![]() tofubeats First Album Remixes WARNER MUSIC JAPAN INC. |
つい先日デジタルで発売されたトーフビーツの『First Album Remixes』の1曲目が“Don't Stop The Music”の砂原良徳リミックス。新世代の作品にベテランが手を貸した最初のヴァージョンとなった。
トーフビーツからは「現在」が見える。インターネット時代の(カオスの)申し子としての彼の音楽には、90年代を楽しく過ごした世代には見えにくい、重大な問題提起がある。ゆえに彼の楽曲には「音楽」という主語がたくさん出てくる。音楽産業、音楽文化、あるいは知識、音楽の質そのもの。
自分が若かった頃に好きだった音楽をやる若者は理解しやすいが、自分が若かった頃にはあり得なかった文化を理解することは難しい。なるほど、ボブ・ディランは最近ロックンロール誕生以前の大衆音楽をほぼ一発で録音して、発表した。これは、インターネット時代の破壊的なまでに相対化された大衆音楽文化への本気のファイティングポーズなんじゃないだろうか……だとした、さすがディランだ。しかしもう時代の針を戻すことはできない。
インターネット文化には、そもそもヒッピーの聖地近郊のシリコンバレーには、カウンターカルチャーの遺伝子がある、と今さら言うのは、80年代を懐かしんでいるわけではない。僕がUSの若い世代の音楽批評を読んでいてあらためて感じるのはそのことなのだ。ヴェイパーウェイヴの「日本」には、『ニューロマンサー』の「チバシティ」と似たものを感じるでしょう? それはずっとあり続けているのだ。
が、しかし……それを反乱と呼ぶには、瞬く間に資本に取り込まれているのかもしれない。自由であるはずが、意外なほど窮屈だったりするのかもしれない。トーフビーツは、そうしたもうひとつの現実も知っている。親は、子供がライヴハウスに出演することよりも四六時中インターネットにアクセスしているほうを心配するだろう。電気グルーヴが登場したときのように、トーフビーツにも賛否両論の新しい価値観がある。ものすごーく引き裂かれたものとして。
だから電気グルーヴは聴かなきゃいけないみんなの教科書的なものなんですよ。──トーフビーツ
電気グルーヴが教科書ってどうかと思うけど(笑)。──砂原良徳
■今日が初対面っていうのがあまりにも意外でした。
砂原良徳(以下、砂原):ハハハハ!
■当然もう何回も会っているものかと。
砂原:クラブとかの入れ替わりで1回くらいはどっかのイベントでね。
トーフビーツ(tofubeats以下、T):それこそサーカスとかで1回くらい会っていてもおかしくはないんですけど。
砂原:会ってなかったね。
■意外だよね。とにかく、今回のリミックス・アルバム『First Album Remixes』は、まりんが参加したってことが大きなトピックだから。トーフビーツ世代と電気グルーヴ世代がいままで一緒になることって、作品というカタチではなかったよね?
T:そうなんですよね。こっちからソニーに「マスターをください!」って言って“MAD EBIS”をリミックスしたことはあったけど。
砂原:あったねー! それは俺も聴いたよ。
T:実は僕、××(大手メジャーの新人発掘部門)に5年くらいいて。
砂原:あ、そこにいたんだ!
■だってWIREに出てるんだよ。
T:WIRE08の一番上のちっちゃいアリーナに出てて。
■しかも高校生で。
T:それで、てっきりそこからデビューすると思っていたら、ワーナーさんからデビューすることになって。
■このひと(トーフのマネージャーのS氏)もそこだったんだよね。
T:だから、最後の最後に、これまでのリミックスをまとめたアルバムを出しましょうってなって、「“MAD EBIS”のパラをもらえますか?」って聞いたら、「DATがテープしかないから、スタジオに請求するから」という流れでいただいて作ったんですよね。
砂原:俺はそれを何で知ったんだっけな。電気のリミックスをやったんだって経緯を後で聞いたんだけど。
T:そのときに「“Shangri-La”じゃなくていいの?」みたいな話をされたって言いましたよね。
砂原:ははは、自惚れ。
T:ハハハハ!
■あれは何年前?
T:まだ3、4年前ですね。
砂原:ちなみにいまはおいくつなの?
T:僕は24です。
砂原:まだ若いもんね。
T:90年生まれです。
砂原:90年生まれ! そうかぁ……。
■それは……って感じだよね(笑)。
砂原:いやでもまぁ、そんなもんなんだろうね。
■24歳のときって何してた?
砂原:電気グルーヴですよ。24歳のころはアルバムでいうと『DRAGON』のときかな。
■ちなみにWIREに出ていながら、いままで面識がなかったじゃない? トーフビーツのなかで電気グルーヴとか砂原さんはどういう存在だったんですか?
T:卓球さんには僕はまだ会ったことないんですよ。
砂原:会ってないんだ。いずれはどっかで会うと思うけどね。
T:WIREは僕、2回出させてもらったんですけど、どっちもあいさつできなくて。
砂原:まぁ、DJしてないときは遊んでるからね。あと、あの日はあいさつしたりいろいろあるんだよね。
T:あとNHKの『MJ』でご一緒したときも、『メロン牧場』で「楽屋挨拶にきたら殴る」っていうのをまだ読んでいなくて、あいさつに行っちゃって、マネージャーさんに「ダメだから」っていわれて(笑)。
砂原:ハハハハ!
T:後から考えて、「そうだ! 『メロン牧場』を読んでなかった!」って。あの日はすごい後悔したんですよ。「ほんと、すいません」って。
■WIREに出てたっていっても、まだ10代だったし、早い時間の出演で、早い時間に帰らなきゃならなかったしね。
T:そうなんですよ。だから帰らされてたんですよね。
砂原:そうかぁ。90年代に生まれたってことは、本当にうちらの音楽を聴いていたときは、4歳とか5歳っていってもウソじゃないっていうことだもんね。僕らのアルバムで『KARATEKA』って作品があるんだけど、あれはパカって開けたところに赤ちゃんが出てくるじゃん? あの世代ってことだもんね(笑)。
T:そうです(笑)。
砂原:恐ろしいな(笑)。
T:いま25周年じゃないですか? だから(電気グルーヴは)僕より年上なんですよ。
■ハハハハ!
砂原:そうだね。まぁ、でもそのくらい時間はたってるよ。だって人間って20年ちょっとでこんなんになっちゃうんだよ(笑)?
T:でもそのときは『DRAGON』だったわけじゃないですか? 僕はまだデビューして間もないですけど、『DRAGON』のときは砂原さんはすでに何枚か出しているじゃないですか?
砂原:でもまぁ、あのときといまじゃ音楽のあり方が違うもんね。もっとリリースすることが主体だったというか。
■そこは今日のテーマですよ。
T:そんな時代に生まれたっていう話ですから。
■いま思うと象徴的だったね。トーフビーツがWIREに出たときに、ちょうど僕が〈マルチネ・レコーズ〉周辺の子たちをWIREに連れて行って。
T:ありましたね。
■まだみんな高校生や大学生でね。4、5人で行ったんだよ。そのときに、みんなが「トーフくんが出てるんで」って言ってて。トーフは神戸で、みんな東京の子どもたちだからね。ネットでは知り合っていても、そんなに会えるわけじゃなかっただろうし。で、僕はそこで初めてトーフに会うんだけど、みんなを引き連れて会場に入ろうとしたときに、ちょうどタサカくんが通りかかって、「なんか引率の先生みたいだね」って言われてね。
砂原&T:ハハハハ!
■おじさんが子どもたちを連れているようにしか見えないよね(笑)。でも、そのときの子供たちがネット・レーベル世代として日本のサブ・カルチャーに大きな影響与える存在になるわけだから。その晩のWIREではそういうことも起きていたんだよ。
T:その頃は、全員まだクラブに行ったことがない歳ですから。まだ18にもなっていなかったし。
砂原:でも本当にはじめるのってそのくらいの歳だったよね? 僕もライブハウスとかに出だしたのって高1とかだよ。中学の3年くらいのときに早いやつは出てたから。それを知って、「これはヤバいな」って焦った記憶があるくらいで。
T:おー。
砂原:高1でライブハウスに出てなかったら、もうやる気がないやつみたいな感じだったよ。
[[SplitPage]]ドミューンで初めて見たとき、「コイツ面白いな」というのと「いい顔してんな」って思った(笑)。──砂原良徳
宇川さんが悪意たっぷりで俺の顔のアップとかを超抜きまくってていまだにけっこう言われるんですよ。「コイツの説明よりも顔が面白い」って。──トーフビーツ
■昔、もう何年も前だけど、トマドくんにインタヴューをしたとき、何に影響を受けたのか聞いてみたら、最初はライムスターとかが好きだったみたいで。
T:そうだ! 俺、その話、超好きなんですよね。
■だから最初は日本語ラップが好きで、その延長で電気グルーヴへ……っていう。
T:リップ・スライムの“ジョイント”って曲を聴いて、2曲くらい聴いたらもうジャングルへいっちゃったんですよ。それで、この音楽をもっと聴きたいってなって電気グルーヴのラジオを聴いて。それで、こんなことになってしまいました、って出てきたのが僕の友だちのレーベルなんですよ。だから、日本語ラップを2曲くらい聴いて、あとはテクノを聴きだしたっていうのが僕らのヘッドというか。
砂原:へぇー!
T:だから電気グルーヴは聴かなきゃいけないみんなの教科書に的なものなんですよ。
砂原:電気グルーヴが教科書ってどうかと思うけど(笑)。
■ハハハハ!
T:そこで流れていた当時の音源とかをシェアして、シカゴ・ハウスをチェックしてとかそんな感じでした。
砂原:なるほどね。
■世代的に情報源がTSUTAYAなんだよね。小学校、中学校のお小遣いがないときはとくにね。
T:TSUTAYAだけで聴ける絞られた有名なテクノだけを。
砂原:でも野田さんとかが出していたコンピレーションはけっこうあるもんね。
■石野卓球とやっていた『テクノ専門学校』ね(笑)。
T:そうなんですよ。あと、ソウルとかも『フリー・ソウル』でしか聴けない。ボサノヴァもコンピでしか聴けない。そういう感じでTSUTAYAで頑張るみたいな。そうやって最初はスタートしましたね。
■そこでいきなり電気グルーヴの影響がね。90年代にはあまりなかったじゃない? 2000年代も出てこなかったと思うしね。
砂原:あんまり出てこなかったもんね。だから、それくらいの時間が一応必要だったというか。影響力もないわけじゃないけど。まぁ、こんなものなのかな、くらいに思っていて。だいぶ遅れて影響が出てきているところっていうのはあるのかな。
T:どうなんですかね。そのサイクルは意識したことがないですけど。
砂原:たまにイベントとか行って、若い子とかとごはんを食べながら話しをしてて「昔は何を聴いていたの?」って聞くと、「電気グルーヴとか」って言うんですよ(笑)。「いや、まじめに話しをしてよ!」「いや、まじめですよ!」みたいになるのね。
T:まじめですよ(笑)。
砂原:「えー! そうなの!」ってなることはありましたね。あとは「小学生のときに聴いていました!」とか。「ウソつけ! そんなことねぇだろ!」って思って計算してみたら当たってるっていう(笑)。
T:ハハハハ!
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■まりんは、トーフビーツの名前を当然知っていたんだよね?
砂原:いつ知ったかは憶えてないけど、最初は「またこんな名前付けやがって」って思った(笑)。
T:えー! 名前なんすか!?
砂原:まずその印象で、自分にインプットされて。それでドミューンか何かに出てたのを見たのかなぁ……。なんかね、サンプルを細かく切り刻む説明をしていたような気がする。
T:やってました。
砂原:だよね? それってやっぱり、音楽の手法としてはメインにくるものではないじゃないですか? それを主食とするような説明をしてて、「コイツ面白いな」というのと「いい顔してんな」って思った(笑)。
一同:(爆笑)
T:その日すごく憶えてるのが、宇川(直宏)さんが悪意たっぷりで俺の顔のアップとかを超抜きまくってて。
砂原:ハハハハ!
T:いまだにけっこう言われるんですよ。「コイツの説明よりも顔が面白い」って。
砂原:実はそのとき、顔を見たてたら、瀧の若い頃とちょっとかぶって見えたんだよ。
一同:(爆笑)
砂原:それでたぶん、いい顔だって思っちゃったんだよ。その後、ツイッターとかフェイスブックみたいなものが浸透してくるとさ、どんなことをやっているかが自動的に流れてくるじゃん?
T:はい。
砂原:それで曲を聴いてみたら、意外と普通の……
T:顔のわりにはちゃんとというか(笑)。
砂原:普通というか曲っぽい曲をちゃんと作っていて、「あ、こういうのも作れるんだ!」って思って。でもサンプルを切り刻むのはずっと主食なんだなって。強く認知されたのは、どこがポイントだったの?
T:メジャー・デビューの前にボンってなったのは、テイ・トウワさんと今田耕司さんが作った曲を弾き直して作った曲がインディーズ・ヒットになったんです。そこでアルバムを出して、そのままメジャー・デビューって感じだったんで。
■“水星”だよね。
T:そうですね。
■でも、その前の“しらきや”とか。
T:それがターニング・ポイントになっていると言うのは、野田さんだけですよ(笑)!
■トーフビーツには電気グルーヴにとっての人生みたいな時期があったんですよ。
砂原:そうそう。最初はその印象だったんだよ。
T:某グループのブートレグとかを作ったり、リミックスのCD-Rをゴニョゴニョとかしてて、高校のときはそれでお小遣いを作っていました。
■“しらきや”っていう曲は初期の電気グルーヴに似ているといえば似てるよ。言葉のコンセプト的には。
T:どうなんですかね。ハイ・ファイ・セットのループで2ちゃんのコピペを読み上げただけなんですけど。
砂原:わりと初期衝動をそのままパッキングするようなね。
■ようするに、白木屋でバイトしている友だちとの会話みたいな感じで、「あの頃の俺は時給いくらだった」みたいな。アホみたいな会話のなかのディレイのかけ方とか。
砂原:でもさぁ、そういうのって面白いよね。ああいうのって、何だろうね。そういうのは、そういうときにしか作れないし。そんなくだらないこと大人になったらやらないから、やっとくべきだよ。記録しておくべきだね。
T:大事にとってあります。
砂原:あとからすごく面白くなると思うんだよね。
■しかも、なんで俺がトーフビーツを知ったかっていうと、静岡のクラブで“しらきや”がかかってたんだよね。電気グルーヴっていまでこそ誰もが評価しているけど、初期の頃は、当時の若い世代が熱心に支持していた印象があって、その感じも似ているんじゃないかと思った。
砂原:へぇー!
■若い大学生くらいの子たちのパーティに行ったらアンセムになってたんだよね。
T:青臭いヤツらだ(笑)。
砂原:それは随分いびつな状況だ(笑)。
T:いびつな流行り方をしていって、最終的には就職しようってなったときに、ワーナーさんが申し出をくれまして。まぁ、一応は体良くアーティストっぽく収まった感じなんですよ。
砂原:なるほどね。まぁ、でも、ミュージシャンも野球選手みたいなものでポジションがなかったらすぐに「いけ」って言われるけど、外で空いていたら「じゃあうちで」っていうのはあるよね。
■まりんのマネージャー氏の前で言うのもあれだけど、本来であれば電気グルーヴを見いだしたソニーがね(笑)。
T:その話は実際に野田さんとしていたじゃないですか?
砂原:でもねぇ、そうじゃないところの方がいいかも。やっぱり過去にこういうことがあったってところに、当てはめちゃうきがしない?
■たしかにね。
砂原:だからそれが必ず正解だというわけじゃないからね。
■まりんも昔、(YMOがいた)アルファ・レコードから出したいって思ったものなの?
砂原:思ったこともあったけど、ほんの一瞬だけかな。スタジオが見たかったからね。2回くらい見たけど。
[[SplitPage]]サンプルを切るのもそうなんですけど、切ると現実じゃない音を出したりできるのがよくて。ピッチを落とすのもそれに近いというか。──トーフビーツ
そういう意味でいうと、僕も昔、音楽を聴いていたときに、タンテで自分が好きなところにピッチを合わせて聴いて「コレは落とした方がいいんだよ」とか、「45回転でもいける」とかね。──砂原良徳
■それでまりんはトーフビーツの、顔やサンプリング以外では、他にどんなところが気になってたの?
砂原:その、ネット・レーベルと言っていいのか、電気グルーヴを子どものころに聴いていた世代と言っていいのかわからないけど、なんかそういう地位みたいなものがうようよあって。そのなかのわりと目立っているひとつなんだなって認知はしてたね。やっぱり気にしてみてたんじゃないかな。やっぱり記事とかあるとクリックして読んだりとかしていたと思うし。興味がなかったらクリックすらしないからね。
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■音は今回のリミックスより前も聴いてたの?
砂原:ネットにあがってるのとかは聴いてたよ。
T:マジっすか! ヤバい。
砂原:だから、最初の初期衝動っぽいやつとかも聴いたことがあるし。あと、わりと普通っぽい曲を聴いたときに、こういうのも作れるんだって思ったかな。
T:それはありがたいです。
砂原:それでなんか、化ける兆候が見えてきたなってそのときは思った。それでアルバムが出たっていうから、聴いたんだけど、「あっ、普通に作るんだな」って思ったかな。ただ、普通なんだけど、サンプルを切り刻むのがね。
T:本当はそれをやりたいけど、メジャーにいくと権利のクリアランスとかもあるので。
砂原:でもそういうのを取り入れるバランス感というか、それはよくできてるなって。電気とかだとさ、そうじゃなくて初期騒動をそのまま7インチで出そうとかってなっちゃうこともあったけど、それをひとりでうまくまとめてる気はしますね。
T:電気グルーヴを見てて思うのが、僕はひとりなんで、それができないっていうのか、それがずっと俺の悩みというか。このひとといたら、俺を開放できるとか。あと、このひとがふざけてくれるから、俺はまじめにやろうとか、そういうのもないので。
砂原:ソロはねぇ、いいところもあるけど、バンドっていいよ(笑)。
■ハハハハ! それは何周目かして言える意見だよね。
砂原:バンドってホントいいよ。楽しいしね。
T:いいな!って思いながら見てます。
砂原:僕自身音楽を聴いてきてさ、ソロで好きなひとがいなかったわけじゃないけど、やっぱり最初に好きになるのはバンドだよね。僕の場合は。クラフトワークだって、最初はラルフ・ヒュッターを好きになったわけじゃないし。
■たしかに。
砂原:4人が並んでああやっている感じがよかったわけで。YMOやディーヴォやトーキング・ヘッズとかもそうだけど。あのへんはバンドとしてかっこ良かったというか。
■そうだよね。そのバンドっていう単位も、現代ではカジュアルではなくなっているよね。この10年で、いろいろなものが変わったからね。たとえば、トーフビーツの『First Album』を聴いてひとつ思ったことがあって。アルバムのなかで、テーマとして「音楽」って言葉をくり返し使うじゃない? まりんがリミックスした曲も“ドント・ストップ・ザ・ミュージック”だけどさ、「音楽を止めないで」っていうのはクリシェ的なところもあるんだけど、トーフビーツが「音楽を」とかって言うとさ……アルバムのはじまりも「音楽サイコー」っていう言葉でしょ。で、「音楽で~」って歌がはじまって、なんか、大袈裟に言うと、「音楽」っていうものはいまどうなっているのか?っていうか。不自然なほど「音楽」という言葉が出てくるんだよ。
T:悲壮感が漂っていることが多いですからね。
■「音楽」に、複層的な感情が込められている気がするの。それは夢であり、もはやたんなる消費物で、もはや過去の文化かもしれなとか……それは、トーフがインターネット時代に打ち込みの音楽をやっているということが、大きいと思うんだよね。初期の電気グルーヴがライヴハウスでやっていた時代とはぜんぜん別の世界でしょ。
砂原:うんうん。
■だから、トーフビーツのアルバムを聴いていると、なんか問題提起を聞いているような気持ちになるんだよ。
T:みなさん打ち込みだけど、スタジオとかでやって、マスタリングへいって、トラックダウンもひとがやってとか、当たり前ですけど、結局僕は90%くらいが家ですもん。
■あと、トーフビーツはわざわざ「僕はメジャー・デビューしました」ってすごく主張するんだけど、90年代に同じことを言ったとしても全然意味が違うというか。
砂原:うん。全然違うよね。
■インターネット時代には、ヴェイパーウェイヴだとかチルウェイヴだとか、シーパンクだとかって、ある種のアマチュアリズムを面白がる文化空間があって。そこは、機会のチャンスの増えた分、音楽の価値が相対化している場所でもあるんだよね。だから、トーフの表現には、そのアンビヴァレンスがすごく出ている。
T:アンビヴァレンスというか、僕は単純に昔が羨ましいって一点張りなんで。
■ハハハハ。でも『First Album』の前半なんかは、サンプリングをするにしてもスクリューしたりね、それは現代のネット音楽や若い世代が好んで使っている手法なんだよね。そういうディテールは、明らかに現代的なんだけどね。
砂原:あのピッチをすごく落とすのはなんなの? 西海岸のあれなの?
■アメリカのテキサスにDJスクリューってやつがいてね。
T:「ピッチを下げたほうがよく歌詞が聴こえるじゃないか」って名言を残しているひとなんですけど。
砂原:なんか僕そういうのを探してたな。エイティーズのもののピッチをガツンと落としたものばっかりあって。そこに俺の曲のネタも入ってて。それで俺の曲とか聴いてんだって思って。
■あー、まさにそのノリ。さっき言ったヴェイパーウェイヴとかって。
T:日本語は一番スクリューにいいっていう話しがあって。中高域が出てるから、下げるとちょうどよくなるっていう。
砂原:なるほどね。
T:僕は意味もなくピッチを下げるのが超好きなんです。普通に自分で聴くように、ピッチを70パーセントくらいにしたボニー・ピンクの曲とかがiPhoneに入っているんですよ。そういうのをやりたいみたいな。
砂原:あのピッチを落としたのを聴いたときに、意味はわからないけどすごくいいと思って。
T:DTMをやっていて一番いいのは、現実にはできない音が作れるってところが好きなんで。
砂原:例えばどういう音?
T:サンプルを切るのもそうなんですけど、切ると現実じゃない音を出したりできるのがよくて。ピッチを落とすのもそれに近いというか。
砂原:そういう意味でいうと、僕も昔、音楽を聴いていたときに、タンテで自分が好きなところにピッチを合わせて聴いて「コレは落とした方がいいんだよ」とか、「45回転でもいける」とかね。
T:『音楽図鑑』の“チベタン・ダンス”とかみんなが45でかけているのを見て、俺はあの曲はずっとあの速さだと思っていたんですよ(笑)。家で『音楽図鑑』を聴いてみたら、全然違うじゃんって。
■ここ5年くらい、ずっとスクリューは流行りなんだよね。
砂原:あれ流行りなんだね。
■アンダーグラウンド・シーンの流行りだよね。だから、トーフビーツは、ポップスを意識しているけど、アンダーグラウンドの要素もちゃんと入っている。そこも電気グルーヴっぽいんだけど、ただし現代では、そういうトレンドが生まれる場所はインターネットで、しかもそこでは音楽がタダでもある。
砂原:そうなんだよね。
■だからトーフは、敢えてメジャーにいったってことを強調しなきゃいけない。
T:そうそう。いまはこれで生計を立ててるぞっていう。
■そうすると、「音楽を止めないで」っていう彼の言葉も意味深に思えてくるんだよね。
砂原:「音楽を止めないで」は、音楽をやるひとの普遍的なテーマというか、それこそクラフトワークですら「ミュージック・ノン・ストップ」って言っているくらいだから(笑)。でもいまそう言うってことはそういう意味があるってことなんだね。
[[SplitPage]]俺がいま高校生だったらCDとか絶対に買わないと思うよ。──砂原良徳
データもクレジットカードがないから買えないしっていう話なんですよね。そうなるともう八方塞がりで。──トーフビーツ
■インターネットはいろんなものを破壊しちゃったから。
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砂原:そういうことができていたのって僕らくらいまでだよね。僕より下の世代とかだと、ACOとかスーパーカーのナカコーとかさ、あのへんの世代って多いじゃん? あの世代になってくると、それで生活できていたひとと、そうじゃないひとが分かれてきている感じがするんだよね。そのくらいからそうなってきていて、現代では、ほとんど難しいっていうことだよね。
■そういう意味ではトーフビーツは、シーンというか現在に対して問いかけをしている存在でもあるんだよね。
T:あと、あんまり言いたくはないんですけど、「こうこうこうだから買ってくれ」って言うって感じですけどね。
砂原:難しいよね。昔だったら普通にCDっていう形しか方法がなかったから、お金を出していたんだけど。
T:いまは形がどうこうっていうよりも、あんまりみんな聴いてもないって気もしますし。
砂原:シーンとか音楽の内容とかよりも、システムの話になっちゃうけど、昔だったらCDやレコードの棚とかプレイヤーを買ってさ、そういうことをやらなきゃいけなかったじゃない? 音楽を聴くためのシステムとして、棚からプレイヤーから全部あったってことなんだけど、いまそれをきちんと代用できるものがないんだよね。
T:たしかに。
砂原:たとえば、iTuneで買っても歌詞カードはどこで見るんだよっていう。
T:クレジットも見れないし。
砂原:そうそう。そういうところがパーフェクトにできるシステムが存在していないわけ。お金を稼ぐことだけがその唯一の道じゃないと思うけど、世界中の音楽ビジネスを守っていきたいってひとがいたら、ある程度は合意して統合したシステムを作らないといけないと、守れないような気がしているんだよね。
だから、「いまハイレゾって言っとけば、とりあえずは稼げるか」みたいな雑なビジネスをしようとしているひとはいっぱいいるでしょう?
■ハハハハ。
砂原:そうじゃないひともいるけども、せっかくハイレゾにするんだったら、もうちょっと音楽が周りのことも巻き込んでカルチャーを作ってきたことを認識して、いままでできてきたことを当たり前のようにできるようにしなきゃいけないんじゃない? なんでそうしないのかなって思うんだけど。
T:それはホントにマジですよね。
砂原:音だけ良くなったらいいと思う?
T:僕、ハイレゾはあんまり信仰していないです。
砂原:まぁ、音が良いのはいいんだけどね。
T:先日、小室哲哉さんと対談させて頂いたんですけど、作っていたときの音質で聴ければ大丈夫だよっていう。
砂原:それはそうなんだけど、歌詞カードもクレジットもないし。ヴィジュアル的に音楽を聴くためのきっかけみたいなものを与えてくれないとうかね。
T:ハイレゾの機械はデカいし、液晶画面は小さいから、iPhoneよりもテンションが下がるんじゃねえかって思いますよね。
砂原:それでなんでiPodクラシックがバカ売れしてくるかっていうと、入れる曲そのものがなかったりとか、電話とプレイヤーが一緒になっていると、電話がかかってくると音楽を止めなきゃいけないからっていうのもあるんじゃないかな。「音楽を止めないで」って言っているのにさ(笑)。
T:そうそう。それはありますね。
砂原:あるでしょう? だから音楽プレイヤーは独立する必要性があると僕は思うんだよね。
■友人にハイレゾでまた音楽に夢中になっている男がいて、それなりに魅力はあるんじゃないの。
砂原:ハイレゾ自体はそうなんだけど、なんでそこで止まるんだってね。
T:結局はヘッドフォンを売るためとか、そういうところに着地しているような気がしてて。
砂原:カルチャーを守ろうとか育てるっていう気があまりなくて、「とりあえずお金になるものはなんだ?」ってところしか考えていない感じがしちゃう。音が良いことだけで満足できるひともいるとは思うんだけどね。
T:自分のインタヴューでも言うんですけど、「最近は音楽そのものがカッコいいと思われていないんじゃないか?」説というものがあって。最近、マネージャーと〈トリロジー・テープス〉の話しをしていて、あれを聴いてカッコいいって話せるひとが国内に数百人くらいしかいない。「これをどうすればいいんだ!」っていう話になっても、「どうすることもできないよね」ってなるんです。そもそも「CDを出しました、買ってください」ってところを、昔に比べたら聴いているひとの10分の1くらいしか音楽をカッコいいと思っていないんじゃないかなって。
砂原:テレビを見ているとさ、これから音楽が流行りますってなってCDプレイヤーが出てきて、芸人が「えっ! いまどき!?」って言うシーンを何回も見てるよ。だから一般的な考えだと、CD買ったり、CDプレイヤーを持っていることって「いまどきそんなことあんの?」みたいなことなんだよ。
T:電車で隣のひととかを見ていても、携帯でYouTubeを開いて曲を聴いてる、みたいな。
■それはホントに多いよね。ほとんどスマホでYouTubeで音楽聴いているよね。
T:それが悪いこととは言えないんですけど。でも昔みたいに、ウォークマンでカセットのミックスを聴いてる俺ってもうないわけで。それはどうにかならないのかってよく思うんですけどね。
砂原:YouTubeが潰れるだけで、状況は随分と変わると思うけどね。
T:YouTubeが潰れても状況は変わらないんじゃないですか?
砂原:いや、変わってくると思うね。YouTubeに情報が一極集中で蓄えられているのが僕は問題だとおもうんだよね。だから、それが分散していけば違ってくるんじゃないかな。投稿系はここで、聴く用の音楽はここ、みたいにね。でも、YouTubeがどういうものかよくわからないからね。日本のものでもないし。
■トーフビーツの場合は、そこでネガティヴなことも言っているけど……
T:恩恵も超受けている世代でもあるんですよね。
砂原:もしYouTubeに違法アップロードがなくなったとしても、プロモーション的なことはそこでやるわけじゃん? そういう合法のものもあるわけで、それはこっちが認証するかしないかの話だから、それはそれでいいと思う。でも買ったCDを違法に拡散する権利を俺は獲得したと思っているひとがいるけども。
T:そのおかげで、僕たちが中高時代の音楽を聴けた側面も無視はできないというか。
砂原:それを言ったら、レコード時代からカセットのコピーとかはあったし。レンタル・レコード屋で堂々とカセットが売られていたりとか。そういうことは昔からある程度あったからね。みんながそうなったっていうのが問題なんだよね。
T:結局、それが普通になっちゃって、たまに大学生に会うんですけど、CDを買ったことがないっていうレベルのひともいるんですよ。CDドライヴがついていないパソコンもありますからね。
砂原:俺がいま高校生だったらCDとか絶対に買わないと思うよ。
T:でも、データも(高校生にとっては)クレジットカードがないから買えないしっていう話なんですよね。そうなるともう八方塞がりで。
砂原:なるほどね。カードがなきゃ買えないか。
T:母校の高校生に話を聞いたら、みんなPCでDJをはじめているんですよ。オートでピッチを合わせてくれるやるです。「曲はどうしてるの?」って聞くと「サウンドクラウドで落としてます」みたいな。どうしよう?ですよね(笑)。何もかける言葉がない、みたいな。
■トーフビーツはインターネットの恩恵を授かりながら、アナログ盤も必ず出すじゃない? ホント引き裂かれているっていうか。
T:それはアナログを自分が買うからなんですけどね。
■トーフのアナログ盤って売れているんだよね。CDもちゃんと売ってるでしょう。
T:でも、絶対的な量でいうと、1万って大学のひと学年より少ないわけですから。
■まぁ、いまの時代を考えると、それだけでもね。
T:普通に考えて、1万売れたら僕らも「おー!」ってテンションが上がるんですけど、俺の母校のひとたち全員にCDが売れたらオリコンでデイリー1位だって思う虚無感というか。幕張メッセでフェスをやってて、ここにいるひとたち全員がCDを買ったらオリコンで絶対に1位って思う、あの感じが……。
砂原:いや、そう考えると1万なんて規模はすごく小さいよ。業界はそれに馴れちゃって、「1万、うぉー! やったー!」って感じかもしれないけど、冷静にみたら全然そうじゃないからね。
T:フェスもいいんですけど、「CDは買わなくて4千円のTシャツを買って帰るって、なんなんだそれ!?」って。
砂原:ハハハハ。
T:この状況はほんとにどうしよう?って思います。自分がそう思ってても、そうじゃないひとが大半だとしたら、俺にはこれはどうすることもできんと。でも「どうにかなるんやったら、一応ここにおったらおもろいかな」みたいな。この状況がどうなるか見てみたいなと。
砂原:昔は音楽を楽しもうと思ったら受け手に回ろうと思うことが多かったんだけど……
T:いまはみんなやり出すんですよね。
砂原:そう。やるってこと自体が音楽を楽しむ形に変わってきている。だから、電子楽器とかはそれなりに売れていると思うんだよね。
T:だから高校生のDJがめっちゃ増えているんですよ。
砂原:パソコンに何かをくっつける形で何かとりあえずはできるじゃない? そう考えると、受け手になるよりも送り手になって楽しもうってひとが多くて。たとえば、20人、30人のサークルみたいなものが星のように日本中にあってさ、定期的にイベントをやったりして。そこから爆発的に広がっていくことは稀だと思うけど、そういうものが点在していて音楽自体の勢いは、そういうところに担保されていると僕は思うんだよね。
T:楽器メーカーの調子がいいみたいな話ですよね?
砂原:だから消費していくという形だけじゃくて、消費しながらも送り手に回るっていうそういう状況に変わってきている感じがするかなって。
T:でも、純粋に音楽ファンとしてインストラクターと生徒だけみたいになるのって気持ち悪いなって気もするんですよね。
砂原:それはわかるね。
T:いま、DJスクールってむちゃくちゃあるんですよね。道玄坂にも大きいのができて。
砂原:学校を批判するわけじゃないけど、DJスクールって何を教えてくれるの?
T:知らないですよ、そんなの(笑)。言い方が悪いですけど、DJなんて30分あれば仕組みなんて全部わかるんですから。あとはそれをどうするかって話じゃないですか? ギターとかと全然違いますよ。
砂原:それこそ寺とかに3日くらい入って、最初の30分だけDJのインストラクションをしてあとは座禅でも組んで叩かれたりした方が、よっぽどいいDJができそうだよね(笑)。
T:座学みたいな話ですからね。
砂原:でさぁ、いろんなひとがいるんだけれども、たまにそういう若い子と接して「何かやってみなよ!」って言っても何をやっていいのかわからない。でも、何をどうやるかっていうことはみんなわかっている。この状況は異常だなって僕は思うんだよね。
T:最近よく言うんですけど、DTMをやっているひとは多いと。ただ、面白くないひともいると。
砂原:面白くないひとのほうが多いよ。好みは増えたよね。
T:でも、その溝は何なんだって話をみんなでしてたんです。たとえば素人とひとが、プロの描いた丸と素人が描いた丸を見分けられんのか、みたいな話で。僕らもDTMで作っている。それで若い子も作っていると。その間の違いを売上っていう意味でもそこまでちゃんと説明できていないし。
砂原:それはでも、説明できるものであったらつまらないと思うね。
T:でもそれで結局、「打ち込みってあんまりうまくないひとが多いんだ」ってイメージがついていって、「打ち込みとかダサくね?」みたいになったら大丈夫かよって思います。いまって音楽のほとんどが打ち込みですからね。いまのアイドルとかもそうですけど、よくわからないアイドルがいっぱい出てきて、良いアイドルもいるけど、「アイドルってつまんなくね?」ってあるけど、打ち込みがそうならないのかっていう。
砂原:わかる。たまにYouTubeとかに自分で作りましたってやつが上がってて、ヒドいのがあるときはあるよね。
T:あとはそれっぽいだけとか。上手いけど毒がないというか。
砂原:要するに手法だけを知っていてコアがないというか。
T:自分でお金を使って音楽を聴いていない、つまりギャンブルをして対価を得ていないから、そりゃそうだろって気もするんですよね。痛い目をみないと覚えないじゃないですか? だからネットで流行っぽいものを聴いて、それを作る方法を自分で調べて、それっぽいモノを作って俺に送ってくれたりするんですけけど「うーん」って思うんです。だけど、サークルでそうやってみんなで楽しいってなったら……。
砂原:わかるわかる。だから、それのことも言ってるんだよね。
T:だから自分が音楽をやるんだったら、説明をちゃんとしなきゃダメだ、みたいな。だからアナログを切ることもしないといけないわけです。それでも、わかってくれるひとはちょっとだろうって気持ちはあるというか。
砂原:若い子の方がそういう危機感はあるのかもね。
T:同世代に対しては余計ありますね。「コイツら、何も考えてないんだな」というか。
砂原:ちょっと、ソニーの会社にきてその話をみんなにこれからしてあげようよ。
■ハハハハ。
T:そういうことを言ってたら、ソニーから3年くらい前にパーンってされて(笑)。「iTuneやりましょうよ!」、パーンッみたいな。
砂原:それでやってんじゃん、みたいなね。
T:あとあとね。あのときはスゲえ笑いましたよ。だからそのときはアグリゲーターと個人で契約して、僕はiTunesでシングルを出しました。そういう感じでやってましたね。
砂原:そういえば、ミュージック・アンリミテッドがなくなったんだよね? スポティファイに変わるんだっけ。あれは合併なの? 名前は消えるんだよね? それって吸収されたってことじゃないの(笑)?
T:まぁ、スポティファイの方がブランドは強いですよね。
砂原:データとして、いままでアナログやCDでできていたことがある程度は仮想現実として確立すれば、音楽産業にお金が入ってきて自分たちのやりたいことができると僕は思うんだよね。世界中のいろんな事情が関係あるからさ、どっちにいくかはわからないけど。最近、アナログが爆発的に売れてって言うひとがいるけど、あれは勘違いだから。
T:「爆発的」ではないですよね。
砂原:それこそスカイマークの株とかでもいいんだけどさ(笑)。
T:ハハハハ!
砂原:株を持ちまくったらちょっと上がるから。どんなもので落ちるときは大体落ちて、またちょっと上がるって感じだよね。だから、そのちょっと上がっているところを指して「去年の20倍」っていうのは、去年がすごく落ちていただけじゃんっていう。
■でも、実際に工場にプレスを頼むと予約がいっぱいなんだよ。
T:まぁ、それは工場が減ったというのもありますからね。
■UKとUSは事情が全然違っていて、ヨーロッパはどっちかっていうと昔のリイシュー版をアナログ180グラムで出すっていうのがメインなんだけど、USはトーフビーツじゃないけど、ネットの洗礼を世界でいち早く浴びている国なんだよね。最初にタワーレコードがなくなって、作品では稼げないかもという瀬戸際でやっている国だから、インディ・シーンにとってのアナログ盤、カセットテープは、ちょっと切実な問題かもね。
T:USとかってインディはフィジカルでちょろっと100、100くらいで出して、あとはデータで売ってツアーで回るって感じですよね。
砂原:「100、100」っていうのは100枚ずつ出すってこと?
T:そうですね。カセット100本、7インチ100枚とか作って。
砂原:100枚じゃねぇ……。
■ちょっと話題になっている人でも、まあ、500枚限定から、いっても1000枚とかね。とにかく、音楽を取り巻くシーンは、こうやって変化しているわけですよ。
砂原:でも起こっていることは大体わかっているというか。気にはしていることだけどね。もし自分にたくさんのお金と決定権があったら、統一規格を作りたいなと。そうしたほうが、一番音楽って変わるんじゃないかなって僕は思うんだよね。
[[SplitPage]]すごいモノを作っているやつに「何を聴いてきたの?」って聞いて「いや、何も聴いてない」って答えられるのが一番恐いていうか、「うわぁ、お前すげえ!」って。──砂原良徳
でも、インターネットをやっていてわかったのは、何かしらをやっていたやつからじゃないと、結局は何も出てこないってことなんですよ。──トーフビーツ
![]() tofubeats First Album Remixes WARNER MUSIC JAPAN INC. |
■PC一台で音楽が作れて、発表の場もあって、それは、民主主義的には良いとするじゃない? もうひとつ問題提起すると、インターネット時代の作り手の多くが、歴史から切り離されているってことだよね。まりんやトーフビーツにはバックボーンがあるけど、歴史なんてそんな重たいモノ、必要ないじゃんっていう考え方もあるし……
砂原:俺はそのなかからとんでもないものが出てくる可能性ってかなり高いと思っているけど。
■それはたしかにあるんだよ。
砂原:それが一番恐ろしいというか、すごいところっていうか。
■さっき言ったペーパーウェイヴやシーパンクみたいなものって、ひょっとしたら彼らにはある程度の知識はあるんだろうけど。
T:彼らはどっちかって言うと、歴史参照派ですよ。
砂原:すごいモノを作っているやつに「何を聴いてきたの?」って聞いて「いや、何も聴いてない」って答えられるのが一番恐いていうか、「うわぁ、お前すげえ!」って。
T:でも、インターネットをやっていてわかったのは、何かしらをやっていたやつからじゃないと、結局は何も出てこないってことなんですよ。
砂原:なるほどね。
T:これが逆に言うとよくわかるというのがあって。今回のリミックスにまりんさんを呼んで、僕の友だちもたくさん入れたのは、言い方は悪いですけど、僕の友だちはプロの仕事を全然見たことがないから、自分と同じレベルの素材をもらってどうなるかっていうのを、見てほしかったっていうのもあるんですよね。
■あー、そこには熟練や経験も必要だと。
T:自分がメジャーにいって、マスタリングをひとにやってもらったりとか、そういうことの機会さえ普通のひとには与えられていないわけですよ。今回のまりんさんの納品のされ方とかも、「ちゃんとこのビット・レートで長さはこのくらいで納品してくださっていますよ」とか、「原曲のパラデータをちゃんと歌以外のところも使っていますよ」とか。そういうのって勉強というよりも経験と自分が習得した技術の上にしか絶対に築けないんですよ。突然の天才も出てくるんですけど、そいつも見ず知らずにうちにやっているから、意識して勉強しないで出てくるって話で。
砂原:そうだね。
T:その手の知り合いが長野にひとりいるんですけど、結局は見ず知らずのうちに勉強していたってことなんですよ。してないって思っていただけで。昔みたいに、勉強のためにスタジオに入るような端から見て明らかに歴史を勉強したっていうのがないだけで、逆に家にいながらもトップクラスの勉強ができる時代にはなってきているんですよね。
砂原:それはそれでいいよね。
T:だから、僕らも早い段階でDTMをはじめられたと思うんですけど。
砂原:昔ははじめるとなったら一大決心というか。出家に近い感じだったからね(笑)。
T:何十万とか、何百万の世界ですもんね。DTMがギターみたいになればいいって思ったりもするんですよね。
砂原:昔は僕がテクノをやろうと思ったら、ドラムマシンを買って、シーケンサーを買って、シンセサイザーを買って、MTRを買ってってさ、一通りやろうと思ったら最低でも5、60万はかかっちゃうわけ。でもギターのやつは5万円で済むわけ(笑)。ギターはスタジオに抱えて来れるじゃん? 俺なんか父ちゃんにお願いして、車で運んでもらって機材を一緒にセッティングしてってすげえ大変だったんだよ(笑)。昔はホントに大変だったけど、いまは逆に一番楽になっちゃっているもんな。
T:そうですね。
砂原:USBだけもってきましたとかさ。
T:ライヴとかでは、僕はラップトップだけなんですけど、家で作るときはどうしてもそれがいやで。ハードを使いたくて、使いたくて、みたいなのがすごくありました。僕の周りで一緒にやっているひとはけっこうお金をハードに使ってますね。逆にみんなパソコンだけの音だから、それだけでやっていても面白くないというか、ベッタリしちゃうから。ハードを買うくらいの努力はしなきゃ無理っていうか。
砂原:買えば全てを解決できるとは言わないけど、でもやっぱりそこにはそういう差がある程度は存在するよね。
T:そうそう。めちゃくちゃあればいいってわけでもないですけど、必要なものは必要だなと。
砂原:ただ僕は、それなりの時間を使って、すごく高い機材を使ったりとか、すごく高いスタジオを使ったりしてきたけど、たまにインターフェイスとパソコンだけですごい音が良いひととかいて、そのときは「うわぁ、恥ずかしいな、俺」って思うね(笑)。これを使えば間違いなく音がよくなるって機材はいまもあるんだけど、僕はそういうのを安易に採用しないようにしているんだよね。やっぱり、同じ土俵で戦いたいというのが自分のなかであって。にしてもお金は使わなきゃだめだけどね。
T:そんなことを言ったらプラグインだってそうじゃないですか? パソコンだけでやるひともプラグインに金を使っているかもしれないし。
砂原:昔はプラグインもすごく高かったんだよ。
T:って言いますよね。僕が高校のときと比べても、いまは当時の半分以下というかね。
砂原:いや、4分の1くらいじゃない?
T:僕は高校生のときにアカデミック版のエイブルトンを買ったんだけど、それでも8万円とかして、「学生じゃ買えねえよ!」ってなったのを憶えてますもん。
砂原:プラグインを買うにしても、WAVESに何十万と使ってたよ。
T:WAVESは良いやつだといまでも40万くらいはしますよ。でも年に1回くらいは安くなったりするっていう。あれ、すげえ腹立つんですよね(笑)。
砂原:腹立つよね(笑)。でも、昔は売れたらお金が入るからさ、たとえば、ファッション、映像、文学の世界のひとたちが音楽の世界に入ってくるんだよね。だから違うジャンルの融合みたいなものが盛んにあったような気がするんだけど。そういうのが一時よりは減っている感じがするね。
T:てか、いまは全員がお金がないっていう。ファッションも映像もデザインもないし。
※以下、続編&ele-king vol.16(3月30日発売)に続く……。






