「レイヴ・カルチャー」と一致するもの

Autechre - ele-king

 ダブステップのレーベルとして知られる〈ホットフラッシュ〉を運営するスキューバにとっての最大の影響がオウテカの『インキュナブラ』『アンバー』だそうだ。たしかに初期のこの2枚にあるものと言えばダンス・カルチャー(レイヴ・カルチャー、いや、セカンド・サマー・オブ・ラヴと言ってもいい)からの影響......というかその時代の甘い夢のような感覚だ。『インキュナブラ』には明らかにアシッド・ハウスの脳天気なトリップ感が漂っているし、いまとなっては「あのオウテカでさえもこの時代は......」といったところだろう。その1年後の、ダンスの俗的な熱狂から離れて、そしてIDMというサブジャンルを開拓したと言われる『アンバー』にいたっては満場一致で初期のマースターピースである。

 『アンバー』が面白いのは、"Nil"のようなぞくっとするほど美しいアンビエントがある一方で、おそらく彼らのもうひとつのルーツであると思われるインダストリアル・サウンドをよりアシッディに変換した"Foil"のような曲があることだ。そういう意味で引き裂かれているのだが、"Foil"をアルバムの1曲目に持ってきたように、それに続く『トライ・レペテー』以降のオウテカは"Foil"の路線、要するにアシッド・ハウス的な夢からどんどん醒めて、彼らのインダストリアルな感性を急進的に磨いてきたそのときどきの結実だと言えるだろう。

 まあ、それでもまだ『トライ・レペテー』には甘い記憶がある。が、シロー・ザ・グッドマンやコーマが影響を受けたという『キアスティック・スライド』にしても、あるいは『LP5』にしても......、いやいやそれを言ったら『コーンフィールド』以降にいたっては......、まあとにかくオウテカのリズム・トラックからはなかばサディスティックなまでのインダストリアルな感性が聴こえてくる。アレックス・ルタフォードが自身のLSDトリップをヒントに作ったという『ガンツ・グラフ』の映像、あるいはオウテカの作品を飾る一連の素晴らしいデザイン――例えばフランク・ロイド・ライトの建築を引用した「エンヴェイン」、フェティッシュな人工美をデザインした『コーンフィールド』や『ドラフト7.30』等々のアートワークからもそれは充分にうかがい知ることができる。こうした人工美への病的とも思えるこだわりこそ彼らがマントロニクスの音楽から聴き取ったものなのだろう。同じエレクトロ・ヒップホップをルーツに持ちながらもそこがプラッドらとは大きな違いである。そしてあたかも音楽表現における精神主義に逆らうように、工業都市マンチェスターからやってきたふたりの頑固者は自分らの美学を曲げることなく、しかもリスナーの耳を離さなかったのである。

 が、そんな理解のあるリスナーからも、さすがに『アンティルテッド』(2005年)に対しては「冷たすぎる」という拒否反応があった、と彼らは言う。冷たさはオウテカの魅力のひとつではあるが、彼らはやり過ぎたのかもしれない......先日『SNOOZER』誌で取材したときにロブ・ブラウンが語ったのは、『アンティルテッド』ほどファンの好き嫌いを分けた作品はなかったということだった。ブラウンは、しかし『クオリスタス』(2008年)によってそれを覆したと言うが、本当にそれができたのは本作『オーヴァーステップス』である。

 『オーヴァーステップス』はディテールにおいてより複雑である――とふたりが話すように、このアルバムは面白いように彼らの複雑性を楽しめる。いわゆる"non music"と呼ばれるものの最新型であろう。これを聴いたあとでは『LP5』や『ep7』がポップに思えるほどだ。

 僕がオウテカのアートワークのなかでもっとも気に入っているのは『アンバー』だ。彼らの作品中で唯一、自然の景色をジャケットにあしらっているアートワークだが、しかしそれは......砂丘なのだ。デザインを手掛けたデザイナーズ・リパブリックのセンスを褒めるべきなのだろうけれど、あの写真の、自然が自然ではないような際どさを醸し出している図像はオウテカの音楽とたしかに重なる。そうした絶妙な不確定さが『オーヴァーステップス』にはある。音像の細部に変化があり、つかみどころがなく、下手したら無人島に置き去りにされたような悪夢を味わうかもしれないけれど、それでもこの作品はいままで以上に耳を楽しませる。また、嬉しいのは、このところ続いていた過剰な激しさの代わりに穏やかで美しい瞬間が聴けることだ。『アンバー』の頃のような美を聴くことさえできる。アートワークも素晴らしい。

 話を冒頭に戻そう。オウテカの徹底的に無機質なアンビエンスはダブステップの"ダークの芸術"にも通じる。スキューバは、「しかしいまのオウテカは聴けたものじゃない」と話しているけれど、『オーヴァーステップス』を聴いたら考えを変えて、納得するかもしれない。『アンバー』が15年かけて凄みを増し、何か別のモノに化けてしまったということに。

The Irrepressibles - ele-king

 10年前に(紙の)エレキングで追悼文を書いたビリー・マッケンジー(アソシエイツ)はその後も発掘音源がぽつぽつとリリースされ、なかではクラブ・トラックばかりを集めた『オーフターマティック』(04)は仕事から離れたいときにはよく聴いていた。イエロと組んだ"リズム・ディヴァイン"は歌詞が丸ごと差し替えられた"ノーマ・ジーン"に、パスカル・ゲイブリエル(元ボム・ザ・ベース)のプロデュースによる"サワー・ジュエル"やユーリズミックスのカヴァー(ポール・ヘイグによるプロデュース)など、聴いたことのない曲も多く収録され、壮大極まりないルームとのトランス・ページェント"アナコスタ・ベイ"はフルで採録。バリー・アダムスンのプロデュースによる"アチーヴド・イン・ザ・ヴァレー・オブ・ドールズ"や元ラグジュリアのノコによるアポロ440がプロデュースした"ペイン・イン・エニー・ランゲージ"などマガジン周辺とのセッションが2曲も聴けちゃうし、ピーター・アッシュワースによるボツ写真のようなカットもファンにはたまりません(B.E.F.やスティフン・エマーなど、レイヴ・カルチャー以前のものはナシ)。生前の作品としてリリースされた他のアルバムよりも聴き応えのあるところは少々、複雑だったりもするけれど。

 ......そこに送られてきたジ・イレプレッシブルズ。インフォメーションだのなんだのは読まずにいきなりサンプル盤を聴き始める僕は「えッ」と驚いた。声がまるでビリー・マッケンジーだし、歌い方もサウンドもそっくりで、プレス・シートにあるように、なるほどスコット・ウォーカーを参考にしてるというのはわかるものの、それにしても......やはりビリー・マッケンジーにしか聴こえない。たしかにデヴィッド・ボウイやケイト・ブッシュと比較されることが多いというのも頷ける。しかし、僕にとっては、これはビリー・マッケンジーのそっくりさんである。その陰を払拭して聴くことは、僕には一生不可能だろう。時々、死んだ妻に酷似した女性を見かけて、内面はまったく違うのに、また再婚してどうの......というドラマがあったりするけれど、いきなりその主人公にされたような気分である。妙だ。延々と妙な気分が続いている。何度、聴いてもその気持ちに変化はない。そして、その気分をたしかめるためにまた何度も何度も聴いてしまう。

 実際には10人組でバロック・オペラを基調とした現代音楽のグループだと資料には書いてある。ビリー・ホリデイがパンク・バンドで歌うという設定ではじまったニュー・ロマンティクスの変り種だったアソシエイツとはどこも重なるところがない。アントニー&ザ・ジョンソンズとも比較されることが多いらしく、そうだよなー、いまだったらそうなんだろうなーとも思うものの、頭がちっとも現在形の音楽シーンには染まってくれない。この人たちには悪いけれど、アソシエイツのファンと「どーなの、コレ?」とかいう会話がしたい(せっかく7年間の活動を経てメジャー・デビューに漕ぎ着けたというのに......)。ビリー・マッケンジーに大きな影響を受けたといっていたビヨークは、そして、どう思うんだろうか。「ビリー・マッケンジーは本当に空虚だ」と歌っていたモリッシーは。あー、また、いま、高音がそっくりに張り上げられた......。

Ninjasonik - ele-king

 昼間はフランス大使館で枯山水サラウンディング(=アンビエント・ミュージック)、夜は品川プリンスでフラミンゴス(=ドゥー・ワップ)、そして、深夜はディプロのDJだー。遊びっぱなしー。

 3時という深い時間帯にもかかわらずディプロの前も後もフロアはぎっしりで、例によって実に踊りにくい。前半のハイライトはいまだに"バッキー・ダン・ガン"。マイクで煽りまくるディプロが背広を着ていて、それこそバッキー木村に見えてくる(ウソ、"ナイト・オブ・ファイアー"とかかけてないし)。セカンド・サマー・オブ・ラヴはダンス・ミュージックからヴォーカルが消えていく過程だったけれど、それもニュー・レイヴといわれはじめた辺りからMCが入る曲が増えはじめ、その夜もうるさいほどMCのオン・パレード。そうでなければディプロが隙あらばとマイクを握る。むしろこの雰囲気はセカンド~直前に近く、マッドチェスターがレイヴ・カルチャーを広めたと信じて疑わない方々には申し訳ないけれど、イギリスのロック・ミュージックがビート・フリークと化していく直接の要因はゴー・ゴーや遅くともデフ・ジャム・ショックがその引き金だったことを思い出す。エイジ・オブ・チャンスやポップ・ウイル・イート・イットセルフ、それにジーザス&メリー・チェインからワールド・ドミネイション・インタープライジィズに至るまで、ロックがダンス・ビートと出合った時のダイナミズムは88年にはほぼ出尽くしていた。

 その当時のインディ・ロックーダンス・クロスオーヴァーが持っていたアグレッシヴなムードを想起させるだけでなく、ディプロとスウィッチのメイジャー・レイザーが放った最大のヒット・シングル"ポン・ド・フロアー"にリミックスで起用されていた新人MCのデビュー・ミニ・アルバムがマリアージュ(!)から。フレイミン・ホッツからの初期リリースも採録され、エレクトロ・ゲットー・スタイルの猥雑なヒップホップが連打されたあげく、ラストは「誰かが妊娠する!」と繰り返しながら歌って踊るヒップ・ハウス。正直、どうなの、この終わり方は......と思いますが、デフ・ジャム以前とバイリ・ファンキ以降をつなぐセンスに揺るぎはなく、マントロニクスやマン・パリッシュの系譜に置いても、まー、許されるでしょう。マッシヴ・アタックがサンプリングしまくっていた"ゲット・ステューピッド"あたりからはホントに直結してる感じ(つーか、久しぶりに"ゲット・ステューピッド"を聴いたら、こっちがオリジナルなのにマッシュ・アップにしか聴こえなくなっているという......)。

 ネプチューンズの高速回転から真面目にサウスをやろうとしている(?)曲も。そして、とくに楽しいのが、やはりメイジャー・レイザーのプロデュースによる"ホールド・ザ・ライン"。使いまわしのトラックだろうけど、それで、この破壊力は大したものです。ディプロ帝国はまだ広がり続けている......

intervew with FURUKAWA MIKI - ele-king

青森からやって来て、周囲からも浮いていて、疎外感や孤独感があったんです。交わりたくても交われなかったんです。その感覚がずーっとあるんです。

フルカワミキ / Very
フルカワミキ / Very

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 この取材の興味の矛先はこうだ。電気グルーヴやボアダムス、あるいはロヴォ等々に続くようにして、90年代のレイヴ・カルチャーにインスパイアされたスーパーカーというポップ・ロック・バンドのメンバーだった人物の"現在"について。そんな観点で彼女の3枚目のアルバム『Very』を聴いていると、大雑把に言って、彼女がまだあの場所にいるように思える。ドリーミーでサイケデリックな彼方の、いまだ"ストロボライツ"が発光するあの場所に――。

久しぶりですね。

はい。

最後に会ったのが『ハイヴィジョン』の取材のときじゃないのかな?

へー、そんなになりますか~。

たぶん。

そうですよね。

それで......久しぶりなので、最初に大きな質問させてもらいますけど、このアルバムにとっての成功とはなんでしょう?

んー......、聴いてもらえること、無視されないこと......ですね。

いままでだって無視されてないじゃない(笑)?

いや、でも、ソロになってからは......。フルカワミキがこういうことをやる人なんだっていうことをわかってもらいたいというか。

スーパーカー解散後、ソロになって自分のアイデンティティに関してどう考えました?

考え込むほどじゃなかった。自分の持っている環境や人間関係があったし、それを最大限に活かせればいいと思っていたし。ただ、ポップであることは考えてますけどね。

ポップというのもいま相対化されているフシがありますけどね。インディで30万枚売る人もいれば、メジャーで3千枚も売れない人もいるし。

そうなってますよね。ただ、知らない人に届けたいというのはあるかな。

ポップという言葉をどう定義する?

街を歩いていて耳に入ってくる音楽......。

渋谷を歩いていると、聴きたくいもない音楽がばかでかい音で流れたりして、あれ、うざいって思わない?

思います。ただ、あのなかに自分の好きなモノを混ぜたいとも思うんです。

どのくらいの枚数は売れたいっていうのはある?

んー。

とりあえず10万は超えたいとか(笑)。

いやー(笑)。ここ数年、CDの売り上げが下がっているじゃないですか......、枚数はね......、正直わからない。

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過去の2枚の経験が、今回のアルバムにどのように反映されているんですか?

打ち込みと生音を混ぜて、もっと賑やかにしたかったというか、手法にこだわらないほうが自分には合っているのかなと。

自分の音楽にジャンル名を付けるとしたら何?

ジャンル(笑)! 

Jポップと呼ばれることに違和感はない?

Jポップと呼ばれるとネガティヴなイメージがあるんだけど、もう、そのあたりもどうでもいいのかなって(笑)。

では、レディオヘッドとエグザイルとでは、自分がエグザイルの側でも構わない?

好きなのはレディオヘッド(笑)。だけど、JポップにはJポップの面白さはあると思うし。まあ、例えば戦略とか。

戦略?

プロモーションの仕方とか。

そこは僕が疎いところで、僕にJポップの面白さについて教えてくださいよ。

それは私もね~! まあ、ネットを見たりして知っている程度で、私もあんまりうまくやれているほうでないので。ただJポップって、すでに日本の文化として成立しているんじゃないですか。

要するに「歌謡曲の良さも認めなければならない」と。

まあ(笑)。嫌いな曲もいっぱいあるんですけど、でもまあ、それを受け入れなきゃならないというか。

なるほど~。質問を変えますね。詞と言うよりも音の人ですよね。

そうですね。曲は完全に音から作っている。歌詞はいちばん最後。

新作『Very』を聴いて"ストロボライツ"や『ハイヴィジョン』時代のスーパーカーを思い出したんですけど、意識した?

とくに意識してはいないけど、たぶんあのやり方が身になっているんです。ちゃんと受け継いでいるというか、それが当たり前になっている。ふだん聴いている好きな音楽も空間がある音楽で......、音と言葉のあいだにちゃんと隙間があるというか。

1曲目から3曲目まで、"ストロボライツ"だなーと思うんだよね。

そうですね。

いや、5~6曲あたりもそうだね。"Make Up"から"New Days "、"Come Now "とか。エレクトロニック・ダンス・ミュージックをふくらませたサウンドというか......。

打ち込みという意味では、そうかもしれないですね。

ざっくり言えば、トランシーなテクノって感じでしょ。それってまさに"ストロボライツ"の発展型だと思うし。

たしかに"ストロボライツ"は私を思い出すときの代表的な曲なんだと思います。声の感じとか、イメージとか。それはよく人から言われる。

あー、やっぱ多くの人がフルカワミキといえば"ストロボライツ"である、と言うんだ?

はい。私のリード・ヴォーカルの曲ではあれがもっとも有名な曲なんでしょうね。それはよくわかるんです。それに、打ち込みで私が歌うと、やっぱああなってしまうんでしょうね。キーだったり、歌い方だったり。

ああいう、レイヴ・カルチャーにインスパイアされた曲にいまでも愛着があるということなんですよね?

そうですね。

すごくよく憶えているんだよね。"ストロボライツ"の頃に取材して、ナカコーがレイヴ・カルチャーにものすごく真っ直ぐに入り込んでいて、それがヒシヒシと伝わってくるようなね(笑)。訊いているほうが恐くなるような鬼気迫るインタヴューで(笑)。

ハハハハ。

ただ、スーパーカーがレイヴ・カルチャーにハマっていた頃って、僕はもうあの文化にわりと飽きていた時期でもあったんだよね。

あ、でもね、スーパーカーがもっともレイヴ・カルチャーにハマっていたのは『フューチュラマ』のときで、『ハイヴィジョン』のときはもう飽きていたんですよ。じょじょに行かなくなってきた頃に"ストロボライツ"で、その後に『ハイヴィジョン』なんです。『ハイヴィジョン』はレイヴ・カルチャーというよりも『キッドA』とかプライマル・スクリームとか......。

『キッドA』の作風はずいぶん陰鬱じゃない。

影響受けたのは手法的なところですよね。ロック・バンドがコンピュータを取り入れる手法を用いたというところ。それを自分たちでやったのが『ハイヴィジョン』ですね。

それでいったら『Very』もその延長にありますよね?

私は作曲するとき鍵盤で作るので、あるいは「あ、この音を使いたいな」というところから入っていくので、だから打ち込みのやり方のほうがやりやすいとも言えるんです。

"ストロボライツ"が良い曲か悪い曲か、好きか嫌いか、そういったことは抜きにして、あの曲がものすごーく切実に作られているなと当時僕は思ったんです。「この人たちは本気そういう風に考えているんだ」って。

デビューの頃に青森からやって来て、とても「イエー!」っていう感じじゃなかった。なんか周囲からも浮いていて、すごく疎外感や孤独感があったんです。交わりたくても交われなかったんです。その感覚がずーっとあるんです。寂しがり屋なんですね(笑)。だから音楽でなんとか前向きなものを出すんですけど、家に帰るとまた元に戻っているというか。だからなのか、4つうちの曲で踊って「わーっ」となるのがすごく楽しかったし、踊るのも大好きだし。それを表現したかったというのもあったんですよね。

いまでも踊りに行く?

はい。回数は減ったけど。いまでもクラブに行きますよ。

ファースト・アルバムの頃はムードマンにリミックス頼んでいたもんね。

"コーヒー&シンギン・ガール!!!"ですね。

そうそう、あれはフルカワミキのクラブ・ミュージックへの愛情がとてもよく出ていた曲だったよね。

そうですね。でも、さすがにもう山には行かないですけどね。

山(笑)。ハハハハ、それはもう10年以上前の話でしょ。

はい、18、19、20のあたり。

フルカワミキをサポートしている人っていうのは、ナカコーはもちろんのこと、他には誰がいるの?

ドラマーの沼沢(尚)さんとベースの那須野(満)さん。那須野(満 )さんは灰野(敬二)さんのバックで弾いている人。

すごいメンバーだね!

那須野(満 )さんは1枚目からずっとやってくれています。イタリアン・プログレの話とかされるんですよ(笑)。

ハハハハ。いいな~。レーベル・メイトである電気グルーヴについては?

電気グルーヴの作品をがっつり聴いたってことがないんです。卓球さんのソロであったり、まりんさんのソロであったり......『ラヴビート』がすごく好きだったから。

まりんさんはスーパーカー時代から一緒にやってるものね。でも彼はもう何十年も出してないじゃないですか......いや、何十年ってことはないか(笑)。

こないだ久しぶりにライヴやって、音がすごかったですよ。映像もあって、視覚と聴覚と両方すごかった。

卓球さんのやっていることは?

踊らすなーと(笑)。

ダンス・ミュージックでは好きな人って誰になるの?

ふだんDJやっているときによくかけるのが、マシン・ドント・ケア。

何それ?

知りません? けっこう有名ですよ。DJでかけるとやたら盛りあがりますよ。

へー、DJもやっているんだね。

はい。

ほかにどのあたりをかけるの?

ザ・フィールドとか。

ああ、ザ・フィールドね、それは僕も何枚か持ってる。言われてみれば『Very』の音に近いよね。

それとクラーク、あとはボーイズ・ノイズとか。

幅が広いね~。

「この人悪そうだなー」っていう音が入ってくるのが好きだったんです(笑)。

なるほど(笑)。どういうクラブでまわしているの?

バッファロー・ドーターのイヴェントでまわしたのが最初だったんです。

そういえば、昨年、曽我部恵一のイヴェントにも出ていたよね。

それがぜんぜん受けなくて(笑)。

ハハハハ。

「この人、ホントにDJやるの?」みたいな、珍獣を見るような感じで見られて(笑)。ああいうところでテクノやエレクトロはダメですね。

それはそうだよ(笑)。

クラブでは青山の〈ルバノン〉、渋谷の〈エイジア〉とか、京都の〈ワールド〉とか......。

本格的にやってんだね。

練習しなきゃ(笑)。

いちばん受けたのは?

京都。観察される感じじゃなかったし。あとは〈エイジア〉も良かったな。お立ち台に女の人が上がってきて(笑)。

へー、盛りあがったんだね。DJって前からやりたかったの?

けっこう誘われることが多かったんです。で、2枚目のあとに音楽活動の中断期間があって、音楽の現場と疎遠になるのもイヤだったので、だったらDJをやろうと。音楽をかけることで自分も音楽を体感できるんで。

"ストロボライツ"の頃とは違った意味でダンス・カルチャーと関係しているんだね。

そうですね。

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そうか......、それでも僕がもし今回のアルバムのプロデューサーだったら、1曲目は"Bridge To Heaven"にしたな。

ハハハハ!

いちばんメランコリックな良い曲だよね。で、2曲目は"Amore"。

ハハハハ、それは野田さんの好みでしょ。

でも言いたいことわかるでしょ。ぜんぜん違って聴こえると思わない?

まあ、そうかも。

"Amore"は、ソニック・ユースかと思ったけどね(笑)。

そうですか~?

ソニック・ユースみたいで格好いいじゃん。そういう曲は後半に出てくる。で、しかし、1曲目の"I'm On Earth"から"サイハテ"までは"ストロボライツ"路線なんだよね。

"サイハテ"を作った(小林)オニキス君が"ストロボライツ"を聴いていてくれて......。ボーカロイド使って『ニコニコ動画』ですごく面白いことをやっている人がいて、それでコンタクトを取ったときに、そういう話になって。

どういう方なんですか?

一般の方です。

家で打ち込みをしている方なんですか?

はい。イラストレーターやグラフィックをやっていたらしいんですけど。で、ボーカロイドではなくて自分で"サイハテ"を歌ってみて......。

......なるほど。

ボーカロイドを通じて私を知った人もいるだろうし、ボーカロイドも『ニコニコ動画』も私はひとつの文化だと思っているし、だから"サイハテ"のリミックスをテイ(トウワ)さんに頼んだのも、ボーカロイドしか知らない人でもテイさんだったらどこか引っかかりがあるだろうと。

なるほど。

もともとは一般の人が作った曲なんです。それを私がオケを作り直して、さらにテイさんに手を加えてもらったということです(笑)。

ネットで誰かが作った曲をカヴァーしたってことなんですね。なるほど。ところで、アルバム全体について言うと、ものすごく前向きな印象を持ったんですよ。ふだん僕が聴いている音楽がゼロだとしたら1000ぐらい前向きですよ。

ハハハハ!

「何でこの人はこの人はこんなに前向きなんだろう?」って。僕にはありえないから、それは(笑)。

前向きというよりは賑やかな感じにしたかったんです。皮肉や暗いことは敢えて減らした。

これほど社会と関わりを持たない音楽も珍しいなと思ったんです。

ハハハハ! そうですね!

それは決めてる?

2枚目はけっこう皮肉が入ってるんだけど......。

だって......、2曲目が"金魚"だよ(笑)。

それはもう、歌舞伎町のお姉たちに踊ってもらいたくて(笑)。

そういうことだったのか!

ハハハハ。まあ、暗いことはいま敢えて言わない、それは意識した。

いやもうね、"New Days "とか、「なんでここまで前向きになれんだろう?」って(笑)。羨ましいよ、ホントに。

ハハハハ。まあ、移籍第一弾だし(笑)!

そこは意識する?

する。

僕は最後の"Harmony"ぐらいのダウナーな感じがちょうどいいな。アルバムの前半がアッパーなんだよね。後半はいろんなことやっているし、また違った展開がある。ちなみに『Very』ってタイトルは?

「際だたせる」っていう意味で。「とても」って、良いときも悪いときも、「とても」って言葉があるといいじゃないですか、そう、ただの「thank you」よりも「thank you very much」のほうがいいし、その「very」、つまり「とても」ということを意識しました。

実際のフルカワミキ自身のキャラはどうなんですか?

完全にネクラです(笑)。だからそれを出しても仕方がない(笑)。

写実的というか、リアリティのある表現っていうのはあんま好きじゃないでしょ? ヒップホップとかさ、曽我部恵一とかさ。

いや、好きですよ。ただ、その人がどういう生活をしいているのかってところまで歌で聴きたいとは思わない。やっぱ気になるのは音なんですよ。音から内容に入って来る。

やっぱザ・フィールドみたいなファンタジーのほうがしっくりくる。

はい。

それは『Very』を聴いているとよくわかるよ。ちなみにスーパーカー時代でいちばん好きなアルバムは何ですか?

『ハイヴィジョン』。もう1枚選ぶなら『アンサー』かな。

いちばん売れたのは?

『ハイヴィジョン』......、それか『スリーアウトチェンジ』。

『ジャンプ・アップ』は?

あれはダメだった(笑)。

僕はあれが好きだったけどなー(笑)。

あれはね、自分たちの精神状態も良くなかったんですよ。

『アンサー』が好きな理由は?

もう抜けてるっていうか(笑)。

じゃあ、後期のほうが好きなんだね。

やっぱ初期は恥ずかしい......聴けるんですけど、やっぱ若かったし。

『スリーアウトチェンジ』の頃は何歳だっけ?

18です。

高校生だもんね。

レコーディング中は17歳だったし。

ちなみにフルカワミキのルーツって何ですか?

やることがなかったからバンドやったようなもので......、気の利いたCD屋さんもなかったし、すごく退屈していたし、いまみたいにコミュニケーション・ツールもそんななかったし。楽器屋さんの張り紙で人と知り合うしかなかったんですよ。それでバンドをはじめたようなもので。

ルーツと呼べるほどの音楽体験がなかったんだね。

バンドはじめてから、いろんなものをいっぺんに聴いたから。とくに最初はUSインディをいっぱい聴きましたよ。

バンドのメンバー募集は誰が貼ったの?

私。

ホントにそうなんだね。

「全パート募集」って(笑)。で、足りない楽器を私がやろうと。もう捨て身ですよ。そうしたら彼ら(後のスーパーカーのメンバー)が集まってきた。で、結局私がベースをやることになって......ベースって、太った人がやっているイメージだったんだけど。

ないない、そんなイメージないよ(笑)。

ハハハハ、力強い人がやるんだと(笑)。とにかく通販でベースを買って、練習した。

何歳だったの?

16歳。

音楽の方向性については張り紙に書かなかった?

書かなかった。ヴィジュアル系の人が来ちゃったら止めようと思ってたけど。ただ目立つように絵を描いて......、それと、「急募」と書いた(笑)。

ハハハハ! 素晴らしいね。では......最後にプロモーション・トークをどうぞ(笑)!

とくにないです(笑)! あ、でも、ザ・フィールドの感覚がわかる人にはわかってもらえるかなと思います。

intervew with Eccy - ele-king

ベンガ、スクリーム、キャスパ......超オールスター。それで2000人ぐらい入っていたのかな。で、若い女の子が、上は下着だけみたいな。ガン踊りしてて。

 初対面のわれわれが何故まず手はじめに童貞についての話を延々としたかと言えば、すべてはY氏が悪い。僕よりも20歳も年下のトラックメイカーは僕に向かって童貞にまつわる話をはじめ、僕は自分の童貞喪失について話す羽目になった。ことの経緯についてはご想像におまかせしよう。ただひとつ知ったことは、若い世代にとって"童貞"とういことが大きな問題となっているらしいということである。僕の世代では、思春期においてはそれがそれほど大きな問題意識になったことはなかった。

 さて、エクシーのUK体験談を聞くために僕はビールと呼ばれる背徳の液体の入った中ジョッキを持っている。この冒険心溢れるトラックメイカーは、2007年、彼が22歳のときにシンゴ02をフィーチャーした"アルティメイト・ハイ"によって広く注目されている。その後エクシーは......文学肌のラッパーをフィーチャーしつつ、ストリートというよりもどちらかといえばアーティな作品(『フローティング・ライク・インセンス』、『ブラッド・ザ・ウェイヴ』等々)を発表している。

 とはいえ、彼が現在、新世代においてもっとも興味深いひとりになりえているのは(彼と銀杏ボーイズとの繋がりはさておき)、音に対する彼の貪欲さにおいてである。とにかくエクシーは、欧米で起きている新しい動きにやたら敏感に反応する。彼がフライング・ロータス以降のエクスペリメンタル・ヒップホップないしはハドソン・モホークに対する回答のような、全曲インストによる『ルーヴィア・ミトス』を昨年末に出したことは、音の刺激に飢えている連中にしたら納得のいく話である。そして......アルバムのジャケでムーグのアナログシンセのつまみを乳首を触るような手つきでつまんでいる彼は、最近はヤマハのDX7を安くゲットしたと嬉々として語るような、いわば音フェチでもある。

 予想外だったのは、彼のそれまでのイメージからは想像できないほどのエクシーがパーティ・アニマルだったという事実だ。それは嬉しい事実である。彼は、昨年の10月にUKに渡っている。目的はひとつ、ダブステップのパーティで踊ること。

なんでイギリスに行こうと思ったの?

海外行ったのが初めてで。最初はロスとかニューヨークとか、普通にそっちに行こうかなと思っていたんですけど、一緒に行くことになったのがDJケイタっていう、バトル系のDJで、ドラムンベースが好きなヤツだったんです。そいつがロンドンに行くって言い出して、それで「じゃあ、行こうか」ってなった。どうせ行くならパーティに合わせようぜってなって。

行く前からダブステップやグライムみたいなのが面白いなとは思っていたんでしょ?

そうですね。ダブステップは1年前くらいからハマりはじめていて。

きっかけは?

ブリアル。でも、最初はいまほど面白さわかんなくて。それで漁っていくうちに、「けっこう面白いジャンルだな」と。そっからミックス聴いたり......。そのあと〈ハイパーダブ〉とか好きになって。日本にひとり、〈ハイパーダブ〉から出している人いるの知ってます? クオルタ330って。

面識はないけど知ってる。

あの人にオレらがやっているパーティの1回目に出てもらって。今度も出てくれるんですけど。で、〈ハイパーダブ〉が好きになった後、スクリームやベンガが日本に来たときに行ったりとか、いろいろ知識を付けたうえでロンドンに行って......みたいな。で、ロンドン、アムス、マンチェスターに行ったんですけど、いや、すごかった。

なにが?

6日連続でクラブに行ったんですけど(笑)。

1週間いて(笑)?

はい(笑)。

ハハハハ、誰もが通る道(笑)。

とにかく客がすごいっすね。

やっぱもっとパーティっぽい?

そうですね。

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じゃあ、順をおってお願いします。

まずモスクワに泊まったんすけど。アエロフロートのせいで(笑)。

空飛ぶロシアンルーレットね(笑)。

いまぜんぜんいいっすよ。ぜんぜん機体が綺麗。

そうだよね。ロシアは好景気だもんね。オレ、93年にイビサ行ったときにアエロフロートだったな。その頃、冗談で"空飛ぶロシアンルーレット"って言ってたの。モスクワの空港も酷かったしね。何もない。

あ、そこは変わらない(笑)。とにかく出発が6時間遅れたから、ロンドンに6時間遅れで着くのかなと思ったら、出る便がないって言われて。で、成田で、ロシアに着いたらホテルを用意しているからそこに泊まれと、ただし、そこは自分で交渉してくれと。で、初めての海外で、英語も喋れないのに交渉できるわけないだろうと(笑)。で、飛行機のなかでずっと英会話の本を読んでいて(笑)。で、行ったら行ったで、ちゃんとホテルが用意されていて、大丈夫だったんですけど。すげー、良いホテルだったし。

ロシアでクラブに行ったわけじゃないんだ?

行かなかったすね。それで、次の日にロンドンに着いて、すぐアムスに行かなきゃならなくて。

なんで(笑)?

そういう日程組んであったから。ちょうどアムステルダム・ダンス・イヴェント(ADE)やっていて。で、オレらより先に、ヨーロッパひとり旅しているヤツと合流して。1日目はそれで、スティーヴ・ローラーのパーティ行って。

誰それ?

Y氏:プログレッシヴ・ハウスのDJ。

Y氏の専門分野じゃないですか(笑)。

〈ワープ〉のクラークのパーティに行きたかったんだけど、すげーデカイところなんですけど、ぜんぜん入れなくて。それでクラブ探し回って。そしたらそこだけ入れた。で、次の日もアムスにいて。〈ワープ〉のラスティっているじゃないですか。あいつと〈ストーンズ・スロー〉のデイム・ファンクのDJに行って。

いいな~。

音はまあ、良かったんですけど、でも「日本とそんな変わんねーじゃん」と思って。で、次の日にオレとケイタはロンドンに戻って。で、〈ファブリック〉に行って。気合いを入れて前売りまで買ってたんですけど、疲れていて朝の3時まで寝ちゃって。で、「やべー、いまから行かないと終わっちゃうぞ」って。朝の4時に〈ファブリック〉に着いて。まあ、空気を楽しむぐらいだったんですけど。で、思っていたよりも子供向けのクラブみたいなイメージがあって。

観光客向けだよね。

そういう感じで。

やっぱ地元の連中が行くクラブがいちばんだよね。

そう。で、翌日は電車乗ってマンチェスター行って。マンチェのパーティが今回のベストでしたね。まあ、うちらそのパーティのために行ったようなものなんですけど。eBayでチケット買ってね。ウェアハウス・プロジェクトといって倉庫を使ってある期間やっているイヴェントなんですけど、毎週大物が来るみたいな。2フロアあって。まずメンツが凄くて。モードセレクター、ベンガ、スクリーム、キャスパ、ジョーカー、ラスコ、で、セカンド・フロアでメアリー・アン・ホブス、デイム・ファンク、ラスティ、ガスランプ・キラー、ノサッジ・シング......。

オールスターだね。

超オールスター。それで2000人ぐらい入っていたのかな。で、若い女の子が、上は下着だけみたいな。ガン踊りしてて。

モードセレクターはちょっと毛色が違わない?

違うんですけど、良かった(笑)。

いちばん良かったのは?

ラスコ。超パーティ野郎みたいな感じで。ガスランプ・キラーも良かったな。

ジョーカーは? まさにヒップホップ出身じゃん。

ケイタとジョーカーちょっと見て、ケイタが「ジョーカー、ダサくないっすか」って言うから、「ダセーなぁ」って(笑)。ほとんど聴かなかった。で、帰ってきていろいろ聴いていたらジョーカーがいちばん格好良くて(笑)。いまではオレ、ジョーカーがいちばん好きなんです(笑)。

ハハハハ。もっとも期待されているブリストルの新世代だからね。てか、もうすでにスターらしいよ。それこそG・ファンクから来てるんだよね。

へぇー。ダブステップって、出身がいろいろあって面白いっすよね。トランスっぽいヤツもいるじゃないですか。

テクノ出身者、ヒップホップ出身、レゲエもいるし、ハウスもいるし、ジャングルもいるよね。

でもやっぱ、いちばんは客の熱気だよね。同じこと日本でやっても絶対にこんな盛りあがらないなっていうのがあるから、「あー、こんなに反応してくれて、こんなに盛りあがってくれたら楽しいだろうな」と、やってる側の目線で思って。日本人のDJがあの場にいって、そこまで盛り上げることはできるだろうけど、向こうのDJがこっちに来て、あそこまで盛りあがるのは無理だろうなと。この先、何年後にはできるかもしれないけど。それをけっこう思って。
 で、マンチェスターのパーティで、普通に煙草吸っていたら、地元の奴らと仲良くなって。で、「うち来ない?」みたいな話になって。

ハハハハ。オレもまったく同じ経験ある。それでみんなでレコード聴くんだよね(笑)。

ベンってヤツのカップルとアンって女の子3人に声かけられて。だから「3人で行くのかなー?」と思って、」で、タクシーに乗って行ったら、すでに部屋には15人ぐらいいて(笑)。

ハハハハ。20年前と何も変わってねーじゃん(笑)!

ハハハハ、ホント、みんなグダグダで(笑)。

よくあれでポンドを保ってられるよね。

ハハハハ。で、ケイタのミックスをかけたらみんな上がって(笑)。「どこでDJやってんの?」とか訊いてきて。

何歳ぐらい?

若いっすね。オレより2個下ぐらいかな。20歳から大学生ぐらい。で、ベンの彼女のアンナってヤツだけしっかりしてて、定期的に紅茶入れてくるんすよ(笑)。

ミルクティーでしょ!

いや、それはちゃんと何が良いか訊いてくれて(笑)。

それで、帰りに紅茶買ったでしょ(笑)?

買った(笑)。

変わってないじゃん(笑)!

ハハハハ、楽しかったすね。

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Y氏:でも、日本でもそういう瞬間があったじゃないですか。

90年代前半とか?

Y氏:90年代の後半とかも。パーティが終わると、「代々木公園行こうよ」とか。「うちに来なよ」とか。

まあ、そうだね。

でも、日本では無理っすよ。

無理じゃなかった瞬間もあったわけだし。

でもいまは無理な気がする。

なんで?

まわり見てて、パーティ行くヤツが少ない。

残念だね。

クラブもカラオケの代わりになっちゃってるし。マンチェスターの奴らとか、あれしか楽しみがないんだろうなぐらいの気の入れようだったから。で、次の日はロンドンで、〈プラスティック・ピープル〉に行って。

〈プラスティック・ピープル〉?

それは地元密着型の濃いパーティ。

どこ?

えー、あれは......、ダメだ、ぜんぜん思い出せない(笑)。ロンドンで有名な駅って?

たくさんあるよ、パディントン、ノッティングヒル・ゲート、コヴェント・ガーデンとか(笑)。

えー、思い出せない(笑)。とにかく小箱で、でもファンション・ワン置いてあるみたいな。ミラーボールもなんもなくて、そこで毎週〈フォワード〉っていうダブステップのパーティをやってて。それに行って。メンツはMAワンっていうファンキーのDJ、で、ジンクやって。

おー、クラック・ハウス。

で、ジャック・ビーツっていうエレクトロ・ハウスっぽいのをやって、で、スクリームがやるみたいな。

ジンクのクラック・ハウスのコンピ、知ってる? 黄色のジャケのヤツ(「Crack House EP」)。

オレも買いました。

あのCDだけ聴いても現場がどんななのかわからないんだよね。

そうですよね。オレ、ジンク好きっすよ。

あれはホントにパーティ・ミュージックだよね。ちなみにそのパーティは何曜日?

日曜日っすね。オープンが大幅に遅れて、9時ぐらいから2時までやってましたね。で、そこ行ったら、今回初めて日本人がいて。「あれ日本人じゃないっすか?」ってケイタが言うから、で、訊いたら「そうだよ」って。で、話したら、その人がエナさんっていう、ゴス・トラッドなんかが出ている〈Back To Chill〉をやっている人で。共通の知り合いがすごくいっぱいいて、で、仲良くなって。

へぇー。

Y氏:よくロンドンのどのクラブ行っても日本人がいるって話聞くんだけど、ダブステップのクラブには滅多にいないよね。

ぜんぜんいないっすね。アジア人がいない。

アフリカ系はいるでしょ?

半々ぐらいでいますね。で、それが5日目で、で、6日目は「さすがにちょっとぐらい観光しようか」って話になって。で、結局レコード屋とかに行って、CDとTシャツを買って。そしたらまたエナさんに会って(笑)。

ハハハハ。行動パターンが同じなんだ。

そう。で、「今日の夜、ブリクストン・アカデミーでヤバいパーティがあるよ」って。それが16歳以上から入れるパーティで。

16から入れるっていいよな。

だから酒は売っていない。

なるほど。

で、ケイタと「どうする?」って。オレら、ドラムンのパーティをアムスで逃していて、ケイタがどうしてもドラムンで踊りたいって言い出して(笑)。「じゃ、行くか」みたいになって(笑)。

ブリストルって、中心地からは遠いからね。

遠いじゃないですか。だから終電で行って。そしたらガキんちょたちで溢れていて、あり得ないくらいの熱気で(笑)。

あんな広いところで。

あんなに広いところがガキんちょでいっぱいで(笑)。で、さすがにその日はもうオレらも疲れていたから隅っこのほうで休みつつって感じだったんですけど、誰かのDJになった途端、すべてのフロアから人が集まってきて。それがチェイス&ステイタスで。「うわ、こんなに人気があるんだ」って。

チェイス&ステイタス?

リアーナのダブステップやったり、スヌープのダブステップやったり。

ああ~。

すごかった。あんなに人気があるとは思わなかったね。

しかし16歳で行けるDJパーティがあるって良いよね。

しかも朝の5時ぐらいになると親とか車で迎えにきて(笑)。ドラムンでガン踊りしていた子供を迎えに来るって、「物わかり良すぎだわ」って(笑)。

それはハウス世代の親じゃないの? 「もう、しょーがねーな」みたいな(笑)。

しかし、月曜日に5000人の若いのが踊ってるって......。

健康的でいいなー(笑)。

ヴァイタリティ半端ないっすよね。〈プラスティック・ピープル〉で、白人のガキんちょがでかい黒人のセキュリティに超からんでいるんすよ。「おまえ出てけ」って投げ飛ばされたりしてるんすけど、すげー食いかかっていて。明らかに体格差もあんのに、「ファックユー」連発で、「こんなヤツ、日本人であんまいないなー」と思って。

へぇー。

とにかく、ダブステップ、こんなに踊ってる感じなんだーって、日本からはつかめなかったんで。それがもう、爆発してたんで。

レイヴ・カルチャーそのものなんだね。

それでオレも、自分でもダブステップやりはじめようかなと思って。

やってるじゃん、新作『ルーヴィア・ミトス』で。

それはダブステップというよりは......。

フライング・ロータス?

フライング・ロータス。

やっぱり。

そう、でも、もっとフォーマットにのったダブステップを作ろうと最近は思っているんですよ。

ダンス・ミュージックって、フォーマットがあるからね。

そうなんですよ。オレ、これ(『ルーヴィア・ミトス』)では好き勝手やってるだけなんで。もうちょい縛りあったうえで踊らせるっていうか、他のDJもかけやすくするっていうか。それって大事かなって。で、やってみたら面白かった。

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エクシー君のイメージって、やっぱキース・ジャレットのジャケの写真を自分のCDのアートワークに使っているように、すごくシリアスなさ、ある意味求道者的なさ(笑)。

この前もVJの人と飲んでて、「エクシー、おめーぜんぜん知性派じゃねーじゃん。下品だおめーは」って言われて(笑)。

ハハハハ。

やっぱ向こうの現場見ちゃうと、とくに。

それ、日本でもやって欲しいな~。

渋谷の〈プラグ〉で〈Coldsteel〉ってパーティやってます。2月5日に渋谷の〈プラグ〉でリリース・パーティかねてやりますよ。

行こうかな。

野田さんはクラブ行かないんですか?

ここ数年、子供ができてからはめっきり行かなくなったけど、嫌いになったわけじゃないからね。昔は毎週末行っていたし、ある時期はロンドンに隔月で行っていたよ。クラブとレコードを目当てに(笑)。だから今日の話はすごーくわかる(笑)。オレの世代はブリクストンと言えば、〈ロスト〉っていうテクノのパーティだね。上半身裸で壁によじ登るようなヤツがひと晩に20人ぐらいいるような(笑)。ロンドンはどこに泊まったの?

キングスクロスのあたりとか。

えー、そうなの! キングスクロスって、オレも昔よく泊まってたけど、娼婦や売人が立っているようなところだったんだよ(笑)。駅の反対側に倉庫街あって、あっちでもパーティがあったりして。

あー、あったあった。

で、いきなり『ルーヴィア・ミトス』の話に戻すと、過去2枚って、シンゴ02とか、マイク・ジャック・プロダクションとか、あるぱちかぶととか、文学肌のラッパーを入れているじゃん。それが、『ルーヴィア・ミトス』ではいっさいラッパーなしでやってるじゃん。そこはオレ、ラッパーの力を借りずに勝負してるなって思ったんだけど。

もともとインスト作品を出したくて。あとこれ、インストのシリーズなんですよ。ラッパーいないとさくさく曲作れるし。このアルバム、昨年の12月に出ているんですけど、ほぼ全曲9月に作っているんですよ。

すごいね。

すぐ出せるのがいいなーと。自分でミックスもしているし。

ロンドンに持っていかなかったの?

ミックス前だったんですけど、持っていきました。けっこう気に入ってもらえましたよ。

音を聴いてくれるのっていいよね。

そうっすね。

オレ、こないだタナソーとのトークショーでも言ったんだけど、音を面白がる文化って良いと思うんだよ。

オレ、ホント、意味とかどーでもいいと思っていて。

えー、意味あるラッパーばかり揃えているじゃん(笑)。

テーマとかどうでも良いと思ってて(笑)。

銀杏ボーイズが好きなくせに。

銀杏ボーイズは歌詞カード見ないでも言葉が入ってくるから好きなんですよ。うちのラッパーだとオロカモノポテチっていうのがいて、そいつがオレはいちばん入ってくるんですけど、正直、あるぱちかぶととか難しくて。

ハハハハ! 自分の作品でラップしてもらってるのに(笑)!

いや、もちろん良いんですけど! そこまでグッと来ない(笑)。

マジ(笑)? あるぱちかぶと、グッとくるじゃない。言葉でトランスさせるような感じでしょ。

ま、そうっすね。シンゴさんは、ライヴが好きっすね。ライヴが素晴らしい。あるぱちかぶとも、そろそろシンゴさんぐらいいってるのかなと思ってたんだけど、ライヴを観たらまだまだだった(笑)。

オレ、あるぱちかぶとのアルバムの1曲目、すごいと思ったけど。東京をラップしている"トーキョー難民"という曲。びっくりした。

はいはい。

あの風景の描き方はすごいよ。まあ、踊らせるってタイプじゃないけどね。で、ああいう優れたラッパーが身近にいながら今回はインストで勝負しているところにエクシー君のソウルを感じたんだよね。気が早いけど、次のアルバムが楽しみだね。

オレ自身も楽しみっすよ。なんか、〈テクトニック〉が気に入ってくれたみたいで。

えー、最高じゃない!

ピンチが気に入ってくれたみたいで。それで実は昨日、ぶちあがっていて。

それはオレでさえあがるよ(笑)。

このまま食らいついて、「シングル出そうよ」って言われるぐらいになりたいっすね。〈テクトニック〉、最高っすよね。

最高のレーベルのひとつだよね。昨年のコンピレーションも良かったし、ピンチのシングルあったじゃん。歌モノのヤツ。

「ゲット・アップ」っすよね。

そうそう。

あれで、グイードがリミックスしてるじゃないっすか。オレ、グイードがヤバくて。

ブリストルのジョーカーの仲間だよね。みんなまだ若いんだよね。

オレ、コンプリートしたんですけど。写真とかも、みんなかっこつけるんですけど、グイードだけがリーボックのジャージ着て突っ立ているだけで、リーボックってところがいい、イギリスっぽいな~って(笑)。

ハハハハ。ジョーカー、グイード、ジェーミー、あいつら、まだみんな20歳そこそこなんだよね。ジョーカーがいちばん若くて、たしか昨年の時点で20歳だったと思ったよ。

え、あいつがいちばん老けた顔しているのに(笑)。

ベンガやスクリームもみんな若いじゃん。13歳からDJやったり作っているわけでしょ。

あいつら若いっすよね。そういえば、〈プラスティック・ピープル〉の外で煙草吸っていたら、BMがやって来て、ゴミ袋を何度も轢いてて、頭おかしいヤツ乗ってるなーと思ってたら、車からベンガが出てきて、「おー、ベンガだ!」って(笑)。

いいな~、そんなことやっててレベル・ミュージックになっているところがいいよな~(笑)。

そうっすよね。しかもベンガとスクリーム、ヨーロッパのどこにもいますからね。ヨーロッパのいたるところのフライヤーに書いてある(笑)。

グラストンベリー・フェスティヴァルでもやって話題になってるもんね。ということで、エクシー君、がんばれ!

ハハハハ。

Eccy DJ Chart
  • 1. Hudson Mohawke / FUSE (Warp)
  • 2. Jinder / Youth Blood[12th Planet & Flinch Remix] (Trouble & Bass)
  • 3. Doshy feat.Raspe / Crtzl[Robot Koch Remix] (Robox-Neotech)
  • 4. Guido / Beautiful Complication (Punch Drunk)
  • 5. Rustie / Inside Pikachu's Cunt (Warp)
  • 6. Scuba / Twitch[Jamie Vex'd Remix] (Hot Flush)
  • 7. Rustie & Joker / Play Doe (Kapsize)
  • 8. Ikonika / Smuck (Planet Mu)
  • 9. Joker & Ginz Purple City (Kapsize)
  • 10. Zomby / Spliff Dub[Rustie Remix]- Hyperdub
  • 11. Skream / Trapped In A Dark Bubble (Tectonic)
  • 12. Bjork / Hyperballad[Eccy Dubstep Edit] (Nytebug)

※以下のサイトもチェック。
https://eccy.cc
https://www.slyerecords.com

また、昨年の12月から〈NYTEBUG〉という無料ダウンロードのレーベルを実験的にスタートしているで、そちらも是非。
https://nytebug.blogspot.com/


2010/02/05(Fri)
COLDSTEEL vol.5 @Shibuya PLUG
"あるぱちかぶと - ◎≠" and "Eccy - Loovia Myhots"
Double Release Party!!!!!!

-starring-
あるぱちかぶと
Eccy
Matt.B(Bass Science / Made In Glitch)
Quarta330(Hyperdub)
broken haze
haiiro de rossi
DJ KEITA
Notuv
Emufucka
小宮守

Animal Collective - ele-king

 これはちと古い。2009年の11月にリリースされた、「秋は優しく」なる題名の5曲入りのシングルで、その年のアルバム『メリーウェザー・ポスト・パヴィリオン』がUKではナショナル・チャートの26位にまでランクされた動物集団の勢いを感じる作品となった。1曲目の"グレイズ"は......陽気なフォークダンスである。どう考えてもストロボライトを浴びながら踊るというものではない。男女がスキップしながら手を取り合って踊っている姿が目に浮かぶ。

 ちょうどのこの原稿を書いている少し前には、彼らの2003年の『キャンプファイヤー・ソング』が再発されている。僕はこのCDは、『サング・トングス』を聴いたときに素早く探し回り、『ヒア・カム・ジ・インディアン』とともに買っている。60年代半ばのビーチ・ボーイズのアルバムに『パーティ!』というビートルズの曲のアコギによるカヴァー集があって、それはまるで学校の教室でクラスメートを集めながらワイワイがやがや、ビートルズの歌を歌って盛りあがっているような作品なのだけれど、『キャンプファイヤー・ソングス』はいわばそのアシッド・ヴァージョン。僕は......勝手ながらD・リゼルギン酸ジエチルアミドに浸りながらギターをかき鳴らす青年たちを夢想した。そうでなければ、あの1曲目の狂おしい不明瞭さに関して、他にいったいどんな説明が可能なのだろう。そして僕は、ストレートにそれを"キャンプファイヤー・ソングス"と言い切ってしまった動物集団のセンスに興味を抱いた。

 ちょうどこの頃は、文化のたこつぼ現象なる言葉が流行っていて、とにかく小宇宙ばかりが連なってばかりで面白くないと、そんなことが巷で言われていた。たしかに音楽のシーンでも90年代的なレイヴ・カルチャーはすっかり細分化され、互いに交わる兆しもなかった。そんな時期に、アニマル・コレクティヴはまさに小宇宙の司祭になろうとしていた。『キャンプファイヤー・ソングス』は、どう考えてもわずか数10人の音楽だ。しかし、コミュニティは小規模になったかもしれないけれど、親密性は高まっているのではないかとも思うのだ。ただ無闇に人の数だけ多ければ良いってものではない。そう考えれば、僕は日本のSFP周辺の連中の大きくなることへの警戒心と自律した小宇宙への欲望と、この時期のアニマル・コレクティヴの心地よい閉塞性は似ているようにも思えるのだ。

 アニマル・コレクティヴの"フォール・ビー・カインド"は、『メリーウェザー・ポスト・パヴィリオン』がそうであったように、『キャンプファイヤー・ソングス』の頃の閉塞感はない。良くも悪くも彼らはポップ・バンドとして商業的にも成功しつつあるし、その世界も広がりを見せている。シングルの2曲目の"ホワット・ウドゥ・アイ・ウォント? スカイ"がそれを如実に物語っている。グレイトフル・デッドの曲をサンプリングしているこの曲は、動物集団にとっておそらく最初の、わかりやすいポップ・ソングだ。

 "オン・ア・ハイウェイ"は、ダビーなエレクトロニクスと彼らのコーラスによるメランコリア。最後の"アイ・シンク・アイ・キャン"はクラウトロックのダークな引用で、陰鬱なエレクトロニクスと動物たちのコーラスとの協奏曲だ。
 「フォール・ビー・カインド」は『メリーウェザー・ポスト・パヴィリオン』の延長線上にある。パンダ・ベアの最初のソロ作品が好きな人は『キャンプファイヤー・ソングス』の再発を買ったほうがいいだろう。しかし、彼らの陽気なサイケデリアを楽しみにたいなら、このシングルも悪くはない。

Various Artists - ele-king

 2009年はダブステップの多様化をさらに強く印象づけられた年だった。2008年に発表したベンガの『Diary Of An Afro Warrior』(Tempa)にはジャジー・ヴァイブやハウスのビートが注がれ、2562の『Aerial』(Tectonic)にはミニマル・テクノのグルーヴが脈打っていた。2009年にはマーティン(Martyn)の『Great Lengths』(3024)やフェルティDLの『Love Is A Liability』(Planet Mu)といったデトロイト系ダブステップもあったし、ジョーカーやジェイミー、グイードといったブリストル新世代によるGファンクとの融合もあった。ハウスへの接近という意味で言うなら、何よりもブリアルの「Moth」(Text)があった。ブリアルの学校の先輩にあたるフォー・テットのレーベルから出されたその真っ黒なヴァイナルは、ガラージ/2ステップから派生したUKのアンダーグラウンド・ミュージックの、地下数100メートルからのダンス回帰のように感じられた(個人的には今年のベスト)。

 ダブステップはここ数年、ずっと好きで聴いているのだけれど、ハウスやテクノやジャングルなどと比較するまでもなく、それが踊りやすい音楽だとは思っていない(DJミックスを聴いていると決してそんなことはないんだけれど......)。レイヴ・カルチャーの発展型でありながら、むしろ孤独を好むようなところがこの音楽からは感じられ、その倒錯した感覚を僕は気に入っている。が、この2年における著しい多様化とハウスやテクノとの接合のなかで、ダブステップもその孤独に背を向けようとしているようにも思える。ハルモニアとイーノの曲のシャックルトン・ミックスの12インチ、やっぱ欲しいでしょう!

 〈ハイパーダブ〉レーベルにとって初めてとなるコンピレーションは、多様化するダブステップを見事に見せているが――いや、多様化というか、正確に言えば、この編集盤の音源はもはやダブステップとは言えないのだけれど、同時にその孤独さも際だたせている。その意味において、奇妙な輝きを放っていると言える。キング・ミダス・サウンド(ザ・バグによるダブ・プロジェクト)の濃い霧に包まれたスモーカーズ・サウンド"Meltdown"で幕を開けるこのCD2枚組、全32曲の地下旅行は、1枚がレーベルの新局面、もう1枚がレーベルのクラシック音源で構成されている。冒険的なのは、もちろん1枚目のほうだ。"Meltdown"が終わると、レーベル主宰者であるコード9のメランコリックなファンクへと続く。それから注目株のひとり、ダークスターによる美しいテクノ・サウンドが聴こえる。

 フライング・ロータスはこの素晴らしいディストピア・サウンドの編集盤に1曲提供している。彼の個性的なビートの余韻が残っているうちに、日本人アーティストによるダークR&B、ブラック・チャウの"Purple Smoke"がはじまる。そして多くのファンが聴きたいであろう、ブリアルのイクスクルーシヴ音源"Fostercare"がはじまる。1枚目のクライマックスだ。この曲を聴いていると、かつてマッシヴ・アタックに期待してきた音楽をいまはクロイドンのこの秘密主義者がやっていることがよくわかる。
 昨年、レーベルから12インチ2枚組を発表しているゾンビーは(今年は〈Ramp〉から奇妙なミニ・アルバムを出している)、出来損ないでがらくたのドラムンベースを披露する。『XLR8R』によれば「たくさんのジョイントとチキン」が彼の日課だそうで、彼のつかみ所のない作品にはその怠惰な感じがよく出ていて面白い。1枚目のCDの最後を飾るのはジョーカーで、パワフルなエレクトロ・ファンクを披露する。

 もう1枚のCDには、コード9の素晴らしい"9 Samurai"や"Ghost Town"、ブリアルの決定的な"South London Boroughs"や"Distant Lights"といったクラシックが収められている。そしてゾンビー、ザ・バグ、ジョーカーといったいま勢いのある連中の曲に混じって、コード9のダブ/レゲエ趣味がところどころで顔をのぞかせる。「1日1本のspliff(意味は調べよ)は魔除けとなる」、手の付けられないスモーカーであるゾンビーの"Spliff Dub"は、そう繰り返して主張する。コード9は大学で教鞭を執るほどのインテリだが、レーベルにはチンピラやオタクも一緒に混じって、この新時代のアンダーグラウンド・サウンドを楽しみ、変化を与えているようだ。

 『ピッチフォーク』はこのアルバムを1992年の〈ワープ〉による『アーティフィシャル・インテリジェンス』に比肩するものだと評しているが、僕も賛同する。思い出して欲しい、あの作品が出たときもみんなが言ったものだ。この音楽では踊れないと。だが、それは確実に時代を切り拓いたのである。

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