「S」と一致するもの

Ryoji Ikeda - ele-king

「レコード盤、楽曲の思考、楽譜、音波、これらは互いに、言語と世界の間に成立する内的な写像関係にある」(ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』野矢茂樹・訳)

 耳を貫くような高音のパルス音が鳴りはじめる。強烈な電子音響が炸裂する。タイプライターのような細やかなリズム。モールス信号の微かな音の断続と持続。音響が震動し分裂する。加速し、炸裂し、震動する。音は意味を剥ぎ取られ、データの素粒子へと還元していく。光のレントゲンのなかで極限まで剥ぎ取られた電子音が身体に注入される。0と1。そんなデータに還元された極限の音響が鼓膜や脳を揺らす。その圧倒的な音響の快楽。あらゆる意味を超越して、ただただ快楽的な電子音饗の群れが、耳を、鼓膜を、脳にアディクトする。刺激・律動・数・美。第二次世界大戦末期、国防軍最高司令官の最後の戦況レポートを記したタイプライターの文書が焼け焦げていたように、言葉など、もうすでに消失してしまった。

 そう、池田亮司の新作アルバムのことである。

 池田亮司の新作CDが〈ラスター・ノートン〉からリリースされた。前作のCDアルバム『テストパターン』の発表が2008年だから、約5年後ぶりの新作アルバムということになる。この作品は、〈ラスター・ノートン〉からリリースされた『データプレックス』(2005)と『テストパターン』に続くシリーズ完結編というが、聴いた印象はそれらとは全く「違う」。『データプレックス』と『テストパターン』のスタティックな反復とは違う、2011年のcyclo.『id』の音響を受け継ぐような、ノイジーでありながらもクリスタルな響きとロック的とも形容したい刺激と律動が横溢している。まさに2013年の池田亮司作品である。

 特に注目したいのはアルバムの中盤に突入してからだ。音響は次第に具体性を確保し、ミニマル/ストイックな音響から次第にノイジーに変貌する(特に12曲目と14曲目がすごい)。そしてそれは15曲目において決定的になる。1曲目の音響を変奏するように、モールス信号が流れ始める。あの初期の池田作品にも横溢していたあの信号音だ。そこにランダムなリズムが重なり、さらに高音のパルスへと変貌する。16曲目では、そのサウンドが低音に融解したような印象である。信号はより抽象的になる。

 そして本アルバムでもっとも驚愕すべき17曲目に突入する。クラッシュするような電子音が何度か繰り返され、まるで戦闘機の爆撃音のような音響が驚異的にグリッチ=打撃されていく。途轍もないサウンドだ。冷凍されたノイズの拡張のような、クールにして限界を超越するような音響。デジタル化した地響きが現実に解凍されていく感覚。18曲目ではまた、低い音響のモールス信号。19曲目ではその低い音が維持したまま、何がクラッシュするような音に、細かな一定のリズムが刻まれる。そしてその低い響きが次第に蠢き方を強め、突如、ミュートされる。その音響運動のなか、小さな音でリズムは刻まれ、透明な音もまた微かにリズムを刻むだろう。そしてラスト20曲目。サウンドは地を這うような音響の蠢きへと突如、変貌する。まるで人間の終わりのような音響。もしくはテクノロジーのエラーから不意に表出した現実のような音響。私には、本作を近作2作の完結編というよりも、むしろ『1000フラグメンツ』(1995)、『+/-』(1997)、『0℃』(1998)までの変化の過程へと拡張的に円環し、そしてさらに大きな外部へと接続していくような印象を持った。では何に円環し接続したのか。それは20世紀の世界を覆った膨大な通信と情報の層に、ではないか。

 音楽そのものをゼロ地点への響きへと導いた弦楽作品『op.』(2003)以降、00年代の池田亮司は、20世紀の世界を覆う膨大な情報網、つまり通信から情報へ、そしてデータへと圧縮/拡張していく世界を、インスタレーション、ライブ、CDと多角的に作品化してきた。それは圧倒的な体験の生成であり、同時に、ある種のメディア論のような論理的で論文のようであり、世界のすべてをスキャンし、指令を下す戦争の音響=イメージのようでもあった。

 モールス信号、電話、放送などの通信から、インターネットのデータ回線への情報へ。20世紀と21世紀の世界を覆った膨大な通信と情報。その拡張し続ける回線のなかに行き交うのは、人の言葉である。それらは通信の回線のさなかにおいて行き先すらわからない単なるデータの群れであり、言葉の残骸ですらあるだろう。だが、もともとは人間が発した「声」なのだ。ある人間に向けて発せられた「言葉」である(先日京都で公開された最新作『スーパーポジション』において池田亮司は、ふたりの人間を舞台に登場させたという。ふたりは楽器を演奏することなく、モールス信号のようなものを打つ。このふたりは何かメッセージを送っているのか。それとも全く別の何かに向けて通信しているのか)。その無数の「声」にはその送り主である「人」がいるはずだが、しかし、私たちにはその「人」の存在を知ることはできない。人間はその情報の加速度的な層の拡張の中で、まるで波打ち際の砂のように、その存在を消し去っていく。数値化された膨大な情報/データの向こうに、確かに、ひとりの(つまり無数の)人間たちがいた。人間の消滅。人間の終わり。

 人間の終わり? 量子力学の概念を援用した数学的な音響の向こうで、確かに、確実にそんな響きの痕跡や残響が微かに鳴っている。聴こえてくる。このアルバムはまるで、戦闘機の通信士に送ってくる「本部」からの「サイン」のようだ。言葉はモールス信号のように変換され、タイプの音がリズムに拡張され、それら全体がひとつの信号=音響となる。そこにおいて言葉、つまり意味は徹底的に剥ぎ取られ、記号と音素が交錯するレントゲンのごとき電子音響が鳴り響くだろう。いわば人間の終わりからの言葉。情報へと変換された言葉たち。それは世界を覆う情報システムとそのデータの群れ。池田亮司はそんな通信/情報のデータの速度を、徹底的に数学的/物質的音響作品として一気に圧縮/解凍させていくのだ。

 2013年の池田亮司は、その20年もの創作活動で得た方法論を全て駆使し、圧縮し、解凍し、炸裂させ、まるで電子音楽における無言のレクイエムのごとき作品を作り出した。本アルバムラスト20曲目の音響は、まさに人間の終焉、その音響であり、予言である。その意味で池田亮司の作品は「神」の音楽に限りなく近い。こんな途轍もない作品を生み出した池田亮司はいったいどんな地平へと行き着くだろうか。凡人の思考など遥かに超える地平がそこにあるに違いない。

 いま、ここに池田亮司の創作と思索の結晶がCDとしてある。その名は『スーパーコーデックス』。超越的アーカイブ。このCDは情報と記憶と音響のモノリスだ。いうまでもない。「世界」は、ここにある。

 小さな子どもたちが親から離れ、ちょっとした冒険に出る。生まれて初めて親から離れ、ひとりで大仕事を終えて誇らしげな顔で戻ってきた我が子を、親は号泣して抱きしめる……幼児持ちにとっては世界でいちばんスリリングなロードムービーといっても過言ではないテレビ番組『はじめてのおつかい』(日本テレビ)。いつもは子どもの人権に配慮した作りになっているのですが、今年の1月14日に放送されたあるおつかいは、なかなかにハードなものでした。

 お使いに出されるのは、まだ足取りもおぼつかない3歳の女の子。家から遠く離れた2軒(うち1軒は混雑した量販店)のお使いという過酷なミッションに当然応えられるわけもなく、道に迷って泣いて帰ってくる。つれなく追い返そうとする母親。娘に対するものとは打って変わったねこなで声で5歳の息子を呼び、「○○く~ん、途中まで送ってあげてくれる?」。まだお使いをしたことがないという5歳の兄は、威張って妹を送り出す。妹のお使いの内容のうちひとつは、兄のおやつを買ってくるというもの。まわりの大人たちの助けで兄のおやつをどうにか買い、量販店にたどり着いた3歳の女の子は、大人たちでごったがえす店内で突き飛ばされ、尻餅をつき、疲れ果ててその場で眠ってしまう。けなげにも3時間かけておつかいを終えた女の子を、お母さんはそっけなくねぎらうだけ。あれ、感動の抱擁は? 号泣は?

 「虐待じゃないか!」ええ、みなさんそう思いますよね。私もあやうくクレーマーと化すところでした。しかし最後に大人になった彼女が歌手デビューしたという映像が映り、そのおつかいが21年前に撮影されたものであることがわかると、「ああ、そういえば昔の女の子の扱いってこうだったワ」と、妙に納得してしまう自分がいたのでした。

 女の子を男の子と同様に大事に育てる。この風潮は当たり前のように見えて、少なくとも庶民の世界ではさほど長い歴史のあるものではありません。現代女児文化は、女児の扱いの変化を措いては語れないでしょう。1970年代の女児育児書のベストセラーをいま読み返してみると、「女の本分は家事育児であるから、子供ができたら仕事はやめるべき」「女の子が知識をひけらかしたらかわいげがなくなるので厳しく注意せよ」「夫に文句を言われても言い返さずに「本当に気がつかなくてごめんなさい」と謝る妻に育てなくてはならないので、女の子が高慢な態度をとったらことあるごとに指摘するべきである」「女の子は清潔と貞節を教えよ。白以外の下着は女性には不適切である」などという内容でのけぞってしまいます。いまこんな育て方をしたら(特に娘の退職や下着の色を勝手に決めたりしたら)、「毒親」呼ばわりは必至です。とはいえ、女性のロールモデルが従順な妻/母のみで、婚家に従わなければ路頭に迷うしかなかった時代、現代育児の主流であるところの「自主性の尊重」や「褒め育て」なんてもってのほかだったのかもしれません。

 女児の扱いの変遷は、女児のネーミングからも見て取られます。明治安田生命保険の生まれ年別女性名ランキングを見てみましょう。幼くして子どもが亡くなることの多かった大正時代には「千代」「千代子」「久子」などの長寿を祈る名前が、昭和初期には「幸子」「節子」「信子」「孝子」「貞子」などの貞節を重んじる名前が、高度成長期には「由美子」「久美子」「明美」「真由美」などの美しさを意識した名前がトップ10に入るなど、そのときどきの世相に合わせた意味をもつ名前が流行するのですが、1980年代中盤からちょっとした異変が。「麻衣」「彩」という、文字上の意味だけでは親の願いをくみ取ることが難しい名前が上位に登場するようになったのです。「麻衣」という名前に、「麻の衣類のように吸湿性が高いが保湿性には乏しい女の子になってほしい!」といった願いが込められているようには思えません。期待されているのはきっと、「麻」という漢字がイメージするさわやかさと、「まい」という語感のかわいさ。2000年以降はイメージ重視の傾向に拍車がかかり、「さくら」「葵」「陽菜」「萌」「優花」などの植物名を盛り込んだ名前が全盛になります。21世紀に入っていきなり植物大好き人間が増えたとも考えづらいので、植物のかわいらしく優しいイメージを我が子に投影してのことでしょう。女児名に使われる人気漢字ベスト25を見ると、「愛、菜、花、心、美、奈、結、莉、優、音、咲、希、乃、彩、陽、子、桜、香、羽、衣、那、紗、里、梨、葵、華」となっており、やはり植物、布系強し。末尾に付けるとかわいい語感になる「那」「奈」「菜」「乃」も人気です。また、皆さんご存じのとおり「難読名前」「キラキラネーム」と呼ばれる個性的すぎる漢字遣い・読み方の名前も増えてきました。語感や字面のイメージが優先されるようになったのは、少女マンガに親しんだ世代が親になったせいもあると思います。例えば大島弓子の1970~80年代の作品のヒロイン名を書き出してみると、なずな、衣良、いちご、黄菜(きいな)、鞠、果林、杏子(あんず)と、現代の名付けセンスを先取りしたものが多いのです。少女マンガのヒロインの要件は、どのようにふるまっても愛されうるかわいさと、主人公を張るに足る個性的でワン・アンド・オンリーの存在であること。私たち現代の親も、娘に同じ事を期待しています。もはや女児は量産型の家事要員でも、嫁に出すまで貞節を守らせる交換財でもありません。自ら芽を出し世界に一つだけの花を咲かせるまで親が水をせっせと運んでやる、愛護されるべきかわいらしい存在なのです。

 女の子の個性や自主性が尊重され、かわいがられるようになったこと自体は、良い傾向であるには違いありません。娘がピンクのグッズを好むなら買ってあげたい。自分みたいに紺や茶色のお下がりを着て怒鳴られてばかりいた抑圧的な娘時代は送らせたくない。お気に入りの服を着た娘を思う存分かわいいと褒めてあげたい。そう思うお母さんは、決して少なくないでしょう。


デコ盛りネイル……。(左『ぷっちぐみ』2013年1月号、右『キラ★プリ』vol.7)

 しかし娘にねだられて購入したピンクずくめの女児雑誌をめくっているうちに、ふと思うのです。幼児向けの雑誌ですら、ファッション、コスメ、アイドルなどの情報がちりばめられている。こんな小さなうちから「女は見た目が重要」という価値観を内面化して大丈夫なんだろうか。かわいいかわいいと育ててきて、もちろんそこには性的な含みはないけれど、世間的には「かわいい」というのは容姿を含めた性的な価値の高さを意味しているわけで、つまり性的役割の重さに絶望する娘時代を過ごしたはずの私も、知らず知らずのうちに我が娘に別の重たい性的役割を押しつけていることになってやしないだろうか。キラデコ好きという趣味は尊重してあげたいけど、親としては別の価値観も提示する必要があるのでは……。

 またも私は考え込み、キラデコ好きな娘のために夜ふかししてLEDが光る折り紙作りに励んでしまうのです。


そういうことじゃないって、わかってはいるんですけど。


ギークマム 21世紀のママと家族のための実験、工作、冒険アイデア
(オライリー・ジャパン)
著者:Natania Barron、Kathy Ceceri、Corrina Lawson、Jenny Wiliams
翻訳:星野 靖子、堀越 英美
定価:2310円(本体2200円+税)
A5 240頁
ISBN 978-4-87311-636-5
発売日:2013/10 Amazon

interview with Richard H. Kirk (Cabaret Voltaire) - ele-king

 1970年代末、スロッビン・グリッスルとともにノイズ・インダストリアルの代表とされていたのがキャバレー・ヴォルテールだった。僕は、しかし、SPKと出会うまでノイズ・ミュージックに価値を見出せることはなかった。キャバレー・ヴォルテールも初期はどこがいいのかさっぱりわからなかった。『レッド・メッカ』(81)や「スリー・マントラス」(80)が面白くないとはとても言い出せない空気のなか、そのようなものがやたらと持ち上げられていた1981年がしぼみはじめ、やがてブリティッシュ・ファンク・ブームがやってくる。それを逸早く察知したかのように〈ヴァージン〉がディーヴォやDAFをフィーチャーした『メソッド・オブ・ダンス』というコンピレイション・シリーズをリリースしはじめ、「踊るニューウェイヴ」の時代がやってくる。ノイズ・グループだと思われていたキャバレー・ヴォルテールが『2×45』(82)をリリースしたのは、そのようなタイミングだった。それはニュー・ロマンティクス(それはそれでよかったけど)とはまったく違う雰囲気で、ノイズ・インダストリアルに分類されていたミュージシャ……いや、ノイジシャンたちが『ファンキー・オルタナティヴ』というコンピレイション・シリーズをリリースしはじめる5年も前のことだった。『2×45』に続いて80年代中期に〈ヴァージン〉からリリースされた『ザ・クラックダウン』(83)、『マイクロフォニーズ』(84)、『カヴァナント、スウォード・アンド・ジ・アーム・オブ・ザ・ロード』(85)の再発を機にリチャード・H・カークに話を訊いた。

E王
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シェフィールドはおどろおどろしく淀んだ感じでたくさんのビルがあった。世界大戦のダメージも残ってた。しかし、都市部を抜けて10分もすると美しい田園風景がひろがっている。そして、君はそこでたくさんのマジック・マッシュルームを見つけられると思う。

ちょうど40年前(73年)にシェフィールドで結成したそうですが、最初からキャバレー・ヴォルテールを名乗ってたんですか? また、3人はどうやって知り合ったんですか?

リチャード・H・カーク(以下、RHK):1973年あたりに活動を始めたんだけど、キャバレー・ヴォルテールを名乗ったのは75年からなんだ。というのはそのとき初ライヴがあって、そのために呼び名が何かしら必要だったからね。
 もっと熱心なヤツもいたんだけど、まわりの友だちの何人かがクリスを学校の頃から知ってたから、僕らは当時の夏、一緒にインターレイルでヨーロッパに行ったりしたんだ。クリスはいくつかベーシックな録音機材を、僕が4トラックのテープレコーダーを持ってて、それからエレキ用のピックアップ付きクラリネットも手に入れた。僕らは実験的にクリスの家のロフトで音楽を作りはじめた。それから何人かがやってきたりしたんだけど、数年前からちょっと知ってた(ステフェン・)マリンダーに一緒にやらないかと誘ったんだよね。そのときが、キャバレー・ヴォルテールとして後に知られる、きちんとしたユニットが出来た瞬間だった。

ダダ運動に興味を持ったきっかけを教えて下さい。ステフェン・マリンダーによればウィリアム・S・バロウズとブライオン・ガイシンの影響でカット・アップやテープ・ループをはじめたそうですが、ということは『レッド・メッカ』(81)までの作品にはブライアン・ジョーンズの『ジャジューカ』(71)が多少なりとも陰を落としていたのかなと思えてしまいます。

RHK:ダダ運動に魅かれたのはそのコンセプトがアートと戦争にあったから。そこではそれまでにあったアートをいったん解体し、何か新しいものに置き換えようとしていて、僕らはサウンドや音楽に対してそれと同じことをやろうとした。
 ステフェンがバロウズやガイシンに関して言ってるのもすべて正しいというわけではない。キャバレー・ヴォルテールは、彼らのことを知る前にすでにカットアップやテープ・ループを取り入れている。もちろんこのようなことを誰かがすでにやってたというのを聞いて鼓舞されたところがあった。多くの部分を学ばせてもらったから、彼らのことを知れたのは実に嬉しかった。
 キャバレー・ヴォルテールのなかで最初にバロウズの本を買ったのは、僕だ。シェフィールドにある本屋で『裸のランチ』を注文したのさ。それはもう驚愕だったよ、まったくパワフルな本だった。それに当時、僕は画像や文章を使ってカット・アップやコラージュをやってて、それが最終的にいくつか初期キャバレー・ヴォルテールのジャケットになったりもした。ダダイズムの創始者トリスタン・ツァラも紙袋に書いてある文字をランダムにピックアップして、それを詩にしたりしてたし、それは1915年あたりかな? たぶんガイシンがカット・アップをやりはじめる50年くらい前だ。
 『ジャジューカ』のことは知ってたし、ちらっと聞いたこともあるけど、アルバムをちゃんと手にしたのは1982年になってからなんだ。つまり『レッド・メッカ』のあと。しかし東洋の音楽にはつねに興味を持ってたね、トランスチックなエフェクトの感じが好きだったから。

時期的に見てグラム・ロックにもパンク・ロックにも影響されなかった音楽性のままラフ・トレードからデビューしたということになります。実際にそうなんでしょうか? 70年代に、同時代的に気になっていたミュージシャンがいたら教えて下さい。「ウエイト・アンド・シャッフル」などはザ・ポップ・グループを思わせます。

RHK:僕はデヴィッド・ボウイやロキシー・ミュージックのファンでもあったし、いくつかのパンク、ポストパンクも、そのなかにはザ・ポップ・グループも含まれてるけど、たしかに気に入って聴いていたね。だけど「ウエイト・アンド・シャッフル」が彼らみたいに聴こえるんだったら、たぶんそれは彼らもマイルス・デイヴィスやダブ、フリー・ジャズといった僕らと同じ音楽に影響されたからだろう。僕らは通常のアーティストの真似はしない。影響ということで言うと、いつも過去や未来のものに目を向けてる。

なぜ、スタジオに「ウエスタン・ワークス」と名付けたんですか? また、シェフィールドのいい点と悪い点をひとつずつ上げて下さい。

RHK:スタジオのあったビルが古い工業用ビルで、そこが「ウエスタン・ワークス」という名前だった。それをそのままスタジオの名前にした。シェフィールドに関して言えば、当時が、ちょっとおどろおどろしく淀んだ感じでたくさんのビルがあったし、まだ第二次世界大戦のダメージも残ってた。しかし、都市部を抜けて10分もすると美しい田園風景がひろがっている。そして、君はそこでたくさんのマジック・マッシュルームを見つけられると思う。

ははは。『ザ・ヴォイス・オブ・アメリカ』(80)の裏ジャケットに機動隊の写真が2点も使われているのはなぜですか?

RHK:僕が。『ザ・ヴォイス・オブ・アメリカ』のアートワークを作った。当時(それにいまも)僕らが生きている世のなかにある権威主義的な感じがうまく出てる、この種の写真を使うのがふさわしいと思った。

『レッド・メッカ』はさまざまな意味で転機となった作品だと思いますが、タイトルはイランで起きたホメイニ革命と関係があるんですか? 『スリー・マントラ』から『2x45』にかけてアラビア風の旋律が頻出するのは誰かの影響ですか?

RHK:先ほども言った通り、僕は東洋の音楽、また東洋社会と西洋社会の違いにはつねに気を払っていて、だから“ウエスタン・マントラ”や“イースタン・マントラ”(*この2曲で『スリー・マントラ』は構成されている)のような曲に行き着いたわけさ。このふたつのカルチャーがじきにぶつかるだろうという予想が実際に現実になったのが1979年だった。ホメイニ革命が、のちに911/2001年のニューヨークのツインタワー爆破まで続くイスラム原理主義のスタート地点だった。それからアメリカで右派キリスト教原理主義者の存在がより浮き彫りになった。実際、このふたつのカルチャーは極めて似通ったもので、アメリカ政府が当時のソビエトと戦うために、アフガニスタンでビン・ラディンのムジャヒディーン/アルカイーダの訓練、資金援助、武装化を行ったんだから、当然といえばそうなんだけど。

『2x45』は明らかにダンス・レコードを意図した最初の試みですが、何がきっかけであそこまで振り切れたんでしょう。当時は本当にショックで、立体ジャケットが破けるまで何度も何度も聴いてしまいました。

RHK:『2x45』はよりダンサブルなレコード作りへシフトした最初の作品だった。大きな方向転換でもなく、単に進化していっただけだね。君がいま僕らの初期の作品を聴いてくれたらきっとダンス出来ると思うし、それらでもたいていループを使ってるからね。

〈ファクトリー〉からリリースされた「ヤッシャー」(83)はオリジナルのほうがぜんぜんよくて、ジョン・ロビーのリミックスはあまりいいとは思いませんでしたが、「ドント・アーギュー」(87)でまた顔合わせしているということは、ニューヨーク・スタイルからもそれなりに得るものがあったからですか? ニュー・オーダーの「ブルー・マンデー」がやはり同じ年にアーサー・ベイカーの方法論を取り入れていたわけですけど。

RHK:僕らはニューヨークのエレクトロには大きな影響を受けている。ジョン・ロビーは、アーサー・ベイカーとともに、その中心人物だった。彼が“ヤッシャー”をリミックスさせてくれないかと尋ねてきたとき、それはすごいアイデアだと思ったものだよ。たしかに君の言うように、オリジナルよりよかったというわけじゃないけど(リミックスっていうのは往々にしてそうなんだけど)、しかし、まったくの別もので、僕らが現状から一歩前に踏み出せたということ、おかげであらためて自分たちのミックスや音楽の聞かせ方と向き合うことが出来たわけだから。

『ザ・クラックダウン(=弾圧)』に「The」が付いているということは、何か特定の事件があったということですか? また、ダンス・レコードであるにもかかわらず、このような不穏なタイトルをつけたのはぜですか? まるでレイヴ・カルチャーを先取りしたようにさえ思えてしまいますが。

RHK:この当時の政治をとりまく情勢は抑圧的なものだった。イギリスのサッチャー、アメリカのレーガン、右翼勢力が僕たちを弾圧していたようなものだった。

『ザ・クラックダウン』以降、観念的な音楽性がすべて消え去って、官能的なダンス・ミュージックに純化されていくということは、クリス・ワトソンがひとりで観念的な部分を担っていたように見えますが、そのような理解でいいでしょうか。あなたとマリンダーはフィジカルな音楽がやりたかったと?

RHK:その見解は正しくはない。キャバレー・ヴォルテールには“担当”はないし、僕たちは何かにおいてリーダーというものを置かなかった。バンド自体は僕とクリスではじめて、あとからマリンダーが加わったものだけど……。この3人のグループはともにダンス・ミュージックをエンジョイしていた。けれど、当時は真剣にそれに打ち込んでたわけではなかったね。クリスが1981年に去ってからは、僕たちは自分らの音楽をもっとダンスフロア仕様にしようと決めた。彼と一緒にやっていた頃のようなモノをまた繰り返すことはしたくなかった。あらたに考えながら一歩前に進み出した瞬間だった。

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僕は本当に、イラク戦争や大切な古代遺跡の破壊には反対していた。目的もなしに、それも誤った情報のもとに行われたんだよね。結局大量破壊兵器なんて見つからなかったし、イラクはいまや以前よりもっと危険なところになってしまった。

『コード』(87)で初めて外部からプロデューサーを入れたのはなぜですか? あまり必要だったとは思えないのですが。『マイクロフォニーズ』(84)から『コード』まではファンクとインダストリアルのどちらに比重を置くかで延々と葛藤が続いていたようにも思えたので、その結論をエイドリアン・シャーウッドに委ねたとか、そういうことでしょうか。

RHK:『コード』に関しては、実はエイドリアンが参加する前にほとんどの形は出来上がってたいた。EMI/パーロフォンとの契約後、自分らのスタジオを24ch仕様にアップグレードし、そして、プロデューサーの起用も決めた。ポップスのフィールドではない人間を起用したかった。
 エイドリアンは一緒にやるにはとてもよいプロデューサーだった。ダブやレゲエにも相当詳しかったから、参加すると面白くなるかなと思ったんだ。彼はシェフィールドに来てくれて、僕らと一緒に作業をしたあと、ロンドンのスタジオでミックスした。すごくいいサウンドのアルバムに仕上がっているよ。僕らのアルバムではいちばん売れたんじゃないかな。ちなみに僕らがEMIと契約した当時、EMIは世界で10番目に大きな武器製造会社でもあった。冷戦が解けて黙示録を迎えたら、我々は兵器類を安く買えるかもなどと言い合ったものだよ。

シェフィールドから出てきたフラ(Hula)やチャック(Chakk)はキャバレー・ヴォルテールが育てた後輩ということになるんでしょうか。レコード制作ではマーク・ブライドンやマーク・ギャンブルがイギリスではハウス・ムーヴメントを先導したように見えるので、どういう関係だったのか気になります。

RHK:キャバレー・ヴォルテールは本当にたくさんのフォロワーを生んだよね、シェフィールドのなかだけじゃなく。チャックは僕らのスタジオで「アウト・オブ・ザ・フレッシュ」を録音し、それを僕らのレーベル、〈ダブルヴィジョン〉からりリースした。この作品がチャックをMCAのレーベル契約へと導いたんだ。それにフォン・スタジオ(Fon Studios)も誕生し、そこからいくつかの初期UKハウスが生まれた場所として知られることになった。その後、マーク・ブライドンやロブ・ゴードン(Fon Force)と『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティ』(90)で何曲かトラックを一緒にやったし、ロブ・ゴードンともゼノン名義で一緒にレコードを作った。

サンプリング・ミュージックは現代のダダイズムだと思いますか? それともまったく別物?

RHK:サンプリング・ミュージックは、とくにヒップホップはカットアップ・テクニックのほうに繋がってると思うよ。ダダイズムというよりはむしろね。

『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティ』で決定的に変わったのはベース・サウンドでしたが、それがハウス・ミュージックから学んだいちばん大きな影響ということになりますか? 曲によってはかなりファンキーで、テン・シティまで参加しているし、キャブスだと思えなかった人も多かったと思います。『ボディ・アンド・ソウル』(91)や『カラーズ』(91)では同じハウスでもストイックな曲調に戻っているので、あれはやはり一時の気の迷いということなのか。

RHK:『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティ』は、僕にとってキャバレー・ヴォルテールのアルバムのなかではお気に入りにはならなかったね。ホントに多くが外部からの影響でキャブスのサウンドが薄まってしまった。しかしながらマーシャル・ジェファーソンや当時のシカゴのハウス・ミュージックのパイオニアたちと一緒に出来たのは素晴らしい経験だった。アルバムと一緒に出した5曲入りのいい感じのアナログEPもあったよね。それらはウエスタン・ワークスでミックスされたから、キャバレー・ヴォルテールらしさが出てると思う(*アナログ初回のみに入っていた『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティEP』のこと)。

ちなみにレイヴ・カルチャーのことはどのように受け止めていたのでしょう。

RHK:レイヴ・カルチャーはその初期は面白かったけど、すぐに商業的になってしまったよね。

また、『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティ』(90)までキャブスがフォン・スタジオを使わなかったことや、〈ワープ〉から別名義でのリリースはあってもキャブス名義のアルバムをリリースしていないことも不思議に思います。『プラスティシティ』(92)や『インターナショナル・ランゲージ』(93)は〈ワープ〉のカラーにもピッタリ合っていたと思うのですが。

RHK:実はちょっとだけ『グルーヴィー、レイドバック・アンド・ナスティ』のときにフォン・スタジオを使ってるんだよね。「ザ・カラーEP」は当初〈ワープ〉からリリースの予定だったんだけど、結局自分らのレーベルからリリースすることになって、『プラスティシティ』や『インターナショナル・ランゲージ』も同様だった。これらのアルバムは当時からホントすごいアルバムだったし、その時代にたくさん出てた〈ワープ〉の作品とも相性が良かったと思うよ。

DJパロットとのスウィート・エクスソシストはどのようないきさつではじめたのですか?

RHK:パロットのことは、80年代半ばのシェフィールドのクラブシーンで知ったんだ。ウエスタン・ワークスに彼を誘って、僕がやっていた初期ハウス・ミュージックのトラックをいくつか手伝ってもらってたんだよね。そのちょっと後、彼がファンキー・ワームをはじめて、そのプロジェクトを終えてから、僕に「テストーン」を一緒に作らないかと誘ってきたんだ。その前、1986年に僕がキャバレー・ヴォルテールのライヴで彼にDJをやってくれるように頼んでたりもしたし。

「ヤッシャー」(83)や「ジャスト・ファッシネイション」を20年後にリミックスしているのは、やはり愛着がある曲だったからですか? リミックスがジ・オール・シーイング・アイ(=DJパロット)というのはわかりますけど、オルター・イーゴにリミックスさせるというアイディアはどこから? ジョン・ロビー同様、オルター・イーゴもあまりいいリミックスには思えませんでしたが……

RHK:オルター・イーゴのリミックスは〈ノヴァミュート〉からの提案だったんだ。僕はいいと思うけどね、(オリジナルとは)全く違うものだし。

同じく自分でリミックスを手掛けていた「Man From Basra Rmx」というのはイラク戦争と何か関係があるんですか? 

RHK:それはその通り。それにこの曲はプリンス・アラーとタッパ・ズッキー(*ともにルーツ・レゲエのアーティスト)による「Man From Bosrah」にも掛けてたんだ。僕は本当に、イラク戦争や大切な古代遺跡の破壊には反対していた。目的もなしに、それも誤った情報のもとに行われたんだよね。結局大量破壊兵器なんて見つからなかったし、イラクはいまや以前よりもっと危険なところになってしまった。

キャブスのスリーヴのデザイナーは、ネヴィル・ブロディ、ポール・ホワイト、デザイナー・リパブリックと一流どころが揃っていますけど、個人的にいちばん好きなデザイン・ワークはどれですか?

RHK:とくに好きなものはないね。しかし『#8385』(*今回、再発された3枚のアルバムを収録したボックス・セット)の新しいデザインはなかなかいいんじゃないかな。

いま、現在、ライヴァルだと思うミュージシャンは誰ですか?

RHK:ライヴァルはいないよ。

キャブスの活動停止後、30以上の名義を使って活動されていますが、その理由について教えて下さい。

RHK:過去にとらわれることなくオリジナルな音楽を作って行くためにやったことさ。

最後に、キャブスの再活動についてお話いただけますか?

RHK:キャバレー・ヴォルテールは“再活動”はできない。何故なら、いままでいちども活動をやめたわけではないからだ。つまり、メンバーが去って行っただけさ。クリス・ワトソンが1981年に脱退し、ステフェン・マリンダーが1993に脱退した。いまでは僕がただひとりのメンバーで、もっと多くのライヴやレコーディングもこれからやっていくと思うけど、懐かしい曲はやらないつもり。すべては新しいものになると思う。
 是非日本でもまたライヴしたいね。1982年の東京、大阪、京都でのキャバレー・ヴォルテールのライヴはすごくいい想い出でいっぱいで、それにライヴ音源を収録したんだ。結局そのライヴ・アルバムのミックスでその後3週間も東京にいることになったけど(笑)。

*日本でのライヴを収録した『ハ!』はマスター紛失のため、91年にミュートから再発されたものは、いわゆるアナログ起こしだったりする。ちなみにツバキハウスでライヴを終えたキャブスはその後、六本木のクライマックスに現れ、ナンパしまくりだったと(その時、DJをやっていた)メジャー・フォースの工藤さんが教えてくれた。そりゃあ、いい想い出でいっぱ……(後略)

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COGEE (BLACK SHEEP / SMASH YOUR FACE) - ele-king

BLACK SHEEP主宰。SMASH YOUR FACEのギタリスト。
https://blacksheepxxx.com/

【DJスケジュール】
11/9(fri)@吉祥寺CHEEKY
11/23(sat)@代官山AIR「MARK.E JAPAN TOUR」
11/30(sat)@半蔵門ANAGURA「BLACK SHEEP vol58」
12/7(sat)@新潟ARK
12/22(sun)@名古屋decibel&KALAKUTA DISCO
「BLACK SHEEP 名古屋出張編」

【LIVEスケジュール】
11/17(sat)@下北沢THREE「LESS THAN TV presents METEO WINTER」
11/30(sat)@三軒茶屋HEAVEN'S DOOR「三茶HxC vol.111」

お金では買えない価値のある音源10選


1
切腹ピストルズ - 流出音源その一
https://seppukupistols.soregashi.com/01_lostvirgin.html

2
切腹ピストルズ - 流出音源その二
https://seppukupistols.soregashi.com/02_lostvirgin.html

3
RISE FROM THE DEAD feat UG KAWANAMI
https://soundcloud.com/ug-kawanami/rise-from-the-dead-feat-ug

4
RISE FROM THE DEAD feat UG KAWANAMI - Black Funk Ill Kill(Original Version)
https://soundcloud.com/ug-kawanami/r

5
TELEPATHY(EYE&UG KAWANAMI) - Secret(Inst.)
https://soundcloud.com/ug-kawanami/telepathy-secret-inst

6
CMT - EYESCREAM MIX
https://soundcloud.com/sbmrecordings/eyescream-mix-mixed-by-cmt

7
DJ HIKARU - Beats in Space MIX
https://www.beatsinspace.net/playlists/439

8
MOODMAN - DJ Mix Show“MOODMANOW ”0912 from VINCENT RADIO
https://soundcloud.com/vincent_archives/moodmanow_0912

9
DETOXX - DOMINGO from himcast
https://www.himcast.com/2013/06/15-domingo-detoxx-blacksheep-629.html

10
LIL'MO FO / SEP 5TH 2013 AT GARAM BAR TIME
https://soundcloud.com/lil-mofo-business-4/sep-5th-2013-lil-mofo-at-garam

Soundcloud : https://soundcloud.com/mamazu
Tumblr : https://mamazu.tumblr.com/
Twitter : https://twitter.com/_Mamazu_
Instagram : https://instagram.com/mamazu
HP : https://www.hole-and-holland.com/

SCHEDULE
11/8 (FRI) @ 吉祥寺 CHEEKY
11/17 (SUN) @ 青山 蜂 
11/23 (SAT) @ 代官山 AIR
11/26 (TUE) @ 神宮前 BONOBO
11/30 (SAT) @ 半蔵門 ANAGLA 
12/8  (SUN) @ 代官山 SALOON
12/14  (SAT)@ 西新宿 LOUVER
12/23 (MON) @ 代官山 SALOON
12/25 (WED) @ 神宮前 BONOBO
12/28 (SAT) @ 静岡 EIGHT&TEN
12/29 (SUN) @ 代官山 UNIT&SALOON
12/30 (MON) @ 中野 HAEVYSICKZERO
1/25 (SAT) @ 代官山 UNIT&SALOON


1
SIGNUS - BLACK HOLE - Promo

2
SOFT CELL - MEMORABILIA - NOT ON LABEL

3
Bottin - Plastic (incl. In Flagranti Remix) - Tin

4
POCKETKNIFE - CANYON DANCING 2 - WILDE CALM

5
DONDOLO - Dragon - TINY STICKS

6
MZKBX - DOMM BEAT - Macadam Mambo Trax

7
AFELAN - MDOU MOCTAR - SAHELSOUND

8
WARREN SUICIDE - WORLD WARREN REMIXES - Shitkatapult

9
HOLDEN - THE ILLUMINATIONS - Border Community

10
DANIEL STEINBERG - BAILANDO - Front Room

Nasca Car - ele-king

 ぼくが4半世紀にわたって応援している広島カープが16年ぶりのAクラス入り、初のクライマックスシリーズ進出! というのに大いに盛り上がっているあいだに、関西インディーズ・シーンの裏番長ナスカ・カーが11年ぶりの新譜をリリースした。

 そもそもナスカ・カーは90年代前半に、中屋浩市(最近では非常階段や関連ユニットでの活躍で知られる)、吉田ヤスシ、Dj タトルの3人で結成(経緯はこちらにくわしい)。当初は特撮番組などのサンプリングを駆使して緻密に構成されたエレクトロ?バンドであり、「西の電気グルーヴ」と称された(「東のX、西のCOLOR」の引用だろうか)。当時、高円寺20000Vの壁に貼られた印象的なチラシの数々を記憶している人もいるだろう。
 吉田・タトルの脱退後も中屋を中心にバンドは継続、ディープ・パープルばりの回数に及ぶメンバー・チェンジを経て制作された今作はその名も『最新録音盤』。次作が出ない限りは永久にこれが最新になるわけで、これが最後のアルバムになるかもしれないという覚悟がタイトルからも感じられる。これがなんと、サンプリングゼロ、ほぼバンド演奏のロック・アルバムとなった。11年前の前作(アルバム・タイトルは無し。CDの背の部分には「CDお買い上げありがとうございます!」と書かれているが、これがタイトルというわけではないと思う……)では現アメリコの西岡由美子(現・大谷由美子)がヴォーカルだったのだが、現在では中屋が自らヴォーカルを担当。
 元メルト・バナナで、現在は奇形児、前野健太とソープランダーズ、石橋英子withもう死んだ人たち、ジム・オルークのレッド・ゼツリンやマエバリ・ヴァレンタイン、EP-4等々数々のバンドに参加しているマルチプレイヤーの須藤俊明が半分以上の楽曲でギター、ピアノ等を演奏、共同プロデュースとして名を連ねているほか、ゆかりのある顔ぶれが多数ゲスト参加している(というか、ゲストなのかメンバーなのか線引が曖昧なようで、例えば須藤は中ジャケではしっかりメンバーとして写真も掲載されているにも関わらず、自身のブログでは「ゲスト参加」と表現してたりする)。
 ジャケットにウィリアム・ブレイクの引用が印刷されているほか、帯、トレー、裏ジャケに併記された日本語・英語タイトルの数々など、サウンド以外の部分における情報過多なサンプリングぶりは健在だ。
 元マドモアゼル・ショートヘア!のホダカナオミをヴォーカルに迎えた呪術的なヘヴィ・サイケナンバー“ドアを開けろ”からはじまり、打ち込み+生楽器による重量級ハード・ロックが中心(曲によってはツインドラムだったりする)となっている。「地デジのテレビはもう必要ない」と連呼し「衛星放送と契約だ」と締める“N.O.T.V.”などは、「うちにはスカパー!があればいい」と言い切った野田編集長も共感するところではなかろうか。
 ホダカのコーラスをフィーチャーしたドリーミーな“ハロー・グッバイ”、ブッダマシーンを使用した涅槃サイケ“天国への道”(昨年中屋が体験した臨死体験に触発されてるのだろうか)、ファズベースとドラムが怖-COA-を思わせる“ラン・ベイビー・ラン”など、熱いハード・ロックに混じって収録されたインタールード的な小曲もいいアクセントになっている。
 ガバキックに乗せた“嫌われ者のパンク2013”、中間のインプロ部分が大胆な“インプロヴィゼーション・アナーキー2013”など、関西ノーウェイヴの始祖・ウルトラビデのカヴァーという形による関西パンク源流への言及など、近年の非常階段での活動も併せて考えると興味深い。
 最後の“斬る!斬る!!斬る!!!”はスラッジコア的な重いリフの反復からギターとシンセによるノイズになだれ込んで終了。20年にわたる活動の総決算にふさわしい濃厚な油っこさと熱量を持った、中屋の愛する天下一品のこってりラーメンのようなアルバムである。これが最後とか言わずに、カープがリーグ優勝する前に次作をお願いしたい。

interview with Alex Barck (Jazzanova) - ele-king

 1990年代半ばにドイツのベルリンで結成されたジャザノヴァ。3人のDJと3人のプロデューサー/トラックメイカーから成るこのユニットが生まれた時期は、クラブ・ジャズ・シーンが躍進しており、ニュー・ジャズやフューチャー・ジャズと呼ばれる新しい音楽が生まれていた。当時はジャズを接点にさまざまな音楽ジャンルが融合し、カール・クレイグのインナーゾーン・オーケストラやロニ・サイズのリプラゼントなどが活躍していた。そうした時代に一躍脚光を浴びたのがジャザノヴァだ。

 古い時代のジャズ、ソウル、ブラジル音楽、ラテン、アフロなどの音素材を、まるで実際に生演奏しているように錯覚させる緻密なサンプリングで再構築し、テクノ、ハウス、ヒップホップ、ドラムンベースなどを通過した新しい未来の音楽として提示する。彼らの手法は、それ以降のニュー・ジャズ~クロスオーヴァー・シーンの指針となり、多方面にも影響を及ぼした。『In Between』(2003年)、『Of All The Things』(2008年)とアルバムを発表していくなか、ジャザノヴァの音楽性は徐々に変化していく。エレクトロニクスとアコースティックな要素が融合していた『In Between』に比べ、『Of All The Things』では多くのシンガーを起用し、生演奏に比重を置いた作風となっていた。当時はメイヤー・ホーソンなどが台頭してきていたが、そうしたヴィンテージ・ソウル的な作品もあった。その方向性は最新作『Fankhaus Studio Sessions』(2012年)でさらに加速し、これは完全なバンド・スタイルでおこなったスタジオ・ライヴ集である。パーソネルもプロデューサー/トラックメイカーとセッション・ミュージシャンが主で、実際のところDJメンバーはほとんど関与していない。つまり、当初のジャザノヴァとは異なるものなのだ。


Alex Barck
Reunion

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 一方、そのDJメンバーであるアレックス・バークは、現在はソロ活動をメインでおこなっている。DJとして多忙な日々を送っていたアレックスは、2011年にプロマー&バークというユニットで『Alex And The Grizzly』を発表する。フォウナ・フラッシュ、トゥルービー・トリオ、ドラムレッスンといったユニットで、ジャザノヴァとともにドイツの音楽シーンを牽引してきたクリスチャン・プロマーとのユニットだ。
 音楽的にはディープ・ハウス、テック・ハウス、テクノ、ミニマルといった要素を軸とし、アレックスの普段のDJプレイを反映したものと言えるが、中に自身でヴォーカルを取ったりしたものや、シンガー・ソングライター的な要素を感じさせるものもあり、またフォークからクラシックやオペラ、バレアリックにチルアウト、そしてエスニックなど多彩なテイストを盛り込み、彼らの豊富な音楽的知識や経験が生かされていた。
 そして、2013年の秋、アレックスのキャリア初となるソロ・アルバム『Reunion』が完成した。『Alex And The Grizzly』の延長線上にある作品と言えるが、プロマー&バークではどちらかと言えばクリスチャン・プロマーがプロダクションの実務を仕切っていたのに対し、『Reunion』ではアレックスは完全に独り立ちし、作曲やプログラミングをはじめとしたスタジオ・ワークは全て自身でおこなっている。
 今回は自分で歌ってはいないが、代わりに多くのゲスト・シンガーを招き、ヴォーカル曲が多くなっていることも特徴だろう。レッド・ブル・ミュージック・アカデミーのイベントのDJで来日中のアレックスに、この『Reunion』のことを中心に、DJやジャザノヴァのこと、最近の音楽シーンについてなど、いろいろ語ってもらった。

音楽があまりにも溢れすぎているからガイドが必要だと思う。僕たちの世代のジャズDJが一番良い選曲者になれると思う。僕たちはどんなジャンルも新旧も問わず何でもチェックしているからね。この20年間で僕たちは音楽を俯瞰的にみる術を培ってきたから。僕たちの選曲者としての存在価値は、今後どんどん重要になっていくはずだよ。

初のソロ・アルバムのリリースおめでとうございます。DJ、そしてジャザノヴァのメンバーとして20年近くやってきて、今、このタイミングでソロ作を出したのは、どんな理由からですか?

アレックス・バーク(以下AB):昨年の7月から1年間、家族と一緒にレユニオンという島で生活することになって、そこではベルリンにいたときのようにスケジュールに縛られることなく、何の計画も立てずに音楽に取り組んでみようと思ったんだ。最初からアルバムを作ろうとしたわけじゃない。でも、島の空間や時間にすごく刺激されて、この1年はアルバムを1枚作るのにちょうどいい期間だと感じるようになっていった。向こうにはスタジオがないから、仕方なく自分のラップトップとヘッドフォンだけで制作していたんだけどね。

レユニオンはフランスの海外県で、アフリカのインド洋上にあるマダガスカル東方の小島なのですが、ベルリンを離れてここに移ったきっかけは何ですか?

AB:僕の妻はヨーロピアン・スクールの教師なのだけれど、彼女が海外に1年間赴任して教えるという交換プログラムの話をもらい、それがレユニオンだったんだ。彼女が行きたいと言ったとき、初めは一緒に行くのを少し躊躇した。DJにとって1年というのは長い時間だからね。でも、突然これは何か違う世界に触れるいい機会なんじゃないかという直感があったんだ。それまでベルリンにしか住んだことがなかったからね。実際、ベルリンを外から見ることが出来たのはいい経験だったよ。ベルリンではみんな「ベルリン・サウンド」を作るんだ。それはハードなテクノやハウス・ミュージックなんだけど、僕の好きな音楽ではなかった。だから、あのうるさい街を離れられてよかったよ。

CDジャケットになっているビーチの写真も、レユニオンでの風景なのですか?

AB:これはレユニオンに着いたその日に撮った最初の写真なんだ。とても美しい島で、まさにパラダイスだよ。現地の人は親切で、ピースフルだし、いろんな人種が混ざっている。中国系、インド系、黒人系のクレオール、それからフランス系と、皆それぞれ違っているけど、そうしていろんな血が混ざりあうことにより、美しい人が生み出されるんだ。そして、暖かいし、食べ物も最高だし、とくに魚は新鮮だよ! 老後には移り住みたいねとも思ったよ(笑)。

イビサのように観光地化されたところとは違うのですか?

AB:イビザのようなところとは全く違うね。フランスから多少の観光客がいる程度で、ずっと少ないよ。手つかずの自然の楽園というイメージかな。ナイト・ライフはないし、ホテルも少しだけ。とてもピュアな島だよ。火山があったり、4,000m級の山があったりする。それに美しいビーチもあって、全部揃っているんだ。ぜひホリデイに行くべきだね。

ということは、レユニオンではDJの機会などはなかったわけですか?

AB:プティヨンというとても小さいクラブでレジデントDJをやっていた。ただ、それはクラブというより家族や友達を集めたバーのようなところだったよ。それ以外はやらなかった。代わりに「エレクトロピカル」というフェスティヴァルのオーガナイズをしていて、ドイツから、例えばAMEのフランク・ヴィーデマンやクリスチャン・プロマーを呼んだり、ほかにジェフ・ミルズとか、フランスから何人かのアーティストをブッキングする仕事をしていた。あと11月と4月に2回ほどミニ・ツアーをやって、ヨーロッパの国々を回ったり、日本にも行ったりしたよ。

アルバムではレユニオン島出身のクリスティーヌ・セーラムというシンガーが歌っていますが、彼女とはどのように出会ったのですか?

AB:向こうに着いたとき、たまたま誰かから彼女のCDをもらったんだ。島にはマロヤという奴隷制の時代から続く伝統的な音楽があって、彼女はその分野でとても有名な歌手なんだよ。で、そのCDを聴いて、僕は彼女の声に恋をしたんだ。知り合いを通して何とか彼女にコンタクトを取りたいと思ったところ、実は僕がプティヨンでプレイする時にいつも彼女が来てくれていたことがわかってね(笑)。それで、すぐ紹介してもらった。すごく才能があって、フレンドリーで素晴らしい人だよ。そうやって仲良くなって、一緒に音楽を作ったんだ。実はこれからふたりで新しいアルバムを作ろうと考えていて、来年にもう一度レユニオンに行って、レコーディングをしようと計画中なんだ。

レユニオンには独自の音楽文化があるのですか?

AB:レユニオンは奴隷制時代の典型的な植民地だった。そして、アメリカのブルースやアフリカやブラジルの伝統的な音楽のように、レユニオンにはマロヤという音楽があるんだ。でも、それは実は1980年代まで演奏するのを禁止されていたんだよ。当時のミッテラン大統領が解禁して、一般に聴くことができるようになった。音楽的には打楽器のみの編成で、ある種トランシーな要素がある。カヤンバという大きなシェイカーのような楽器やルーラーという打楽器を使っていて、それらと歌だけから成り立つ音楽なんだ。パフォーマンスを見に行くと、老人でさえもトランス状態で踊っている。少しブードゥーの音楽に似ているところもあって、とても興味深いね。それとミニマルな要素もあるから、DJとしてプレイできるかもね。心の奥深くに入り込んでくるような音楽だよ。

クリスティーンが歌う“Oh Africa”は、そのマロヤに影響を受けた部分もあるのですか?

AB:そうだね、この曲と“Reunion”が島の文化から最も影響を受けたものだと思う。アルバムのすべての曲が島に影響を受けたものとは言い難いけれど、あの島がこの音楽を作る時間と場所をくれたわけだから、そうした意味でレユニオンのあらゆるものから着想を得ているアルバムなんだ。そのなかでも「Oh Africa」は直接的な影響を大きく受けているよ。リズムもマロヤのスタイルだし、大きなシェイカーを使ったり、クリスティーヌの歌声だったり、明らかにこのアルバムのハイライトだと思う。

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今回のアルバムは初期のジャザノヴァに近い、DJ的なプロデュース・ワークを重視した曲作りなんだ。いろいろリミックスを手掛けたりとか、最初のアルバムの頃のね。ジャザノヴァはライヴ・サウンドへ変化していくにつれて、よりクラシックなソング・ライティングに基づく明確な骨組みの音楽へと曲調も変化していった。


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レユニオンから受けた着想という話でいうと、“Doubter”“Reset”“Spinning Around”といった曲からはバレアリックなムードが漂っているのですが、それはレユニオンでのレイドバックした生活から育まれたものと言えそうですか?

AB:バレアリックという言葉を出すなら、それはレユニオンでの生活以前から自分のなかに存在してきたと思う。言うなれば根源的なバレアリックの感触に、いつも大きなインスピレーションを得ているんだ。意図的にそれを嗜好しているわけではなく、純粋に内面から出てくるものなんだ。僕のDJを知っている人は、そういった音楽をかけるのが好きだと理解してくれるんじゃないかな。子供の頃の僕はポップ・ミュージックをよく聴いてたけど、改めて自分なりのバレアリックということを分析するなら、例えば当時好きだったシャーデーのような1980年代のポップ・ミュージックに繋がりがあるんじゃないだろうか。だから、それは直接的な影響というより潜在的なもので、ポップ・ミュージックに囲まれて育った僕の子供時代の環境から自然と湧き出し、音楽を作る時に表面に浮かんでくるんだ。バレアリックというものを僕は意識しているわけではなく、それは言うなればポップ・ミュージックなんだけど、ポップ・ミュージックもバレアリックに通じているんじゃないかな。曲作りにおいてもバレアリックなものを作ろうとしているわけじゃない。敢えて言うなら、コーラスがあって、ヴァースがあって、フックが魅力的という古典的な曲作りが好きなのかも知れないね。それはロック・ポップ的な音楽、例えば昔スミスなどを聴いていた時から僕の中に生まれたんじゃないだろうか。

バレアリックという言葉を出したのは、プロマー&バークでアル・ディ・メオラの「Pictures Of The Sea (Love Theme)」のカヴァーをしていて、そうした部分からも繋がるところを感じたので訊いたわけです。

AB:僕はドイツの海沿いの街で生まれたので、海がずっと心象風景になっているんだ。海を見ながら何時間も座っているのが好きだよ。いつもその風景に影響を受けているし、頭のなかにそのイメージがあるんだ。だから、アル・ディ・メオラの“Pictures Of The Sea”が僕の好きな曲というのは、わかりやすいだろ(笑)。
 でも、これはあまりにも美しい曲だけどクラブでかけられるタイプのナンバーじゃないから、いつかそのクラブ・ヴァージョンを作りたいと考えていたんだ。いいカヴァーができればとね。ジャザノヴァの最初のアルバムにも“Sub-Atlantic”という素晴らしいインタールードがあるけど、これも海の風景から来ている。そういった具合に海のサウンドとイメージが僕の頭のなかにいつもあるんだ。僕の家族はホリデイにフランスの海沿いの別荘に行くけど、できればそこにずっといたいくらいだよ(笑)。ベルリンには海がないからね、湖はたくさんあるけれど。

今回のアルバムで、ジャザノヴァやプロマー&バークの時と違いを意識した点はありますか?プロマー&バークとは繋がりはあるかもしれないが、最近のジャザノヴァのサウンドは違うと思うのですが。

AB:今回のアルバムは初期のジャザノヴァに近い、DJ的なプロデュース・ワークを重視した曲作りなんだ。いろいろリミックスを手掛けたりとか、最初のアルバムの頃のね。ジャザノヴァはライヴ・サウンドへ変化していくにつれて、よりクラシックなソング・ライティングに基づく明確な骨組みの音楽へと曲調も変化していった。ただ、僕はDJとしてキャリアをスタートしたから、DJ的な手法による音楽を求める部分もあり、それがプロマー&バークに繋がったのかもしれない。で、今回のアルバムにはそうしたDJ的な要素もあるし、一方で単体の曲として聴けるものでもある。楽曲ごとを重視しながらクラブでもかけられるという、ちょうど中間のものなんだ。

プロマー&バークのアルバム制作時に、クリスチャン・プロマーからエイブルトン・ライヴなどの機材などの使い方を教えてもらったそうですね。今回は独りで制作して、それらの使い方は上達しましたか?

AB:音楽的な面ではジャザノヴァのときにもチームからいろいろ学んできて、その次に実務作業や技術面でクリスチャンからより多くのことを学んできた。教えてもらうというより、いつも彼が作業する隣りに座って、それを見ながらいろいろ質問していたね。彼は本当に短時間で制作できるプロデューサーで、アイデアがあればパッと作ってしまう。プロマー&バークのアルバムは10日で作ってしまったんだ。彼からは多くのことを学んだよ。コンプレッションやシグナル・チェインニングといった複雑な技術についてもね。でも、まだ僕は完璧なプロデューサーではないので、このアルバムの制作中にも、ときどき彼に電話して質問しなければならなかったよ(笑)。

それでは、アルバムを作るごとにだんだんと上達していますね。

AB:そう、制作しながら学んでいるんだ。15年もの間エンジニアと一緒に働きながら、コンプレッサーがこんな調子なら、サウンドはこんな感じなる、という風に試行錯誤しながら学んできた。でも、そうした学習の成果に満足するかどうかは、結局のところはとても個人的な感覚によるんだ。今回のアルバムに関して、自分では80%の完成度だと思っている。僕にとってこのプロダクションはパーフェクトなものとならなくても、ある程度形が整っていればOKという感じなんだ。ヘッドフォンで作ったということを考えれば上出来かもしれない。もし、これと同じアイデアで同じアルバムを、誰かビッグなプロデューサーと組んで作れていたら、より良いものになったかもしれない。独りで全部を手掛けると、外からのインプットがないし、頭のなかがグチャグチャに混乱することもあるんだ。とくにミックス・ダウンのときが大変で、神経を消耗する作業だよ。今回も最終ミックス・ダウンでは1カ月の間寝られな日が続いて、ずっと気分が悪かったよ(笑)。1年でスパッと完成させたかったから、何とかやり遂げたけどね。

プロマー&バークでは自分でも歌っていましたが、今回はたくさんのヴォーカリストが参加しています。どうして自分で歌わなかったのですか?

AB:歌いたくなかったんだ(笑)。プロマー&バークのときは特別で、そもそも他のシンガーに歌ってもらうためのガイドラインとして僕が歌ったんだ。でも、それを聴いて「いや、こっちの方がいいよ」、「君が歌うなんてクールだよ」と言う人がいた。一方、いい意見だけじゃなくて、ある人たちは「ダメだ」と言った。クリスチャンと僕は、むしろそうした意見の違いがあった方が、結果的にアルバムとして良いものになるんじゃないかなと思って、それで自分の声を残したんだ。でも、今回はインスト・トラックの方で手一杯だったし、他のシンガーが歌う方が良いと考えたんだ。もちろん、彼らに僕の考えはいろいろ伝え、イメージとかは実際に歌って聞かせたりしたりもし、最終的に彼らがそれを形にした。まあ、僕はレッスンを受けたプロのシンガーじゃないし、たまに歌うこともあるけれど、今回はそれを選択しなかった。家で子供たちに歌うことは大丈夫だけど、才能のあるシンガーではないからね(笑)。

いろいろなタイプのシンガーがいますが、フェットサムの歌う“Why & How”やジョナサン・ベッカリーの“Doubter”を聴くと、こうしたシンガーの起用によってシンガー・ソングライター的な要素を代弁しているように感じます。

AB:準備段階で電話越しに歌って聞かせ、いろいろアイデアを交換していったんだけど、参加した全てのシンガーが素晴らしい仕事をしてくれたと思う。僕にとって完璧なコンビネーションだったね。ジョナサンは全ての曲をやりたいと思っていたみたいで、僕が3曲頼んだのに、5曲もやってきたんだ。僕はNGを出したけどね(笑)。でも、彼の声は大好きだよ。彼の別のプロジェクトのアーネストはハウス寄りの音楽だけど、今回はそのイメージから少し変わっている。偶然にも彼の次のプロジェクトはジョナサン・ベッカリー名義のアルバムで、これもまた異なるものだけれど、よりディープで奇妙な感じがするね。僕のアルバムでは、それらにはない新しいイメージを取り入れてくれて、とてもいいものになった。
 フェットサムは昔からの友人で、ジャザノヴァが運営するソナー・コレクティヴからソロ・アルバムをリリースしている。今回もとても面白いレコーディング・セッションだったよ。バック・トラックが終わった後も、彼はアカペラでずっと歌い続けていたので、それを録音して使ったんだ。彼は才能のある力強いシンガーだよ。ほかに、スティー・ダウンズも僕の古くからの友だちで、彼も今度ソナー・コレクティヴからアルバムを出すけれど、ジャザノヴァでプロデュースをしている。ビア・アヌビスはまだ21才のとてもクレイジーな女の子だけど、ベニー・シングスのプロデュースした素晴らしいデビュー・アルバムがもうすぐ出るよ。彼女の声は天使みたいなんだ。彼女がデモを送ってきて、それを聴いた瞬間にファンになって、僕のアルバムに参加してもらおうと決めた。いつか大きなアーティストになると思う。

“Doubter”はライやザ・ウィーケンドなどオルタナティヴなR&Bのアーティストに通じるナンバーで、ジェイムス・ブレイクの世界観に結びつくような曲だと思います。

AB:最初この曲はインストの予定だった。ドイツの古いジャズ・レコードからのドラム・ブレイクを使ったもので、とても奇妙な感じに仕上がったんだ。でも、ジョナサンがそれを聴いてヴォーカルをやりたいといったので、僕はOKした。彼は聖歌隊のような重層的なヴォーカルを入れた。当初、僕にとってこれはアルバムの途中に入るインタールード的な位置づけだったから、君が言うようなジェイムス・ブレイク的なフィーリングは、僕よりジョナサンが持ち込んだものだと思う。歌詞やヴォーカルが入ることによって、オルタナティヴなR&Bになったんだろうね。ジョナサンにありがとうといわなくちゃ(笑)。初めて聴いたとき、この曲に乗ったヴォーカルに吹っ飛んだんだ。

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誰かが“ニュー・オーダーに触発されたみたいだと言ったんだ。それには全く気付かなかったのだけれど、もしかしたら人生のある時期に吸収したものが、知らず知らずのうちに出てきたのかもしれない。僕はニュー・オーダーのアルバムを全部持っているからね。


Alex Barck
Reunion

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“Oh Africa”のアフリカ・テイスト、“Move Slowly”でのレゲエやフォークのテイスト、“Why & How”でのゴスペルなど、ルーツ・ミュージックの要素とエレクトロを融合させたアルバムだと思います。このような融合はジャザノヴァのときからやっていましたが、それは自然と生みだされたのですか?

AB:人はそれぞれに音楽の歴史を持っているよね。初めに両親のコレクションを聴きながら育って、僕のようにコレクターになったら、たくさんの音楽をひたすら聴いていくんだ。いつも思うのは、幾つかのアイデアはそうしたレコード・コレクションに基づいているということ。そして、その幾つかは直接的な影響を及ぼす。例えば“Spinning Around”では、僕の好きなディスコ/ブギーのレコードのなかから、アフィニティの“Don’t Go Away”をサンプリングした。こうした直接的なものとは別に、もっとさりげないもので内面から出てくる影響がある。例えば誰かが“Atmosphere”を聴いて、ニュー・オーダーに触発されたみたいだと言ったんだ。それには全く気付かなかったのだけれど、もしかしたら人生のある時期に吸収したものが、知らず知らずのうちに出てきたのかもしれない。僕はニュー・オーダーのアルバムを全部持っているからね。
 だから、自分で意識できる直接的な影響と、どこから来たかわからない無意識下の影響がミックスされたのが、このアルバムだよ。実を言うと僕の場合、曲の作りはじめは最終的にどんな曲になるのかわかっているわけではないんだ。曲作りをどんどん進めていって、ある時はこっちへ、別の時には全く違う方向へ行ったりもすることもありうる。大袈裟かもしれないけど、ひとつの曲について200通りのアレンジを作ったんだ。音楽制作でどこへ行くかを自分で決められるというのは、とても素晴らしいことだと思う。それが今回のアルバム制作の中で楽しかったことだよ。ジャザノヴァのようにたくさん人がいると、意見を譲らないといけない時もある。だけど今回は自分で決断が出来るし、音楽自体が方向性を決めることもあるんだ。

曲の面白さという点では、「Reunion」は11分を超す大作で、フィールド・レコーディングを取り入れたり、プログレのような展開があったり、とても実験的で意欲的な作品です。この曲のアイデアはどこから生まれたのですか?

AB:この曲はとても特別なものだ。レユニオン滞在の最後の1週間に作ったもので、「さよなら」という意味のこもった曲なんだ。実際の島から最も影響を受けた曲でもある。初めに島の美しさ、パラダイス的な側面があって、次にサイクロンや火山といった生々しい自然の側面が現れる。そういった島全体を表現したかったんだ。日の出、昼の時間や風景、サイクロン、波、サメなどを一緒にしたんだ。幸運なことに、ドイツのプログレ・バンドのポポル・ヴーが1975年に作った『Aguirre』のなかから、ドラム・ソロを使う許可をもらった。前に彼らの曲のリミックスを手掛けたんだけれど、予算がなかったから、代わりに『Aguirre』のドラムのトラックをもらうように頼んでいて、それが今回に生きた。この曲のふたつ目のパートにそのドラムが使われているんだよ。僕の妻はいつもはハッピーでメロウな曲が好きなんだけれど、この曲を聴くと島のイメージが浮かび上がってくるということで、アルバムではこれが彼女の一番のお気に入りなんだ。

“Reset”はホット・チップや2ベアーズのジョー・ゴダード、“Don't Hold Back”はディスクロージャーなどを彷彿とさせる部分があります。最近はスピード・ガラージから、ポスト・ダブステップのようなベース・ミュージックを通過した新世代のハウス・サウンドが大きな影響力を持っています。あなたもこうした若い世代のアーティストに触発されることもありますか?

AB:実は最近のハウス・サウンドが大好きなんだ。ベースを重視する方向に向かっていて、とてもいいと思う。ディスクロージャーに関しては、本当に初期から追いかけていて、いつかビッグな存在になるだろうと思っていたけど、ここまでになるとは思わなかったよ。ディスクロージャーは僕たちのシーンにとってとても重要な存在だと思う。彼らは良いビートと良いプロダクションで良質のポップなハウス・サウンドを生み出して、アルバムはNo.1を取ったわけだからね。若い人たちを僕らの世界に招き入れて、よりディープでより面白い世界へと導く存在だと思う。ディスクロージャーやジョー・ゴダードはその扉を開いたんだ。

このアルバムはハウス的なスタイルの曲が多いですが、例えばジュークとかチルウェイヴになど他のスタイルにも興味を持ったりしますか?

AB:これはいつも変わらないことだけれど、良い音楽であれば何でも興味を持つよ。僕たちのシーンの良い面として、ボーダーレスに何でもチェックするというところがある。フェスティヴァルで誰かほかのシーンの人に会ったとして、彼らは僕たちの音楽を知らないけれど、僕らは彼らのことを知っていることがよくあるんだ。ただ、クラブ・ジャズだけじゃなくてね。
 例えばトロ・イ・モアの新しいアルバムはとても素晴らしいと思うよ。思うに最近の若い子たちはジャンルを必要としていないんじゃないかな。もしそれがい曲であれば、彼らはiPodにダウンロードするだけなんだ。でも、逆に言えば音楽があまりにも溢れすぎているから、彼らにはガイドが必要だと思う。そうした点でたぶん僕たちの世代のジャズDJが、彼らにとって一番良い選曲者になれると思う。僕たちはどんなジャンルも新旧も問わず何でもチェックしているからね。この20年間で僕たちは音楽を俯瞰的にみる術を培ってきたから。僕たちの選曲者としての存在価値は、今後どんどん重要になっていくはずだよ。

ボーダーレスという話について、今回のイベントに同じくブッキングされたフォルティDLやコアレスといったアーティストは、いろいろな音楽的要素や柔軟性を持っていて、まさにボーダーレスなアーティストの新世代だと思います。こうした若い世代の活躍についてどう思われますか?

AB:フォルティDLやコアレスは未来の音楽と言うより、次のシーンの予感をはらんだ現在の音楽なんだと思う。彼らのような存在はいつも興味深い。日夜音楽作りに関わっているなかで、一番大事なのはいつもそこに未来があることなんだ。もし、ただ過去を振り返っているままだったり、未来に興味を無くしてしまったら、終わりだと思うし、退屈だ。僕はドイツでふたつのラジオ番組を持っているけど、いつも新しいものが入ってくるという意味でとても大切なことなんだ。もし、毎日同じものをかけなければならなかったら、気分が悪くなるよ。もちろん僕にも好みや価値観があるから、新しければ何でも良いというわけではないけれど。
 いまはベース・ミュージックをはじめ、イギリスから起こるムーヴメントの影響が強いけど、僕にとってはずっとドイツのシーンよりも面白いものだった。いつもUKから来る2ステップやブレイクス、ダブステップ、レゲエに夢中になっていたんだ。ドイツに住んでいて、周りにはドイツの音楽があって、いくつかは良いものもあったけれど、過去も現在も総じてUKのシーンに惹かれることが多いね。

ベルリンやその周辺のシーンはいまどのような感じですか? スキューバやモードセレクターが活躍しているようですが。

AB:ベルリンのシーンは、実はベルリンの人によって作られているわけではないんだ。現在のシーンの90%はベルリンで生まれ育った人ではなく、外から来た人たちによってつくられているんだ。スキューバもイギリスから来たわけだしね。だから、モードセレクターは地元が生んだほとんど唯一のアーティストかもしれない。でも、世界中からあらゆる影響が持ち込まれているわけだから、それは決して悪いことではない。巨大なメルティング・ポット状態なんだ。以前はただベルリン生まれのサウンドだけだったのだけれど、いまは国際的になった。だから、例えば素晴らしいソウル・シンガーや面白い音楽を作っているキッズに街で会える機会がある。良い方向に変化していると思う。人は増え続けているし、音楽的には良いことだと思う。

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ディスクロージャーに関しては、本当に初期から追いかけていて、いつかビッグな存在になるだろうと思っていたけど、ここまでになるとは思わなかったよ。ディスクロージャーは僕たちのシーンにとってとても重要な存在だと思う。彼らは良いビートと良いプロダクションで良質のポップなハウス・サウンドを生み出して、アルバムはNo.1を取ったわけだからね。

今個人的に注目しているアーティストはいますか?DJで良くプレイするアーティストなどはいますか?

AB:さっきも言ったようにディスクロージャーはとても良いと思っている。ベルリンではコミックス(Commixxx)がいいと思う。彼はいつか成功するんじゃないかな。まだ出てきたばかりだけれど、トラックは素晴らしいし、ベルリンのシンガーとやったものなどは最高だよ。他にもたくさんあってひとつに絞ることはできないけれど、コミックスは外せないな。あと、また言うけどビア・アヌビスのアルバムは本当に美しい。彼女はとても若いけれど才能があるんだ。彼女をリトル・ドラゴンのマネージメント・チームと一緒に手掛けているんだけど、このプロジェクトが成功すれば、これまでで最大級の仕事になるはずだ。

ジャザノヴァ自体は今後どういった方向に進むのでしょうか? 現在は生バンド的な方向で、アレックス自身の方向性とは違うように感じますが。

AB:実は次回のアルバムの制作がはじまっているけど、ファーストとセカンドの中間のようなものになると思う。ポップなものというより、よりシリアスなダンス・アルバムになるよ。よりクラブ寄りでアップ・テンポの曲が増えるけれど、ライヴ・ミュージシャンと一緒にやった生演奏も録音していく。ライヴをはじめた初期は、どちらかと言うと静かで大人しい曲が多かった。でも、それから何千人もの観客の入るライヴでは、より力強い演奏が必要だと気づいたんだ。それで、次回のアルバムをよりダンサブルなものにしようと思っている。僕の好みだしね。すでにムラトゥ・アスタケとレコーディングをしたし、ポール・ランドルフに続く新しいシンガーも起用する予定だ。でも、最後の瞬間まで完成形がどうなるのか、それはわからないね。

プロマー&バークの方も継続していますか?

AB:たくさんのライヴをやっているよ。新しい曲もすでに10曲ほどラフ・スケッチがあるんだ。クリスチャンの仕事はものすごく速いから、30分もあれば1曲作ってしまうんだ(笑)。次の夏までにはアルバムに取り組むと思う。いまはツアーやスタジオ・ワーク、ソナー・コレクティヴでのオフィス・ワークが溜っているから、それが済んだらクリスチャンとスタジオで作業することになると思う。

最後にファンへのメッセージをお願いします。

AB:僕のメッセージはいつも変わらない。「何かを信じていれば、必ずそこに手が届く」ということだ。それは機材や何かではなく、頭のなかにあるアイデアのことなんだ。資源は頭のなかにある。あとは、ただそれを取りだす術を見つけるだけ。そして、その方法は信じることだと思う。たとえいま、君の作った音楽が売れなかったとしても、もしそれを信じていたら、いつか人に理解されるようになるんだ。過去に渡って素晴らしい仕事をしてきたアーティストを何人も知っているよ。彼らは自費でレコード制作していたけれど、当時は誰もそれを理解していなかった。でも、今では彼らはヴィジョンを持った素晴らしいアーティストと見なされている。それはそのときに評価されるものとは限らない。タイムカプセルに残され、20年後に評価されるかもしれない。そして、そういう考え方が何かを信じる手助けになるだろう。ごくまれに一晩で成功する者もいるかもしれないけど、大半は長い時間を経て花開くものなんだ。だから、あせらずに時間をかけてじっくりやるべきだと思う。

Mau Mau - ele-king

 マウ・マウは、DAFの初期メンバー、ヴォルフガング・シュペルマンス(g)とミヒャエル・ケムナー(b)のふたりを中心としたノイエ・ドイッチェ・ヴェレのバンドで、1982年の1枚のアルバム『クラフト』と2枚のシングルを残したまま歴史から消えたバンド。今回、東京の〈スエザン・スタジオ〉が、その『クラフト』11曲と録音はしたもののお蔵入りとなっていた幻のセカンド・アルバム『Auf Wiedersehen』の楽曲10曲、そしてシングル曲“Herzschlag”を加えた構成でリイシューした。『クラフト』自体が、1982年に出たきり、30年以上も知る人ぞ知る隠れ名盤となった。また、追加されている幻のセカンドの10曲など、これまで聴きようのなかったもの。しかも、レーベルのサイトの直販で買えば、シュペルマンスがマウ・マウス解散後にジャッキー・リーベツァイト(カンのドラマー)らと組んだプラザ・ホテル名義の唯一の作品「Bewegliche Ziele」のCDも付いている。すでに発売から日数が経っているのでコアなドイツ好きはゲットしているようだが、まだご存じではない方のために紹介しておきましょう。
 中古で高額な作品の内容が良いとは限らないのは当たり前だが、マウ・マウは素晴らしい。『クラフト』は、DAFとワイヤーが出会ったようなミニマリズムがあり、ファンクがドイツのポストパンクに染みついているところも他にはない魅力となっている。ワンコードの、リズミックなシュペルマンスのギターとケムナーのベースの絡みが最高だ。ふたりの演奏は、DAFの名曲“ケバブ・トラウム”のオリジナル・ヴァージョンや〈ミュート〉からのセカンド・アルバムでも聴けるが、マウ・マウは、1980年あたりのDAFのサウンドのもうひとつの洗練された発展型だと言える。
 『Auf Wiedersehen』は、エレクトロニックな要素が大幅に入ったニューウェイヴ・ディスコ・スタイルで、『クラフト』よりもポップになっている(サックスもフィーチャーされている)。1983年というと、ニュー・オーダーの「ブルー・マンデー」ではないがリップ・リグ&パニックもキャバレ・ヴォルテールもパレ・シャンブルグも、ニューウェイヴがいっきにディスコに走っている。『Auf Wiedersehen』もまさにその時代の音だが、やはりここにもファンクのセンスがあって、しかもそれはノイエ・ドイッチェ・ヴェレらしい反復の美学とドイツ語のあの独特の空気感のなかにある。

踊れないヤツこそ〈エレグラ〉へ! - ele-king

橋元:さてさて、〈エレグラ〉初心者たちによる〈エレグラ〉ワクワク対談、お送りしたいと思います。達人の方々には「ふーむぅ?」という感じで生あたたかく見守っていただくことにいたしまして、逆に「普段クラブとかダンス・イヴェントはちょっと……」っていうベッドルーマーの方たちには「エレグラ楽しいかも!?」という発見をひとつでもお届けできたら幸いかなと。じゃあまず、竹内くんは昨年初参加ということでしたね。どうでしたか?

竹内:あらためて昨年の後日談を読んできたんですけど、完全に脳ミソが痺れて残念な感じの人になってる(笑)。あれはいまからでも修正したいくらいですね。

橋元:知らないよ(笑)。

竹内:まあ、いまになって冷静に振り返ると、電気グルーヴに頭からガツンとやられて、フォー・テットにもう一歩のところで乗り切れなかった、というのがひとつのポイントでした。その後遺症か、今年は〈FUJIROCK FESTIVAL '13〉でのThe XX、その後のジェイミー・XXのDJ、それに先日のディスクロージャーのライヴがとにかく素晴らしく感じられて、数年前まで「こんな単純な4 / 4に乗れるか!」とか言っていた人間が、まんまとハウス・ビートに踊らされてしまった、という個人史の流れがあります。

橋元:ははは、それも知らないけど! でも、いま「ハウス・ビートに踊らされてしまう」というのはリアリティかもしれないですね。編集部でも90年代ハウスのリヴァイヴァル状況についてはよく話題に上がります。

竹内:でも、自分もけっこうひねくれているので、じゃあ、ディスクロージャー的な無制限にアッパーな空間に毎日、毎週、通いたいかと言うと、どうやらそうでもないなと。とすれば、今年はやっぱりファクトリー・フロアを楽しみにせずにはいられないです。あのストイシズム!

橋元:むしろ緊縛されたい、みたいな? 彼らはユニークですよね。踊るインダストリアルというか、逆に硬直させられるような攻撃性もあって。昨年、企画盤『JPN』のリリースもあってとても鮮やかな印象を残しましたが、今年はついにフル・アルバムが出ました。まだまだ旬だよね。

竹内:反復動作という行為そのもののなかにすでに快楽、報酬が含まれているというか。それを教条的に追い求めるとミニマルの引き伸ばしにしかならないだろうし、もしかすると昨年、フォー・テットに乗り切れなかったというのはこのあたりがキーな気もするんですが、ファクトリー・フロアに関してはポップ・フィールドに片足を残したままその禁欲的な道を進んでいる。そこが危うくも魅力的だし、でもそれって、〈DFA〉がこの10年でオファーしてきたダンス・ミュージックの本質じゃないかと思うんですよね。だからもう、期待しかない。橋元さんは、今年は来るでしょう?

橋元:うん、行きますよ。踊るぞー。

竹内:棒読み(笑)?

橋元:脳で踊るの。〈エレグラ〉はそういう子も浮かない、いいイヴェントっていうイメージです。竹内くんこそ踊れるの? あ、緊縛されたいのか。

竹内:緊縛を少しずつ解いていく感じです、僕の場合は。それで、ステージのピークと自分のピークが同期する瞬間が何回かあればいい、みたいな。ちょっとカッコつけました(笑)。メンツ的には、何が楽しみです?

橋元:やっぱりジェイムス・ブレイク、ファクトリー・フロア、それからノサッジ・シングと真鍋大度×堀井哲史×比嘉了も楽しみですよ。ある意味では昨年のアモン・トービン枠みたいな? 先端的な映像表現と音楽とのコラボレーションですね。詳しくはないけど、さすがに彼らの手がけた「Perfume Global Site Project」とか、ノサッジ・シングの“イクリプス / ブルー”のオフィシャル・ヴィデオ(エレグラの公式ページでも観られます)なんかは観ていて。両方とも一瞬で「あ、あれだ!」ってわかる強い作家性がありますよね。



人体をスキャンして、リアルタイムでその情報を解析して映像を投射していく、みたいな感じなのかな。生身の舞踏とMMDの踊りとかの間みたいな印象なんだけど、「身体性を解体して云々……」みたいな野暮ったい批評はあんまりなくて、素朴な叙情性に訴えかける感じとか、一見ヴァーチャル志向なようでいて、むしろ生身の身体表現を加速させる感じとかは、ノサッジ・シングはもちろん、ハドソン・モホーク、バス、ティーブスみたいな〈ロウ・エンド・セオリー〉周辺の若い世代――感情豊かでドリーミーなヴァイブを持った人たちにすごく合ってると思うんです。

竹内:なるほど。これがエモーショナルだというのは感覚として分かります。これは見逃せない感じかも……。

橋元:うん、楽しみですね! ふつうに「アレ観れるんだ!?」ってワクワクしますよ。アモン・トービンとかの映像表現とかは、やっぱちょっと腕組みしながら観なきゃいけないのかなーみたいに思うところもありますが、たぶんこっちは、現在形のアートとしてのリアリティとか説得力に加えて、アトラクション要素も期待できる気がする。

竹内:アモン・トービンは、ここだけの話、腕組みとかしちゃってましたからね、僕の場合。目に意識が集中しちゃって。もちろん、会場は盛り上がってましたけど。さて、〈DFA〉、身体性という流れで言えば、やっぱり!!!(チック・チック・チック)でしょう。2007年ごろに、「いま聴くべきはLCDサウンドシステムか、!!!か」みたいな議論があったの、覚えてます? 当時、影響力のあるライターのなかではとにかく!!!が人気だったわけです。

橋元:そうなの? たしかに両方ともロック・リスナーから愛されたダンス音楽ですね。「ダンス×パンク」とか言ってたの懐かしい。ポスト・パンク・リヴァイヴァルの文脈でも語られてましたね。でも資質がぜんぜん違うから、どっちっていうの難しいなあ。好き嫌いの問題に回収されそう。粋の魅力と、野暮の魅力。

竹内:!!!って、ハードコア/パンク/ファンクという、言い様によってはもろにアンチ・ディスコな人たちに見えたわけですよ。もちろん、ディスコの素養も最初からありましたけど、僕くらいの歳だとやっぱり『ミス・テイクス』の印象がデカくて。“オール・マイ・ヒーローズ・アー・ウィアドーズ”などに象徴されるサイケデリック・ロック・グルーヴ。「ニューヨークのヒップたちって、こんな感じなのかなー」みたいな(笑)。そんなPファンク主義者たちが、メンバーの脱退などを経て、〈DFA〉とも絡みながら少しずつマシナリーなディスコ/ハウスへと向かっていく。これは、キャリアの積み方としてすごくドラマティックですよね。新作、なんせタイトルが『THR!!!ER(スリラー)』ですから。彼らには最高のパーティ・タイムを期待!!

橋元:ふむ。じゃあ、ジェイムス・ブレイクはどうですか。2011年の初来日の模様と感動はいまでも語り草ですが、もう“CMYK”の季節ではないし、今年はセカンド・アルバムの後にすでにいちど来日公演を行っていますね。そりゃ“CMYK”とか“アンラック”とか観たいけどさ。

竹内:うーん、変な話、フェス的には絶対に必要な2曲ですが、僕は逆にやってほしくない(笑)。〈FUJIROCK FESTIVAL '13〉でのThe XXがすごかったのは、マジで全曲、アレンジをハウス寄りにアップデートしていたからです。ジェイムス・ブレイクもいま、ヒップホップやハウスのエッセンスを別プロジェクトも込みでどんどん咀嚼しているし、お馴染みの曲をやるにしても、あれくらいの大胆さをむしろ期待したいかなー。あと、ファースト・アルバムの最大のリファレンスのひとつは、ボン・イヴェールの『フォー・エマ・フォーエヴァー・アゴー』でもあったわけですけど、セカンドはもはやアントニー・ヘガティと言うか、彼のシンガーとしての勝負作でもあったんだろうと思いますね。

橋元:それは大事な話なんじゃないですか。「ポスト・ダブステップ」の代名詞としての彼も重要ですけど、実際にあれだけの人気を下支えしているのは歌だと思います。すばらしいシンガーですよね。すごく白人的だけど、ブルー・アイドってニュアンスでは断じてない、間違いなく現代のソウル。

竹内:みんなで、棒立ちで歌を聴き入ったりして(笑)。で、踊りたい人は“Voyeur”がドロップされるのを期待することになると思うのだけど、もっと普遍的に言っても、このディケイドにもっとも期待される才能のひとつとして登場した男が、いまどんな風にビートを操り、あるいは僕らをどう踊らせるのか、これは現場に行かないとわからないでしょう!

橋元:6月はどんな感じだったんでしょうね。わたしは「ビートを磨きすぎてビートがなくなった」みたいな話が大好きなんですけど、ジェイムス・ブレイクがマジのア・カペラをやったらどうなるか観てみたいな。今年は歌の年ですしね。ケレラもふくめて、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルやらインクやらオート・ヌ・ヴやら、いわゆる正道じゃないところでもR&Bがとってもおもしろくなってる。

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橋元:さて、ベテラン勢はどうでしょう。ジャングル再燃という機運のなかリリースされたマシーンドラム『ヴェイパー・シティ』も、ダブステップとかジュークとかがきっちり噛み砕かれながら、チルウェイヴ後の耳にとっても馴染む心地よさがあって、さすがというか、楽しみですよね。いまシーンで鳴っているいろんな要素がパラフレーズされている感じ。

竹内:あえて意地悪な言い方をすると、流れの読み方がすごいというか。ジャングルとジュークをあそこまで洗練させ、しかもこのタイミングで、どことなくアンビエント風に鳴らすというのは、ちょっと真似できないでしょうね。声ネタの細かい飛ばし方なんかも、いまっぽい。通算参加回数一回の人間に言わせれば、これがいちばん一番〈エレグラ〉らしいアクトな気がするなあ。

橋元:そしてセオ・パリッシュは何度も観ていらっしゃるという方も多いことでしょう。フェスだとついついショーケースみたいな感じで、より若く新しい存在に目が行きがちですが、彼にかぎっては普通にメインという方も多いはず。ジェイムス・ブレイクなんかはいちばん喜んでいるんじゃないでしょうか。とっても尊敬してるんだよね? 初めてのわれわれは勉強っていう意味でも見ねば様です。ミネバ様です。

竹内:モードセレクターとかトゥー・メニー・ディージェイズもですね。ざっくりした言い方ですけど、どちらも「ジャンル関係なしにとにかく雑食する」みたいな、いまとなってはあえてそう自覚するまでもない越境めいた感覚で人気を博したのだと思います。だからこそいま、どんなステージを踏むのか、逆に興味ありますよね。

橋元:ソウルワックスとか懐かしい。ロックの人も相性のいいステージが期待できますよね。お祭り感もたっぷりと味わえそう。そして、シャーウッド&ピンチ。わたし〈オン・ユー(On-U)〉体験は、紙ジャケがババって出たときにちょっと聴いた、ってくらいしかないんです。やっぱりダブとかわかんないと、うちらは青くさいっていうか、生っちろいままなのかな? ごめんね、勝手に「うちら」ってくくっちゃったけど(笑)。ダブとかレゲエって文物と思ってない? わかってないがゆえに。

竹内:「自分とは世界が違うっしょ」みたいな先入観を、もしかしたら必要以上に内面化してるかも。でも、これで開き直っちゃうと三田さんとかに「それヤバいよ」って言われるだろうしなあ~。結果、うやむやになるという(笑)。

橋元:まあいっか。〈エレグラ〉で変わろうぜ。関係ないですけど、以前たまたま行ったジュークのイヴェントがすごくよくって、それは初心者をたのしく動かせてくれようとする気遣いがある会で、じんわり感動したんですよ。何事も先鋭化すると排他的な雰囲気が生まれるものだと思うんだけど、そこでは遊びに加えてくれようとする感じ、遊びの輪を広げようとする感じがすごくあって、運動神経ないけど楽しかったんです。これぞオープン・マインドというか、これは遊びなんだっていう基本が、本当の意味で徹底されていると感じました。

竹内:橋元さんがジュークって、めっちゃいい話ですね!!

橋元:そういう意味では、シャーウッド&ピンチの『ザ・ミュージック・キラーEP』はすごくオープン・マインドで、それは達人だからこその幅なのかもしれないですけど、ダブやレゲエを知らなくても楽しいんじゃないかと思います。もちろんピンチ(ブリストルのベース・カルチャーの立役者)の役割も重要で、そもそも凝り固まらない作風の方ですよね? 〈オン・ユー〉にもわりと小さい頃から馴染んでいたそうで、とても敬意ある、だけれど風通しのいいEPでした。録音とはぜんぜん違うはずだし、ライヴの方が本当というコラボだと思うので、これはマストではないでしょうか。ジャケのSpotifyを揶揄するようなデザインも、そういうことですよね。

竹内:じゃあ最後に、全体的な雑感なんですけど、昨年のラインナップと比べて規模が収縮したんじゃないかという声もあると思うのですが、それは単純に数を比べた場合ですよね。このイベントの歴史をざっと振り返ってみると、むしろこれくらいが適正規模なんだと言った方が適切かもしれない。数が絞られる分、より濃密な時間を過ごせる予感がしています。ビッグ・ネーム過ぎる大御所は出ないわけだし、全体的に海外の若手~中堅アクトが中心になっている。しかも、その多くは今年アルバムをリリースしている面々ですよね。厳選された現在形。事前の期待値で言えば、だから、僕は昨年よりも楽しみかな!

橋元:しゃっ。ele-kingは今年も物販やりますので、みなさんどうぞ遊びにきてくださいね。

!!! - ele-king

ディスコ・パンクがインになっているような気がする。と思ったのは!!!の今年の新作『スリラー』を聴いたとき……ではなく、じつを言うとファクトリー・フロアのシングルおよびそれに続くアルバムを聴いたときだが、FFがハウス全盛のUKのなかでもひときわ異彩を放っているのは、それを「パンク」とどうしても呼びたくなる乾いた攻撃性によるものだろう。10年ほど前、NYを中心としてそれをディスコやハウスの色気と繋いだのがディスコ・パンクだった。アーケイド・ファイアの新作における“リフレクター”でジェームズ・マーフィがサウンドに関与した途端、バンドにそれまでなかったセクシーさが導入されていたのはその成果であり、また、再びその時代がやってきたような予感がさせられるものである。かつてのディスコ・パンクを定義したトラックのひとつ、!!!の傑作シングル“ミー・アンド・ジュリアーニ・ダウン・バイ・ザ・スクール・ヤード(ア・トゥルー・ストーリー)”からすでに、10年経っているのだ。サイクルが一周したとしても不思議ではない。今年の〈エレクトラグライド〉にファクトリー・フロアと!!!が出演するのは、なかなか象徴的な出来事だと思う。

 とはいえ現在!!!がいる場所は、かつてと同じではない。僕のフェイヴァリット・アルバムはいまでも2007年のジャム・ファンク作『ミス・テイクス』だが、その当時の彼らの魅力であったハードコア・バンド出身ならではの汗臭さや暑苦しさを彼ら自身がかなぐり捨て、スタジオ・バンドとして洗練されたダンス・トラックを制作することを目標としたのが『スリラー』だった。アルバム・タイトルにもあるようにマイケル・ジャクソン的なR&Bの要素が注入され、その代表と言えるトラック“ワン・ボーイ/ワン・ガール”を聴いて浮かぶのは地下のライヴ・ハウスに集まる男連中の姿ではなく、ステージ上で衣装を着たファンク・バンドである。いわば、ディスコ・パンクにおけるディスコの部分を研ぎ澄ましていった過程が見える。ただいっぽうで、パンクの部分がやや見えにくくなったことが寂しく感じられもした。
 だが、その“ワン・ボーイ/ワン・ガール”をハウス・ミュージックの大物モーリス・フルトンがリミックスしたヴァージョンを聴けば、!!!が試みたことのさらなる成果が感じられる。音数を絞ったなかでブリブリ響く太いベースと軽快に鳴らされるパーカッション。サウンドが整頓されたことによる、これほど効果的なグルーヴはかつての!!!にはなかったものだ。ダンス・バンドとしての!!!の楽曲の快楽性が引き出されている。
 『R!M!X!S』は『スリラー』期のトラックのリミックスがまとめられた編集盤だが、総じてクラブ・ミュージックとして調理されており、逆流して『スリラー』のダンス・トラック集としての出来栄えの良さを証明しているように思える。ディープ・ハウス・トラックがヒットしたアンソニー・ナプレスによる“カリフォルニイェー”のミニマル・テクノ・ヴァージョンなどは、下手したら原曲以上にパンキッシュで格好いいし、〈100%シルク〉からのリリースで知られるアレックス・バーカットによる“スライド”はハードなテクノ・トラックとして否が応でも身体を揺らすだろう。面白いのはパトリック・フォードがトラックを手がけ、メイン・アトラクションズがラップする“カリフォルニイェー”で、このスクリュー感はもはやクラウド・ラップのそれである。

 かつて!!!はパーティやダンスに対する執着を“ミー・アンド・ジュリアーニ~”で「なぜだが分からないが、その魅力に抗えないもの」として表現していた。それは、ディスコやハウスに憧れたパンク・バンドによる素朴な愛の表明だったろう。が、それから10年が経ち、バンドはよくコントロールされたダンス・ミュージックを提供して、ひとを踊らせることに完全に奉仕している。それはパーティ・バンドとしての覚悟である。

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