「IR」と一致するもの

MIKUMARI × OWL BEATS - ele-king

 な、なんだ、このトラックは!? 呪術的というのか辺境的というのか中毒的というのか……不思議な魅力を放つビートのうえを荒々しいラップが駆け抜けていく。「ルードボーイの荒々しいラップとエクスペリメンタル・ビート・ミュージックの最高の結合」……なるほど、これはかっこいい。
 NEO TOKAIと呼ばれ、いま大きな盛り上がりを見せている東海地方のヒップホップ・シーン。その流れを加速させるかのような注目のアルバムが10月11日にリリースされる。名古屋のSLUM RCのラッパー=MIKUMARIと、ビートメイカー=OWL BEATSの共作アルバム『FINE MALT No.7』。これは見逃せないですよ。

MIKUMARI × OWL BEATS

SLUM RCの重要ラッパー、MIKUMARIとビートメイカー、OWL BEATSの共作『FINE MALT No.7』が完成!
ルードボーイの荒々しいラップとエクスペリメンタル・ビート・ミュージックの最高の結合!

東海地方のラッパーやDJ、ビートメイカーの活躍が目覚しい。その躍進は名古屋のレーベル/クルー、RC SLUM/SLUM RC抜きには語れない。この揺るぎのない事実、彼らの影響力の大きさ、またNEO TOKAIと呼ばれるシーンの実情が近年少しずつだが多くの人の知るところになってきた。正当な評価がされつつあるということだ。そして、今年3月にリリースされたMC KHAZZのファースト・ソロ作につづき、4年ぶりとなるMIKUMARIのフル・アルバムが到着した。

ATOSONE、MC KHAZZと組むINFAMY FAM as M.O.S(MARUMI OUTSIDERS)のラッパーとしても知られるMIKUMARIは、RC SLUM/SLUM RCにおいて最も悪ノリを追求する陽気なルードボーイだ。ライムにもリリックにもその荒々しさとひょうきんさが出ている。上澄みなんかではない。MIKUMARIのラップはルードボーイの魂の原液である。ゲスト・ラッパーはMC KHAZZ、HARAKUDARIに絞られた。

すべてのビートを制作したのはビートメイカーのOWL BEATS。ダブ、ルーツ・レゲエ、ラテン、デジタル・ファンク、ジャズを歪め、エクスペリメンタル・ビート・ミュージックを作り出している。不良と実験の組み合わせは最高だ。『FINE MALT No.7』によってさらに多くの人がNEO TOKAIのヒップホップの真髄に触れることになるのは間違いない。

Artist: MIKUMARI × OWL BEATS (ミクマリ × オウル・ビーツ)
Title: FINE MALT NO.7 (ファイン・モルト・ナンバー・セヴン)
Label: RCSLUM RECORDINGS
Barcode: 4988044891050
Cat No: RCSRC014
Format: CD (国内盤)
販売価格: 2,200 円(税抜) + 税
発売日: 2017年10月11日 (水)

TRACK LIST:
01. OVERTURE
02. Fine Malt
03. The Naked Gun
04. Gun Shot Represent Me
05. Super Groove
06. No Dissolve 2017
07. Natuowari
08. VOODOO feat MC KHAZZ
09. Yota Rude Boy
10. AKUTARO feat HARAKUDARI
11. 32MF96
12. Happy Go Lucky Me
13. RC Brother Hood
14. See You Next Music

MIKUMARI × OWLBEATS FINEMALT NO.7 HP: https://t.co/EdbGErd8iC

【MIKUMARI profile】
既にO.G。メジャーリーグ入団後ネクストバッターサークルから逃亡。その後アルコール、薬物依存症に罹る。その時路上で独り言を大きな声で呟いていたら、RAPに変わる。そのセンスの良さが評判を呼びRCSLUMに加入。太る。その後『FROM TOP OF THE BOTTOM』を発表、パンチラインを封印し殺し文句を産み出す。体重増加に伴い息切れがなくなる。故にスムースなライミングを体得する。酒と麻薬でいい感じに焼けた喉はいい声を吐き出す。さらに太る。太る友達のOWLBEATSと『URA BOTTOM』を発表。すごいスピードで売りきる。発売前に完売。奇跡。原付を貰いOWLBEATSと二人乗りをしたところパンクする。その後盗まれる。新しい原付の資金を獲得するため、僕は音に乗ると言い出す。皆んな納得する。紆余曲折を経て今年10月2NDアルバム『FINE MALT No.7』を発表する ORIGINAL RC。

【OWL BEATS profile】
鹿児島―奄美大島出身、南の男。狂気的で南国的であり、不良でヲタクな雰囲気を感じる音を好み、その存在感を現場でのPlayや作り出すBeatで聞かせるDJ、BEAT MAKER、PRODUCER。2012年、First album『? LIFE』を全国に発信した後、Remix album、Beat album、DJ mix、Live dvd、beat提供など、様々な作品を様々な形で世に放つと同時に地元鹿児島で定期的にイベントを企画し各都市にいる音の猛者を収集し音で会話を楽しみ評価を得て進化を続けている。2015 年にOTAI RECORD主催の名古屋で行われたビートメーカーのバトルイベント【BEAT GRAND PRIX 2015】で勝ち抜き初代王者となる。話題と進化と自他の解放を求め続ける南国音人間。

Kenichi Itoi - ele-king

 エレクトロニカとリズム/ファンク。このいっけん無関係に見えるかもしれない音楽性は、しかし、唐突な組み合わせというわけでもない。緻密な電子音は微細なプログラムされたビートという共通項によって繋がっているし、その成果は00年代初頭において日本のスケッチ・ショウやドイツの〈~scape〉などのレーベルによって提示されている。
 京都の老舗電子音響レーベル〈シュラインドットジェイピー〉を主宰する糸魚健一もまたエレクトロニカ/ファンクの関係性を深く理解しているアーティストである。彼はサイセクス(PsysEx)名義でポリリズムを追及しながらリズミックな電子音楽/エレクトロニカ・アルバムを計6作ほど発表してきた。エレクトロニカ的な細やかな音響と豊かな中音域を追求したサウンドは本当に素晴らしい。その到達点が2015年に「Ken'ichi Itoi a.k.a. PsysEx」名義でリリースされた『Apex』だろう。高密度にして柔軟という正反対の現象を電子音/ビートという領域に構築・生成した傑作だ。
 そして本作『エン』は、レーベル設立20周年を記念した初の本人名義(Kenichi Itoi)のアルバムである。サイセクス名義とはいささか趣が異なり柔らかで情景的なエレクトロニカを展開している。コンセプトは「縁(えにし)」という。「宇宙、自然、人と人、人と共同体を繋ぐエン=縁=EXN」としての電子音楽とでもいうべきか。まさにレーベル20周年に相応しいテーマといえよう。

 そうしたコンセプトゆえそのサウンドはいつも以上に優しい。情景的/情緒的な電子音楽なのである。精密であっても耳に心地良い電子音楽なのだ。2曲め“Zinew (Zinem OVAL Remix)”の、オヴァルによるリミックス・トラックも本作の意図をよく汲み取ったサウンドとなっている。だが良く聴き込んでみるとさすが糸魚健一のサウンドだ。4曲め“Sigle”など、タメの効いたリズム/ビートが入っているトラックには不思議な音響的ファンクネスが横溢しており、単に優しいだけのエレクトロニカとは一線を画している。5曲め“Auhm”も一聴、ビートレスのエレクトロニカ・トラックだが、音響のリズミックな反復のあいだには不思議なタメとグルーヴすら感じてしまう(ちなみに糸魚は、〈シュラインドットジェイピー〉のほかに、ダンス・ミュージックに特化したレーベル〈ミス〉も主宰している。こちらもぜひチェックして頂きたい)。

 そんな〈シュラインドットジェイピー〉のジャズ/ファンク方面を新たに代表する最新アルバムがカフカ『ポリへドロン』である。彼は大阪を拠点とするビートメイカーだが、そのサウンドの色彩は光のように多様で環境音やギター・サウンドを緻密にレイヤーしたサウンドを聴かせる。加えてNTT/ICCにおけるサウンド・インスタレーションやiPhoneのアプリなど多方面でも活動・活躍しており、ベルリンの〈Project: Mooncircle〉の15周年コンピレーションへの参加やEP「Laws of Nature」をリリースするなど国際的な活動も展開している。
 この『ポリへドロン』は、もともと2016年に〈シュラインドットジェイピー〉のiTunesの配信限定アルバムとしてリリースされたものだが、本年ついに待望のフィジカル/CD化された作品だ。といってもただのフィジカル化ではない。10曲め以降はCD盤用のボーナス・トラックとなっており、既に配信で購入されたリスナーにとっても聴き逃せない構成となっている。
 まるで70年代のハービー・ハンコックが電子音響/エレクトロニカ化したような1曲め“The Light”からアルバム世界に一気に引き込まれる。その後も“Bargaining Point”、“Focal”、“Along the River”など、細やかで凝りまくりながらも肉体的な柔軟性も兼ね備えたリズム/ビートをベースに、エレガントなエレピ、緻密な電子音、ミニマムなサウンドが繊細・緻密にレイヤーされるトラックを続く。そして“Provide”はクリストファー・ウィリッツを思わせるアンビエントなサウンドと細切れにスライスされたマイクロ・ビートが折り重なっていく天国的なサウンドであり、聴き込んでいくと恍惚となってしまうほど。本盤用に加えられたボーナス・トラックもまたアルバムの出来栄えを拡張するトラックばかりなので最後までじっくりと聴き込めるアルバムに仕上がっている。

 聴き手の耳と体をマッサージしてくれるような心地よいエレクトロニカ・サウンドとファンクなビートによるスポーティーなトラックには、10年後も聴ける普遍的な魅力を兼ね備えているように思える。
 そしてこのような「普遍性」こそ〈シュラインドットジェイピー〉が提示するサウンドの魅力ではないか。ファンクネスという普遍性が電子音楽の中で交錯し、融合し、見事にミックスされているのだ。その意味で、糸魚健一『エン』、カフカ『ポリへドロン』もまた末永く聴けるエレクトロニカに違いない。

interview with Bicep - ele-king


Bicep - Bicep
Ninja Tune / ビート

HouseTechno

Amazon Tower HMV iTunes

 UKにおけるヒップホップ~トリップホップ~ブレイクビーツの系譜をしっかり継承する一方で、そのかつてのイメージを拭い去ろうとするかのように近年どんどん多角化を進めている〈Ninja Tune〉。今年に入ってからも、ボノボアクトレスフォレスト・スウォーズにと、非常に高い水準の作品のリリースが続いている(傘下の〈Brainfeeder〉や〈Big Dada〉まで含めるなら、サンダーキャットクートマのアルバムもある)。
 その〈Ninja Tune〉がいま大きくプッシュしているのが、マット・マクブライアーとアンディ・ファーガソンのふたりから成るハウス・デュオ、バイセップである。00年代末に開設したブログをきっかけに活動を始めたという彼らは、いかにもインターネット時代を象徴しているように見えるが、じっさいに彼らのルーツとなっているのは80~90年代のハウスやテクノのようだ。たしかに、“Glue”の機能的なビートの上に乗っかるアンビエント・タッチの美しい旋律や、“Spring”におけるある時期のエイフェックスを想起させる音響、“Rain”のヴォーカルの使い方や展開など、バイセップが「あの時代」のサウンドから多大な影響を受けていることは間違いない。初めて彼らのライヴ映像を観たときは、オーディエンスの熱気に気圧されてしまい、またロゴもマッチョな雰囲気が漂っていたので、変な先入観を抱いていたのだけれど、このアルバムで彼らが鳴らしているのは想像以上に繊細で、詩情豊かなダンス・ミュージックだった。
 そんな今後の〈Ninja Tune〉の未来を占う存在とも呼ぶべき彼らに、活動開始から10年近く経ってリリースされた待望のファースト・アルバムについて、そして彼らのバックグラウンドやアティテュードについて話を伺った。

Bicep | バイセップ
ベルファスト生まれ、現在はロンドンを拠点に活動するマット・マクブライアーとアンディ・ファーガソンによるDJ/プロデューサー・デュオ。2008年に開設したレコード収集の趣味を披露したりミックスやエディットをアップするブログ「Feelmybicep」が瞬く間に話題を呼び、月に20万人がアクセスするこの人気ブログをきっかけに世界中をDJツアーで回るようになった。また〈Throne Of Blood〉〈Traveller Records〉〈Mystery Meat〉〈Love Fever〉といったレーベルと手を組んだ後、ウィル・ソウル主宰〈Aus Music〉からリリースした「Just EP」がヒットし、タイトル曲はじつに多くの著名DJがプレイ、『Mixmag』と『DJ Mag』双方の「Track of the Year」を獲得。2016年には「RA Poll」で8位を獲得し、世界ツアーで数々のパーティをソールドアウトさせ、2017年には記念すべきデビュー・アルバムを〈Ninja Tune〉よりリリース。

EDMはマス用の商業音楽で、本物のアンダーグラウンド・ミュージックのように生き残ることはないだろうね。

「Bicep(上腕二頭筋)」というユニット名にはどのような思いが込められているのでしょう? ロゴにも3本の上腕が描かれており、マッチョな印象を抱いたのですが。

バイセップ(Bicep、以下B):オリジナルのアイデアは、70年代~80年代のディスコ、そしてとくにイタロ・ディスコのイメージから影響を受けていて、たとえばスカット・ブラザーズ“Walk The Night”、ビデオはカノ“It's a war”あたりがパッと思いつくね。名前はおもしろさ以外にとくに意味はなかったんだけど、最終的にこれに収まったんだ。ロゴに関してはヴァイナルが回っているときに見た目が良くなるように意識して、すぐに思いついたのがあのイラストなんだ。

『Bicep』はあなたたちにとって初めてのアルバムとなりますが、シングルを作るときと違いはありましたか?

B:そうだね、シングルに比べてサウンドの構築により多くの時間を使ったね。たとえばいつもとは違うシンセを使用したりミックスを試してみたりと、新しいアプローチを試みたんだ。いままでは自分たちのなかで合格点のレヴェルに達したものはそれ以上とくに手をつけなかったんだけど、今回はベストのサウンドになるまでとことん作り込んだ。たとえばある曲では4つの異なるシンセでベース・ラインの鳴り方を試したりね。

ハウスやテクノはシングル盤によって育まれた文化です。また最近はインターネットの影響もあり、音楽は曲単位で聴かれることも多いと思うのですが、アルバムを作ることの意義はなんだと思いますか?

B:そういった考え方からは距離を置きながら、家や電車のなか、クラブにまで対応できる曲を作りたかったんだ。これはこのアルバムの軸となるアイデアのうちのひとつなんだ。

このアルバムを作っているとき、フロアで身体を揺らしているオーディエンスと、ベッドルームでヘッドフォンをして聴いているリスナーと、どちらのほうをより強く意識しましたか?

B:言ったように、“バランス感”を保つことがこのアルバムでのひとつのチャレンジだったんだ。曲によってはダンスとリスニングのグルーヴを行き来するものもある。たとえば“Spring”はもともとクラブでのプレイ用に作ったんだけど、ミキシングやシンセを調整したからリスニング用としても機能するはずだよ。

今回のアルバムの収録曲のタイトルはすべて1単語ですが、これには何か意図があるのでしょうか?

B:くどいタイトルはやめて、アブストラクトかつシンプルなワン・ワードの曲名をつけたんだ。ほとんどの曲が自分たちにとって特別な意味を持っているんだけど、意味の捉え方は聴き手に委ねることにしたんだ。

本作を作るにあたって、もっとも苦労したことはなんでしょう?

B:まず、ベースとなるアイデアを持たずに、さまざまなスタイルで実験をしながら制作を始めたんだ。60曲ほどでき上がったところで、そこからアルバム用に曲を絞り込む作業がとにかく大変だった。制作には、完成後の後悔やパーツに飽きてしまうということが付きものなんだけど、そういった感情を押し殺しながらすべてを完成させるという作業はとても強い意志が必要だったね。まあ、それもひとつのチャレンジだったよ。

今作を〈Ninja Tune〉からリリースすることになった経緯を教えてください。

B:セルフ・リリースの可能性も持ちつつ、いくつかのレーベルにデモを送っていたんだ。そのなかでも〈Ninja Tune〉は最初に送ったデモの時点からとてもポジティヴな反応を見せてくれて、いっさい妥協をせずに気持ち良くアルバム制作に取り組むことができた。〈Ninja Tune〉の手厚いサポートにはすごく感謝しているよ。

音楽に興味を持つようになったきっかけはなんですか? 子どもの頃はどのような音楽を聴いていたのでしょう?

アンディ:若い頃はラジオで流れている音楽をテープに録音するのが好きで、オールドスクールなミックステープをよく作っていたんだ。さらに遡ると、ドラムンベースやジャングル、ニューウェイヴやポップスをひとつのテープにまとめていたね。

マット:僕は音楽に囲まれて育ったんだ。両親が一日中ヴァン・モリソンやメアリー・ブラック、エニグマをかけているような家でね。母親はコンテンポラリー・ダンスが大好きで、いつも世界中から集めた奇妙で素晴らしい音楽や、ニューエイジ、電子音楽がかかっていて、僕の無意識下に大きな影響を与えたと思う。父親はエンジニアで、自作のサウンドシステムが家にあり、倉庫には放送用の機材が溢れていたんだ。アルバムのプロダクションやテクニカルな面でとても大きな影響を受けていると思う。

資料によると、おふたりはエイフェックス・ツインやロラン・ガルニエを通してエレクトロニック・ミュージックに触れたそうですが、かれらの音楽のどういうところに惹かれたのでしょう? また、彼らの作品でもっとも好きなものはなんですか?

アンディ:地元のクラブのShineでロラン・ガルニエを観て以来すっかりテクノ/ハウスの虜になったんだ。当時はパンクやバンドのエネルギーが好きだったんだけど、テクノ/ハウスの持つエネルギーは別ものだったね。“Crispy Bacon”みたいなトラックはまったく異なるやり方でエネルギーを放っていたと思う。

マット:僕は、エイフェックス・ツインの多様で狂ったアイデアと、アナログ・サウンドの音像や荒々しい質感との融合に衝撃を受けたよ。

2012年に発表された“Vision Of Love”は、翌年カール・クレイグにエディットされ、ケヴィン・サンダーソンのレーベル〈KMS〉からリリースされました。デトロイト・テクノが成し遂げた最大の功績は何だと思いますか?

B:おそらく、世界に自分たちのテクノ・ブランドを紹介したことじゃないかな? デトロイトは昔からつねに音楽の街として存在し続け、とてもオープンマインドな場所という印象を与えてくれる。去年ベルファストでおこなわれた“AVAフェスティヴァル”でホアン・アトキンスが話していた「テクノのルーツ」に関するエピソードがとても興味深いものだったね。まるで彼らのような先駆者たちが街の個性を反映しているようで、現在も人びとがそのことに言及することはとても素晴らしいことだと思う。

2013年にはシミアン・モバイル・ディスコとも共作されています。かれらのルーツのひとつにはインディ・ロックもあると思うのですが、あなたたちから見てかれらのおもしろいところはどこですか?

B:シミアン・モバイル・ディスコはとても良い友人で、デュオとしての活動の仕方にとても影響を受けている。スタジオで彼らと過ごした時間には非常にインスパイアされたね。彼らがインディ~ロック~ディスコ~エレクトロなサウンドで2005~2006年にヒットを飛ばしたことは周知のとおりだけど、彼らはふたりともジャンルレスに音楽を愛しているし、彼らのサウンドを包括的に捉えればジャンルにこだわることは取るに足らないことだと気づかされるね。シンセ・サウンドのクリエイティヴィティやプロダクションのスタイルがとくに素晴らしいと思う。

あなたたちは昨年、ブレイズや808・ステイトのリミックスも手がけています。おそらくかれらの音楽に触れたのはリアルタイムではないと思うのですが、あなたたちにとってブレイズや808・ステイトはどのような存在でしょう? また、あの時代のハウスやテクノについてどのようにお考えですか?

B:たしか2000年初期~中期にかけて、初めて彼らの音楽を聴いたと思う。80年代後期から90年代初期のサウンドを掘るのが好きなんだよ。この時期はとても実験的かつクリエイティヴな音楽に溢れた時代で、ハウス/テクノ系の僕たちのフェイヴァリット・レコードはこの時期に作られたものが多いね。

あなたたちなりにハウスとテクノを定義するとしたら、両者の違いは何でしょう?

B:たぶん、“スピード”と“ムード”のバランス感じゃないかな。このふたつの音楽の境界線は最近とくに曖昧で、定義するのが難しくなってきてると思う。多くのサブジャンルも生まれているし。僕たちがUSB上で曲を管理する際も、ジャズ・ハウス、ファスト・ディスコ、ファン・テクノ、といった分け方をするんだけど、ひとつのトラックがこの3つのジャンルをカヴァーしてしまうこともあるしね(笑)。

ハウスやテクノはもともとアンダーグラウンドから生まれた音楽ですが、最近のEDMのようなダンス・ミュージックについてはどうお考えですか?

B:EDMのトレンドはフォロウしないようにしている。当初は、EDMファンもいずれアンダーグラウンドに流れると思ってたんだけど、どうやら違ったようだね(笑)。EDMはマス用の商業音楽で、本物のアンダーグラウンド・ミュージックのように生き残ることはないだろうね。

あなたたちはブログ「Feel My Bicep」で音楽を紹介したり情報を交換したりするところから活動をはじめ、それがレーベルやイベントにまで発展していきましたが、インターネットやSNSについてはどうお考えですか?

B:インターネットは、音楽のセンスが近い人びとと繋がり共有することのできる素晴らしいツールだね。僕たちはブログを、愛する音楽をポジティヴに議論する場として活用している。それは素晴らしいことだよ。ただ、オープンで誰とでも繋がれるがゆえに、議論や意見がつねに良い方向に行くとは限らなかった。僕たちはつねにポジティヴに音楽を捉え、好きな音楽の話に時間を費やし、決して他者の作品がいかに良くないかなどと吹聴するようなことはしない。良いものについて話をしたり共有したりするほうが、良くない音楽について議論をするよりもマシだと思う。

あなたたちが運営するレーベル〈Feel My Bicep〉からは、ご自身の作品に加え、BrassicaやSandboardsの作品もリリースされています。レーベルの方針のようなものはあるのでしょうか?

B:現在はとくにこれといったアイデアはないんだ。僕たちは、僕たちが好きな音楽をアウトプットし、好きなアーティストにプラットフォームを提供するだけだよ。

いまもっとも注目しているアーティストは誰ですか? また、今後リミックスしてみたいアーティストがいれば教えてください。

B:最近はフローティング・ポインツのサウンドが気に入ってる。リミックスに関しては、これから僕らのアルバムのリミックスを考えているんだけど、誰かに「ユニークかつ新しい“何か”を加えながら音楽的にトラックを発展させる」ということを頼むのは、なかなか難しいことだと思う。何人か全幅の信頼を置いている人たちにリミックスをお願いしてるけど、まだ秘密だね(笑)。

ファースト・アルバムのリリースを終え、いまおふたりがいちばんやりたいことはなんですか?

B:アルバム完成後からノンストップでプロモーションやツアーをやってるんだけど、これが今年いっぱい続くんだ。僕たちはすでに新しい作品に取り組みたくてうずうずしてるんだけど、スタジオから数ヶ月離れるのも必要なことかもね。


【アルバム情報】

label: Beat Records / Ninja Tune
artist: BICEP
title: Bicep
release date: 2017/09/01 FRI ON SALE
cat no.: BRZN244
price: ¥1,929 (+tax)
国内盤仕様: 帯/解説付き

amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/B0733PW3KH/
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002175
tower records: https://tower.jp/item/4553534/Bicep
hmv: https://bit.ly/2wcw9Ne

【来日公演情報】

1:朝霧JAM 2017
日時:2017年10月7日 (土)
場所:富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱら
詳細:https://asagirijam.jp/

2:単独東京公演 at Contact Tokyo
日時:2017年10月8日 (日) 22時 OPEN
場所:東京都渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビルB2F
詳細:https://www.contacttokyo.com/

flau - ele-king

 CuusheやMasayoshi Fujit、Stefan Jos、Fabio Caramuruなどなど、つねにクオリティの高い作品──ポップなエレクトロニック・ミュージック、アンビエント、IDM、ポスト・クラシカル等々を、上品なアートに包んでリリースしているレーベル〈Flau〉が今年で設立10周年を迎える。
 この9月から10月8日(日)まで、代官山の蔦屋書店3号館の2階音楽フロアにて、〈Flau〉の回顧展が開催されています。音楽がモノではなくなり、服を脱ぎ捨てるかのような消費物になってきている今日、〈Flau〉が確固たるインディペンデント・レーベルとしてファンを少しずつだろうが増やし続けていることは、賞賛に値する。いまでは国際的な人気をほこるこのレーベルの10年の歩みを見ながら、彼らのユニークな音楽とその素晴らしいアートワークにぜひ触れて欲しい。

 Flau classic 5 (by ele-king)
  Masayoshi Fujita - Stories
  Liz Christine - Sweet Mellow Cat
  Cuushe - Girl you know that I am here but the dream
  El Fog - Reverberate Slowly
  IKEBANA - when you arrive there

■FLAU10 RETROSPECTIVE 2007-2017

会場:代官山 蔦屋書店 3号館 2階 音楽フロア
会期:9/1〜10/8

https://real.tsite.jp/daikanyama/event/2017/08/flau-10-retrospective-2007-2017.html
https://flau.jp/2017/08/28/flau10-retrospectiv


Ben Frost - ele-king

 世界的な成功を収めた前作『A U R O R A』から3年。ついにベン・フロストのニュー・アルバム『ザ・センター・キャンノット・ホールド』がリリースされる。発売日は9月29日。この新作はなんとスティーヴ・アルビニとともにレコーディングした作品となっており、なんでも制作中のスタジオではスピーカーがぶっ飛んだそうで……いったいどんな内容に仕上がっているのやら。稀代のプロデューサーがさらなる高みへと挑んだ意欲作、注目である。

エレクトロ・ノイズの鬼才ベン・フロスト、スティーヴ・アルビニとの
レコーディングによるニュー・アルバム(9/29)より新曲「lonia」を公開!

前作『A U R O R A』での大成功の後に発表されたこの曲(「スレッショルド・オヴ・フェイス」)は、前作を踏襲したものではない。それはまるで雪に反射した太陽の光で視界がきかない、そんな境地で制作されたようなサウンドだ。 ― Pitchfork

世界的な大成功を収めた前作『A U R O R A』(2014年)から3年、エレクトロ・ノイズの鬼才ベン・フロストは、スティーヴ・アルビニとのレコーディングで生み出されたニュー・アルバム『ザ・センター・キャンノット・ホールド』を9月29日にリリースする。ニュー・アルバムは、シカゴにあるスティーヴ・アルビニのスタジオで約10日間に渡ってレコーディングされ、その制作期間中にスタジオ空間で鳴らされたサウンドは、時に制御不可能になり、ベン・フロストとスティーヴ・アルビニに対し熱く激しく張り合うかの如く火花を散らしたのだった。ニュー・アルバムはそのスタジオで起こったドキュメントである。

プリズムから放たれるスペクトル、その虹色の中の鮮やかな群青色をサウンド化したというニュー・アルバム、アートワークやミュージック・ビデオなどヴィジュアル全般がこの鮮やかな群青色で統一されている。

■アルバム制作概要
2016年夏、ベン・フロストはシカゴに降り立った。それはあのスティーヴ・アルビニとの共同作業に入るためであった。約2週間を超える期間に制作された、今まさに崩壊しそうなくらい膨大に膨らんだ音の塊を、ガランとしたスタジオの中に並べられたアンプ群に流し込んだ途端、スピーカーの方がぶっ飛んだのだった。またスタジオのガラスの向こう側では、アルビニがスタジオで演奏された音源を縦横無尽にぶった切っていった。

轟音と静寂のシューゲイズ/エレクトロ・サウンドの決定打となった前作『A U R O R A』(2014年)は、『ピッチフォーク』で「ベスト・ニュー・ミュージック」を獲得するなど世界的な成功を収め、またブライアン・イーノ、ティム・ヘッカー、ビョークなどとのコラボレーション、映画音楽制作など多岐にわたる活動を続けてきたベン・フロスト。その飽くなき挑戦を続けてきた彼が新たに踏み込んでいった先は、シカゴでのスティーヴ・アルビニとの共同レコーディングだった。

■商品概要

アーティスト:ベン・フロスト (Ben Frost)
タイトル:ザ・センター・キャンノット・ホールド (The Centre Cannot Hold)
発売日:2017年9月29日(金)
品番:TRCP-217
JAN:4571260587144
ボーナス・トラック収録
解説:三田 格

[Tracklist]
1. Threshold of Faith
2. A Sharp Blow In Passing
3. Trauma Theory
4. A Single Hellfire Missile Costs $100,000
5. Eurydice’s Heel
6. Meg Ryan Eyez
7. Ionia
8. Healthcare
9. All That You Love Will Be Eviscerated
10. Entropy In Blue
11. Meg Ryan Eyez (Albini Suspension Mix) *ボーナス・トラック

[amazon] https://amzn.asia/7pXtgi6
[iTunes/ Apple Music] https://apple.co/2wygh41
[Spotify] https://spoti.fi/2hB7QSX

■プロフィール
1980年、豪州メルボルン生まれ。2005年、アイスランドのレイキャビックに移住。 Bedroom Community 創設者ヴァルゲイル・シグルズソンなどとともに音楽活動をおこなう。2003年、デビュー・アルバム『Steel Wound』リリース。2010年、ブライアン・イーノからの依頼により、映画『惑星ソラリス』にインスパイアされた作品を制作。また、スワンズの『The Seer』や、アンビエント、ドローン・ミュージック界の重鎮ティム・ヘッカー、ビョークの「Desire Constellation」のリミックス、映画のスコア作品も多く手掛けるなど活動は多岐に渡る。前作『A U R O R A』(2014年)は、『ピッチフォーク』で「ベスト・ニュー・ミュージック」を獲得するなど世界的な成功を収め、同年来日公演を東京と大阪にて実施。2016年夏、新作の制作をスティーヴ・アルビニとともにおこない、2017年にその作品群からの最初の作品「スレッショルド・オヴ・フェイス」(EP)を7/28にデジタル配信にて、ニュー・アルバム『ザ・センター・キャンノット・ホールド』を9/29にリリース。

ethermachines.com
mute.com

yahyelと語り合うマウント・キンビーの魅力 - ele-king


Mount Kimbie
Love What Survives

Warp / ビート

ElectronicKrautrockNeu!Post-Punk

Tower HMV Amazon iTunes

 うん、これは良いアルバム。4年待った甲斐がある。マウント・キンビー、3枚目となる『Love What Survives』、これが〈Warp〉からリリースされて、10月には東京/大阪での来日ライヴも控えている。
 今回同じステージに立つyahyelの篠田ミルといっしょに、あらためてマウント・キンビーについて語った。

野田:マウント・キンビーはいつ聴いたんですか?

篠田:えっと、2010年かな。ファーストが出たタイミングですね。あの頃はまだ高校生でしたね。

野田:ジェイムス・ブレイクとかも同じ時期に聴いたの? 「CMYK」が出た年なんですけど。

篠田:まさしくそうですね。でもジェイムス・ブレイクを本格的に聴いたのはやっぱり「Limit To Your Love」以降ですね。

野田:当時の高校生はマウント・キンビーってどう聴いたの(笑)?

篠田:かなり背伸びしていたというか、僕は中学生のときに『rockin'on』の「ベスト・ディスク500枚」みたいな本を偶然買って、それをパラパラ読んでTSUTAYAに行って大量に借りるみたいなことをしていて。その時代はまだ継続して『rockin'on』を読んでいて、たしか『rockin'on』の誌面にマウント・キンビーのファーストが出ていて。

野田:へー、意外だね。『rockin'on』なんてその辺あんまわかってないじゃん。

篠田:なんか違和感があったんですよね。これはなんか違うし、書いてある単語がよくわからなくて。ダブステップとかポスト・ダブステップってなんだよっていう(笑)。全然わからないなと思って借りて、最初聴いたときもしっくりこなかったというか、まだギター・ロック少年だったからこの人たちがどういうところから来ているのかわからなかったんですよね。まあ聴いてはいたんですけど、それがそのときの感想ですかね。

野田:僕はアナログで買ったな。むちゃくちゃリアルタイム。どんな時代だったかと言うと、マウント・キンビーが出てくるちょい前は、USではチルウェイヴがあったり、ビーチ・ハウスに代表されるドリーム・ポップがあったり。ヒプナゴジック・ポップなんていう言葉が生まれたり、OPNが出てきたのもこの時期だよね。いっぽう、UKではジェイムス・ブレイクが「CMYK」で脚光を浴びる。マウント・キンビーはそれに続いたよね。

篠田:雨後の筍感というか(笑)。

野田:当時からマウント・キンビーは完全にずば抜けていたけどね。彼らの音響は、ジェイムス・ブレイクよりもドリーミーだったから、USの流れともリンクしやすかったし。篠田君はチルウェイヴの頃は何を聴いていたんですか?

篠田:当時はインディ・ロックが強かった印象があって、2008年あたりはMGMTとかヴァンパイア・ウィークエンドとか聴いていたんじゃないかなあ。あとはアーケイド・ファイヤーとか。

野田:10代だったら普通そうだよね。当たり前だよ(笑)。

篠田:トロ・イ・モアとかウォッシュト・アウトとかもなんとなく聴いていたんですけど、そんなに本のめりじゃなくて。その本のめりではないなかにマウント・キンビーやジェイムス・ブレイクがあったというのが僕らの世代だと思うんですけど。とりあえず潜った音像のものが流行っているのかな、みたいな。これあんまりあがんないけど気持ちいいな、くらいの程度で聴いていた印象があります。

野田:当時、マウント・キンビーやジェイムス・ブレイク、あと、〈ヘッスル・オーディオ〉やアントールドとか、ああいうのはポスト・ダブステップという言葉で括られていたんだけど、それは何かというと、明確な理由があるのね。だいたい2008年~2009年の時点で、すでにダブステップはTVのCMでも流れるような、無茶苦茶コマーシャルな音楽にもなっていて、ウォブリー・ベースを入れたクリシェにもなっていたのね。それがやがてブロー・ステップと呼ばれ、EDMにも連なっていくんだけど、そういうマッチョな商業レイヴ化したダブステップへの反論みたいな格好で、音楽の面白さを取り戻そうとした動き全般がポスト・ダブステップと括られたものだったよね。だからレコード店に行けば必ず発見があるみたいな、ものすごく重要な時期で、「CMYK」もピアソン・サウンドも、そうとうショックがあったよ。で、〈ヘッスル・オーディオ〉やアントールドなんかがベース・ミュージックにテクノのセンスを混ぜたのに対して、マウント・キンビーはR&BとIDMのセンスを取り入れたよね。あれはすごく新鮮だったな。yahyelって、やっぱりR&Bヴォーカルが際立っているんだけど、トラックを聴くとマウント・キンビーとの接点はあるように思えるんだけど、実際のところ、どうんですか?

篠田:曲を作るときに参考音源としてたまに挙がることはありますね。たとえばマウント・キンビーの“Made To Stray”の最初のビートみたいなのいいよねえ、みたいな参照のされかたはされるけど、マウント・キンビーっぽい音像に仕上げようみたいな感じで進んだことはそんなにないっちゃないですね。

野田:篠田君はさっきの話では、もともとインディ・ロックを聴いていたんだけど、なぜエレクトロニック・ミュージックになったの?

篠田:2010、11年くらいにジェイムス・ブレイクやマウント・キンビーが出揃って、2013年くらいに彼らがセカンドを出すじゃないですか。そのあいだでかなり地場が変わった感じというのがあって、ギター・ロックが死んでいっているのを目の当たりにしつつ、おもしろいことがこっちで起きているというのがあって。ギターを持っていた人間がこっちをやれるんじゃないか、というのはぼんやりとありましたね。
 というのも当時僕は大学生で普通にベースを弾いてギター・ロック・バンドをやっていたんですよ。でも音楽的にはつまんねえなっていう感じはあって(笑)。ギター・ロックをあまり聴かなくなっているなかで、それこそジェイムス・ブレイクやマウント・キンビーのセカンドみたいなものがあったり、そのあとにインディR&Bとかのポスト・ダブステップのサウンドで歌モノを作っている人たちが出てきて、それをすごく聴いていたんですね。それで2013、14年あたりでそれをやりたいなってことになってきたのかな。

 

野田:篠田君の人生の重要な時期でジェイムス・ブレイクやマウント・キンビーが当たったんだね(笑)。

篠田:まさに成熟していく過程ですよね(笑)。

野田:彼らが尊敬していたひとりがBurial(日本盤表記:ブリアル)なんだけど、「CMYK」なんかはブリアルの『Untrue』の影響下にあるでしょ。R&Bサンプルの使い方は完全にあの流れだよね。本当はヴォーカルをスタジオ録りしたいんだろうけど、そんなお金がないからサンプリングするっていう。マウント・キンビーもR&Bサンプルを使っているよね。あとは〈Night Slugs〉の連中とかさ、みんなそんな感じだよね。ボク・ボク(Bok Bok)とかさ。

篠田:ジェイムス・ブレイクの別名義(Harmonimix)かなんかでスヌープ・ドッグとかとR&Bをやっていましたよね。

野田:デスチャとかも使ってるし。あれブートでヴァイナルが出たんだよ。持ってるけど。しかしさっきも言ったけど、あの当時は、UKとUSではスタイルや出自は違うのに、感覚的には微妙にリンクするようなところがあったよね。チル&Bとかさ。

篠田:そうですね。受容のしかたとしてはそんな離れたものを聴いている印象はなかったですね。

野田:マウント・キンビーのファーストとセカンドだとどっちが好きなの?

篠田:セカンドですね。

野田:おお~。ぼくは断固としてファースト派だったんだけど、今回の取材にあたってセカンドを聴き直したのね。そうしたらすごくいいと思った。

(一同笑)

野田:自分がベース・ミュージックという文脈にこだわり過ぎていたなと思ったんだよね。いまは全然そこに対するこだわりがないんで、わりとまっさらに聴けて、すごくいいと思ったね。

篠田:ダブステップとかベース・ミュージックの手法で歌モノをやるというところからそういうものを聴く体験がスタートしているので、セカンドはすごくピンと来て、文脈を知らなかったからむしろファーストはわからなかったんですよ。

野田:あのファーストはマニア受けだからね。ベース・ミュージックにIDMの要素を取り入れたのがドリーミーな音楽っていうか。

篠田:ボーズ・オブ・カナダっぽさというか。

野田:そうだね。ただ、マウント・キンビーが素晴らしいと思うのはあの言葉とジャケットですよね。マウント・キンビーのファースト『Crooks & Lovers』は2010年でしょう。あのジャケットの写真って、おそらくチャヴ(chav)なんですよ。それで2010年ってキャメロン政権のスタートした年なんですよね。つまり、UKの緊縮財政がはじまった年で、政治的な意味でいうとああいうチャヴに表象される下層階級の人たちをキャメロンがものすごく批判しはじめた時代だよね。その時代にあのタイトル(『ペテン師と恋人たち』)と写真で出すというのは考えさせられるものがあるじゃないですか。

篠田:あのふたりはサウス(・ロンドン)でしたっけ? (サウス)だったら身の回りにチャヴがいるのが当たり前の光景だったんでしょうね。

野田:とにかく、深読みしたくなるタイトルと写真だよね。篠田君が好きなセカンド・アルバムのタイトルもいいよね。『Cold Spring Fault Less Youth』。なんていうの、「冷たい春の間違いのよりすくない若さ」って、すごいタイトルじゃない! 今回のタイトルもすごくおもしろいよね。『Love What Survives』で。「生き残るものを愛せ」なんだけど、ジャケットを開くと「But Don't Hate What Dies」、「しかし死せるものを憎むな」という言葉が記されている。マウント・キンビーは言葉もうまいよ。

篠田:そうですね。

野田:ポスト・ダブステップって言われた人たちって、ダブステップがダメになったときに出てきて、結果としてUKのクラブ・ミュージックを蘇らせるんだけど、そのほとんどがもともとダブステップをやっていた人たちじゃないでしょう? 自分たちの帰属するスタイルがとくにあるわけじゃない。マウント・キンビーなんかは本当にそうで、逆に言えばなんでもできるんだよね。そこはyahyelと似ているのかなと。

篠田:たしかにそうですよね。初期のジェイムス・ブレイクはまだフロアへの意識があった気がするけど、マウント・キンビーは初めからないですもんね。ブリアルの手癖みたいなものが乗り移っているな、みたいな瞬間はファーストとかでチラホラ見られるけど、ダンスフロアの人たちではないですよね。本人たちもインタヴューで「ダンスフロアに向けるというのがどういうことなのかよくわからないし、あんまりそれは意識していなかった」みたいなことを言っていたんじゃないかな。

野田:ある意味では、ひょっとしたらセカンドが本来の自分たちの姿なのかもしれないよね。

篠田:そうだし、これ(サード・アルバム)も賛否両論が分かれると思うんですよ。でもこれも本来の姿だなっていうだけで。

野田:本当にそう思う。

篠田:とくに1、2曲目はものすごくギター・ロックの響きがするというか(笑)。ドラムの作りかたから構成からギターまで、まあクラウトロックなのかな。

野田:クラウトロックだよねえ(笑)。ノイ!というかね。

篠田:1曲目とかダイヴ(DIIV)のアルバムに入っていてもおかしくないなあって鳴りをしていて。でもマウント・キンビーってずっと一貫してギターを持ってライヴをやっているじゃないですか。ファーストでも使っていたし。

野田:そこはやっぱ共感する?

篠田:そうですね。若かったらこれやりたかったなというサウンドだったというか(笑)。むしろ成熟したサウンドではない感じがしたんですよね。

野田:昨年パウウェルが出てきたっていうのもあるのかもね。強いて言えばアルビニ系の感性も内包しているというか。あと、セカンドでは歌っているのがキング・クルールだけだったけど、今回は複数のヴォーカリストを使っているよね。

篠田:ミカチュー(MICACHU)とか。

野田:ミカチューとやっている曲いいよねー。いまいち日本には伝わってこないけど、彼女はUKではものすごく評価が高い人。

篠田:あれはめちゃくちゃいいですね。

野田:今回の目玉として、ジェイムス・ブレイクとやった曲が2曲あるけど、“We Go Home Together”はけっこう実験的なビートのある曲で、アルバムのクローザーとなるもう1曲の“We Go Home Together”は最高に美しい曲だったね。アルバムでは、クラウトロック的というかパウウェル的というか、躍動感を前面に出した曲とちょうど対を成しているかのようだね。We Go Home Together”は良い曲だよ。ジェイムス・ブレイクのメランコリックな感覚がいい感じで映えているね。

篠田:ジェイムス・ブレイクはどれくらい作業をしているんですかね。歌っているだけなのかなあ。

野田:どうだろうね。エレクトーンぽい音とか、“How We Got By”のピアノとか弾いているのかね。“We Go Home Together”なんか、そのままベタに歌わせても予定調和だから、トラックはだいぶ捻ってはいるよね。

篠田:たしかに。

野田:“How We Got By”は共同プロデュースしているようだけど。それにしてもジェイムス・ブレイクとは7年ぶりのコラボだってね。もともとは同じところからはじまって……。

白川:同じ学校でね。同じ学生寮にいたらしいですよ。

野田:ええ、そうなんだ。

篠田:YouTubeに3人で一緒にライヴしている動画がありますよね。

野田:では、あらためて彼らとのライヴ・ツアーの意気込みを(笑)?

篠田:いや、負けないぞっていうのがあるんですけど。

野田:はははは。

篠田:こういうタイプの音楽をバンド・フォーマットでやるという点では間違いなく先達だし、影響を受けていますね。たぶんバンド・フォーマットでやったのって彼らくらいじゃないですか? ジェイムス・ブレイクも結果的にバンド隊でやっているけど、バンド然としているというか。彼らがいて、ボノボがいてというか。作るときは全然バンド・スタイルで作らないけどライヴだとバンド・スタイルでやる、というのってじつはなくて。yahyel自身もそれは僕たちの新しさだと思っているところなんですけど……、とはいえ彼らは先達で(笑)。それをどう更新したかを見せなきゃというのはひとつありますね。だから原形を示してくれたのは彼らなんですけど、進化させたのは僕たちだっていう自負はあるくらい(笑)。

野田:素晴らしい(笑)。本当にライヴを見るのが楽しみなんだけど。篠田君がマウント・キンビーのライヴで楽しみにしているところはなんですか?

篠田:まず何人で来るのかってところですね(笑)。4人らしいですけどね。マウント・キンビーのふたりとドラムとギターですかね。もうひとつ楽しみなのは、新作にもフィーチャリング曲が4曲入ってますけど、それをどうやって再現するのかというところですかね。あとはやっぱり同じジャンルをライヴでやる人間として、どれくらい同期でやるのかは気になりますね。

野田:yahyelはどういうライヴをやるの? バンドでやるの?

篠田:バンドですね。基本的にビートはドラマーだし、シンセは半分弾いていてループものはシーケンスにしてで杉本が出していて。僕はヴォイス・サンプルとかパーカッシヴなサンプルを叩いていてって感じなんですけど。僕らは逆にビートの同期を増やしてみたいという欲求があって。それがマウント・キンビーまでに敵うかどうかはわからないですけど。というのも僕らはフジロックくらいまでのあいだにテクノ返りしていたというか、かなり、テクノを聴いていて。

野田:へえ、どのへんのテクノですか?

篠田:思いっきりベルリン界隈の〈Ostgut Ton〉のものを聴いていて。

野田:それはめちゃくちゃベルリンだね(笑)。

篠田:新鮮に思えましたね。僕らのなかではあのザ・ジャーマンな感じがすごく新鮮なんですよね。だから前作とか今回のシングルにはまだJ Dilla以降というか、ネオ・ソウルっぽいズレたビートへの志向というのがかなりあったと思うんですけど、いまはわりとあれがそんなでもないというか。合う曲ではやってもいいけどそんな全面に押し出さなくてもいいなっていうのもあって、ここ半年くらいはイーブンな4つが面白いなと(笑)。

野田:へー、その新しいyahyelのサウンドがどんなになるのかも楽しみだね。

(了)


Mount Kimbie
Love What Survives

BEAT RECORDS / WARP RECORDS

ElectronicKrautrockIDM

Tower HMV Amazon iTunes

Tricky × Kahn - ele-king

 ブリストルの王者、トリッキーが9月27日にニュー・アルバムを発売する。それに先駆けて、配信オンリーにてリミックスEPがリリースされたのだけれども、そこになんとカーンが参加しております。どこまでもダークなムードにどこまでもヘヴィなベース……この組み合わせが失敗するはずがない! というわけで要チェックです。なお同EPにはヒートウェイヴとフォルティDLも参加。ちなみにアルバムの方は、ロシアのトップ・アーティストとのコラボが多く含まれており、またホールのカヴァーも収録されているとのこと。

トリッキー、9/27発売の13枚目のアルバム『Ununiform』より、
リミックスEP&先行シングルをリリース。

NOW ON SALE
トリッキーの13枚目のアルバム『Ununiform』より、リミックスEPをリリース。
“The Only Way”、”When We Die feat. Martina Topley-Bird”の2曲を
Kahn、FaltyDL、The Heatwaveがそれぞれリミックス。

アーティスト:TRICKY
タイトル:MIXED BY...VOLUME 1
発売元:!K7 RECORDS / FALSE IDOLS / ウルトラ・ヴァイヴ
品番:デジタルのみ
価格:デジタルのみ
収録曲目:
01. The Only Way (Kahn Remix)
02. When We Die feat. Martina Topley-Bird (The Heatwave Remix)
03. When We Die feat. Martina Topley-Bird (FaltyDL Remix)
購入先:https://k7.lnk.to/MixedbyVolume1

「何年も前にレストランで皿洗いの仕事をしてた時に古いジューク・ボックスがあって、『Maxinquaye』のCDが入ってたんだ。僕はキッチンから抜け出してそのアルバムをプレイして仕事に戻るっていうのがしばらくの間の日課だったんだよ。擦り切れるほど聞いたね。トリッキーの音楽を聴いて以来、音楽にのめり込んで行ったよ。彼の声のトーンとプロダクションのコンビネーションはいつも僕のとても深いところに刺さるんだ。素晴らしいよ」(フォルティDL)

「トリッキーの音楽が俺の人生や音楽家として、どんな影響を与えてきたを言葉にするのは難しいな。彼のアルバムをCDウォークマンで何回も繰り返し聴いて、リリックを覚えて彼の作品の独特な雰囲気に浸っていたガキの頃からずっと音楽と一緒だったんだ。それはブリストルで音楽を学ぶ上で一番大事な部分だったし、今でも俺の音楽や詩の大事な部分であり続けている。彼のいくつかの曲は俺の人生の大事な記憶に結びついているし、自分のアイデンティティの一部でもあるんだ。だから彼の新作のリミックスを頼まれたのはとても光栄だよ。実を言うと最初は自分の最も影響を受けたアーティストと仕事するのに少しビビったんだけど、この仕事は素晴らしい経験になったよ。また近いうちに一緒にやりたいね」(カーン)

「トリッキーのリミックスを手がけるなんてすごいことだよね。10代の頃からとても影響を受けてるし、彼はジャンルをまたいでブレイクしたジャマイカン・ブリティッシュの代表的な存在でもある。グライムやUKガラージ、UKヒップホップが出てくる前にマッシヴ・アタックとかトリッキーがリリックを紡ぎだし、ベースをブチかまして時代を作ってきたんだ。ヒートウェイヴがどんなUKのサウンド・システムになるかのインスピレーションはワイルド・バンチから得たものなんだよ」(ザ・ヒートウェイヴ)

NOW ON SALE
BBC6ミュージックのローレン・ラヴァーンの番組で世界初公開となったトリッキーのニューシングル“Running Wild”は、若い頃の焦りや焦燥をテーマにしたリリックを南ロンドン出身の新人女性シンガー、ミナ・ローザが歌うレイドバックしたダークなフューチャー・ソウルだ。

ミナ・ローザは今秋行われるヨーロッパでのツアーにもヴォーカリストとして参加することが決まっている。

アーティスト:TRICKY
タイトル:RUNNING WILD FEAT. MINA ROSE
発売元:!K7 RECORDS / FALSE IDOLS / ウルトラ・ヴァイヴ
品番:デジタルのみ
価格:デジタルのみ
収録曲目:
01. Running Wild (feat. Mina Rose)
購入先:https://k7.lnk.to/RunningWild

【TRICKY "ununiform"】
2017.9.27 ON SALE

アーティスト:TRICKY(トリッキー)
タイトル:ununiform(アンユニフォーム)
発売元:!K7 RECORDS / FALSE IDOLS / ウルトラ・ヴァイヴ
品番:K7SCDJ350[国内流通仕様]
価格:¥2,300+税
その他:解説付
収録曲目:
01. Obia Intro
02. Same As It Ever Was (feat. Scriptonite)
03. New Stole (feat. Francesca Belmonte)
04. Wait For Signal (feat. Asia Argento)
05. It’s Your Day (feat. Scriptonite)
06. Blood Of My Blood (feat. Scriptonite)
07. Dark Days (feat. Mina Rose)
08. The Only Way
09. Armor (feat. Terra Lopez)
10. Doll (feat. Avalon Lurks)
11. Bang Boogie (feat. Smoky Mo)
12. Running Wild (feat. Mina Rose)
13. When We Die (feat. Martina Topley-Bird)

ワイルド・バンチのDJマイロなどを迎えた2016年リリースの『Skilled Mechanics』に続く本作は、自らのファミリーを含んだルーツに回帰する内容に仕上がっており、そのほとんどをベルリンで、そして内4曲をロシアはモスクワでレコーディング。ベルリンに移住して以来、11時に寝て9時に起きるという朝方にシフト、酒も飲まずヘルシーな生活の中で自らを見つめ直し、ベルリンのクリスマスの喧騒を避け3週間モスクワに滞在し、その時に現地のラッパーとコラボレイト曲を作り上げた。彼曰く20年ほどロシアのヒップホップ・シーンはチェックしているらしく、ロシア訛りのアクセントが気に入っているそうだ。コラボレイターはロシアのトップ・アーティストばかりで、カザフスタン生まれのスクリプトナイト(Scriptonite)は“Same As It Ever Was”、“Blood Of My Blood”、“It's Your Day”にフィーチャーされ、ロシアで最も人気があるヒップホップ・レーベルを運営するプロデューサーであるギャズゴールダー(Gazgolder)が手がける“Bang Boogie”には90年代からロシアのシーンを牽引するスモーキー・モー(Smokey Mo)をフィーチャーしている。さらに本作では今や伝説となったファースト・アルバム『Maxinquaye』収録の大クラシック“Aftermath”にフィーチャーして以来、公私に渡り彼の重要なコラボレーター/ミューズであったマルティナ・トップリーバード(2003年リリースの彼女のアルバム『Quixotic』以来のコラボレート)と久々に共演しているほか、LAでパパラッチされた女優のアーシア・アルジェント、さらに自らのレーベル、〈ファルス・アイドルス〉から2015年にアルバム『Anima』をリリースした女性シンガー、フランチェスカ・ベルモンテを迎え、共演曲である“New Stole”は、そのアルバムに収録された“Stole”のリテイク・ヴァージョン。そしてニューカマーも多くフィーチャーしており、〈ワーナー〉から『Devoted』というアルバムをリリースしているリチュアルズ・オブ・マインのヴォーカリスト、テラ・ロペス、“Running Wild”で美声を聞かせているミナ・ローズ、さらにアヴァロン・ラークスは、コートニー・ラヴのバンド、ホールの1994年の代表曲“Doll Parts”のカヴァーである“Doll”にフィーチャー。彼のファースト・アルバムにも冠されている自らの母の死を目の当たりにしたのが生まれてから最初の記憶という彼の凄惨な生い立ちは、これまで繰り返しテーマとして通底していて、サウンドと共にダークな彩りが彼の持ち味になってきたが、本作は生と死を双方の側から眺める視点と共にピースな雰囲気を湛えた作品に仕上がった。それは今回のアルバムで完全に自らのレーベルで全てを取り仕切ることで初めてレコード会社との軋轢やあらゆる財政的なプレッシャーから解放されたことと、ベルリンでの3年間を通じて自らのルーツ(彼の祖父はブリストルで伝説となっているサウンド・システムを作り上げたレゲエDJ、ターザン・ザ・ハイプリースト)を振り返ることでより一層自ら表現したい音楽に向き合えたというこの2つの要素が色濃く反映した結果だろう。まさにトリッキー節が全編に漲ったサウンドは美しく壮麗で以前にも増してパーソナルな本作『ununiform』はトリッキーが新たなステージに到達したことを知らせる充実作。

MORE INFO:https://bignothing.net/k7.html

 エレクトロニカからヒップホップ、ロックにフューチャー・ベース、R&Bにジュークと、『初音ミク10周年――ボーカロイド音楽の深化と拡張』ではボーカロイドを用いた様々な音楽例が紹介されている。ただし、その中でジャズとなると、ごく僅かな作品を除いてほとんど掲載されていない。ボーカロイドは基本的にはコンピューターで作るデジタル音楽での使用から発展してきたので、アコースティックな楽器演奏が主となって即興演奏やアドリブが多く用いられるジャズとは、他の音楽と比べてあまり相性が良くないということが主な理由だろう(生演奏そのものとの同期は可能であるが、例えばフリー・ジャズのように予測不能なコード、メロディ展開に対応することは極めて困難である)。また、ジャズ・ミュージシャンやメインのリスナーの中には、ボーカロイドに拒否反応を示す人が他の音楽ジャンルに比べて多いので、こうした試みが少ないということがあるかもしれない。中には菊地成孔のように先進的な考えを持つ人もいて、dCprGによる『SECOND REPORT FROM IRON MOUNTAIN USA』(2012年)でもボーカロイドの兎眠りおんをフィーチャーした例があったが、実質的にはヒップホップ・トラックでのマイク・リレー的な使用だったので、厳密に言えばジャズとは異なるものだった。そうした点で本作は、手塚治虫と冨田勲と初音ミクのコラボという意味と同時に、ジャズとボーカロイドの融合が試みられた数少ない例のひとつとして取り上げられるべきものだ。

 冨田勲は晩年の『イーハトーヴ交響曲』で初音ミクを用いるなど、ボーカロイドの可能性に理解を示した音楽家だったが、今回のバック演奏を行なうピアニストの佐藤允彦も負けず劣らず柔軟な音楽性を持つ。1960年代のモダン・ジャズ全盛期から活躍し、宮沢昭のバンドでバップやモードからフリーへと進み、1970年代初頭頃は石川晶、穂口雄右、水谷公生らとジャズ・ロックやジャズ・ファンクを演奏し、1980年代はメディカル・シュガー・バンクでフュージョンと、あらゆるジャズのスタイルをやってきた。チャールズ・ミンガスやウォルフガング・ダウナーなど海外勢との共演も多い。宮沢楽団で一緒だった富樫雅彦と共に現代音楽やフリー・インプロヴィゼイション、アヴァンギャルドにも通じ、『火曜日の女』や『デマ』といった実験的なサントラやTV音楽から、ヘレン・メリルや後藤芳子などジャズ・シンガーの伴奏と幅広い活動を行なってきた。過去に手塚治虫のアニメ映画『ユニコ』、カルト・アニメ・サントラとして海外でもマニアックな人気のある冨田勲作曲の『哀しみのベラドンナ』でも演奏し、手塚・冨田両氏とも少なからぬ縁がある。たとえば若手ミュージシャンがボーカロイドを使って演奏することは驚くべきことではないかもしれないが、彼のような現役最年長クラスの大御所ミュージシャンがこの企画に賛同して演奏を行なったことにより、オーソドックスなジャズの生演奏とボーカロイドの融合も可能で、ボーカロイドは決して若い世代のものだけではないという証明にもなっている。

 編成はピアノ・トリオ+パーカッションで、ドラムの村上寛も佐藤同様に1960年代より活動するベテラン。ベースの加藤真一は佐藤とのデュオでアルバムも出している。パーカッションの岡部洋一が中ではジャズ界異色のメンバーと言え、ROVOなどにも参加するジャンルレスなミュージシャンである。彼の参加により、『ジャングル大帝』でのラテン~アフリカ音楽的なモチーフが生かされている。『リボンの騎士』のテーマ曲や“リボンのマーチ”はスインギーなピアノ・トリオもので、ボーカロイドを抜きに聴けば極めて洗練されたジャズ・アルバムと言える。『どろろ』についてはジャズ・ファンク風のリズムで、そこに日本の民謡風のモチーフを加えている。いろいろな音楽をやってきた佐藤允彦のアレンジ能力が生かされたものだ。ボーカロイドとの融合という点では、『ジャングル大帝』のテーマ曲におけるヴォーカリーズが面白い。ヴォーカリーズはジャズの器楽演奏の即興に対するものとして生まれた歌唱スタイルで、アドリブで歌詞を創作したり、歌詞のないスキャットで歌ったりする。日本では佐藤允彦も共演する伊集加代子がスキャットの名手として知られるが、ときにスキャットは生身の人間の歌声を超えたフェアリーなもの、神秘的なものというイメージを持つこともある。『ジャングル大帝』のテーマ曲もそうしたスキャットをイメージした初音ミクの歌がフィーチャーされる。ボーカロイドの特性のひとつに、人間では表現不可能な声を作ることがあるのだが、そうした点で『ジャングル大帝』のテーマ曲はボーカロイドの持ち味を生かしたものである。同じく『ジャングル大帝』の“アイウエオ マンボ”や『リボンの騎士』の“リボンのマーチ”でも、ワードレスのヴォイスや言葉遊びのような歌がリズミカルな曲調にうまくマッチし、ボーカロイドとのコラボが成功した場面を見せてくれる。しかし、逆に言えば本作の中でも人間の表現力に及ばない歌もあり、そうした点でボーカロイドはまだ発展途上のものであり、今後にもっと進化する余白を残しているということも示す。

 今回のリリース元である〈日本コロムビア〉は、かつて1975年に佐藤允彦のほか、鈴木宏昌、大野雄二ら8人のピアニスト/キーボード奏者を集め、エレクトロ・キーボード・オーケストラという鍵盤のみのプロジェクト企画でアルバムを作ったことがある(厳密には伴奏でギターやベースなども入ったのだが)。日本でもシンセサイザーが出始め、冨田勲が『月の光』で世界的に有名になった頃で、恐らくはシンセの普及を目指した販促的な意図もあった。エレクトロ・キーボード・オーケストラはモーグ・シンセなどで様々な音を合成し、アコースティックな楽器では作り出せない人造の音を生み出すなど、実験的な試みを行っていた。当時はトーキング・モジュレーターやヴォコーダーなど、ボーカロイドの発想の原点となる楽器やエフェクターが普及し始めた頃で、動物の声に似せたようなシンセ音を作るなど、大手レコード会社でよくこの企画が通ったなというくらい面白い試みだった。そうした企画に関わっていた佐藤允彦が、今回も〈日本コロムビア〉で初音ミクとコラボを行なったというのも歴史の巡り合わせである。

小川充

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 2017年は、漫画家・手塚治虫の生誕90周年、作曲家・冨田勲の生誕85周年、そしてヴァーチャル・シンガー・初音ミクの生誕10周年が重なる節目の年だ。
 冨田勲は2012年にオーケストラ『イーハトーヴ交響曲』で初音ミクとの邂逅を果たし、2016年には追悼特別公演として開催されたスペース・バレエ・シンフォニー『ドクター・コッペリウス』で初音ミクとコラボレーションしている。手塚治虫は、いま宝塚市立手塚治虫記念館で初音ミクとコラボレーションした『初音ミク×手塚治虫展』が開催されているところだ。そうした縁とそれぞれの節目が重なって実現したのが、この他に類を見ないコラボレーション・アルバムだ。

 アルバムの題から察するに、冨田勲が手塚治虫のアニメ作品のために手がけた名曲を初音ミクがカヴァーしたアルバム、と考えるだろう。しかしながら、全編を通して聴くと、単なるカヴァー・アルバムではなく手塚治虫と冨田勲のドキュメンタリーの一種であるという印象を強く受けた。
 まず、初音ミクがヴォーカルとして登場するのはもちろんだが、手塚治虫と冨田勲の略歴や作品の紹介からはじまり、ミステリー作家の辻真先や手塚治虫が残した作品を管理している手塚るみ子を招いて対談するなど、初音ミクが全編を通して語り手としても登場している。このようにヴォーカルのみならず作品のナビゲートも収録された作品は史上初だ。
 また、アルバム全体のストーリー構成を辻真先が担当していることも特徴的だ。初音ミクの台詞も書いており、辻真先と初音ミクの対談では一人二役という面白い状況も生まれている。このアルバムを通して両者がどのような人となりであったか、またどのようにして作品が生み出されていったのかを楽しみながら知ることができるだろう。

 本作で特に注目したいのは、初音ミクの歌声と喋りの進化だ。
 そもそも初音ミクは歌声合成ソフトであるため、自然に喋らせるためにはきめ細かい調整と多大な労力が必要で、それでも字幕なしで聞き取れるか否かという認識があった。しかしながら本作では一言一句を確かに聞き取れる上に、対談では驚きや焦り、冗談を言ったり言われたりと感情が表現されている。普段から初音ミクの歌声を聞いている人、またメジャーなアーティストとのコラボレーションでしかその歌声を聞いたことがない人でも、これまでとの差にはっきり気が付くほどだろう。
 また、歌声に関しても非常に滑らかになっており、平坦ではなく生演奏に寄り添うような揺れた歌い方になっている。これは、声優の前田玲奈が初音ミクの「歌の先生」を務めているからだ。簡潔に言うと、生演奏にあわせて前田玲奈が歌ったものをレコーディングし、その音声を解析・編集して初音ミクの声で再現しているようだ。初音ミクと前田玲奈がデュエットする“『リボンの騎士』から「リボンのマーチ」”にはその特徴が色濃く表れており、部分的に初音ミクの成分が強くなったり、前田玲奈の成分が強くなったり、はたまた両者をブレンドしたような声になったりしている。
 以前から、人の歌声データを読み取ってボーカロイドの調整のパラメーターを自動推定するジョブ・プラグイン「VocaListener」(通称、「ぼかりす」)があったが、本作で用いられているのはそれをさらに発展させようとしたものだ。この技術は初音ミクだけでなく、ヴォーカルとして参加しているUTAUの重音テトにも適用されているようで、重音テトの歌声もより表情豊かになっている。
 さらに驚くのが、エンディングで披露する初音ミクのラップ/ポエトリー・リーディングだ。喋らせることと同様に、滑らかにリズムよくラップさせることは歌わせる以上に難易度の高いという認識だった。ラップとリーディングの中間を行くような歌唱が確立されており、さらに歌詞の表示なしにはっきりと聞き取れるまでになっている(ちなみに、『別冊ele-king 初音ミク10周年』の特典音源は、この曲のDJ DUCTによるリミックスである)。表情豊かに歌わせることと並行してラップに関する技術開発も行われているようで、この技術はいずれ一般化されてユーザーに提供されることになると開発者の佐々木渉が発言している。

 このように、本作は手塚治虫と冨田勲の功績を振り返るドキュメンタリー的なアルバムであることに加え、初音ミクの歌唱に関して新たな技術と手法を取り入れた実験作であると言える。初音ミクの歌唱に関する実験的な取り組みから見えてくるのは、初音ミクができる表現をさらに広げて新たな可能性を切り開こうとしていること、またその過程で生まれた技術を、初音ミクを通じてクリエイターの人たちに提供していこうという開発者の志しだ。過去を振り返るとともに未来への期待を感じさせる、まさに今聴くべき作品であると思う。

しま

Move D & Thomas Meinecke - ele-king

 米国ではここ数年、警官による人種差別的な射殺事件が相次いでいる。そのような情況に対する歎きや憂いや怒りの念は、ケンドリック・ラマーやビヨンセといった大御所たちを筆頭に、すでに多くの音楽作品へと昇華されているが、それらの思いは大西洋を越え、ユーラシア大陸にまで到達しているようだ。
 ハイデルベルク出身のベテラン・ハウスDJ、ムーヴ・Dことダーヴィト・ムーファン。ハンブルク出身の著述家/ラジオDJ/音楽家、トーマス・マイネッケ。このふたりは90年代終盤から何度もコラボを重ねており、非常にコンセプチュアルな作品を発表し続けている。たとえば2011年の前作では、『Lookalikes(そっくりさんたち)』というタイトルのもと、シャキーラ、グレタ・ガルボ、ブリトニー・スピアーズ、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョセフィン・ベイカー、セルジュ・ゲンスブールの6組がピックアップされていたが、6年ぶりにリリースされた新作『On The Map』では、“Norfolk”、“Washington DC”、“Houston”、“East St. Louis”、“Watts”という、ブラック・カルチャーと縁の深い5つの地名が並べられている。アートワークがどこかブライアン・イーノの『アンビエント』シリーズを想起させる点や、リリース元がカッセム・モッセの〈Ominira〉であるという点も興味深いが、もっとも着目すべきなのはやはり、現在の合衆国の情況から大いに刺戟されたと思われるそのコンセプトだろう。
 リベリア共和国初代大統領の故郷であり、軍港を中心に発展した軍事都市であり、ティンバランドの出生地でもある、バージニア州ノーフォーク。言わずと知れたアメリカ合衆国の首都=政治経済の中枢であり、他方でジェリー・ロール・モートンの録音が収蔵されたアメリカ議会図書館を擁するなど、文化都市としての側面も持つワシントンD.C.(ちなみにライナーノーツには、その先駆たる古代エジプトのアレクサンドリア図書館のことを想起すれば、この地はサン・ラの宇宙とも繋がっている、というようなことが書かれている)。かつてライトニン・ホプキンスに活躍の場を与える一方、NASAの主要拠点たるジョンソン宇宙センターを抱え、また昨年象徴的なアルバムをリリースしたビヨンセを世に送り出した地でもある、テキサス州ヒューストン。デューク・エリントンのヒット曲にその名を刻み、あるいはマイルス・デイヴィスを育み、人口の97%がアフリカ系によって占められる、イリノイ州イーストセントルイス。そして、かつてジョニー・オーティスがナイトクラブをオープンした場所であり、1965年に大規模な暴動が発生した地区でもある、カリフォルニア州ロサンゼルスのワッツ。
 アルバムは全体的にダウンテンポを基調としており、ゆったりとしたビートがリスナーに最高の心地良さを提供する。そういう意味でこの作品はチルアウトとしての機能も具えているわけだが、しかし、随所に挿入されるジャズ~R&B~ファンクの断片とさまざまな音声たちが、夢の世界と現実世界との橋渡しをしている。各トラックにはその地に関連づけられた要素が落とし込まれていて、“Washington DC”はサン・ラのようだし、“East St. Louis”はマイルスの『On The Corner』のようである(というかこれ、サンプリング?)。あるいは“Norfolk”で繰り返される「We need peace」という言葉――合衆国でいま何が起こっているのか。聴き手に快楽と同時に思考の契機をも与える、とてもコンセプチュアルなアルバムである。

 そしてムーヴ・Dの創作意欲は枯れることを知らないようで、このマイネッケとの共作とほぼ同時に、べつのプロジェクトのアルバムもリリースされている。ムーヴ・Dと、彼とともにレアゲンツを組んでいるジョナ・シャープ、同じくムーヴ・Dとともにマジック・マウンテン・ハイを組んでいるジュジュ&ジョーダッシュのふたりが一堂に会したスーパー・グループが、マルホランド・フリー・クリニックである。
 トータルで80分を超えるかれらのデビュー・アルバムは、4人が昨年ベルリンでおこなったライヴをもとに制作されている。セオ・パリッシュに憧れるヨーロピアンたちがより洗練されたスタイルでジャムを繰り広げたらこうなりました、というと語弊があるかもしれないが、こちらのアルバムも心地良さと実験性との間のバランスの取り方が巧みで、全体を貫通するその熱量には黙って屈服するしかない。“Boneset”や“Gone Camping”のスペイシーさもたまらないが、白眉は“Ebb & Flow”のイルな展開だろう。

 2017年はベテラン勢が地味ながらも良質な作品のリリースを続けている印象があるが、この『On The Map』と『The Mulholland Free Clinic』の2作もそういう類のアルバムだと思う。ムーヴ・D、50歳、絶好調である。

Broken Social Scene - ele-king

 今年の5月にアリアナ・グランデのコンサート会場で起きた痛ましい爆発事件の翌日、同じ市内のマンチェスターでライブを行ったブロークン・ソーシャル・シーンは、ゲストにマンチェスターのレジェンドことジョニー・マーを迎えて代表曲“Anthems for a Seventeen Year Old Girl”を一緒に演奏した。その日のステージでバンドの中心人物のケヴィン・ドリューは客席に向かってこう話した。
 「もっとも大事なことは、僕らがこうしてみなで一緒にいるってことなんだ」

 トータスのジョン・マッケンタイアをプロデューサーに迎えて制作した2010年の『Forgiveness Rock Record』を最後に活動を休止していたカナダ出身のブロークン・ソーシャル・シーンが再び集まったのは2015年。その年の11月にパリのコンサート会場などで起きた銃乱射事件がきっかけだったという。そこで仲間たちは再び集まる。別々の活動に散らばっていたメンバーはみな、空白の時間と同じ数だけ歳をとっているし、各々がソロとしても活動できる経験と才能を持ち合わせている。いまや誰もがひとりで音楽を作って簡単に発信できるような世のなかで、同じパートを担当する人間が何人もいるスーパーバンドなどは、もはや時代錯誤かもしれない。それでも彼らは集まった。かつてのように、一緒に音楽を奏でるために。

 ストロークスの『Angles』を手掛けたジョー・チッカレリをプロデューサーに起用した7年ぶりのアルバム『Hug of Thunder』。雷にハグされたような衝撃の後に生まれた作品。そのつど人数が変わるバンドは、今回18人のメンバーがクレジットに名を連ねている。先に公開されていた曲の素晴らしさにまず歓喜し、これはブロークン・ソーシャル・シーンの過去の名盤に並ぶクオリティになるだろうと確信を持っていた。今作から新たに参加したアリエル・エングルが3曲でリード・ヴォーカルを担っているのだが、同メンバーのファイストにも似たハスキー且つ儚さがプラスされたような歌声が、バンドの名だたる女性ヴォーカリストたちに引けを取らないような魅力を醸し出し、楽曲に淡い色彩を美しく落とす。もちろんケヴィンやブレンダン・カニング、ファイストやエミリー・ヘインズやリサ・ロブシンガーなどお馴染みのメンバーも曲ごとに代わる代わる歌っているし、歌詞カードを覗くと“Skyline"のところに元ジェリー・フィッシュの名前も見つかったり(まあヴォコーダーで参加なのでよくわからないけれど)、相変わらずドラマチックなホーンの音色といい、大所帯バンドの醍醐味を改めて確認できる。ファイストが歌うタイトル曲は、同時期に出したソロ・アルバムの尖ったギター・ロックとはまた違う浮遊感のあるサウンドで印象的。出はじめの頃はポスト・ロックなどとも括られ、じょじょにエクスペリメンタル・ミュージックの要素を深めてきた音楽は、ときにたくさんの輝きがぶつかり合って得体のしれないパワーを発揮していたこともあったけれど、今作は少しシンプルでより誠実なサウンドに変化を遂げている。バラバラの個性はそのまま残しながら、内側に暖かく強いエネルギーを放つ。何かを隠して白く塗り潰された壁の前で共に並んで自由に絵を描くみたいに。

 ブロークン・ソーシャル・シーンの音楽を聴いていると、自分がそのクリエイティヴなものに混じって一緒に何かを作り上げているような気分にすらなる。そして“Halfway Home”で、演奏する男性たちの真んなかで女性たちが向かい合いながら

 And yon'll forget
 Call out for a change
 But not believe in anything!
 (そして君は忘れるだろう
  変化を求めて叫べ
  だけどなにも信じるな)

 と何度も何度も繰り返し腕を掲げて歌う凛々しい姿を見ると、たまらず胸が熱くなる。何だってできるような気がする。


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