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Sick Team

Hip Hop

Sick Team

Sick Team II

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野田努   Mar 20,2014 UP

 この2か月、ハウスばかりを聴いていたせいだろうか、ヒップホップ・ビートが心地よく感じる。そう、街を歩けばファレル・ウィリアムスの“ハッピー”が聞こえる春先、である。え? ハッピー? 春が来たって何になろ、こちとらまったく上がっちゃいない。ネオリベ・ポップ(出典:TMT)はいつだって強いのだ。が、最高級のサングラスをかけなくても人は幸せになれる。
 そして、最高級のサングラスをかけなくても幸せにならなくてはならない。ブルー・ハーブ/シンゴ2以降の日本のアンダーグラウンド・ヒップホップは、成功以上の価値を音楽のなかに見ようとした。誰かを批判したくなるという誘惑を抱えながら、結果として前向きに、がっつりとオーディエンスをつかんできたと言える。シック・チームも大きく見ればその系譜にいるのだろう。
 もしそうだとしても、彼らは、ときに(5lackによる)例外はあるものの、基本、大きなことは言わないし、self-deification(自己神格化)とは対極にある(……オレ=神という現象には、個人的には好奇心を掻き立てられるものがあるのだが)。
 とまれ。シック・チームは、まったく淡々としている。クライマックスに向けてぐぁーっと上がることを避け、ミニマリズムを受け入れているのだ。このストイックな感覚はアンダーグラウンド・ミニマリズムとも共通する。また、この愛想のなさはオウガ・ユー・アスホールにも通じる。(なので、そういう感覚に慣れている人には聴きやすいし、人生論を聴きたい人には向かない)

 2011年にはじまった冒険の2作目にあたる『Sick Team II』は、新曲+既発曲のリミックス・ヴァージョンで構成されている。既発曲でもラップの取り直しもあるものの、新曲が3曲しかないのは寂しい限りだ。が、このアルバムは、まずはシック・チーム監修のビート集として楽しめばいい。ファーストもそうだったが、シック・チームは、良くも悪くも言葉より音が耳に入ってくる。その音の舵を取るのは、Budamunkのようだ。今回はとくに彼の趣味/方向性が、よく表れている。
 USから多くのアーティストが参加して、彼らの世界を拡張しているが、そのフィーリングには一貫性があり、ブレることはない。客演やリミキサーに関しては、Budamunkと16FLIPがタワーレコードのサイトで詳しく解説しているので、そちらを参照されたし。アルB・スムーヴやクライシスをはじめ、ロック・マルシアーノ(エヴィデンスとともにファースト・アルバムにも参加している)、カザール・オーガニズムといったUSヒップホップ・シーンの注目株に混じって、個人的にはデトロイトのDJデズ(ハウス・リスナーのあいだではアンドレスの名前で知られている)のクレジットに反応したわけだが、彼のリミックスは、デトロイト・ソウルを惜しみなく注いだものだった。まあ、1曲目のアルB・スムーヴのリミックスによる“My Shit”からしてなるほど格好いいし、エヴィデンスが参加した“Turn It Up”の16FLIPによるリミックスもぐっと来る。ムーディーマン周辺を好んで聴いている人にも、このアルバムのストーンした感覚は共有できるだろう。
 Budamunkのトラックは、ストイックではあるものの、リスナーに夢を見せる。古いレコード、古いドーナッツ盤がころがっている。ビールを飲んで一息ついたところに音楽が入ってくる。咳き込むほど煙たく薄暗いクラブだとしても、トラックが雨の夜に相応しいメランコリックなものだとしても、ドリンクをもう一杯喉に流し込む。そして、シック・チームのすべて新曲によるアルバムを我慢強く待とう。リミックスも面白いが、新曲の3曲──ムーディーな“空がクライ”、冷たいシャワーを浴びさせるような“OKINA”、実験的とも言えるダビーな“Addiction”がそう思わせる。

野田努