っているのに引きこもりのように見えてしまうということが世の中との距離感をはっきりと印象付け、それこそテロリストにさえ見えかねなかったのに、彼の個人史がそこで顕わにされることで、その辺にいた人たちとあまり変わらないものに思えてきたのだ。街のなかにあって宙に浮いていた彼の歌を世の中に接着させるもの。それが彼の(強制された)「自分語り」だとしたら、いま、自ら進んで自分語りを行うということは、この世界で無条件に浮いていることに辛さを覚えるようになった人気者たちがどこかに接着されたくて......ま、やめときましょう。どれも読んでもいないし、多分、間違っているし。

Yo La Tengo - ele-king

 ele-kingにヨ・ラ・テンゴ。どうなんだという声がしそうだけど、まあ聴いてみてくれ。とくに10曲目から12曲目(オリジナル・アルバムのラスト3曲。日本盤にはそのあとにキャロル・キングのカヴァーを1曲収録)。

 ヨ・ラ・テンゴは1984年にアメリカはニュージャージーのホーボーケンで、現在は夫婦となったアイラ・カプラン(ギター、ヴォーカル)とジョージア・ハブレイ(ドラムス、ヴォーカル)によって結成されたバンド。途中でジェイムズ・マクニュー(ベース、ヴォーカル)が参加して現在に至る。不思議なバンド名はスペイン語で、英語だと「I got it」。

 1986年に『Ride The Tiger』でデビュー以来、本作で12作目となるオリジナル・アルバムは、まずはそのストレートなアルバム・タイトルが印象的だが――。

 ホーボーケンといえばdB'sを嚆矢とするパワーポップ・バンドの聖地として知られているが、ヨ・ラ・テンゴもその系統から大きく外れることはない。事実そういう曲がメインとなっている。が、しかしそれよりもむしろ当初からギター・ロック的な曲のフォーミュラを意識的に崩していこうとする意思を感じさせていたことのほうが僕には気になっていた。1993年に米インディの名門マタドールに移籍して発表した6枚目『Painful』からはその感覚はより露になり、ギターを中心としながらも、エレクトロを加味したことによる幻視的なサウンドを聴かせるようになる。そして1997年の『I Can Hear the Heart Beating as One』からはとくにその傾向が強くなり、以降のアルバムには必ず10分以上におよぶ幻想的な実験的トラックを収録してきた。前作である『I Am Not Afraid of You and I Will Beat Your Ass』(2006)では、長尺の「Pass The Hatchet...」は、なんとアルバムの冒頭に置かれているのだから恐れ入る。

 しかし、である。この新作『ポピュラー・ソングス』における後半3曲のトビぐあいは、これまでの彼らの試みと比べても、想像を絶するほどの展開を遂げている。この3年間に彼らに何があったのか?と訝ってしまうほど、この3曲(トータルで40分近い!!)の存在は奇跡としかいいようがない。この壮大なトリップ・アンビエント・シンフォニーは、彼らの集大成であると同時に、いきなりハイジャンプを決めてしまったようにも思える。エレクトロニクスかギターかという論議すらここでは無用だし、なによりここで鳴っているサウンドは、聴き手のココロに揺さぶりをかける。それは常に微笑みと等価だ。なんて幸福な音楽なんだろう。この素敵な音楽には、意外にもこんな普遍的なタイトルがふさわしいのかもね。もちろんこの3曲以外もいいです。ストリングスが入った曲とか特に。でもやっぱり最後の3曲が素晴らしすぎて......。

CHART by Electro-Violence Distribution 2009.12 - ele-king

Shop Chart


1

SYTRI-X

SYTRI-X METALIKEA SYTRI-X / フランス / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
FREE STYLE LISTENサブのKICK FOR KILLリリースで話題のニューカマー、遂に自身のレーベル、その名もSYTRI-Xをドロップ。トライブの超絶リミックス・スキル、ハードコアでいてファニーなマッシュアップ・サイドをお楽しみください。第一弾とあって気合が入りすぎたのか、メタリKにGバスター、ジョニーBとありえないヤバさで聴かせます。

2

RETRIGGER & SKEETA

RETRIGGER & SKEETA CYNICISM NOIZETEK / イギリス / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
チェコのNOIZE PUNISHMENT、ポーランドのSLEPCYとともにブレイクコア全盛期に極悪の名を欲しいままにしたブラジリアンRETRIGGER。ここ数年は大人になったのか、はたまた、狡猾になっただけなのか、なんとも意外な展開を見せている。ブレイクコア版セニュール・ココナッツとも言える珍妙さ。あちらはラテンだけど、こちらはやたらサーフでモンドです。

3

SPIRAL TRIBE

SPIRAL TRIBE THIS IS TRANCE NETWORK REPRESS / フランス / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
NETWORK23レーベルの名作や周辺アーチストの激レア未発表曲までをも発掘、紹介するNETWORK REPRESSも早くも23作目。記念すべき今回は'94年FORCE INC.からリリースの4曲入りアルバムTHIS IS TRANCEよりのカット。中古市場で状態のよいものなら100ユーロは下らない、お宝アイテムが最高の音質で聴けます。

4

TLB / SPARKS / BILL X / VIKO & LABO14

TLB / SPARKS / BILL X / VIKO & LABO14 ARCHITEK 17 フランス / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
フリースタイルリッスンのショーケース的サブレーベル、ARCHITEK最新作!トップのTLBから、ラストLABO14まで、ラガものからシンセでハメまくりのハードコアトランス、キック命のハードダンスまで、一気に聴かせます、使えます!今からTRIBE聴かれる方は、この辺からいかが?

5

KEJA / OZYSTIK / KAN10 / YUKAI

KEJA / OZYSTIK / KAN10 / YUKAI 3672 1 06 3672 1 / FRANCE / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
エレクトロ(ハウス)とは対極に位置する仏アングラTRIBE/HARDTEKのシーンにあっても異色な存在のMACKITEK。時にブレイクコアやスピードコアさえも凌駕するテクノパンクスとも呼ばれるその過激さ、カオス。そんな彼らがSPIRAL TRIBE他先達に敬意を表し、ダンスミュージックとしてのTEKNOを突きつめるべく立ち上げたサブレーベル最新作。

6

LA FOUDRE

LA FOUDRE LE CHAOS ORDINAIRE NO-TEK / FRANCE / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
10数年前ここ日本でも一部の好きものから絶賛されていた元祖EXPERIMENTALハードコアテクノ・レーベルEXPLORE TOIの残党がしれーっと復活です。SPEEDCOREをよくわからない方もいるかもしれませんがガバ臭い方ではなくノイズアヴァンギャルドでハナタラシまくりのアレです。極悪ハードコアギャルMOUSEの大名曲のリミックスも収録。限定300枚。

7

BIOCHIP C.

BIOCHIP C. ANTIMATTER EP OFF BITS / FRANCE / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
アシッドと言えばフランスです。ご存じない方も多いかもですが、DJ ESPの名曲、未発曲のみを発掘リリースするレーベルがあったりと、かなりマニアック。今回紹介するのはハードコアPSYCHIK GENOCIDEを擁するAUDIO GENICによるACID専門レーベル、OFF BITS最新作。ハードコア(テクノ)大御所THE SPEED FREAKことバイオチップCがフレンチコアのグルーヴ感や攻撃性を損なうことなく、暴れまくってます。

8

HIGH TONE

HIGH TONE ACID DUB NUCLEK JARRING EFFECTS / FRANCE / 10月29日 »COMMENT GET MUSIC
インドに和ものに、燃えよドラゴンって無国籍にもほどがあるメロディー、サンプリングセンスにテクノ、ジャングル、IDM的要素を突っ込みさらにACIDって・・・。マジDUBバンドHIGH TONEによる地位も名誉もかなぐり捨てた2002年リリースの名作、迷作?リプレスです。

9

THE ARCHANGEL & KGB KID

THE ARCHANGEL & KGB KID WATERWINGS EP CELESTIAL COSPIRACY / CANADA / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
スクエアプッシャー、リチャード・ジェイムス、マイクパラディナスらのIDMカットアップスキルとUKジャングル(オールドスクール)のハイブリッド音でその後快進撃を続けることとなるUS/CANADAラガ・ジャングル。'93年リリースの大名作デッドストック少量入荷です。

10

AARON SPECTRE

AARON SPECTRE AMEN,PUNK EP OMEKO / JAPAN / 12月10日 »COMMENT GET MUSIC
2005年リリース。全世界のブレイクコアチャート一位を獲得した傑作中の傑作。仏PEACEOFFレーベルオーナーのフランク(ROTATOR)も来店時にどっさり買い付けていきました。今やオークションでも目にすることすら稀な一枚です。デッドストック数枚のみ。
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