「R」と一致するもの

Various Artists - ele-king

 2009年はダブステップの多様化をさらに強く印象づけられた年だった。2008年に発表したベンガの『Diary Of An Afro Warrior』(Tempa)にはジャジー・ヴァイブやハウスのビートが注がれ、2562の『Aerial』(Tectonic)にはミニマル・テクノのグルーヴが脈打っていた。2009年にはマーティン(Martyn)の『Great Lengths』(3024)やフェルティDLの『Love Is A Liability』(Planet Mu)といったデトロイト系ダブステップもあったし、ジョーカーやジェイミー、グイードといったブリストル新世代によるGファンクとの融合もあった。ハウスへの接近という意味で言うなら、何よりもブリアルの「Moth」(Text)があった。ブリアルの学校の先輩にあたるフォー・テットのレーベルから出されたその真っ黒なヴァイナルは、ガラージ/2ステップから派生したUKのアンダーグラウンド・ミュージックの、地下数100メートルからのダンス回帰のように感じられた(個人的には今年のベスト)。

 ダブステップはここ数年、ずっと好きで聴いているのだけれど、ハウスやテクノやジャングルなどと比較するまでもなく、それが踊りやすい音楽だとは思っていない(DJミックスを聴いていると決してそんなことはないんだけれど......)。レイヴ・カルチャーの発展型でありながら、むしろ孤独を好むようなところがこの音楽からは感じられ、その倒錯した感覚を僕は気に入っている。が、この2年における著しい多様化とハウスやテクノとの接合のなかで、ダブステップもその孤独に背を向けようとしているようにも思える。ハルモニアとイーノの曲のシャックルトン・ミックスの12インチ、やっぱ欲しいでしょう!

 〈ハイパーダブ〉レーベルにとって初めてとなるコンピレーションは、多様化するダブステップを見事に見せているが――いや、多様化というか、正確に言えば、この編集盤の音源はもはやダブステップとは言えないのだけれど、同時にその孤独さも際だたせている。その意味において、奇妙な輝きを放っていると言える。キング・ミダス・サウンド(ザ・バグによるダブ・プロジェクト)の濃い霧に包まれたスモーカーズ・サウンド"Meltdown"で幕を開けるこのCD2枚組、全32曲の地下旅行は、1枚がレーベルの新局面、もう1枚がレーベルのクラシック音源で構成されている。冒険的なのは、もちろん1枚目のほうだ。"Meltdown"が終わると、レーベル主宰者であるコード9のメランコリックなファンクへと続く。それから注目株のひとり、ダークスターによる美しいテクノ・サウンドが聴こえる。

 フライング・ロータスはこの素晴らしいディストピア・サウンドの編集盤に1曲提供している。彼の個性的なビートの余韻が残っているうちに、日本人アーティストによるダークR&B、ブラック・チャウの"Purple Smoke"がはじまる。そして多くのファンが聴きたいであろう、ブリアルのイクスクルーシヴ音源"Fostercare"がはじまる。1枚目のクライマックスだ。この曲を聴いていると、かつてマッシヴ・アタックに期待してきた音楽をいまはクロイドンのこの秘密主義者がやっていることがよくわかる。
 昨年、レーベルから12インチ2枚組を発表しているゾンビーは(今年は〈Ramp〉から奇妙なミニ・アルバムを出している)、出来損ないでがらくたのドラムンベースを披露する。『XLR8R』によれば「たくさんのジョイントとチキン」が彼の日課だそうで、彼のつかみ所のない作品にはその怠惰な感じがよく出ていて面白い。1枚目のCDの最後を飾るのはジョーカーで、パワフルなエレクトロ・ファンクを披露する。

 もう1枚のCDには、コード9の素晴らしい"9 Samurai"や"Ghost Town"、ブリアルの決定的な"South London Boroughs"や"Distant Lights"といったクラシックが収められている。そしてゾンビー、ザ・バグ、ジョーカーといったいま勢いのある連中の曲に混じって、コード9のダブ/レゲエ趣味がところどころで顔をのぞかせる。「1日1本のspliff(意味は調べよ)は魔除けとなる」、手の付けられないスモーカーであるゾンビーの"Spliff Dub"は、そう繰り返して主張する。コード9は大学で教鞭を執るほどのインテリだが、レーベルにはチンピラやオタクも一緒に混じって、この新時代のアンダーグラウンド・サウンドを楽しみ、変化を与えているようだ。

 『ピッチフォーク』はこのアルバムを1992年の〈ワープ〉による『アーティフィシャル・インテリジェンス』に比肩するものだと評しているが、僕も賛同する。思い出して欲しい、あの作品が出たときもみんなが言ったものだ。この音楽では踊れないと。だが、それは確実に時代を切り拓いたのである。

Volcano Choir - ele-king

 渋谷のワルシャワは好きなレコード店のひとつで、店にカフェ・コーナーが設置されて以来、アルコール目当てで立ち寄るようにもなってしまった。去る10月、店内に「傑作です」のキャプションとともに壁に並んであったこれをじっと見て、視聴して、悩んだ挙げ句に買うことにした。実は僕は、その時点でボン・アイヴァーさえもまだ聴いていなかった。

 およそ1年前、『ガーディアン』や『オブザーヴァー』はボン・アイヴァーの『For Emma, Forever Ago』を最大限に褒め称えた。「2008年の最高のレコードはアメリカの僻地の闇のなかの人影によって作られた」、『オブザーヴァー』の記者はそう書いた。もっともその背後には「この年には2年前の『Whatever People Say I Am...』のような、決定的なアルバムが1枚もなかった」という失意もあった(2008年12月7日)。『ガーディアン』にいたっては2008年は「ゴミだめインディの死が宣告された年」であり、「ギター・レコードは年間ベストのどこにもない」と記したほどだった(2008年12月12日)。そしてこのふたつのメディアは、TV・オン・ザ・レディオとボン・アイヴァーを持ち上げたのである。「コールドプレイがブライアン・イーノとそのバカげた一式を借りて急進派を急いでいる」ような時代において、27才のジャスティン・ヴァーノン(ボン・アイヴァー)が2006年の冬のあいだ父親の山小屋で録音した音楽は、実に感動的な愛の音楽だったと、そういう話だ。

 そして、これは僕の悪い癖で、たとえばフリート・フォクシーズのような、汚れを知らないような音楽を聴いているとどうにも落ち着かなくなるという事情もあって、僕は欧米を代表する大メディアの推薦をスルーしていたのである。そんな人間がどうして・ヴァーノンを擁するヴォルケーノ・クワイア(火山の聖歌隊)なるバンドのアルバムに惹かれたのかと言えば、ワルシャワの「傑作です」の言葉と、そしてこのバンドの前身にペレがあること――ギタリストのクリス・ローズナウとドラマーのジョン・ミュエラー――が興味深く思えたからだった。ペレは、90年代から00年代初頭にかけて活動していたバンドで、わかりやすく言えばポスト・ロック的な実験(エレクトロニクス、ジャズ、クラウトロック等々)を好んだバンドだ。好き嫌いはともかく、その工夫された音はモダンだった。同じように禁欲的だが、ボン・アイヴァーの素朴さとはいわば対極にある。
 そんなわけで、ヴォルケーノ・クワイアのファースト・アルバムを買った。1曲目のギターのイントロがその決め手となった。アルバムには美しい調和があるが、それはヴァーノンの、ボン・アイヴァーで見せたファルセット・ヴォイスとアコースティック・ギターのコード・ストロークの組み合わせとは違った類のもの、控えめなエレクトロニクスと実験的なポップスとの調和だ。

 2曲目の"Seeplymouth"はバンドの抒情性が広がり、劇的な高まりが爆発する。その激しさは、まさにUSオルタナティヴの真骨頂なのだろう。実験色の強い曲――アンビエント・テイストを展開する"Dote"、ギターのループとコーラスの絡み方において『ピッチフォーク』がアニマル・コレクティヴの『Sung Tongs』との近似性を指摘した"And Gather"、プリペアード・ピアノめいたトラックとロバート・ワイアットめいたソウルがねじくれていく"Mbira In The Morass"なども面白い。

 このアルバムを聴いて、そして遅ればせながらヴァーノンのデビュー作であるボン・アイヴァーの『For Emma, Forever Ago』を聴いた。結論を言えば、ヴォルケーノ・クワイアのほうが気に入っているし、こちらのほうに可能性を感じている。

CHART by Electro-Violence Distribution 2009.12 - ele-king

Shop Chart


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SYTRI-X

SYTRI-X METALIKEA SYTRI-X / フランス / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
FREE STYLE LISTENサブのKICK FOR KILLリリースで話題のニューカマー、遂に自身のレーベル、その名もSYTRI-Xをドロップ。トライブの超絶リミックス・スキル、ハードコアでいてファニーなマッシュアップ・サイドをお楽しみください。第一弾とあって気合が入りすぎたのか、メタリKにGバスター、ジョニーBとありえないヤバさで聴かせます。

2

RETRIGGER & SKEETA

RETRIGGER & SKEETA CYNICISM NOIZETEK / イギリス / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
チェコのNOIZE PUNISHMENT、ポーランドのSLEPCYとともにブレイクコア全盛期に極悪の名を欲しいままにしたブラジリアンRETRIGGER。ここ数年は大人になったのか、はたまた、狡猾になっただけなのか、なんとも意外な展開を見せている。ブレイクコア版セニュール・ココナッツとも言える珍妙さ。あちらはラテンだけど、こちらはやたらサーフでモンドです。

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SPIRAL TRIBE

SPIRAL TRIBE THIS IS TRANCE NETWORK REPRESS / フランス / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
NETWORK23レーベルの名作や周辺アーチストの激レア未発表曲までをも発掘、紹介するNETWORK REPRESSも早くも23作目。記念すべき今回は'94年FORCE INC.からリリースの4曲入りアルバムTHIS IS TRANCEよりのカット。中古市場で状態のよいものなら100ユーロは下らない、お宝アイテムが最高の音質で聴けます。

4

TLB / SPARKS / BILL X / VIKO & LABO14

TLB / SPARKS / BILL X / VIKO & LABO14 ARCHITEK 17 フランス / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
フリースタイルリッスンのショーケース的サブレーベル、ARCHITEK最新作!トップのTLBから、ラストLABO14まで、ラガものからシンセでハメまくりのハードコアトランス、キック命のハードダンスまで、一気に聴かせます、使えます!今からTRIBE聴かれる方は、この辺からいかが?

5

KEJA / OZYSTIK / KAN10 / YUKAI

KEJA / OZYSTIK / KAN10 / YUKAI 3672 1 06 3672 1 / FRANCE / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
エレクトロ(ハウス)とは対極に位置する仏アングラTRIBE/HARDTEKのシーンにあっても異色な存在のMACKITEK。時にブレイクコアやスピードコアさえも凌駕するテクノパンクスとも呼ばれるその過激さ、カオス。そんな彼らがSPIRAL TRIBE他先達に敬意を表し、ダンスミュージックとしてのTEKNOを突きつめるべく立ち上げたサブレーベル最新作。

6

LA FOUDRE

LA FOUDRE LE CHAOS ORDINAIRE NO-TEK / FRANCE / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
10数年前ここ日本でも一部の好きものから絶賛されていた元祖EXPERIMENTALハードコアテクノ・レーベルEXPLORE TOIの残党がしれーっと復活です。SPEEDCOREをよくわからない方もいるかもしれませんがガバ臭い方ではなくノイズアヴァンギャルドでハナタラシまくりのアレです。極悪ハードコアギャルMOUSEの大名曲のリミックスも収録。限定300枚。

7

BIOCHIP C.

BIOCHIP C. ANTIMATTER EP OFF BITS / FRANCE / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
アシッドと言えばフランスです。ご存じない方も多いかもですが、DJ ESPの名曲、未発曲のみを発掘リリースするレーベルがあったりと、かなりマニアック。今回紹介するのはハードコアPSYCHIK GENOCIDEを擁するAUDIO GENICによるACID専門レーベル、OFF BITS最新作。ハードコア(テクノ)大御所THE SPEED FREAKことバイオチップCがフレンチコアのグルーヴ感や攻撃性を損なうことなく、暴れまくってます。

8

HIGH TONE

HIGH TONE ACID DUB NUCLEK JARRING EFFECTS / FRANCE / 10月29日 »COMMENT GET MUSIC
インドに和ものに、燃えよドラゴンって無国籍にもほどがあるメロディー、サンプリングセンスにテクノ、ジャングル、IDM的要素を突っ込みさらにACIDって・・・。マジDUBバンドHIGH TONEによる地位も名誉もかなぐり捨てた2002年リリースの名作、迷作?リプレスです。

9

THE ARCHANGEL & KGB KID

THE ARCHANGEL & KGB KID WATERWINGS EP CELESTIAL COSPIRACY / CANADA / 11月14日 »COMMENT GET MUSIC
スクエアプッシャー、リチャード・ジェイムス、マイクパラディナスらのIDMカットアップスキルとUKジャングル(オールドスクール)のハイブリッド音でその後快進撃を続けることとなるUS/CANADAラガ・ジャングル。'93年リリースの大名作デッドストック少量入荷です。

10

AARON SPECTRE

AARON SPECTRE AMEN,PUNK EP OMEKO / JAPAN / 12月10日 »COMMENT GET MUSIC
2005年リリース。全世界のブレイクコアチャート一位を獲得した傑作中の傑作。仏PEACEOFFレーベルオーナーのフランク(ROTATOR)も来店時にどっさり買い付けていきました。今やオークションでも目にすることすら稀な一枚です。デッドストック数枚のみ。
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