「UR」と一致するもの

intervew with FURUKAWA MIKI - ele-king

青森からやって来て、周囲からも浮いていて、疎外感や孤独感があったんです。交わりたくても交われなかったんです。その感覚がずーっとあるんです。

フルカワミキ / Very
フルカワミキ / Very

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 この取材の興味の矛先はこうだ。電気グルーヴやボアダムス、あるいはロヴォ等々に続くようにして、90年代のレイヴ・カルチャーにインスパイアされたスーパーカーというポップ・ロック・バンドのメンバーだった人物の"現在"について。そんな観点で彼女の3枚目のアルバム『Very』を聴いていると、大雑把に言って、彼女がまだあの場所にいるように思える。ドリーミーでサイケデリックな彼方の、いまだ"ストロボライツ"が発光するあの場所に――。

久しぶりですね。

はい。

最後に会ったのが『ハイヴィジョン』の取材のときじゃないのかな?

へー、そんなになりますか~。

たぶん。

そうですよね。

それで......久しぶりなので、最初に大きな質問させてもらいますけど、このアルバムにとっての成功とはなんでしょう?

んー......、聴いてもらえること、無視されないこと......ですね。

いままでだって無視されてないじゃない(笑)?

いや、でも、ソロになってからは......。フルカワミキがこういうことをやる人なんだっていうことをわかってもらいたいというか。

スーパーカー解散後、ソロになって自分のアイデンティティに関してどう考えました?

考え込むほどじゃなかった。自分の持っている環境や人間関係があったし、それを最大限に活かせればいいと思っていたし。ただ、ポップであることは考えてますけどね。

ポップというのもいま相対化されているフシがありますけどね。インディで30万枚売る人もいれば、メジャーで3千枚も売れない人もいるし。

そうなってますよね。ただ、知らない人に届けたいというのはあるかな。

ポップという言葉をどう定義する?

街を歩いていて耳に入ってくる音楽......。

渋谷を歩いていると、聴きたくいもない音楽がばかでかい音で流れたりして、あれ、うざいって思わない?

思います。ただ、あのなかに自分の好きなモノを混ぜたいとも思うんです。

どのくらいの枚数は売れたいっていうのはある?

んー。

とりあえず10万は超えたいとか(笑)。

いやー(笑)。ここ数年、CDの売り上げが下がっているじゃないですか......、枚数はね......、正直わからない。

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過去の2枚の経験が、今回のアルバムにどのように反映されているんですか?

打ち込みと生音を混ぜて、もっと賑やかにしたかったというか、手法にこだわらないほうが自分には合っているのかなと。

自分の音楽にジャンル名を付けるとしたら何?

ジャンル(笑)! 

Jポップと呼ばれることに違和感はない?

Jポップと呼ばれるとネガティヴなイメージがあるんだけど、もう、そのあたりもどうでもいいのかなって(笑)。

では、レディオヘッドとエグザイルとでは、自分がエグザイルの側でも構わない?

好きなのはレディオヘッド(笑)。だけど、JポップにはJポップの面白さはあると思うし。まあ、例えば戦略とか。

戦略?

プロモーションの仕方とか。

そこは僕が疎いところで、僕にJポップの面白さについて教えてくださいよ。

それは私もね~! まあ、ネットを見たりして知っている程度で、私もあんまりうまくやれているほうでないので。ただJポップって、すでに日本の文化として成立しているんじゃないですか。

要するに「歌謡曲の良さも認めなければならない」と。

まあ(笑)。嫌いな曲もいっぱいあるんですけど、でもまあ、それを受け入れなきゃならないというか。

なるほど~。質問を変えますね。詞と言うよりも音の人ですよね。

そうですね。曲は完全に音から作っている。歌詞はいちばん最後。

新作『Very』を聴いて"ストロボライツ"や『ハイヴィジョン』時代のスーパーカーを思い出したんですけど、意識した?

とくに意識してはいないけど、たぶんあのやり方が身になっているんです。ちゃんと受け継いでいるというか、それが当たり前になっている。ふだん聴いている好きな音楽も空間がある音楽で......、音と言葉のあいだにちゃんと隙間があるというか。

1曲目から3曲目まで、"ストロボライツ"だなーと思うんだよね。

そうですね。

いや、5~6曲あたりもそうだね。"Make Up"から"New Days "、"Come Now "とか。エレクトロニック・ダンス・ミュージックをふくらませたサウンドというか......。

打ち込みという意味では、そうかもしれないですね。

ざっくり言えば、トランシーなテクノって感じでしょ。それってまさに"ストロボライツ"の発展型だと思うし。

たしかに"ストロボライツ"は私を思い出すときの代表的な曲なんだと思います。声の感じとか、イメージとか。それはよく人から言われる。

あー、やっぱ多くの人がフルカワミキといえば"ストロボライツ"である、と言うんだ?

はい。私のリード・ヴォーカルの曲ではあれがもっとも有名な曲なんでしょうね。それはよくわかるんです。それに、打ち込みで私が歌うと、やっぱああなってしまうんでしょうね。キーだったり、歌い方だったり。

ああいう、レイヴ・カルチャーにインスパイアされた曲にいまでも愛着があるということなんですよね?

そうですね。

すごくよく憶えているんだよね。"ストロボライツ"の頃に取材して、ナカコーがレイヴ・カルチャーにものすごく真っ直ぐに入り込んでいて、それがヒシヒシと伝わってくるようなね(笑)。訊いているほうが恐くなるような鬼気迫るインタヴューで(笑)。

ハハハハ。

ただ、スーパーカーがレイヴ・カルチャーにハマっていた頃って、僕はもうあの文化にわりと飽きていた時期でもあったんだよね。

あ、でもね、スーパーカーがもっともレイヴ・カルチャーにハマっていたのは『フューチュラマ』のときで、『ハイヴィジョン』のときはもう飽きていたんですよ。じょじょに行かなくなってきた頃に"ストロボライツ"で、その後に『ハイヴィジョン』なんです。『ハイヴィジョン』はレイヴ・カルチャーというよりも『キッドA』とかプライマル・スクリームとか......。

『キッドA』の作風はずいぶん陰鬱じゃない。

影響受けたのは手法的なところですよね。ロック・バンドがコンピュータを取り入れる手法を用いたというところ。それを自分たちでやったのが『ハイヴィジョン』ですね。

それでいったら『Very』もその延長にありますよね?

私は作曲するとき鍵盤で作るので、あるいは「あ、この音を使いたいな」というところから入っていくので、だから打ち込みのやり方のほうがやりやすいとも言えるんです。

"ストロボライツ"が良い曲か悪い曲か、好きか嫌いか、そういったことは抜きにして、あの曲がものすごーく切実に作られているなと当時僕は思ったんです。「この人たちは本気そういう風に考えているんだ」って。

デビューの頃に青森からやって来て、とても「イエー!」っていう感じじゃなかった。なんか周囲からも浮いていて、すごく疎外感や孤独感があったんです。交わりたくても交われなかったんです。その感覚がずーっとあるんです。寂しがり屋なんですね(笑)。だから音楽でなんとか前向きなものを出すんですけど、家に帰るとまた元に戻っているというか。だからなのか、4つうちの曲で踊って「わーっ」となるのがすごく楽しかったし、踊るのも大好きだし。それを表現したかったというのもあったんですよね。

いまでも踊りに行く?

はい。回数は減ったけど。いまでもクラブに行きますよ。

ファースト・アルバムの頃はムードマンにリミックス頼んでいたもんね。

"コーヒー&シンギン・ガール!!!"ですね。

そうそう、あれはフルカワミキのクラブ・ミュージックへの愛情がとてもよく出ていた曲だったよね。

そうですね。でも、さすがにもう山には行かないですけどね。

山(笑)。ハハハハ、それはもう10年以上前の話でしょ。

はい、18、19、20のあたり。

フルカワミキをサポートしている人っていうのは、ナカコーはもちろんのこと、他には誰がいるの?

ドラマーの沼沢(尚)さんとベースの那須野(満)さん。那須野(満 )さんは灰野(敬二)さんのバックで弾いている人。

すごいメンバーだね!

那須野(満 )さんは1枚目からずっとやってくれています。イタリアン・プログレの話とかされるんですよ(笑)。

ハハハハ。いいな~。レーベル・メイトである電気グルーヴについては?

電気グルーヴの作品をがっつり聴いたってことがないんです。卓球さんのソロであったり、まりんさんのソロであったり......『ラヴビート』がすごく好きだったから。

まりんさんはスーパーカー時代から一緒にやってるものね。でも彼はもう何十年も出してないじゃないですか......いや、何十年ってことはないか(笑)。

こないだ久しぶりにライヴやって、音がすごかったですよ。映像もあって、視覚と聴覚と両方すごかった。

卓球さんのやっていることは?

踊らすなーと(笑)。

ダンス・ミュージックでは好きな人って誰になるの?

ふだんDJやっているときによくかけるのが、マシン・ドント・ケア。

何それ?

知りません? けっこう有名ですよ。DJでかけるとやたら盛りあがりますよ。

へー、DJもやっているんだね。

はい。

ほかにどのあたりをかけるの?

ザ・フィールドとか。

ああ、ザ・フィールドね、それは僕も何枚か持ってる。言われてみれば『Very』の音に近いよね。

それとクラーク、あとはボーイズ・ノイズとか。

幅が広いね~。

「この人悪そうだなー」っていう音が入ってくるのが好きだったんです(笑)。

なるほど(笑)。どういうクラブでまわしているの?

バッファロー・ドーターのイヴェントでまわしたのが最初だったんです。

そういえば、昨年、曽我部恵一のイヴェントにも出ていたよね。

それがぜんぜん受けなくて(笑)。

ハハハハ。

「この人、ホントにDJやるの?」みたいな、珍獣を見るような感じで見られて(笑)。ああいうところでテクノやエレクトロはダメですね。

それはそうだよ(笑)。

クラブでは青山の〈ルバノン〉、渋谷の〈エイジア〉とか、京都の〈ワールド〉とか......。

本格的にやってんだね。

練習しなきゃ(笑)。

いちばん受けたのは?

京都。観察される感じじゃなかったし。あとは〈エイジア〉も良かったな。お立ち台に女の人が上がってきて(笑)。

へー、盛りあがったんだね。DJって前からやりたかったの?

けっこう誘われることが多かったんです。で、2枚目のあとに音楽活動の中断期間があって、音楽の現場と疎遠になるのもイヤだったので、だったらDJをやろうと。音楽をかけることで自分も音楽を体感できるんで。

"ストロボライツ"の頃とは違った意味でダンス・カルチャーと関係しているんだね。

そうですね。

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そうか......、それでも僕がもし今回のアルバムのプロデューサーだったら、1曲目は"Bridge To Heaven"にしたな。

ハハハハ!

いちばんメランコリックな良い曲だよね。で、2曲目は"Amore"。

ハハハハ、それは野田さんの好みでしょ。

でも言いたいことわかるでしょ。ぜんぜん違って聴こえると思わない?

まあ、そうかも。

"Amore"は、ソニック・ユースかと思ったけどね(笑)。

そうですか~?

ソニック・ユースみたいで格好いいじゃん。そういう曲は後半に出てくる。で、しかし、1曲目の"I'm On Earth"から"サイハテ"までは"ストロボライツ"路線なんだよね。

"サイハテ"を作った(小林)オニキス君が"ストロボライツ"を聴いていてくれて......。ボーカロイド使って『ニコニコ動画』ですごく面白いことをやっている人がいて、それでコンタクトを取ったときに、そういう話になって。

どういう方なんですか?

一般の方です。

家で打ち込みをしている方なんですか?

はい。イラストレーターやグラフィックをやっていたらしいんですけど。で、ボーカロイドではなくて自分で"サイハテ"を歌ってみて......。

......なるほど。

ボーカロイドを通じて私を知った人もいるだろうし、ボーカロイドも『ニコニコ動画』も私はひとつの文化だと思っているし、だから"サイハテ"のリミックスをテイ(トウワ)さんに頼んだのも、ボーカロイドしか知らない人でもテイさんだったらどこか引っかかりがあるだろうと。

なるほど。

もともとは一般の人が作った曲なんです。それを私がオケを作り直して、さらにテイさんに手を加えてもらったということです(笑)。

ネットで誰かが作った曲をカヴァーしたってことなんですね。なるほど。ところで、アルバム全体について言うと、ものすごく前向きな印象を持ったんですよ。ふだん僕が聴いている音楽がゼロだとしたら1000ぐらい前向きですよ。

ハハハハ!

「何でこの人はこの人はこんなに前向きなんだろう?」って。僕にはありえないから、それは(笑)。

前向きというよりは賑やかな感じにしたかったんです。皮肉や暗いことは敢えて減らした。

これほど社会と関わりを持たない音楽も珍しいなと思ったんです。

ハハハハ! そうですね!

それは決めてる?

2枚目はけっこう皮肉が入ってるんだけど......。

だって......、2曲目が"金魚"だよ(笑)。

それはもう、歌舞伎町のお姉たちに踊ってもらいたくて(笑)。

そういうことだったのか!

ハハハハ。まあ、暗いことはいま敢えて言わない、それは意識した。

いやもうね、"New Days "とか、「なんでここまで前向きになれんだろう?」って(笑)。羨ましいよ、ホントに。

ハハハハ。まあ、移籍第一弾だし(笑)!

そこは意識する?

する。

僕は最後の"Harmony"ぐらいのダウナーな感じがちょうどいいな。アルバムの前半がアッパーなんだよね。後半はいろんなことやっているし、また違った展開がある。ちなみに『Very』ってタイトルは?

「際だたせる」っていう意味で。「とても」って、良いときも悪いときも、「とても」って言葉があるといいじゃないですか、そう、ただの「thank you」よりも「thank you very much」のほうがいいし、その「very」、つまり「とても」ということを意識しました。

実際のフルカワミキ自身のキャラはどうなんですか?

完全にネクラです(笑)。だからそれを出しても仕方がない(笑)。

写実的というか、リアリティのある表現っていうのはあんま好きじゃないでしょ? ヒップホップとかさ、曽我部恵一とかさ。

いや、好きですよ。ただ、その人がどういう生活をしいているのかってところまで歌で聴きたいとは思わない。やっぱ気になるのは音なんですよ。音から内容に入って来る。

やっぱザ・フィールドみたいなファンタジーのほうがしっくりくる。

はい。

それは『Very』を聴いているとよくわかるよ。ちなみにスーパーカー時代でいちばん好きなアルバムは何ですか?

『ハイヴィジョン』。もう1枚選ぶなら『アンサー』かな。

いちばん売れたのは?

『ハイヴィジョン』......、それか『スリーアウトチェンジ』。

『ジャンプ・アップ』は?

あれはダメだった(笑)。

僕はあれが好きだったけどなー(笑)。

あれはね、自分たちの精神状態も良くなかったんですよ。

『アンサー』が好きな理由は?

もう抜けてるっていうか(笑)。

じゃあ、後期のほうが好きなんだね。

やっぱ初期は恥ずかしい......聴けるんですけど、やっぱ若かったし。

『スリーアウトチェンジ』の頃は何歳だっけ?

18です。

高校生だもんね。

レコーディング中は17歳だったし。

ちなみにフルカワミキのルーツって何ですか?

やることがなかったからバンドやったようなもので......、気の利いたCD屋さんもなかったし、すごく退屈していたし、いまみたいにコミュニケーション・ツールもそんななかったし。楽器屋さんの張り紙で人と知り合うしかなかったんですよ。それでバンドをはじめたようなもので。

ルーツと呼べるほどの音楽体験がなかったんだね。

バンドはじめてから、いろんなものをいっぺんに聴いたから。とくに最初はUSインディをいっぱい聴きましたよ。

バンドのメンバー募集は誰が貼ったの?

私。

ホントにそうなんだね。

「全パート募集」って(笑)。で、足りない楽器を私がやろうと。もう捨て身ですよ。そうしたら彼ら(後のスーパーカーのメンバー)が集まってきた。で、結局私がベースをやることになって......ベースって、太った人がやっているイメージだったんだけど。

ないない、そんなイメージないよ(笑)。

ハハハハ、力強い人がやるんだと(笑)。とにかく通販でベースを買って、練習した。

何歳だったの?

16歳。

音楽の方向性については張り紙に書かなかった?

書かなかった。ヴィジュアル系の人が来ちゃったら止めようと思ってたけど。ただ目立つように絵を描いて......、それと、「急募」と書いた(笑)。

ハハハハ! 素晴らしいね。では......最後にプロモーション・トークをどうぞ(笑)!

とくにないです(笑)! あ、でも、ザ・フィールドの感覚がわかる人にはわかってもらえるかなと思います。

Making Contakt - ele-king

 一昨年の年末近くに幕張メッセでやった、初回の〈Womb Adventure〉に寒いなか行った人なら覚えているだろうけど、あのイヴェントはとにかくオペレーションがひどかった。予想したより客が集まってしまったからか、トイレも屋台も数が足りず、小便に行くと30分は軽く並び、ただ水やビールを買うだけで1時間近く待たされた。トイレに行かないために酒を飲むのを控えたり、床に転がったペットボトル(ある時刻を過ぎると水すら紙コップに移して販売していたのだ!)を拾ってトイレの水道水を汲んで飲んだりというサヴァイヴァルは初めて経験した。

 そんな環境で心からダンスを楽しめるというのは相当の強者だと思うが、このDVDを見ると、クライマックスの東京公演のフィナーレでは、広いメッセの会場を埋めつくしたテクノ・ファン、M_NUSファンの全員が最高にハッピーに見えるから不思議だ。


 本DVDは、デトロイトを皮切りに、バルセロナ、ロンドン、アムステルダム、ローマ、ブエノスアイレス、そして東京を世界をツアーしたCONTAKTの旅と音楽の冒険のドキュメンタリーである。タイトルが示唆するように、映像の主眼はステージそのものより、バックステージとインタヴュー証言にあり、リッチーがCONTAKTというコンセプトで何を表現したかったのかが徐々に明らかにされる。

リッチー以下、マグダ、トロイ・ピアス、マーク・ハウル、ハートスロブ、ガイザーといったM_NUSオールスターズの面々は、各自の記名性や作品性といったものはかなぐり捨ててリンクされたコンピュータ上でバンド・メンバーさながらにパーツ的な音を奏でる。また音同様に信頼のおけるアーティストが帯同したヴィジュアル、ライティング等の視覚表現も含め、ひとつの即興的電子音楽パフォーマンスが繰り広げられる。ミックスされるのはサウンドだけでなく、各人の表情や手元を写す小型カメラの映像や、インターネット経由でのチャットの文字やVJ映像も、すべてがLEDスクリーンに飾られた広大なステージを核に実際のフロアへ、そしてネットを介してその場にいないリスナーにまで届けられる、という意欲的な試みだった。冒頭では図解入りでシステムの解説がなされ、数々のハイテクが入り組んだ大所帯のステージは、想像を遙かに超えた複雑さで設置も運営も大変そうだというのがわかる。リッチーは、「テクノとは前に進む、進化する音楽だ」という大昔からの持論をここでも展開するが、初期のリハーサルでは各人の機材をリンクさせたり、とにかく大人数でひとつの音楽を一緒に演奏するといういちばん最初のステップですでに思うように進まない。

 このDVDに興味を持つようなひとなら「DJなんてただ他人のレコードかけてるだけでしょ?」というような安直な理解はしてないだろうが、それにしてもこんなギリギリまで可能性を追いこみ、会場ごとにまったく異なる設備やスタッフに四苦八苦してDJたちのツアーがおこなわれていたとはと感嘆するだろう。例えば、いろいろな事情で急遽ブッキングされた"聖地"デトロイトでは、準備不足と会場のボロさで最悪のツアー初日になってしまう。観客の視界に訴える重要な要素であるスクリーンは天井にしか設置スペースがなく、老朽化した建物は低音が響くたびにコンクリートの破片をメンバーの機材の上にボロボロと落とす。まるで誰かがドラマを盛り上がるためにシナリオを書いたような悲惨な展開なのだ。

 トラブルの連続を書きつづっただけでかなりおもしろいのだが、あまり細々と内容を書くと興を削ぐと思うからほどほどにする。しかし、ひとつ言えるのは、本来同じタスクを延々繰り返していく巡業というものを通して、比較文化論的なアプローチで各地の模様を切り取っていて、ただ出演者たちに土地土地のツーリスト的な感想を聞くよりよほどリアルな差異があぶりだされているのが、とても興味深い。ロード・ムーヴィーのようにツアーを追いかけたロックなフィルムはこれまでもたくさんあった。スターが泥酔したり暴れたり落ち込んだりといったショットがそれらの醍醐味だとしたら、ここでのアーティストたちは学者かエンジニアのように冷静に問題点を話しあったり、あくまで理知的に最高のショーを実現しようと考える。だからこそ、これだけユニークなドキュメンタリーが仕上がったのだろうし、最終目的地の東京では少し羽目を外して夜の街を楽しむ彼ら(―といっても、プリクラやカラオケだが)が微笑ましい。

 結局のところ、東京の印象は、ヘルメットをかぶって黙々とスケジュール通りに完璧な設営をこなす裏方にスポットを当てて紹介される。どうしたって、ロボット的な印象が強いのだろう。ただ、やはり日本にこれだけ来て、酒蔵に行ったり家族で温泉巡りしたりと本気で日本のカルチャーを愛してくれているリッチーのこと、『ロスト・イン・トランスレーション』的違和感の提示だけでは終わらない。ショーの幕が上がってからのフロアにいるテクノ・フリークたちはなんだかとってもかっこよく見えるし、冒頭で書いたようにすごくハッピーなのだ。

 朝方、リッチー自身の手でカーテンが引かれ、すべてのツアーが終了する。

 「信じられないくらい大変なツアーだった。最後に至ってもまだ理解してない人もたくさんいただろうけど、理解してくれた人たちは僕らの創りだしたたくさんの瞬間はものすごくスペシャルなものだって理解してくれたはず。それを創ったのは、ミュージシャンだけじゃなくてスタッフ全員、それに全世界に散らばるクラウドのみんななんだ。それが重要だった。あたりまえだと思ってるようなことを使って、世界のどこか遠くにいる人や、すぐ隣にいる人を分け隔てなく一体化させるっていうことがさ」と語るリッチーにオーヴァーラップされる、笑顔で感謝の意を体全体で表現して帰っていくひとりの日本人クラバーの映像。これが、とっても泣ける。グッと来るんだ。

 語り主体の作品にもかかわらず、字幕はフランス、イタリア、ドイツ、スペインの欧州主要言語のみ。内容を理解するのは骨かもしれないが、おまけにサントラCDもついてくるようだし、気合い入れて見る価値はあるだろう。まぁどこかで日本版を出してくれたら最高だけどね。

Riva Starr / If Life Gives You Lemons, Make Lemonade - ele-king

 数年前から目につくようになった、MySpaceとかで注目されてヒットに結びついたみたいな新人のエピソードにはいいかげん食傷気味だ。だいたいからしてこれだけネットでいろんなチャンネルができて毎日誰もがネットにつながって何かしらの発信をしたり相当量の情報を得てるんだから、レコード会社がそこから情報を得てないわけもないし、要するにそういう売り文句自体ただちょっと新世代のアーティストっていう箔付をしたいから宣伝に使われてるにすぎないだろ、と突っ込みたくもなる。リヴァ・スターことナポリ出身のステファーノ・ミエーレも、ドアーズの"ジ・エンド"のリミックスだのを勝手に作ってネットで配布し、それがきっかけでノーマン・クック、ジェシー・ローズ、クロード・ヴァンストロークなど売れっ子DJ/レーベル・オーナーたちに注目されて一気にブレークしたと喧伝されている。まぁたしかに、テキトーにブートのリミックスをサイトに置いてそれでおいしい契約が転がり込んできたなんてシンデレラ・ストーリーがホントにあるなら、みんなそうやればいいじゃんという気もするが、彼自身別の名義(本名やMadoxなど)で10年以上の多数のリリース歴があって、まぁいきなりブレイクした新人とは言い難い。世の中そんなに甘くないって!

 ジェシー・ローズのレーベル〈Made To Play〉初のアーティスト・アルバムとしてリリースされた本作は、クラブ・ミュージックの最前線を渡り歩いてきた巧者っぽい仕掛けや音のキレもさることながら、全編に渡って途切れることなく注入され続けるあれやこれやのアイデアが素晴らしい。バルカン音楽に傾注してるというだけあって、シングル曲"I Was Drunk"(ヴォーカルにユニークなデュオ、Nozeを起用)やユーゴスラビア映画『黒猫・白猫』(エミール・クストリッツァ監督/98年)を題材にした"Black Cat, White Cat"あたりはそういったジプシー的陽気さをもった伝統音楽の断片を再構築して、えもいわれぬ雰囲気の曲に仕上げている。一発インパクトのあるネタをもってきて切り刻んでファンキーなリズムに乗せて料理するって言う手法は、もう何年も前から「次はコレ」みたいに言われつづけてるフィジット・ハウスだよということなのかもしれないけど、それで「あぁ~、アホっぽいちゃらいやつね。まだあるんだ?」みたいな受け取られ方で敬遠されるくらいなら、いまいちばん笑えて踊れるハウスとでも言ってしまってもいい。自身、MySpaceのジャンル欄には「コメディー」「ハウス」と書いてるくらいだからな。

 〈Cadenza〉あたりのフォルクローレ的流れと呼応する部分もあるのだろうか、ブルガリアの女性ヴォイスとラッパ、クラップの絡む"Bulgarian Chicks"はいかにも土着的なダンスの悦びを感じさせる曲だし、"Maria"も元ネタはどこの楽曲かわからないがRebootあたりがやった曲と言われても納得しそうだ(こちらは昨年〈Get Physical〉のサブレーベルからでたシングル"War Dance"に収録されていた)。しかし一方で、"China Gum"はブリーピーでブーミーなベースが炸裂するブレイクビーツ曲だし、呪術的ラップがキモチワルカッコイイ"Dance Me"はストレートなアシッド・ハウス、"Riva's Boogaloo"は全盛時のジェフ・ミルズ~パーパス・メーカーを思わせるピアノのループのグルーヴだけで引っぱる曲、そして"Tribute"はその名の通りMr. Fingersの名曲"Can You Feel It"を彼なりに再構築というかカヴァーした曲だ。ヒヨッコにはかもせない風格というか加齢臭というかも、微妙に漂ってくるではないか。リヴァ・スター自身が編集した"Dance Me"のヴィデオ(たぶん無許可)を見ると、ヴァニラ・アイスやMCハマーからリック・アストリー、Mr. T、そしてニュー・オーダーといったまったく節操のないチョイスのダンスの映像がカットアップされていて、間をつなぐのはとにかくぶっといジョイント。年齢もオリジンも音楽背景も「???」となりそうなセンスなのだが、たぶんこの無意味さ無法さこそが彼の本質なのだ。そのくせ、誰でもメロを口ずさめるロシアの軍歌"ポーリュシカ・ポーレ"の切ない主題をなぜかレゲエ調のトラックにのせてしみじみ聞かせる「Once Upon A Time」が、アルバムの山場にポンと置かれる。たぶん、日本のテクノ好きでこういう趣味をガッツリ否定できるひとは少ないはず。ん~すんばらすぃ~。

 ちなみに、日本盤ではジェシー・ローズとオリヴァー$のリミックス2曲が追加収録され、3月3日に発売になるそうだ。楽しみ!

CHART by JAPONICA 2010.02 - ele-king

Shop Chart


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HOLGER CZUKAY

HOLGER CZUKAY A GOOD MORNING STORY CLAREMONT 56/UK / 2月15日 »COMMENT GET MUSIC
先日リリースされた限定10インチが瞬く間にソールドアウトとなったクラウト・ロックの伝説的グループCANのオリジナル・メンバー、ホルガー・シューカイが99年にリリースした大傑作アルバムが10年の時を経て2LPで登場!当時もCDオンリーでのリリースだったため今回が初のアナログ化!未発表音源を 3曲収録、見開きジャケット仕様、ナンバリング入りの世界限定500枚プレス!

2

ANDRES

ANDRES II PART 2 MAHOGANI / US / 2010/2/9 »COMMENT GET MUSIC
先行リリースCDアルバムに続き「・」アナログ盤第二弾が遂にリリース!JAZZ、SOUL、LATINなどのブラック・ルーツ・ミュージックから抽出されたエッセンスをANDRESのフィルターを通しMOODYMANN、J DILLA同様のデトロイト漆黒グルーヴを継承した最新のHOUSE、HIPHOPへと昇華された極上ビート全10トラック収録!

3

COFFEE & CIGARETTES BAND

COFFEE & CIGARETTES BAND LOVE THING EP FACE THE MUSIC RECORD / JPN / 2010/1/29 »COMMENT GET MUSIC
キャリア集大成的な大傑作1stアルバム「LOVE THING」からの限定12inchシングルは、2009/10/10、京都クラブ METROにて開催された京都が誇る名物パーティー「OUTPUT 10th ANNIVERSARY」でのSOFTによる"LOVE THING"の一夜限りのカヴァーをそのままライブ・ヴァージョンで収録!さらにそのSOFTのメンバーでもあるKNDによるエディットも収録したスペシャルな一枚!

4

BISON

BISON WAY TO LA CLAREMONT 56/UK / 2月15日 »COMMENT GET MUSIC
好調なリリースを重ねるPAUL MURPHYことMUDD主宰のCLAREMONT 56より、CANのHOLGER CZUKAYシンガーのURSA MAJOR、そしてレーベル主宰PAUL "MUDD" MURPHYとSMITH & MUDDのBENJAMIN SMITHによる新ユニットBISONによるデビュー・シングルが限定10インチで到着!メンバーの個性をイイとこ取りしたオブスキュア・ロック・ディスコ傑作です!

5

THE SOUL JAZZ ORCHESTRA

THE SOUL JAZZ ORCHESTRA RISING SUN STRUT / UK / 2010/2/14 »COMMENT GET MUSIC
ジャイルス・ピーターソンはじめ数多くのトップDJたちも絶賛するカナダはオタワ発、現行アフロ・ファンク・バンTHE SOUL JAZZ ORCHESTRA、待望の4thアルバムが鉄板レーベル<STRUT>よりリリース!アフリカンなパーカッション、ホーンが吹き荒れるアフロ・ファンク "AGBARA"やPHAROAH SANDERSのカヴァーとなる"REJOICE PT.1&PT.2"など70'sサウンドを踏襲し洗練された最新のアフロ・ファンク・グルーヴを披露した大傑作アルバム!

6

HENRIK SCHWARZ / AME / DIXON

HENRIK SCHWARZ / AME / DIXON A CRITICAL MASS LIVE EP INNERVISIONS / GER / 2010/2/15 »COMMENT GET MUSIC
INNERVISIONSの看板アーティスト達による強力な一枚!09年に行われたツアー音源をベースにした本作は、ROY AYERSをネタにしたHENRIK SCHWARZの名曲"CHICAGO"のニュー・ヴァージョンに加え、HENRIK SCHWARZ、AME、DIXONによる共作"BERLIN-KARLSRUHE EXPRESS"を収録!シーンの最先端をいくエレクトリック・トラックに脱帽です!

7

THE WHITEFIELD BROTHERS

THE WHITEFIELD BROTHERS EARTHOLOGY NOW AGAIN / US / 2010/2/12 »COMMENT GET MUSIC
USディープ・ファンク・バンドWHITFIELD BROTHERS、待望の2ndアルバム!先行カットされたEDAN & MR. LIFのラップをフィーチャーして贈る"THE GIFT"はもちろん、おなじくラップにPERCEE PとMEDの<STONES THROW>ファミリーを迎えたファンク・ヒップホップ"REVERSE"、QUANTICをフィーチャーしラテン/アフロな味付けが施された "LULLABY FOR LAGOS"等、豪華な客演陣参加でワールド・ワイドな音の広がりを見せ付ける濃密ディープ・ファンク・アルバム!

8

GEORGIA ANNE MULDROW

GEORGIA ANNE MULDROW KINGS BALLAD UBIQUITY / US / 2010/1/30 »COMMENT GET MUSIC
GEORGIA ANNE MULDROW待望の新作フル・アルバム!!GEORGIA自身が全曲全てオリジナルで書き下ろし、夫でありまた良きパートナーでもあるDUDDLEY PERKINSも全面的にバックアップした今作は彼女の秀でたプロダクション・スキルも堪能できるヒップホップ・トラックからエレクトリックなロービート・トラックまでバリエーション豊かに展開され、そこにGEORGIA独特のヴォーカルが冴え渡るネオ・ニュー・ソウル・ナンバーをずらりと収録!

9

RON HARDY

RON HARDY SENSATION RUSH HOUR / NL / 2010/2/15 »COMMENT GET MUSIC
説明不要のRON HARDYによる激レア・シカゴ・クラシック!中古市場では1万円オーバーで取引される事も多かった幻のレア盤が、リマスタリングされて待望のリイッシュー!

10

SIDE HUSTLE / NEMOY

SIDE HUSTLE / NEMOY SECOND INTRO / FLYWHEEL BONZZAJ / A FEW AMONG OTHERS / CHE / 2010/2/6 »COMMENT GET MUSIC
FORCE OF NATUREのDJ KENT率いるユニット「ENTERPLAY」のメンバーでもあり、HOUSE/TECHNOファンにはおなじみスイスのIANEQによるラップに THADDEUS CLARKを迎えたヒップホップ・プロジェクト=SIDE HUSTLEは激スペイシーな90'sライク・アングラ・シット!一方<BONZZAJ>からのリリースがあるビートメイカーNEMOYによる "FLYWHEEL"はパーカッシヴな生音感とエレクトリック感を見事に融合させた高揚感抜群ナイス・ブレイクビーツ・トラック!

Anthony "Shake" Shakir - ele-king

 かつて彼は自分自身を"テクノの透明人間"と形容している――つまり、いるのかいないのかよーわからんと。まあ、たしかにアンソニー・シェイカーが目立ったことはいちどもないけれど、彼は紛れもなくデトロイト・テクノのヴェテランのひとりである。初期のトラック"シークエンス"は1988年の歴史的コンピレーション『Techno! The New Dance Sound of Detroit』に収録されているばかりか、シェイカーはホアン・アトキンスとヴィジョンズ名義で作品を出したり(89年)、オクタヴ・ワンの"アイ・ビリーヴ"(90年)の共作者でもある。彼は本物のオリジナル世代なのだ。ただ......、アンソニー・シェイカーは他のデトロイトのプロデューサーのように自分自身をアピールすることが得意ではなかったのかもしれない。たしかに彼は自身が自虐的になるほど地味な存在ではあったが、しかし、彼が音楽活動を止めたことはなかった。シェイカーは20年代以上にも渡ってリリースを続けているのだ。

 彼は、90年代は主にシェイクの名義で自身のレーベル〈フリクショナル・レコーディングス〉から10枚以上の12インチを発表している。そして、〈メトロプレックス〉や〈トラック・モード〉、〈パズルボックス〉や〈セヴンス・シティ〉、〈ムーズ&グルーヴス〉や〈インターナショナル・ディージェイ・ジゴロ〉等々からも地道に12インチを切っている。2000年にはフランクフルトの〈クラング・エレクトロニック〉からアブストラクトなアルバム『Mr. Shakir's Beat Store』を発表しているし、2009年にはフランスの〈シンクロフォン〉からまったく素晴らしいシングル「アライズ」をリリースしている。

 『フィクショナリズム 1994-2009』はシェイカーの〈フリクショナル・レコーディングス〉時代のトラックを中心に編集されたベスト盤だ。12インチ・ヴァイナルだと4枚組、CDでは3枚組(全35曲)となる。アンソニー・シェイカーの音楽の特徴を簡潔に言うなら、彼のサイケデリックなセンスにある(なにせホアン・アトキンスとのコラボレーターだ)。そしてB-52'sの熱烈なファンである彼は、自分のトラックのなかにどこか捻れた(アーティな)センスを注入する。わっかりやすいハウスやテクノではないし、機能性を重視したトラックでもない。あくまで音楽的なのだ。

 実際、3時間以上におよぶ彼のこのセットは多様性に富んでいる。ジャジーなダウンテンポ"デトロイト・ステイト・オブ・マインド"、ベースとドラムマシンが見事に絡み合う"ローミング"、これこそデトロイト・テクノだと言わんばかりの"アライズ"......アンビエントもあればアシッディなファンクもある、クラフトワーキッシュなテクノ・ポップもある。『フィクショナリズム』を聴いていると、いままで日の当たらなかったデトロイト・テクノの歴史を思い知るようだ。嬉しい発見が随所にある。デリック・メイが彼の13振りのミックスCDの最初にシェイカーのトラックを選んだのも、なにか含みがあるんじゃないかとさえ思えてくる。

 〈ラッシュ・アワー〉はとても良い企画盤を思いついたものだ。控えめなだが眩しいオールスクールの輝き、自称"テクノの透明人間"に尊敬を込めて――。

CHART by JET SET 2010.02-2 - ele-king

Shop Chart


1

ポチョムキン

ポチョムキン BRAND NEW LOVE »COMMENT GET MUSIC
ポチョムキンが代弁する脱力東京ラヴ・ストーリー!?Zazen Boys向井氏制作のアノ曲が12"に!刺激的な都会暮らしの中にあっても、決して満たされることのない性的衝動。男の悲しい性(さが)を、東京上空から夜の街へと降下するエレクトロ・ファンクに浮かべた逸品"Brand New Love"加えて、B面にはPUNPEE(P.S.G.)、Mountain Mocha Kilimanjaro、Olive Oilという超豪華メンバーが集結!

2

RONI NACHUM

RONI NACHUM GUEST SERVICE SHALOM (MARK E REMIX) »COMMENT GET MUSIC
Mark Eリミックス収録のグレイト・リリース!!Limited300!!何かと話題作をドロップしてくるUK発"Fine Art Recordings"からマスト・アイテム到着。エルサレムからの新鋭"Roni Nachum"×ご存知"Mark E"。バッチリっす!!

3

ITAMAR SAGI

ITAMAR SAGI COMMON SENSE »COMMENT GET MUSIC
Be As Oneのトップ・イスラエリー・クリエイター、Itamar SagiがDrumcodeから!!これまでにもJosh Wink率いるOvemやKlap KlapそしてSomaなど世界各国の優良レーベルより作品をリリースをしてきた実力派、I.Sagiが奥行きのある覚醒的なドープ・ミニマルをリリース!!

4

SLUGABED

SLUGABED ULTRA HEAT TREATED EP »COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆スクウィー x ウォンキーなカラフル特大傑作トラックス!!北欧産エレクトロ・ファンク最前線サウンド=スクウィーへの憧憬を公言するUK鬼才がPlanet Muから放つ特大傑作EPがこちら!!

5

RED RACK'EM

RED RACK'EM THE NIGHTSHIFT »COMMENT GET MUSIC
デトロイト注目レーベルからの見逃せない一枚!!Hot Coins名義でも御馴染み、ニュー・ディスコ~ディープ・ハウスを横断するDaniel BermanによるRed Rack'em名義でのグッド・リリース。

6

COSMETICS

COSMETICS SOFT SKIN »COMMENT GET MUSIC
Glass Candy~Nite Jewel直系のダーク・ウェイヴ・ディスコ・ポップ!!メチャ最高です。こんなのも出しますCaptured Tracks。カナダの男女デュオ、Cosmetics!!レトロ・シンセに気だるい女子ヴォーカル、ロウファイ感も加わった完璧シンセ・ウェイヴ・ディスコ。グレイテスト!!

7

D1

D1 JUS BUSINESS »COMMENT GET MUSIC
☆大推薦☆天才ダブステッパーD1がデス・テクノをネタ使いした超話題盤です!!ダブステップ史上初のディープ・ハウス・ネタ名作"I'm Loving"を手掛けた鬼才が、今度はデス・テクノと鍵盤ハウスを下敷きにしたA1をお届け~!!

8

U.S. GIRLS

U.S. GIRLS GO GREY »COMMENT GET MUSIC
US最狂女子、Siltbreezeからの強烈セカンド・アルバム!!かなりスゴイことになってます。ポートランド在住のMegan Remyによるソロ・ユニット、U.S. Girls。この人は本当にヤバい。ロウファイ~ジャンク~ドローン~トライバル全てメチャクチャにかき回す23世紀ポップ!!最高。

9

DJ HELL FEATURING BRYAN FERRY

DJ HELL FEATURING BRYAN FERRY U CAN DANCE 1/3 (CARL CRAIG REMIX V.2) »COMMENT GET MUSIC
Carl CraigによるリミックスVersion 2を収録。アルバム『Teufelswerk』から一挙に3枚同時リリースされたリミックス・シングル3部作のうちの第1弾がこちら!!

10

ARTO MWAMBE

ARTO MWAMBE LOVE LIFT »COMMENT GET MUSIC
ブリージー・エレクトロニックなオールドスクール更新型ハウス大傑作!!エレクトロニカ方面の方にも是非聴いて頂きたい4つ打ちサウンド推薦盤。細身な男性ヴォーカルが際立つ爽やかなアッパー・トラックが憎らしい!!

Four Tet - ele-king

 フォークトロニカを定義した2001年のセカンド・アルバム『ポーズ』は、よく聴いたものだった。上質なクリームのように甘くドリーミーなテクノ・サウンドは、あの時代が生んだ価値ある1枚のひとつである。

 この潔癖性的なエレクトロニカは、1990年代半ばのポスト・ロックを出自としている。フォー・テットを名乗るキエラン・ヘブデンは、元々はロンドンを拠点とするフリッジのメンバーで、いわばトータス・フォロワーだった。それは行き詰まりを見せていたダンス・カルチャーにおける新潮流で、結局のところ、ポスト・ロックにしてもエレクトロニカにしても、なかばの風俗と化したドロドロのダンスフロアに背を向けて「もうちょい品良くいこうぜ」ということだった。僕は当時のこうした気持ちを理解できる。ジャズとクラウトロックとアンビエントとの融合だとか、いろんなことが語られてきたが、大きな目で見れば、ポスト・ロックにしてもエレクトロニカにしても、これらは1990年代というディケイドにおけるチルアウトだったのだ。

 『ポーズ』も良かったし、サード・アルバムの『ラウンズ』(2003年)も愛聴した。彼のライヴにも行った(まあまあだった)。キエラン・ヘブデンはそれから、『ラウンズ』を最後に彼のフォークトロニカを止めてしまい、2005年の『エヴリシング・エクスタティック』ではビートを強調した。悪くないアプローチだった。『ポーズ』も『ラウンズ』もリズムという観点ではヒップホップの影響を取り込んでいるとは思えないほど凡庸なところがあった......が、『エヴリシング・エクスタティック』はその弱点と向き合った。ロマンティックな彼の音楽のなかにダンスの要素を取り入れようと試みた。それは結果として成功し、それからヘブデンは売れっ子リミキサーとなった。他方で彼は自分のフリー・ジャズ趣味を満足させるかのようにジャズ・ドラマーのスティーヴ・リードのプロジェクトにも参加した。サンバーンド・ハンド・オブ・ザ・マンの『ファイヤー・エスケープ』では見事なプロデュース・ワークも見せた。

 ヘブデンは、そして2008年のシングル「リンガー」でミニマル・テクノに挑戦すると(それは決して出来が良いとは思えなかったが)、おそらくその延長としてブリアルとのスプリット・シングルを自身のレーベル〈テキスト〉から昨年発表した(こちらは素晴らしかった)。この流れで考えれば、5年ぶりのアルバムとなる『ゼア・イズ・ラヴ・イン・ユー』がミニマリズムの冒険になることは納得のいく話なのだろう。

 だとしても、新しいアルバムは4つ打ちを基調としている......などと書けば昔ながらのファンは懐疑的になるかもしれない。繰り返すが、フォー・テットとは10年前の4つ打ちの狂騒へのアンチテーゼだったのだ。が、ご心配は無用である。ヘブデンは今世紀のベルリンではなく1970年代のニューヨークもしくは1970年代のデュッセルドルフへと向かっている。スティーヴ・ライヒのミニマリズム(現代音楽における"陶酔")であり、クラウトロックにおけるアートのほうに。

 アルバムは女性の美しい声の反復とエディットによるミニマリズム"エンジェル・エコーズ"ではじまる。夢見るブレイクビートの"ラヴ・クライ"が再生され、そしてベスト・トラックのひとつ"サークリング"へと続く。スティーヴ・ライヒ的な音の重なりによって場面が変化しながら、絶妙にクラウトロックへとスライドする"サークリング"には、ヘブデンの音楽の良いところすべてが凝縮されている。ドリーミーで、ロマンティックで、つまり潔癖なトランスなのだ。

 それでもヘブデンは、興味深いことに、前作以上にダンスフロアを目指している。"シング"はコーネリアスがミニマル・テクノをやったようなユニークな曲で、リスナーはサイケデリックな遊園地のメリーゴーランドを楽しむことになる。『ゾビゾーゾー』の頃のクラスターをわかりやすく現代風にしたような"ディス・アンフォールズ"のユーモラスでキュートなエレクトロニカも魅力的だ。心地よいパーカッションと素朴な単音によるメロディがディレイで重なっていく"シー・ジャスト・ライクス・トゥ・ファイト"もまた素晴らしくラヴリーな曲で、このアルバムの最後に相応しい出来だと言える。

 時代の"チルアウト"から離れて、フォー・テットは彼のダンスフロアを練り上げた。危険なほど甘く、溶けてしまいそうなそこは、現実などクソ食らえと言わんばかりに妖しく発光している。

Massive Attack - ele-king

 ロバート・デル・ナジャ......3Dによれば彼が『ヘリゴランド』のポスターのために描いた絵は、ロンドンの地下鉄では使えないそうで、何故ならそれがあまりにも"ストリート・アート"すなわちグラフィティに見えてしまうからだという。もっともそれはマッシヴ・アタックにとって今回のアルバムが成功していることの証左でもある。しばしデヴィッド・リンチを引き合いに出して語られるマッシヴ・アタックの"暗さの芸術(art of dark)"は、ごくありふれた日常のなかの暗い予感を拡大してみせる。「嵐を予感すると人は背を向ける/不安だから」、と『ヘリゴランド』の"パラダイス・サーカス"でホープ・サンドヴァルが歌っているが、これは彼らの不朽の名曲"アンフィニッシュド・シンパシー"でシャラ・ネルソンが歌った「夜も知らないでどうやって昼を過ごせると思うのか」というフレーズとまあ同じようなもので、マッシヴ・アタックはこの世界の負性のようなものと向き合うことで自らのアートを磨いてきた。彼らは闇を友とし、雨を祈願した。コミュニケーションよりもディスコミュニケーションを、笑みよりも無愛想でいることを選んだ。そうした暗さの芸術家たる姿勢がいまやお馴染みとなった3Dの政治活動にも繋がっているのだろう。

 ただ、ファンにとって複雑だったのは、3Dが積極的な反戦デモ活動をおこしていた時期にマッシヴ・アタックが発表した『100th・ウィンドウ』が実に不可解な出来となっていたことだった。彼らのそもそもの武器――つまり、彼の地の音楽における二大要素=パンクとレゲエを繋ぐことのできた彼らの方法論――それは言うまでもなくヒップホップである。バンドからマッシュルームが去ったとき、多くのファンがマッシヴ・アタックから離れたのは無理もない話なのだ。彼らの暗さの芸術に眩い光沢を与えていたのはマッシュルームのブレイクビートであり、サンプリングのセンスだったのだから。『100th・ウィンドウ』にはそして、ダディー・Gすら関わっていない。豊富な音楽の知識を持つブリストルのベテランDJも離れ、音楽からは"ソウル"が消えてしまった。3Dは明らかに孤立し、そしてマッシヴ・アタックは長い冬眠に入った。もちろん誰一人としてそれを責めなかった。彼らは1990年代にクラシックと呼べる最高のアルバムを3枚(+1枚)も発表しているのだから。

 そんなわけで昨年の先行シングルを聴くまでは、僕はこのブリストルの大物の新作に何の期待もなく、注目もしなかった。だが、2008年にポーティスヘッドの10年振りの『サード』が素晴らしかったように、7年振りの『ヘリゴランド』も見事だった。3Dとダディー・Gはふたたびタッグを組んだ。多くの協力者が集まり、マッシヴ・アタックはソウルを取り戻したようだ。

 昨年リリースされて先行シングル「スプリッティング・ジ・アトムEP」を聴いてあらためて感心したのは、彼らの"暗さ"だった。中毒性の高いスカンキング・ビートをバックに、地上に釘付けにされたようなダディー・Gの(音程をキープできるギリギリの低音の)歌ではじまり、続いてホレス・アンディの高く甘い声、そしてまたダディー・G、そしてまたホレス・アンディ、それから3Dの妖艶な声へと代わっていくそのタイトル曲は、不機嫌というよりは恐怖の領域で鳴っている。そしてタチの悪いことに、曲も歌詞も魅惑的なのだ。「ドープなしではホープはない。失業者のお帰りだ」――とても他人事とは思えないだろ? 結局"スプリッティング・ジ・アトム"はアルバムのなかでもベストな1曲で、曲のモチーフは昨年の、G20金融サミットときの銀行を粉々にしたロンドンにおける反資本主義の暴動ではないかと思われる。(筆者による『SOOZER』誌のための取材で3Dは、暴動はコンサートよりもマシだと大いに肯定している)

 『ヘリゴランド』の1曲目となった、TV・オン・ザ・レイディオのヴォーカリスト、トゥンデ・アデビンペをフィーチャーする"プレイ・フォー・レイン(雨乞い)"の不気味なパーカッションによる墓場のダンスホールもたまらない魅力がある。が、マルティナ(トリッキーの初期の名作におけるヴォーカリスト)の個性あるパンキッシュな声をフィーチャーした蜃気楼のダブステップ"バベル"、アシッディなミニマリズムとマルティナの歌による"サイケ"、あるいはホレス・アンディが歌い、ブレイクビートと震動するベースラインがしなやかな絡みを見せる"ガール・アイ・ラヴ・ユー"のような曲こそファンが待ち望んでいるマッシヴ・アタックかもしれない。これらの曲は『ブルー・ラインズ』へと接続する。そして、エルボウのガイ・ガーヴェイをフィーチャーしたドラッギーな悲歌"フラット・オブ・ザ・ブレード"、西海岸から参加したホープ・サンドヴァルの妖艶な声とピアノ・サンプルのループが目眩を生む"パラダイス・サーカス"は『メザニーン』へと接続する。

 3Dが歌う"ラッシュ・ミニット"もまた『メザニーン』的な――つまりヴェルヴェット・アンダーグラウンド的な暗いトリップで、これが『ヘリゴランド』のハイライトである(残念なことに日本盤ではこの曲の訳詞が割愛されている)。盟友デーモン・アルバーンのソウル・ヴォーカルをフィーチャーした"サタデー・カム・スロー(土曜日はゆっくり来る)"は、エリザベス・フレイザーによる"ティアドロップ"をはっきりと思い出させる。

 3Dによれば、アルバムの歌詞にはあらゆる位相において政治的な問題提起がされているとのこと。なお、日本盤には"フェイタリズム"の坂本龍一と高橋幸宏によるリミックスが収録されている。昨年マッシヴ・アタックがメルトダウン・フェスティヴァルのキュレーターを務めたときに、3Dいわく「政治的な理由から」YMOを呼んでいる。また、ブリアルによるリミックスも近い将来に聴くことができそうである(グレイト!)。

The Drums - ele-king

 フロリダ。メキシコ湾に臨むこの温暖な都市で、夏とヴァカンスのムードに引きこもり、ハイウェイ下の小さなアパートでロネッツやシャングリラズを聴きながら曲を書く日々。ギタリスト、グラハムの職場はディズニー・ワールドだ。流行の音楽は聴かず、車も持たず、浮き世を離れて紡ぐ「シンプルな」ポップ・ソング......しかし、それは何だ?

 ザ・ドラムスは頭がいい。アメリカというすさまじいノイズと外部性に曝された場所に生きながら、例えば9・11以後のアメリカを歌わない。あるいは等身大のリアリティを歌わない。そんなものは無粋だ。もっと「アリ」なもの......夏と海と恋を歌おう。「起きてハニー、素敵な朝だよ。星がまだ瞬いてる。一緒に行かないかい? ビーチへ駆け出そう」

 ベースの小気味よいリフと、心躍る口笛が印象的な"レッツ・ゴー・サーフィン"。ハンドクラップが軽やかに浜辺へと誘い、メロディは一度聴いたら耳を離れない。もっとも生命が燃え、肉体が充実する季節を50'sサーフ・ポップへのオマージュとネオ・アコースティックのときめき感たっぷりに描き出す楽天的な2ミニット・ポップ......。

 だから初めて聴いたときの感想はサーフィン・クソ野郎、だった。みんなもっとがんばっているじゃないかと。昨年で言うならダーティ・プロジェクターズやアニマル・コレクティヴ、アトラス・サウンド、あるいはパッション・ピットやタイヨンダイ・ブラクストン。みんな「いま」という時間と鋭く切り結んだ、戦士たちといった印象だ。シンセ・ポップなニュアンスを持って台頭した一群も、80年代の享楽と90年代の絶望を止揚するかのように、柔らかで明るい――しかし半面にシビアな現実認識がある――地平を拓いた。ガールズは......別格だ。彼らは......刺せばどこからでも血が吹き出る。

 ザ・ドラムスはボーダーのTシャツとジーンズで浜辺を駆け巡り、「夏や恋や海以外に大事な問題ってあったっけ?」というような表情でいまという問題設定をキャンセルしてみせる。なんかずるいな。いいんだけど、もっとリスキーな勝負をしている連中をなんとなくバカにしてるみたいに見えて、好かないな。そんなふうに思った。が、しかし、彼らの音の訴求力というのは半端じゃない。店でかけても「これ誰ですか?」という問い合わせの多さに驚かされる。『NME』などUKのプレスも、過去10年でもっとも熱いニューヨークのバンドとして彼らを熱狂的に迎え入れている。そうなのか。

 注意して聴いてみる。すると彼らの一種の「過剰さ」に思い当たる。なんだか出来過ぎているな、というのは全曲に感じることだ。レトロな質感を持ったシンプルなポップ・ソング。そのコンセプトはよくわかるけれど、彼らのなかにあるのはシンプルさではなく、シンプルであることへのオブセッションなのではないか。ソングライターでヴォーカルのジョナサン・ピアースはこう語っている。「......たぶん何曲かはハッピーな曲に聴こえるだろうね。だけどすべての主題となっているのは、すごくきついものなんだ。不幸にもね。僕は愉しい曲を書こうとしてきた。だけど僕にできるベストは、君が小躍りできる悲しい曲を書くことなんだ」(「ミュージック・フィックス」2009.7.11)


 この発言は、彼らのイメージを華麗に裏切る。あれらが本当は悲しい曲だとは......。なるほど彼らは楽天性を志向するように思えるが、本当のテーマはそうではないのだろう。では、なぜ敢えてハッピーな(=シンプルな)曲を書かねばならないのか。複雑で踊れなくて悲しい曲じゃ、なぜいけないか。その答えはとくに述べられない。いろいろあるだろう。単に好みの問題かもしれない。だが、事実「なぜか」そうせねばならない。この点に、彼らのリアルと呼べる感覚が初めてひりひりと立ち上がってくるように思った。シンプルさが無邪気に調達されたものではないことに、そこに彼ら固有の問題がありそうだということに。同時に、たしかにそのくらいの複雑さを持ったバンドだよなと、納得もする。あの出来過ぎたポップ・ソングはいまや少し苦く響くようになった。

 彼らの翳りはまた、ヴィンテージ・ブリッツへの愛にも伺い知ることができる。ザ・スミス、ジョイ・デイヴィジョン、ラーズ......ピアースが自らの主題と考える「きついもの」は、おそらくはそこにある。サーフ・ポップの裏側にニュー・オーダーがいることは、彼らのサウンドを説明する上でも重要だ。〈ファクトリー〉のプロダクションを彷彿させる、コーラスがかったペナペナな音(それはペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートを筆頭としたc86リヴァイヴァリストたちのモラトリアムなムードと、ノー・エイジや〈ウッドシスト〉~〈キャプチャード・トラックス〉周辺のシットゲイズなローファイ感覚をハイブリッドに繋ぐ、2009年の離れ業でもあったわけですが!)は、はっきりとそのオマージュだと言える。そしておそらくは、それがUKでも歓迎される所以だ。

 バンドはUKのインディ名門〈もしもし〉より2009年8月にファースト・シングル「レッツ・ゴー・サーフィン」を、続いて「アイ・フェルト・ステューピッド」をリリースしている。それらに3曲を加えた7曲入りEPが、この『サマータイム!』だ。ジョナサン・ピアースと、幼馴染みでフロリダに住んでいたギタリスト、ジェイコブ・グラハムを中心とした4人組。バンド結成のためにピアースはグラハムの許へ移住、その後4人体制になっている。そう、終わらない夏を希求するかのようにピアースがフロリダへ向かったところから、ザ・ドラムスははじまっている。こんなところもでき過ぎている。切ない。

環ROY - ele-king

 うむむむ。環ロイのセカンド・ソロ・アルバム『BREAK BOY』を聴いて、思わず唸ってしまった。僕は、音楽的好奇心に満ち溢れ、鋭い批評精神を持つ、(この国においては)稀有なラッパー、環ロイの活動をそれなりに追ってきた人間だ。ライヴを観たこともあるし、彼がデリック・メイ、ベーシック・チャンネル、ザゼン・ボーイズを聴き、TSUTAYAで最新のUSヒップホップのCDを数十枚も借りるほど勉強熱心なラッパーであることも知っている。以前インタヴューした際に、日本語ラップに対する見解や愛憎を論理的な言葉で語ったこともよく覚えている(ラッパーの自分語りと写実主義と階層、あるいは階級意識について述べていたと記憶する)。こちらの質問に斜めから切り返す態度を見て、面白い人だなと思ったし、その捻くれっぷりに親近感さえ湧いた。

 それだけに、本作が中途半端な出来に思えるのは残念だ。ファースト『少年モンスター』(06年)を特徴付けていたリラックスしたムード、あるいは遊びの延長線上でラップを楽しんでいる感覚が薄れ、なんと言うか、堅苦しさが目立つ。"任務遂行"という曲では、「ゴタクじゃねーぞ/感情をぶつける」とラップしてはいるが、そのリリックは裏返しの気持ちを表明しているようで、妙に言い訳がましく聴こえてしまうときがある。僕が環ロイに負けず劣らず捻くれた根性の持ち主だからだろうか。いや......、というか、環ロイが閉塞を感じている日本語ラップ・シーンに自らを閉じ込めてしまっているように見えるのだ。例えば、日本語ラップへの愛憎をラップした"J-RAP"のフックで、「排他的で閉鎖的J-RAP」と叫び、最後に「J-RAP オレは愛してるさ」と締めくくる気持ちは痛いほどよくわかるが、彼ほどさまざまな音楽にアクセスするセンスを持つラッパーであれば、もっとナチュラルに突き抜けて良かったのではないだろうか。

 とはいえ、トラックメイカー/ビートメイカー選びにおける視野の広さ、チェレンジ精神はさすがである。列挙すると、Himuro Yoshiteru、CONFLICT、punpee(PSG)、三浦康嗣(□□□)、Spitters Den、NEWDEAL、Bun、RIOW ARAI、olive oil、Fragment、となる。90年代中盤を彷彿とさせるオーセンティックなヒップホップ・トラック、エレクトロニカ以降のヒップホップ・ビート、トランシーでファンキーな(あるいはロッキンな)ブレイクビーツ、エクスペリメンタル・ビート・ミュージックの数々。これだけのトラックを乗りこなすラップ・スキルには、やはり特別な輝きがある。それ故に、ここで音質について語るのはフェアじゃないかもしれないが(ミキシング、マスタリングにはレーベルの意向やエンジニアの趣向が強く反映されるものだ)、いくつかのトラックが気の抜けたデジタル・ロックが空騒ぎしているように聴こえてしまうのは、どうにももったいない。

 少々話は逸れるが、重要なインフォメーションなので書こう。Bun、olive oil、RIOW ARAIらは、カルロス・ニーニョ、デイデラス、ガスランプ・キラー、フライング・ロータスらが活躍する、LAのエクスペリメンタルなクラブ・パーティ〈ロウ・エンド・セオリー〉やインディ・ネット・ラジオ局〈ダブラブ〉と共鳴する活動を展開していて、実際、Bunのトラックは〈ダブラブ〉でプレイされているし、olive oilはD・スタイルズにサインを求められたことがあるらしいし、RIOW ARAIは〈ロウ・エンド・セオリー〉が来日した際のパーティに出演している。ディスク・ユニオンで、Bunのビート集のCDRを2枚ほど手に入れたが、ビート・ジャンキーのみならず、フライング・ロータス周辺の音が気になっているのであれば、チェックすることをおすすめする。ちなみに、所謂ニュー・ビート(もしくはダブステップ)に飢えている方は、2月13日深夜、東京・中野にあるクラブ〈heavysick zero〉にてKKがオーガナイズする〈Lo-Vibes Recordings Presents MO'FUN -Vol.5-〉というパーティに遊びに行くといいだろう。本作に参加したHimuro Yoshiteruも出演する。そして、クラブ明けの蕎麦屋で焼酎のお湯割りを飲みながら、朝9時までダブステップについて熱く語る男、KK氏の『in the khaos`69』というダブステップ・アルバムでも環ロイはラップしている。また、曽我部恵一のレーベル〈ROSE RECORDS〉のコンピレーション『Perfect!』に曲を提供し、本作のラストを飾るソウルフルな"Break Boy in the Dream"には、楽曲制作者、ヴォーカリストとして七尾旅人を迎えている。環ロイはそのように、常に異なるジャンルとの出会いをエネルギーに変えてきたラッパーである。

 本作中の"BGM"は、RCサクセションの元メンバー、チャボこと仲井戸麗市のソロ曲のカヴァーなのだが、アンチ・ポップスを歌った原曲の歌詞を、ポップ・ミュージックを肯定する歌詞に現代的にアレンジしてラップしている。そこには環ロイの健全なるスケベ心がシンプルに表現されていて、とてもいい感じだ。そう、だから、「音楽は何も変えないけど/変えるかもしんないかもしんない」("バニンシングポイント")という逡巡ではなく、「音楽は何も変えないけど/変えるかもしんない!」と力強く喝破してこそ、環ロイの音楽は、さらなる説得力を獲得するに違いない。

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