「P」と一致するもの

セーラーかんな子 - ele-king

10/18 シブカル祭@渋谷PARCO
10/26 @高円寺AMPcafe
10/31 @渋谷OTO, @Le Baron de Paris
11/1 田中面舞踏会@恵比寿リキッドルーム
11/15 CITY HUNTER@BAR SAZANAMI

interview with 16FLIP - ele-king

直感的な感性を持つアーティストのひとつの特徴として、彼らは曲というものを自分とはべつに存在するひとつの生き物と見なし、その存在の証人となることができる、ということが挙げられる。究極的には音楽作りという行為自体の外側に立ち、音楽が生まれるプロセスの神秘に魅入られ、そしてそのプロセスの中に吸い込まれていくことができるのである。
──ジョー・ヘンリー
(ミシェル・ンデゲオチェロ『ウェザー』ライナーノーツより)

 僕はいま、16FLIPの直感力とヒップホップへの一途な情熱と求道的な姿勢が無性に気になっている。直感力に関していえば、この、東京のヒップホップ・シーンを代表するひとりであるビートメイカーのリズム、グルーヴ、サンプリング・センスにたいして使われる“黒い”という形容詞以上の“何か”をそこにあるのではないかと感じている。

 長年ヒップホップを徹底的に掘り下げてきた音楽家が、だからこそ何かを突き破りつつある、その過程をいま聴いているのかもしれない。けれども、直感はその人間の経験と知識から生み出されるもので、他人がそれを完璧に理解し、共有するなど無理な話だ。自分の耳だけを信じて、彼の音楽を聴いていればいいとも思うが、どうしても気になる。だから、話を訊いてみることにした。

 きっかけのひとつは1年ほど前の出来事だ。2013年10月某日、とある渋谷のクラブでDJした16FLIPは、ドクター・ドレとスヌープの“ナッシン・バット・ア・G・サング”とギャングスターの“ロイヤリティ”を何気なくスピンした。これまで何十回、もしかしたら百回以上は聴いたであろうこの2曲のクラシックが、まったく別の輝きを放って耳に飛び込んできたことに僕は震えた。
 90年代のUSヒップホップの音響やリズムが、2013年の耳を通して新鮮な感覚を呼び起こしただけではなかった。この感覚は何だろうか? そのときたしかに、「16FLIPにしか聴こえていない音とグルーヴ」を感じて、その後あらためて16FLIPのビートに関心を抱くようになった。


06-13
16FLIP

DOGEAR RECORDS

Hip Hop

Tower HMV Amazon

 ISSUGIや5LACKやMONJUをはじめ、BES、KID FRESINO、JUSWANNA、SICK TEAMといった数多くのラッパーやグループへのトラック提供で知られるこのビートメイカーは今年、2006年から2013年までに制作したトラックを収めたセカンド『06-13』と3枚のミックスCD(『OL'TIME KILLIN' vol.1』『OL'TIME KILLIN' vol.2』『SKARFACE MIX』)を発表している。すべてのトラックを手がけたISSUGIのサード・アルバム『EARR』のインストのアナログ盤『EARR : FLIPSTRUMENTAL-2LP-』のリリースも予定されている。
 まったくもって派手な宣伝や露出はないものの、16FLIPの音楽と存在は街にじわじわと浸透しつづけている。ファンの彼に対するまなざしは本当に熱い。すごいことだ。

 取材は今年の5月後半におこなった。ここでの僕の望みはふたつ。16FLIPのファンはより深く彼のことを知る手がかりにしてもらえればうれしい。そして、16FLIPを知らない人はこのインタヴューをきっかけに彼の音楽に耳を傾けてくれたならばありがたい。


リー・ペリーとかマックス・ロメオとか、レゲエの人たちが、わけのわからない年代で区切って作品を出したりするじゃないですか。“86-92”みたいな感じで。

最初にトラックを作ったのはいつで、きっかけはなんだったかという話から訊かせてもらえますか。

16FLIP:友だちのDJの家にMPCがあったんですよね。中3か高1ぐらいですね。で、そいつがいないときとかに遊びで作っていて、MPCを自分もほしいなって。それがきっかけだと思いますね。たぶん、自分で作るのがいちばん新鮮に感じてたと思うんすよね。そういう経験がなかったから。だから、やりだしたのかもしれない。でも、作らない時期もかなりありましたね。ちょこちょこ作ってたんですけど、あんまり上手く行かねぇなって。で、MONJUの作品を出すかってなったときに、またちゃんとやりだした感じだと思います。オレのトラックで、MONJUで1曲録ったら、わりとしっくりくるっていうことになって(笑)。それが、『103LAB.EP』(2006年)の“THINK”っていう曲なんです。その曲のトラック違いのやつがあって、それを最初に作ったんです。そこから、『103LAB.EP』を作る流れになったような気がします。

16FLIP名義で最初に世に出たトラックは、JUSWANNAのEP『湾岸SEAWEED』(2006年)に入ってる“東京Discovery”と“ブストゲスノエズ”なんですよね。

16FLIP:そうなんすよ。仙人掌の家に遊びに行ったときにメシア(THE フライ)も遊びに来たりしてて、そのときにトラックを作ったような気がしますね。レコーディング・スタジオに連れていってもらってミックスしてもらって、スタジオで爆音で聴いてたのを思いだすっす。いま思うと参加するチャンスをくれたことに本当に感謝してます。

『06-13』は、2006年から2013年までの作品を集めたアルバムですよね。2007年からにすることもできたわけだし、ベスト的な作品にすることもできたわけですよね。どうしてこの期間に絞ったんですか?

16FLIP:ベスト的なことを書いてくれている人も多いんですけど、自分はベストを出してるっていう気持ちはなくて。リー・ペリーとかマックス・ロメオとか、レゲエの人たちが、わけのわからない年代で区切って作品を出したりするじゃないですか。“86-92”みたいな感じで。そういう気分で出したつもりなんです。アルバムの題名を付けるのも好きなんですけど、題名は最終的にあってもなくてもいいかなって思ってる自分もいるんですよ。2006年に作ったトラックは一曲ぐらいしかないと思うんですけど。

それはどれですか?

16FLIP:たぶん、“Oitachi”だけですね。

選曲の基準みたいなものはあったんですか?

16FLIP:基準はいつも直感なんですよね。「いまはこの曲だな」みたいな感じですね。だから、1ヶ月とか2ヶ月経ったら違う曲を選ぶと思うし、1年かけて十何曲選びましたとかじゃなくて、「出すか」って決めて、パッパッパッパッパッみたいな感じで選びましたね。

ほとんどが2分以内、長くても3分ぐらいのトラックばかりですよね。サンプリング一発で、いい意味で遊びの感覚にあふれた作品集だなって感じました。ダブ的というか、ノリだけじゃないけど、ノリを大事にしてる感じがすごく伝わってくるというか。

16FLIP:そうっすね。最近、前よりもDJとして呼んでもらえる機会が増えて、それが作るときにいろいろ活かされてるなって自分では思うんですよね。DJ的感覚で一枚のものをまとめたいっていう気持ちがすごいありましたね。だから、自分の曲でDJやってる感じっすね。

“NEWDAY”も入ってますよね。仙人掌くんにインタヴューさせてもらったときに、「自分が客演した曲のなかで印象に残っている曲は?」って訊いたら、真っ先に挙げてきたのがこの曲だったんですよ。

ISSUGI feat.仙人掌“NEWDAY”

16FLIP:それはあがるっすね。(仙人掌と)こないだ話したんすけど、まじでいままで何曲フィーチャリングしたかすぐには把握できないくらいあるよねって言ってたんですよね。基本的になにをサンプリングしてトラックを作ったとか、あんまり憶えていないんですけど、“NEWDAY”に関してはまじでわかんなくて。そういう系のトラックなんですよね。いまはもう作れないだろうし、オレはトラックに関しても2度と作れないものが好きなんですよね。

まさに直感というか、瞬間の閃きの人なんですね。

16FLIP:しかも、その直感がそのときで消えちゃったらそれでべつにいいと思ってますね。

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いけるときは、たぶん10分ぐらいでいけますね。時間かけてもいいものができるっていうのは、オレのトラックにはないんですよ。

YouTubeにトラックを作っているときの映像がアップされてるじゃないですか。いつもああやってひとりで作ってるんですか?

16FLIP:だいたいそうっすね。あとは友だちの家とか大阪とか行ったりしたときもたまにトラック作ったりしてるんですよね。DJやりに行ったときとかに。

Making beat with 16FLIP/ "Smokytown callin" comingsoon

へぇぇ。それは、MPCを持ってくんですか?

16FLIP:いや、大阪に〈Fedup〉っていう、いつも行ったときお世話になってるお店があって自分たちのCDとかも置いてもらったりしていて。その横が〈Fedup〉のスタジオになっていてMPCとかもあって、遊びに行ったら使わせてくれるんすよね。C-L-CとかDJ K FLASHとかが「いいネタあったで」みたいな感じで教えてくれるから、「おお、ヤベェ! じゃあ、作ろう」って、作ったりしてますね。『II BARRET』にも大阪で作ったトラックが入ってますね。“No more ballad”のトラックです。

他にも〈Fedup〉で作ったトラックはたくさんある?

16FLIP:ありますね。大阪で10曲以上は作ってるんで、それをまとめてCDを出そうと思ってます。MPCがあればどこでも作れますね。ニューヨークに行ったときも、スクラッチ・ナイスの家で一週間に10曲ぐらい作って楽しかったっすね。

早くて1曲何分とかで作れちゃいますか?

16FLIP:いけるときは、たぶん10分ぐらいでいけますね。時間かけてもいいものができるっていうのは、オレのトラックにはないんですよ。そういう作り方は自分に合ってないですね。だから、できたトラックに手も加えないっすね。

ほんと潔いですよね。そういえば、遅ればせながら、16FLIP VS SEEDA『ROOTS & BUDS』(SEEDA『花と雨』を16FLIPが全曲リミックスした作品。2007年発表)を聴きました。評判だけはまわりの友だちから聞いてて。でも、あの作品は手に入りにくいし、中古でも高値じゃないですか。いや、とにかく、あのクラシックを完璧に16FLIPの世界に塗り替えているのに驚いたし、すごくかっこよかったです。あの作品はどういう経緯で作ったんですか?

16FLIP:当時、ナインス・ワンダーがナズの『ゴッズ・サン』(2002年)をリミックスしたアルバム(『ゴッズ・ステップサン』(2003年))を聴いて、それがかっこいいと思ったんですよね。トラックメイカーがラッパーのアカペラを使ってリミックス・アルバムを作って名を上げるハシリ的な感じだったと思うんですよ。それ以前もそういうのはあったかもしれないけど、ナインス・ワンダーはそこらへんのやり方がなんかかっこよくて。その後PUGが面白いこと考えてきたんです。『花と雨』が出たときに〈HARVEST SHOP〉で買うと特典でアカペラのCDRがついてきたんですけど、ちょうどMONJUの『BLACK DE.EP』(2008年)を出すのが決まってた時期で、「その前に一発カマしたほうがいい」みたいなことを言ってて。それで、もちろんSEEDAくんにも許可をもらって作ったんですよね。16FLIPを知らない人もSEEDAくんのリミックス盤だからってことで聴いてくれた人もたくさんいたと思うし、SEEDAくんには感謝してますね。

いまだに聴けていない人が多いのももったいないし、いま再発しても大きな反響があるんじゃないかと思ったぐらいです、ほんとに。

16FLIP:まじっすか!? それはありがたいです。

はい。さっきも話に出ましたけど、最近はDJもよくやってますよね。手前味噌ですけど、僕が16FLIPくんにミックスCD(『OL'TIME KILLIN' vol.1』『OL'TIME KILLIN' vol.2』。〈ディスクユニオン〉限定販売)の制作を依頼したのも、こうやってインタヴューさせてもらってるのも、そもそもは去年の10月に16FLIPくんのDJに打ちのめされたのがきっかけだったんです。あのとき、ドクター・ドレとスヌープの“ナッシン・バット・ア・G・サング”と、ギャングスターの“ロイヤリティ”をかけたじゃないですか。

16FLIP:はい、かけましたね。

Dr.Dre feat. Snoop Doggy Dogg“Nuthin But a 'G' Thang”

Gang Starr feat. K-CI & JOJO“Royalty”

自分はあの2曲をこれまでさんざん聴いてきたんですけど、あんなふうに聴こえたことがなかったというか、まだ上手く言葉にできないんですけど、「16FLIPだけに聴こえてる音とグルーヴがあるんだな」って実感したんですよ。

16FLIP:それ、すげぇうれしいっす。かける人によって、同じ曲でも違って聴かせられるのがDJのおもしろいところだし、ライヴDJが同じインストかけるにしても、かける人によって感じ方とか威力がそれぞれ違うんですよね。そいつの醸すものがそのまんま出るんですよね。だから、ライヴも関係性が高いほうがいいと思いますね。

関係性というのは、ライヴの出演者同士の?

16FLIP:出演者同士のではなくて、MCとライヴDJの場合っすね。人間の関係性もグルーヴだと思うんですよ。

ああ、なるほど。そのDJのあとに話したときに、16FLIPくんが、「ヒップホップだけで、ヒップホップをあまり聴かない音楽好きの人をヤバイと言わせたい」みたいなことを言ってて、それが16FLIPの音楽をまさに言い表していると感じたんですよね。

16FLIP:やっぱり自分は、ヒップホップがいちばんカッコいいと思ってるから。まあもちろん……

比べることじゃないけど……


自分の音楽がヤバイっていうよりも、自分の音楽を通したときに、「ヒップホップってヤバイな」ってならないとダメだとオレは思っていて。

16FLIP:そう、比べるものじゃないですけど、たとえばレゲエだったらレゲエがいちばんヤバイと思ってる人の音楽が聴きたいってことですね。自分にとってヒップホップは他には代えられないものだから。自分の音楽がヤバイっていうよりも、自分の音楽を通したときに、「ヒップホップってヤバイな」ってならないとダメだとオレは思っていて。自分がいろんな人のヒップホップを通して、ヒップホップの良さを知ったんで。そういう感じですね。

16FLIPの音楽、ビート、トラックは、たとえばいまアメリカで売れている主流のヒップホップの派手さや煌びやかさとは真逆にあるわけじゃないですか。もちろん、アメリカにもそういうヒップホップはたくさんあって、ロック・マルシアーノやエヴィデンスのような人は主流や流行と関係ないところでずっと音楽を続けてきたと思うんですね。16FLIPもまさにそうだと思うんです。自分たちが主流や流行とは違う音楽をやっていることに迷いや不安を感じたことはなかったですか?

16FLIP:それはまじにないっすね(キッパリ)。

ははははは。

16FLIP:そういうことを自分で考えたこともなかったですね。派手だとか、アンダーグラウンドだとか、そういうことを考えてないからっていうのもあると思います。流行のヒップホップのなかにもヤバイものはあるし、逆に、自分たちと同じスタイルというか、近いテイストでもダメなものは絶対あるから。どういうのが良くて、どういうのがダメかっていう基準が自分のなかにあるんです。たぶんそうなんすよね。だから、変わんないのかもしれないですね。

その話で思い出したんですけど、2年前ぐらいの〈WENOD〉のウェブ・サイトのインタヴューで印象に残ってる発言があるんですよ。DJプレミアについて、「ブレる事を知らない人の音からでるパワーってすごくて」(https://blog.wenod.com/?eid=206126)って語ってるじゃないですか。いままさに16FLIPの音も円熟……というのは早い気がしますけど、そういう段階に入りつつあるのかなって感じるんです。

16FLIP:ピート・ロックでも、J・ディラでも、ティンバランドでもいいんですけど、ずっと続けているヤツの重みがオレは好きなんですよね。

僕が16FLIPくんに清々しさを感じるのは、サンプリング・ネタの曲やミュージシャンやレコードに頓着しないところなんですよね。

16FLIP:そうっすね。オレ、ぜんぜんそういうの気にしないっすね。

トラックメイカーやビートメイカーやDJのなかには、マニア気質の人たちもいるじゃないですか。16FLIPくんはまったく正反対でしょ。

16FLIP:同じネタでトラックを作っても、違う人間がやったら、絶対に違うものになるし、同じものは作れないじゃないですか。だから、誰々の曲を使ってるとか、オレはまったくどうでもいいんですよ。そういうとこには興味がないんですよね。

だから、『06-13』でも他の人は避けそうなソウルやファンクの大ネタをためらいなくドッカ~ンと使ってるじゃないですか?(笑)

16FLIP:はい、ドッカ~ンっすね。だからオレ、レアかどうかとかって、すごく嫌いなんですよ。そんなの音楽の価値に関係ないんですよね。自分の良いか悪いかしか判断基準にならないんです。たとえば、5万円のレコードがあっても、オレが良いと思わなかったらDJでかけないし、逆に2円で買ったレコードでもヤバかったらかけますね。どんなネタを使っても、オレが作ったらオレの作り方になるし、DJでも、オレがかけたらオレのかけ方になるっていうのがわかってるんですよね。

それを僕は去年の10月の16FLIPのDJに感じたんでしょうね。

16FLIP:そう感じてもらえたことがすげぇうれしいんですよね。それは自分にとって重要なことです。オレも人のDJのそういうところを感じてるし、それこそ“ロイヤリティ”を聴いて、「ああ、懐かしいね」で終わっちゃう人もいるかもしれないけど、オレにとっては永遠にヤバイ曲なんですよ。いつ聴いても良いんですよ。だから、その曲が有名だろうが、初めて聴く曲だろうが、関係ない。きっとそういうことなんですよね。

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ワンループにこだわってるわけではないんですけど、最初はMPCのパッドが16個だったから、16FLIPにしたんですよ。

ところで、16FLIPっていう名前は何に由来しているんですか? 16は16小節からきているのかなと思ったんですけど。そうだとしたら、16FLIPのワンループの美学へのこだわりを考えると、的を射ているなって。

16FLIP:ああ、たしかに。ワンループにこだわってるわけではないんですけど、最初はMPCのパッドが16個だったから、16FLIPにしたんですよ。自分にいちばん合ってるのは、そういうシンプルな名前だなと思って。いまとなってはなんでもいいかなって思いますね。けっきょく名前とかって、やってるヤツ次第でかっこよくも感じられるし、ダサくも感じられるから。あとはスケボーをやってたから、単純にFLIPっていう言葉が好きだったと思うんですよね。で、ヒップホップのトラックの作り方のなかにも、FLIPっていう言葉があったから、そのふたつを掛けたのかもしれないですね。ひっくり返すっていう意味もあるし。

ISSUGIのファースト『THURSDAY』(2009年)に提供した“GOOD EVENING”ってインタルードはスケボーの音で作られてますよね。ほんとに美しくて瑞々しいインタルードですよね、あれは。

16FLIP:(スケボーの音を)入れてましたね。

あのころから5年経ったわけじゃないですか。年齢とともに遊び方も変わったり、生活の変化もあったり、環境も少なからず変わったと思うんですけど、そういう変化は音に反映されたりしてますか?

16FLIP:う~ん……、環境はどんどん変わっていってると思いますけど、トラックを作ることに対しては、とくに変わってない感じなんすよね。もちろん聴いてる音楽もその時々で違いますし、生活の変化も音楽に影響してるとは思うんですけど。ただ、音楽に対して、昔より柔軟になったっていうか、理屈っぽさがさらになくなってきてるかもしれない。

へええ、16FLIPくんが自分のことをそう考えていたとはちょっと驚きです。音楽に関して理屈っぽく考えていたとこもあったんですか?

16FLIP:いや、なんて言えばいいんすかね、そういう理屈とか関係ない自分でさえ、ちょっと理屈っぽかったのかなって思っちゃうときはあったかもしれないっすね。

自分に理屈っぽさを感じたのはどういうところに? ヒップホップに対してストイック過ぎるとか?

16FLIP:いや、そういう部分じゃないんです。なんていうんだろう、昔はいまよりも硬かったっすね、グルーヴが。いまのほうがよりスムースになっていってると思うんですよ。そういう感じですかね。なんか、オレ、動物的になっていくのがすげぇいいと勝手に思ってて。

ああ、なるほど。16FLIPくんが言うその言葉には説得力がありますよね。ただ一方で、こんなこと訊くのも無粋ですけど、一般的には、年齢を重ねると、たとえば家族のことだったり、お金のことだったり、若いころとは違った不安や焦りも生まれたりするだろうし、頭が固くなってしまうというのも一面ではあると思うんですよ。そういうことは感じたりしませんか?

16FLIP:でも、そういうことがあったとしても、音楽には及ばないというか、音楽には影響しないですね。生活の変化は音楽に影響はしてるんですけど、ヘンな音楽を作って、自分が空しい思いをするとしたら作んないほうがいいって思ってますね。余計な考えとかはいらないっすね。うまく説明できないんですけど、そうっすね、自分は自分の音楽がどんどん変化していくのがおもしろいし、それを楽しんでるんですよね。音楽は自分のやりたいことを100%出すのがいいと思いますね。それが前提ですね。

16FLIPくんの音楽に対するストイックな姿勢に接すると背筋が伸びる思いがしますよ。

16FLIP:ほんとっすか?

いや、ほんとに正直な気持ちです。オレとかやっぱだらしない人間だから(笑)。

16FLIP:そうすか?

ははは。

16FLIP:いやー。

やっぱり人間、いろんな欲もあるじゃないですか。

16FLIP:そうっすね。たしかに。

16FLIPくんほどの人気があれば、一獲千金……じゃないですけど、もっとギラギラしてても不思議じゃないと思うんですよ。

16FLIP:一獲千金(笑)。ヘンなことしてヒップホップで一獲千金できると思ってないですからね。

はははは。

16FLIP:もしもですけど、一獲千金する方法があるとすれば、たぶん自分のやり方を貫くことだと思ってますね。自分を貫かなかったら、一獲千金どころか、泥の舟に乗ってるようなものだと思うんですよ。音楽を長く続けるコツは、自分のスタイルを持って続けることだと思うんで。絶対。なんかヘンなことをやったら、自分の寿命を縮めるだけだと思うし、実際そうだと思うんすよね。だって、それでうまく行く人とかあまり見たことないし(笑)。そういう気持ちって人に伝わるじゃないですか。

そうですね。音から伝わりますね。

16FLIP:わかるっすもんね。「あ、こいつ変わったな」みたいになっちゃうと思うんすよ。


俺のなかではラッパーやDJが“B-BOY”じゃなくなったときに、がっかりするっていうか、悲しくなりますね。「ヒップホップを捨てたなあ」みたいなときが。

リスナーもそこは厳しく見てますよね。僕は、ファンやリスナーは薄情な一面もあると思っていて、自分が好きなミュージシャンやラッパーやDJのスタイルが変化したら、見捨てるときはあっさり見捨てたりもするじゃないですか。

16FLIP:俺のなかではラッパーやDJが“B-BOY”じゃなくなったときに、がっかりするっていうか、悲しくなりますね。「ヒップホップを捨てたなあ」みたいなときが。そうなっちゃったときに、自分のなかでは完全に終わると思ってます。

たとえば、メソッドマンにしろ、ナズにしろ、あれだけポップなフィールドでも活躍して、ポップな曲も作って、カネも得ているけれど、いつまでもヒップホップしていて、カッコいいですよね。

16FLIP:カッコいい人はいますね。オレ、スヌープやっぱり好きですね。あと自分は、誰々の“この1曲”が好きっていうよりは、“その人”の作るものが好きだっていう感じなんですよ。だから、ミックスを聴いてくれる人とかも入ってる曲をそうやって聴いてもらえたら、うれしいっすね。

“人間を聴いてる”という感じですかね。

16FLIP:そうっすね。あと、他の人が聴かなくなっても、自分が好きだったら聴いていればいいし、そういうもんだと思うんですよ、音楽って。

16FLIPにとって、ヒップホップって何でしょう?

16FLIP:最終的には、曲を作ることが、自分のヒップホップを表現する行為と同じことだと思ってますね。DJにしても、ラッパーにしても、そうなんですよね。「自分のヒップホップはこういうもんだ」と思ってるものが出ちゃう、ただそれだけだと思ってます。

実は今日、16FLIPくんに会う前にECDさんにインタヴューしてきたんですよ。本人はどう考えているかはわからないけれど、ECDは相変わらず、いまの16FLIPくんの言う意味での“B-BOY”なんだなってすごく感じて。

16FLIP:そうっすね。それはすげぇ思います。

1960年生まれだから、今年で54歳ですよね。

16FLIP:まじでリスペクトですね。

16FLIPくんは自分の音楽家としての未来を考えたりしますか?

16FLIP:自分もそれぐらいの歳までバリバリ音楽を続けて、54になってもニュー・アルバム出したいっすね。自分が54になったときは、いまよりヤバイと思ってますね。長く続ける存在が日本にたくさんいたほうがいいと思うんですよね。年取ってやらなくなっちゃうってことは、ヒップホップが根付いていないってことじゃないですか。その歳になっても音楽をやってるほうが自然だと思うし。若いヤツの音楽ももちろん好きだけど、50代とかオッサンしか出せないヤバさは絶対ありますからね。アレサ・フランクリンとかアンジー・ストーンの音楽にしてもやっぱ演奏とかまじでヤバイし、渋いじゃないですか。そういう人たちしか出せないもんがあると思うんですよ。
 だから、オレが38ぐらいになって、アルバム出したとするじゃないですか。そのときに、はじめて『EARR』とかを聴くヤツがいてもいいと思うし、いつだって何を聴くヤツがいてもいいと思う。自分だって、いまはもう死んでいるヤツの昔の音楽をガンガン聴いてるわけじゃないですか。だからみんな、もっと好き勝手やればいいのにっていっつも思ってますね。もっと好き勝手やったほうがかっこいいものができるし。いまヤバくて、10年後もヤバイのが絶対いいっすね。そういう耳で自分は音楽を聴いてますね。自分がヤバイって思うものは、いまだけヤバイものじゃなくて、永遠にヤバイんです。

BEEF / MOSDEF (16FLIP REMIX)


OGRE YOU ASSHOLE、新作MV - ele-king

 この音、この言葉、なんて説明すればいいのだろう。10月15日に発売されるオウガ・ユー・アスホールの新作『ペーパークラフト』は傑作である。来週、ele-kingでもレヴュー2本載せるぞ。お楽しみに。
 思えば、僕は、この1年、このバンドのライヴを4本見ている。そのすべてにおいて、バンドは堂々としていた。僕は“見えないルール”を歌いながらロードバイクを飛ばす。30キロ・アヴェレージを目標に(あくまでも目標)、およそ3時間ほど、朝の清々しい空気のなかを走る。すれ違う女性がみんな美人に見える。そして朗報が……。
 『ペーパークラフト』の収録曲“ムダがないって素晴らしい”のMVが完成。出戸学が自ら監督・制作・撮影したクレイ・アニメ作品である。

本MVは、OGRE YOU ASSHOLEのオフィシャルwebトップ、〈Pヴァイン〉のYouTubeチャンネル、同日同時放送でバンドが運営するUstream番組「Record You Asshole」内にて公開される。

今回のミュージック・ヴィデオは、ヴォーカル/ギター担当でOGRE YOU ASSHOLEの中心人物である出戸学が自ら監督・制作・撮影・編集全てを手がけた、究極のセルフ・メイドとなっています。

今夏のレコーディング終了後に急遽発案され、約90日をかけて試行錯誤が繰り返された結果、ジュール・ヴェルヌやドイツ表現主義などのレトロSFムービーを彷彿させる、キッチュで不可思議な映像作品が完成しました。
遠い未来の異国のような、あるいは夢で見た風景のようなモノトーンのアナザー・ワールドで起こる様々に無益な事象が、ラテン・パーカッションとドラムスが産み出す反復ビートと重なって、ミニマルで謎めいた陶酔感を生み出しており、つい何度も再生したくなります。

アルバムのジャケットやアーティスト・フォトの細部に至るまで、全てバンドメンバー自らが企画・制作した「ペーパークラフト」からの初MVに相応しく、これまで何度かOGRE YOU ASSHOLEのMVを監督・指揮してきた出戸が、初めて自ら全てを手がけた意欲作です。

前々作「homely」、前作「100年後」から通底するテーマであった「居心地が良いが悲惨な場所」を、手作業の暖かみとミニチュアが持つ硬質感が融合したレトロ・フューチャーな映像で表現した、OGRE YOU ASSHOLEの最新MV「ムダがないって素晴らしい」を、ぜひともご覧ください。
(レーベル情報より)

PヴァインYoutubeチャンネル:
https://www.youtube.com/user/bluesinteractionsinc

Record You Asshole by OGRE YOU ASSHOLE:
https://ototoy.jp/feature/index.php/2012083000

official web:https://www.ogreyouasshole.com/
twitter:https://twitter.com/OYA_band
FB:https://www.facebook.com/ogreyouassholemusic

■OGRE YOU ASSHOLE 『ペーパークラフト』
発売日:2014/10/15
発売元:P-VINE RECORDS

収録曲:
1.他人の夢
2.見えないルール
3.いつかの旅行
4.ムダがないって素晴らしい
5.ちょっとの後悔
6.ペーパークラフト
7 誰もいない

<初回限定盤>
・完全初回限定生産
・特別ボックス仕様
・CD+エクスクルーシブ・セッションを収録したカセット・テープ付属(シリアル・ナンバー入りダウンロード・コード付き)
品番:PCD-18775
値段:¥3,330+税

<通常盤>
・1CD仕様
品番:PCD-18776
値段:¥2,550+税


■OGRE YOU ASSHOLE
ニューアルバム・リリースツアー “ペーパークラフト”

2014.12.13(土)  大阪  CLUB QUATTRO
2014.12.20(土)  山梨  CONVICTION
2014.12.21(日)  長野  ネオンホール
2014.12.27(土)  東京  LIQUIDROOM

2015.01.10(土)  札幌   KRAPS HALL
2015.01.16(金)  名古屋 CLUB QUATTRO
2015.01.17(土)  広島   4.14
2015.01.24(土)  新潟   CLUB RIVERST
2015.01.31(土)  鹿児島 SRホール
2015.02.01(日)  福岡   Drum Sun
2015.02.07(土)  仙台   HOOK
2015.02.08(日)  松本   ALECX (※ツアーファイナル)


アイタル・テックとパズルの世界へ! - ele-king

 東京で最先端なサウンドを最高な環境で体験できるパーティ、〈サウンドグラム〉。ディスタル、ループス・ハウント、そしてテセラなどなど、ユニークかつリリースのたびに注目を集める面々ばかりです。会場に持ち込まれるサウンドシステムもこのパーティの魅力のひとつで、低音で揺れるフロア、そこで聴くアンセムは一生記憶に残ることでしょう。4月のテセラ、最高でしたよ。
 今週末、サウンドグラムが大阪と東京で開催されます。今回は光が乱反射するようなエレクトロニカからフットワークまでを手掛けるアイタル・テックと、あらゆるベース・ミュージックを知りつくしているパズルが登場! 
 本当に何が新しいのかを現場で体感して考えてみませんか? 踊りまくりたい方も大歓迎です。今週末は〈サウンドグラム〉へ! 

■SOUNDGRAM TOKYO/OSAKA
ITAL TEK & PUZZLE Japan Tour

大阪公演
日時:10月11日(土) OPEN/START 22:00
会場:TRIANGLE
料金:ADV 2000yen+1D DOOR 2500yen+1D
出演:
Ryuei Kotoge (Daytripper Records), D.J.Fulltono (Booty Tune), CLOCK HAZARD TAKEOVER 3HOUR, CHELSEA JP (GRIME.JP), madmaid (irregular), utinaruteikoku (irregular), DISTEST, ZZZ, Saeki Seinosuke, KEITA KAWAKAMI, D.J.Kaoru Nakano, PPR aka Paperkraft, SHAKA­ITCHI, DJ AEONMALL, HSC, JaQwa, PortaL

東京公演
日時:10月12日(日曜祝日前) OPEN/START 23:00
会場:TOKYO GLAD & LOUNGE NEO
料金:ADV 3000yen DOOR 3500yen
出演:
Submerse (Project: Mooncircle, UK), 19­t Takeover (TECHNOMAN Utabi SKYFISH Cow'P Amjik), HABANERO POSSE, Mike Rhino (UK), D.J.Kuroki Kouichi VS Gonbuto, Chicago vs Detroit, D.J. APRIL, DJ DON, FRUITY, tesco suicide, Mismi, Nishikawacchi, JaQwa, PortaL HATEGRAPHICS (VJ), knzdp (VJ), XVIDEOS (VJ), GENOME (VJ), Shinjuku DUUSRAA (FOOD), zeroya (FOOD), Broad Axe Sound System (SOUNDSYSTEM)

*各公演にItal TekとPuzzeleは出演

ITAL TEK (Planet-Mu/Civil Music, UK)

イギリスのブライトンを拠点に活動する様々なジャンルをまたぐUKならではのエレクトロニックアーティスト。2007年にPlanet­MuのレーベルオーナーであるMike ParadinasがMyspaceにアップされていた楽曲を聴いて気に入ったのが始まりで「Blood Line EP」をリリース。翌年2008年には1stフルアルバム「cYCLiCAL」をリリース。IDMとDubstepの融合を見せたItal Tekならではの作品となった。2009年には自身のレーベルAtomic River Recordsを設立し、その後も順調に多くのリリースとライブ活動を行いジワジワとその名をイギリス国内から欧州へ、そして世界へと知らしめていく。2012年にリリースをした3rdアルバム「Nebula Dance」では自身の解釈世界観のフットワーク・サウンドで展開させ、多くのリスナーを驚かせた。2013年にはCivil Musicより3rdアルバムをアップデートさせたEPをリリース。同年のミニアルバムではフットワーク/ジャングル/エレクトロニカ/アンビエントと独自のスタイルを一歩前進させることなる。そして今年2014年にリリースされたCivil Musicからの2nd EPではよりディープでハイブリッドなサウンドとなり、デビューから現在までブレることの無い確固たるサウンドを披露し、Planet­Muの主要アーティストとして活動している。

PUZZLE (Leisure System, GER)

15年以上に及ぶDJと作曲の経験を持ち、現在はベルリンの世界的に有名なクラブ「Berghain」で行われている「Leisure System」のレジデントとして活動。またLeisure System Recordsの経営と並行して、世界最大級のクラブやSonar、Dimentiions、Arma 17、Redbull Music Academy、Nitsa等のフェスティバルでプレイしている。2012年にはObjektとAsiaツアーを行い、過去にはClark、Rustie、Jimmy Edgar、Machinedrum、Kuedo、Joy O、Blawanやその他多くのアーティストと同じステージで競演。 常に遊び心に富んだジャンルレスなMIXでフロアを狂喜に導く。


ele-king vol.14 - ele-king

 けっこう大変だったんです。AFXが新作を出すことは口外できない、作品がどんな内容だったのかも言ってはならない、そういう裏事情がありまして、本格的に原稿発注したり、作りをはじめたのが9月の半ば過ぎですから。それはもう……言い訳を並べたらキリがないです。お陰様でとても面白いインタヴューが取れました。リチャード・D・ジェイムスがよく喋ってくれました。家族からアリまで、ガンツから革命についてまで、非情に幅広い彼の回答が楽しめると思います。
 UKテクノの現在も特集です。『サイロ』とは、決して、天才が好き勝手に作った作品ではないと思います。時代のなかで生まれた作品です。
 アンディ・ストット、ダムダイク・ステア、アコード、インガ・コープランドのインタヴュー記事も掲載。ドローン/アンビエントからIDM/エレクトロニカの流れでも注目されるローン・イングリッシュには畠山地平が質問攻めです。「D.J.Furutono & D.J.April のシカゴ体験記」も見逃せませんね。貴重な現地レポート、写真も満載です。久しぶりにがっつりとポリティカルな小特集もやらせていただきました。こちらも是非注目して下さいね。

Contents

002 セーラーかんな子 写真=当山礼子
006 第1特集=エイフェックス・ツイン
008 RICHARD D. JAMES interview

032 忘却と神話 文=野田努
034 Selected DISCOGRAPHEX 1991―2007
040 Syro 2014 マンガ=西島大介
042 機材でぶっ飛ばせ 文=佐々木渉
044 AFX VS OPN 徹底比較!
046 COLD ── UKテクノの現在
048 ANDY STOTT&DEMDIKE STARE interview
055 コールド── 進化し続ける英国のハードコア連続体 文=飯島直樹
058 DISC GUIDE INTO COLD PART 1
063 AKKORD interview
068 DISC GUIDE INTO COLD PART 2
074 ACTRESS interview
078 COPELAND interview
084 タイトル未 写真=塩田正幸
092 LAWRENCE ENGLISH interview
096 MORE AMBIENT DRONE ALBUMS
097 第2特集=政治 NO POLITCS THANK YOU!
098 今、日本が向かっているところ 対談=ブレイディみか子×水越真紀
110 グローバル化に反転攻勢をかける力 文=五野井郁夫
113 スラム街はコンフリクト・ジャングル 対談=木津毅×三田格
119 すべてはひとつのレイヴの下に 文=マイク・スンダ
124 HYPER! ファッション アニメイション コミック 家電 TVドラマ
130 SK8TNGの原宿逍遥 PART 1
135 D.J.Furutono & D.J.April のシカゴ体験記
146 Regulars ブレイディみか子 水越真紀 山田蓉子 磯部涼
156 編集課二係 ジョン刑事


SUNS OF DUB JAPAN TOUR 2014 - ele-king

 ダブステッパーに限らず、ダブを愛するモノたるやオーガスタス・パブロの名前はマスト。家に最低3枚。これ常識。僕は、若い頃、パブロのライヴは2回とも行った。これ超自慢です。
 今週末、パブロの息子(お父上は1999年に亡くなられている)のアディス・パブロが来日します。名義は、SUNS OF DUB。西から東へ5都市でツアーを開催します。東京では、こだま和文さんが出演します。その低音で、台風なんか吹っ飛ばして。

<東京公演概要>

liquidroom presents
──PABLO & KODAMA──

オーガスタス・パブロ、そのダブの系譜を継ぎ、そして前進させる者たち

1973年のルーツ・ダブのクラシック中のクラシック『King Tubbys Meets Rockers Uptown』をはじめ、自身のメロディカ、そしてタビーによるミックスによってルーツ・ダブのスタイルを提示したオーガスタス・パブロ。自身のレーベル〈Rockers Internationl〉を中心に展開した、ストイックにラスタな、そのルーツ・スタイルは、1999年の没後も、ルーツ・ダブに限らず、さまざまなダ ブ/ベース・ミュージックに影響を与え続けている。その“系譜”を継ぐ”SUNS OF DUB、彼らがKATAにてライヴを行う。パブロの意志を引き継ぐメロディカ・マスター、ADDIS PABLOとセレクターのRAS JAMMYによるプロジェクト。〈Rockers Internationl〉を引き継ぎ、さらにはこれまでにディプロ率いるMajor LazerやToddla Tといった新世代のデジタル・ダンスホール系のアーティストとも共演するなど、現存のベース・ミュージックとの邂逅など、新たなスタイルの創出に余念がない。さらには、MUTE BEAT時代の名曲"Still Echo"にて、オーガスタス・パブロとの共演も果たし現在も日本のレゲエ・ダブ・シーンを牽引するトランペッター、こだま和文、そして“Apach”のカヴァー7インチをリリースしたばかりのトロンボーン奏者、KEN KEN率いるKEN2D SPECIAL、とダブを新たな解釈で突き進める、2アーティストのライヴも行われる。

featuring live
SUNS OF DUB(ROCKERS INTERNATIONAL)
 ADDIS PABLO(SON OF AUGUSTUS PABLO MELODICA MASTER)
 RAS JAMMY(ROCKERS INTERNATIONAL SELECTA)
feat. JAH BAMI
こだま和文 from DUB STATION
KEN2D SPECIAL(Reality Bites Recordings)

dj
Q a.k.a. INSIDEMAN(GRASSROOTS)
Yabby
SEIJI BIGBIRD/LITTLE TEMPO

2014.10.13 monday/holiday
KATA + Time Out Cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]
open/start 16:00 close 21:00
adv.(9.13(sat) on sale!!)* 2,000yen door 2,500yen
*PIA[P code 243-948]、LAWSON[L code 74932]、e+、DISK UNION(取扱店選定中)、Lighthouse Records、LOS APSON?、LIQUIDROOM

info LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net/

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▼SUNS OF DUB(ROCKERS INTERNATIONAL, Kingston, Jamaica)
ADDIS PABLO[Melodica], RAS JAMMY[Selecta]

ジャマイカの若獅子、アディス・パブロは99年に44歳の若さで亡くなったルーツ・ロック・レゲエ/ダブ・プロデューサー、メロディカ奏者の父、オーガスタス・パブロのスピリチュアルな音楽を21世紀に継承、発展させる新世代アーティストである。89年生まれのアディスはニュージャージーとジャマイカを行き来して過ごし、キーボードとメロディカを習得。2005年にはオーガスタス・パブロの追悼公演でステージに立ち、ロッカーズ・インターナショナルのヴェテラン・ミュージシャンや伝説的ギタリスト、アール・チナ・スミスと共演、これを機にソロ奏者としてダブ・レゲエの作曲を開始する。10年、アディスはトリニダードからジャマイカにやって来たラス・ジャミーと意気投合し、"サンズ・オブ・ダブ"として伝統的なロッカーズ・サウンドをニューエイジのフォーマットによるダブ・レゲエで提示するべく活動を共にする。11~12年の"For The Love Of Jah"、"13 Months in Zion"以降、100作以上をデジタル・リリース、またメジャー・レイザーのウォルシー・ファイアー、クロニックス、プロトジェイ、クライヴ・チン、マイキー・ジェネラル等、幅広いコラボレーションを展開している。13年には初のヴァイナル・レコード"Selassie Souljahz In Dub"を発表、ヨーロッパ・ツアーを成功させ、英BBCのデヴィッド・ロディガンの番組では「キング・タビー、オーガスタス・パブロ以来のベスト・ダブ・レコードの1枚」と評される。14年にはオランダのJahsolidrockからアディス・パブロ名義の1stアルバム『IN MY FATHERS HOUSE』がリリースされ、北米、ヨーロッパ各国のフェスティヴァル出演で賞賛を浴びている。サンズ・オブ・ダブはダブのニューウェイヴ、ドラム&ベース、ダブステップ、トラップ、ハウス等のクラブミュージックとの触媒として貢献する、ロッカーズ・インターナショナルの新世代である。
https://sunsofdub.com/
https://soundcloud.com/sunsofdub
https://www.facebook.com/sunsofdub
https://www.facebook.com/sunsofdub

▼こだま和文 from DUB STATION

1981年、ライブでダブを演奏する日本初のダブバンド「MUTE BEAT」結成。通算7枚のアルバムを発表。1990年からソロ活動を始める。ファースト・ソロアルバム「QUIET REGGAE」から2003年発表の「A SILENT PRAYER」まで、映画音楽やベスト盤を含め通算8枚のアルバムを発表。2005年にはKODAMA AND THE DUB STATION BANDとして 「IN THE STUDIO 」、2006年には「MORE」を発表している。プロデューサーとしての活動では、FISHMANSの1stアルバム「チャッピー・ドント・クライ」等で知られる。また、DJ KRUSH、UA、EGO-WRAPPIN’、LEE PERRY、RICO RODRIGUES等、国内外のアーティストとの共演、共作曲も多い。現在、ターン・テーブルDJをバックにした、ヒップホップ・サウンドシステム型のライブを中心に活動してしている。また水彩画、版画など、絵を描くアーティストでもある。著述家としても「スティル エコー」(1993)、「ノート・その日その日」(1996)、「空をあおいで」(2010)「いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった」(2014)がある。

▼KEN2D SPECIAL(Reality Bites Recordings)
TRIAL PRODUCTIONのトロンボーン兼MCを務めるKEN KEN(トロンボーン&MC)によるソロDUBプロジェクトとしてスタート。現在はICHIHASHI DUBWISE(DUB mix)、Gulliver(guitar)の3人編成で活動中!BEASTIE BOYSからの影響を独自にREGGAE DUBにトランスフォーム!!!??したサウンドは、DUCK SOUP PRODUCTIONS、PART2STYLEから数々のアナログ7インチをリリースし、そのほとんどは即完売し入手困難なアイテム多数。2008年にはPART2STYLEから初のアルバム『Reality Bites』をリリースしイギリス国営放送BBCの番組など複数で紹介され、有名誌"WIRE"にレビューが載るなど注目を集めた。2013年自らのセルフ・レーベル<Reality Bites Recordings>を立ち上げ7枚目の7インチ・シングル「I Fought The Law」をリリース、あのDon LettsもBBCで即座にプレイ!前代未聞のド・オリジナル解釈で驚きのカバー曲を連発してるKEN2D SPECIALですが、今年2014年9月には8枚目の7インチEP、APACHEをリリース、こちらもまたKEN2D節炸裂してます!要チェック!!!!
https://m.facebook.com/profile.php?id=503540573038521&_rdr

▼Q a.k.a. INSIDEMAN(GRASSROOTS)
東京・東高円寺の桃源郷レゲエ・バーNATURAL MYSTIC育ち。レコードショップWAVEにてバイヤー経験の後に、NATURAL MYSTIC閉店後の97年同所にてGRASSROOTSをオープンする。「MUSIC LOVERS ONLY」を掲げ、バーであってバーでない、クラブであってクラブでない、人間交差点音楽酒場代表となる。INSIDEMAN名義でのMIX-CDは異才フィメール集団WAG.より『YGKG』、 POSSE KUTから『DEAR』、地下最重要レーベルBlack Smokerより『Back In The Dayz』などリリースしている。
https://insideman-q.blogspot.jp/
https://www.grassrootstribe.com/


 いまさら、というかここまで女児文化について書いてきて超そもそももいいところなのですが、「女の子」とはいったい何なのでしょうか。たとえば余裕のある「おじさん」はこんなことを言ったりします。「論理や社会にがんじがらめな僕たち男に比べて、感性のままに生きる女の子はすばらしい! 女の子はもともと自由な存在なんだから、勉強したり女性運動なんかしたりして窮屈な男の仲間入りすることはないんだよ」。一方、メディアに登場する「女の子」(たいていは成人女性ですが)たちも「私たち女の子はスイーツを食べてかわいいものに囲まれていれば幸せ。社会問題なんて難しいこと興味ないわ」とニコリ。そういえば、モダンガールの名付け親とされる北澤秀一は、大正時代に出版された雑誌『女性』で、こんなふうにモダンガールを定義していたのでした。

「〈モダーンガール〉は、いはゆる新しい女でもない。覚めたる女でもない。もちろん女権拡張論者でもなければ、いはんや婦人参政権論者でもない。」「私の云ふモダーン・ガールは自覚もなければ意識もない。」「彼らは唯だ人間として、欲するままに万事を振る舞ふだけである。」「モダーン・ガールは、少しも伝統的思想をもたない、何より自己を尊重する全く新しい女性である。」

 自我に目覚めて男性と同じ地位を得ようとする女性たちと対比させた上で、自我を持たない動物的で非社会的存在として「女の子」の自由さを称える思想は、どうやらフェミニズム思想の輸入および女性の社会進出・高学歴化(への反感)とセットで登場したものであるようです。

 こうした女の子像の政治的な正しさ問題はいったん措くとして、現実に本物の女の子・男の子を育てている親からすると、体感的に飲み込みかねるというのが正直なところではないでしょうか。なぜなら自由ということで言うなら、平均的にみて男児は女児よりもはるかに自由な存在であるからです。Twitter上で、男児のお母さんたちが「アホ男子母死亡カルタ」なるタグのもとに「ひとりが脱げばみんな脱ぐ」「アイス8本一気食い」などの男児のおバカでかわいいネタを寄せ合って盛り上がっていたのは、記憶に新しいところ。これらがお母さんたちの誇張でないことは、小学1年生の授業参観に参加してみればわかります。先生の言うことを従順に聞き、熱心に手を動かす女の子。そもそも大人しく座っちゃいない男の子。お勉強はできても挙手には慎重な女の子。積極的に挙手するも指されたら「わからない!」と堂々と宣言する男の子。その差は一目瞭然です。私が「長女がパンツ一丁で「ありのままで」を歌っている」という内容のぼやきツイートしたところ、すぐさま男児のお母さんからこんなリプライがかえってきました。「女の子はいいですね。パンツはいてくれるから」。

 現役「女の子」がいかにまじめか。それがわかる7歳の女の子のお手紙が今年初めにネットで話題になったので、ご紹介します。彼女がLEGO社宛に書いたお手紙を、お母さんがTwitterで画像アップしたものです。

「今日お店に行ったら、LEGO売り場はピンクの女の子ブースとブルーの男の子ブースにわかれていました。女の子のLEGOがすることといえば、おうちで座っていたり、ビーチに行ったり、お買い物したりするだけ。女の子には仕事がありません。男の子のLEGOは冒険に出たり、働いたり、人を救ったり、サメと泳いだりしてるのに。もっとたくさんの女の子の人形を作って、冒険を楽しませてあげてほしいんです。OK!?!」。

 日本のいち母親からすると、彼女がピンクのLEGOと呼んでいる女児向けの「LEGOフレンズ」シリーズは、女の子の興味を制限しないよう、相当な配慮が施されているように見えます。ラインナップの中には、科学実験をしている理系女子から手品女子、空手女子までユニークなものも。もちろんピンク、ラベンダー、水色といういまどきの女児の目をひきつけるカラーリング。わが家の長女も5歳の頃、科学実験を楽しむ少女をモチーフにした「サイエンススタジオ 3933」をLEGOショップで祖父にねだって買ってもらっています(往年のLEGOファンである父は「海賊セットのほうがかっこいいだろ……」と不服そうでしたが)。が、家の中ばかりと言われればたしかにそう。有職婦人率も少なめです。そこに気づくとは、目線が高いとしかいいようがありません。社会が期待している「女の子」像をまだ内面化していない幼い女の子たちは、そうした枠に縛られていないために、退役「女の子」たちよりもかえって社会参加への意識が強いのかもしれません。


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一部で「リケジョセット」と呼ばれる
「レゴ フレンズ サイエンススタジオ 3933」


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瓦割りもお部屋の中でするLEGOガール。
「レゴ フレンズ・カラテレッスン 41002」



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「Research Institute」

 このかわいくも勇ましい女の子の手紙が好意的に拡散されてから約半年後の8月、LEGO社は再び話題の的になりました。女性の化学者、天文学者、古生物学者をモチーフとした「Research Institute」セットを発売したのです。女の子の願いをさっそく叶えた同社に、人々は喝采を送りました。

 とはいえ実際にはこの新製品、ストックホルム在住の女性地球科学者Ellen Kooijman(※1)が「LEGO Ideas」に2012年に投稿し、ネット投票で10,000票を獲得したアイデアがようやく日の目をみたもの。2013年秋の審査では見送りになったアイデアが復活当選した背景には、女の子の手紙がバズったことも多少関係していたかもしれませんが……。実態はどうあれ、この新製品は女の子の手紙に応えたという文脈で多くのネット・メディアに紹介されました。宣伝効果は抜群だったことでしょう。つづいて開設された、イギリスの女性科学者が同製品を使って女性研究者の日常を再現するTwitterアカウント「@LegoAcademics」も話題になっています。

※1 Ellen Kooijmanはギークドラマ『Big Bang Theory』のフィギュア化も「LEGO Ideas」に投稿し、こちらも1万票を獲得して現在レヴュー中。同アイデアの製品化が実現したら、女性科学者フィギュアがまたまた増えることになりそうです。

 この連載でもたびたび取り上げてきたように、アメリカには「女の子はファッションとスイーツと家事のことだけを考えているおバカさんでいなさい」というジェンダー観に抗う「女の子」を応援する風土があるように見えます。自由の国ってうらやましいですね。それにひきかえウチら日本は……とついついスネたくなるところですが、そういえばかの国の「男の子」はどうなのでしょうか。「海賊ごっこをしろだって!? 男だからって盗んだり闘ったりなんてごめんだね。僕らだってカフェでスイーツ食べて、ショッピングして、ビーチで遊んで、かわいいものに囲まれて過ごすようなLEGOで遊びたいんだ!」、あるいは「男の子用のおままごとセットを作って!」といった主張があってもよさそうなものです。しかし、ミシガン州の教育研究機関のコンサルタントMichelle Gravesによれば、おままごとコーナーで遊んだ男児は、そのことを大人に隠す傾向があるとのこと。ソースは失念してしまいましたが、子どもしかいない部屋ならおままごとで遊ぶ小さな男児も、部屋に父親が入ってくるとやめてしまうという調査も見たことがあります。小さな男の子は、いったいなににおびえているのでしょうか。

 2013年放送の『セサミストリート』のとあるエピソードが、「男らしさの概念への攻撃である!!」「性役割の否定だ!!」「セクシャリティとジェンダーに対する破滅的な教えだ!!!」などとキリスト教保守派から厳しく批判されたことがありました。その神をも恐れぬセンセーショナルなストーリーとは……妹といっしょにお人形で遊んでいたクマのお兄さんが、ブルドーザーの玩具を持った男友だちが遊びにきたときに恥ずかしがって人形は妹のものだと言ってしまう。そんな兄に、ゴードンは男の子向け・女の子向けという区分に理由はないし、男の子がお人形で遊ぶことは将来お父さんになるためのレッスンになるんだよ、と説明する……えっそれだけ? 2014年1月には、11歳男子がかわいい馬のアニメ『マイリトルポニー』が好きだともらしたことから学校でいじめにあい、自室の2段ベッドで首つり自殺を図って意識不明の重体に陥る事件が起きました。彼は自殺を図る前、母親に「ママ、僕はもう疲れたよ。みんなが僕を「ゲイ」「キモイ」「うすのろ」って言うんだ」と語っていたそうです。『マイリトルポニー』のバックパックで学校に通ったことから「自殺しろ」などと言われるいじめに遭って登校できなくなったノースカロライナ州に住む9歳の男の子は、学校側から『マイリトルポニー』バッグ禁止令を出されてしまいました(この処分に納得できなかった少年の母親がFacebook上でキャンペーンを行ったことが有名メディアに取り上げられた後、学校側は『マイリトルポニー』禁止令を解いています)。こうしてみると、女の子的な「カワイイ」界に男の子が足を踏み入れることについては差別が激しく、小さい男の子自身が社会に向けて訴えられるほどの自尊心を築くのは難しそうだという印象を受けます。

 欧米に比べて母性原理が強いとされ、育児が母子密着型になりやすい日本では、少なくとも少年期にこれほどの男らしさプレッシャーはないように思えます。ママはかわいい男の子が大好きですし、かわいい趣味に理解がある女性的な見た目の少年なんて、ファンクラブができかねません。でも日本においても「自由でおバカでかわいい男の子」を満喫できる時期は、そう長くはないでしょう。女性が家事育児に囲い込まれて排除される社会は、必然的に男社会にならざるをえず、そこに投げ込まれたら最後、「かわいい僕」とは訣別しなければなりません。競って、勝って、他人を従え、見目麗しく育ちのよい「女の子」をゲットして勝ち組となるレースに参加しなければならないのですから。その厳しさは女性の社会参加率が低いぶん、かえって他国よりも苛烈かもしれません。たとえば動物園などに行くと、小さな男の子が「カワイイね~」と動物を愛でている様子をよく目にしますが、ある程度大きくなると「女の子」への性的評価以外で「カワイイ~」なんて口にしなくなります。そして「カワイイ」は、口にするのもその対象となるのも、「女の子」の専売特許になってしまうのです。私には、「女の子(少女)とは……」と熱を込めて語る日本のおじさんたちが、「かつてお母さんに愛されていた、自由でおバカでかわいい男の子だった自分」を語っているように思えてなりません。

 かわいくあることが許されない男性。子どもの頃と変わらぬ生真面目さで社会が求める「自由でおバカでかわいい女の子」を演じる女性。なんだか息苦しいですね。でも、こうした息苦しさも徐々に変わっていくのかもしれません。というのは、“ポケモン”を凌駕する勢いで現代の男児のハートをとらえているアニメ『妖怪ウォッチ』を子どもたちとしばらくいっしょに見ての感想。こちらの男児アニメに対する先入観、ひいては男児に対する先入観をことごとく覆す内容なのです。どういう内容かというと……いいかげん話が長くなりすぎてなんらかの妖怪に取り憑かれそうなので、この話はまたいずれ。

■いま、早期アクセスが熱い

 みなさんこんにちは、NaBaBaです。今回はいままでと趣旨を少し変えて、最近インディーズ・ゲーム界で流行っている「早期アクセス」という販売形態についての雑感と、それに関連した作品をいくつかご紹介したいと思います。

 この連載で幾度となく言及してきたインディーズ・ゲームですが、その規模は年々大きくなるとともにいろいろな問題が起きてきています。その最たる、かつ普遍的なもののひとつがお金でしょう。デジタル販売が普及し独立系の開発スタジオが自力で販売できる時代になったとはいえ、開発のための予算を確保しペイするのは依然困難なものです。むしろインディーズの裾野が広がっているからこそ、販売形態にも多様性が求められています。

 こうした中で今年に入って急進してきた新たな販売形態が、冒頭で挙げた早期アクセスです。これは開発途中のゲームを先行販売し、そこで得た資金を元手にして開発を継続していくスタイル。
 開発側からすると、はじめから十分な資金を持っていなくても販売と開発の継続ができるチャンスがあり、また開発途中の物を多数のユーザーに触ってもらうことで、実質的なテストができることが主なメリットとなります。

 当然開発途中なので必要な機能が実装されていなかったり、バグが含まれていたりということもあり得ますが、ユーザーもその点を承諾し、一方で完成版よりも割安で購入できたり、バグの報告や新機能の要望等といった形で開発に間接的に関われるというのが購入する側のメリットだと言えるでしょう。

現在Steamでは約270ものタイトルが早期アクセスとして販売されている。
現在Steamでは約270ものタイトルが早期アクセスとして販売されている。

 この早期アクセスが急進してきた背景としては、上記のメリットの他に、クラウドファウンディングの衰退の影響も大きいと言えます。Kickstarterをはじめとしたクラウドファウンディングは、昨年まではインディーズ・ゲーム開発のフロンティアとされてきました。しかしこの方法による資金調達の成功率は非常に低く、有名な開発者が参加していたり、すでに有名な企画だったりという知名度が物を言い、純粋な企画力だけではなかなか成功に繋がらないのが現状。また度重なるプロジェクトの中止等、支援者側からの信頼も低下してきています。

 事実、2014年上半期のゲーム・カテゴリの資金調達額が、昨年の半分以下となったという調査報告が出てきており、クラウドファウンディングのバブルは弾けたというか、多くのスタジオにとってはもはやチャンスを掴める場所ではなくなってきているんですね。

 
ICO Partnersの報告によると、今年上半期のKickstarterのゲーム・カテゴリにおける資金調達額は13,511,740ドルと、下半期を同額と想定しても昨年通期の57,934,417ドルの半分以下にまで下回った。

■早期アクセスとMOD文化の類似点

 早期アクセスが普及したもう一つの主因として、スター的作品の存在にも言及せずにはいられません。インディーズ勃興期にも、またはクラウドファウンディングが登場したときにも、その普及を牽引するスター的作品が存在しました。早期アクセスの場合は『Minecraft』と『Day Z』の2タイトルを挙げることができるでしょう。

 『Minecraft』は言わずと知れたクラフトゲームの始祖であり、今日のインディーズ・ゲーム文化そのものを代表する名作ですが、本作がリリース初期にとっていた、開発途中のものを割安で販売し以後無償でアップデートを繰り返していくというスタイルは、早期アクセスの販売方法のモデルの一つとなっています。

 もう一方の『Day Z』は、もともとは『ARMA II』というゲームのMODとして展開されてきたゾンビ・サヴァイヴァル・ゲームですが、昨年末スタンドアローン版が早期アクセスでリリースされて大ヒットを飛ばし、実質的な早期アクセス・ブームの火付け役となりました。

『Day Z』より。本作と『Minecraft』はゲームデザインから販売形態まで後続のインディーズ・ゲームに多大な影響を与えつづけている。
『Day Z』より。本作と『Minecraft』はゲームデザインから販売形態まで後続のインディーズ・ゲームに多大な影響を与えつづけている。

 さて、以上のように早期アクセスは概念的には『Minecraft』、より実際的な販売形態としてのブームを作ったのは『Day Z』にあると述べましたが、より深い部分にある考え方というか文化的な性質というのは、ずっと前の時代の「MOD」文化から引き継がれているものだと個人的に感じています。

 MODというのは、既存のゲームを「Modification」する、つまり改造し、そのデータをネットで無償で広く公開・共有することを指します。さかのぼるとFPS黎明期である『DOOM』や『Quake』の時代から存在しており、かつてPCゲームを語る上で欠かすことのできない重要な文化でした。

当時のMODの一例。『Shadow Warrior』改め『Sylia Warrior』。98年の作。テクスチャが無秩序に『バブルガムクライシス』のイラストに差し替えられる暴挙。こんな光景当時は日常茶飯事だった。
当時のMODの一例。『Shadow Warrior』改め『Sylia Warrior』。98年の作。テクスチャが無秩序に『バブルガムクライシス』のイラストに差し替えられる暴挙。こんな光景当時は日常茶飯事だった。

 一見して著作権等々の法的問題に触れそうなこのMODですが、改造元のゲームの販売を促進させるということでメーカーも容認する姿勢が一般的で、MOD文化全盛期にはむしろ改造のためのエディターをメーカーが直々にゲームに同梱するのも珍しいことではなかったのです。

 そのMODの内容は多岐にわたり、元のゲームにちょっとした機能を追加するものから、キャラクター・モデルやテクスチャの差し替え、ほぼ完全な別の作品に作り変えてしまう物までじつにさまざま。ほぼ完全な作り変えは「Total Conversion」と呼ぶこともあり、その代表的な作品が『Half-Life』のMODである『Counter-Strike』でしょう。

 ただし『Counter-Strike』という商品化された例があるとは言え、それは特殊なこと。MODは基本的に素人のユーザーが作ったものですからクオリティは玉石混淆、メーカーの保障も受けられない、完全に自己責任で楽しむものでした。Total Conversionについてはいきなり完成版がリリースされることは稀で、大抵少しずつアップデートされていくのを見守るのも楽しみの一つだったのです。

『Counter-Strike』も完成形である『1.6』に至るまで度重なるアップデートを重ねてきた。画像は後年のリメイク作の一つである『Counter-Strike: Source』。
『Counter-Strike』も完成形である『1.6』に至るまで度重なるアップデートを重ねてきた。画像は後年のリメイク作の一つである『Counter-Strike: Source』。

 現代のMOD事情はというと、ゲーム開発がきわめて高度かつ大規模なものになってきたにつれ、素人が手出しできるものではなくなり、かつての勢いはすっかり失われてしまったのが実情です。『The Elder Scroll: Skyrim』等の一部のMODフレンドリーな作品を除くと、現在発売されるゲームでMOD前提とした姿勢は見られなくなって久しいですし、Total Conversionのような大規模なものが話題に上がることも滅多にありません。

 しかしMODにとって代わって興隆してきたのがインディーズ・ゲームです。かつてのゲームに同梱されていたエディターの役目はUnityやUnreal Development Kit等の安価で安定したサポートが得られるゲームエンジンに変わり、既存のゲームを改造するのではなく、1からオリジナルのゲームを作っていくことに軸足が移ってきたのです。

 こうして振り返ってみると、インディーズ文化の先端にある早期アクセスも、単に目新しいだけでなく、かつてのMODやTotal Conversionという文化の土壌があるからこそ生まれてきた、しっかり文脈を踏まえたものだと感じられるのです。またそう考えるとMODからはじまった『Day Z』は、MODとインディーズ、Total Conversionと早期アクセスといった古今を繋ぐ象徴的な作品であるとも捉えられますね。

■お金を取るという事の難しさと責任の重大さ

 しかしながらMODとインディーズには金銭的やり取りの有無に決定的なちがいがあり、これが現在のインディーズ業界にまつわる諸々の問題を引き起こしています。たとえば早期アクセスの場合、開発側とユーザーの認識のギャップが問題になっています。簡単に言えば開発側が公約していた内容、あるいはユーザーが求めている内容と、実際のゲームの内容がちがうということが往々にして起こり得るんですね。

 MODにもそういったことはよくありましたが、MODは商品化でもされないかぎり基本的に無償であり、どこまでいっても所詮は趣味の産物、当然ユーザー側も何が起きようが自己責任だという大前提を暗黙の内に共有していました。

 しかしインディーズは逆に、どんな糞味噌な内容であってもお金を取っている以上は開発側に相応の責任が発生するし、ユーザーもそれを追及する権利を有するという考え方になります。すると開発中であるという前提をすっ飛ばしてユーザー・コミュニティが炎上、ゲームはブランド・イメージを不当に損なうという問題が起きてしまう。

 また開発中止のリスクがつねに伴っているという問題もあり、ひどい場合だと返金処理どころかまともな説明もなくスタジオがばっくれてしまうことも。実際Steamで早期アクセスとして販売されていた『The Stomping Land』の例では、開発半ばでスタジオからの連絡が途絶えそのまま販売停止に至るという事件にまで発展しています。

『The Stomping Land』より。5月30日のアップデートを最後にスタジオは音信不通になっている。
『The Stomping Land』より。5月30日のアップデートを最後にスタジオは音信不通になっている。

 こうした問題を受けて現在Steamでは早期アクセス・ゲームのストアページやFAQで、早期アクセスゲームが開発途中のものであり、最悪の場合は開発中止もあり得るという点を明記するようになりました。しかしながらこれは開発側とユーザーとの信頼の問題でもあり、いくらリスクを明記しても問題が多発するようであれば、ユーザーは関わりを避けるようになるし、健全な開発スタジオにとってもメリットがなくなってしまいます。

 それこそKickstarterにおいてこの数年でさまざまな問題が発生し、クラウドファウンディングの可能性と限界が周知された結果としてそのバブルが弾けたように、早期アクセスも未知数ゆえの評価待ちの状態であり、数年後も安定した販売方法として定着しているかどうかは怪しいところです。

 個人的な見解を述べれば、早期アクセスが数年後もいまの形態のまま存続している可能性は低いと見ています。なぜなぜならゲーム開発とは予定通りいかないものであり、予算も期間も足が出ることは現代の大手のゲーム開発においてでさえ当たり前のことなのです。しかし早期アクセスは将来の完成の可能性を担保に資金を募っている面があるわけですから、これはじつに危ない橋を渡っているものだと感じています。

 しかもベータ版等、ゲームとして必要な機能がすべて実装されている状態ならまだしも、アルファ版やそれ未満の状態で販売しているゲームも多い。ということはそれだけ今後の開発で未知数な部分や問題が起きる危険性が高いのです。しかも開発中のゲームをそういう状態で販売しなければいけないということは、それだけスタジオに余裕がないということの表れでもある。

 早期アクセスが流行りはじめてまだ一年も経っていないので問題も顕在化されていませんが、これから先、募った資金が足りなくなったとか、公約していた機能を実装できない等の問題が間違いなく頻発することが懸念されます。最悪クラウドファウンディングと同じ道をたどり、最終的に信頼も知名度も資金も余裕のあるスタジオにしかうま味がない、何も元手が無い弱小デベロッパーの救いにはならない販売形態になってしまうのではないか、という点を大変危惧しています。

■早期アクセスのその先は?

 より多くの開発者にチャンスを与える。これがインディーズ・ゲーム業界でつねに問われている課題であり、それに応えつづけてきたからこそ、現代の興隆があると思っています。クラウドファウンディングや早期アクセスもそうした試みの一部であり、成功した面もあれば失敗した面もあります。では早期アクセスの次には何が来るのか? その点についても少しご紹介したいと思います。

 インディーズのスタジオにとって資金と同じく問題になるのがプロモーションです。せっかくよい物を作っても十分な宣伝がなされなければ売れるものも売れない。早期アクセスが流行った要因の一つには、じつのところ、とりあえず発売すればSteamのトップページに掲載されるというプロモーション面での理由もありました。こうしたことからもわかる通り、近年ますますたくさんのゲームが発売されひしめき合う中で、いかに目立つかというのは大変重要な課題になっているのです。

 こうした問題に一石を投じる形で最近Steamに登場したのが、「Steam Discovery」および「Steam Curators」という新機能です。この両者はともに多数のゲーム・ラインナップの中からユーザーに適切な商品を紹介することを目的としています。

 Steam Discoveryは個々のユーザーが購入し遊んだゲームをもとに自動生成される商品紹介ページで、これまでの画一的な商品紹介ページでは取りこぼしていた作品の情報をユーザーに届けられるようになることが期待されています。

 もう一方の Steam Curatorsは逆に有人による商品の紹介機能で、キュレーターである個人、あるいは組織が商品を推薦することで、購入の一助にしようというものです。贔屓にしたいキュレーターを登録すれば、先程のSteam Discoveryで生成された商品紹介ページに、キュレーター推薦の商品も掲載されます。

ちなみに僕は『Rock, Paper, Shotgun』を特別贔屓にしている。本来はゲーム専門ニュースサイト(https://www.rockpapershotgun.com/)で、マイナーながら良質なゲームの発掘に定評がある。
ちなみに僕は『Rock, Paper, Shotgun』を特別贔屓にしている。本来はゲーム専門ニュースサイト(https://www.rockpapershotgun.com/)で、マイナーながら良質なゲームの発掘に定評がある。

 これらの新機能はいずれも実装されたばかりなので効果的かどうかの判断はできませんが、こうした試み自体は評価できますし、また引きつづき行われなければいけません。インディーズ・ゲーム業界が今日の形を成しているのは、作っていくため、売っていくための試行錯誤が続けられたからであり、その結果としてマネタイズとクリエイティヴィティを両立しながら市場を拡大してきたことは財産であると誇ってもいいものです。

 そして早期アクセスとMODの繋がりが示すように、今日の試行錯誤や新しい試みの中にも、文化的な土台としての過去をしっかり引き継いでいることに、根底の部分での力強さを感じています。今後もさまざまな問題が起きるでしょうが、それらを乗り越えインディーズ・ゲーム業界をさらに発展させていってほしいと思っています。

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 ここから先は早期アクセスの作品を具体的にいくつか紹介していきたいと思います。ただしどれも開発中のものですから、ここでの評価は最終的なものではないことを念頭に入れてください。

Broforce

 

 開発はFree Lives、パブリッシャーは一癖も二癖もあるゲームの販売でお馴染みのDevolver Digitalによる作品。往年のアクション映画のヒーローたちを堂々とパロディしたキャラクターが大暴れする、肉密度1000%、木曜洋画劇場的なアクション・ゲームです。

 パッと見、『魂斗羅』や『メタルスラッグ』等の純粋な戦場アクションかと思いきや、地形を崩して回り込んだり敵の足場を無くしたりといったパズル的側面もあります。プレイヤーが操作する兄貴たちはどれも強力な火力を持っていますが、敵の攻撃一撃で倒れてしまうため、強力な攻撃をぶっ放しつつ、それによって削れていく地形をも利用し、いかに敵の射線に入らないかを考える、アクションと戦略性をあわせ持ったゲームと言えます。

 とは言えそこまでタイトではなく、そればかりか実際はかなり大雑把なゲーム・バランス。地形は半ば制御不能なくらい削れていくこともあるし、操作する兄貴たちは毎回ランダムで決まる上に性能差が激しくて、使えない兄貴ではクリアはままならない。ただどうせすぐ死ぬし、そしたらまた別の兄貴を操作することになるからいずれクリアできるっしょ? みたいなノリ。同じDevolver Digital販売で、タイトなアクションと戦略性が高いレベルで融合していた『Hotline Miami』とは比べるべくもないアバウトさです。

 しかしながら、本作はそれがいいのではないかとも思います。現在Beta版でゲームとしての根幹部分は大分でき上がっていると思います。一方でいまなお新しい兄貴たちを次々と実装しようとしているところからもわかるように、本作は磨き上げられたゲーム・バランスを味わうものではなく、次々と登場する新たな兄貴にワクワクしながらその場その場の爆発を楽しむ、ファストフード的な楽しみ方のゲームなんだと思います。

 ちなみに法的に大丈夫なのかと心配になるくらいあけすけなパロディをしている本作ですが、なんと本家本元の筋肉映画『Expendables 3』との公式コラボが決定、その名も『Expendabros』という兄弟作をリリースするに至っています。世の中どう転ぶかわからないですね。


『Expendabros』より。ヘタにプロモーション用ゲームを委託開発するより、よっぽどできがいいし話題性もある。

■Dream

 

 Hyperslothが開発、Mastertronicが販売の、題名通り夢を題材にした作品。古くは『Myst』等に代表される、雰囲気系、探索パズル系のゲームですね。開発は順調そうで、月1からそれ以上のペースでアップデートされているので、その点についての心配はなさそうです。

 僕はこの手のゲームが好きなのでそれなりに遊び込んできたつもりですが、しかし本作は残念ながらピンときませんでした。まず第一にヴィジュアルのセンスがない。雰囲気系のゲームはその世界に引き込むヴィジュアルのインパクトが必要ですが、美しさと超現実性、どちらにおいても突出したものを感じない。変化も乏しく、長時間変わり映えのしない空間を歩きつづけさせられることが多く苦痛です。

 またパズル性についても一定のエリアを何度も行き来して解くタイプのものが多く、難易度も高いため個人的にはとてもテンポが悪く感じる。これに変わり映えのしない見た目が加わると、退屈で面倒くさくて、とてもじゃありませんが夢の中を彷徨っているような幻想的な感覚は味わえません。

 夢の中を彷徨っているような体験ということであれば、他に『Kairo』や『NaissanceE』、『Mind: Path to Thalamus』等の作品があり、どれも『Dream』より出来がいいのでそれらを僕はお薦めします。とくに『Kairo』と『NaissanceE』はシンプルなジオメトリで構成された空間が抽象的かつ幻想的で、夢の捉えどころのない感じが具現化されているようで好きですね。

『NaissanceE』より。グレー1色の世界だが巨大構造物の数々はSF的でもあり、こちらのほうがはるかに夢っぽい。
『NaissanceE』より。グレー1色の世界だが巨大構造物の数々はSF的でもあり、こちらのほうがはるかに夢っぽい。

■The Forest

 

 Endnight Gamesが開発・販売を手掛けるオープンワールド・サヴァイヴァル・ゲームで、早期アクセスの中でも人気の高い作品です。ベースは『Minecraft』が発明したクラフト&サヴァイヴァルのシステムを踏襲しつつ、敵の襲撃を想定した拠点や罠の作成、体調管理等といったサヴァイヴァルの側面がより強化されています。

 昼夜を問わず敵である原住民が襲ってくるため難易度は高い。最初の頃、僕はスタート地点である飛行機墜落現場付近に拠点を作っていたものの、すぐ敵に見つかっては殺されるを繰り返してまったく楽しめませんでした。

 しかし敵にも巡回ルートがあるようで、海岸沿いの崖下の僅かな平地に拠点を作成。さらに敵に見つかっても逃げ込めるように各地に臨時避難所を用意することで、ゲームを軌道に乗せることができました。

 以上のように説明不足で大変とっつき難い面があるものの、ゲームの法則を試行錯誤で学習していくおもしろさがあり、一度軌道に乗れば『Minecraft』譲りのエンドレスなクラフト&サヴァイヴァルの世界が開けています。

 現状、ヴァージョンはまだ0.07のアルファ段階で、未実装の要素もあれば挙動も安定していません。ただ基本的な部分のおもしろさは十分実感できるし、グラフィックスもインディーズにしてはよくできているほうなので、今後の開発でしっかり肉付けしていけば、よい作品になる予感がします。

 ただ僕は個人的にはエンドレスなゲームって好みではないし、その方向性であれば『Minecraft』が最強なので、本作には何らかの大局的な目標を用意してほしいところ。ゲームのオープニングで主人公の息子が原住民にさらわれる場面があり、その後とくに説明がないのですが、そのへんの背景設定をゲームの大局的な目標に組み込んでくれることを期待したいです。

■Invisible, Inc.

 

 Klei Entertainmentが開発・販売のステルスゲーム。ここのスタジオはゲームのできに定評がある上、前作の『Dont't Starve』も早期アクセスで販売し完成させた実績があるので、信頼度は申し分ありません。

 本作の最大の特徴はターン性のステルスゲームということで、いままでありそうでなかったタイプです。ターンごとにアクション・ポイントの範囲内で行動をとる、という点を除けば基本的なルールはステルスゲームを踏襲しています。つまり敵に見つからず、監視網を掻い潜ってアイテムを収集し、速やかに離脱する。

 しかしながら非常に難易度が高く、自キャラは敵に見つかったらほぼ死亡確定で、対抗手段もほとんどないのでゴリ押しはまったく利きません。しかも一定ターンごとに警戒レベルが上がり敵勢力が強化されていくため、無駄のない行動と、ときには引き際をわきまえないと、あっという間に包囲網ができ上がり詰んでしまいます。さらにステージはランダム生成なので決まりきった攻略法もない。

 そういうわけでターン性を活かして個々のターン内ではじっくり戦略を練られるものの、大局的には時間制限を意識して行動しなければいけない点が、従来のリアルタイムのステルスゲームの、瞬間的なアクションは問われるものの大局的には牛歩戦術が利く性質とは真逆なのがおもしろいですね。

 しかしそれにしても難しい。自キャラが複数いる内は各ステージはツーマンセルで挑むことになりますが、いまだに2人とも生還してクリアできたことがない。アイテムの購入やレベルアップで自キャラも強化させていけますが、そうした軌道に乗せるためにまずはゲームオーバーになりまくってコツを掴まなければいけません。そのあたりを良しとできるかどうかが好みの分かれどころでしょう。

 現状ランダム生成とはいえステージのヴァリエーションは少ないし、アイテムやレベルアップ時のアンロック要素も十分ではありません。ただ基本部分は大変しっかりしているので、あとは要素を増やしていけばいいという点では、今後の開発も安心して見守れる気がします。

■The Long Dark

 

 Hinterland Studioが開発と販売を手掛けるオープンワールド・サヴァイヴァル・ゲーム。『Minecraft』や『Day Z』のサヴァイヴァル要素のみを抽出・深化させたような作品ですが、ゾンビとか原住民だとかいったフィクション要素はいっさい出てきません。かわりにプレイヤーが立ち向かうのはカナダの豪雪地帯という、厳しい自然環境そのものです。

 サヴァイヴァルに特化しているだけあって、管理しなければいけない自キャラのパラメータは疲労、冷え、飢え、渇き等にわたり、さらに怪我だ病気だといった状態異常にも気をつけなければいけません。

 これらを満たすためにつねに探索しつづけ、食料や衣服、燃料を集めつづけなければいけませんが、これまたとても難易度が高い。極寒の地での活動はそれだけで体力を奪いますが、何もしなくてもパラメータは低下していく。かといって探索したところで物資が見つかる保証も、いざ吹雪いてきたときに非難する場所がすぐそばにある保証もない。

 そんな状況だから、体調が万全なのはゲームを開始したときだけで、以降はつねに何らかの体調不良に悩まされることになります。この問題を抱えたままプレイしつづける感覚は、初代『Half-Life』の、HPがつねに半分前後になりがちなゲーム・バランスに通じるものがあります。

 ただ本作は半分どころか油断していればすぐ詰んでしまいます。といっても即死するわけではなく、何も打つ手がなくなってしまったが後2日くらいは生きられる体力が残っているので、その間ゆっくり衰弱していく、っていう流れになるのがじつに生々しい。

 現状アルファ版でストーリーモードはまだ実装されておらず、純粋なサヴァイヴァルに挑むサンドボックスモードのみを遊んだ上での感想ですが、それでも本作のエッセンスは十分に感じ取ることができました。基本的な操作感は大変しっかりしているし、難易度は高いものの徹底してリアルなサヴァイヴァル・シミュレーターに徹したゲーム・デザインも渋くて好みです。グラフィックスもシンプルだけど自然の険しさと美しさの両面を感じさせてくれます。

 要望としては、現状ではインベントリが文字だけなので、画像を交えて直感的な仕様にしてもらいたい。ただ不満点はそれくらいで、これから先肉付けしていけばかなりいい作品になりそう。今回ご紹介したゲームの中では、個人的には本作がいちばん期待値が高いです。後々実装されるというストーリーモードにも大いに期待したいと思います。

■World of Diving

 

 Vertigo Gamesが開発と販売を行うダイビング・シミュレーターです。海に潜って数々の魚の写真を撮ったり、埋蔵物を収集したりといったことが主な遊びになります。

 最初は海中の美しさにワクワクさせられますが、所詮は作り物。景観のヴァリエーションがなく、もしくは海中なので出しようがないのかもしれませんが、とにかくすぐ飽きてきてしまい、何か遊びはないかと考えるのですが、上記の2種類しかやることがないのでたまりません。

 埋蔵物の収集でゲーム内通貨を貯め、ダイバースーツ等の装備を買い揃えることもできますが、それがゲーム自体のおもしろさに繋がるわけでもなし。いちおうダイビングの諸要素を再現はしているのかもしれませんが、ゲームとしてはただただ退屈なものでしかありません。

 類似した作品はどうなんだろうということで、『Depth Hunter 2』という作品も遊んでみました。開発中のものと完成品を比較するのもフェアではないのですが、『Depth Hunter 2』のほうがグラフィックスは若干綺麗だし、泳いでいる魚の種類も多い。また写真撮影や埋蔵物収集の他にも、スピアガンを使っての魚のシューティング要素もあります。

『Depth Hunter 2』より。見た目が似ていますが別作品です。
『Depth Hunter 2』より。見た目が似ていますが別作品です。

 ただこちらも五十歩百歩という感じで、ゲームとしておもしろいかどうかというと大いに疑問。どちらも実際のダイビングの再現に気を取られていて、ゲームとしてのおもしろさが蔑ろにされている気がします。

 では、ゲーム性優先の海中ゲームはあるのだろうかと探して見つけたのが『Far Sky』という作品。こちらは言うなれば海底版『Minecraft』で、有限の酸素や水圧による活動限界という海中ならではの要素が要所に組み込まれていますが、基本的には『Minecraft』を踏襲したクラフトゲームです。

 前述の2作よりは圧倒的にゲームとして遊べますが、それでも『Minecraft』の縮小再生産の感は否めず、海中ゲームとしてのオリジナリティを実感するには至りませんでした。

『Far Sky』より。こちらも見た目が似ていますが、やっぱり別作品です。
『Far Sky』より。こちらも見た目が似ていますが、やっぱり別作品です。

 今回『World of Diving』を通じていろいろ探し回って感じましたが、海中を舞台にしたゲームは少ないです。それはここで取り上げた3作を遊んでも感じたように、海中という舞台自体が景観の変化に乏しく、飽きがくるのが早いというのも理由の一つかもしれません。

 『World of Diving』のダイビング・シミュレーターとしての再現性については、僕は実際のダイビングをしたことがないので量りかねますが、ゲームとして捉えたらおもしろくないのはたしかです。ただ本作がシミュレーターと銘打っている以上、ゲームとしてのフィクション性を取り入れる気はあまりないようなので、今後のアップデートについても個人的には期待できません。

 それにしても海中を舞台にしたゲームで、これはという作品はないのでしょうか。探しているのでご存知の方は教えてください。ちなみに『BioShock』シリーズは抜きでお願いします。

interview with Analogfish - ele-king

 日々が湛える哀しみの
 上を吹き抜ける喜びを
 受けて走らせるヨットのように
 暮らしていたいね 暮らしていたいね

 閉め切ったWindow
 開けたら空だった

 アナログフィッシュのニューアルバム『最近のぼくら』は、“Receivers”という曲のこんなリリックで締め括られる。同時代の表現者であるくるりの傑作『THE PIER』に散りばめられていた〈悲しみの時代〉や〈困難多き時代〉というワードをわざわざ抜き出すまでもなく、現代は〈日々が湛える哀しみ多き時代〉である。きっかけは2011年の震災と原発事故。しかし、それ以前から見て見ぬふりをされてきた数々の問題が徐々にあぶりだされているのが、いまという時代だ。そして、アナログフィッシュというバンドは、『荒野 / On the Wild Side』と『NEWCLEAR』という2枚の作品を通じて、そんな社会に対して鋭いメッセージを放ち続けてきた。


アナログフィッシュ
最近のぼくら

felicity

Rock

Amazon iTunes

 もしかしたら、メッセンジャーとしてのアナログフィッシュを期待する人にとって、『最近のぼくら』という作品は、肩透かしを食らう作品かもしれない。全体としては、ややアトモスフェリックでありながら、穏やかで有機的なムードが流れ、言葉に関しても、『NEWCLEAR』のような直接的な言及は避けられていて、タイトル通りの日常感ある言葉が並んでいる。三体の彫刻が並べられた、どこかサイケデリックなアートワークも含め、ゆらゆら帝国の『空洞です』あたりを連想する人も多いだろう。何にしろ、本作が前2作とはトーンの異なる作品であることは間違いない。

 しかし、僕はこの作品はある意味アナログフィッシュのニュートラルな作品だと言っていいと思う。アナログフィッシュの、とくに下岡晃の楽曲には、つねに社会的なメッセージが内包され、それが強い明度で表れるときもあれば、うっすらと滲んでいるだけのときもあって、その本質はバンドが結成された15年前から変わることはない。つまり、震災以降の社会状況を受けて、メッセージが強く表れていたのが前2作であり、うっすらと滲んで、それでもたしかに時代のムードを醸し出しているのが本作だと思うのだ。実際に、本作には2006年に発表され、メッセンジャーとしての側面が決して大きくは取り沙汰されていなかった『ROCK IS HARMONY』収録の“公平なWorld”という曲が再録されているのだが、この曲はまたしても今という時代を見事に射抜いている。やはり、本質は変わっていない。

 バンドのディスコグラフィーを振り返ってみれば、本作に一番近いムードを持った作品は、斉藤州一郎の復帰作となった2010年の『Life Goes On』だろう。良い事も悪い事も起こりながら、それでも人生は続いていく。最近のきみらの調子はどうだい?

そこにあるけど、みんな気にしてるけど、でもそれにタッチしないっていうことを、自分も大事なことを忘れて行ってるのかもしれないってことも含めて、曲にしようと思った。とにかく、今のこの状態を残しておこうって。

アルバムのスタートはどんなところからだったんですか?

下岡:1年ぐらいかけて断続的にレコーディングしてたんですけど、最初は“はなさない”って曲を、何も決まってない段階で録ったんです。

前作を作るときに、まず“抱きしめて”を録ったような感じですよね。

下岡:そうそう。で、音的な方向としては、基本的に音数少なくて、1ループとタイトなバンド・アンサンブルの感じ。1ループっていうのは、ループが乗ってる場合もあるし、ベースなりギターがずっとループを弾いてる場合もあるけど、起伏は意図的に作らないような、そういうバンド・アンサンブルのイメージが先行してましたね。BPM130より速い曲は作らないとか、ガチャガチャさせるのはやめようとか、そういうのを思ってた。

ミニマルでタイトっていうのは、『NEWCLEAR』でも顕著で、それは言葉を引き立たせる狙いもあったと思うんですけど、今作でもそれを推し進めたと言っていいんでしょうか?

下岡:推し進めたって言い方もできますね。あとは『NEWCLEAR』よりもう少し有機的な感じにしたいなとか、そういうことをいくつか考えながらやってました。

いま海外のインディー・シーンでR&B寄りのものが流行ってるから、その影響もあるのかなって思ったのですが。

下岡:去年出たThe Weekendすごい好きで、音数の感じも質感も好き。あとはThe Internetもよかったし、BADBADNOTGOODとか、基本的にチルウェイヴっぽいのも好きだし、Fenneszもよかった。家で聴いてるのがそういうのだったので、そういうところの影響は出てると思います。

ああいうサウンドのアトモスフェリックでサイケデリックなムードと、いまの社会のムードにシンクロするような部分を感じていたのでしょうか?

下岡:どうなんだろう……そういう風には考えてなかったかな。単純に、リスナーとしてそれを楽しんで聴いてただけで、タイトにやりたいっていう自分の趣向と、どこか通じるものを感じたっていうか、なんかああいうのに惹かれるんですよね。上手く言えないけど、女性の好みみたいな感じで、ずっとそういうのに惹かれてて、バンドを15年やってるから、その間には違うこともやったけど、基本的に僕はそういう音が好きなんです。20歳過ぎたぐらいで聴いたThe MetersとかThe J.B.’sとかのフィーリング、タイトで、ずっと持続していく感じで、歌で起伏ができてる、あのノリがすごい好きなんですよね。

その感じはelephant(アナログフィッシュの下岡と斉藤、髭の宮川トモユキと斉藤祐樹によって結成されたバンド。今年の夏にファースト・アルバム『daydream』を発表)にも出てたと思うんですけど、あの活動からの何らかのフィードバックも本作には含まれていると言えますか?

下岡:そこは結構難しくて、elephantに関しては、僕曲とか全然作ってなくて、歌詞にしても、曲を作った人がタイトルだけつけて、それがお題みたいな感じで、リハの何時間の間に大喜利みたいな感じで作ってたんで、アナログフィッシュでやってることとは、出てくるところが全然違って。

瞬発力の方が大事だったと。

下岡:そうですね。だから、自分の中にあるものを議論するような感覚はあんまりなかったというか、フィルターを通さずに出てる感じだったんですよね。単純に、軽やかに、気楽に音楽ができたから、リフレッシュにはなりました。

ちなみに、その一方で健太郎さんはソロを作っていたわけですが、あのアルバムに対する感想を話してもらえますか?

下岡:感想か......ホント、健太郎節でしたよね(笑)。すごくポップで、良かった。ああいう音楽って、俺ひさしぶりに聴いた気がするんですよ。昔はいた気がするんですけど、いまやってる人って案外いないなって。あとは……「歌上手いな」って思った(笑)。

いまの話とつなげると、今回のアルバムの穏やかなムードっていうのは、リフレッシュしたからこそのムードだとも言えるかもしれないですね。

下岡:かもしれないですね。まあ、日常的なことを歌おうっていうのはある程度決めてて、直接的なメッセージには行かないようにしたいなっていうのがぼんやりあったんですよね。

それはなぜ?

下岡:うーん……暮らしてると忘れそうになることがあって。忘れるっていうか薄まっていくっていうか。

編集部:何をですか?

下岡:震災後の、原発事故が起きたことに対してのセンシティヴだった、あの感じとか、徐々に風化して行ってる感じがあるというか、俺自体は相当ニュースとか拾ってる方だとは思ってるんですけど、それでも風化はしてるっていうか……。

編集部:ニュースって、テレビのニュースでしょ? テレビのニュースなんて肝心なこと伝えないよ。

下岡:それはずっとそうですけど(笑)、でも情弱とか言うけど、俺情報強者がいるとも思ってなくて、ネットの中とかって、ホントに起こってることがみんなが知ってることではないわけじゃないですか?

編集部:でも、わかることもあるじゃん。

下岡:あるけど、ホントに正しい情報を自分が得てるとは限らないわけじゃないですか? だって、いま手に入る情報は、正しいうんぬんよりも、検索にかかるかかからないかの方が大きいでしょ? だから、どんなに間違ってても、検索にかかってれば、それを見る人が圧倒的に多いわけですよね。もちろん、情報を統制するのは最悪だと思うけど、もっと別の問題もたくさんあると思うし。

編集部:さっき直接的なメッセージは避けようと思ったって言ったけど、これだけいろんな問題があるわけだから、逆によりメッセージを強くするっていう方向もあったんじゃないかと。

下岡:でも、俺が今回思ったのは、風化して行くっていうか、俺の中でも何かを忘れて行く部分があるっていう、そこも含めてやりたいと思って。レイシズムのこととか、ガザのこととか、そういうのもホントにまいっちゃうけど、でも全部一緒だと思うんだよね。そこにあるけど、みんな気にしてるけど、でもそれにタッチしないっていうことを、自分も大事なことを忘れて行ってるのかもしれないってことも含めて、曲にしようと思った。とにかく、いまのこの状態を残しておこうって。

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“PHASE”とか“Hybrid”とか“抱きしめて”とか、いいって言ってもらってる曲とかって、今ライヴでやってても、作ったときと同じようなフレッシュさがあって、お客さんの反応もいつもすごくいいし、自分もいつもいま作ったようなテンションでできてて。

僕も個人レベルでの風化っていうのは起こってると思ってて、その一方では、集団的自衛権や知る権利の問題とか、短いスパンでかなり大きな出来事が起こり続けてる。だから、『最近の僕ら』っていうアルバムのアトモスフェリックでサイケデリックなムードは、ある意味、異常が常態化した日常を表してるように思ったんですよね。

下岡:それはたしかにそうだと思うけど、でもいろんなことが起こってる状態っていうのを特別意識はしてなくて、単純に、自分に起きてることとか、強く思ってたことを忘れて行ったり、そこも含めて音楽にして、あんまり「メッセージ」って切り口にはしないようにって思ってましたね。

具体的に、「この1曲ができてアルバムの方向性が見えた」みたいな1曲ってありますか?

下岡:それはたぶん1曲目の“最近のぼくら”で、演奏がタイトで、ベースが1ループで、あと声だけ。なおかつ、日本語のメロディーで、今歌いたいことが言葉にできて、これが一番やりたかった形に近い。

この曲はいろんな意味でプロトタイプですよね。音数の少なさもそうだし、言葉にしても、極端に言えば、何も言ってない。でも、それがやりたかったと。

下岡:うん、このヴァージョン違いをあと10曲作れればみたいに思ってて。だから、今回のアルバムは普通にそのとき思ったことをただ書いてて、ラヴソングを作りたいと思って、ただラヴソングを書いた曲とかもあるし。

個人的に印象に残った曲のひとつが“Nightfever”で、とくに「センターラインはどこにある?」っていうリリックが気になったのですが、これはどんな意図で書いたものなんですか?

下岡:そのときの感じっていうか……って言ったら、全部そうなんだけど(笑)。何て言うか……上手く言えないなあ。

じゃあ、もうちょっと僕言ってみていいですか?

下岡:はい(笑)。

これも極端な解釈ですけど、「センターラインはどこにある?」っていうフレーズから、僕は右翼と左翼を連想したんです。で、もちろんどっちがいい悪いの話ではなくて、でもいまこの構造がかなり鮮明になってきてる。それをそのまま歌っておきたかった……って解釈したんですけど、ここまでの話を聞くと、ちょっと違いそうですね(笑)。

下岡:それは考えてなかったですね(笑)。それよりも……手すりっていうか(笑)、つかまえられるものを探してる感じっていうか。

編集部:自分の中の支えってこと?

下岡:そうそう。

編集部:直接メッセージを表現しようと思わなかったっていうのは、直接メッセージを言うことがしんどかったってことでもあるのかな?

下岡:いや、しんどいと思ったことは特にないかなあ。

編集部:でも、いまのセンターの話って、内省的なことでもあるわけでしょ?

下岡:しんどいとは思ってなくて、そこを求められてるなって思うことも最近多い。

編集部:求められると引いちゃう方?

下岡:そんなこともなくて、俺そこに応えたいなっていつも思うんですけど。

編集部:そんな感じするよね。むしろ、それを望んでたっていうか、求められるっていうのは、リアクションがあるわけだからね。

下岡:それはすごく嬉しくて、“PHASE”とか“Hybrid”とか“抱きしめて”とか、いいって言ってもらってる曲とかって、今ライヴでやってても、作ったときと同じようなフレッシュさがあって、お客さんの反応もいつもすごくいいし、自分もいつも今作ったようなテンションでできてて。でも、そういう曲って無理に作っても意味がないというか、自然にそれを超えるだけのものができてこない限りは、出す必要ないと思ってて。あとは単純に、今回は最初に言った感じのものが作りたいと思って、実際は1曲メッセージ色の強い曲もできて、録ったりもしたんだけど、今回のアルバムには合わないと思ったから、外したの。

編集部:もったいない(笑)。


「ラヴソングが一番のプロテストソング」とか、「ポリティカル・イズ・パーソナル」とか、そういう言葉ってよく言われるじゃないですか? 僕そういうのあんまりわかんなくて、ピンと来なかったんですけど、今回作ってる終盤ぐらいに、「それってこういうことなのかな?」って、ちょっとだけ思いました。

今回のアルバムの中で、メッセージ性を読み取れる曲というと、あとは“公平なWorld”かなって思うんですけど、これはもともと2006年の『ROCK IS HARMONY』に収録されていた曲ですよね。順番に訊くと、そもそもこの曲は当時どういう経緯で作られた曲だったのでしょう?

下岡:これは……超嫌だなって、不公平だなって思うことがあって、作らないとスッキリしなくて(笑)。

それって、個人的なこと?

下岡:そうそう。で、実際作ることでスッキリできたので、結構大事な曲で。それで今回ガザのニュースとかを見てて、この曲入れたいなって思って、いまのアレンジがライヴでやっても手応えあったから、この形で入れようと思って。

この曲をライヴで聴いたときは衝撃でした。それこそ、ele-kingにレヴューを書かせてもらった、7月のアジカンとの2マンで聴いたんですけど、ちょうど集団的自衛権の問題が大きく取り沙汰されてたときだったし、ブラジル・ワールドカップもやってたから、「僕らが寝ている間に何が起きてるか知ってる?」って歌い出しもぴったりで(笑)、“PHASE”や“抱きしめて”と同じように、また過去に書いた曲が現在とリンクしちゃってるなって。

下岡:そっかあ……でも単純に、ひさしぶりに聴いたら、いい曲だなって思って(笑)。

あの日アジカンが“No.9”って曲をやってて、あれは9条の歌だって言われてるんですよね。近年いろんなミュージシャンが直接的にも間接的にも、社会に対してアクションを起こしていると言っていいと思うんですけど、そういう周りとの比較も踏まえて、自分のやることっていうのをどうお考えですか?

下岡:自分がやることか……プロテストソングとかメッセージソングって、自分がやること云々っていうよりも、出てきちゃうからやってるって感じなんですよね。人によるとは思うんですけど、曲って、そのラインが出てきちゃったら、俺に選択肢はなくて、出てきちゃったら作るしかないんですよ。だから、俺が選べるわけじゃないっていうか(笑)。「こういうことを書こう」って思わないわけじゃないけど、メッセージだったらメッセージが思い浮かんじゃうんで、しょうがないんですよね。

なるほど。わかります。

下岡:この間スパングルの笹原くんと飲んでて、やけのはらくんとか、それこそ後藤くんの話とかをしてて、彼らは論理的な思考を持ってると思うんですよね。頭いいし、話すこともやることも論理的だって。で、笹原くんが「下岡くんはこういう感じ(宙に浮かんでるものを捕まえる仕草)だよね」って言ってて、僕自分はそうじゃないと思ってたんですけど、「でも、そうだな」ってそのとき思って、「もうそれでやろう」って思いました。

その感じはアルバムに出てますよね。すごく感覚的というか。

下岡:歌詞を書いて、言葉の流れはちゃんとできてても、いろんな理由で書きかえるじゃないですか?ちょっとパンチがないとか、生っぽ過ぎるとか。でも、今回は極力それをやらなかったんです。

なるべくそのまま残したと。

下岡:そう、「ここもうちょっと山欲しいな」って思うところも、そのまま残して。

やっぱり、今回のアルバムは恣意的に考えないで、そのままを出すっていうか、それすらも意識しないように作ったってことなんですね(笑)。

下岡:うん、ホントに『最近の僕ら』って感じのアルバムにしようと思ったから。

宙に浮いてるものを捕まえて、それをただ自分を通して出すと。でも、それが結果的には社会のムードを表してるのかもしれない。

下岡:なんかね……「ラヴソングが一番のプロテストソング」とか、「ポリティカル・イズ・パーソナル」とか、そういう言葉ってよく言われるじゃないですか? 僕そういうのあんまりわかんなくて、ピンと来なかったんですけど、今回作ってる終盤ぐらいに、「それってこういうことなのかな?」って、ちょっとだけ思いました。

資料によると、今回の作品は「社会派三部作の完結編」とあるわけですが、ちなみにご本人にこの意識ってあるんですか?

下岡:うーん.....(笑)。

了解です(笑)。では、今回の作品のラストに“Receivers”という曲を置いたのは、どんな意図があったのでしょうか?

下岡:これの最後の塊で歌ってることが、一番いい終わらせ方だなって思って。

「日々が湛える悲しみの~」っていうところですね。僕も大好きです。まあ、三部作かどうかはともかく(笑)、何もない荒野からスタートして、旅路を経て、海に開けたという受け取り方もできますよね。そして、この曲の風を受けて進むヨットのイメージっていうのは、「ここからまたどこにでも行ける」っていう、新たな始まりも予感させました。

下岡:このアルバムって、前向きな感じの曲はとくにないんですけど、唯一そうかもしれないフィーリングを持ってるのが、“Receivers”だと思います。普通に暮らしてて、「楽しい」とか「面白い」はあるけど、「今日は前向き」って、あんまりないっていうか(笑)、それってちょっと不自然じゃないですか?面白いこととか楽しいことが前進力だから、「前向き」っていうのは入らなかったのかなって。

いまの社会状況が混沌としていて、先行きが見えない状態だから、前向きなイメージは外したとかではない?

下岡:それはそれですごい感じますけどね。“不安の彫刻”とか、何のオチもないけど、ただ何となく不安ってことを歌おうと思ったし。でも、僕“Receivers”で気に入ってるのは、「良い事も嫌な事もありそうだね」ってとこで、普通こう歌う人いないなって思って。

普通は「良い事あるさ」ですよね。

下岡:「良い事も嫌な事もありそうだね」って、すげえ当たり前の話だから誰も歌わないんだと思うんですけど、「良い事も嫌な事もありそうだね」ってずっと言ってたら、気分良くなるんですよ(笑)。いまって、それぐらいの上がる感じがちょうどいいなって。

「そりゃあ、どっちもあるよ(肩ポン)」ぐらいの感じだ(笑)。

下岡:そうそう、それぐらいがいいと思って(笑)。

第23回:ソーシャル・レイシズム - ele-king

 「ソーリダリティ、フォエーーヴァー、ソーリダリティ、フォエーーヴァー」
 という1915年に書かれた労働者のアンセムで『Pride』は始まる。
 『Pride』という英国映画は、炭鉱労働者が一年にわたってストライキを繰り広げた84年から85年を舞台にしている。ストで収入がなくなった炭鉱労働者とその家族を経済的に支援するためにロンドンの同性愛者グループが立ち上がり、GLSM(Gays and Lesbians Support Minors)という組織を結成して炭鉱コミュニティーに資金を送り続けるというストーリーで、英国の中高年はみんな知っている実話でもある。

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 少し前、職場でちょっとした事件があった。
 というか、地元のメディアに報道されたりしたので、「ちょっとした」という表現は適切でないかもしれない。

 保育士という仕事には怖い側面がある。
 子供からあることないこと言われても自分を守る証拠が存在しないことがあるからだ。うまく喋れない年齢の子供は、言い方が断定的になったり、細かい状況説明が面倒になると簡単な言葉にすり替えるというか、表現が嘘になることがある(これは外国語がうまく喋れない時に外国に住んだ経験のある人もわかる筈だ)。
 ということに加え、幼児というのは、けっこう傷をつくって保育園に来る。
 転んだり、滑ったり、触っちゃいけないものを触ったりする生物だからだ。そのため、朝、保育士は「グッド・モ~ニ~ング!」と保護者に明るく挨拶しながら、目で子供の体をチェックしている。傷に気が付けば、所定のフォームに傷の種類、箇所、大きさ、保護者に聞いた「傷ができた理由」を書き込む。チャイルド・プロテクション上の理由から、そうする義務があるのだ。が、面倒なのは衣服で隠れている部分だ。朝っぱらから登園してくる幼児を全員素っ裸にして点検するわけにもいかないし、いつどこで出来たのか判然としない傷を持った子も必ず出て来る。

 ところで、英国の商業的保育施設というのはべらぼうに高いことで有名だ。わたしの勤務先では2歳以下の赤ん坊をフルタイムで預けると1カ月1000ポンド(約17万円)、2歳から5歳の幼児でも800ポンド(約13万6千円)の費用がかかる。3歳になると国が保育料金を支援するようになるが、国が負担するのはたったの週15時間だけだ。よって、子供をフルタイムで預けて(2人というのもけっこういる)夫婦で働いているご家庭というのがどういう家庭かというのは想像できるだろう。で、この階級のお母さんたちは、外見や喋り方で保育士を判断し、「クラッシー(上品)」じゃない従業員を毛嫌いすることがある。

 職場で唯一の非イングリッシュ&下品なわたしなんかは一番に標的にされそうなもんだが、そこはやはりポリティカル・コレクトネスがあるので、彼女たちは外国人をいじめるなどというNGはしない。
 が、チャヴあがりの英国人保育士となると、その態度は豹変する。エスニック・レイシズムならぬ、ソーシャル・レイシズムである。
「チャヴみたいな外見の、低俗な発音の英語を喋る女が、私の子供を担当するなんて嫌」
という不満をふつふつとさせている母親たちが、幼児の拙い言葉をすべて自分が解釈したいように解釈し、子供たちよりよっぽど壮大な嘘をつき始めたらどうなるだろう。
 怖いことには、そうした嘘を真実っぽく思わせる傷や痣をもった子供なら、クラスを探せば常に数人はいるのだ。

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『Pride』は単なる虐げられた者たちのソリダリティーの話ではなかった。
 それは、差別されている者たちが、自分たちを一番差別している人びとを助けた話でもある。
 ゲイ・グループのリーダーが、炭鉱労働者たちのストを支援しようと言い出した時、ゲイたちは強く反発する。ある者は炭鉱労働者に石を投げられた経験を語り、またある者は「彼らはいつも僕たちをサポートしてくれるからね」と憎悪が滲んだ顔で皮肉を飛ばす。
 同様に、マッチョで非アーバンな炭鉱コミュニティーの中にも、食料品が手に入らない窮状になっても「変態から助けてもらうなんて真っ平」という人々もいたし、「そこまで身を落としたくない」と言ってゲイ・コミュニティーから届けられた物資の援助を拒む人々もいた。

 だが、それでもロンドンの同性愛者たちの炭鉱支援運動は熱く広がり、カムデンで「Pits and Perverts(炭鉱と変態)」という大規模なチャリティー・ライヴを行うまでに発展する。ライヴ後、ロンドンのゲイ・コミュニティーは、スポーツバッグ一杯になった現金を炭鉱に贈るのだが、炭鉱コミュニティーは「変態ぎらい」の人々の反対に遭って受け取りを拒否する。
 そして、まもなく炭鉱労働者たちはストの続行を断念し(事実上の敗北だ)、炭鉱の閉鎖によって失業者の集団にされたのは歴史が伝えているところだ。

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 幼児虐待と呼ばれる問題においては、誰が本当のことを言っているのか、何が真実なのかは、CCTV映像でもない限りわからない(経費削減のためCCTVを全室完備していない保育園は山ほどある)。おっとりとした気の優しい保育士だったから、そんなことはしないだろう。みたいなことを言うのも無意味である。
 ただ、わたしが知っているのは、チャヴあがりの同僚は明らかにソーシャル・レイシズムの被害にあっていたといたということ。そしてミドルクラス・マミイたちの排チャヴとでも呼ぶべき現象ががだんだん理性を失って暴走していたことだ。
 わたしは彼女が身に覚えのないことで保護者から文句をつけられてトイレで泣いていたのを知っているし、保護者がマネージャーに彼女についてクレームをつけている場に居合わせ、「いやーそれ、実際に起きたことの5倍ぐらいになってますよ」と反論したこともある(で、後で「一介の平保育士がいらんことを言うな」と叱られた)。
 ステラ・マッカートニーの服にPRIMARKのバッグなんて持てるわけないでしょ、というのと同じような感覚で、我が子にチャヴの保育士なんてあり得ない。という獰猛な意志をもって彼女らは人間を排除しようとする。
 この層には外国人のお母さんたちも含まれていた。エスニック・レイシズムの対象になり得る人々が、平気でソーシャル・レイシズムの加害者になる。ブロークン・ブリテンの元凶はお前らであり、それを非難・排除することは、心ある市民の当然の行動であると言わんばかりに外国人が英国人を差別する。
 民族的ナショナリズムの暗部がエスニック・レイシズムであるように、市民的ナショナリズムもまたソーシャル・レイシズムを生むのだ。チャヴ。という人々だってれっきとした人間の種として区分され、差別され、排斥されている。
「自分でがんばれば這い上がれるのに、そうしないのは自分の責任」とソーシャル・レイシズムの概念を信じない人々は言う。
 が、這い上がって来ようとしても叩き戻されたら、出て来ることなんかできない。


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 80年代の炭鉱労働者のストで使われ、ロンドンの同性愛者たちもつけていたバッジには、「COAL NOT DOLE(失業保険ではなく石炭を)」と書かれていたそうだ。
 あの時代の政権が行った経済改革で失業者や生活保護受給者にされた層が21世紀のブロークン・ブリテンやチャヴ問題に繋がったと思うと、象徴的なスローガンだ。
 これは映画ではなく実話のほうだが、84年にカムデンで行われた「Pits and Perverts(炭鉱と変態)」ギグで、ウェールズの炭鉱コミュニティーの代表者は、会場の同性愛者たちに向かってこうスピーチしたそうだ。
 「我々は『COAL NOT DOLE』のバッジをつけて共に戦って来た。これからは、俺たちが君たちのバッジをつけ、君たちをサポートする。俺たち炭鉱労働者は、他にも戦うべき目的があるのだということを今は知っている」

 それはもう30年も前の話になった。
 チャヴのバッジをつけた黒人や、ムスリムのバッジをつけたフェミニストや、ポーランド人のバッジをつけたゲイが、見えにくい世の中になった。
 「ソリダリティー・フォーエヴァー」はアンセムではなく、エレジーになったのだろうか。

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 ある夏の暑い日、チャヴあがりの同僚は逮捕された。

 突然解雇された彼女の身の回りの品はすべて彼女の自宅に送られ、彼女が子供たちとつくった壁のディスプレーもすべて剥がされて捨てられた。
まるで最初からここにはいなかった人のようだ。
 ほんの3カ月前の話である。

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