『てなもんやSUN RA伝』は、湯浅学の傑作。この人のPファンクやサン・ラーについての語りは、本当に面白い。その面白さは、彼らの音楽の複層性──大らかだが反抗的で、社会的で、政治的で、実験的で、怒りながら荒唐無稽でしかも笑えるという特徴を巧妙に表している。『ミュージック・マガジン』での連載をまとめた『てなもんやSUN RA伝』は、サン・ラーの評伝であり、ディスクガイドであり、湯浅学の名エッセイ集である。ぜひ手にとって欲しい。
今年は、サン・ラー生誕100周年。この音楽家は、人類の時間軸では1914年に生まれ、1993年に他界したことになっているが、地球は自分の故郷ではないと主張したことで知られている。もし地球が自分の故郷であるなら差別や戦争があるはずがない、ゆえに自分は宇宙からやって来た。サン・ラーは、彼自身の説明によれば土星人であり、彼のジャズ楽団アーケストラは早い時期から電子機材を取り入れたことでも知られている。40年代から活動をしている彼は、エジプトのマントと宇宙カブトをかぶったピアニストである。50年代にはローファイな宅録作品、ドゥーワップやスウィング・ジャズの楽曲も多く残している。60年代にはヒッピーから愛され、サイケデリック、スペース・オペラ、フリー・ジャズやアヴァンギャルドとも交わり、晩年にはDJカルチャーからも愛されている。彼は地球時間40年もの活動のなかで、100枚ほどの作品を残している。彼のハンドメイドのレコード(サターン盤)は、いまで言えば会場で売られているCDR作品にも近く、世界のコレクターが探している超レア盤だが、この20年のあいだの再発のおかげで、ずいぶん身近に聴けるものとなった。この度も、生誕100周年を記念して、2枚の名盤が日本盤としてリイシューされる。
1978年の作品『ディスコ3000』、1979年の『スリーピング・ビューティ』、ともに彼のディスコグラフィーのなかでもいくつかあるハイライトの1枚に数えられるだろう。前者はアーケストラのエネルギッシュなスペース・フリー・ジャズを、そして後者では宇宙規模のチルアウト・ソウル・ジャズを堪能できる。とくにフライング・ロータスの新作を評価するあなたは、避けては通れないはずだ。
湯浅学
てなもんやSUN RA伝
音盤でたどる土星から来たジャズ偉人の歩み
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