「ZE」と一致するもの

NINJAS - ele-king

 1月6日にリリースされたNINJASのデビュー・アルバム『JAP』だが、これは面白い! シニカルで捻りの効いたドライな──つまりオネストで直球な涙ぐましさとは真逆の作品になっている。ダンサブルで痛快な、これぞナンセンスの塊。


NINJAS - SOCCER


NINJAS - JAP
Pヴァイン

SynthpopNew Wave

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 車に乗りながら聴くと最高なんですよ、これが。さてこのNINJAS、以前からライヴ活動を精力的にやっているようで、すでに熱狂的なファンもいるらしい。バンドのスローガンは〈あなたの嫌いなものが好き〉。ニューウェイヴのささくれ立った感性って、もうとっくの昔に死滅したものと思っている方も少なくないと思いますが、こんな風に受け継がれるものなんですね。

 なお、1/21(土)に半蔵門ANAGRAで行われるリリース・パーティにはHair Stylistics、DOOOMBOYS、KURUUCREWが出演。
 DJにはMr.マジックバジャールa.k.a.カレー屋まーくん、K.E.I.(VOVIVAV)、NINJAS『JAP』を手掛けたAKAKI NAMPEIの展示も行われる。
 1/27(金)には、青山蜂で定期的に開催されているUNDER 30 の実力あるアーティストが集まるPARTY「NEW CHAMPUR」と、NINJAS主催の「NINJAHOUSE」このふたつのPARTYが、NINJAS 2nd ALBUM”JAP”リリースパーティSPと称し共同開催。
 ジャンルも世代も超え、CAT BOYS、MAMMOTH、OMSB×Hi'spec、KMC×STUTS、ENERGISH GOLF、原島”ど真ん中”宙芳…他多数のアーティストが出演。こんなに豪華な顔ぶれが集まるのはこの夜だけ!

【イベント情報】

〈NINJA HOUSE - NINJAS「JAP」release party!!!〉
2017/ 1/21(土) @半蔵門ANAGRA
OPEN: 18:00 / CLOSE: 23:00
\2000+1D

[LIVE]
NINJAS
Hair Stylistics
DOOOMBOYS
KURUUCREW

[DJ]
Mr.マジックバジャールa.k.a.カレー屋まーくん
K.E.I.(VOVIVAV)

[EXHIBITION]
AKAKI NAMPEI

INFO:
https://www.anagra-tokyo.com/


〈NINJA HOUSE × NEW CHAMPUR - NINJAS「JAP」release party SP!!!〉
2017/ 1/27(金) @青山蜂
OPEN: 21:00 / CLOSE: 5:00
\2000

[3F]
LIVE:
NINJAS
CAT BOYS
MAMMOTH
OMSB×Hi'spec
KMC×STUTS
ENERGISH GOLF
YELLOW UHURU × yolabmi

DJ:
NIRO
EMARLE

[2F]
Ackky(journal)
ULTRA INAZUMATIC DJs
Mr.マジックバジャール a.k.a. カレー屋まーくん
原島”ど真ん中”宙芳
hitori
kzy

[4F]
hisamichi
矢車
GAKI
DISKONION
Yasterize & HOTATE & HOSEPOSSE2017
fatP

[VJ]
PETA
HAMARO

[FOOD]
ネグラ

[SHOP]
Xion Tokyo
DELTA CREATION STUDIO

年末カウントダウン・イベントのご紹介 - ele-king

 ついに2016年も終わろうとしています。今年は社会の混乱に抗うように、様々な音楽が私たちの耳を癒してくれました。各音楽メディアがベスト・アルバム・ランキングを発表するのが年末の恒例となっていますが(『ele-king』の年間ランキングは12月27日発売の『ele-king vol.19』に掲載されます!)、個人的に今年のベスト・アクト・ランキングを考えてみるのも楽しいですよね。しかもそのランキングは来年を迎える瞬間までどうなるかわからない! 各地で開催されるカウントダウン・イベントがあなたを待っています。おうちでヌクヌクと迎える年越しも悪くないですが、新年を迎えるその瞬間に少しだけ現実を忘れて、思いっきりフロアの音に酔いしれるというのもきっと気持ちがいいでしょう。
 以下に、東京のライヴハウス/クラブが開催する主要なカウントダウン・イベントをまとめました。ぜひご活用ください。

interview with KANDYTOWN - ele-king


KANDYTOWN
KANDYTOWN

ワーナー

Hip Hop

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 太平洋の両岸で社会的な動乱が続く2010年代なかば、日米はトラップの時代にあると言っていい。一方で現在の東京の地下では本当にさまざまな音が鳴っている。パーティ・オリエンテッドなトラップから本格的なギャングスタ・ラップ、けして懐古主義になることのない職人肌のブーン・バップ…。そんな中でも、KANDYTOWNのメジャー・デビュー・アルバム『KANDYTOWN』は、日本のヒップホップ生誕の地、東京のインナーシティに受け継がれる音楽文化のクールネスを結晶化したマスターピースと呼ぶに相応しい。もともと幼なじみでもある世田谷区喜多見を拠点とする総勢16名のこのクルーは、中心人物だったYUSHIを昨年2月に不慮の事故によって失いつつも、けしてその歩みを止めることはなかった。12月22日にはリキッド・ルームでのフリー・クリスマス・ライヴの開催も告知されている。

 ハイプに盛り上がる周囲の喧噪をよそに、KANDYTOWNはあくまで寡黙でマイペースだ。彼らはテレビ番組をきっかけにしたラップ・ブームとも、いまやメイン・ストリームを担いつつあるトラップとも、一定の距離感をキープしている。5年前に震災の暗闇を経験し、いまは4年後のオリンピックにむけてバブリーにざわめく2016年の東京のストリート。マシン・ビートによるトラップの赤裸々なリアリティ・ラップが注目を集める中、KANDYTOWNは1990年代以来の日本のヒップホップの蓄積を正統に継承するサンプリング・サウンドにのせて、強烈なロマンティシズムを描いている。2000年代以降の日本語ラップのリアリズムがつねに時代を切り取ろうと腐心してきたとすれば、彼らに感じるのは、むしろシネマティックな想像力で時代を塗り替えようとする野心だ。考えようによっては、彼らはとても反時代的な存在でもある。

 現在のラップ・ブームの火付け役となった〈フリースタイル・ダンジョン〉は、日本語ラップの「ダディ」であるZEEBRAをオーガナイザーに据え、いとうせいこうという先駆者をキャスティングすることで、黎明期から現在にいたるまでの日本のヒップホップの歴史をうまくパッケージしている。しかし、この10年の冬の時代にアンダーグラウンドなハスリング・ラップの台頭を経験し、震災後にはトラップの本格流入を経由した現在の日本のシーンは、より複雑で多層的だ。断片化と呼んでもいいかもしれない。今回のインタヴューでは、コレクティヴ名義での初オフィシャル・アルバムの制作プロセス、そしてほかでもない2016年にこのアルバムがリリースされた意味を探った。参加したのは、IO、YOUNG JUJU、KIKUMARU、GOTTZ、Ryohu、Neetz、そしてA&RとしてクレジットされたOKAMOTO’Sのオカモトレイジだ。

──アルバム『KANDYTOWN』について

本当にいままでどおりライヴが終わったあとに誰かの家に行って曲を書くみたいな、遊びの延長線上で作ったのがこれですね。(Neetz)
最初で最後かもしれないのでお聴き頂ければと思います。(Ryohu)

まずはアルバムのリリースおめでとうございます。今年2月のYUSHIさんの一周忌にリリースされたIOさんのアルバムを皮切りに、それぞれのソロ・ワークも順調に出していって…ついにKANDYTOWNとしてオフィシャルなデビュー盤ということで。メジャーでのレコーディングにあたって、なにかこれまでとの違いはありましたか?

Neetz:いや、そんなことはまったくなかったですね。

じゃあレコーディングの日程は順調に進んだ感じですか?

Neetz:わりとスムーズにいったとは思います。

Illicit Tsuboiさんのところで合宿的なことをしたと耳にしたのですが。

IO:合宿というほどでもないと思います。

JUJU:でも2、3日連続でスタジオを空けておいてもらって、行けるメンバーがその間に行って、途中で家帰ったりするヤツもいればまた来るヤツもいるみたいな、そういう状態だったと思います。

インディでリリースした『KOLD TAPE』や『BLAKK MOTEL』、『KRUISE』は基本的にNeetzさんの991スタジオですよね?

Neetz:そうですね。基本は991スタジオでやっていました。

Illicit Tsuboiさんといえば名だたるプロデューサーですが、作業環境が変わったことでの新鮮味はありましたか? 具体的にどういったところが変わりましたか?

GOTTZ:やっぱり全然違いましたね。やっぱり機材が違いますし、Neetzのはベッドルームを開けてやっているスタジオなので宅録という感じなんですけど。全然違ったよね?

KIKUMARU:もう最初初めて声を出したときの録り音が違いましたね。

Ryohu:Tsuboiさんが一人ひとりRECしているときにもうそれぞれのバランスを調整して、EQとかコンプとか全部一人ひとり弄ったりしていて細かいところから違いましたね。

新たなステージでどんなアルバムになるのかなと思っていたのですが、とくに構成がよく練られていると思いました。まずは派手なパーティ・チューンでスタートして、心地よい横ノリの曲で引っ張って、インタールードでブレイク・ダウンした後はメロウに、そして最後はまたドラマティックに盛り上げていく。こうした構成は最初から頭にあったんですか?

Neetz:最初はなくて、とりあえず曲をめっちゃ録っておこうというところから始まって、最終的にできたものを曲順に並べてああなったという感じですかね。でも最初はできた曲を録りまくろうという話で、カッコいい曲を録ろうという意識でしたね。

自分で作った作品は完成後に聴くほうですか? 今回のアルバムを客観的に聴いてみて思うところがあれば。

Neetz:普段はあんまり聴かないですね。

GOTTZ:いまはまだ聴いている最中、という感じですね。
Neetz:作るときからあまり意識はしていないので、いまできたものがこれなんだなという感じですね。

飄々としてますね。

Neetz:これからもそのスタンスは変わらないですね。だから意外とこのアルバムに熱意をこめてというわけでもなく、『BLAKK MOTEL』もそうだったし『Kruise』もそうだったし、本当にいままでどおりライヴが終わったあとに誰かの家に行って曲を書くみたいな、遊びの延長線上で作ったのがこれですね。

事実上のリード・トラックの “R.T.N.”にはYUSHIさんの名前がクレジットされてます。IOさんのファースト・アルバムの一曲目の“Check My Leadge”でもYUSHIさんのラップがフィーチャーされてたし…すごく象徴的に感じました。

JUJU:あの曲はYUSHIがメインで作って、MIKIが軽く足したくらいだと思うんですけど。二人が留学中に作っていた曲ですね。

レイジ:でもほぼほぼYUSHIって感じがするよね。

JUJU:うん、音的にYUSHIだしね。4年前くらいにはあった曲で、多分覚えていないと思うけど当時IOくんとかが録っていましたね。でも当時からバンクロールでやろうとしていて楽しみだねと話していたんだけど、みんなそのビートのこと忘れていて、アルバムを作り始めようというときにMIKIが「このビートあるよ」と聴かせて、ワーッという感じになりましたね。

ほかに序盤で印象的なのは、“Twentyfive”はI.N.Iの有名な曲と同じネタで、ただハットの打ち方が今っぽいですね。

Neetz:そうですね。ピート・ロックが使っているやつ。けっこう使われていたので、叩き方を新しくして新しい感じの音にしようかなと思ってああなりましたね。

JUJU:あれはNeetzがフックを作るのに困っていましたね。

Neetz:そうですね。フックがけっこういい感じで決まったというのが大きいし、みんなもラップをカッコよくカマしてくれましたね。

Neetzさんはいつもどんな風にビート・メイクしてますか? キャンディのトラックは、ビートというよりは上ネタのメロウネスが強く印象に残るイメージなんですが。

Neetz:そうですね。まずは上ネタからですね。まず上ネタを探して、ループしたりチョップしたりして、だいたいそのあとにドラムを付け足してという感じですね。このアルバムではとくに、元の素材を活かす曲が多かったかもしれないですね。

それは意識して?

Neetz:けっこう意識的かも。

影響を受けたトラック・メイカーはいますか? このまえレイジくんから、一時期はみんなプリモのビートでしかラップしなかったといういい話を聞いて(笑)。

Neetz:うーん、俺はジャスト・ブレイズとかドクター・ドレーとかけっこう王道なところですね。

どこかでDJ ダヒがフェイヴァリットだと目にしたのですが。

Neetz:DJ ダヒはそのときにちょうどハマっていたので(笑)。基本はさっき言ったような王道のヤツです。

日米のいわゆる90’Sサウンドは聴いたりしますか? ニューヨークならプロエラとかビースト・コースト周辺だったり、日本だとたとえばIOさんのアルバムが出たとき、どこかのショップの限定の特典で“DIG 2 ME”のISSUGIさんリミックスがあったと思うのですが。

Neetz:プロ・エラは聴いているけど僕らはそんなに影響を受けたりしてないですね。ISSUGIさんのリミックスは聴いたことないな。

上の世代の人たちとは、俺らはあまり交流はないですね。IOくんはブート・ストリートのときからJASHWONさんたちにはお世話になっていて。(JUJU)
IOがブートで働いていたというのが意外だよね。いいよね。(レイジ)

言ってしまえば、キャンディはブーン・バップ的な90’sヒップホップの新世代として位置づけられていると思うのですが、いわゆる上の世代の人たちと繋がっているわけではない?

IO:Fla$shBackSのKID FRESINOだったり、FebbとjjjはJUJUのアルバムで一緒にやっていたりしますね。

ほぼ同世代のFla$shBackSのほうとはつながりがありますね。

JUJU:上の世代の人たちとは、俺らはあまり交流はないですね。IOくんはブート・ストリートのときからJASHWONさんたちにはお世話になっていて。

レイジ:IOがブートで働いていたというのが意外だよね。いいよね。

一同:(笑)

JUJU:めっちゃいい。

高校を辞めて働いてたんでしたっけ?

IO:はい。

JUJU:グロウ・アラウンドで働いているヤツもいて、そういう宇田川の繋がりがあるんですけどそこくらいだよね。

じゃあラップについてお伺いします。キャンディといえばワードチョイスが独特だと言われていますが、今回この曲の作詞は苦労したということや、これはこういうトピックに挑戦してみたということはありますか?

JUJU:一切ないですね。

一同:(笑)

JUJU:メジャーに行ってどうだったということは多分みんなないし、トピックをどうしようとかもKANDYTOWNにはほとんどないし、この人に向けて歌おうとかそういうことも言わないから……あんまりないよね?

Ryohu:でも幻のバースとかありますよ。

カットされたりもするということで。ひとつのビートでラップをするメンバーはどうやって決めてますか?

JUJU:挙手制と推薦制がありますね。バランス制もある。

そのバランスを判断するのは誰?

JUJU:みんなですね。

GOTTZ:でも基本的にラップに関してはビート・メイカー・チームじゃないですか。

なるほど。今回のアルバムはビートはNeetzさんにくわえてMIKIさんとRyohuさんがクレジットされてますね。

Ryohu:はい。

GOTTZ:あとはミネソタとか。わりとそっち側で話し合っていたんじゃないですかね。

Ryohuさんは今回トラック・メイカーとして二曲担当していますが、Ryohuさんといえばやはりシンガーとしての役回りもあります。メンバーのなかにこれだけうまく歌える人がいるのは特色のひとつだと思うのですが。

Ryohu:うーん、欲をいえば、俺は本当は女性シンガーが欲しいですね(笑)。

Ryohuさんの歌声はフェミニンなやわらかさがあって、これだけバランスよく歌がハマっているのはそのおかげかなと考えてました。

Ryohu:でもJUJUもいいフックを作るし、「ペーパー・チェイス、福沢諭吉」のラインなんて考えつかないし(笑)。IOもフック作ったりできるし、僕はそんなに意識してはいないしあんまり考えていないですけどね。できないことはできないし、できるヤツにやってもらってというのはなんとなくあります。

みんなソロ活動を活発に行なってますが、KANDYTOWNとして集まったときに自然に出てくるムードみたいなものはありますか?

Ryohu:KANDYTOWNとおのおののソロはまたちょっと違うはずで、それこそJUJU新しいアルバムも違うし。

JUJU:俺のは全然違いますね。多分ショッキングな感じだと思います。

Ryohu:はは!(笑)

MASSHOLEさんプロデュースの先行シングル“THE WAY”からしてダークでドスのきいた感じで。

JUJU:ああいう系もあるし、ちょっとトラップっぽいのもあるしいろいろあるっす。このあいだ改めてキャンディのほうを聴いて、全然違うと思ってびっくりしましたね。集まるとみんなにとってああいうビートのチョイスが程良いというか、Neetzのビートはみんな出すぎず下がりすぎずという感じが保てますね。

Neetzさんは他のラッパーに曲を提供する機会は増えてきました?

Neetz:いまのところほとんどないですね。本当キャンディ内だけなんで、これからやっていこうという感じですかね。ただ黙々と作っているというか。

この1年くらいでいろんなイベントに出演することも増えて、全然スタイルの違うアーティストと一緒になることもあると思います。そのことの影響はありますか?

JUJU:同い年で頑張っているヤツもいるし、ポジティヴに制作を頑張ろうという影響は受けますけど、あんまり具体的な影響はないよね。

Neetz:あんまり影響されないですね。どちらかというと例えばRyohuが4月にアルバムを出して、WWWとかでかいところでライヴをやったりして、そういうところに刺激を受けますね。

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──2016年のシーンについて

むこうにいるキッズは、常にヤバいものが更新されていくわけじゃないですか。だからあいつらの世代のスターはリル・ウェインやT.I.だし、ビギーや2パックを追う前に小学生くらいから自分の世代のスターが目の前にいるから、別に追う必要がないというか。(GOTTZ)


KANDYTOWN
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いま日米問わずトラップの時代みたいなところがあるじゃないですか。アメリカだとそれに対してケンドリック・ラマーやアンダーソン・パークといった90年代回帰の流れもある。このまえ、アトランタのリル・ヨッティというトラップのラッパーが、2パックとビギーなんて5曲も知らねえよ、みたいな発言をして、それがちょっとした議論になって…。

Ryohu:ヨッティが「そんなの知らなくてもいいじゃん」って言ったヤツですよね。

JUJU:それにアンダーソン・パークが噛みついたんですよね。

GOTTZ:「知らないことをいばるな」って(笑)。

一同:(笑)

GOTTZ:日本に住んでいても俺らは日本語のラップをそんなに聴かないから。ようはむこう(アメリカ)のものを掘っているじゃないですか。でもむこうにいるキッズは、常にヤバいものが更新されていくわけじゃないですか。だからあいつらの世代のスターはリル・ウェインやT.I.だし、ビギーや2パックを追う前に小学生くらいから自分の世代のスターが目の前にいるから、別に追う必要がないというか。そのナウだけを聴いていたらそうなるんじゃないですか。

じゃあどちらかというとヨッティ派?(笑)

GOTTZ:いや、俺はもちろんアンダーソン・パークの言っていることもわかりますよ(笑)。

JUJU:kiLLaとか日本の若い子もきっとそうなんですよ。一緒に遊んで2パックの曲とかをかけてても知らなかったりするし、いまの若い子は本当にそうなんだと思う。別になんとも思わないけど、知ってたほうがいいとは思うし「カッコいいのになんで?」と思うだけ(笑)。

GOTTZ:ヨッティのあれは、元々チーフ・キーフが言った言葉に対してなんじゃないですか? あれはチーフ・キーフが最初に「俺はビギーも2パックもほとんど知らねえよ」と言ってたんですよ、たしか。

まあことさらトラップとヒップホップを対立的にとらえる必要もないとは思うんですが、オーセンティックなヒップホップが過去のブラック・ミュージックから続く歴史性を背負っている部分が強いのに対して、たとえばヨッティなんかは韓国のBIG BANGの大ファンだったり、ネット時代というか、グローバル時代ならではのポスト・モダン的な側面がより強く出てる印象があります。日本だとBCDMGは宇田川を拠点として、トラップもやればブーン・バップもやる、ようは断片化したシーンをきちんと俯瞰する王道的な仕事を意識的にやってる。KANDYTOWNは世田谷ローカルの仲間たちで好き勝手にやってきた部分もあるけれど、言ってみれば昔ながらの東京のインナーシティのヒップホップのクールネスをオーセンティックに継承しているところもあって。

IO:俺とJUJUとDONYがBCDMGに所属してプレイヤーとしてやっていて、ああいうところにキャンディがあるというよりは、どちらかというとキャンディは帰ってくる場所というか。

やっぱり地元から愛されているヤツは間違いないと思うから、そういうところを見て俺もやろうと思ったし……(JUJU)

日本の同時代のトラップ・アーティストを聴いてフィールすることはありますか?

JUJU:そんなに聴いてるわけじゃないですけど、俺は会ったら喋るし普通に仲いいです。曲を作ろうという話はしますし、YDIZZYとかkiLLa組は「曲聴いてください」といって送ってくるからそういうときは聴きますね。(KANDYTOWNの)みんなが聴くというのは聞いたことないし見たこともないですね。みんなが自発的に誰か他のアーティストの曲をかけてるのはないです。

Neetz:俺は日本語ラップだとKANDYTOWNしか聴いてないです。

一同:(笑)

JUJU:そういう感じなんで、そこに関してはみんなリル・ヨッティって感じですね。

GOTTZ:あ、でもRYUGO ISHIDAの“YRB”(ヤング・リッチ・ボーイ)はけっこう聴いてたけどね。中毒性がある感じ(笑)。

JUJU:まあ別にトラップをそんなに意識して聴かないですね。

IO:ポジティヴなことを言うといろんな色があって、聴く人にとってもいろんな選択肢があるなかで俺らにフィールしたら聴いてくれればいいと思う。ただいまヒップホップ・ブームと言われているじゃないですか? それがブームで終わらないで根づいていければカルチャーになるし、先の世代がラッパーになったらリッチになれるという本当にアメリカみたいな文化になればいいと思うっすね。

BCDMGのコンピレーションではSWEET WILLIAM さん、唾奇さんとジョインした”SAME AS”が印象に残ってます。オデッセイの“ウィークエンド・ラヴァー”のネタで唾奇さんが「時給700と800」ってぶっちゃける感じのラップを最初にかまして、フックで「fameじゃ満ちないpainとliving」とJUJUさんが応えてて…IOさんが時どき使う「チープ・シャンペン」ってワードじゃないけど、単にきらびやかなだけじゃないKANDYTOWNの魅力が引き出されてる感じがしました。

JUJU:唾奇とかはすごくいいと思うというか、いまの時代だとお金があるように見せがちだと思うんですよ。でもああいう感じで来るじゃないですか。沖縄にライヴをしに行ったときに沖縄の人たちの唾奇に対するプロップスがハンパなくて、みんな歌ってたし「おい! 唾奇ぃ!」みたいな感じになっていて、それがすごくいいなと思ったんですよ。やっぱり地元から愛されているヤツは間違いないと思うから、そういうところを見て俺もやろうと思ったし、なによりIOくんが「唾奇とやるからやろうぜ」と言ってきてくれて、IOくんが言ってるならと思って、一緒にやったんですよ。

IO:唾奇は単純にカッコいいんです。俺のスタイルとは違うけど、俺にないものを持ってるし、やろうと思ってもできないスタイルでやっていて、そこにカッコいいと思う部分がある。だからシンプルに一緒に曲をやってみたいと思いました。

じゃああのコラボレーションはIOさんから持ち込んだ感じですか?

IO:ですね。

レイジ:あとそうだ。シーンとのつながりで言うと、あまり明かされていないんですけど、意外とSIMI LABと仲いいんですよね。いまはもう影響を受けたりしていないと思うし一緒にやっていないけど、俺から聞きたいんだけど、昔一緒につるんでたときは、オムスとかQNから影響受けたりしたの?

JUJU:俺はラップを始めたときにYUSHIとQNくんが一番近くにいてくれたからね。

レイジ:QNが最初にヤング・ジュジュをプロデュースしようとしてたのも、もう5、6年前だよね。

JUJU:そのときは本当に恵まれていたというか、周りの人がスゲえと言っている2人がいつも遊びに連れて行ってくれて、リリック書けとか一言も言われたことないけど、あの人たちは「やる」となったら15分でビートを作って、10分でリリックを書いて、5分で録って、(そのペースで)1日5曲録るみたいな人たちだったからそれに付いてやっていて、音楽への姿勢はあの2人から影響を受けましたね。フラフラしてるんだけど、レコ屋に入ってビートを選んだら家に帰って作り出すまでがすごく早いというか。「バン!」となったらしっかりやるという感じだったり、当時はすごく影響を受けたと思いますね。

レイジ:ちゃんと盤になった音源で、一番最初に世に出たYOUNG JUJUのラップって“Ghost”だっけ?

JUJU:うーん、IOくんたちともやってた曲があったと思うけど、ちゃんと流通されたのはそうかもしれない。

レイジ:QNのサード・アルバムに入っている曲だよね。そこの繋がりはみんな知らないだろうけどけっこう古いもんね。

Ryohu:意外とね。でも感覚的にはKANDYTOWNと同じというか。

レイジ:そうとう近いし、ずっと一緒にやってたもんね。中山フェスタとか一緒に出てたし。

JUJU:YUSHIの家に泊まるときも、オムスくんがいてIOくんがいてRyohuくんがいてみたいに意味わかんない感じだったもんね。

レイジ:オムスとQNが遊ぶのもYUSHIの家だったしなあ。

黎明期のその時期、相模原と喜多見のコネクションがあったということですか?

JUJU:SIMI LABのマイスペースかなにかに「ウィード・カット」(YUSHIの別名義。ドカット)って入ってたのを俺が見つけて、「YUSHI、SIMI LAB入ってんだ。名前入ってたよ」と言ったら、「絶対入ってねえ。いまから電話する」と言って電話して「俺入ってねえから!」とずっと言っていたことがあったりしましたね。

レイジ:SIMI LABの結成前からつるんでるんだよね?

Ryohu:いまの感じになる前からだね。

JUJU:QNくんがずっとYUSHIをSIMI LABに入れたがっていて「名前だけでもいいから入ってくれ」と言っているのを俺は見てたけど、YUSHIは「俺はBANKROLLだから無理」みたいなことをずっと言ってましたね。

それはYUSHIさんはBANKROLLでバンといきたいから、ということで?

レイジ:いや、BANKROLLはもうKANDYTOWN内でバーンと行ってたっす(笑)。

JUJU:俺はBANKROLLを見て好きになっていってラップやったり、周りの同い年のヤツや年下のヤツがBANKROLLを好きになっていった雰囲気がKANDYTOWNの流れとすごく似ている気がしているから、みんな(KANDYTOWNを)好きになるんじゃねえかなとほんのり感じてますね。あのとき俺がヒップホップを好きになっていった感じとこの流れの感覚が近いというか、いまこうやってBAKROLLと曲を出したりしているのがなにかあるといいなと俺は信じてますね。

聞いていると、なにかヒップホップよりも先に出会いや絆がある感じですね。

Ryohu:そうですね。だから表現がヒップホップだったというだけで、というかそれしかできないということもあるんだけど(笑)。いまさらギターとか弾けないし。

ニューヨークでもクイーンズとブロンクス、ハーレムとかでそれぞれ色があるじゃないですか。東京もそんな感じになってきたと思います。

JUJU:日本はそれがまだすこしできていない部分があるというか、認め合うことがないというか、出てきた人をどうしても蹴落としちゃうような風潮があるんじゃないかなと感じますね。でもやっぱり下から人は出てくるものだし、それは認めなきゃいけないし、それに勝る色を持ってなければいけないし、人のことをとやかく言うよりも自分の色をしっかり持って、いろんな色があるのがヒップホップなんだということを世間の人がわかってくれれば、もっと面白くなると思いますね。

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──ラップ・ブームについて

結局自分たちがカッコいいと思うことをやっているので、別にどう解釈されてもいいんですね。リリックにも出てくるんですけど「ホント気にしない」って感じですね。(KIKUMARU)

いまヒップホップ・シーンを考えると〈フリースタイル・ダンジョン〉という番組の影響はかなり大きいと思うのですが、この前KIKUMARUさんとBSCさんとディアンさんで出演されていましたよね。あれはどういう経緯で?

KIKUMARU:話が来て、3人での出演にルールが変わったと言われたんで、それでやるんだったらあの3人でやるよ、という感じでした。

Ryohu:それこそKIKUMARUはBボーイ・パークで優勝してるんで、キャンディでは一番バトルをしっかりやって成績も残ってるし、ちゃんと実力もあるかなという。

Neetz:シーンに名前が出たのはKIKUMARUが一番早かったですね。

KIKUMARU:5年前くらいですね。

IO:(小声で)それ知らないですね。

一同:(笑)

いまのバトル・ブームについてなにかあれば。

Neetz:俺はポジティヴだと思うんですけどね。それがヒップホップかと言われればわかんないですけど、そこが入り口になって自分の好きなところに行き当たってくれればいいと思うし、実際みんなフリースタイルしててすごいなと思うし。自分がクールだと思っていることがそこにあるかと言ったらないですけど、あれはあれで俺はすごいなと思う。

JUJU:ある種のスポーツですよね。

IO:俺にはできないことだと思う。それが日本のテレビに映ってて、いままでになかったことだし、色んな捉え方はあると思うけどポジティヴなことだと思う。ブームで終わらずに、根づいていって、ラッパーで成功すれば、リッチになれるというのが当たり前の文化になればいいなと思います。

レイジくんはどうですか?

レイジ:バトルっすか? あれはラップであってヒップホップではないかなというか、べつにあそこの勝ち負けには興味ないんじゃない。ヒップホップというよりかは、あれはとにかくラップという歌唱法が流行っている感じがする。

スタイルとしてのヒップホップと歌唱法としてのラップを分けて、だけどいまはそういうヒップホップという言葉の重みが嫌で、意識的にラップって言葉を使う人たちもいますね。

JUJU:うーん、でも、みんなやることやろうって感じですね。

レイジ:俺が見ているとKANDYTOWNというもの自体がシーンみたいな感じなんですよね。ここのメンバー同士で影響を受けあってるし、メンバー同士で盛り上がって成長していってるシーンという感じだから、メンバーが増えたり減ったりすることはないだろうけど、他のひとになに言われても全部「ああ、まあいいんじゃないですか」って感じだと思う。

たとえばひと昔まえのアーティストがメジャー・シーンに切り込んでいくときには、良くも悪くもヒップホップとか日本語ラップのシーンをレプリゼントしているような感覚があったと思います。だけどシーン自体がこれだけ多様化しているいま、どれだけそういう感覚があるのか。KANDYTOWNはどうですか?

JUJU:全然ないっすよね。

Neetz:喜多見って感じするよね。

レイジ:KANDYTOWNをレペゼンしているという感じですよね。

KIKUMARU:他人を見てなにか思うところがあっても、いざビートがかかっているところでリリックを書くとなったら、そういうのはみんな関係してないと思いますね。良くも悪くも周りじゃないっていうか。ブームがどうとかもとくに考えてないですね。

レイジ:でもこの人たちはずっとこの人たちだけで生活しているから(笑)、周りの影響は生まれないっすよ。誰々がどうでとかもほとんどなくて、違う世界の人たちだと思うんですよね。

JUJU:うまく説明できないけど、俺らはカッコつけるところが独特というか。でもほかの日本語ラップのヤツに会えば「みんないいヤツじゃん」と思うし、「お互い頑張ろう」ってポジティヴな気持ちになるだけっすね。

今回のアルバムだと”GET LIGHT”のヴィデオはリーボックのCMもかねたタイアップになってます。最近はラッパーがCMに出る機会も増えてるけれど、あれはそういうブームには関係ない感じというか。

レイジ:あれはマジでヒップホップですよね。

JUJU:でも俺らはあれがそんなに超カッコいいとか、特別だとかは思ってない(笑)。そのへんからちょっと違ってると思いますね。

そのズレが面白いというか、自分たちは全然シーンを背負っているつもりはないのだけれど、結果的にバトル・ブームとは関係のないところで王道的なスタイルを引き継いで、メジャーなフィールドで勝負してるっていう。そのズレについてはどう思いますか?


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レイジ:メジャー・デビューっていっても、ただ単にメジャーのレーベルから1枚リリースしたというだけだと思うんですよ。

JUJU:アルバム作ってても、メジャーだからどうこうってのは一切ないですね。言っちゃいけないこととかダメだとか言われたことないし、全然なかったよね?

レイジ:気を使ってリリックを変えるとか全然なかった。

JUJU:みんないつも一緒にいるから緊張とかわかんないし、仕事が多くなったとかはあるかもしれないけど変わったことはそんなにないよね。

ある意味でコミュニティ・ミュージック?

JUJU:そうだと思うけどなあ。RyohuくんやIOくんの新曲のほうが100倍気になるし、俺らは元々世に出さない人たちだから。

レイジ:そうね(笑)。世の中では誰も知らないけど、KANDYTOWN内ではマジでアンセムみたいなヒップホップ・クラシックがいっぱいあるんですよ。この惑星の人たちって感じですよね(笑)。ここは外国ですよ(笑)。

JUJU:「Neetzがこういうビート作ったってよ」というほうが「ヤベえ!」と思うし。

Ryohu:NeetzからのGmailが一番アガるよね。

レイジ:それ最高だね。

Ryohu:あんなにワクワクしてメールを開けることはないかもしれない。

一同:(笑)

レイジ:俺はそこが東京っぽい感じがしますけどね。東京のローカル。東京っていろんなところからいろんな人が来てずっとソワソワしているイメージだけど、そんな東京でもローカルはある。だっていわゆる田舎でも、イケてる人ってその地元に根づいてるじゃないですか。結局東京が都会で地方が田舎ということじゃなくて、場所がどこだろうがイケてるやつはイケてるし、自分のローカルをちゃんと持って、そのなかで周りを気にせずやれているヤツはいる。だからKANDYTOWNが周りのシーンを気にしないというのも別にカッコつけているわけじゃなくて、近場に気になる人がいてそっちにしか興味がないから、NeetzからのGmailがブチあがるとか、そういうのはこの世界があるからなんだ、という。だから江戸っ子ってうのかな。本当の意味で東京の雰囲気でやれている感じがしましたね。

世田谷の喜多見からKANDYTOWNが出てきて、それはそこにYUSHIさんという人間が1人いたからということがあるじゃないですか。街って、たんに物理的な場所というんじゃなくて、人と人のつながりがつくってる。

レイジ:そうかもしれないっすね。

通常版のジャケットがYUSHIさんの描いた絵になってます。メジャーで勝負するアルバムの中心に、とてもパーソナルな歴史を置いているということが、そのローカル感の象徴かなと思います。

KIKUMARU:そのジャケはめっちゃ派手だと思いますけどね。そういうジャケってなくないですか(笑)?

JUJU:YUSHIの絵にするアイデアは元からあったと思います。

IO:MIKIと話していてジャケットを絵にしようということになって、YUSHIの家に行ったときに絵を見ていて、ほかにもいっぱいあるんですけど、とりあえずこの絵のインパクトが強くて。アルバムが出来たら、結局それになってました。

IO:たしかレコーディングが終わったくらいかな。

Ryohu:レコーディングが終わってすぐくらいですね。ミックスしている合間に同時進行でアートワークも決めました。

レイジ:通常版はペラペラの紙一枚で、メジャーから出てるのにストリート・アルバム感がハンパないっすよね(笑)。

今回は豪華版、通常版ともに歌詞カードが入ってません。これはポリシーというか、明確な意志があるんですか?

JUJU:そこはポリシーですね。

レイジ:なんて言ってるんだろうなというワクワクがあるもんね。

Ryohu:聴いてもらえばいいかなと。

Neetz:別に読んでもらえなくてもね。

YUSHIさんの存在を意識して聴いてみると“GOOD DIE YOUNG”や“THE MAN WHO KEW TOO MUCH”などドキッとするようなタイトルもある。でも別にシャウトアウトしているわけでもないし、このバランスも自然にこうなったんですか?

Ryohu:自然にですね。こういう曲を書こうということも決めていないので、1人が書いてきて「じゃあ俺も(書く)」という感じでしたね。あとはトラックが上がってきてこの曲はこういう風に書こうというのも、例えばNeetzが作ってきたトラックに“Dejavu”と書いてあったら、なんでそう名づけたかはわからないですけどみんな“Dejavu”について書こうみたいな感じでしたね。いままでそういう風に作ってきたのでいままで通りですね。

YUSHIさんを連想させるといえば、Ryohuさんのソロでいえば“Forever”という曲もありますね。

Ryohu:あれは一応YUSHIについてだけではないですけど、(YUSHIの)命日の日に書いたんですよね。直接的に言うのは嫌だったんで含めながら書きましたけど、(YUSHIが)中心にはいましたね。KANDYTOWNのそれぞれのメンバーにとっても、YUSHIはデカい存在だということですね。絶対出したくないでしょうけど、メンバー全員がそれぞれ思うYUSHIを書く曲があったら面白そうですよね。

豪華版のほうの写真はレイジくんが撮影したもので…最初のほうの扉に「PLAY LIKE 80’S」という言葉があって。リリックにもよく出てくる印象的で謎めいたワードですが、誰の言葉ですか?

Neetz:これはIOくんじゃない?

IO:これは俺がたまに言ってたやつですね。

その心は?

IO: PLAY LIKE 80’S。

レイジ:バブリーなギラギラ感だね。

IO:わかんないけど、なんか調子いい。

みんな90年代生まれですよね?

IO:はい。本当は「Like 80’sのように弾くシティ」と言っていて……。

Ryohu:それもおのおの感じ取ってもらってほしいですね。

KIKUMARU:結局自分たちがカッコいいと思うことをやっているので、別にどう解釈されてもいいんですね。リリックにも出てくるんですけど「ホント気にしない」って感じですね。

90年代生まれだったら物心ついたときは00年代だったと思うんですが、ようはあまり明るい時代じゃないというか、10年代の始まりは震災もあったし、いまは若者の貧困がどうこうとか言われちゃう時代じゃないですか。だけど、そんな中でも自分たちの楽しみ方というか、遊び方を持って、最高にカッコつけて、きらびやかに歌舞いてみせる。その感じが東京ネイティヴのクールネスの2016年の最新形なのかなと思います。ああ、俺の意見言っちゃった(笑)。なにかあればどうぞ(笑)。

Neetz:ありがとうございます(笑)

Ryohu:でもまたいまからアルバムを作ることになったら、同じものは出来上がらないだろうなと思います。

みんなスタイルが変わっていく?

IO:それはわかんないっす。そのときカッコいいと思ったものをやるし、もしかしたらいきなりトラップを始めるかもしれないし(笑)

Neetz:俺は(アルバムが)もっと続いている感覚があるんですよね。

70分でもまだ足りなかったということですか?

Neetz:いや、気持ち的にはもっとこのアルバムは続くと思っていて、今回のはそのなかの一部というか、最初の部分がファースト・アルバムになっている感覚ですね。これがKANDYTOWNのすべてというわけではないですね。

Ryohu:みんなソロでは違う感じで出すんじゃないの?

KIKUMARU:良くも悪くも変わりはすると思います。

Ryohu:きっといい方向に変化するんじゃないですか。

KIKUMARU:でもみんなまだあんまりソロを出してないから変化がわかんないっすよ。

IO:俺はキャンディでやっているときもソロでやっているときも、あまり意識は変わらないんですよ。

今後はソロ作に集中する感じですか? たとえばセカンドについて考えたりはしますか?

IO:キャンディのセカンドがどうなるかはタイミングですね。

JUJU:キャンディのセカンドは10年後くらいでいいんじゃな~い。

IO:とりあえずDONYやMUDもみんなソロ出しますね。

レイジ:MUDのソロも作るの?

JUJU:これから。

IO:俺らみたいなのを「ちゃんと出せよ」と言って動かしてくれる人がいないとちゃんとした形では出さないと思うけど、いつも通りみんなで遊んでいるときに曲を作るとは思いますね。あとはなにを出すにしろ、音の色は変わるかもしれないですけどKANDYTOWNのままだと思う。コンセプトを決めてこういうアルバムを作ろうということはないと思いますね。

最後に一言ずつもらってもよろしいですか?

Ryohu:最初で最後かもしれないのでお聴き頂ければと思います。

Neetz:本当にドープなアルバムができたと思うので(笑)、チェックしてほしいです。

IO:よかったら聴いてください。

KIKUMARU:いま作ったものが俺たちのいまなんで次出せるかわかんないですけど、おのおののソロやミックスCDがこれから出ると思うので、KANDYTOWN全体をチェックしてもらえたらと思います。

Ryohu:はい、頂きました~。

一同:(笑)

GOTTZ:アルバムのテーマは「KANDYTOWNのファースト・アルバム」です。

JUJU:ヤバい、俺まで早かった。よかったら聴いてください、っすね(笑)。

レイジ:ええ!? それだけ?

Ryohu:これが公開される頃には自分のアルバムも出るんじゃないの?

JUJU:11月23日にも俺のソロ・アルバムが出るから、そっちも聴いてください。このメンバーで作れて本当によかったなと思うんで、いまの若いキッズたちはこれからそういうのを目指して頑張ってほしいし、ラップを続ければいいことがあるよというのがアルバムのテーマじゃないですけど、俺はいまラップ続けていてよかったと思いますね。

GOTTZ:「間違いないヤツらと仲間になれ」ってDONY JOINTが言っていたけどまさにそれですね。

レイジ:俺は携われてよかったですよ。

今回レイジくんが音楽的にもディレクションに関わるのかと思ったのですが、そうではなく、あくまでまとめ役だったそうで。

レイジ:まとめ役というか、簡単に説明するとKANDYTOWN側のスポークスマンという感じなんですよ。レーベルと細かいことをやりとりしていただけなんで。

制作で一番印象深かったのは遅刻がとにかく多かったこと聞きましたが(笑)。

レイジ:遅刻はつきものですけど、こないだのワンマン見てて、ラップがカッコよければなんでもいいやと思いましたね(笑)

一同:(笑)

レイジ:どんどん遅刻していいよ! と思いました。遅刻しないでラップがカッコよくなくなるくらいだったら、遅刻しまくってラップカッコいいほうがいいですよ。

なるほど。ありがとうございました。

キャンディタウン:ありがとうございました!

Alicia Keys - ele-king

「朝目が覚めた瞬間/メイクを一切したくないことだってあるでしょ/自分らしさを隠さなきゃいけないなんて/誰が決めたの/メイベリンの化粧品で覆い隠しているのは自信かもしれないのに」 “ガール・キャント・ビー・ハーセルフ”

 クラシックの素養もあるし、気高く凛としていたので、デビュー当初は才色兼備の「いいとこのお嬢様」だと思っていた。だが初来日時のライヴを観に行った時、PAの具合が悪かったのだったか何だったか、理由ははっきり覚えていないが、ステージ上のアリシアが「チッ!」と言ったのを聞き、「あ、お嬢様じゃなかったんだ」と了解した。だが宣伝の戦略としての優等生イメージはその後もずっと続いたため、本人も次第にそれが重荷になって、虚飾をすべて取り払いたくなったのだろうか。先ごろ唐突にすっぴんの画像を自らを公開し、その一撃で、見事に虚飾の放擲を完遂した。
 大きなアフロ・ヘアに覆われたすっぴんの横顔をジャケットに据えた新作『ヒアー』には、そうしたアリシアの心持ちがストレートに反映されている。歌声はどこまでもナチュラルで、バックの演奏も音数を削ぎに削いで、とてもシンプルだ。だがそれで十分、足りないものは何もない。それどころか、まっすぐに胸の奥深くに届く音楽となって結実している。
 前半は綿花畑で歌われていたワーク・ソングを彷彿させるプリミティヴな曲を含め、ブルージーな曲が多いが、デビュー作からして『ソングス・イン・A・マイナー』だったアリシアのこと、こういう曲への気持ちの乗せ方は天下一品だ。プロデュースはほとんどをアリシアとスウィズ・ビーツ夫妻を含むチームのイルミナリーズが手がけているが、ファレル・ウィリアムスのプロデュース曲もある後半の数曲は明るく軽やかな曲調に変化して、すっぴんのアリシアの歌声は可愛らしくもサバサバして気持ちがいい。それに続く終盤は、ザ・ウィークエンドとの仕事で名を上げたイランジェロとアリシアの共同プロデュース曲を含めてトレンドもさり気なく押さえつつ、スピリチュアルなマイナー調にも戻る、という作りだ。ゴージャスさとは対照的な清楚な音世界は心身の鎧を脱ぎ捨てたアリシアの心持ちそのものであろうし、曲想がグラデーション的に推移する全体のスムースな流れも、ナチュラルな感情の流れの表れだろう。そして全編を通じて言えることは、歌声が力みのない自然な表現を伴っているのはもちろん、どこにも奇をてらったり意表を突いたりする要素がないということ。その結果、とても清々しい作品になっている。
 さて、かねてからSNSなどで、政治的なメッセージを発信することも少なくなかったアリシア。本作収録曲の歌詞ではストレートな表現はしていないが、そのかわりに婉曲な表現や実生活の描写を通して、メッセージをそこここに忍び込ませている。
 例えばこれは個人レベルで考えることもできるが、反戦ひいてはトランプ次期米大統領が主張する排外主義の批判にも繋がる。「聖なる戦争の爆弾を磨く代わりに/もしもセックスが神聖なら/そして戦争が淫らなら/そしてそれが勘違いじゃないなら/なんて素晴らしい夢なの/愛のために生きて/終りを恐れることもなく/許すことが唯一の真のリベンジ/そうすればわたしたちお互いを癒し合って/感じ合える/お互いの間に立ちはだかる壁を壊すことができる」“ホーリー・ウォー”

 そして“ホウェア・ドゥー・ウィー・ビギン・ナウ”ではLGBT(性的少数者)の人々へのエールを歌う。
 知らず知らずのうちに心に幾重にもまとわりついた、本来は必要のない余計なものが、戦争や差別をはじめとする世の中の不条理を、実につまらない理由から生じさせる。アリシアはそれを小難しい言葉でダイレクトに語るのではなく、日常生活の中にある言葉で日常の風景に引き寄せて綴り、誰にでもわかりやすく受け入れられる形で提示しているように思う。

 最後に、最近アリシアがフェイスブックにアップしていた引用の言葉を紹介しよう。
 「The pain taught me how to write and the writing taught me how to heal」 – Harman Kaur
(「苦しみは書き方を教えてくれて、書くことは癒し方を教えてくれた」)

 我々リスナーがこの包容力のあるアルバムに癒されるだけでなく、これを作ったすっぴんのアリシアも、自ら癒されていたのなら嬉しいことだ。

Thomas Brinkmann - ele-king

 先日リリースされたアルバム『A 1000 Keys』はもうお聴きになりましたか? どうでしたか? 凄かったでしょう? ピアノという楽器をあんな風にミニマル~テクノの文脈に落とし込むことのできるアーティストを、僕は他に知りません。
 もはやベテランと言ってもいいトーマス・ブリンクマンですが、この冬、代官山のUNITにてライヴをおこないます。なんと5年ぶりの来日です。しかも、エクスペリメンタルなセットとフロア・オリエンテッドなセットの両方を披露してくれるそうです。となれば見逃すわけにはいかないでしょう。詳細は以下を。

interview with TOYOMU - ele-king


TOYOMU
ZEKKEI

トラフィック

DowntempoElectronic

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 ヴェイパーウェイヴは、レトロなコンピュータや日本語をデザイン要素としながら80年代のCM音楽やエレヴェーター音楽の遅いループそしてカセット・リリースによって資本主義ディストピアのムードを描いている。しかしその前にスクリューがあった。これは既存の曲をただ遅めに再生すると気持ち良く聴こえるという、じつに単純な、そして再生装置もひとつの楽器と認識するようになってからの、究極的なサンプリング・ミュージックと言える。だが、しかし、音楽は常にリサイクルされてきた。100年前のストラヴィンスキーがそうであったように、メロディやリズム、音の断片は、過去から借用され、使い回しされ続けているものだが、現代ではそれがより簡単に、初期のヒップホップの時代よりも、ずっとずっと簡単にできるようになった。
 サンプリングは、それが商用で使われた場合、著作権侵害となり、クリアランスが必要になるが、しかし商業リリースではない場合は、いや、インターネット空間そのものがどこからどこまでが商用で、どこまでが個人の趣味かという境界線を曖昧なものにしてしまったため、そのグレーゾーンではフィジカルでは聴けない(買えない)ユニークなサンプリング・ミュージックが突如アップされる。
 京都で暮らすTOYOMUも、基本的には“リスペクトありき”のサンプリングで作品をアップロードしてきた。ネット空間においてサンプリングがどこまで自由なのかを試すかのように。それで今年、カニエ・ウエストの『ザ・ライフ・オブ・パブロ』をまだ聴く前に告知されていた曲名と情報公開されていたその作品のサンプリング・ネタをたよりに、TOYOMUはそれを想像して作り上げ、そしてヴェイパーウェイヴよろしくすべての曲名を日本語で表記し、『印象 III : なんとなく、パブロ(imaging”The Life of Pablo”)』として自身のサイトにアップしたのだった。
 すると、一夜にして海外リスナーからのリアクションが彼の元に届き、その痛快さ──そのアイデアおよび曲のクオリティ、そしておそらくは日本人自らやったヴェイパーウェイヴ的ミステリー効果──を『Billboard』、『BBC Radio』、『Pitchfork』、『The Fader』、『FACT』といったメディがセンセーショナルに報じた。言うなれば彼は、カニエ・ウエストの知名度に便乗しながら、自分の作品を売り込むことに成功したわけだが、計らずともこのパブロ騒ぎは、今日の音楽を取り巻く環境を反映している。つまり、引用(カットアップ)とスピードである。
 
 そこへいくと今回リリースされる彼の初の公式フィジカル・リリースのEP「ZEKKEI」は、サンプリングやコンセプトで楽しませるものではない。むしろ、俺は戦略家ではないとでも言わんばかりの、聴き応え充分のエレクトロニック・ミュージックなのだ。素っ頓狂さを装いながら、リズミックな妙味を展開したかと思えば、かつて京都を拠点に活動したレイ・ハラカミを彷彿させるかのような、ロマンティックな叙情性もある。言うなれば真っ向からの作品で、『なんとなくパブロ』で使ったアイデアはいっさいない。きわどいサンプリングはナシ、曲名はすべて英語、捻りの効いたファンク、OPNとミュータント・ジャズとの出会い、美しいアンビエント、このように言葉で説明する以上に凝った展開。
 彼の“絶景”はシュールであり、いったいどこに着くのか、ときとして音の迷路のようでもある。いや、実際、彼がこれからどこに行き着くのかまったく読めない。ただ、何にせよ、ここにトーフビーツらと同じ世代(20代半ば)のユニークな才能が躍り出たのである。彼は間違いなく僕たちの耳を楽しませてくれるだろう。もしこの『ZEKKEI』に先祖がいるとしたら、クラフトワークの『ラルフ&フローリアン』とクラスターの『ツッカーツァイト』である。わかったよね、そう、ぜひ、楽しんで欲しい。

ツイッターとかフェイスブックとかどこを見てもカニエの話題ばっかりで、いまこれをやったら絶対みんな聴いてくれるやろうなと思ったのでカニエを選びました。

なぜカニエ・ウエストだったんでしょうか?

TOYOMU:あれは『印象』という名前のシリーズでやっているんですけど、去年の10月くらいに自分でビート・テープを出して、ポンポンと出していきたいと思っていて、なおかつ過激で、エキセントリックで、実験的な内容をどんどん出していきたかったんですよ。ただそれをやるだけだったら誰も聴いてくれないので、(ビート・テープを)周知させるためになにか大きくてわかりやすいテーマがいるなと思って、まず1月に星野源を選んだんです。その次の2月はわりと地味なやつで、ソウル・ミュージックをソフト・プラグインのシンセでサンプリングしました。そして3回目をやろうとした1ヶ月前にカニエのアルバムが出て、ツイッターとかフェイスブックとかどこを見てもカニエの話題ばっかりで、いまこれをやったら絶対みんな聴いてくれるやろうなと思ったので(カニエを選びました)。あとはあのアルバムの弄りがいがあったというのが大きいですね。僕は不完全さがあるほうがアレンジしやすいんですよね。

確信犯としてやったんですね。

TOYOMU:いや、でもここまで大きな反響になるとは全然わからなかったんで。ぼんやりと海外向きやなとは思っていましたけど、こんなに海外向けになっているとは思ってなかったですね。

カニエが好きなんですか?

TOYOMU:好きですけど、それはみんなが普通に好きというくらいのレベルですね。

カニエのどこが好きなのか、すごく興味があるんですけど、ぜひ教えてください。

TOYOMU:サンプリングの良さじゃないですか? 言っていることとかそういうことじゃなくて、音楽的な面としてこういう変遷を辿ってきた人がいないから面白いという。最初はファレルやティンバランドがやっていたときにサンプリングの早回しで出てきて、それで一時代を作ったあとにだんだん変になっていって、『イーザス』という突然あんなのを作ったと思ったら、今度は『ライフ・オブ・パブロ』で「またなんのアルバムなん?」という感じで、ラップというよりかは音楽面ですね。
 変遷が大きいじゃないですか。ガラッと変わっていきますよね。あんなに変えてやっている人は、メインストリームではなかなかいないですよね。ファレルは最初から器用だから、なにをやったって驚かないじゃないですか。でもカニエは毎回驚くことをやってくるんですよね。そもそもヒップホップ自体がそういうありえへんことをできる音楽だと思うし、渋くやるというのが凝り固まった時点でもう違うと思うんですよね。最初はレコードが回っているのを(手で)止めてはじまったわけですから、それを考えたら最初からありえへんことをやるというのが基本としてあるかなと思っていますね。

カニエの前には、星野源(『イエロー・ダンサー』リリースから1ヶ月に『印象I:黄色の踊り』をアップ)もやったんですよね?

TOYOMU:あれはサンプリングをしたビート・テープを作るというのが半分と、あとはちょうどあのときに自分でドロドロのアンビエントを作ってみたかったんですよね。

星野源を選んだのは人気者だから?

TOYOMU:人気者だからというのがひとつと、あとはあのアルバム(『イエロー・ダンサー』)自体がディスコというかブラック・ミュージックだし、やっぱりバンド・サウンドというのがいちばんサンプリングしがいがあるなと思いますね。アレンジしがいがあるというのはやっぱり音楽的に補完できる余地が残っているからだと思いますね。最近でいったらフランク・オーシャンはもう弄りようがなくて、じつに完璧で、僕のつけ入る隙がいっさいないというか。でもカニエや星野源はそれぞれに不完全さがあると思うんですよね。

当然クレームは来たでしょう?

TOYOMU:僕に(クレームがきたん)じゃないんです。サウンド・クラウドやバンドキャンプ側にクレームが行ったらそちら側が判断して削除したりできるんですけど、それでバンドキャンプにクレームが行って。サウンド・クラウドにもティーザーとして1曲あげていたんですけど、それもビクターによって消されましたね。次はもうやらないでくださいねという警告もきたので、あと2回やったらアカウントを消しますということになりました(笑)。サウンド・クラウドにBANという機能があるんですよ。バンドキャンプももうこんなのやめてくださいね、と消されたときにメッセージが来ましたね。

リスナーからはどのようなリアクションがありましたか?

TOYOMU:「Sampling-Love」というブログがあるじゃないですか。元々はネタ集なんですけど、いまはかなり人気で、記事を書いたらリツイートが50~100くらいされるようなサイトなんです。国内やったらサンプリングの音源を取り上げてくれるかなと思って、そのブログの人に毎回メールをしていたんですね。『黄色の踊り』もメールしたらブログに載っけてくださって、それがきっかけで国内のみんなが聴いてくれたんですよね。ツイッターでは、「こんなアレンジもあるんだ。おもしろーい」みたいなことを言っている星野源のピュアなファンはわりといました。

サンプリングは、商業リリースでは著作権侵害で、クリアランスが必要なわけですが、欧米では、アンダーグラウンドに関しては文化として大目に見ているところもあるんですよね。例えばシカゴのフットワークはかなり大ネタ使ってます。あるいは、ジェイムス・ブレイクの最初のヒット作の「CMYK」は、ケリスとアリーヤという大物の曲をサンプリングして、誰かわからなように変調させて使っていました。その盗用の仕方も含めて、メディアは賞賛したわけです。そういうアート性の高いもの以外でも、インターネットが普及した現代のネット世界では、音源はいくらでもあるし、これを使わない手はないくらいの勢いで、サンプリング・ミュージックは拡大していますよね。

TOYOMU:使わない手はないですね。正直言って個人レベルでやっている以上は文句を言われたって(音源を)消されて終いだし、むしろ発見されること自体が珍しいんですよね。だから個人レベルだったら好き勝手やったっていいんじゃないかと思いますよ。それを大目に見てくれればいいのに、なんでわざわざ消したのかは謎ですね。

いや、それはしょうがないでしょう(笑)?

TOYOMU:僕はむしろそれをプロモーションに使ってほしいくらいなんですけどね。そういう度量はなかったみたいですね。

とにかく、サンプリング・ミュージックという手法に関心があるんですね。

TOYOMU:まさしくそうですね。

もっとiPhoneでワーッと録って、なんならインストもiPhoneで録って「どや!」といって出すくらい……、それはさすがにクオリティが低すぎるんですけど、ラップだけiPhoneで録ってPCに入れて、インストは「これ使ったらええやん」といってやるというノリがなくて、「なんでみんなこんなに便利な世のなかなのにそうせえへんのかな」とすごく不思議ですね。

サンプリング・ミュージックはたしかにいますごく議論のしがいのあるテーマなんですよね。じつはいまサンプリングの時代だから。TOYOMU君はサンプリング・ミュージックのどこを面白く思っているんですか?

TOYOMU:突き詰めていったら編集している良さかなあ。最初は音の質感でしたね。古い質感が好きになったきっかけじゃないかな。

知っている曲が違う文脈で使われることの驚きみたいなものはあります?

TOYOMU:それはだんだん詳しくなっていく過程でそう思った。でも、初期衝動としては、それ(音の質感)でしたね。中学生、高校生だった自分にとっては、テープ録音されたものを切って並べていくというのは、ポルノグラフティやバンプ・オブ・チキンが演奏しているのとは明らかに違っていた。

ずっと家で作っていたんですよね?

TOYOMU:そうですね。レコードを買ってきて(それをサンプリングして作る)、というのをやっていました。レコードじゃないとダメという風潮がありますけど、ストーンズ・スロウのナレッジというビート・メイカーはサンプリングの音がめちゃくちゃ悪くて、どう考えてもYouTubeから音を録っているようなのを毎月何本もバンドキャンプにビート・テープとして出したりしていたので、「もう作るんだったら手段関係ないやん」と思いました。レコードを買いにいく時間で(音を)作れますよね。だからある意味で合理化ではありますよね。

いつから作っているのですか?

TOYOMU:MPCを買ったのは2009年なので6年くらい前ですね。

憧れのような人はいました?

TOYOMU:KREVAですね。あとはマミーDですね。最初に日本語ラップから入ったので。あの人らって「MPCをまず買え」という人じゃないですか。それで「MPCを買ってやったらああいう感じができるんや」と思ってMPCを買って、KREVAのソロとかを聴きながら「なるほどな、こういう構造か」って分析したり、あの人がスタジオでMPCを使って解説している動画を見たりしていました。

だとしたら、普通に、真っ当なJラップの道にいってもよさそうなのに。

TOYOMU:そうなんですよ。僕は最初はラップもやっていて、KREVAやマミーDはトラックメイカー兼ラッパーで、自分で曲を作って自分でラップもできるみたいなことに憧れていたので、最初はそれでいこうと思っていたんですよ。でもリスナー目線で考えてみると周りにラップでむちゃくちゃカッコいい人が多すぎて、「これは自分で全然無理やわ」と思って、そこでラップは断念したんですよ。「こんなにカッコいいのできへんし、全然歌詞も思いつかへんし、音楽作るのは好きなんやけどなあ」という思いがずっとあって、「じゃあもうラッパーのためにビートを作る」ということでビート・メイカーという役職があることがわかったからはじめたんですよね。

誰か他のラッパーとユニットを組んでみたりしたことはありますか?

TOYOMU:それはありましたよ。地元の同い年くらいの何人かで集まってクルーを作ったりしたことはありました。1回ミックスCDを出しましたけど、どうしてもラップがパッと返ってこなくて「インストはどれがいい?」とか言っていたら時間が経ってしまって、それがだんだん「はよ返せよ!」とイライラしはじめて。
 京都に限った話じゃないんですけど、もっとみんなラフにラップをやればいいのにな、と実感するんですね。さっき来てはった人(この前の取材者=JAPAN TIMESの記者)も「日本のアンダーグラウンドのラップを探しているけど、なにを見ていいかわからん」みたいなことを言ってはって、それは日本でミックス・テープ文化が全然根づかなかったということじゃないですか。まとまっているところが全然なくて、結局僕は「タワレコの『bounce』とか『ele-king』のチャートを見るしかないんじゃないですか?」と言うしかなかったんですね。日本のヒップホップのなかでみんなが「作品を作る=CDを出す」ということになってしまっていて、CDを出すということはスタジオでちゃんとレコーディングをしてというように真面目なんですよね。「なんでヒップホップをやっているのにそんなに真面目なんだ」と思ってしまって。
 もっとiPhoneでワーッと録って、なんならインストもiPhoneで録って「どや!」といって出すくらい……、それはさすがにクオリティが低すぎるんですけど、ラップだけiPhoneで録ってPCに入れて、インストは「これ使ったらええやん」といってやるというノリがなくて、「なんでみんなこんなに便利な世のなかなのにそうせえへんのかな」とすごく不思議ですね。僕がラッパーやったらガンガン人の曲を使いまくって、アップロードしまくってハイプをやるほうが早いと思うんですけどね。ライヴでかますというよりかは、それをやったほうが絶対にヒップホップ的に成りあがれるというか。KOHHとかリル・ウェインとかああいう人がいるのに、なんでそういうやりかたをやらんのかなあと思いますね。というのもあって僕の『印象』シリーズは毎月出そうとしていて、そういうミックス・テープのノリでみんなもどんどん作ればいいやんと思うんですけど、腰が重いというのが謎ですね。

現代の、次から次へと作品がアップロードされるその速度感はすごいものですが、それでは音楽がビジネスとして成り立たなくなるということ、そして作るという行為そのものがまったく意味が違ってきてしまうということに対する恐怖心も日本にはあるのかなと思うんですけど。

TOYOMU:なるほど。でも僕はそれがなぜ作る側にあるのかがわからなくて、作る側は自由にやって、それをどう思うかは企業や会社の問題じゃないですか。

カニエ・ウエストのリアクションというのは予想以上だったと思うのですが、海外でおもしろかったリアクションはありますか?

TOYOMU:おもしろかったのは向こうの「レディット」というちょっと明るい2ちゃんねるのようなサイトでカニエ・フォーラムみたいなのがあって、そこの「カニエのアルバムを妄想で作ってみたらしい」というスレッドに「小説としてはおもしろいと思うけど、妄想で作ってない。全部聴いてから作っている」と書いてあったのがおもしろかったですね(笑)。「こんなに似ているわけないし、絶対コイツ聴いている」からみたいな(笑)。

しかし「レディット」って、すごいところまで見ていますね。

TOYOMU:それはなんでかと言えば、どこでバズが起きているかがバンドキャンプのアクセス解析でわかるんですよね。「バズ」という項目があって、もちろんエレキングだって出ますよ。それで変遷を見ていたら「レディット」というのがやたらと書いてあって、見にいったら「2ちゃんか……」と思いましたけど(笑)。

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もっと欲をかいたというか、自分ですべて作ったものを出したいと思ってきたんです。だからサンプリングで一音だけ録ってきて音階にわけて弾いていても、やっぱりどこかで借り物感に満足しきれなくて、今回はそういうことに頼らずにできたと思っているんです。

なるほど(笑)。TOYOMU君って、物静かな外見とは裏腹に、けっこう大胆な行為をやっているんですけど(笑)。ニコニコしながら言っていますが、普通こんなことはビビってできないと思います(笑)。

TOYOMU:それは「日本に住んでいるとただでさえアンテナが低いのに、出さなかったら知られていない、やっていないのと一緒だ」と思ったからなんですよね。せっかく作っているのに聴いてもらえないのがほんまに悲しいと思ってきて、だからそれだったら方法なんて選んでられへんよねという話で。しかもヒップホップ自体が手段を選ばずに新しいことをやるという音楽であるはずだと思うので、その考えからいったら怖いものはなにもないですよね。あとは個人レベルでやって怒られることなんてまずないから、なんでもやったらええやんと思うんです。

でも、今回の『ZEKKEI』がそうですが、商業流通を前提で作っているから、人騒がせなサンプリングもないわけで、自分の音をサンプリングしたんですよね。そういうときにどうやって自分のやり方を調整していくのですか?

TOYOMU:それはYMOとかを聴いてきた僕自身にミュージシャン気質みたいなものが入ったから、自分で作曲してメロディを作り出すということ自体がもしかしたら自分がもっとも目指していたところなんじゃないかと思います。最初はサンプリングとシンセの融合でうまいことやって、サンプリングに聴こえないものを作り出すというのが当初の目標でしたけど、もっと欲をかいたというか、自分ですべて作ったものを出したいと思ってきたんです。だからサンプリングで一音だけ録ってきて音階にわけて弾いていても、やっぱりどこかで借り物感に満足しきれなくて、今回はそういうことに頼らずにできたと思っているんです。今回はそういう欲求でしたね。そもそも欲求としてあったというのはあります。

サンプリング・ミュージックというのはある意味でコンセプチュアル・アートのようなもので、発想を楽しむというのがあるじゃないですか。それに対していま言ったような作り方というのは、自分で実際に絵を描くというような行為ですよね。

TOYOMU:だからコンセプチュアル・アートだけやっていた人が、自分で絵を描くのをやりはじめたという段階がいまですね。

それはやっていて面白かったですか?

TOYOMU:そうですね。いままで自分が挑戦していなかったことをやるんで、やっぱり無類に楽しいですね。僕はメロディやコードの勉強はいっさいしていないですけど、理論って……理論化して可視化しているだけなんで別に(感覚で)理解できればいらないと思うんですよね。サンプリングでコードを合わせたりするのをやっていて感覚として身についてきたので、サンプリングを外してメロディだけを作ってみたりするのがだんだんできるようになってきたということが大きいですね。
 今回はとりあえずの足がかりを作って、それをアルバムの基軸に繋げていきたいと思っていましたし、アルバムを作ることになってからあまりにも時間がないということもあったので、先にジャブ的な感じでひとつ出そうかという感じでしたね。カニエに一区切りするために、というのも一つありました。あれをいつまでも引きずるのは嫌だし、KOHHも「昔のことを忘れたらいい」「過去にしがみつくなんてダサい」と言っているじゃないですか。その感覚ですね。

なるほど。もう次に行こうということですね。

TOYOMU:新しいことのほうがしたいんで、いつまでも一緒のことをやっているのも単純に面白くないし、飽きてきますよね。

『なんとなく、パブロ』のようなギャグをもないですよね。

TOYOMU:そうですね。ギャグはタダでいっぱいやればいいし、それをやる一方でアルバムは超真剣に作ればいいんじゃないかなと思っていますね。別に(ギャグの)入れがいがあるんだったらアルバムに入れてもいいと思うんですけど、100まで振りきってやるというのはやらなくてもいいかなと。

ダンス・ミュージックなどといった縛りはなかったのですか?

TOYOMU:ジャンルということだけは定義づけてやりたくない、という考えは通してありました。「これはトラップですよ、これはハウスですよ、ヒップホップですよ」と最初から冠づけずに、「音楽ですよ」と言って出したかったので定義づけしないでやりましたね。ジャンルがあるからジャンルに従って作ったというのがそもそも嫌だし、「これがビートの作り方ですよ。これがカッコいいですよ」となっている状況が嫌だったから、その(ジャンルの)メソッドが確立したら絶対それをやらずに新しいものを作るということを前からずっとやっていますね。

それでなぜ『ZEKKEI』なのでしょうか?


TOYOMU
ZEKKEI

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TOYOMU:フィールド・レコーディングの曲も京都の音ですし、『印象』の5番目で『そうだ、京都。(Kyoto Music)』というのを作って人から感想を言われたりして、自分が好きな京都が祇園祭とかクール・ジャパン的な京都じゃなくて、落ち着いたアンビエントの方向の京都なのかなと思ったんですね。京都自体がそういうイメージであることを再認識して、曲を作るときにもそういうのを意識して作ったりしていたので、その延長で今回のEPの制作に取りかかったんですよね。だから『ZEKKEI』というタイトルにしたのは普通絶景と言ったら歌舞伎の石川五右衛門ですよね。あれは南禅寺じゃないですか。

なるほど。そっちから来たのですね。

TOYOMU:日本語のタイトルをつけたいというのがまずあったんですよ。カニエのときは全部邦題的なノリの日本語で書いて今回もやろうと思ったんですけど、それをちゃんとしたCD作品としてやっちゃうと勘違いされるんですよね。

ヴェイパーウェイヴなんかは、相変わらずグーグル翻訳したような日本語をそのままタイトルにしていたり。

TOYOMU:でもそれを僕がやったらヴェイパーウェイヴの人になっちゃう。それが嫌だったんですよ。そこは僕もものすごく悩みましたよ。全曲のタイトルが日本語でもよかったんですけど、やっぱりそれをオフィシャルでやって理解してもらえるまでの周知度はないと思って、嫌だったんですけど日本語の言葉で英語タイトルをつける、ということをなるべく心がけてやったんですよ。だから2曲目に“Incline”という曲があるんですけど、これも英語ではあるんですが、琵琶湖から京都まで引っ張ってきている水路があって、その水路に滑車をつけて荷物を運んでいた「インクライン」という輸送用の台があったんですよ。その線路とかを含めて「インクライン」と呼んでいたんですけど、京都の人はそういうのを小学生の頃から習ったりして知っているから、僕にとって「インクライン」という言葉は英語というより蹴上にあるものが先に思い浮かぶんですよね。もし日本語タイトルでやっていたなら、カタカナで“インクライン”にしていましたし。あと1曲目の“Atrium Jobo”というのも、「条坊制」から取っていて日本語的な意味がありますね。

それは曲のイメージと関係があるのでしょうか?

TOYOMU:曲のイメージからです。EPを作ってからも自分のなかで京都の印象が強かったので、全部曲ができてからタイトルを考えるときも、京都のどこかしらの場所がそれぞれ点在していると考えるとうまく解釈できたんですよ。例えば1曲目は京都駅で、2曲目はさっき言ったインクラインで、5曲目のフィールド・レコーディングは嵐山のほうで、そう考えていくと(京都の)俯瞰になっているんです。そういうふうに俯瞰で眺め見ている+日本語タイトルをなんとかしてつけたいということを考えて、それを理解するのに正しい言葉は『ZEKKEI』だと思ったんです。

当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、TOYOMU君のなかで京都というのは大きいのですね。

TOYOMU:そうですね。ただ音楽に国境は関係ないという話がよくあると思うんですけど、どこに住んでいたとしても住んでいる場所から生まれ出たものが絶対大きく影響しているはずなんですよ。それは京都に住んでいるから京都をレペゼンしたいということじゃなくて、もう少し俯瞰してみると自分が京都に生まれてからずっと住んでいて(その状況で)音楽を作ったらどうなるのか、ということを考えたうえでの京都なんですよ。もちろん京都愛はありますけど、そうじゃなくてもう少し冷静な見かたの京都であるということを言いたいですね。

アルバムは来年になるのでしょうか?

TOYOMU:来年の2月くらいかな。タイト・スケジュールですね。

ハイペースだね。『印象』シリーズもそうですが、作るのが好きですよね。

TOYOMU:パッと出したいので、時間かけて煮詰まってああだこうだ言うんじゃなくて、『印象』シリーズに関しては最初のインパクトだけで短期間で終わるものをどんどん出していったほうがいいかなと思って。それがあるのであんまりもったいぶっても忘れ去られるだけだなと思いますね。

やはり消費の速度は早いと思いますか?

TOYOMU:思います。それは星野源のリミックスがそうだったし、カニエのやつも3月に出して「Sampling-Love」に載ったあとワーッと盛り上がってスッと消えたので。突然もう聴かれなくなって「はあ、じゃあ次作るか」と思っていたところやったんですね。タダのものしか聴かないという状況は大きいと思いますね。みんな本当にそれしか聴かないですしね。

そういう状況のなかで音楽家はどうやっていくか、というのもテーマとしては大きいですよね。

TOYOMU:タダのものはお金を出して買って頂けるもののオマケというか、プロモーションとしてやるつもりではいるので、今回のカニエくらい実験的だったりギャグ的なことだったりしてやれることはこれからもやっていくとは思うんですよね。

それはそれで楽しみにしつつという考えなのですね。

TOYOMU:そうですね。けっこう早いペースですけど、おそらくEPが出るまでにやると思います(笑)。(※『印象』シリーズの最新作は宇多田ヒカルだった)そうやって動いていきたい感じはありますね。とにかく「あの人は音楽を作り続けているな」というふうに(言われるように)はなりたいですね。実際にやっていて「もうアイデアがない」みたいな状態もないので。

Goldie × Lee Bannon - ele-king

 10月にコンゴ・ナッティとマーラを迎えて開催された「Drum & Bass Sessions」こと「DBS」の20周年記念パーティ。なんと、その続報が届けられました。2016年を締めくくる「DBS20TH」第2弾は、ドラムンベース/ジャングルの帝王ゴールディと、〈ニンジャ・チューン〉などからのリリースで知られるリー・バノンの夢の共演です(リー・バノンは今月Dedekind Cut名義で新作『$uccessor』をリリースしたばかり)。相変わらず豪華な面子でございます。12月17日(土)は代官山UNITにて、一夜限りの「THE DARK KNIGHT BEFORE CHRISTMAS!!!」を体験しましょう。

★GOLDIE (aka RUFIGE KRU, Metalheadz, UK)

"KING OF DRUM & BASS"、ゴールディー。80年代にUK屈指のグラフィティ・アーティストとして名を馳せ、92年に4ヒーローの〈Reinforced〉からRUFIGE KRU名義でリリースを開始、ダークコアと呼ばれたハードコア・ブレイクビーツの新潮流を築く。94年にはレーベル〈Metalheadz〉を始動。95年に1stアルバム『TIMELESS』〈FFRR〉を発表、ドラムンベースの金字塔となる。98年の『SATURNZ RETURN』はKRSワン、ノエル・ギャラガーらをゲストに迎え、ヒップホップ、ロックとのクロスオーヴァーを示す。その後はレーベル運営、DJ活動、俳優業に多忙を極めるが07年、RUFIGE KRU名義で『MALICE IN WONDERLAND』を発表、08年に自伝的映画のサウンドトラックとなるアルバム『SINE TEMPUS』をデジタル・リリース。09年にはRUFIGE KRU名義の『MEMOIRS OF AN AFTERLIFE』を発表、またアートの分野でも個展を開催するなど、英国が生んだ現代希有のアーティストとして精力的な活動を続ける。12年、〈Metalheadz〉の通算100リリースにシングル「Freedom」を発表。13年には新曲を含む初のコンピレーション『THE ALCHEMIST: THE BEST OF 1992-2012』をCD3枚組でリリース。14年、〈Ministry of Sound〉からのヴィンテージMIXシリーズ『MASTERPIECE』を発表、ヘリテージ・オーケストラとのTIMELESS LIVEが好評を博す。16年、音楽とアートの功績を称えられ大英帝国勲章MBEを授与される。15年の「Broken Man」以降リリースはないが、フライング・ロータス、ブリアル、フォーテックらが参加した新作のリリースが待たれる!

★LEE BANNON aka DEDEKIND CUT (Ninja Tune, NON WORLDWIDE, USA)

カリフォルニア州サクラメント出身、現在はNY在住のビートメイカー/プロデューサー。映画からインスピレーションを得ることも多く、フィールド・レコーディングを多用した自由なプロダクションが賞賛を浴びた1stアルバム『FANTASTIC PLASTIC』を2012年にFLYING LOTUSの作品で名高い〈Plug Research〉からリリース。またブルックリンの若手ヒップホップ・クルー、PRO ERAとの交流を経て、代表格のJOEY BADA$$のプロダクションや彼らのツアーDJとして注目を集める。13年にはダーク&エクスペリメンタルな『CALIGULA THEME MUSIC 2.7.5』、『NEVER/MIND/THE/DARKNESS/OF/IT...』の2作のデジタル・アルバムのリリースを経て〈Ninja Tune〉と契約、ダウンテンポの「Place/Crusher」を発表。14年、〈Ninja Tune〉からアルバム『ALTERNATE/ENDINGS』を発表、90'sジャングル/ドラム&ベースのヴァイブを独自のサイファイ音響&漆黒ビーツで表現し、『Rolling Stone』誌のBest Electronic and Dance Albumの15位となる。15年には前作とは趣を異にするドープなドローン/アンビエント色の濃厚な怪作『PATTERN OF EXCEL』をリリース。その後、突然改名を宣言し、新たにDEDEKIND CUTの名前でEP「Thot eNhançer」をセルフ・リリース。LEE BANNONと決別したDEDEKIND CUTはエクスペリメンタルなノイズ、ニューエイジ、アンビエントの現代的なアプローチを標榜し、16年に「LAST」、「American Zen」を発表、11月には注目のアルバム『$UCCESSOR』がリリースされる。

 毎年恒例でアイスランド・エア・ウエイブスのレポート。18回目のエアウエイズで、私にとっては4回目の参加。滞在期間は2日と短かったが、中身は濃かった。
 いったい、この国の良いバイブがどこから来るのだろう。アイスランドは、2008年に経済破綻したというが、初めてアイスランドに行った2013年にも、そんな様子はまったく見えなかった。レコード屋に行ったらエスプレッソが出て来るし、バーは夜中の3時でも列が出来ているし、高級レストランにも多くの人がいる。若くして子供を持っている人が多く、町は綺麗で、ホームレスもいない。どう言うこと?
 たしかに、オーロラは日常的に見れるし、ブルーラグーンや、この世の物とは思えない美しい自然が目の当たりに見れるから、観光客もエア・ウエイブスに関わらず多い。レイキャビックの町は小さく、NYで言うとベッドフォードくらいで、端から端まで歩いても1時間ぐらいなので、自転車に乗っている人が多い。町の中心にある、ミュージック・ホールのハーパ周辺の港と景色は、何処を写真撮っても絵になり(ピンク色の空)、歩くのがとても楽しい町である。
 どのようにアイスランドが、経済復興したのかと、地元の人に聞いたところ、やっぱり観光業のお陰だと言う。ただ、この小さな国にとって、クローナの価値が上がり過ぎて、またバブルが弾けるだろうと言う。エアbnbなどで、観光業が調整されず、アイスランド人にとっては家賃はどんどん高騰しているし、クローナがこのまま上がり、上がらないところまで達したら、後は下がるしかないので、政府が次にどんな対策に出るかがキーだと言う。それが資本主義だけど、もし政府が、観光業を調節しはじめ、家賃レートを守れるなら、滅茶苦茶な状態は避けることができるはず、と。とにかく2016年、アイスランドはバブリーな状態にある。因みに、NYから来た身としては、アイスランドは何でも高い。ビールが大体$9、サンドイッチを買ったら$15など。

   

 さて、私のメインの目的は、オフ・べニューと呼ばれる、昼間行われるイベント。日本やアメリカでは見れない、地元のアーティストからツアーバンドまでが、レイキャヴィックのバー、レストラン、洋服屋、洗濯屋、レコード屋、ホテル、銀行など、音楽をプレイできるところなら何処でもライヴをしている。バンドによっては1日3ステージこなし、エアウエイブス期間に10以上のライヴをこなすこともあるし、新しいバンドに出会うのに、こんなに良い機会はない。何となく予定は立てるが、もちろん予定通りにいかない。偶然良いバンドに出会ったり、知り合いに出くわしたり、人が親切なので、心地の良い所にずーっと居てしまったりする。エア・ウエイブスのいい点は、時間にきっちりしているので、何かをミスっても、すぐ予定を立てやすい。

 今回の新しい会場ベスト2は、港近くのbryggjan brugghúsとBar Ananas。どちらも、レストラン・バーで、普通のお客さんもいながら、オープン・スペースでバンドがプレイしてる。bryggjan brugghúsはビストロ風、Bar Ananasは常夏風でトロピカルなサーフ気分が味わえる。ハングアウトも出来、バンドも見れ、ご飯も食べれ、来た誰もが楽しめるようになっているのが、アイスランド風。

 新しいバンドで印象に残ったのは、Skrattar , GANGLY, GKRで、リピートとしてはSamaris, Mammút, Hermigervill, Fufanu, Mr.Sillaが良かった。キー人物がいろんなバンドでプレイしているので、それを追いかけると、だいたい良いバンドに出会える。例えば、SamarisのJofridurは、Samaris以外に、 Pascal Pinon, GANGLY,そしてソロのJFDRをやっていて、どれも彼女の個性で成り立っている。GANGLYはまったく知識がなく、感で見に行ったのですが、見てすぐに彼女がシンガーだと気づいた。何か、引き寄せられる物がある。
 見れなくて残念だったのは、やっぱりビョーク。私はDARLINGリストバンドをもっていたが(列に並ばず入れるVIPリストバンド)、それでも入れず、会場のハーパで雰囲気だけを味わっていた。見れた人は本当にラッキー。アメリカのバンドはNYでも見れるので、ことごとくスキップしたが、Santogold, Warpaint, Frankie cosmosは見たかった。
 2日の滞在だったが、新しいバンド、新しいものごと、上から下まで十分にインスパイアされた。気候がどんどん温暖化して、今年は軽装で行ったのだが、難なく快適に過ごせた。
 アイスランドは本当に、何を食べても美味しいし、人びとは、朝まで普通にパーティしているが、モラルがあり、嫌な目にあったことがない。何処でもクレジットカードが使え、Wi-Fiがあり、英語が通じる。そして、アイスランドは安全、親切。朝6時にバスを待っていると、シリアから来たという男の子と簡単に友だちになったり、バスの乗り場を間違えて待っていたら、ホテルの男の子スタッフが、わざわざ正解のバス停まで連れて行ってくれ、バス会社に電話して、私がミスっていないかを確認してくれ、バスが来たら、わざわざ止めて、そのバスがあってるかどうか確認してくれたうえで「良い旅を!」と、送り出してくれる。これが平均的なアイスランド人。涙が出そうになった(とくにNYにいると)、マジカルなアイスランド体験だった。

 

最後に今回見たバンドのリスト。

Fri 11/4
Just another snake cult @bio Paradis
Samaris @bryggjan brugghús
Mammút @bryggjan brugghús
Kótt grà pje @bryggjan brugghús
SiGRUN @12 tonar
THROWS (UK) @12 tonar
Gruska Babuska @ Bar 12
GKR @ American bar
Dolores Haze (Sweden) @gaukurinn
IDLES (UK) @gaukurinn
Hermigervill @ gamla bíó

Sat 11/5
asdfhg. @ Hlemmur Square
Kaelan Mikla @ Hlemmur Square
Fufanu @ Bar Ananas
Mr.Silla @ NASA
Skrattar @ Gaukurinn
GANGLY @ Gamla Bio
Chinah (DK) @ Gamla Bio

公式サイト
https://icelandairwaves.is/

エアウエイブス・サバイバルガイド
https://grapevine.is/culture/music/airwaves/2016/10/31/iceland-airwaves-survival-guide/?=rcar

Yoko Sawai
11/12/2016

RYOTA OPP(Meda Fury / R&S) - ele-king

ロンドンのツアーに持って行くレコード Best 10

interview with Nicolas Jaar - ele-king

E王
Nicolas Jaar
Sirens

Other People/ビート

Post-PunkAmbientExperimental

Amazon Tower

 ドナルド・トランプの衝撃が全世界を覆っている。もう何がなんだかわからない。ただただ憂鬱である。そんな暗澹たる気分のなか、ニコラス・ジャーから返ってきたインタヴューの原稿を読んだ。メールで質問に答えてくれた彼が、とてもキュートな絵文字を使っていることに、少し救われたような気分になった。以下のインタヴューのなかで彼も触れているが、ポリティカルなこととパーソナルなことは、相互に影響を及ぼし合っている。これほどの出来事があって、「さあ、また明日から頑張りましょう!」と簡単に割り切れるほど、僕は強くない。他の人がどうなのかは知らないけれど。

 オリジナル・アルバムとしては5年ぶりとなるニコラス・ジャーの新作は、前作『Space Is Only Noise』とはだいぶ異なる雰囲気に仕上がった。とはいえ、様々な要素を折衷するスタイルそれ自体は前作から引き継がれている。“Killing Time”や“Leaves”はエクスペリメンタルであり、アンビエントである。“The Governor”や“Three Sides Of Nazareth”にはポスト・パンク的な態度があり、さらに前者にはドラムンベース的なギミックも忍び込まされている。“No”はレゲエを、“History Lesson”はドゥーワップを取り入れているが、ともにラテン・ミュージックの空気が貼り付けられている。このようなコラージュ精神こそがニコラス・ジャーの音楽を特徴づけていると言っていいだろう。多様であること、あるいは多文化的であることの希求。ニコラス・ジャーが移民の子であることを思い出す。

 そういった果敢な音楽的実験とともに、このアルバムからは非常にポリティカルなメッセージを聴き取ることができる。たとえば“Killing Time”では人種や階級の問題が言及され、“Three Sides Of Nazareth”ではチリで起こった虐殺の風景が歌われている。そんな本作を初めて聴いたときに僕は、ニコラス・ジャー自身の過去の作品よりも先に、ある別のアーティストの作品を思い浮かべてしまった。
 今年の春にブライアン・イーノがリリースしたアルバム『The Ship』は、タイタニック号の沈没と第一次世界大戦を参照することで、現在の世界情勢と向き合おうとする作品であった。今回のニコラス・ジャーのアルバムは、音楽性こそ異なれど、テーマの部分で、そしてその物語性において、『The Ship』と通じ合っている作品だと思う。何より、『Sirens』というタイトル。サイレンとはもちろん、「警告」を意味する信号として機能する音のことだが、その語源はギリシア神話に登場する海の怪物である。セイレーンはその歌声で船員を惑わし、船を難破させる。つまりセイレーンとは、歌で人類を混乱させ、困難へと陥れる存在なのである。『The Ship』と『Sirens』という、40歳以上も歳の離れたふたりがそれぞれUKとUSで独自に作り上げた音の結晶が、船や海といったモティーフを介して、まさにいま響き合っている。このふたつのアルバムはそれぞれ、ブレグジットと大統領選挙というふたつの出来事にきれいに対応しているのではないか――少なくとも僕は、そういう風にこのふたつの作品を聴き直した。2016年とはいったいどういう年だったのか――この2作の奇妙な繋がりこそがそれを物語っているような気がしてならない。

 そして、このニコラス・ジャーのアルバムには、「父」というパーソナルなテーマも織り込まれている。今年はビヨンセやフランク・オーシャンなど、ポリティカルであることとパーソナルであることを同時に成立させてみせる名作が相次いでリリースされた。ニコラス・ジャーのこのアルバムもまた、それらの横に並べられるべき作品のひとつである。
 ひとりのリスナーとして、ポリティカルなこととパーソナルなことの響き合いを、どのように聴き取っていけばいいのか。ひとりの生活者として、ポリティカルなこととパーソナルなことの重層的な絡み合いに、どのように折り合いをつけていけばいいのか。それはとても難しい問題で、僕自身もまだ答えを見つけられていない。でも、まさにこのタイミングでこのアルバムを聴き返すことができて、本当によかったと思う。
 返信をありがとう。

 愛をこめて。

 コバ

俺も自分の音楽がポリティカルになるとは想像していなかった。ただ、自分に素直でありたいと思い、自分の中に新たに生じた難しい感情に対応したいと思ったんだ。

ビヨンセの新作や、昨年のケンドリック・ラマーのアルバムは聴いていますか?

ニコラス・ジャー(Nicolas Jaar、以下NJ):聴いてるよ。

かれらのように、一方で音楽として優れた作品を作ることを目指しながら、他方でポリティカルなメッセージを届けようとするスタンスに、共感するところはありますか?

NJ:ふたりとも、ポリティカルなことをパーソナルなことに(そしてその逆もまた同様に)うまく転換させることができる素晴らしいアーティストだと思う。それは素晴らしい技術で、俺もいつか自分の作品でそういうことを成し遂げたいと思う。
 チリでのクーデターの時、軍に虐殺されたチリ人のシンガーソングライター、ビクトル・ハラはこう言っている。「全ての音楽はポリティカルだ。たとえノンポリティカルな音楽であっても」。
 この言葉は本当だと思う。たとえラヴ・ソングでも、文脈や曲が作られた時代によって、猛烈にポリティカルなものになりうる。結局のところ、目を見開いていれば、自分の部屋の中にも、窓の外にも、愛と憎悪があるということがわかるんだ。

このたびリリースされた『Sirens』は非常にポリティカルです。たとえば“Killing Time”では、アフメド・モハメド少年やドイツのメルケル首相の名が登場し、人種や階級、資本主義といった問題について触れられています。あるいは“Three Sides Of Nazareth”では、ピノチェト政権下のチリで起こった虐殺の風景が歌われています。正直、あなたがここまでポリティカルな作品を世に送り出すことになるとは想像していませんでした。あなたが作品にポリティカルなメッセージを込めるのは、おそらく今回が初めてだと思いますが、何かきっかけとなるようなことがあったのでしょうか?

NJ:俺も自分の音楽がポリティカルになるとは想像していなかった。ただ、自分に素直でありたいと思い、自分の中に新たに生じた難しい感情に対応したいと思ったんだ。たとえば『Sirens』以前は、自分の音楽に「怒り」や「苛立ち」を込めるということはしなかった。でも自分が成長するためには、そういった感情を含めていかなければならないということに気づいた。たとえそれがどんな結果になってもね。『Sirens』は俺が成長するために、自分に必要だと感じた「自由」から生まれたアルバムなんだ。

ニューヨークで生まれたあなたにとって、チリとはどのような国なのでしょうか? また、かつての独裁政権下のチリの状況と現在のアメリカの状況に共通点があるとしたら、それは何でしょう?

NJ:現在のサンティアゴには、マイアミやロサンゼルスにすごく似ている場所もある。軍隊はアメリカの資本主義導入に成功したってわけさ。共通点を挙げるのであれば、保守主義が幽霊のようにジワジワと忍び寄ってきて、文化左派が戦いに負けてしまった状態にときおりなっているという点かな。

本作の全体的なムードは前作『Space Is Only Noise』とはだいぶ異なっていますが、様々な音楽的要素を折衷すること、多様であろうとする部分に関しては前作から引き継がれているように感じます。様々なジャンルやスタイルをコラージュしたり混ぜ合わせたりすることは、あなたが音楽を制作する上でどのような意味を持っていますか?

NJ:曲のひとつひとつが小さなストーリーになっていてほしい。俺は、インクの色よりもストーリー・アークの方に注目する方が好きだ。

“The Governor”や“Three Sides Of Nazareth”からはポスト・パンク的な要素が感じられます。スーサイドのようにも聞こえました。先日アラン・ヴェガが亡くなりましたが、彼の音楽からは影響を受けましたか?

NJ:もちろん影響を受けたよ。アラン・ヴェガのエネルギーは今の時代にとてもフィットしていると思う。だから彼が亡くなったことを知ってとても悲しかった。彼は、抵抗音楽における重要な言語と青写真を作り出した人だと思う。

昨年〈Other People〉からリディア・ランチの作品集がリイシューされました。楽曲的な面やアティテュードの面で、彼女から受けた影響があったら教えてください。また、彼女以外にも、『No New York』や〈ZE Records〉など、ノーウェイヴのムーヴメントから受けた影響があったら教えてください。

NJ:リディア・ランチが、ベルリンの壁崩壊後にベルリンでおこなった『Conspiracy Of Women(女性の陰謀)』というスポークン・ワードのパフォーマンス映像を、いつだったか偶然発見したんだ。それに夢中になり、その後何年かはそのパフォーマンス音声を自分のDJセットに入れてプレイしていたよ。
 (昨年)このパフォーマンスの25周年になるということに気づいた俺は、彼女に連絡を取り彼女と会った。彼女はリリースを承諾してくれ、それ以来、俺たちは近しい友人になったんだ。彼女にはすごく影響を受けているよ。俺が、俺自身であることを受け入れられるようになったのも、言わなきゃいけないと思うことを言えるようになったのも、彼女のおかげだ。

“The Governor”からはドラムンベース的な要素も感じられます。あなたの音楽が最初に広く受容されたのは、主にダブステップが普及して以降のダンス・ミュージック・シーンだったと思いますが、90年代のダンス・ミュージックから受けた影響についてお聞かせください。

NJ:俺の中で“The Governor”は、絶対ヘビメタなんだけど! 😂

いくつかの曲ではあなたの「歌」が大きくフィーチャーされています。それは本作がポリティカルであることと関係しているのでしょうか? そもそも、あなたにとって歌またはヴォーカルとは何ですか? 他の楽器やエレクトロニクスと同じものでしょうか?

NJ:最近は、ソングライティングという概念により興味を持つようになった。プロダクションは「ファッション」的な感じがベースになっているけど、ソングライティングはそういう感じから逃れることができると思う。「存在」というものに興味があるんだ。レコーディングに声を入れるのは、そこに命を加えるようなものだと思う。

本作は『Nymphs』と『Pomegranates』の間を埋める作品だそうですが、ということは、本作にも何かのサウンドトラックのような要素、あるいは役割や機能があるのでしょうか? たとえば、本作はいまのアメリカのサウンドトラックなのでしょうか?

NJ:そうかもね!(笑) 今まで、「テクスト」とコンテクスト(=文脈)が欠けていたと思う。『Nymphs』や『Pomegranates』は、その時の俺にとっては閉鎖的すぎると感じたのかもしれない。

前作『Space Is Only Noise』は2011年の2月にリリースされましたが、その直後、日本では大きな地震と原子力発電所の事故がありました。日本の一部のリスナーは、あなたの前作をそのような状況のなかで聴いていました。あなたの作品が、意図せずそのような状況のサウンドトラックとして機能することについてはどう思いますか?

NJ:そのような状況だったとは知らなかった。作品がアーティストの手を離れ、リスナーに届いた時点で、それはリスナーのものになると思う。俺が音楽を作るのは、俺が自分の感情に対応するために必要だからだ。音楽を作っているときだけ、俺は自由で幸せになれる。俺の音楽が、人びとの人生のサウンドトラックになっているのであれば、それがどんな結果であれ、光栄に思う。俺の音楽が人々の感情にとって、何らかの役に立っていれば嬉しい。

“Killing Time”や“Leaves”など、本作にはアンビエントの要素もありますね。あなたは3年前に、ブライアン・イーノの“LUX”をリミックスしています。彼が発明した「アンビエント」というアイデアについてどうお考えですか?

NJ:☁️☁️☁️✨

彼は音楽制作を続けるかたわら、イギリスの労働党党首を支援したり、シリアへの空爆反対のデモに参加したりしています。そうした彼の政治的な態度や行動についてはどうお考えでしょうか? あなた自身もそういった活動をする可能性はありますか?

NJ:政治的な活動はあくまで個人的に、プライベートな時間におこなうようにしている。自分の行動全てをソーシャルメディアで公開することはしたくない。デモに参加するとしたら、市民として参加するのであり、ミュージシャンとしてではない。

イーノの最新作『The Ship』は聴いていますか?

NJ:聴いている。

日本では多くの場合、音楽が政治的であることは歓迎されません。あなたは2年前にDARKSIDEとして来日し、フジロック・フェスティヴァルに出演していますが、今年、そのフェスティヴァルにSEALDsという学生の社会運動団体が出演することが決まったときに、「音楽に政治を持ち込むな!」という議論が巻き起こりました。あなたは、音楽と政治はどのような関係にあると考えていますか? あるいは、音楽が政治的であることとは、どのようなことだとお考えですか?

NJ:音楽は、時代について語ったり、信条に疑問を感じたり、考え方を覆したりするようなものであるべきだと感じる時がある。
 だが、別の時には、音楽は俺たちを癒してくれるもので、ニュースの見出しや過剰なもの、ダークなものから俺たちを逃してくれるべきだと考える。
 それは難しい質問だから、俺自身もまだ答えを見つけていない。
 質問をありがとう。

 愛をこめて。

 ニコ

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