「AY」と一致するもの

CASSETTE STORE DAY JAPAN 2017 - ele-king

 ヴェイパーウェイヴ以降、カセットどころかVHSというのもここ最近ではあるんだよね、これがまた。と同時に、デッキを持ってないのにエイフェックス・ツインのテープを買う人もいるわけで、どうせDLして聴くのなら無理してモノに拘らなくても……と思いますよ。それでもカセットが増えていくのは、個人単位のインディ・レーベルにとって、1台のコピー機さえ手に入れれば、(デザインはPCでできちゃうので)これほど出しやすいフォーマットはそうそうないからだろうか、あるいはフェティシズムの問題からなのだろうか……。
 ASSETTE STORE DAYが10月14日(土)と迫っております。2013年に英国ではじまったこのイベント、いまや欧米で毎年開催され、日本では昨年から開催となった。
  今年のカセットストアデイは、ディスクユニオンをはじめ、全国のカセット好きなレコード店でいろんなカセットテープが販売されます。(詳しくはサイトを見て下さい)イアン・マーティンの〈Call And Response〉、五十嵐の〈Mastered Hissnoise〉も、数々の力作を引っさげて参加しているようです……なんでも今年は初音ミクがアンバサダー就任したそうで、ミクのカセットプレイヤーまで売られるそうですよ。
 個人的には清水靖晃の『案山子』が欲しいです。

https://cassettestoreday.jp/


こちらは〈Mastered Hissnoise〉のカセットテープ。CD HATAとInner Scienceの1本は、アンビエント/ドローン好きには外せないっすね。岡山のKEITA SANOもあるじゃん!


五十嵐とは真逆に位置する初音ミクですね。活躍してますな-。

DJ HARVEY - ele-king

 DJ界の生きる伝説と言えば、DJハーヴィーである。とにかく、20年以上も、世界中のハードコアなパーティ・ピーポーを魅了し続けるバレアリックの真の王様を体験しよう。ひょっとしたら君の人生で忘れがたいほどもっともすさまじい夜になるかもしれない……また、つい先日、彼にとっての初のコンピレーション・アルバム『The Sound of Mercury Rising Complied with Love by DJ Harvey』もリリースされたばかり。こちらも外せない!

DJ HARVEY 2017 TOUR OF JAPAN

DJ HARVEY (Locussolus, Wildest Dreams / LA)

https://www.facebook.com/HarveyDJay/
https://www.instagram.com/harveysgeneralstore/


11/17(金)@江ノ島OPPA-LA(https://oppala.exblog.jp
11/18(土)@東京CONTACT(https://www.contacttokyo.com


DJ Harvey
The Sound Of Mercury Rising Complied With Love By DJ Harvey

Pikes Records / Music 4 Your Legs
国内盤特典:DJ HARVEYによる直筆サインをデザインしたステッカー付き


DJ HARVEY (Locussolus, Wildest Dreams / LA)

https://www.facebook.com/HarveyDJay/
https://www.instagram.com/harveysgeneralstore/

ハウス、ディスコ、バレアリック・シーンのカルトリーダー、リエディットの帝王。そして、DJとしてもっとも神の領域に近い男と称されるリヴィング・レジェンド、DJ HARVEY(DJハーヴィー)。

イギリス・ケンブリッジ出身。1980年代半ばのロンドンでDJキャリアをスタート。DIYクルー「Tonka Sound System」に属し、セカンド・サマー・オブ・ラヴの狂騒の真っ只中にウェアハウス・パーティーやレイヴでその名を馳せ、1991年に自身のパーティー「Moist」を始める。Harveyのコネクションにより「Moist」には、ニューヨークの伝説のクラブParadise Garageのレジデントで今もDJの神として崇められている故Larry Levanをはじめ、アメリカやヨーロッパのDJたちが数多く出演。後のニューハウスと呼ばれるシーンの起源となった。またHarveyは、当時イギリス初の巨大クラブとなるMinistry of Soundのコンセプトおよびサウンドシステムの設計を担っていたLarryをサポートするほか、同クラブのレジデントも務め、名実共にトップDJの階段を昇りつめる。プロデューサーとしても、1993年にGerry Roonyと共にレーベル<Black Cock>を立ち上げ、近年再評価著しいディスコ・リエディットの源流となる傑作を多数リリース。1996年に自身初のミックスCD『Late Night Sessions』を<Sound of Ministry>よりリリース。2001年には、Sarcasticのプロモ・ミックス『Sarcastic Study Masters Volume 2』を発表。2000年代以降のコズミックやバレアリック・シーンに決定的影響を及ぼしたこのマスターピースは、世界最大の中古音楽市場「Discogs」で、ミックスCDとして史上最高額となる500ドルの値が付けられている。

2002年にアメリカ・ロサンゼルス(ヴェニスビーチ)に移住。国境を越えてハードコアなパーティー・ロッカーが集うウェアハウス・パーティー「Harvey Sarcastic Disco」やホノルルのThirtyninehotelでレジデントDJとして活躍。ロングセットでのDJスタイルや、レフトフィールドなディスコ、バレアリック復権への大きな流れを作った。LAアンダーグラウンドの聖地として「Harvey Sarcastic Disco」はカルト的な人気を誇り、あまりの混雑ぶりに、かのBeyoncéでさえ入場を拒否されてしまったというエピソードがあるほどだ。また、サーファー、スケーター、バイカーでもあるHarveyは、「Dogtown & Z-Boys」のオリジナル・メンバーとして知られる伝説のスケーター、Tony Alvaをフィーチャーしたエキシビション・ツアーに同行して、ミックスCD『Mad Dog Chronicles Soundtrack』を提供。ストリート・カルチャーとロックが同居する自身のバックグラウンドを垣間見せた。2007年には、同郷で盟友のThomas Bullock (Rub N Tug)とのユニット「Map of Africa」名義のアルバムを<Whatever We Want>からリリース。サイケデリック〜ダビーなバレアリック・ロックサウンドを展開した。

2010年にようやくビザの問題が解決して、アメリカ国外への渡航が可能になると、世界中からオファーが殺到。その最初のツアー国は日本であった。奇跡の再来日が実現した2010年GWのジャパンツアーでは、全国12都市を回り1万人以上を動員。狂熱に満ちたHarvey旋風が日本中に吹き荒れた。また、母国イギリスはロンドンのOval Spaceで開催された10年ぶりの凱旋パーティー「Red Bull Music Academy presents DJ Harvey」は、チケット発売後わずか1分でソールド・アウトを記録。そのほか、ベルリンのBerghain / Panorama Bar、ロンドンのFabric、Ministry of Sound、イビサのSpace、Pacha、DC-10、パリのRex、Concrete、フランクフルトのRobert Johnson、アムステルダムの​Trouw、モスクワの​ARMA17、テルアビブのBlock、バリのPotato Head、ニューヨークのOutput、シカゴのSmartbarなど、世界各国の主要クラブはもちろん、Coachella、Panorama、ADE、Sonar、Mutek、Movement、Dekmantelなどのフェスにも登場。Festival No.6ではGrace Jonesとダブル・ヘッドライナーも務めた。Rolling Stone誌でHarveyは、「DJ界のキース・リチャーズ」と評され、「世界に君臨するDJ」トップ10にランクイン。昨夏は、日本を代表する野外音楽フェス「フジロック」20周年記念の大トリも飾った。

制作面では、シングル、リミックス、リエディット作品のほかに、オリジナル・アルバムを3枚リリース。1枚目は、先述の「Map of Africa」名義のアルバムで、2枚目は、ディスコ、ロック、テクノ、そしてハウスなどをブレンドしたフロア・ライクなソロ・プロジェクト「Locussolus」名義のアルバムを、2011年に<International Feel>から発表。3枚目は、4人組サイケデリック・バンド「Wildest Dreams」名義のアルバムを、2014年に<Smalltown Supersound>よりリリース。ミックスCDはこれまでに、歴史的名盤『Sarcastic Study Masters Volume 2』をはじめ、オフィシャル、アンオフィシャルを合わせて6作発表している。そして今年9月29日に、自身初のオフィシャル・コンピレーションCD『The Sound of Mercury Rising Complied with Love by DJ Harvey』を、<Pikes Records> / <Music 4 Your Legs>(国内盤)よりリリース。この作品は、バレアリック・サウンドが生まれたスペイン・イビサ島の伝説的ホテルPikes Ibizaで、Harveyが2015年より毎夏レジデントを務めているパーティー「Mercury Rising」をパッケージ化したコンピレーション・アルバム。Harveyは、毎週月曜の「Mercury Rising」で、サンセットからサンライズまで10時間以上に及ぶロングセットをプレイしてきたが、そこでのグルーヴやバレアリック・フィーリングと共に、3シーズンに渡りフィーチャーしたトラック12曲(1976〜2016年の40年間にリリースされたディスコやダンスミュージック)をセレクト、コンパイルしている。

The National - ele-king

 ザ・ナショナルの4年ぶり7枚目のアルバム『Sleep Well Beast』を手にした瞬間、暗い……と思った。とにかく2017年によく聴いたアルバムは、何故かこのようにどれもこれもジャケットが暗い。発売直後のレコード屋の店頭ではこのザ・ナショナルの7枚目のアルバムの横に、同時期に発売された白々しいほど真っ青な空を写した明るいジャケットのLCD サウンドシステムの復活作『American Dream』が並べられ、対比的なフロムアメリカの音楽の表情の違いにひとり笑ってしまいそうになったが、どちらも実は絶望しているという点では同じことなのかもしれない。

 『Sleep Well Beast』というアルバムは、この世ではないどこか別の場所で鳴らしているような“Nobody Else Will Be There”の重いピアノの音色からゆっくりとはじまる。予想通り、闇のように暗い。しかし2曲目の「Day I Die」。「僕が死ぬ日、僕が死ぬ日、僕らはどこにいるんだろう?」と先の見えないいまの世のなかに問いかけるかのように繰り返される痛々しい言葉。それとは裏腹に、高まる鼓動のように早く鳴り続けるリズムの力強さと、重なり合う美しいギターのフレーズ、突き抜けるメロディの高揚感が混ざり合い、死を意識しているというのに恐ろしいまでに生命力に溢れたパフォーマンスを叩きつけられる。キャリアを積み重ねてきたバンドの底力を感じるような曲の凄さに、ここでまず身震いする。
 その後も、感情的なギターフレーズにやられる4曲目の“The System Only Dreams In Total Darkness”や、荒々しい6曲目の“Turtleneck”、機械と人力の両方のリズムを使って登りつめていく8曲目“I 'll Still Destroy You"から、先行配信されていた9曲目の“Guilty Party”に続き、それを繋ぐように挟まれたピアノの穏やかな曲で抑揚を効かせて、終わりへとどんどん向かっていく。メロディアスなコード進行と、寡黙なリズムと、静かに爆発する美学。作品を覆う全体のトーンは一貫していて、まあ素晴らしいこと。

 2015年に発表されたヴォーカルのマット・バーニンガーがメノメナのブレント・ノップフと組んだサイド・プロジェクトEL VYのユルくておかしなアルバム『Return To The Moon』を気に入ってよく聴いていたので、『Sleep Well Beast』のマットの歌声を久々に耳にして、曲調によってこんなに印象が変わるものかと驚いてしまった。ザ・ナショナルに戻った瞬間、本領発揮と言わんばかりに影を作りだす力は一体どこに隠していたのだろう。地を這うような低い歌声はさらに深みを増している。それぞれがギターやキーボード、サウンド・プロデュースなどを担当するデスナー兄弟は、バンドの活動から離れたところでクラシックや映画音楽に関わっていると聞いているし、年齢とともにじょじょに実験的な音楽に変貌を遂げてもおかしくはないのに、それなのにザ・ナショナルときたら、エレクトロニックな音をところどころに使いながらも淡々とエネルギーを燃やすように、奇をてらわずに、真っ当なロックをいまだ奏でるなんて、敵わない。弱音や皮肉や諦めを乗せた歌詞を優しく包み込むエモーショナルな音を前にすると、枯れて朽ち果てていく肉体にも感情はあり、ちゃんと生暖かい血が流れていることに気付く。これは何回か聴いて1ヶ月後には忘れ去られてしまうようなアルバムとは明らかに違うということ。そして聴き終えた後に、誰かに伝えたくなるような使命感をもたらすもの。暫くザ・ナショナルから離れていた人や、いままで出会う機会がなかった人のところにもちゃんと届けばいいと祈っている。

 『Sleep Well Beast』は暗い。けれどもう一度ジャケットを見てほしい。弱いながらも光はあり、そこには誰かがいる。真夜中に窓の外を眺めて、遠くの方に知らない家の窓の灯りを確認できたら、今日のところは黙って毛布にくるまり、穏やかに眠りにつこう。

 よくお眠り、獣よ、君もね。

行松陽介 - ele-king

ZONE UNKNOWN List Oct.

Belief Defect - ele-king

 クラフトワークが世界の音楽史に刻み付けたものは、電子音によるマシニックな反復が快楽を生み、それが新しいポップ・ミュージックとして機能してしまったことへの衝撃であろう。そう、彼らはパンドラの箱を開けてしまったのだ。
 いや、そもそも「反復」はダンス・ミュージックの基本でもあるといえる。クラフトワークの前にはスライがいた。だからこそクラフトワークの影響は、エレクトロやヒップホップ、テクノにも広く伝搬した。
 反復という快楽。人間からロボットへ。その「20世紀後期なアイロニー」が(こと「戦後」西ドイツという地であればなおのこと)音楽の快楽の源にもなりえるというのは、ジャーマン・ロック特有の性質(反復性)を差し置いてもクラフトワークたち本人たちですらも予想していなかったことではないか。日本のイエロー・マジック・オーケストラもクラフトワークなくして誕生しえなかったのはいうまでもない。
 では、そこで生まれた新しい音楽受容感覚はどういったものだったのか。それは神経的な音響・音楽といったものだ。音階に情動が生まれるという「感覚的なもの」ではなく、電子音に対して「神経的」なアディクションが起こること。それが音への顕微鏡的な感覚をも生成した。エレクトリック・ギターの轟音がサイケデリックな知覚の扉を開いたように、電子音は音と神経的な感覚への接続を生んだのだ。その意味でジミ・ヘンドリックスとクラウトワークを知覚/神経的な20世紀後半にかけてのポップ・ミュージックの二大神と呼んでも差し支えないないだろう。そしてジャパニーズ・ゴッド神メルツバウはその極限的存在でもある。スライ、ジミヘン、クラフトワーク、イエロー・マジック・オーケストラ。メルツバウ。
 ニューロン・ネットワーク的な音響は、20世紀末期から21世紀初頭にかけての非アカデミックなコンピューター音楽である電子音響/エレクトロニカを生むに至る。特に東ドイツ出身のアーティスト、アルヴァ・ノト(カールステン・ニコライ)や、ピーター・レーバーク(ピタ)が主宰するレーベル〈メゴ〉ら、グリッチ以降の電子音響へと受け継がれた。
 その意味で、現在最先端の電子音楽/電子音響は概ね70年代以降の実験と実践の成果を踏まえているといえるし、どうであれクラフトワークの影響は枝分かれしつつも確かに受け継がれている。それゆえ現在では、その大きさゆえに反発する音楽家も多いはずだ。だがわれわれの聴覚は1970年代のクラフトワークによって、感性的な音楽聴取から神経的な音響聴取の直接性へと一度、転換させられたのは事実である。

 そして現在のインダストリアル/テクノは、2010年代初頭的なダークな物語性を脱して、今、一度、電子音の衝撃性・直接性を聴覚に摂取させるような方向性にまた舵を切りつつある。このビリーフ・デフェクト(Belief Defect)の最初のアルバム『デカダン・イェット・ディプレイヴド(Decadent Yet Depraved)』はその過渡期的なアルバムに思えた。ポスト・ヒューマン的なダークな物語性と直接的な音響衝撃性を折衷化させたようなインダストリアル/テクノなのである。
 本作はアルヴァ・ノト(カールステン・ニコライ)の〈ノートン〉と分裂したバイトーン(オラフ・ベンダー)主宰の〈ラスター・メディア〉(旧〈ラスター・ノートン〉)の二番めのレコードである。ちなみに一番めはアイランド・ピープルのレコードだ。どこかタルコフスキーの『惑星ソラリス』のような雰囲気を持ったアルバムであった。対して本作はインダストリアル/テクノだ。レーベルの再出発にあたり、現代的なアンビエントとインダストリアルを打ち出したのは、世の潮流を踏まえた選択だろう。じじつ、サラ・シトキン(Sarah Sitken)のアートでパッケージングされた本作には、むしろ2010年代初頭的なインダストリーでダークなムードが満ちている。世界の、というより世界から浸食されてしまう個人の不安というべきものだ。脱色された音響世界を響かせるというよりは、「世界」への呪詛(?)、個人のインナースペースへと遡行するイメージである。何しろユニット名が「信念の崩壊」を意味するのだから。

 このユニットに関しては詳しいことは分かっていない。というよりレーベル側はあえてインフォメーションしていない。アンダーグラウンドな音楽シーンに精通した二人組であること。2017年のベルリン・アトナル(Berlin Atonal)で公演がなされたことは分かっている。これだけだ。一説ではその正体はDrumcellとLuis Floresとも言われているが、真実は分からない。
 今の時代、匿名性をまとうことは難しい。いずれ出自が公表されるだろうが、〈ラスター・メディア〉がまったく情報を公表せずビリーフ・デフェクトのアルバムをリリースしたことは、ある意味、スーパーグループ的だったアイランド・ピープルと対になっている。レーベルは情報の遮断と音の存在感を両立させたいのだろうか。いずれにせよ(反)時代的な試みだ。
 さらにレーベルはこのアルバムを「この黙示録的な時代のサウンドトラックであり、人類の状態とその未来の未来への妥協のない反映」と語っている。じっさいトラックはどれも高品質である。深く強く研ぎ澄まされたキックに、歪んだボコーダー・ヴォイスと不穏な電子音が鳴り響く1曲め“Unnatural Instinct”、女性の息遣いのような音から始まるA面2曲め“The Conduit”、ヴォイスによるリーディングに激しいビートが重なるB面2曲め“No Future”など、「声」を加工したトラックが多く、これらも人間以降の「黙示録」的な世界観を演出しているかのように聴こえる。
 どのトラックも80年代的なディストピア感覚を10年代的な感性で上手く蘇生している。サウンドは〈ラスター・ノートン〉的な細やかさとオラフ・ベンダー的なダイナミズムが融合しており、〈ミュート〉からリリースされたカールステン・ニコライとオラフ・ベンダーのユニットであるダイアモンド・ヴァージョンを思わせもする。つまり質が高いのだ。
 私がアルバム全体を聴いた印象は「ダーク・クラフトワーク」と形容したいものである。いわば電子音楽の歴史を、2010年代の不穏の空気感によって一気に「リマスター」していく。そんなアルバムに思えた。

Diggin' In The Carts - ele-king

 これ、めちゃくちゃおもしろそうじゃないですか! なんと〈Hyperdub〉が、日本のゲーム・ミュージックに特化したコンピをリリースします。エレクトロニック・ミュージックの文脈に属する音楽家がゲーム・ミュージックを手掛けた例で言うと、しばらく前ならアモン・トビン、比較的最近ならデヴィッド・カナガハドソン・モホークなどが思い浮かびますが、そもそもそういう土壌が用意されるに至った経緯って、たしかにあまり整理されていない印象がありますよね。両者のあいだには切っても切れない縁があるというのに……どうやら〈Hyperdub〉はその歴史を紐解こうとしているようです。しかもイベントまで開催されるとのこと! 詳細は下記をご確認ください。

世界に影響を与えた日本のゲーム・ミュージックの歴史を紐解く
革新的コンピレーション・アルバム『Diggin' In The Carts』のリリースが決定!
11月のライヴ・イベントには、アルバムの共同監修を務めたKode9の来日も発表!
アートワークを手がけた森本晃司とのスペシャル・コラボを披露!

音楽ファンが、音楽ファンのために作った、ゲーム音楽のアルバム。それは1984年に生まれた世界初のゲーム音楽レコード『ビデオ・ゲーム・ミュージック』以来の試みだ。当時細野晴臣が担った役割を、ここでは〈Hyperdub〉が担っている。セレクターの醸し出す味わいまで含めて、ぜひともご堪能いただきたい。 - hally (VORC)

1980年代から90年代にかけデジタル合成によって誕生した、耳にこびりついて離れない8ビットおよび16ビットのゲーム音楽は、小さな幼虫のように蠢きながら日本で繁殖。クラシック音楽や、ロック、レゲエ、初期シンセ・ポップのメロディをデジタル・データに変換しつつ、いくつもの群れとなって瞬く間に世界中に這い広がり、全世界のゲーム・プレイヤーたちの“記憶装置”に寄生した。それは回路基板の中で増殖し、やがて活気溢れるチップチューン・クローンの亜種を生み出して、ヒップホップからテクノ、ハウス、グライム、ダブステップ、フットワークからその先に至るまで、エレクトロニック・ミュージックの様々なジャンルにおける多種多様な突然変異体に影響を及ぼしている。 - Kode9

80年代後期から90年代中期にかけて、日本のゲーム・ミュージックが生んだ貴重かつ革命的な楽曲ばかりを集めたコンピレーション・アルバム『Diggin' In The Carts』が、イギリスのエレクトロニック・ミュージック・レーベル〈Hyperdub〉からリリースが決定! 34曲もの楽曲を収録した本作は、レッドブル・ミュージック・アカデミーによるドキュメンタリー映像シリーズ『ディギン・イン・ザ・カーツ』が発端となり、エレクトロニック・ミュージックの発展を語る上で欠かすことのできない日本のゲーム・ミュージックが、いかに世界に影響を与えたかを紐解き、その歴史を探る内容となっている。同ドキュメンタリー映像シリーズで監督を務めたニック・デュワイヤーと〈Hyperdub〉主宰のKode9(コード9)が研究を重ね、監修を務めて完成させた楽曲集は、いまなお進化し続ける日本のゲーム・ミュージック初期にあたるチップチューン黎明期を掘り下げた貴重なアーカイヴ作品となっている。今回の発表に合わせ、1993年に発売されたスーパーファミコン用ゲーム『The麻雀・闘牌伝』のために、ゲーム音楽家、細井聡司によって作曲された楽曲“Mister Diviner”が公開された。

Soshi Hosoi - Mister Diviner (The Mahjong Touhaiden)
https://bit.ly/2yHU6u3

また本作では、『MEMORIES -彼女の想いで-MAGNETIC ROSE』や『アニマトリックス―ビヨンド』といったアニメーション作品で知られ、STUDIO4℃の創設メンバーとしても知られるアニメーション作家、森本晃司がアートワークを手がけている。

今作に収録された音楽は、ファミコン、スーパーファミコン、PCエンジンといった世界的に知られる日本のゲーム機や、MSX、MSXturboR、PC-8801といった8ビット・パソコン、16ビット・パソコンのために作曲されたものである。本作は、それらの楽曲を“ゲームのための音楽”としてだけではなく、電子音を駆使して日本から生まれた重要な音楽作品として捉え、ショウケースしている。

世界的なアート作品は、時として与えられた制限の中で生まれるもの。中でもエレクトロニック・ミュージックが最も革新的で影響力を持った要因は、当時のアーティストが、その時代のテクノロジーの持つ制限の中で、その可能性を最大限に引き出そうとしたことにある。80年代~90年代初期に生まれた8ビットや16ビットのゲーム・ミュージックは、作曲家たちが、データ量やチャンネル数が極めて制限された中で、様々なサウンドや音色、メロディを組み合わせることによって生み出された。新たなゲーム機が開発されるたびに新しいサウンドチップが作られ、それがまた新たな個性を生んだ。日本のゲーム会社は、様々な方法を駆使して、サウンド面で刺激的な工夫を凝らした。独自のサウンドチップを開発し、そのゲーム機の持つ可能性を最大限にまで引き出したり、ゲーム音楽家が独自のサウンドパレットを生み出すためのコンピューター・ソフトも開発された。

本作には、スティーヴ・ライヒの影響を感じさせる細井聡司の“Mister Diviner”の他にも、メガドライブのシューティング・ゲーム『サンダーフォースIV』のために山西利治が作曲した“Shooting Stars”、コナミのサウンドチーム、コナミ矩形波倶楽部が『魍魎戦記MADARA』や『エスパードリーム2』といったゲーム作品のために手がけた数々の楽曲を収録。『Diggin' In The Carts』はゲーム・ファンと音楽ファンの両方が、間違いなく満足するであろう、ゲーム音楽の素晴らしさと深みをかつてないほど詰め込んだゲーム音楽の枠を超えた金字塔的音楽作品だ。また国内流通仕様盤CDには、ゲーム音楽史研究家としても知られるhally (VORC)によるライナーノーツと、オリジナル・ステッカーが封入される。

また本作の完成に合わせ、『Diggin' In The Carts』のライヴ・イベントが、東京、ロンドン、ロサンゼルスで開催される。アルバムのリリース日となる11月17日(金)に、恵比寿リキッドルームにて開催されるレッドブル・ミュージック・フェスティバル主催の東京公演では、本作の監修も務めたKode9と、アートワークを手がけた森本晃司によるスペシャルなオーディオ・ヴィジュアル・ライヴが披露されることも決定した。

label: Hyperdub / Beat Records
artist: V.A.
title: DIGGIN IN THE CARTS
release date: 2017/11/17 FRI ON SALE
国内流通仕様CD BRHD038 定価 ¥2,200(+税)
hally (VORC)による解説 / オリジナル・ステッカー封入

【ご予約はこちら】
amazon: https://amzn.asia/hwxms4X
iTunes: https://apple.co/2ybCIk9


【ライヴ・イベント情報】

RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2017 presents
DIGGIN' IN THE CARTS
電子遊戯音楽祭

日 時:2017年11月17日(金) 開場19:00/開演19:30~
場 所:LIQUIDROOM(恵比寿)
料 金:前売3,500円 *20歳未満は入場不可。顔写真付き身分証必須。
出 演:Kode 9 × Koji Morimoto AV, Chip Tanaka, Hally, Ken Ishii Presents Neo-Tokyo Techno ('90's Techno Set), Osamu Sato, Yuzo Koshiro × Motohiro Kawashima and more

interview with MASATO & Minnesotah - ele-king

 90年代のレア・グルーヴのムーヴメントやヒップホップのサンプリングを通じてソウル・ミュージックに出会い、魅了されていった。言うまでもなく、そういう音楽好きやヘッズは僕ぐらいの世代にもたくさんいる。それなりの値段のするオリジナル盤を血眼になってディグるようになったDJやコレクターの友人も少なくない。そして、それらのソウル、あるいはファンクやジャズ・ファンク、スピリチュアル・ジャズやソウル・ジャズの多くが70年代のものだった。最初から60年代のソウルに積極的に手を出す人間はあまりいなかった。それは、60年代のR&Bやソウルすなわち米国南部のサザン・ソウルの独特のいなたさや渋さの良さを理解するのには時間を要したからだった。ちなみに僕は、『パルプ・フィクション』(94年)のサントラに収録されたアル・グリーンの“Let's Stay Together”によって――この曲は71年発表なのだが――60年代のサザン・ソウルへの扉を開くことになる。


MASATO & Minnesotah
KANDYTOWN LIFE presents “Land of 1000 Classics”

ワーナーミュージック・ジャパン

R&BSoul

Amazon Tower HMV iTunes

 前置きが長くなった。KANDYTOWNのDJであるMASATOとMinnesotahが今年70周年をむかえるアメリカの老舗レーベル〈アトランティック〉の楽曲のみで構成したミックス『KANDYTOWN LIFE presents “Land of 1000 Classics”』を発表した。〈アトランティック〉は駐米トルコ大使の息子で、ジャズやブルースの熱狂的なファンだった非・黒人であるアーメット・アーティガン(当時24歳)らが1947年に設立している。〈モータウン〉より12年も早い。そして〈アトランティック〉と言えば、50~70年代のR&Bやサザン・ソウルを象徴するレーベルでもある(ちなみに〈アトランティック〉は現在〈ワーナー〉傘下にあり、ブルーノ・マーズや、先日ビルボードのHOT 100で1位に輝いたデビュー曲“Bodak Yellow (Money Moves)”で目下ブレイク中の女性ラッパー、カーディ・Bも所属している。客演なしの女性ラッパーの曲のビルボートHOT 100の1位はローリン・ヒルの“Doo Wop (That Thing)”(98年)以来の快挙だという。つまり現役バリバリのレーベルだ)。

 MASATOとMinnesotahは“ソウル・ミュージック”をテーマとして50~70年代の楽曲を24曲選んだ。カニエ・ウェストが“Gold Digger”でサンプリング/引用したレイ・チャールズの“I Got a Woman”で幕を開け、スヌープ・ドッグが“One Chance (Make It Good)”でサンプリングしたプリンス・フィリップ・ミッチェル“Make It Good”などもスピンしている。ヒップホップ・クルーのDJらしくサンプリング・ネタも意識している。が、僕が思うこのミックスの最大の良さは、ブレイクビーツやレア・グルーヴ的観点のみに縛られず、彼らの愛する、ソウル・ミュージックの真髄を感じるブルース・フィーリングのある曲やサザン・ソウルを丁寧に聴かせようとしている点にある。このミックスを通じてソウル・ミュージックの世界への扉を開く若い人が増えることを願う。MASATOとMinnesotahに話を訊いた。

アメリカのなんでもない田舎の道を走る車に乗っているときにアル・グリーンとかメンフィス・ソウルを聴いてたんですよ。それまではああいうソウルのいなたさや渋さがわからなかったんですけど、そのときに何かが「ヤバい」と思ったんですよね。 (Minnesotah)

高校の同級生にOKAMOTO'Sがいたんです。自分もロックにハマっていたので、ドラムのレイジと日本の昔のブルース・ロックみたいなものも聴いていて。そういうところから遡るとサム・クックとか、いろんなアーティストに繋がるじゃないですか。 (MASATO)

もともとおふたりはアナログで〈アトランティック〉のレコードをディグったりしていたんですか?

MASATO(以下、MA):けっこうディグってました。

Minnesotah(以下、Mi):〈アトランティック〉だけを意識していたわけではないけど、レコードを買っていくなかで〈アトランティック〉のものが集まっていったという。

CDに付いてる荏開津広さんの解説で、おふたりはDJを始めた頃、トライブやピート・ロック、ギャングスターやD.I.T.C.なんかの90年代の東海岸ヒップホップをかけていたと話されていますね。ソウル・ミュージックにはサンプリングのネタから入っていったんですか?

MA、Mi:そうですね。

MA:俺は90年代のヒッピホップを聴いていて、ピート・ロックとかジャジーなネタを使っているやつとか、それこそドナルド・バードやキャノンボール・アダレイとか、あのへんを聴いて「元ネタに勝てないな」と思ったところから入りましたね。

Minnesotahさんが10代でMASATOさんと出会った頃、すでにMASATOさんはクラブなどの現場でソウルをプレイしていたらしいですね。

Mi:そうですね。すごく早かったと思います。“ブレイク・ミックス”みたいな感じでやるんじゃなくて、最初からソウルのDJみたいな感じだったんですよね。元ネタとして繋いでいくというよりは、曲としてソウルをミックスしていくというスタイルを10代のときからやっていて、超渋いなと思っていましたね。

それは、90年代ヒップホップは好きだけど「元ネタに勝てないな」という気持ちもあって、そういうスタイルでソウルをプレイしていたんですか?

MA:そうですね。ヒップホップと元ネタを織り交ぜてかけるのが自分のなかでしっくりきたのかな。

今回のミックスでは、クイック・ミックスしたり、2枚使いしたり、そういうヒップホップ的なトリックをしないで、曲を聴かせる構成になっていますよね。

Mi:正直、クリアランスの関係でスクラッチとかはダメと言われたのはあります(笑)。でも僕らはもともとそこまでトリックを使うようなDJスタイルでもないので。

MA:逆に言うと、そういうミックスやコンピレーションは多いと思うんです。そうじゃなくて、1曲1曲をしっかり聴かせたかった。選曲もそこまでド渋な曲やレア・グルーヴだけではなくて、〈アトランティック〉のクラシックを選んでいます。だから、いまの若い人にも手にとってもらって聴いてもらえたらと思ってますね。

いま“若い人”という発言が出ましたが、おふたりはいまおいくつくらいなんですか?

MA:26です。

(一同笑)

若いですね(笑)。つまり“若い人”というのは10代ぐらいってことですよね?

MA:そうですね。あとは大学生とか。

ヒップホップのDJでソウルをディグったり、ミックスする先達といえば、やはりMUROさんやD.L(DEV LARGE)さんがいますよね。そういうDJたちから触発された部分はあったんですか?

Mi:多分にありますね。それこそMUROさんのミックスはめっちゃ聴いていたし。

MA:(MUROの)『Diggin'Ice』シリーズがあるじゃないですか。亡くなったYUSHIってやつがけっこうそのミックスCDを持っていて、それをみんなで回していましたね。

Mi:(『Diggin'Ice』シリーズの)テープもあったんで、それを借りたりもしていましたね。

MA:そういう感じで回して聴いていて、その影響はかなり強いですね。

そこで知った音楽も多いでしょうしね。

MA:そうですね。最初に『Diggin'Ice』の曲を集めようと思って買い始めました。

今回の〈アトランティック〉のミックスはすべてヴァイナルでやりました?

Mi:ぜんぶヴァイナルですね。

それは自分たちで持っているものだったんですか?

Mi:持っているものと、持っていないものは借りました。

今回ミックスするうえで改めて相当な量の〈アトランティック〉音源を聴いたのではないかと思います。〈アトランティック〉の良さはどういうところにあると思いましたか?

MA:昔の『レコード・コレクターズ』を読んで……

『レコード・コレクターズ』読むんですね、渋い(笑)。

MA:はい(笑)。知り合いのDJが、昔の『レコード・コレクターズ』の、〈アトランティック〉が50周年か60周年のときの特集号を探して持ってきてくれたんですよ。(内容は)カタログがあって、いろいろ説明があるという感じなんですが、〈アトランティック〉は〈モータウン〉とか当時の他のレーベルよりも早い段階でキング・クリムゾンなんかのロックや白人の文化にも手を出していて、そういうところで幅広いレーベルだと思いましたね。

そういうクロスオーヴァーなところはありますよね。クリームやレッド・ツェッペリンも出していますしね。今回のミックスにはジャズのミュージシャンやシンガーソングライター、アレンジャーの、いわゆるソウル・ジャズやスピリチュアル・ジャズ寄りの楽曲やブルース・フィーリングのある楽曲もありますよね。ユージン・マクダニエルズとかアンディ・ベイとかも入ってます。

Mi:そうですね。正しい言い方かわからないですけど、黒人音楽というか、ヒップホップに通じるもの、という解釈もありつつということですよね。

MA:自分のなかではここに入っているものはソウルとして解釈していますね。そのなかでもジャジー系とかファンキー系とかいろいろあるんですけど、大きくはソウルかなと。

選曲にはソウル・ミュージックというテーマがあったんですよね?

Mi:大前提はそういう感じだと思います。

なるほど。モンゴ・サンタマリアのサム&デイヴのカヴァー曲やアレサ・フランクリンの名曲も収録されていますね。で、アーチー・ベル&ザ・ドレルズは“Tighten Up”ではなく、“A Thousand Wonders”を選んでますね。

Mi:ピックするのはシングルとかじゃなくアルバム収録曲であること、かつ、わりと王道であること、というルールがあって。そこでさらに“Tighten Up”まで行っちゃうともう工夫がなさすぎるというか(笑)。つまんないよなってところですかね。

でも、アレサ・フランクリンは“Rock Steady”と“Day Dreaming”と、2曲入っていますね。

MA:それはもういい曲だからしょうがないですね(笑)。

Mi:どっちを入れるかって話になったときに、「どっちも入れるでしょ」ってことになりました(笑)。

先ほども話したように〈アトランティック〉ってクロスオーヴァーしてきたレーベルじゃないですか。だから極端なことを言えば、キング・クリムゾンやクリーム、あるいはミュージック・ソウルチャイルドみたいなより現代的なR&Bやミッシー・エリオットみたいなラッパー/シンガー/プロデューサーの曲も選べたわけですよね。それでも、50年代から70年代という時代に限定してソウル・ミュージックというテーマで選曲したということですよね。

Mi:でもそこは俺らも話し合う前からそうなっていたところはありましたね。

MA:勝手にこのへんだ、というのがあって(笑)。そこ以外はいっさい入れようということにならなかったですね。

Mi:〈ワーナー〉も俺らのスタイルみたいなものをわかってくれていて、その上でこの話を振ってくれたので、もうなんのディレクションもなくリストアップして出したって感じでしたね。あとはソウル・ミュージックとして王道というか、南部のフィーリングが出ている曲も多いですね。

僕もそこがこのミックスの面白さだと感じました。ウィルソン・ピケットの“In The Midnight Hour”が2曲目に入っていたり、アーサー・コンレイの曲があったり、70年代後半のだいぶ都会的に洗練されてからの楽曲ではありますけど、マージー・ジョセフが入っていたりしますよね。つまりサザン・ソウル色を感じます。

Mi:単純にソウルの真髄みたいなところはそこな気がしているんです。70年代というよりかはディープ・ソウルやサザン・ソウルのほうが黒人音楽のなかでも重要な気はしているんですよね。ミックスにそういうものが入ることってあんまりないじゃないですか。

あまりないと思いますよ。

Mi:70年代のネタ感のあるレア・グルーヴみたいなものが多いですよね。

そうですね。まずレイ・チャールズから始まるミックスはなかなかないですよね。

Mi: 70周年記念ということもあって、絶対にその流れは外せないなと思ったんです。

自分もヒップホップを通じてソウル・ミュージックに魅了されていったくちなんですけど、最初は60年代のソウルは理解できなかったんです。一言で言えば、渋過ぎたというか。それはなかったですか?

Mi:ありましたね。最初は良さがわかりませんでした。

60年代のソウルの良さがわかるようになったのって何がきっかけでした?

Mi:アメリカのなんでもない田舎の道を走る車に乗っているときにアル・グリーンとかメンフィス・ソウルを聴いてたんですよ。それまではああいうソウルのいなたさや渋さがわからなかったんですけど、そのときに何かが「ヤバい」と思ったんですよね。そこから60年代のソウルとか、サザン・ソウル、ディープ・ソウルを好きになりましたね。

MA:僕は高校のクラスメイトにやたらとJポップとソウルが好きな意味わかんないやつがいて、そいつがTSUTAYAとかでソウルのCDを借りていて、いろいろ教わっていたんです。そいつは特にサザン・ソウルが好きで、「『ワッツタックス』という映画を観たほうがいい」って勧められたんです。あの映画でルーファス・トーマスが出てきたときに「こいつヤバいな。このパンチ、ハンパねえな」って(笑)。そういう〈スタックス〉の影響がありましたね。あと、高校の同級生にOKAMOTO'Sがいたんです。自分もロックにハマっていたので、ドラムのレイジと日本の昔のブルース・ロックみたいなものも聴いていて。そういうところから遡るとサム・クックとか、いろんなアーティストに繋がるじゃないですか。

Mi:MASATOはそこが早かったですね。サム・クックも最初から好きだったし、俺はそういうところがすげえと思っていて。この人は別に60年代とかも聴けるんだなって。単純にソウルが好きなんだなとはずっと思ってました。

MA:たぶん“原点”を探すのが好きなんですよね。結局ビートルズもスモーキー・ロビンソンのカヴァーとか、(マーヴェレッツの)“Please, Mr. Postman”とかやっているし。あとはブッカー・Tとかスライ&ザ・ファミリー・ストーンもけっこう好きですね。

そういう話を聞くと、MASATOさんは60年代のR&Bやソウルをロックンロールの解釈で聴くところから入ったんですね。

MA:そういうところはありましたね。

そう考えるとレイジ君の存在は大きいんですね。

MA:自分のなかではけっこうデカかったですね。

この前大阪でやったときはマジでシラケましたもん。チャラ箱みたいなところで「クリス・ブラウンねーのかよ!」って言われたんで、「あるわけねーだろ。帰れよ」って言って。 (MASATO)

MUROさんはディグがオタクじゃなくて、カッコいいことだって示したじゃないですか。それはスタイルとして超ヒップホップだと思うし。若い世代でそういうDJが少なくなったんだとは思いますね。 (Minnesotah)

ということは、IO君とも同世代なんですか?

MA:自分はIOと同級生ですね。

Mi:俺はひとつ年下です。

KANDYTOWNにDJとして入ったのはいつ頃なんですか?

MA:明確な時期はわからないんですけど、もともとIOとか亡くなったYUSHI、RyohuやB.S.C、Dony JointでBANKROLLというクルーを作ったんですね。それとYOUNG JUJUたちの世代のYaBastaというクルーとたまに曲を作ったりしていたんですが、俺はあんまりやる気がない感じだったんですよ(笑)。でもYUSHIが亡くなったときにみんなで集まって、(KANDYTOWNを)やろうって話になったんです。それでまとまっていったというか、そこからかなという感じはしますね。

Mi:俺も同じような感じですね。あんまり明確に「みんなでKANDYTOWNやろうぜ!」みたいなのはなかったと思います。昔から友だちとイベントをやっていたりしていて、みんな知っていたというのはありますね。最初は小箱でMASATO君がイベントをやったりしていて、そのときはピーク・タイムにソウルやディスコを流してもみんなドッカンなんですよ。

MA:踊り狂いますね。

Mi:それはけっこうすげえなと思っていたんですけどね。

MA:まあ内輪だったんで。

Mi:それこそYUSHI君が車でMUROさんのミックスを流したりしていたし、IO君とかも親父がソウルを聴いたりしていたから自分も聴いていたし、みんな音楽的な隔たりみたいなものはなかったと思いますね。

近年7インチだけでプレイしたりするスタイルも定着しつつありますよね。レコード・ブームと呼ばれるような現象もあります。そういう流れはどう感じていますか?

MA:再発とかでもけっこう7インチで出たりするじゃないですか。それはいい面もあると思うんですけど、LPはLPでいい曲も入っているから、自分としてはべつに7インチだけでプレイをするとかのこだわりはないですね。。

Mi:俺も7インチとかにこだわりはなくて。単純に7インチにしか入ってない曲が欲しくなったら買いますけど。俺はいつもアナログは持ち歩いているんですが、同時にUSBも持ち歩いているんですよ。でもこだわりたくなるのはすごくわかりますね。ヒップホップっぽいというか、そういうぼんやりとしたイメージはあります。「やっぱりこの曲は7インチでかけるといいよね」みたいな、そういう衝動に駆られるときはありますね。

おふたりは根っこはヒップホップだと思うんですけど、いま現場でDJをしていて特に感じることはありますか。

Mi:俺は単純にいまのメインストリームのヒップホップの新譜がおもしろいと思っているのがありますね。あと、いまヒップホップを聴いている人たちが元ネタのソウルやファンクをそこまで気にしていないというのも感じますね。

MA:たぶん音楽に対して深く聴くみたいな感覚がなくなってきているんじゃないですかね。手軽にiPhoneにiTunesからどんどん落としていろんなものを聴けるし、そのぶんいろんな幅が広がっているのはいいのかもしれないですけど。

やっぱりそういうなかでアナログでDJする人は少ないんじゃないんですか?

MA:少ないですね。この前大阪でやったときはマジでシラケましたもん。チャラ箱みたいなところで「クリス・ブラウンねーのかよ!」って言われたんで、「あるわけねーだろ。帰れよ」って言って。

ははははは。いい話じゃないですか。

MA:でも、辛いですよね。お客さんが楽しめないというのもよくないから、自分としてもちゃんと場所を選んだほうがいいなとは思いますね。でも自分のスタイルは変えたくないので小さいところでもしょうがないかなって思ってきていて。

Mi:クラブの現場だとふつうにヒップホップをかけているほうがお客さんも踊れますしね。たとえば60分のDJのなかで最初の20分はヒップホップをかけて、だんだんソウルやファンクに寄せようかなと思ってかけ始めたら(お客さんが)引いていくみたいなこともぜんぜんあります。それは俺の力不足かなとも思っていて、そこをうまくかけるのが永遠のテーマではありますね。旧譜をバンバンかけるカッコいいDJが少なくなったからだとも思うんですよ。それこそMUROさんはディグがオタクじゃなくて、カッコいいことだって示したじゃないですか。それはスタイルとして超ヒップホップだと思うし。若い世代でそういうDJが少なくなったんだとは思いますね。

なるほどー。ふたりは自分たちが聴いてきた、聴いているソウルをもっと広く伝えたいという気持ちがあるということですよね?

MA、Mi:そうですね。

もしかしたらふたりの世代でそういう考えの人たちはマイノリティなんですかね。

MA:マイノリティだと思いますよ。いまはKANDYTOWNとして(ミックスを)出させてもらって、リスナーの人にも知ってもらう機会が増えたからこそ、自分としてはやり続けたほうがいいのかなと思っていますね。それで「いいな」と思って、レコードのカッコ良さとか昔のソウル・ミュージックやR&Bのカッコ良さに気づく人が少しでも増えてくれればいいかなと思いますね。

それは結果的に自分たちの力にもなってきていますよね。1曲目にレイ・チャールズがかかって、そこからどれだけの人がどう聴くかですよね。

MA:「うわ、ミスったー」とか思うやつもけっこういると思いますけどね、「友だちに高く売ろう」みたいな(笑)。

(一同笑)

interview with Penguin Cafe - ele-king


Penguin Cafe
The Imperfect Sea

Erased Tapes / PLANKTON

Amazon Tower HMV iTunes

 音楽の歴史において、「ブライアン・イーノ以前/以降」という区分は大きな意味を持っている。「アンビエント」の発明はもちろんのこと、それ以前に試みられていた〈Obscure〉の運営も重要で、そこから放たれた10枚のアルバムによって、新たな音楽のあり方を思索する下地が用意されたと言っても過言ではない。ペンギン・カフェ・オーケストラを率いるサイモン・ジェフスもその〈Obscure〉から巣立ったアーティストのひとりである。同楽団は「イーノ以降」のクラシック音楽~ミニマル・アンサンブル~アヴァン・ポップのある種の理想像を作り上げ、じつに多くの支持を集めることとなったが、残念なことにサイモンは脳腫瘍が原因で1997年に亡くなってしまう。
 それから12年のときを経て、サイモンの息子であるアーサーがペンギン・カフェを「復活」させた。メンバーも一新され(現在はゴリラズのドラマーや元スウェードのキイボーディストも在籍している)、グループ名から「オーケストラ」が取り払われた新生ペンギン・カフェの登場は、ちょうど00年代後半から盛り上がり始めたモダン・クラシカルの潮流とリンクすることとなり、彼らの音楽は今日性を獲得することにも成功したのだった。であるがゆえに、彼らの新作『The Imperfect Sea』がまさにモダン・クラシカルの牽引者と呼ぶべきレーベル〈Erased Tapes〉からリリースされたことは、きわめて象徴的な出来事である。その新作は、これまでのペンギン・カフェの音楽性をしっかりと引き継ぎながら、クラフトワークやシミアン・モバイル・ディスコのカヴァーにも挑戦するなど、貪欲にエレクトロニック/ダンス・ミュージックの成分を取り入れた刺戟的な内容に仕上がっている。
 10月に日本での公演を控えるペンギン・カフェだが、それに先駆け来日していたアーサー・ジェフス(ピアノ)とダレン・ベリー(ヴァイオリン)のふたりに、これまでのペンギン・カフェの歩みや新作の意気込みについて話を伺った。

僕の場合、父が亡くなったときはまだ子どもだったということもあって、悲しみよりは、音楽にまつわる父との楽しい思い出やものを引き継いでいく、というような感覚があったんだ。 (アーサー)


Photograph by Ishida Masataka

1997年にペンギン・カフェ・オーケストラの創設者であるサイモン・ジェフスが亡くなって、2007年に没後10周年のコンサートがおこなわれました。その後2009年にアーサーさんを中心としたペンギン・カフェが始動します。ペンギン・カフェを始めようと思ったのはどのような理由からなのでしょう?

アーサー・ジェフス(Arthur Jeffes、以下AJ):父の没後10周年コンサートは3日間おこなったんだけど、そのときに父の時代のミュージシャンたちが集まってくれて、一緒に演奏することができたんだ。じつは僕にとってはそれが初めて人前で演奏するコンサートだったということもあって、緊張感もあったし、父と同世代のミュージシャンだから当然僕よりも年上で経験値もあって、あっちはあっちでこうあるべきと思っているんだけど、一応僕が父の息子という立場上、何か言わなければいけなくて……それで音楽の持つデリケートなバランスが壊れてしまったようなことがあったんだ。だから、そこから続けてやるというよりは、思い出の扉を閉めるようなつもりでやったんだよね。それから1年後にイタリアの友だちから「家に来て音楽をやってくれないか」って声がかかったんだ。

ダレン・ベリー(Darren Berry、以下DB):家ってもんじゃないな。あそこは城だったよ(笑)。

AJ:そこに呼ばれたので、ダレンとダブル・ベースのアンディ(・ウォーターワース)、ギターの(トム・)CCと行ってみたんだ。ワインを作っている広い農家で、友だちとやるという気楽さが良かったんだろうけど、プレッシャーも感じずにやってみたら、まるで父親の音楽が生き返ったような感覚を味わったんだよ。自分でも何かやってみようと思うようになったのはじつはそこからなんだよね。

芸能の分野で世襲というケースはよく見られますが、一方で政治的な分野では世襲制は好ましくないものとされますよね。父のあとを継ぐということに関してはどうお考えですか?

AJ:たしかにイギリスの音楽でも世襲でやっているアーティストはたくさんいるからよくわかるけど、僕の場合、父が亡くなったときはまだ子どもだったということもあって、悲しみよりは、音楽にまつわる父との楽しい思い出やものを引き継いでいく、というような感覚があったんだ。難しいことを言えば、その音楽のストーリー性がうんぬんとか、こういうことをするのがはたして正しいのかとか、もし自分が新しくやるのなら名前も「ミュージック・フロム・ペンギン・カフェ」にするべきなのかとか、いろいろなことを考えたけど、それよりももっと感情的な部分というか本能的な部分というか、僕はそういうところで突き進んできたような気がするんだ。あとやっぱり最初の頃は、父が残してきた音楽があって、それを僕らがライヴでやる、というキャラクターが強かったからね。もちろん譜面に書かれたものどおりじゃない、僕らなりのアレンジも自由にできたし、ライヴの場においては自分の解釈でやっていくということがけっして間違いじゃないと思っている。

DB:「ライヴでこれを聴きたい」って人がたくさんいたんだよね。求められているという感覚もあったと思うよ。やっぱりアーサーのお父さんの音楽はたくさんの人に愛されていて、「またあれを聴きたい」という声も多くあったから、それを僕らなりにやっていこうじゃないか、というのがとっかかりだったと思う。あと、バンドだから楽器があって、たとえば“Music For A Found Harmonium”ってタイトルの曲があるんだけど、それは(アーサーの)お父さんがハーモニウムという楽器を見つけたことがきっかけになって書いた曲なんだ。それを、「その楽器はこれですよ」って目の前で弾いてあげるような感覚というのが僕らが提示したかったもののひとつなんじゃないかな。

ペンギン・カフェ始動の2年後にアルバム『A Matter Of Life...』が出ます(2011年)。このときはどういう思いでアルバムを作ったのでしょうか?

AJ:そこにいたるまでの数年間にライヴ活動をやってきた結果、この先に進むにはまずいまの状態の自分たちを記録する必要があると感じて作ったアルバムだった。2010年にロイヤル・アルバート・ホールでライヴをやる機会があったんだけど、それで一区切りついたということもあって、父親の曲のカヴァーだけじゃなくて、ようするにありものの曲だけをやるミュージアム・バンドじゃないところに進んでいきたいという思いがあったから、あのアルバムははたしてそれが本当にできるのかというテストでもあったんだ。レコーディング自体は4、5ヶ月で終わって、僕らからしてみるとすごく早いペースでできた作品だったからすごく緊張していたね。そういう不安のなかで作っていて、「とにかくやってみよう」ということでやってみたんだけど、とてもいいものができたんじゃないかな。結果には満足しているよ。もちろん演奏のミスとか間違いがあったりもしたんだけど、それが逆におもしろいと思えたらキープして、不完全さを良しとするみたいなことをあのアルバムではやっていたんだよね。

その後アーサーさんは、現ペンギン・カフェのもうひとりのヴァイオリニストであるオリ・ラングフォードさんとユニットを結成して、サンドッグという名義で『Insofar』(2012年)というアルバムをリリースします。それがペンギン・カフェではない名義で発表されたのにはどのような経緯があったのでしょう?

AJ:僕はたくさん曲を書いているから、なかにはペンギン・カフェっぽくないなと思うものができあがるときもあるんだ。それがどう違うかというのを説明するのは難しいんだけど、僕の感覚としてはそう思うところがあったので、いつも一緒にいたオリとサンドッグというユニットを作ったんだ。『A Matter Of Life...』の最後に“Coriolis”という曲があって、それは僕とオリだけで静かに繊細な音を奏でている曲なんだけど、こういう音をもうちょっと追求してもいいのかなと思ったんだ。でもそれはペンギン・カフェでやることではないと思ったから、オリとふたりのユニットという形でサンドッグが生まれたんだよね。ペンギンでやっているものよりはロマンティックというか、シネマティックというか、そういう方向性を追求したデュオだったね。

そしてペンギン・カフェとしてのセカンド・アルバム『The Red Book』が2014年にリリースされます。これはどういうコンセプトで作られたのでしょうか? サンドッグの活動からフィードバックされたものもあったのでしょうか?

AJ:オリとふたりで音を作ったあとだったから、あのアルバムの制作に取りかかったときは、自分のなかにヴァイオリンとピアノの音が残っていたのかもしれない。そのふたつの楽器の色合いが強く出たアルバムだったと思う。考え方としては、世界を旅しながら、空想の世界のワールド・ミュージック、フォーク・ミュージックを作ったような感覚があって、前のアルバムに比べたら時間もかけたし、木材にサンド・ペーパーをかけてスムースに仕上げたような、すごく磨かれたアルバムになったんじゃないかなと思っているんだ。実際のレコーディングでは、グループが一同に集まって一緒に録るということをよくやったアルバムだったよ。

僕らにとっては他の人の、しかもいまのアーティストの曲をカヴァーするってこと自体が新しいことで、いままでかぶったことのない帽子をかぶるような感覚なんだ。〔……〕この楽器編成で僕らが演奏すれば絶対に僕らの音になる、という確信があるからこそできたことでもあると思う。 (ダレン)


Photograph by Ishida Masataka

それらのリリースを経て、この夏、3枚めとなるアルバム『The Imperfect Sea』がリリースされたわけですけれども、これまでの作品とは異なる趣に仕上がっているように感じました。

AJ:前作『The Red Book』とはまったく違うアルバムを作りたかったんだ。一度やったこととは違うことをやりたいという意味だけどね。フォークやチェンバー的な部分は前作でだいぶ探求できたと思ったから、今回はそれとは離れたところにあるものを探求してみようという感覚で作り始めたんだ。それにあたって、前作の活動が一段落したところで1年間くらい活動を控えて、自分たちにあるものを見直してみようというふうに考えてみた。新しいテクスチャーに出会えた気がするよ。

DB:今回はダンス・ミュージック的な要素がかなり出ていると思うんだけど、これも前作の反動なんじゃないかと思う。ようするにリズムやポリリズム、ビートに引っ張られて走っていくような音楽というのはクラシック音楽とは違う要素で、今回はそれを意識的にやってみようと思ったんだよね。それも、一度リセットしたことによって出てきた発想だろうね。

いまのダレンさんのお話とも繋がると思うのですが、今回のアルバムの9曲目はシミアン・モバイル・ディスコのカヴァーですよね。みなさんはふだんからそういった音楽を聴いているのですか?

AJ:そうだね! よく聴いているよ。いまはダンス・ミュージックの世界でおもしろいものがたくさん出てきているからね。あと僕らはいま〈Erased Tapes〉と組んでいるということもあって、そういうクロスオーヴァーは自然な発展だと思う。僕らからするとクラシカルな世界からエレクトロニックな世界へのクロスオーヴァーってことになるんだけど、エレクトロニックといっても僕らの場合は電子音を使うわけじゃなくて、エレクトロニック的なアプローチって意味でのクロスオーヴァーなんだ。

DB:僕らにとっては他の人の、しかもいまのアーティストの曲をカヴァーするってこと自体が新しいことで、いままでかぶったことのない帽子をかぶるような感覚なんだ。やってみると表現のしかたという意味でも、楽器の演奏のしかたという意味でもいろんな発見があって、自分たちが自分たちのために書いた曲とは違うから、(カヴァーを)やってみて自分を知るような機会にもなったし、すごく楽しかった。勉強になったよ。そういうふうに言えるのも自分たちのアイデンティティがしっかり確立しているからだと思うんだよね。何をどうやっても結局ペンギン・カフェの音になるんだ。この楽器編成で僕らが演奏すれば絶対に僕らの音になる、という確信があるからこそできたことでもあると思う。

4曲目はクラフトワークのカヴァーですが、これもそういった理由から?

AJ:そうだね。じつを言うとペンギン・カフェ・オーケストラが初めてやった公演はクラフトワークの前座だったんだよ。そういう意味で歴史的にも気の利いた繋がりがあるというのと、あとはやっぱりこの系統の音楽の源泉にあるのはクラフトワークだし、彼らは絶対的な存在だから、やるんだったら源泉まで遡ってやろうということもあったね。

先ほど〈Erased Tapes〉の話が出ましたが、ペンギン・カフェが始動した頃から「モダン・クラシカル」と呼ばれるような音楽が盛り上がってきて、そのムーヴメントとペンギン・カフェの復活がちょうどリンクしているように思ったのですが、そういうシーンと繋がっているという意識はありますか?

AJ:シーンの一員っていい気分だよね(笑)。でもたしかにそれはあると思う。パラレル的に、同時多発的に、いろんなところからスタートして似たようなことをやっている人たちが惹かれ合ってシーンができていくという感覚は僕もあるよ。〈Erased Tapes〉にはア・ウイングド・ヴィクトリー・フォー・ザ・サルンやニルス・フラームがいるし、そういった人たちがいろんなところから出てきて何かが始まっているという、そういうシーンのなかにいるというのはいいものだね(笑)。

ペンギン・カフェの音楽にはアンビエント的な要素もあります。ペンギン・カフェ・オーケストラの最初のアルバム(1976年)はブライアン・イーノの〈Obscure〉からリリースされましたが、彼が提唱した「アンビエント」というコンセプトについてはどうお考えですか?

AJ:たとえば布のような、あるいは背景のような存在としての音楽、という考え方だと僕は思っているよ。ようするにストーリーを色濃く語ってくるわけでもないし、パターンが決まっているわけでもないから、アプローチとしてはどうすればいいのだろうと一生懸命考えていて。音楽として取り組むというよりは、たとえば風と対峙するような、壁紙を貼るような、床板を貼るような、あるいは水の流れと対峙するような感じで音楽を作っていくのがアンビエントなんじゃないかと思う。

DB:そうなんだよね。だから自分を取り囲む環境と同じように音楽があるという、そんな質感だと思うんだ。たしかに僕らの音楽にもそういう側面はあって、たとえば僕らのアルバムを3回通して聴いたとして、どこから始まってどこで終わったのかわからなくなるような、そういうところが僕らのアルバムにはあるんだよね。まさにそういう流れがアンビエントなのかなと思うね。

イーノはここ数年、音楽に取り組む一方で政治的な活動もおこなっています。UKでは昨年ブレグジットがあったり、先日は総選挙があったりしましたが、そういう社会的な出来事はミュージシャンたちにどのような影響を与えると思いますか?

AJ:そういえば先日、バレエのプロジェクトの仕事があってアメリカに行ったんだけど、それがコール・ポーターの1921年の作品(“Within The Quota”)をリヴァイヴするというものだったんだ。それは当時、移民を禁じる新しい法律が布かれることに対するプロテストとして書かれた作品だったんだけど、じつはその仕事を受けた段階ではまだトランプが大統領に決まっていなくて、まさかこんなことになるとは思わずにプロジェクトを進めていたんだ。公演の当日にはすでにトランプが大統領になっていて、それどころか新しい移民法が布かれようとするなかでの公演になってしまった。そういうことを考えると、おそらくミュージシャンに右翼の人はあまりいないと思うんだよね。だいたいの人はリベラルな考えで音楽やアートをやっていると思うんだけれども、だからこそイングランドでもそういった政治的な動きに対するプロテストがすごく多くなっていて、実際にこの前の総選挙のときにチャートのナンバー・ワンになったのが(キャプテン・スカの)“Liar Liar”という曲だったし、音楽と政治の距離感というのはすごく縮まってきているような気がするよ。

DB:まったくそのとおりだね。アーティストで右翼ってそうそういないと思うんだ(笑)。やっぱり心を開いていないと芸術ってできないし、グラストンベリーでジェレミー・コービンが演説をするようなことがあるくらいだから、意識せずにはいられないところまできていると思う。あと、いまは学校から音楽教育が外されてしまっているんだけど、音楽はけっして贅沢品じゃないし、算数などと同じように、教育の場で提供されることによって、魂の部分だけじゃなくて脳の活性化もできるに違いないのにね。そういうことを重んじない政治が進んでいるということに対して、年配の世代だけじゃなく若い世代も敏感になっているんじゃないかな。やっぱり音楽や芸術の存在は年寄りよりも若い人にとってすごく身近なものだと思うからね。

ペンギン・カフェ来日公演2017

●10/05(木) 東京・渋谷クラブクアトロ
18:30 開場/19:30 開演
前売:6,000 円/当日:6,500 円(全自由/税込)
※チケット発売日:07/08(土)より
問:渋谷クラブクアトロ 03-3477-8750

●10/07(土) 東京・すみだトリフォニーホール
special guest:やくしまるえつこ/永井聖一/山口元輝
16:30 開場/17:15 開演
前売S 席:6,800 円/前売A 席:5,800 円(全席指定/税込)
※チケット発売日:07/08(土)より
問:プランクトン 03-3498-2881

●10/09(月・祝) まつもと市民芸術館主ホール
special guest:大貫妙子
14:30 開場/15:00 開演
一般:5,800 円/U25:3,800 円(全席指定/税込)
※チケット発売日:06/24(土)より
問:まつもと市民芸術館チケットセンター 0263-33- 2200

●10/10(火) 大阪・梅田クラブクアトロ
18:30 開場/19:30 開演
前売:6,000 円/当日:6,500 円(全自由/税込)
※チケット発売日:07/08(土)より
問:梅田クラブクアトロ 06-6311-8111

お客様用総合info:プランクトン03-3498-2881

Bwana - ele-king

 昨春〈LuckyMe〉からフリーで配信されたミニ・アルバム『Capsule's Pride』を覚えているだろうか? それは、大友克洋の映画『AKIRA』英語版の台詞と、芸能山城組が手がけた同作のサウンドトラック音源からのサンプリングによって構築された、じつに興味深い作品だった。制作者はトロント出身でベルリンを拠点に活動しているDJ/プロデューサー、ブワナ。すでに「Over & Done」や「Baby Let Me Finish」、「Flute Dreams」といった12インチで高い評価を得ていた彼だけれど、『Capsule's Pride』のブレイクによってその名はより幅広い層へと知れわたることとなった。そんな注目のプロデューサーがこの秋、初めての来日を果たす。詳細は下記をチェック。

漫画家・大友克洋さんが原作・監督をつとめたアニメ映画『AKIRA』のサウンドトラックをリミックスしたEP「Capsule's Pride」が、2016年にスコットランド・グラスゴーに拠点を構える人気レーベル〈LuckyMe〉から無料配信されたことで一躍有名となったトロント生まれ、現在はベルリン在住の若手プロデューサーのBwanaが初来日を遂げる!!

数年前に『AKIRA』のサウンドトラックがアナログ盤で再発されたことをきっかけに同アルバムをもとにして映画からセリフなどをサンプリングし話題をさらったBwana。現在YouTubeでも漫画『AKIRA』のカットを用いて、全曲フル音源で公開されている。

★10万回以上も再生されている「Capsule's Pride」はこちらから
https://www.youtube.com/watch?v=8nCg3D6tnLk

初来日となる今回はカッティング・エッジで洗練された若手DJ陣を主軸にジャンルレスなゲストを迎えているパーティー《sHim》に出演。翌週にはソウルでもギグが決まっている。

title: sHim
2017.10.20 (FRI) OPEN: 23:00
at CIRCUS Tokyo

DOOR: 2,500YEN
ADV: 2,000YEN
チケット… https://ptix.at/31VI85

GUEST DJ:
Bwana (from Berlin)

B1 Floor:
AKARI (SUNNY)
EITA (THE OATH)
REN (World Connection)

1st Floor:
Atsu
Keiburger
Koki (Bohemian Yacht Club)

■CIRCUS Tokyo
3-26-16, Shibuya, Shibuya-ku, Tokyo 150-0002 Japan
+81-(0)3-6419-7520

■Bwana
カナダ/トロント出身のBwanaは2015年より本格始動。Will Saul主宰の〈Aus Music〉からリリースした「Flute Dreams EP」は、音楽媒体の間で普遍的な支持を得て、2014年ベストEPのひとつとして賞賛された。タイトル・トラックは、SashaとHuxleyのBBC Radio 1のEssential Mixes、Laurent Garnier、J. Phlip、Jacques Greeneらがパワープレイ。彼の2度目となった〈Aus〉からのリリース、「Tengo EP」は、John Digweed、Skreamなどがこぞってプレイしさらに名声を得た。
DJとしてはロンドンのFabric、ベルリンのPanorama barなどでプレイしハウスやテクノ以外の幅広いジャンルを混在させるBwanaの能力、その多様性が高く賞賛されている。
現在、ベルリンを拠点とするBwanaは若手プロデューサー/アーティストとして新しい音とアイデアをさらに探求し続けている。
https://soundcloud.com/nathanmicay

Carmen Villain - ele-king

 カルメン・ヴィランはもともと売れっ子モデルで、60年代のマリアンヌ・フェイスフルやニコを彷彿させる金色の長い髪の彼女は『ヴォーグ』や『マリクレール』の表紙を飾っていた。しかしながらサン・シティ・ガールを知って音楽にのめり込むと、カルメンはモデル業を辞めてまでも歌い、ギターを弾きはじめた。ギターだけではない、カルメンは鍵盤からドラムマシンのプログラミングまで自分でやってしまう。メキシコ人とノルウェー人の両親を持ち、アメリカで育った彼女は、プリンス・トーマスなどの協力を得ながらオスロの名門〈スモール・タウン〉から2013年に最初のアルバム『Sleeper』を出しているわけだが、自らの顔写真をジャケでは使わず、あくまでも音楽で勝負という硬派な姿勢を貫いている。そもそも〈スモール・タウン〉という、音楽ファンに支持されているインディ・レーベルからデビューしていることからも彼女のアティチュードがうかがえよう。
 つい先頃、彼女はセカンド・アルバム『インフィニット・アヴェニュー』を出したばかり。これがかなり良い。静謐でフォーキーな響きを前面に出しながらもエレクトロニクスも効果的にミックスされたその美しい作品には、昨年高く評価されたノルウェーの歌手、ジェニー・ヴァルも参加している。また、日本盤にはボーナス・トラックとしてバイオスフィア(ノルウェーの大物アンビエント・ミュージシャン)、クララ・ルイス(ポストパンクの雄、ワイヤーのグラハム・ルイスの娘!)、そしてジジ・マシンの3者によるリミックスが収録されている。(ちなみにジャケットの写真はジーナ・ローランズ。60年代~70年代に活躍したインディペンデント映像作家の父、ジョン・カサヴェテスの妻にして女優。ジム・ジャームッシュがリスペクトを込めて『ナイト・オン・ザ・プラネット』で出演させている)

 そして来週、カルメン・ヴィランが来日する。小岩ではライヴ(メルツバウとテンテンコも出演)。代々木八幡のNEWPORTではDJ(コミューマさんも出演)。 NEWPORT では、なんとエントランス・フリーの上に先着でSmalltown Supersoundのレーベル・サンプラーとステッカーが貰える!

"OurTurn#2"
@小岩 BUSHBASH

10/4(水) 19:00 - \2000+1d
Carmen Villain(Smalltown Supersound)
Merzbow
テンテンコ
dj:
Joakim Haugland
李ペリー
Minoru Kakinuma

https://bushbash.org

NEWSOUND feat. Carmen Villain
@代々木八幡 NEWPORT

10/7(土)20:00 - 24:00
DJ: Carmen Villain, Joakim Haugland (Smalltown Supersound), COMPUMA
エントランス・フリー(別途1オーダー)
https://nwpt.jp/



Carmen Villain
Infinite Avenue

Smalltown Supersound,/カレンティート
Amazon

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