「Nothing」と一致するもの


DJ TASAKA
UpRight

UpRight Rec.

Tower HMV Amazon

 DJ TASAKA、4枚めのアルバム『UpRight』の発売を目前に、今週末にはリリース・パーティが開催される。「国会前でのハードなプロテストのアフターとしても、2015年夏の幕開けに相応しい、スペシャルな夜になりそうだ」(久保憲司)。パーティは映画上映からはじまるなど、作品同様、丁寧にコンセプトされていることがうかがわれる。会場ではアルバムの先行販売も予定、みなさんもよき夜を。

■BLEND is beautiful presents
ACT UP RIGHT

7.17 FRI OPEN 22:00
at SOUND WAVE BE-WAVE
1-15-9 Kabukicho Shinjuku 03-5292-0853
2,000yen at door

PART 1 22:30~
UNITED IN ANGER A HISTORY of ACT UP 映画上映(日本語字幕付き)
HIV/AIDSの時代を生き抜くために、人種や階級ジェンダーの枠を超えて力を合わせて社会の変革に挑んだ人々、ACT UPの非暴力抵抗運動は、HIV/AIDS危機にある米国政府やマスメディアを動かした。このドキュメンタリーは、大切な人を失う哀しみを育み、人とのつながりの中で生きる力を持ち、セクシーでエネルギッシュなACT UPの姿を映し出す。
監督:ジム・ハバード Jim Hubbard プロデューサー:サラ・シュルマン Sarah Schulman

PART2 24:00~
B1F
DJ TASAKA long set, Kinue Itagaki Yoshino, MC JOE

LOUNGE DJ
Lark Chillout, KUMA the SURESHOT, showgunn

FOOD
True Parrot Feeding Service

SHOP
DJ TASAKA アルバム先行発売。ZINE希望的工具販売。


DJ TASAKA - ele-king

 タサカくんの4枚めのソロ・アルバム『UpRight』がむちゃくちゃいい。昔ハウス・ミュージックのアルバムでブレイズの『25イヤーズ・レイター』(1990)という名盤があった。マルコムX死後25年後に、いったい世の中はどう変わったかということを切り口に、黒人とは何なのか、黒人の歴史とは何なのかというのを一枚に凝縮したコンセプト・アルバムだったのだが、それと同じ感触を感じる。
 ハウス・ミュージックではマーヴィン・ゲイの『ワッツ・ゴーイング・オン』(1971)のような物語を語るアルバムは作れないだろうと言われていたのに、『25イヤーズ・レイター』は、ハウス・ミュージック登場後2、3年してからそんな偏見を打ち破ったから衝撃であり、ハウス・ミュージックのファンとしては誇りのアルバムである。
 いまだとケンドリック・ラマーの『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』、ディアンジェロの『ブラックメシア』もいっしょなんですけどね。

 タサカくんには失礼かもしれないが、タサカがまさかこんなアルバムを作るとは予想もしなかった。自分にとってタサカくんとはすごくいい家のお坊っちゃまで、なにを間違えたか、アシッド・ハウスの世界に入ってきた印象があった。これ完全に僕の妄想ですけどね。タサカくんがいい家のお坊っちゃまか、貧しい家の出身の人なのか僕はわからないです。そういうことをタサカくんにきいたこともないし、タサカくんの日航か全日空のパイロットのようなキリッとした顔立ちを見て、自分で勝手に想像しているだけです。
 だからタサカくんはいつか自分の本当の場所に戻っていくんだろうなと思っていた。いや、これ勝手な妄想ですけどね。

 アホな話はこのへんにしといて、このアルバムには3.11以降の日本の状況が凝縮されている。あの事故のその後である。20万人集まった官邸前の抗議、新大久保のレイシストたちのデモ、そして、それに対するカウンターの風景、国民の意思を無視して日本を戦争のできる国にしようとしている安倍首相への怒り。金融政策だってちゃんとやっていけば日本はデフレから脱却できるだろう、しかし、きっとそのお金は若者には流れず、格差だけを生んでいくはず。それはイギリスやアメリカを見ていたら、よくわかることだ。──日本の若者の未来は、海外のニュースや音楽から理解できるのに、なんでみんな立ち上がらない。自分が勝者になれると思っているんだろうか。日本の若者たちよ、なんで怒らない……あっ、すいません、後半はタサカくんのアルバムが言ってないことまで書いてしまいました。タサカくんのアルバムは自分の目の前に起こっていることを曲にしているだけです。お前ら変われとか、そんな上から目線のメッセージなんかいっさいないです。彼が目にしたこと、やったことをDJがレコードをかけるようにぼくたちに伝えていくだけです。

 「たったそれだけで、ブレイズやマーヴィン・ゲイのアルバムのようなことが語られているって大げさすぎないか」という声が聞こえてきそうだ。 
 でも、それでいいのだ。日本人は昔朝鮮から流れてきてとか、戦争に負けてアメリカに支配されているとか、高度成長でバブル崩壊していまデフレとか、そんなことはどうでもいいんだ、いやどうでもよくないんだけど、とにかく日記のように、いまだったらツイッターやFBに投稿するように、歌にすればそれでいいのだ。それですべてにつながっていくからだ。それが名盤と呼ばれるアルバムなのだ。
 ジョン・レノンが「平和を我等に」と歌って何をしたか、マーヴィン・ゲイが「どうなってんねん」と歌って何をしたか。何もしていない。でも、時代をとらえた名盤としていまも語り継がれている。これらのアルバムは、いま目の前に起こっていることを歌にしているだけなのだ。ジョン・レノンが“インスタント・カーマ”で、とにかく朝起きて曲を作って、昼に録音して、次の日にリリースするということにこだわったのはそういうことなのだ。“いま”ということなのだ。さすがにリリースには一週間かかったが。
 正直なところを言えば、きっと、当時のジャマイカがそうやってレコードをリリースしていたから、俺もそうやってやりたいということだったんだと思う。ジャマイカのレコードが新聞みたいに作られているなら、俺もそうやりたいという思いだったんだろう。映画『ハーダー・ゼイ・カム』の世界ですよ。

 ちょっと話がずれてしまったが、なんとなくぼくの言いたいことはわかってもらえただろか? でも、これってアーティストの基本の基本でしょう。人を楽しくさせる曲を作りたいとか、そんなのと同じくらい大事なこと、いま思っていることを歌にしたいんだということ。

 こんな簡単なことをなかなか日本のアーティストはできない。そこにはマーケットとかいろいろあるんだと思う。桜のことを歌わなあかんとか、乾杯のことを歌わな結婚式で歌ってもらえないでとか、でも、そんなことよりも大事なことって、いま何が起こっているかを歌うことなんだろうと思う。その究極でいちばんいいのは、恋をしたということだと思うけど、そんなので何百曲も作れないから、桜や乾杯を足していくんだ。ハイレゾでもいいけど。そんな足してない部分がたくさんあるアルバムがタサカくんのアルバムなのだ。だからタサカくんの『UpRight』はリアルなのだ。

 たぶん、みんな本当は同じように曲を作っているんだと思う。他の日本のアーティストにはいろんなことが多すぎるんだと思う。ここにはタサカくんのいろんなキーワードが入っているけど、すごくシンプルなのはそういうことなのだ。

 そして、その音がデトロイト・テクノやシカゴ・ハウスと同じ感触を持っているのは不思議だ。いや不思議ではないか、彼らと同じことをやっているのだから。

 タサカくんはついに日本のクラブ・ミュージックのマスターピースを作ったのである。

R.I.P.相倉久人 - ele-king

 音楽ライターがなしうる最高のこととは何か? 音楽ライターとは何を書くべきなのか? こうした素朴かつ重大な問いに対して、相倉久人氏はひとつの明解な答えを持っていた。「音を出す本人すら意識していなかったことを、その音楽から読みとる」こと。「その読みを本人に自覚してもらうこと」
 アーティスト本人から語られる「すこしうぬぼれの入った理屈を」ただ正当化することではない。
 逆にそれは、ネット時代にありがちなひとりよがりの妄想を肯定することでも、作者の自己言及を否定することでもない。あくまで作者と受け手との緊張感を保ちつつ、受け売りに走らず、新たな言葉を探し、醸成することである。
 そう考えると、氏は、日本において音楽評論という土台を築いた人物であり、そして、その作者が言っているのだから正しいに決まっている、作品はつねに作者に隷従するものとして存在するという、つまり、解釈という能力を放棄しかけている日本の音楽シーンにおいて、なおさら立ち返らなければならない人物だと言えよう(まー、それなりに困難だ)。
 
 相倉久人氏といえば、ジョン・コルトレーン、前衛ジャズ、山下トリオ、そして、リロイ・ジョーンズの『ブルース・ピープル』評など、おそらくは、ジャズの流動性がもっとも活気に満ちていた時代の論客として知られているのだろうけれど、たとえば、新書版の『ジャズの歴史』を読むと、モダン・ジャズ神話崩壊後のポストモダンにおけるジャズおよびジャズと呼ばれていたものの増殖と拡散についても(つまりポストモダン化についても)、とても柔軟に捉えていることがわかる。
 その昔ジャズという大きな基盤が崩れたように、いまやロックはナツメロ化し、レイヴ・カルチャーだって20年以上も経てばさすがにその物語は脱構築されている。もちろん物語サイズが小さくなったからといって、音楽が小さくなったわけではない。むしろ生き生きとしていることだってある。
 メインストリームなき現代では、なおのことそれら拡散された音楽たちを、いつまでも神話を縮小再生産/利用することなく、語っていくべきなのだろう。かつてあれだけの歴史(神話)と立ち会いながら、相倉久人氏にはこの変化に対応するだけの柔軟性があったばかりか、「現代におけるジャズとは何か?」というじつに難儀な主題とガチに向き合い、そしてするどい考察も残されている。繰り返すが、氏は、音楽について言葉を連ねている者にとって、なんどか立ち返るべき先達のひとりである。

Kiyoko - ele-king

 UKの主要レーベルのディストリビューションを行っていた、STホールディングスの倒産が去年話題になったが、〈オグジリアリー〉はその影響をモロに受けたレーベルのひとつだ。現在は新しい流通会社を見つけたものの、しばらくレーベルはレコードをリリースすることができない状況におちいってしまった。
 同レーベルから発表された『シー・オブ・ツリーズ』はキヨコのデビュー作で、今年の5月に3年のときを経てレコードでリプレスされた(初回はデータとすぐに売り切れたフィジカルはCDのみだった)。〈オグジリアリー〉は、レーベル・オーナーのプロデューサー、ASCの活動を反映して実験的なドラムンベースやノイズ作品に主軸の置いているため、アンビエントやエレクトロニカのフィーリングを持つ今作は、他の作品と比べるとかなり異色な存在である。しかもアルバムのレコード化は今回がレーベルにとって初めてのことで、数ある作品のなかから再び世に出したかった1枚が今作、ということになる。

 キヨコのふたりはジャケットの陽光に輝く桜が咲き乱れる風景から程遠い、霧吹きで吹き付けられるような雨が降るマンチェスターの郊外でアルバムを作った。メガネの青年、ジョー・マクブリッジことシンクロはメロディアスなダブステップやドラムンベースの作品を多数発表していて、最近は同じ町に住むインディゴとのユニット、アコードでも素晴らしいベース・オリエンテッドなテクノをリリースしている。相方のジャック・レバーは、ベーリング・ストレイト名義でIDMやアンビエント作品を作り、マクブリッジと同じ町に暮らす彼の後輩にあたる。

 その名(日本名の「清子」という名前からとっている)が示すように、キヨコのふたりは「東洋的」な音を用いることをコンセプトに置いている。アルバム全体を通して、日本の電子音楽の歴史でよく耳にするような優しいメロディ・ラインや、民族楽器の音色などが登場することからも、そのねらいは功をそうしているようだ。けれども、そこで彼らが描く「東洋」を表す音がわれわれにとって新鮮に見えることがおもしろい。

 たとえば “オープン”や“ダルシマー”のメロディや生楽器と電子音の混ざり具合からは、彼らが影響を受けたであろう竹村延和や坂本龍一あたりを連想するのだが、実際に思い浮かんだ音楽と比較してみると、キヨコがやっていることがかなりシンプルだとわかる。緻密に組み込まれたリズム・パターンもコードが絶えず変化する展開も『シー・オブ・ツリーズ』にはない。キヨコが演じるのは、実際の日本で見つかるようで見つからない「日本」の音楽だ。

 そういうシンプルさを媒介して、彼らのなかの「東洋」と、ふたりの重要な影響源であり、今回もその要素が見え隠れしている〈ワープ〉や〈スカム〉のエレクトロニカが結合しているように感じる。ボーズ・オブ・カナダのようなサンプリング・コラージュや透明感溢れるシンセのレイヤーを想起するひとは少なくないはずだ。

 シンクロの本業ともいえる重低音が際立って現れるシーンが1曲めの“ファースト・サイト”や中盤の琴のような音が響く“ヴァレイ”にはある。東洋的な旋律の(サイノ・)グライムやダブステップは多くあるものの、同じようなベクトルを向きながらも踊れる要素を極力手放し、メロディと空間を用いてここまで聴き手を引き寄せる音は、今日のベース・ミュージックのシーンでも群を抜いている。

 品川駅の場内アナウンスがサンプリングされたその名も“シナガワ”という曲が3曲めにある。今作を制作していたとき、キヨコのふたりは品川駅どころか成田空港にさえ降り立ったことがなかった。冒頭から“シナガワ”の流れに耳を傾けていると、僕はどうしようもなくノスタルジックになる。訪れたことがない場所の音楽をテーマに作られた曲に対して、そのような感情を抱いてしまうのはつくづく不思議だなと思う。去年、シンクロがアコードとしてついに来日した。東京から名古屋に向かうときに初めて訪れた品川駅を、彼はいったいどんな気持ちで歩いたのだろう。


Kiyoko - Shinagawa

Tame Impala - ele-king

 “セイム”・インパラ、今回もきっと彼らは変わらない。しかしトレンドの先端をゆくことが正義ではないから、音の充実や成熟が約束されるのなら、曲調が「セイム」な新譜だろうと心から祝福したい。彼らこそは停滞感をぬぐえないロック・バンドの現在に、清新な風をもたらす存在のひとつなのだから──という期待は、正反対の方向へ、しかしポジティヴに裏切られる。

 オーストラリア出身のガレージ・サイケ・バンド、テイム・インパラの3枚めとなるフル・アルバム『カレンツ』がリリースされた。彼らのデビューEP『テイム・インパラ』が発表された当時は、〈スリル・ジョッキー〉からウッデン・シップスが登場し、往時の発掘音源さながらのスペース・ロックを展開、北欧のドゥンエンにもあらためて注目が集まるなか、オール・ザ・セインツやクリスタル・アントラーズなど〈タッチ・アンド・ゴー〉の最終世代も同様に重心低めのサイケデリック・ジャムを若々しく鳴らしたりと、その種のヴィンテージな楽曲センスや、いささかファズの効きすぎた音作りなどがちょっとしたトレンドをなしていた。

 テイム・インパラはそのなかでとくにみずみずしさと華やかさを感じさせたバンドだった。カット・コピーやヴァン・シーなど、当時熱かったエレクトロ・ポップの嚆矢ともいえる〈モジュラー〉から現われた意外性も印象深い(もちろんウルフ・マザーなども擁する地元豪州のレーベルだという点は大きいだろうけれど)。

 ただ、盛り上がりがあるとはいえ、当時はまだまだ限定的なリスナー層にアピールするものであったことにはちがいない。彼らが一気にステージを上げたのは前作『ローナイズム』(2012)だ。デイヴ・フリッドマンが絶妙に彼らのサウンドをバーストさせ、そしてポップ・ミュージックとしての翻訳を施した。ジャケットに配されたフォトグラフにもチルウェイヴふうのドリーミーなポップ・センスがある。このアルバムはグラミーで「最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム」にノミネートされ、以降彼らは映画『ダイバージェント』のサウンドトラックにおいてケンドリック・ラマーとのコラボ曲を発表するなど、大きなシーンでの注目度とともに、他ジャンルの先鋭的な表現者たちとも交差する、リアルな時代性をそなえた存在であることをあらためて示してみせた。

 さて、そんな彼らが放つサード・アルバムから聴こえてきた音は、冒頭こそ「セイム」なソフト・サイケだったものの、中ほどではダリル・ホールと……とまでは言わないにせよシンセバリバリのモダンポップに、そして終わりには流行色のレトロめなR&Bになっていて、イスからずり落ちるほど驚く。

 彼らがひときわみずみずしかったのは、「俺たちのサイケ道」をゆくというタイプのオタク性ではなく、タグ付けされないサイケデリアを体現していたからだった。それでいて、13thフロア・エレベーターズのような西海岸的な佇まいの一方に、ブリティッシュ・サイケふうのちょっとミステリアスな翳りを感じさせるようなところには、オタクや年長者からも「ほう」と好意的な反応を引き出す魅力がある。テイム・インパラの実質的な本体であるケヴィン・パーカー自身はというと、いくつかのインタヴューで「とくにサイケだと思ってやっているわけではない」という旨を明かしている。むしろそうしたアルカイックさというか、柔構造こそが彼らの存在を大きくしたひとつの理由だと言えるだろう。

 しかし、ここまで柔らかいとは……。たしかに、ヴォーカリゼーションやメロディの発想自体には通底するものがあるものの、“ニュー・パーソン,セイム・オールド・ミステイクス”のシンセ・ベース、“イヴェンチュアリー”の16ビートには本当に驚くしかないし、歌詞はほとんどがビターめなラヴ・ソング、“ディシプリン”あるいは“ザ・レス・アイ・ノウ・ザ・ベター”などの洒脱なファンクネスはアリエル・ピンクやアンノウン・モータル・オーケストラなども彷彿させ、さてテイム・インパラのアイデンティティとは何だったのかと、はたと立ち止まってしまうほどだ。
 
 各誌絶賛のムードだけれど、これが評価されて、トロ・イ・モワの新譜が冷遇されるのは少々不公平だと思わざるをえない。そこにはいかにも「彼らは正統派サイケ出身だからエライ」というようなニュアンスが隠されているように思われるし、そうした視線によって彼らが空虚な祭壇へとまつりあげられるとすれば、かつて筆者が“デザイア・ビー,デザイア・ゴー”に打たれたときの爽やかな感動もともに封じ込められてしまうように感じられる。ケヴィン・パーカーの音楽も、トロ・イ・モワと同じようにひとつの偉大で小さなアマチュアリズムから生まれてきたものなのだ。今作でおずおずと、しかし楽しげにヴォコーダーやドラムマシンが使われているのはひるがえってその証左ともなるだろう。おそれずにアイディアを広げ、音のかたちを模索していて、やっぱりそんなところは輝いている。

 というわけで、本作はちょっとヒプノシスふうのサイケ、プログレ感ただようジャケットからはおよそ想像のつかないアルバムになっている。アートワークを手掛けるのは人気のマルチ・ヴィジュアル・アーティスト、ロバート・ビーティー。彼の手掛けた作品のアーカイヴをながめると、本当にパロディがうまい(https://www.robertbeattyart.com/)。愛があって、かつドライなところもいい。テイム・インパラ×ロバート・ビーティーとなればプログレッシヴ色が強まりそうなものだけれど、このインディ・シーンにおけるキー・マンとの交差と、そこに出現した大いなるギャップは、さらなるテイム・インパラのポテンシャルを予感させるものなのかもしれない。おそらくはまだ本人にもたしかにつかめていないような「カレント」が剥き出しになっている作品なのだ。
そう思って自分の頑迷な態度を解いて聴いてみると、しばらくは手放せない、結局のところはやはり愛聴すべき音楽だと感じられる。

Hocori、とは? - ele-king

 あるいはあまりプロモーション展開をしなくとも──名が伏せられ、レコード屋のインディ・コーナーの一隅にひっそりと面出しされているくらいでも、『Hocori』は人々の手に取られるようになるのではないだろうか。ネットレーベル発の才気あふれるプロデューサーやユニット群のひとつとして、あるいは“東京インディ”の新しきピース、と謳われていても違和感がないかもしれない。“Lonely Hearts Club”や“God Vibration Instrumental”などは無名性とともに再生されるとき、もっとも時代性を発揮するように思われる。できることなら期待のデュオの登場だ、その音源がユーチューブで公開されている、とだけ紹介してみたい。そしてどうぞご一聴を。素敵な音楽が聴こえてきます。

“Lonely Hearts Club”Music Video

 MONOBRIGHT の桃野陽介(Vo / Gt)とgolf / SLEEPERS FILMで活動する関根卓史のユニット、Hocoriが7月15日(水)にリリースする1st mini album『Hocori』より、リード・トラック「Lonely Hearts Club」のMusic VideoをYouTubeにて解禁した。

 このMusic Videoは、Hocoriの持つシティ・ポップやエレクトロ・ポップをベースに置きながらも、ブラックミュージックのスパイスを取り込む作品の方向性にいち早く注目した、NY生まれのファッションマガジン NYLON JAPANのプロデュース及びディレクションによる作品で、モデルの田中シェンと遊屋慎太郎[ユウヤシンタロウ]が起用されている。

 田中シェンはモデルとしてNYLON JAPANだけでなく、GINZAや装苑など人気ファッション誌にも多数登場し、「JINS × niko and...」のイメージビジュアルなども務め、Instagramで50,000以上のフォロワーを誇る人気急上昇中のモデル。さらに彼女はイラストレーターとしても注目されており、Music Video内で着用している彼女自身がデザインしたTシャツもNYLON JAPANが手がける作品ならではのポイントだ。また、遊屋慎太郎[ユウヤシンタロウ]もBRUTUSを始めとしたファッション誌やカルチャー誌などでのモデル活動だけでなく、アパレルブランド「sulvam」のコレクションビジュアルにも登場するなど目が離せない。
 一目でグイッと引き込む強い視線を持ち、濃厚な空気感を纏う2人のモデルが「Lonely Hearts Club」の楽曲の情景と妄想的要素をNYLON JAPANならではの個性を尊重したスタイルで表現していて、楽曲同様に“新しいセンス”を感じさせる作品となっている。なお、2人のMusic Videoへの出演は本作品が初となる。
 さらに、6月にラフォーレ原宿にて行われたポップアップショップや、先日、パリで行われたJAPAN EXPOでも話題となった、新進気鋭のデザイナー 手嶋幸弘氏が手がける「誰かのヒーローになれる服」をコンセプトに展開しているアパレルブランド〈ユキヒーロープロレス〉が今度は大阪・阪急うめだに進出! スペシャルコラボレーションによる限定盤『Tag』[タッグ]も併せてここで発売されることも決定した。これは1st mini album『Hocori』のリリースに先駆けて発表されていた全3曲入りCDで、関根卓史がこの盤のために手がけたオリジナルミックスが収録されていて、収録楽曲の歌詞や世界観からインスピレーションを受けた手嶋幸弘氏がジャケットデザインを手掛けた。遠方のため入手できなかった関西圏の方はMusic Videoを観てからぜひチェックして、それぞれが描き出す世界観を楽しんで欲しい。

■オフィシャルサイト
https://hocori.jp/

Twitter  https://twitter.com/info_Hocori@info_Hocori
Instagram  https://instagram.com/mmnskn/@mmnskn

■リリース情報

『Tag』
発売日:2015年6月18日(木)
品番:CNBN-01
価格:¥1,000(tax out)
収録楽曲:1. Lonely Hearts Club(Tag mix) / 2. Tenkeiteki Na Smoothie(Tag mix) / 3. God Vibration Instrumental
※ユキヒーロープロレスポップアップショップ限定販売

『Hocori』
発売日:2015年7月15日(水)
品番:CNBN-02
価格:¥1,500(tax out)
収録楽曲:1. Intro / 2. God Vibration / 3. Lonely Hearts Club / 4. Tenkeiteki Na Smoothie / 5. Alien / 6. Kamone

取扱店:タワーレコード(渋谷、新宿、梅田NU茶屋町、名古屋パルコ、札幌ピヴォ、仙台パルコ、福岡パルコ、広島)、タワーレコードオンライン、音楽処、MUSIC SHOP PICK UP、more records

■「God Vibration」Music Video


■ユキヒーロープロレスショップ情報

オフィシャルサイト  https://yukihe-ro.jp/
オフィシャルFacebook https://www.facebook.com/yukihero.prowrestling
※7月29日(水)~8月4日(火)まで、大阪・阪急うめだにてポップアップショップをオープン


Vilod - ele-king

 トニー・アレン参加で話題をよんだモーリッツ・フォン・オズワルド・トリオの新譜『サウンディング・ラインズ』から間髪をいれず、同グループのマックス・ローダバウアーと、同作にミックスで参加したリカルド・ヴィラロボスのユニット、ヴィロッド のアルバムがリリースされた。
 
 ヴィロッド名義としてはホアン・アトキンスやネナ・チェリーのリミックスを発表しているし、連名表記ではアルバム『Re:ECM』をリリースしているのだが、『Re:ECM』は事実上ECM音源を使ったミックスCDのような作品だったので、本作がオリジナル・トラックによるファースト・アルバムである。
 全編、ヴィラロボス特有のシンコペーションするビートが横溢し、ストレンジかつエレガントなローダバウアーのシンセが絶妙にアクセントを添える。いわば『サウンディング・ラインズ』以降のアフリカン・リズム・テクノの発展形だ……と冷静に書き連ねているが、このアルバム、かなりの傑作なのである。

 1曲め“モダン・ヒット・ミジェット”、その最初の数秒がはじまった瞬間に誰もがそう確信するはずだ。女性のポエトリー・リーディングに合わせて、ほんの一瞬、速いテンポでキックが刻まれ、次の刹那、何事もなかったかのように、ゆったりしたルーズなビートが鳴りはじめる。この見事さ!
 そして、この最初に刻まれた速いテンポのビートが、「鳴っていないリズム」として記憶の中でループしつづけるため、トラック全体のビート/リズムが意識の上では多層化する。さらにベースライン上で自在に刻まれるスネア、柔らかなハイハット、ローダバウアーのシンセなどがリズムを絶妙に「揺らして」いくのだ。これによりリズムやテンポがミニマルな反復性を維持しまま伸縮する。

 このリズムの「多層性」と「揺れ」こそが、本作全曲を貫く最大の魅惑であろう。一定のミニマルな拍子の中で、リズムが自在に「揺れる」こと。マイルス・ディヴィス『オン・ザ・コーナー』に匹敵するリズムの魔法が、このアルバムにはある(とは言い過ぎか?)。
 緊張と融和。反復とズレ。雑踏の多様な猥雑さ。ミニマル・ミュージックの清潔さ。リズムの伸縮と揺らぎ。聴き手の身体の緊張を解きほぐすマッサージのようなビート。まさしく2015年の最新型リズム/ビート・ミュージックであり、ミニマル・テクノ/ミニマル・ダブの領域を拡張する驚異的な作品だ。

SAKANA - ele-king

いつでも聴きたい元気が出る曲。

年代ジャンル問わず、いつになっても好きな曲、アガる曲を10曲選んでみました。
賑やかな曲ばかりですが、何よりラップものと女性ボーカルものにとにかく弱いです。

<Profile>
ダブステップ、グライム、ジューク、トラップを軸にベース・ミュージックを包括したパーティRAGEHELLを、2012年にK.W.A, YTGLSと共に始動。並行して、NODA、Zatoと「T.R Radio」開始。月に1度、ツイスト気味なDJミックスをライブ配信中。考えるより感じることに重きを置き、音楽と接する。
Soundcloud » https://soundcloud.com/sakanasakana
RAGEHELL » https://www.facebook.com/Ragehelltokyo
T.R Radio » https://mixlr.com/tr–2/

<出演情報>
KAHN & NEEKがブリストルより初来日いたします。是非遊びに来てください!
https://www.ele-king.net/news/004545/

2015/07/24 (FRI)
BS0 1KN
KAHN & NEEK Japan Tour in Tokyo
会場:
Star Lounge (渋谷)
時間:
Open/Start: 24:30
Act:
KAHN & NEEK / GORGON SOUND from Bristol
Bim One Production (Roots/Dancehall Set)
Soi Production (Jungle Set)
100mado 〈Back To Chill〉(Dubstep&100bpm)
SAKANA 〈Ragehell/T.R Radio〉(Weightless Set)
Host MC:Ja-ge
Sound System:eastaudio SOUND SYSTEM
料金:
advance: 3000yen (ドリンク代別途500yen)Limited 150!!!
door: 4000yen (ドリンク代別途500yen)
チケット情報:
https://bs-zero.tumblr.com/ticket
Web: https://bs-zero.tumblr.com/
TW: https://twitter.com/_b_s_0_
FB: https://facebook.com/BS0TOKYO
YouTube: https://bit.ly/BS0YouTube

Super Furry Animals - ele-king

 『リングス・アラウンド・ザ・ワールド』とは、なんて予見的なタイトルだったんだろう。世界じゅうの大多数の人間が、同じ企業が売っている電話を持つことになるとは当時は思っていなかったし……いや、じつはみんな知っていたのかもしれない、そんな未来/現在が来ることを。「リン、リン! リン、リン! リングス・アラウンド・ザ・ワールド!」と繰り返すことで誰もを心躍らせるポップ・チューンは、そんな世界がやって来ることへの高揚と恐怖、その両義性を示しているようにいま聴くと思えてならない――「遅かれ早かれ、僕たちは溶け合ってしまうんだよ」。

 同作はグローバリズムにジェントルに、しかし屹然と抗してみせたスーパー・ファーリー・アニマルズにとっての最高傑作だが、今年デラックス・エディションとして〈ドミノ〉から再発されたのはそのひとつ前の、ディスコグラフィのなかでは少し埋もれがちなフォーク・アルバム『ムーング』だ(2000年、通産4作め)。なぜこのアルバムなのか? そこには15周記念とか、廃盤になっていたからとか、いろいろ現実的な事情もあるだろうが、しかし、ある理由によって時代が召喚したのだと僕は思いこんでしまいたい──このアルバムは全編ウェールズ語で歌われているのだ。

 国内盤のライナーノーツに寄せられたフロントマンのグリフ・リスのインタヴューでの発言によると、古くからウェールズ語を話すコミュニティが不動産業界の介入もあって破壊されつつあるそうだ。制作当時『ムーング』には政治的な動機はさしてなかったそうだが、時が経つとともにその意義はますます重みを増している。いまや消えつつある共同体の、そこに住んだ労働者たちが話した、いまや消えつつある言語――その言葉を使ってバンドは、わたしたちには何を言っているかぜんぜんわからない、だけどその体温は確実に伝わってくるフォーク・ソングを鳴らしている。

 デラックス・エディションというような類のものに僕は正直それほど惹かれることはないのだけれど、ピール・セッションでのライヴが収録されていることは本作のひとつのトピックだ。少しばかりくだけていて、とても親密な録音はこのアルバムの楽曲にフィットしていて、ファンはぜひ聴いておきたいものだ。と同時に、このウェールズ出身のモダン・サイケ・バンドを聴いたことのない90年代以降生まれにも親しみやすい作品であるだろう。というのは、ここでのアシッド・フォークともチェンバー・フォークとも言える楽曲群は、USインディ(・フォーク)で起こったことを5年ほど先取りしているようにも聞こえるからだ(じっさいこの再発とともに、アメリカのリスナーにバンドのディスコグラフィが再発見されているようだ)。厚みがあって陶酔的なコーラスや生々しい録音のアコースティック・ギター、哀愁を帯びたブラスの旋律。それはグリフが発するウェールズ語のミステリアスな響きとも相まって、聴き手たるわたしたちを霧が立ち込める森へと連れて行ってしまう。そこでは人びとが知らない言葉を話しながら生活をしている……。けれどもそこではときに、時空がねじ曲がったかのようなおかしなウェスト・コースト・ポップ、サーフ・ロックも演奏されて、共同体の人びとはとても楽しそうだ。

 僕たちはもちろん、世界を壊していくグローバリズムに誰よりも自分たちが加担していることを知っている。いっぽうではマシュー・ハーバートのようなアーティストをリスペクトしながら、もういっぽうでは日々の消費活動を通して何よりも自分たちを傷つけている。その積み重ねとともに15年を経て、ますます格差は広がり、それでも『ムーング』から響いてくる優しさは変わらない。本編ラスト・トラック“Gwreiddiau Dwfn / Mawrth Oer Ar Y Blaned Neifion”の、荒れる心をなだめるように響くブラスとギター、そして何を言っているか全然わからないグリフの穏やかな歌。訳を見るとここでもまた、電話のモチーフが見受けられる。「落ち着くんだ 電話が鳴り響く/それは真っ暗な孤独を反映している」……世界はますますひとつになって、なのに僕たちは孤立していくばかりなんだろうか? だがそんな不安と悲しみに、この歌たちはありったけの思いやりでもっていまも寄り添ってくれる。

R.I.P. 横田進 - ele-king

 テクノ/ハウス/エレクトロニカのプロデューサーとして国内外に多くのファンを持つ横田進が、3月27日、長い病気療養のすえ永眠したことが最近わかった。音楽関係者との接点を持たなかったご遺族が、先日、遺品整理中に見つけた関係者からの手紙を頼りに報告があった。54歳だった。

 横田進は、ハウス・ミュージックに触発されて、90年代初頭から本格的な音楽活動をはじめている。初期の作品、1993年にドイツの〈ハートハウス〉からリリースされたFrankfurt-Tokio-Connection名義の12インチ・シングルは、都内の輸入盤店でも話題になった。当時勢いのあったジャーマン・トランスの重要レーベルからのリリースだったということもある。が、何よりも、無名の日本人がいきなり海外のレーベルから作品を出すことがまだ珍しかった時代のことだった。いまや音楽は世界に開かれている──そんなオプティミスティックな気配がアンダーグラウンドなシーンでは広まりつつあったころの、象徴的な出来事だった。横田進は、当時のレイヴ・カルチャーのグローバルなうねりに与した最初の日本人アーティストのひとりだった。
 そして、この20年以上のあいだ、横田進の音楽は国内外で高く評価されることになる。とくに90年代末から00年代初頭にかけての横田人気はすごかった。ぼくは、あるイギリス人ライターから「自分が取材したいのはDJクラッシュとススム・ヨコタ」と言われたことがあったし、海外メディアに「レディオヘッドを聴いてなぜヨコタを聴かない」と皮肉られたこともあった。

 横田進は、90年代は主に〈サブライム〉レーベル、90年代末からは自身のレーベル〈スキントーン〉とロンドンの〈LOレコーディングス〉といったインディ・レーベルを拠点に活動を続けていたが、2006年はハリウッド映画の『バベル』に楽曲を提供するなど大きな舞台でも活躍している。そして、結局のところ彼は、およそ22年間の音楽生活のなかで、35枚以上のアルバムと30枚以上のシングルを残した。2012年の『Dreamer』が遺作となったので、より正確に言えば、20年間にアルバムとシングル合わせて70タイトル近くも出したことになる。ひたすら音楽を作り続けていたとも言えるだろう。

 ぼくが横田さんと初めて会ったのは、1993年の初頭だったと思う。場所は麻布か青山あたりのクラブで、知り合いに紹介された。その日、(当時のクラブ・カルチャーがそうだったように)閉店までいた連中みんなで青山デニーズに行って話し込んだりしたが、そのときは横田さんとは挨拶程度しかしなかった。
 2回目に会ったのは1993年の12月末の、麻布イエローでのUR初来日ライヴのフロントアクトを横田さんが務めたときだった。ステージ上にはTR909と2台のTB303ほか数台のアナログ機材が並んで、それらを操作する横田さんの隣ではマコトさんという、これまた実に存在感のある人が長髪を振り乱し、一心不乱に踊っていた。まさに“あの時代”のひとこまだ。
 他にも、いろんな場面を思い出す。1994年7月ラヴ・パレード期間中には、ベルリンのトレゾアというクラブで会った。横田さんは、名誉ある、日本人としては最初のラヴ・パレード出演者だった。
 もしセカンド・サマー・オブ・ラヴなるものが日本にも上陸して、風景をひっくり返すような勢いで、あり得ないほどの狂騒と信じられないくらいの恍惚を伝播させながら、それを体験した人たちの生き方や音楽に関する考えを変えてしまったとしたら、のちに自己否定することになるとはいえ、横田さんは間違いなくそのひとりだった。1994年に発表した『アシッド・マウント・フジ』は、わずか2年で日本にレイヴ・カルチャーが根付き、そしてシーンが生まれたことの証明だ。(そして、そのアルバムが出たばかりの頃、横田さんにサインをねだった19歳の美少年こそ、後に〈メトロジュース〉を始動させる塚本朋樹だった)

 横田さんには名作がいっぱいある。90年代で言えば、デトロイト・テクノに傾倒したころのプリズム名義の『メトロノーム・メロディ』はクラシックだし、トリップ・ホップを取り入れた『キャット、マウス&ミー』やフレンチ・タッチに共振した『1998』も忘れがたい。



 1997年の秋、ぼくは取材のため、初めて横田さんの家に行った。池尻大橋の古い木造一軒家の二階に住んでいた頃で、909や303はもうなかった。「そういうものを所有していると前に進めないから売ってしまった」と彼は言った。
 ほかに印象に残っている言葉を抜き出してみる。「この環境が貧乏な自分にはぴったり」「堕天使のイメージに憑かれている」「もうクラブ・シーンや業界のしがらみが嫌になって、ほんとど人に会わず、公園にいったり、猫としゃっべたりしている」「散歩とプールと図書館が日課」「昔はよかったんなんて言ってもしようがない」「スピリチュアルなものにも興味がない」「ジョイ・ディヴィジョンばかり聞いている」
 そのとき横田さんはこんなことも言った。「ぼくは将来、粉になりたい。粉はふっと吹いただけでバラバラになって、もう元のカタチには戻れない。ぼくは死ぬ直前に白い粉になりたい。いまは粉になるためのプロセスだと思っている」(以上、『ele-king vol.16』より)
 すごいことを言う人だなと思った。そして、このころから横田さんの作風も確実に変わっていった。
 この取材以降、ぼくと横田さんは打ち解けて、会話するようになった。なんどか飲みに行ったこともある。いちどある飲み会で、ぼくが席を立ったとき思わずビールをこぼしていまい、近くに座っていた女性(たしかモデルかなんかだったな)の洋服に思い切りかけてしまったことがあった。それで、ぼくがただただ狼狽しているときも、「ヨコタはいっさい表情を変えなかった」と同席したイギリス人が感心したものだった。
 青山通り沿いのギャラリーで、横田さんのヴィジュアル作品を集めた個展が開かれたこともあった。自身のレーベル〈スキントーン〉をスタートしたころで、彼の最高傑作の1枚であろう、アルバム『SAKURA』(2000年)がとくに海外で大きな評判となっていたころだった。



 90年代末から、ぼくはわりとコンスタントに──といっても1年に1回ぐらいだが──横田さんと会っていたような気がする。
 初めて横田さんの立川のご実家を訪ねたのは、2004年だったと思う。以来、ぼくは2009年までのあいだ1年に1回は横田さんの家に行って、缶ビールを飲みながら横田さんの話を聞いた。

 横田さんの創作活動は、経済面で言えば、ある程度は恵まれていたと言えるだろう。彼のCDは、とくに00年代以降は、作ればほぼ確実に海外に流通していたし、それなりの数が売れていたはずだ。音楽だけでやっていけるだけの稼ぎはあったと思う。海外からもライヴのオファーは毎年のように来ていたし、ビジネスクラスさえ用意されていた。それでも、すでに体調を崩されていた横田さんは、すべてのオファーを断っていた(ぼくはそれを聞いて、いつも「もったいない」とぼやいていたのである)。

 横田さんはある意味頑固者ではあったけれど、裏表のない正直な性格の人で、いつもありのままの自分でいる人だった。高尚な話からわりと他愛もない話までいろいろ話してくれたけれど、ぼくにはどうしても踏み込めないところもあった。それはひと言で言えば、彼の美学に関することだった。
 横田さんはいわゆるアーティスト肌の人で、ロマンティストだった。彼には自分の生きるべき世界があった。生活のにおいのしない人だったし、人付き合いが下手で、べたべたした人間関係を好む人でもなかった。ダンス・カルチャーという、むせかえるほどの人ばかりの世界に、横田さんみたいな人がよくいたものだとあらためて思う。シーンとの接触を持たせなかったこの10年の作品には、クラブ・ミュージックとしての機能性はなく、そしてその代わりに横田さんの美しいと感じるものすべてが詰め込まれているが、最後の最後まで彼がダンス・ビートを捨てることはなかった。 

 ぼくは横田さんと同じ時間を過ごせたことを誇りに思う。繰り返す。セカンド・サマー・オブ・ラヴなるものがもし日本にあったのなら、横田さんは、その時代を代表するひとりだった。そして、数年後には自己否定したように、その終わりの象徴的な人でもあったのだ。彼が言ったように、それは粉となって風にさらされ、もう元のカタチには戻れない。そのはかなさのようなものが、横田さんの音楽にはたしかにある。ハウスをやろうがアンビエントをやろうが、あるいはトランスをやろうが。



Statement

It is with great sadness that we announce the death of Susumu Yokota who passed away on 27th March, 2015 at the age of 54 after a long period of medical treatment.

We are deeply thankful to the people who listened to and supported Susumu's music during his lifetime.

Please accept our sincere apologies for the delay in this announcement, as we were until recently unacquainted with Susumu's music industry contacts.

14 July, 2015
Susumu Yokota's family

Please contact Yokota’s family and close friends on:
yokota4ever@gmail.com
*English mails are accepted.

 

訃報

2015年7月14日

アーティスト、横田進はかねてから病気療養中のところ、2015年3月27日、54歳にて永眠いたしました。
生前、進の音楽を聴いて下さった方々に深謝するとともに、私ども遺族に進の音楽関係の方々とのご面識がなかったがため、このようにご報告が大変遅れてしまったことを深くお詫び申し上げます。

横田進 姉

遺族・関係者へのご連絡は、メールにて以下のアドレスにお問い合わせください。
yokota4ever@gmail.com
Please note that English mails are accepted.

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972 973 974 975 976 977 978 979 980 981 982 983 984 985 986 987 988 989 990 991 992 993 994 995 996 997 998 999 1000 1001 1002 1003 1004 1005 1006 1007 1008 1009 1010 1011 1012 1013 1014 1015 1016 1017 1018 1019 1020 1021 1022 1023 1024 1025 1026 1027 1028 1029 1030 1031 1032 1033 1034 1035 1036 1037