前回取材したときは、お酒の席だったからでしょうか、バンドのみんながいたからでしょうか、なんかともてもご機嫌なヴァイブが全開だったのですが、今回初めて言葉を交わす素顔の奇妙礼太郎は、あのときの彼、あるいはステージでの彼、あのメロウでパワフルで感情の起伏豊かな音楽からはちょっと想像できないほど、物静かなお方だった。
奇妙礼太郎は、2012年の『桜富士山』以降、精力的な活動を続けている。作品も出している。リミックス盤『GOLDEN TIME REMIX』、曽我部恵一の〈ローズ〉からはアニメーションズの『ANIMATIONS LIVE!』、限定的なリリースとなったが奇妙礼太郎のソロ・アルバムも発表した。9月にはトラベルスイング楽団のライヴ盤『Live! 』をリリース。そして先日、トラベルスイング楽団としての新作『仁義なき恋愛』が出たばかり。
さあさあ 寄ってらっしゃい 見てらっしゃい
大根 人参 ロックンロール
さてさてここに現れし ビックバンド
シナトラ気取りの フリークスと
ガラスのハートに わさびを塗りすぎた
キンキーミュージシャンズ
微熱なフォーエバーヤングス達に贈る
ソフト問題児 アンド ハード迷子なオープンチャック
集団ダンスミュージックなのであります
“DEBAYASHI ALL NIGHT”
『仁義なき恋愛』は、何故、いまでも僕たちが古いソウルやブルースやロックンロールやスウィング・ジャズやなんかを好きなのかをわからせてくれる……そう、古くて新しい、時代のトレンドを度外視した、ピカピカに光っているヴィンテージ仕様のソウル・アルバムだ。
前作から変化があるわけではないが、完成度は高い。冒頭の曲の自己紹介の喋りにおける自己嘲笑はソウルのショーのレトリックのようだが、これが実に面白い。トラベルスイング楽団は伝統と形式を受け継ぎながら、自分たちの言葉のセンス、自分たちのグルーヴでまとめることができる。引用した言葉は、どんな説明よりも彼らの音楽を代弁しているんじゃないかと思う。
そして、2曲目のロックンロール、3曲目のオーティス・レディングばりのソウルを聴いたら、もうあなたは最後の曲の“恋がこんなにつらいとは”までいっきに聴いてしまうでショー。まるでヒット・メドレーのようだ。次から次へ、曲は夜空の流れ星のように展開する。アルバムの尺が42分というのも良い。
トラベルスイング楽団の演奏/アレンジも『仁義なき恋愛』を名作にしている大きな理由だ。このアルバムにブラスセクションとピアノがなかったら、心の底から笑うことはできなかったかもしれない。トラベルスイング楽団の敷居の低さとクオリティの高さ、ビッグバンドならではの洒落気と歓喜は本当に魅力的だと思う。アルバムを聴いていると、そしてこうして彼らに関する原稿を書いていても、ビールを飲みたくなるのである。
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BluesSoulRock'n RollSwing JazzPunk 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団Live! Pヴァイン |
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BluesSoulRock'n RollSwing Jazz Pop 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団仁義なき恋愛 Pヴァイン |
一番最初に、異様な感じを受けたのは……本屋で売ってる1000円CDみたいなやつでリトル・リチャードのベストみたいなやつがたまたま家にあって。それはなんかビックリしましたね。
■まず先に出たライヴ・アルバムが素晴らしいと思いました。こんなにもパンクだったのかと思ってびっくりです。「あれ、こんなだっけ?」って、後半になればなるほど、“サントワマミー”とか(笑)。なんでご自身でまだ聴いてないんですか? こんな素晴らしいものを。
奇妙:興味ないんで……。
■興味ない? なんでですか?
奇妙:自分なんで(笑)。
■(笑)そうですか。ライヴ盤出されたのは、なにゆえでしょうか?
奇妙:いや、僕知らないです(笑)。
■(笑)勝手に出されてしまったと。僕は、いい意味で、職業意識を強く──この間も芸人意識みたいな話をしたんですけれども──やられてるのだと思っていたので、あらためてこのライヴ盤をいて、その壊れ方にビックリしました。
奇妙:……はい。
■はははは。いま目の前にいる奇妙さんはこんなに落ち着かれているのに、ライヴをやっていると、自分ではコントロールできなくなってしまうことがあるんですね。
奇妙:そうですね。どうなんですかね。どんなライヴやったか全然覚えてない(笑)。
■(笑)そういうのは一回も聴き直すことはないんですか?
奇妙:そうですね。ないですね、全然。最近とくにないですね。
■しかもライヴ盤で出ているというのに。
奇妙:そうですね。ジャケットとかは考えましたけど、中身は(笑)。
■(笑)気にならないってのもすごいね。
奇妙:そうなんですかね。
■でも、もうあとはみんながご自由に楽しんでくれればいいやっていう。
奇妙:そうですね。もう1年弱ぐらい前なんで。ああ、そんなことあったな、っていう、自分としてはそういう感じですね。
■なるほどね。『桜富士山』以降、ものすごく作品を出されてますよね。このライヴ盤もそうですけど、その前に『GOLDEN TIME REMIX』があって、アニメーションズのライヴ盤があって。あとは会場限定のソロ・アルバムを出したりとか、あるいはライヴももちろんたくさんこなしてますし。僕が知る限りではたとえばDJフミヤさんのアルバムに参加したりとかね、そういう客演みたいなこともあって。ものすごく多忙にされていると思うんですけれども、『桜富士山』以降のこの1年ちょっとの間、奇妙さんはどんな風に過ごされたんでしょうか?
奇妙:3月4月にソロのツアーをしてたんですけど、その間はバンドのライヴはほとんどなく。それ以外はいつも通りという感じですね。リミックスもアニメーションズもトラベル(スイング楽団)のライヴも、全部自分自身が作業することはとくになかったんで。すでに録音してるもので。だからソロのと今回のは、録音したって感じですね。仕事したなって感じの。
■新しいアルバム聴かせていただいたんですけれども、前作以上に完成度が高いといいますか、トラベルスイング楽団として成熟したアルバムだという風に思ったんですけれども。情熱的で、胸のすくような良いアルバムですね。
奇妙:ありがとうございます。
■出だしの「大根人参ロックンロール」という言葉で僕はやられました(笑)。
奇妙:ありがとうございます(笑)。とくに意味がない(笑)。
■その言葉を思いついたとき「やった」と思ったでしょう?
奇妙:あ、この言葉自体は3年前ぐらいにプロフィールの文章書いてって言われたときの文章で、とくに意味はないっていう。
■はははは! 今日は改めて奇妙さんのご自身の歴史についてお伺いしたいなと思ってまして。ご実家がうどん屋さんだったって話なんかを読んだことがあるんですけれども。生まれも育ちも東大阪で。
奇妙:はい。
■どんな少年時代をお送りされたんですか?
奇妙:少年時代っていうのは10歳ぐらいまでですか?
■そうですね、まあ小学校ぐらいで。
奇妙:小学校のときはあんまり外で遊ばなかったですけど。ほとんどレゴしてましたね。で、小学校4年生ぐらいのときにダウンタウンの『4時ですよーだ』っていう番組がはじまって、それを観るためにダッシュで家に帰ってましたね。それはでも、みんなそうしてましたね。
■何か夢中になってたことってありますか? スポーツであるとか、趣味というか。
奇妙:ないですね。テレビ見ることですね。テレビ見て、次の日みんなでテレビの話して、それの真似してっていう、小学生あるあるですね。
■(笑)なるほどね。クラスではどんな存在だったと思います?
奇妙:いや、目立つことまったく何もないですよね。なんかのうちのひとりって感じですね。
■本格的に音楽と出会うのは?
奇妙:一番最初に、異様な感じを受けたのは……本屋で売ってる1000円CDみたいなやつでリトル・リチャードのベストみたいなやつがたまたま家にあって。それはなんかビックリしましたね。
■どんなところに?
奇妙:テレビなんかで聴いてる感じと全然違う……なんですかね、わかんないですけど。
■それって何歳のときですか?
奇妙:それはでも、もう中学生ですね。
■それは偶然出会ったんですか? お父さんかお母さんの趣味じゃなくて?
奇妙:あ、でもそうですね。家にあったっていうことは。まあまあ、そういう世代のひとたちなんで。
■へえー。じゃあしばらくリトル・リチャードばかりを聴いたんですか?
奇妙:いろいろありましたけど、そうですね。それとサム・クックの黄色いベスト(『The Best Of Sam Cook』)を延々聴くっていう。
■サム・クックのその黄色いベスト盤もご実家にあって?
奇妙:ありましたね。
■それはご実家のうどん屋さんで流されてたんですか?
奇妙:いや、違います。うどん工場なんで。お店ではなかったんで。
■あ、そうなんだ。ご自身で音楽を探求しはじめたのはどんな感じでしょう?
奇妙:なんかまあ、よくある感じですね。CDのライナーノーツにルーツが書いてて、それを買って聴くみたいな。ブルースのアルバムとか聴いたり。あんまよくわかんなかったですけど。
■でもリトル・リチャードとサム・クックだったら、基本的にまったく変わってないですよね。いままさに、そのことをやられてるわけですから。それは現在に至るまで、ひとりのリスナーとして、ある意味ではまったく寄り道せずにきたんでしょうか?
奇妙:そうですね。そう言われたらそんな気しますね。
[[SplitPage]]僕はバンドマンですね。恐ろしいですね、アーティストって。ゾッとします(笑)。いや、そんなものになってないですっていう(笑)。ただバンドしてるだけなんで。
■最初に自分のこづかいで買ったのって何なんですか?
奇妙:あー、何やろうなあ……。
■サム・クックがあるからオーティス・レディングも近いとは思うんですけど、上田正樹さんなんかは僕たちよりもちょっと前の世代の方じゃないですか。意外とそんなに簡単に手が届くような感じでもないとは思うんですけれども。
奇妙:そうですね……自分で一番最初に買ったのは覚えてないですね……。(上田正樹と)サウス・トゥ・サウスのカセットも家にあって、それもめっちゃ聴いてましたね。それはやっぱりすごく好きですね。
■じゃあリアルタイムの音楽、たとえば全米トップ10に入ってる音楽なんかに興味を持ったことはなかった?
奇妙:全米トップ10みたいなのはちょっと上のひとたちがハード・ロックとかヘヴィ・メタルとかの世代で、そのときは聴いてなかったですね。でも中学・高校のとき、同級生が浜省とかチャゲアスとか長渕とかを聴いてて、その辺はやっぱり好きですね。それもいっしょに聴いてましたね。浜省めっちゃ好きですね。
■それは意外ですね(笑)。レコード屋さんに学校の放課後の帰り道に寄って、レコードを探すようなリスナーだったんですか? それとももうちょっと、ゆるい感じ?
奇妙:家にけっこうCDがあって……なんていうんですか、「ロック黄金時代」みたいな60年代とか70年代とかの。それを聴いてる感じでしたね。あとレンタルビデオ屋さんは僕が小学校ぐらいのときから流行りだして、すげー借りてた記憶はあります。CD借りてきて、カセットテープに落として、それをウォークマンで電車で聴くみたいな感じでしたね。
■やっぱり昔の音楽のほうが自分は好きだっていう感覚はありました?
奇妙:そうですね。そっちを聴いてるほうが、なんか賢いしカッコいいと思ってたんですよね(笑)。
■はははは。ヒップホップとか聴かなかったんですか?
奇妙:まわりのひとはレゲエとかを聴いてて。
■大阪はだって、レゲエ盛んじゃないですか。ダンスホールとか。
奇妙:そうですね。そこまで行くとカッコいいんですけど、そのときに流行ってたのはUB40とか、白人のひとがやってるモテそうなやつで。なんかバカにしてましたね(笑)。そういうのを聴いてるひとを。
■(笑)それはハイプだって?
奇妙:そうですね。やっぱ友だちいなかったですね。
■(笑)へえー。自分のなかで、はっきりと自分の好みといいますか、自分の求めているものがクリアになったきっかけはあったんですか?
奇妙:わかりやすいものがやっぱり好きですけどね。はっきり真ん中にすごいひとがおって、とか。
■ソウル・ミュージックであったりとかブルースであったりとか、昔のロックンロールであったりとか、そういったものが自分のスタイルであるという認識というかね、そういうものはとくに意識せず?
奇妙:歌があって歌うっていう。自分が何かをするときに、普通にそれがあるって感じですね。インストの何かをしようと思ったことはないですね。
■なぜ60年代とか70年代の音楽に憧れるんだと思いますか?
奇妙:どうなんですかね……なんでなんですかね。
■たぶん、リアルタイムで生まれている音楽にはないものが、いまの耳で聴いたときにそこにあるからだと思うんですが。
奇妙:常識とかなさそうですよね、昔のひとのほうが。
■はははは。
奇妙:めちゃくちゃなひとが多そうな感じもしますし……。
■自由な感じですか?
奇妙:なんかその、犯罪者ちゃうか、みたいな(笑)。
■まあサム・クックとかね、ひとをブン殴ったりとかしてたりね(笑)。あんな甘いソウルを歌っていながら。
奇妙:そうですね。なんかそういうところも好きですね。まあ知らないだけかもしれないですけど、なんかダイナミックな感じはしますね。
■たとえば今回のアルバムの冒頭の語りの下世話さがすごく好きなんですけど。「ハードな迷子なオープンチャック/集団ダンス・ミュージックなのであります」とかね、あるいは2曲目の“どばどばどかん”みたいな歌詞は、草食系と言われるような文化への反論のようなものとも受け取れると思うんですけど。
奇妙:いや、そんなに大層なことではないですね(笑)。なんかテキトーな感じで。
■最初からヴォーカルだったんですか?
奇妙:そうですね。
■楽器はギター?
奇妙:そうですね。ギター弾きながらとか。
■ギターはいつ弾きはじめたんですか?
奇妙:それは高校生ぐらいのときですね。
■ちなみに最初に覚えた曲は?
奇妙:最初に覚えた曲は、浜田省吾さんの“ミッドナイト・ブルートレイン”ですよね(笑)。たぶん。家に歌本があったんですよね。
■あ、なんかバンドスコアみたいなやつ。
奇妙:はい。カセットと。
■へえー、なるほどね。いわゆるソウル・ミュージック的な、いまのトラベルスイング楽団に通じるような楽曲で最初に歌ったものは?
奇妙:そうですねえ……。ソウル・ミュージックで言ったら、“スタンド・バイ・ミー”やと思います(笑)。たぶん、最初に歌ったのは。
■その当時ってバンドだったんですか? それとも自分ひとりでやってたんですか?
奇妙:バンドですね。
■じゃあ安田さんなんかもいっしょにいて?
奇妙:じゃ、ないですね。
■全然違うバンド?
奇妙:はい。
■バンドはいつ組んだんですか?
奇妙:一番最初はアニメーションズってバンドをしてて――。
■アニメーションズが一番最初だったんですね。
奇妙:そうですね。なんか平行してやってるって感じですよね。
■人前でやりはじめたっていうのは?
奇妙:人前でやりはじめたのもアニメーションズですね。
■それは何年ぐらいのときですか?
奇妙:それは2001年とかですね。
■まだ高校生とかですか?
奇妙:いや、全然。24ぐらいですね、たぶん。
■もともとご実家を継ぐつもりでいたけど、結局うまくいかなくて継ぐことができなくなったと聞きましたけれども、それがおいくつぐらいのときですか?
奇妙:それが27、8ですね。たぶん。
■ほう。ご自身の将来についてはその当時どういう風に考えてましたか?
奇妙:いや、まずいなーと思ってました(笑)。
■(笑)20歳ぐらいのときはどういう風に思ってたんですか? 自分は将来どういう風に生きていくだろうと。
奇妙:いや、実家で働くからブラブラしとこーと思ってましたね(笑)。
■あ、そっか(笑)。実際ご実家の手伝いなんかはしてたんですか?
奇妙:してました、してました。したり、しなかったりですけど。
■それでバンド活動を楽しんでた、みたいな。
奇妙:はい。ダラダラしてました。
■じゃあ音楽でメシを食おうっていう意識なんかは?
奇妙:仕事なくなってからちょっとバイトしてたんですけど、それも辞めて。辞めてから、お金出るやつじゃないととりあえず出るのやめようと思って。いろいろ誘われるけど、お金出るかわからんっていうやつが、そうですね、8割ぐらいあって。それは全部断るか、「いくらです」みたいなことを自分で言うようにしてからですかね。なんとなく。
■ライヴ活動はアマチュア時代からかなりたくさんやられてて。
奇妙:はい。
■そのバンド自体は、ある意味では趣味というか。
奇妙:そうですね。飲みに行くついでにライヴするみたいな気持ちでやってましたね。
■じゃあ、カヴァー曲をよくやられますけど、それもその頃の賜物なんですか?
奇妙:その頃は意外とやってないんですよ。
■あ、オリジナル?
奇妙:そうですね。自分のバンドの曲をやったり、バンドしたりって感じですね。
■でもバンドのフロントマンとしてやられてますけど、最初にバンドを組んだときから自分はフロントマンをやりたいっていう風に考えてたんですか?
奇妙:そうですね、したいっていうひとが意外といなくて。「あ、じゃあやります」って感じです。
■参考にしたひとっていますか?
奇妙:そうですねえ……でもたくさんいますね。
■何人か、とくに挙げるとすれば。
奇妙:見て研究するとかはないんですけど、好きなひといっぱいいますよ。
■今回のアルバム最初聴いたときは、清志郎っぽいなと思ったし――。
奇妙:そうですか。……めっそうもないって感じですね。
■影響を受けているところの影響元が共通しているじゃないですか。オーティス・レディングとか。ミーターズみたいなものとか。
奇妙:(小声で)そうっすね。
■いやあ、普段の姿はこんなにシャイな方なんですね。
奇妙:(笑)普通です。
■ステージに上がると、もう人格が変わるタイプなんですね?
奇妙:そうですね、役割が決まってるって感じですよね。バンドで人前に出るときは。ヴォーカルのひとっていう役割をやるって感じでやってますね。ただただ。
■すごくロマンティックな曲であったりとか、あるいは敢えてバカをやるというか、そういうことをすごく意識してらっしゃると思うんですけれども、そのゆえんというか、なぜ敢えてバカをやるんでしょうか?
奇妙:そういうのがただ好きっていうか、まあそれだけですよね。
■はははは。でもそれは、言い方を変えれば、何かのメッセージなものでしょうか。
奇妙:ああー。
■バカをやるひとが少なすぎる、とか。そういうのはないですか?
奇妙:ああー。(バカをやるひとの)比率としては少ない気はしますけど……メッセージ……そうですね……じゃあメッセージで。
■ははははは! さっき音楽で食うって話のときに、お金取るようにしたって言ってましたけど、なかなか音楽で食べるのって難しいじゃないですか。
奇妙:そうですね。
■当然そこにはいろんな想いがあったと思うんですけど、トラベルスイング楽団になってからは迷いみたいなものはなくやってこられた感じですか?
奇妙:そうですね、そんなに迷いみたいなものはないですね。
■自分が温めてきたアイデアみたいなものがあるじゃないですか。こうしてアルバムとしてものになっていうような。そういうアイデアというものに対して、ある程度確信みたいなものがあったんでしょうか? もう絶対これは間違っていないというような、根拠のない自信みたいなものがおありだったのかな、と。
奇妙:アニメーションズを最初にしたときから、自分としては同じなんですけどね。とくに何かが変わったってことはないんですけど。
■でも職業音楽家みたいな意識っていうのは、やっぱりすごく強く持ってらっしゃるでしょう?
奇妙:そうですね。ありますね。
■たまたま最近、山下達郎さんのアルバムを聴いていて。あのひとは自分のことを職業音楽家と意識してやってらっしゃるんですよね。いまアーティストっていうひとはいるけど、職業音楽家と自分から言えるひとはあまりいないのかなって。そこが奇妙礼太郎トラベルスイング楽団の、いまの日本のシーンのなかでは不思議なポジションにいるところなのかなって気がしますけど。
奇妙:まあアーティストって思ったことないですね(笑)。
■(笑)なんだと思います? 自分のことは。
奇妙:僕はバンドマンですね。恐ろしいですね、アーティストって。
■はははは。じゃあ、アーティストっていうのは嫌いですか?
奇妙:いや、ゾッとします(笑)。
■ははははは! なんでアーティストだとゾッとします?
奇妙:いや、そんなものになってないですっていう(笑)。ただバンドしてるだけなんで。
[[SplitPage]]自分のなかでは、思いっきり真ん中のことをやってるっていうか。音楽の王道をやっているつもりですけどね。それが傍からみたらすごく端っこに見えるっていう(笑)、ことなんかもしれないですけどね。
■なるほどね。でもその、「ただバンドしてるだけ」っていうのをたぶん、すごく出してらっしゃると思うんですけれども。そういうときに音楽的なスタイル、音的なアレンジっていうのは、さっきも話した60年代、70年代のソウルやロックンロール、あるいはスイング・ジャズみたいなものから引用してきますけれども、こういう味つけみたいなものは奇妙さんがプロデュースしてるんでしょうか?
奇妙:そうですね、結果的にみんな合わせてくれてる感じですね。
■奇妙さんのなかで、理想的な音楽っていうのは何なんですかね?
奇妙:理想ですか。理想……やっぱりすごいなと思うのは、サッチモとかですね。子どもが聴いても素晴らしいと思うし、ジャズ・マニアのひとが聴いても素晴らしいじゃないですか。それが同時に完全に両立してることって、すごいし、理想っちゃ理想ですね。
■なるほど、サッチモ(ルイ・アームストロング)ですか。ああいう誰もが知ってるような大きな曲を作れるというか?
奇妙:そう……ですね。
■吾妻光良さんがすごくお好きでしょう?
奇妙:はい、好きですね。
■それが僕のなかでは、すごく奇妙礼太郎のイメージなんですよね。
奇妙:超絶素晴らしいですよ。
■ははは。吾妻光良さんのどこがすごく尊敬できます?
奇妙:(笑)もう全部ですね。
■(笑)たとえばあのひとの態度っていうか、音楽に臨むアティチュードっていうのも、ある意味では日本のシーンのなかでは浮いてるっていうかね。いわゆるJポップっとは音も違うじゃないですか。
奇妙:なんか、そういう感じで考えたことはないですね。Jポップとか、いまのシーンが、とか。まあ知らないですし、どういうひとがいてとか、誰が流行っててとか。ああ、そういうのがあるねんな、みたいな感じで。自分のなかでは、思いっきり真ん中のことをやってるっていうか。音楽の王道をやっているつもりですけどね。それが傍からみたらすごく端っこに見えるっていう(笑)、ことなんかもしれないですけどね。
■(笑)
奇妙:まあ、それはわかんないですけど。自分の範囲じゃないっていうか。
■吾妻さんのどんなところがとくに素晴らしい?
奇妙:吾妻さんはまず、素晴らしい音楽家で演奏家っていう。バンドマンっていうより全然音楽家やなーっていう。あと、歌詞もとんでもなく素晴らしいですし。ユーモアがあって。そういうのがこれ以上ないくらい、最高のものやなと思いますけどね(笑)。
■はははは。じゃあ、上田正樹さんのすごいところっていうのは?
奇妙:僕が好きなのはサウス・トゥ・サウスの感じなんですけど。それも同じことですけど、詞の内容と、演奏と、素晴らしいですよね。
■じゃあ、なぜ名前は奇妙礼太郎になったんですか?
奇妙:バンドはじめるときに、とりあえず覚えてもらいたいっていうのがあるんで、なんか変な名前にしようと思って、で、なんとなく思いついたんですよね。とくに理由とかないんですけど。
■奇妙礼太郎にとって、いい歌詞っていうのはどういう歌詞なんですか?
奇妙:僕が好きなのは短い映画を観たような気持ちになれるようなものとか、ちょっと本を読んだ後みたいなとか、そういう感じですかね。イメージがどんどん浮かんでくるのが好きですね。
■なるほど。そのイメージはどんなイメージ? やっぱり男と女がいる?
奇妙:いや、全然。僕ブランキー・ジェット・シティ大好きなんで。浅井健一さんすげーなと思いますね。
■前も訊いたんですけど、ラヴ・ソングがすごく多いと思うんですけど。今回も『仁義なき恋愛』っていうタイトルで。なぜ自分がそこまでラヴ・ソングにこだわるのだと思いますか?
奇妙:いや、なんか10曲できたらそうなってたんですよ(笑)。
■(笑)『仁義なき恋愛』は最初からタイトルとして決まってたんですか?
奇妙:いや、全然決まってないですね。ほぼほぼ曲が決まってから歌詞考えてて、なんとなくですね。
■なるほどね。奇妙礼太郎のこれまでの人生において、女性っていうのはいかなる存在でした?
奇妙:えー! いやお世話になってます、とか(笑)。そうですね、女性……すごく好きですし、すごく苦手やな、とも思いますね。ちょっとよくわかんないですけれども(笑)。
■(笑)前回インタヴューしたときに、なんで『桜富士山』ってタイトルにしたんですかって訊いたら、やっぱおめでたいものにしたかったとおっしゃってて。で、ちょうどいまの日本の時代の空気っていうのが決して明るいものではないし、風営法とか、暗い風があるじゃないですか。そういうなかで、時代の暗さみたいなものを音楽でもって、言うならば打ち負かそうとしてるのかなっていう風に思ってるんですけど、いかがでしょうか!
奇妙:いやいや、そんなつもりまったくないですよ(笑)。
■いや、ほんとはそう思ってるでしょ(笑)。やったるぞって。
奇妙:そうなんですかね(笑)。じゃあそれで(笑)。昔からやってることは変わってないんですけどね、なんか。
■これから変わるかもしれないってこともない? まあ先のことはわからないですけれども。
奇妙:そうですね、まあそれはわかんないですね。次のアルバムでは、地獄へ落ちるような――。
■ははははは! ドアーズみたいになるかもしれないって?(笑)
奇妙:AC/DCみたいなジャケットにしようと思います(笑)。それええな。
■『仁義なき恋愛』をタイトルにした理由は何ですか?
奇妙:なんとなく興味持ってもらえそうかなと思って。なんかええなと思って。とくに理由とかはないんですけど。
■音楽以外で好きなことって何かあります?
奇妙:音楽以外ですか? 僕、車好きですね。
■でもあんまり出てこないですよね。
奇妙:車、そうですね。出します、次のときに。
■“どばどばどかん”みたいな歌詞はどうして歌ったんですか?
奇妙:いや、なんとなく録ってるときにぱっと思いついちゃうんですよね。べつにこれも意味ないですよね。よくあるっちゃよくある――
■セックス・ソング?
奇妙:そうですね。みたいな。
■作ってみたかったとか?
奇妙:いや、これはたまたまですね、全然。オケ聴きながら考えるっていう感じのやつですね。
■一番最初に言ったことに戻っちゃうんですけどね、ライヴ盤聴いてて、このひとのなかには喜怒哀楽を歌うだけじゃなくて、アンガーみたいなものがあるのかなと思ったんですけどね。
奇妙:そうですね、いや(笑)、べつに怒ってることないですけどね。毎日快適に生活できてるんで。腹立つこととかないですけどね。
■ほんとですか。
奇妙:そうですね。ないですね。すげー快適ですね(笑)。
■はははははは。なるほど。ありがとうございました、ところで、1曲目の最初のナレーションのバックに笑い声が入ってるでしょう? ループで。あの笑い声ってなんで入れたんですか?
奇妙:なんかないと寂しいな、ぐらいですけどね(笑)。オープニングなんで、歌ってわけでもないけど、何かみんなの声入れとこか、ぐらいの感じですね。
■みんなの声っていうのはバンドのみんなの声なんですか?
奇妙:そうですね、バンドのみんなの声です。
■どうもありがとうございました。ツアーがんばって下さい。
◆奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 ワンマンライブツアー2013◆
2013 年11 月4 日(月・祝)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
2013 年11 月8 日(金)大阪府 大阪BIG CAT
2013 年11 月10 日(日)福岡県 Early Believers
2013 年11 月15 日(金)東京都 LIQUIDROOM ebisu
2013 年11 月16 日(土)宮城県 仙台MACANA




















