「BROADCAST」と一致するもの

Kokoroko - ele-king

 目下、ロンドンにおいてもっとも熱いシーンはラップかもしれないが、しかしそのカオスから生まれるふつふつとした蒸気とはあたかも対岸で鳴っているのが、『We Out Here』に収録されたココロコの“Abusey Junction”だ。それはもがいてもがいてなんとか生きようとするDaveが流している涙のすぐそばにある音であり、切ないチルアウトである。ココロコから漂う静寂さは、ニューエイジのそれとは完璧なまでに180度違っている。ここは森ではない。川のせせらぎはなく、聞こえるのは騒音であり、見えるのは山ではなくビル。土ではなくコンクリート。飲める水は水道水。いつ気が触れてもおかしくないようなこの都市における肝の据わった叙情詩を、南ロンドンの7人組は演奏する。彼ら/彼女らの待望のデビューEPは、今年のまあ5枚のうちの1枚にははいるだろう。
 ココロコのサウンドを特徴付けているのはオスカー・ジェロームのギターだ。詩的でエモーショナルな彼の演奏は、打楽器奏者のオノメとドラマーのアヨのふたるからなる、いたってチルなアフロ・ビートと有機的に絡んでいる。そして大らかさと優しさは、リーダーのシーラによるブラス音やコーラスによって彩られる。多文化的であり、男女人種混合のコミュニティである彼らを現代の英国の理想的音楽の具現化というのはたやすいが、ここには、70年代ルーツ・レゲエの最高の瞬間さえも彷彿させる強さがあることも忘れないでおきたい。チルアウト感覚はこのバンドの武器だが、シャバカ・ハッチングばりの炎も、フェラ・クティの勇敢さもあるのだ。つまりこの音楽は骨抜きではないし、明るい未来を渇望している。4曲入りのデビューEP「Kokoroko」、素晴らしい、アルバムが待ち遠しい。

 ココロコの力強い静寂とは打って変わって、〈The Vinyl facto〉からリリースされた『Untitled 』はとげとげしく、ささくれだったUKジャズとUKヒップホップとの邂逅のショーケースである。『We Out Here』のパンク・ヴァージョンというのは言い過ぎだが、ポストパンク的な展開とは言えるだろう。コンピレーションのテーマは画家のジャン・ミッシャル・バスキアということだが、いまのロンドンのアクチュアルなシーンのレポートとしても機能している。
 UKジャズも若々しいシーンだが、こちらの若さは、ニヒリズムをもって活力を発している。衝突ないしは攻撃性がここにはあるのだ。アルバムを聴いて思い出すのは、最初期の〈ラフトレード〉のコンピレーションだ(女性が活躍している点も似いている)。あれがロックやパンクというスタイルに疑問を投げかけたように、本作は、ヒップホップやジャズに疑問を投げかけ、あらたな異種混合に挑んでいる。

 シャバカ・ハッチングがラッパーのコジェイ・ラディカルと組んだ曲、“No Gangster”が目玉ではある。これこそUKジャズのネクストだろう。じつのところ、ぼくはこの曲のためだけにアルバムを買った(まあ、ジャケのデザインが格好良かったというのも大きいが)。また、コンピにはマーラジョー・アーモン・ジョーンズ、ヌビア・ガルシアといった「おや」と思わせる引きのあるメンバーによる曲もある。曲もたしかに悪くない。が、しかし、このアルバムを活気あるものにしているのは、まだキャリアの浅いと思われる人たちのトラックだ。まるでザ・スリッツのヒップホップ・ヴァージョンといえる“Broadcast By Chocolate”、=CoN+KwAkE=なる人物の変態ヒップホップ、Lord TuskによるPiLを彷彿させるパンク・ジャズ、Maxwell Owinによるウェイトレス・ジャズ(とでも形容したくなるサウンド)……。
 うん、たしかに面白いことが起きているようだ。90年代初頭、ベイビー・フィイスが全盛だった時代にパブリック・エナミーがいたことを思い出すがいい。

※原稿とは関係ないけど、参院選の渡辺てる子、彼女の演説は素晴らしい。

WXAXRXP - ele-king

 とんでもない企画の登場だ。今年で30周年を迎えるUKの名門レーベル〈Warp〉がオンラインでフェスティヴァルを開催、NTS Radio を占拠する──それも、100時間以上にわたって! 同レーベルからリリース経験のあるアーティストたちがミックスやライヴ・セッションを披露、未発表音源も放送されるらしい。やばい、めっちゃやばい。往年の〈Warp〉を支えてきたビッグ・ネームはもちろんのこと(LFO のトリビュート企画も!)、ガイカロレンツォ・セニニガ・フォックスケリー・モーランやエヴィアン・クライストなどなど、近年の実力者たちも勢ぞろい。やばい、めっちゃやばい。さらに、リストをよくよく見てみると……ウィンストン・ヘイゼル! フォージマスターズのウィンストン・ヘイゼルの名が!! やばい。めっちゃやばい……6月21日金曜の夜から24日月曜の朝まで、これは一睡もできませんね(日本時間)。って、さ、3徹!?

[6月21日追記]
 本日20時(日本時間)から放送開始となる「WXAXRXP」のタイムテーブルが発表された。スペシャル・ゲストとして坂本龍一、エイドリアン・シャーウッド、デス・グリップスらが参加している。これはすごい。詳細はこちらから。

wxaxrxp.net

WXAXRXP

6/21 (FRI) - 6/23 (SUN) on WWW.NTS.LIVE/WXAXRXP

APHEX TWIN ・ AUTECHRE ・ BATTLES ・ BIBIO ・ BOARDS OF CANADA ・ BRIAN ENO ・ DANNY BROWN ・ FLYING LOTUS ・ GAIKA ・ HUDSON MOHAWKE ・ KELELA ・ LFO (TRIBUTE TO) ・ MOUNT KIMBIE ・ ONEOHTRIX POINT NEVER ・ PLAID ・ SQUAREPUSHER ・ YVES TUMOR ・ !!! and more...

レーベルアーティストが勢揃いで名を連ね、100時間以上に及び Mix やライブセッション、未発表音源などを一挙放送!
合わせて〈WARP〉30周年記念ポップアップストアの6/29大阪 & 6/30京都での開催も決定!!

音楽史に計り知れない功績を刻み続ける偉大なる音楽レーベル〈WARP〉が、カッティング・エッジなキュレーションで音楽ファンから絶大な支持を集める「NTS Radio」とコラボレートし、レーベル設立30周年を祝うオンライン音楽フェス『WXAXRXP』を開催! 現地時間6月21日(金)~6月23日(日)の3日間に渡って行われる。日本での放送時間は6月21日(金)午後8時~。

エイフェックス・ツインや、フライング・ロータス、ブライアン・イーノ、バトルス、チック・チック・チック、ボーズ・オブ・カナダ、スクエアプッシャー、オウテカ、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーなど豪華なゲストが参加し、エクスクルーシヴ・ミックス音源やライヴ・セッション音源、映像、未発表曲、貴重なアーカイヴ音源など100時間以上に渡って一挙放送!

なお、『WXAXRXP』開催期間中に店内で〈NTS〉を放送してくれるお店には、本企画のオリジナル・ポスターをプレゼント!
詳細/応募は Beatink の Twitter にて。
https://twitter.com/beatink_jp/status/1139458407247671296?s=20

NTS.LIVE/WXAXRXP
UK時間:6月21日(金) 12:00 ~ 6月23日(日) 23:59
日本時間:6月21日(金) 20:00 JST ~ 6月24日(月) 7:59
WXAXRXP特設サイト:https://wxaxrxp.net

Featuring:
Aphex Twin • Autechre • B12 • Battles • Bibio • Boards of Canada • Brian Eno • Broadcast • Chris Taylor (Grizzly Bear) • Danny Brown • Darkstar • DJ Nigga Fox • Evian Christ • Flying Lotus • GAIKA • Gonjasufi • Hudson Mohawke • Kelela • Kelly Moran • kwes. • Leila • LFO (A tribute to) • LoneLady • Lorenzo Senni • Mark Pritchard • Mira Calix • Mount Kimbie • Nightmares on Wax • Oneohtrix Point Never • Plaid • Squarepusher • Yves Tumor • Winston Hazel (Forgemasters) • !!!

さらに、先週東京・原宿で開催された〈WARP〉ポップアップストアに続き、大阪&京都での開催が決定!!

目玉商品には「ニューシャネル」やYMOとのコラボTで知られる現代美術家:大竹伸朗によるデザインTシャツや、30周年記念オリジナルTシャツ、カルト的人気を誇るエイフェックス・ツインの輸入オフィシャル・グッズの販売、来日公演も昨夜発表され勢い止まらぬフライング・ロータス最新作『FLAMAGRA』グッズ、本レーベルを代表するオリジネイター、プラッドの最新作『POLYMER』グッズといった最新アーティスト・グッズに加え、アニバーサリーを記念して製作された数々の〈WARP〉ロゴグッズが登場!
その他にも、バトルス、チック・チック・チック、マウント・キンビー、ボーズ・オブ・カナダ、ブライアン・イーノなど、〈WARP〉を代表するアーティストのグッズや、レーベルの歴史を彩る数々の名盤のLP/CD などがずらりと店頭に並ぶ。

また、東京を拠点にするファッションブランド、F-LAGSTUF-F(フラグスタフ)の人気アイテムである完全防水仕様のナイロン・ポンチョに〈Warp〉ロゴを胸にあしらった特別仕様アイテムの受注販売も行われる(¥86,400税込:商品のお届けは9月末~10月を予定)。

WxAxRxP POP-UP STORE
開催日程:6/29 (土) ~ 6/30 (日)

大阪:6/29 (土) 11:00~19:00
W CAFE (大阪市中央区西心斎橋1-12-11-1F)

京都:6/30 (日) 11:00~19:00
LaCCU (京都府京都市中京区御幸町通六角下る 伊勢屋町335-1アップヒルズ227 1F)

【入場に関するご案内】
・開場以前のご来店・整列はご遠慮ください。
・当日の混雑状況に応じて、ご案内の方法が変更となる場合がございます。
・皆様に気持ちよくお過ごしいただく為、スタッフの指示にご協力いただきます様お願いいたします。状況により中止せざるを得ない場合もございますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

Jamie 3:26 - ele-king

 故Frankie Knucklesと双璧をなす伝説のDJ、Ron Hardyがレジデントを務めたクラブ「MUSIC BOX」。シカゴの326 Lower North Michigan通りに面したこのヴェニューで、ダンス・ミュージックとは何か? を学び、今ではRonの意思を継ぐ現役最後のDJとも称されるJamie 3:26。
 彼を知るアーティストの仲間やプロモーターの誰もが「Jamieは特別」と口を揃え、圧倒的なキャラクター、そしてDJの姿勢からはハウスミュージックへの愛とリスペクトが心の底から伝わってくる。
 そんなJamie 3:26が2年越しに日本へカムバック!!
 東京、盛岡、名古屋、神戸と4都市をまたぐジャパン・ツアーを開催。
 全てのダンスフロアに極上の多幸感と熱量をもたらす唯一無二の存在。
 全公演VIBES ONLYでお届け、お見逃しなく!!!!

interview with Midori Aoyama, Masaki Tamura, Souta Raw - ele-king

 デトロイト・スウィンドルやレイ・ファーなど、数々のアーティストの来日を手がけるイベント〈Eureka!〉の主宰として、ハウス・ミュージック・シーンに確かな実績を残してきたMidori Aoyama。〈Eureka!〉がレーベルとしても好調ななか、Midoriが次に仕掛けたプロジェクトが、インターネットラジオ「TSUBAKI FM」だ。
 昨年の立ち上げ以降、毎週日曜にライヴ配信を行っている「TSUBAKI FM」だが、その特徴は〈Eureka!〉とは一線を画すラインナップにある。ロック・ステディ・クルーのスキーム・リチャーズからCMYKといった国内の若手クルーまで、ジャンルもキャリアも異なる様々なDJがこのネットラジオでプレイしてきた。とりわけ「TSUBAKI FM」が力を入れてピックアップしたのが、Masaki TamuraとSouta Rawだった。

 京都在住のMasaki Tamuraは、国内でも屈指のジャズイベント〈DoitJAZZ!〉を主宰し、ジャズDJの枠を広げるような活動を行なっている。近年では、ジャイルス・ピーターソンによる「Worldwide FM」の京都サテライトとしてスタートした「WWKYOTO」のDJにも抜擢された。Souta Rawは、サダー・バハーの国内ツアーなどでも知られる茶澤音學館に所属し、アンダーグラウンドなディスコを中心に、幅広いジャンルをかけるDJだ。Aoyama TUNNELで毎週火曜のレギュラーを務めている。

 Midori Aoyama、Masaki Tamura、Souta Raw。同世代ながら背景の異なる3人だが、今年2月には「TSUBAKI FM」として、東京、京都、広島、福岡の4箇所でツアーを行なった。各地を回ったあとで、彼らがDJとして見据えるものはなんだろうか。ネットラジオで日本全国を巡るというかつてないツアーを経験した3人に話を聞いた。

5年前にマッツにインタヴューしたときに、「自分がキャリアを続けられるのは、ハウス以外の音楽もやってて飽きないから」って言ってて。それ聞いたときは「何言ってるんだこのおっさん」くらいに思ったけど、だんだんわかってきた(笑)。──ミドリ

まず、「TSUBAKI FM」の設立経緯を教えてください。クラブ・シーンでは、Midoriくんといえば〈Eureka!〉の主宰者、という印象が強いと思います。パーティやレーベルとして〈Eureka!〉の運営も好調のように見えますが、なぜ新たにネットラジオを立ち上げたのでしょうか?

Midori Aoyama(以下、ミドリ):元々、曲を探すときにジャイルス・ピーターソンの番組とか聴いてたし、自分でもいつかラジオをやりたかったんだよ。それにいま、ネットラジオは戦国時代に突入してるよね。ヨーロッパでは「NTS Radio」や「Red Light Radio」、アメリカなら「The Lot Radio」とかがあるから。日本でも最近はいろんなネットラジオが出てきた。でも、自分たち好みな、4つ打ちから生音まで扱うネットラジオってあまりなかったからさ。日本にないんだったら作ろうってことで始めた。

〈Eureka!〉と「TSUBAKI FM」ではどのような違いを感じてますか?

ミドリ:ネットラジオの方がライフスタイルに近いかな。〈Eureka!〉は日常とかけ離れた空間を創造していくんだけど、「TSUBAKI FM」は普段の生活に音楽を持ち込むってところを意識してる。そこは大きな違いだと思う。やっぱり30代になるとクラブから卒業する人が多いんだよね。クラブに行けない人とか東京以外に住んでる人でも僕らのやってる音楽を聴きたい人がいるから、ラジオがあったほうがいいなって。あとはかける音楽が違うかな。〈Eureka!〉はハウスだし、「TSUBAKI FM」はもっと広いジャンルを扱ってる。自分も数年前までハウスしかかけてなかったけど、他のジャンルのDJにもネットラジオに出てもらって、いろんなものを吸収することができた。

ラジオではほぼ毎回、ミドリくんも新譜のジャズやソウルをかけてますよね。

ミドリ:自分でもずっとハウスをやっていきたいと思っていたけど、続けていくうちに変わってきた。その点、〈Eureka!〉にも出演したマッド・マッツの存在が大きいんだよね。5年前にマッツにインタヴューしたときに、「自分がキャリアを続けられるのは、ハウス以外の音楽もやってて飽きないから」って言ってて。それ聞いたときは「何言ってるんだこのおっさん」くらいに思ったけど、だんだんわかってきた(笑)。それに、他の音楽を吸収することによって、ハウスの新しい面白さも見えて来るんだよね。サンプリングのネタがわかるようになるし。

「TSUBAKI FM」ではこれまでにいろんなDJが出演してますが、とくにピックアップしてるのが、MasakiくんとSouta Rawくんですよね。この2人を選んだ理由やきっかけはありますか?

ミドリ:僕が探してないのもよくないんだけど、同世代で面白いDJってあんまり知らなかったんだよね。だから、「TSUBAKI FM」を立ち上げる前に新しいDJを見つけようと思って、ハウス以外の音楽がかかるクラブとかバーに積極的に遊びに行って探しはじめた。それで、ラジオをやって全国に発信するならまずは地方のDJがいいなって思って、沖野修也さんとかJazzy SportのMasaya Fantasistaさんとかに聞いたら、「京都にTamuraくんっていうジャズのDJがいるよ」って話になった。

Masaki Tamura(以下、マサキ):そうそう。それも最初のきっかけはマッド・マッツかな。ミドリくんがマッツのツアーをやるにあたってメールでやりとりした。僕は当日に別のイベントがあって結局出れなかったけど、ミドリくんが京都に来たときに喋って。それがラジオを立ち上げる1年前ぐらい。

Souta Rawくんについては?

ミドリ:カンマ&マサローのツアーをやってたときに、2人と一緒にAoyama TUNNELに遊びに行ったら、Souta Rawが回してた。2人が「このDJすごくいいから聴いた方がいいよ」って言ってて。それで、別の日にNTSレギュラーのナビア・イクバルと一緒にTUNNEL行ったときも、「このDJ本当にいいから、絶対「TSUBAKI FM」のラジオでやった方がいいわ」って言われた。外タレ2組に言われてたんだよ。それ絶対ヤバいでしょ。それで声かけたんだっけ?

Souta Raw(以下、ソウタロウ):そうだね。ミドリくんから話しかけられたんだと思う。

そうすると、3人ともお互いを知らなかったんですね。それは意外でした。

マサキ:だからまだ出会って1年ちょっとくらい。去年の2月に「TSUBAKI FM」のローンチ・パーティをThe Roomでやったときに、ソウタロウくんと初めて話した。

ソウタロウ:そうそう。「こういう人たちがいるんだ。面白いな」って思った。

ソウタロウくんは茶澤音學館に所属していて、ディスコのシーンに近いですよね。あと、昔から7インチでDJしてる印象があります。

ソウタロウ:島くんと出会ったときは、ちょうどケニー・ドープやDJスピナが、ヒップホップやハウス、ディスコとかファンクとかレゲエなんかのジャンルを、7インチ・オンリーで跨ぎながらやっていたんだよね。彼らに影響を受けて、7インチのパーティを毎週やっていたからそういう印象があるのかも。そのときに7インチでジャンルを跨ぐのって珍しかったし、今だと当たり前のように置いてあるハウスやヒップホップの7インチコーナーもあまりなかったから、集めるのに苦労したね。

なるほど。そうやってジャンルを横断するDJをやる前は、ディスコやハウスをかけてたんですか?

ソウタロウ:いまはAoyama TUNNELで毎週やらせてもらっているからディスコ・ハウスのイメージを持ってる人もいると思うけど、最初はレゲエばかりかけてたね。昔、六本木にRoots Nっていう小箱があって、そこでヴィンテージのジャマイカ音楽をかけるパーティをはじめた。そのお店のスタッフに「〈Coffe & Cigarettes〉ってパーティが面白いから」って誘われたら、そこでDJ Kenseiさんがやってたんだ。いろんなジャンルの音楽がかかっているし、そのかけ方と鳴りが最高で、いろんな音をかけたいと思うようになった。その後しばらくして、サダー・バハーのDJを聴く機会があって、そのグルーヴ感とみんなを笑顔にするあまりのハッピー感に感動して、ディスコやジャズ・ファンク、シカゴ・ハウスを集めはじめたんだよ。自分は生音から入ってハウスをかけるようになったけど、ミドリくんはハウスから入って生音をかけはじめた。逆なんだけどそれが面白かったね。

マサキくんは京都で〈DoitJAZZ!〉ってパーティをやっていて、ジャズDJのシーンにいますよね。

マサキ:そう、基本的には生音でやってて。でも、どっちかっていうと最近はハウスに寄っていってる。さっきも話に出たけど、ミドリくんがハウスから他のジャンルに近づいてるとしたら、僕らはもうずっとジャズをやってたのが、ハウス界隈とかディスコ界隈の方に行ってる感じがある。

ちょっと意地悪な質問をすると、変わっていったのは、やっぱりジャズを集めるのが大変というのもありますか?

マサキ:きましたね(笑)。最初ジャズをやろうと思ったときは、スタンダードにレア盤を買ってたけど、途中で絶対無理やって気づくじゃないですか。すごいコレクションの人も身近にいるけど、自分が同じようにはできない。だから、「ジャズDJが必ずしもジャズのレア盤をかけなあかんわけでもない。別の新しいものを提示していくのもジャズじゃないか」って勝手に解釈した。例えば、500円の日本人のフュージョンとか、そういう方向性でいったら結構楽になってきたかな。その延長で、フュージョンのアルバムとかやったらディスコっぽいのもあるし、「これは4つ打ちで混ぜれるやん」って。ジャズをやってるつもりがいつの間にかディスコになっていき、それがまたハウスにもつながる。そういうスタンスでやってます。もちろん勝ち負けじゃないけど、上の世代の人と同じことをやってると勝てない。

お互いの興味が徐々に近づいて行ったときに、3人でやり始めたのがいいですね。

ミドリ:近づいてはいるけど、お互いこれまでにこだわってきた自信のある部分と足りない部分があるんだよね。自分だったらハウスでは負けないし、新しい音楽をいち早く届けるってところに長けてるけど、ジャズとか7インチは2人に教えてもらうことが多い。ラジオだとそういう不得意なところを自分で補うんじゃなくて、誰かにやってもらえるのがいい。2人とはそういう価値観を共有できるし、「TSUBAKI FM」の可能性を広げてくれる存在だと思う。

マサキくんとソウタロウくんは、実際にネットラジオでDJしてみてどう感じましたか?

マサキ:クラブと選曲の仕方とかかけ方が少し変わるかな。あと、普段クラブに来ない人から反応があるのは嬉しい。

ソウタロウ:やっぱり知らない人から反応があるっていうのは一番面白いかな。TUNNELにたまたま来る海外の人でなぜか「TSUBAKI FM」でのDJをチェックしてて、「聴いてるから来たよ」って言われたり。それってびっくりするじゃん。とくに俺は、マイクで紹介してレコードをかけるっていうジャマイカのスタイルが好きだから、ラジオでDJする機会をミドリくんにもらってよかった。

海外の人がチェックしてる点も含めて、手応えは感じてますか?

ミドリ:それはもう超感じてる。世界中からメッセージが来るし、「自分もラジオでやりたい」って言ってくれる。

そうしたなかで、今回ツアーをやった理由はなんですか?

ミドリ:単純にラジオを東京でやってるだけじゃ、広がらないなっていうのがひとつ。やっぱり現場で人と出会って伝えるのが一番大事かなと。もうひとつは、僕らがやってることを日本中の人にちゃんと見てほしかった。「TSUBAKI FM」を紹介するときに、自分が面白いと思ってる2人を全国の人に紹介しなくちゃいけないっていう気持ちがあった。実際、ツアーをやってみると、「2人はすごい」ってみんな言うんだよ。そこはマジでやってよかった。

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最初ジャズをやろうと思ったときは、スタンダードにレア盤を買ってたけど、途中で絶対無理やって気づくじゃないですか。すごいコレクションの人も身近にいるけど、自分が同じようにはできない。だから、「ジャズDJが必ずしもジャズのレア盤をかけなあかんわけでもない。別の新しいものを提示していくのもジャズじゃないか」って勝手に解釈した。──マサキ

ちょっと話を戻すと、ラジオをやって海外の人から連絡来たりといった反応はあるけど、国内的にはそこまで手応えを感じなかったんですか?

ミドリ:どっちかって言うと、広がってるのをもうちょっと肌で感じたかった。昔のラジオだったらラジオステーションがあって、そこに人が集まらないと放送できなかったけど、ネットラジオはネットと電源があればどこに行ってもできるから。全国津々浦々、場所を変えてやるのはすごい価値あるなと思ったし、「TSUBAKI FM」で1年間やってきたことを大きいパッケージにしたいなって思ったのが今回のツアーだね。

ツアーをして、「マサキくんとソウタロウくんがすごい」っていう反応があったという話でしたが、一方で、3人の目から見て地方のDJはどのように映りましたか?

マサキ:地方は地方で独自に発達してるというか。どのジャンルをかけてるっていうわけじゃないんだけど、自分の色をださはる人が多いというか。自分のスタイル、世界観でやってるなみたいな。

ソウタロウ:全然違うんだよね。「いまこれかけるんだ」みたいな、独特ですごい面白いし、向こうも同じように感じてるんじゃないかな。言い方悪いけど、東京の人だと似てくるじゃん。このシーンの人はこの感じって。だからツアーで回ってみて、みんな個性的だなって思ったし、それにすごく影響を受けた。

ミドリ:広島で24、5歳くらいの若いDJがいて、みんなよかった。しかもレコードでかけてるし。

ソウタロウ:まだ1年ぐらいとか言ってた人もいたもんね。俺は1年でこんなにできなかった(笑)。

ミドリ:HitomiちゃんっていうDJ。すごいセンスあったな。広島では7時半くらいまでやってたんだけど、その子は最後まで残ってて(笑)。僕らがツアーしたことで彼女に出会えたし、彼女にとってもいい経験になるといいな。5年後とか10年後、そういうDJが面白いことやってくれるんだったら、それだけでもやってる意味があると思う。

マサキくんは京都だけど、ジャズでDJやってると、京都が地方っていう感じはあまりないですよね。沖野修也さんと沖野好洋さんがよくイベントやってるし。

マサキ:たぶん、京都は東京の情報が結構入ってくるからそこまで変わりはない。でも、福岡とか広島とか、京都より西に行くと全然雰囲気が変わりますね。京都はちょっと中途半端かな(笑)。自分が京都だから分からへんけど。

ミドリ:それが今後効いてくると思うんだよね。だって、マサキくんは京都をベースにしてるわけだから、東京以外からも情報発信できる可能性があるわけじゃん。だから西で何かをやろうとしたときに、僕じゃなくて、彼を中心に西日本で面白いコンテンツをやるのはかなり大きいと思う。今回のツアーで、関西のDJと一緒に全国を回ったのはすごく大きい。

そういう役割は自覚してますか?

マサキ:フットワークが軽いのが自分のいいところ。東京は東京の人だけ、関西は関西の人だけでやっちゃうことが多いから、みんながもうちょっと自由に適当に動けるぐらいの方がいいのかなとは思う。もちろん他の人でもいると思うけど、僕みたいにリリースをしてないDJも、いろんな場所にいけるやんっていうのがあった方がええかなと。

やっぱり知らない人から反応があるっていうのは一番面白いかな。TUNNELにたまたま来る海外の人でなぜか「TSUBAKI FM」でのDJをチェックしてて、「聴いてるから来たよ」って言われたり。それってびっくりするじゃん。──ソウタロウ

では、これからいろんな場所で情報を発信するなかで、「TSUBAKI FM」ないし3人がとくに推したいものはありますか? ジャンルや曲だけでなく、DJでもいいのですが。

ミドリ:僕はまず、「TSUBAKI FM」でもDJしてもらったMayu Amanoを推したいね。彼女みたいな20代前半の若いDJって本当に育ってきてるけど、僕らの世代や上の世代はそれがあんまり見えてないよね。これから若いアーティストやDJがすごい勢いで出てきて、すごいスピードで追い抜いていくから。それは今回広島とか福岡に行ってみて感じた。そういう新しい世代を紹介したいし、一緒にやりたい。

ソウタロウ:ブラジルの〈ゴマ・グリンガ〉っていう、リイシューとブラジルの最新の音楽、どちらもピックアップしてるレーベルかな。ジャズとかファンクとかロックとか、いろんな要素が混ざってるバンドをリリースしてるんだけど、そのなかでもメタ・メタっていうバンドがかなり面白い。トニー・アレンも参加してるし、ノイズみたいな瞬間もあったり、でもブラジルっぽい美しさもあったり。普段かけるのとは違うけど、ラジオでかけれそうだし、尖った音楽を聴きたい人にはそのレーベルは面白いんじゃないかな。

マサキ:最近、日本人の80年代のニューエイジとかアンビエントにはまってますね。例えば、旧譜のアニメのサントラとかも、レアグルーヴ的な聴き方じゃなくて、ニューエイジ的な聞き方で聞いてみたい。シティポップとかも流行ってるけど、僕にはこっちの方が面白いな。安いし。

日本のアンビエントなジャズだと、濱瀬元彦さんの作品とかも最近リイシューされてますしね。

マサキ:ラジオをやってからその辺の聴き方を勉強して、「いけるやん」ってなって買ってる。あと、そういうビートないものとかかけてパーティ感が薄くなっても、逆に面白いかなっていうね。

ジャズといえば、「TSUBAKI FM」では最新のUKジャズも積極的に紹介していますよね。メディアを見るとUKジャズがかなり盛り上がってるように思えますが、ラジオではなくクラブのフロアではどうですか?

マサキ:いいんだけど、DJとしては何かが足りひんよね。

ミドリ:それディーゴも同じこと言ってた。

UKジャズの新譜はたくさん出てるのに、そこまで現場でかかってない気がします。次々と登場する新しいミュージシャンの名前は覚えるけど、曲の印象が薄いというか、DJ的にどれがいい曲かというのがあまり定まってない。フロアでクラシック化した曲って全然ないですよね。

ミドリ:わかる。リスナーに強く訴えるだけのエンジンが足りないのかも。この曲がアツいっていうのを刺しにいくようなパーティやラジオもそんなにないしさ。あと、日本のクラブに関して言えば、日本のアーティストだったりDJがそのシーンに行かないといけないんじゃないかな。やっぱり海外のものを単純に扱ってるだけだと刺さんないよね。例えば、Ryuhei The Manさんのレーベルから出たNAYUTAH「Girl」のMUROさんのエディットとかはすごくかかってるじゃん。ああいうのが今後大事だよね。純国産っていうところはキーワードだなって思う。将来、「TSUBAKI FM」でもレーベルをやりたいって思ってるし、日本人のコンピレーションもやりたい。ジャイルスがやったUKジャズコンピ『We Out Here』の日本人版みたいな。

国産音源だっていうのもわかりますが、メディアとは別の回路で、USジャズなりUKジャズなりの海外の作品を、クラブから独自にクラシック化させないとマズいと思ってます。自分もDJなので、クラシックをどう作るかってところは意識したいです。

ミドリ:逆だと思うんだよね。UKジャズがサウスロンドンから出たことで、今度はディーゴとか、ウエストロンドンのブロークンビーツがクラシックになったじゃん。新しいシーンができることによって、いままでやってたのがクラシック化されるっていうのもあるはずなんだよね。その流れの中で、ウエストロンドンのマーク・ド・クライヴ・ロウがジャズのアルバムを作るとか、さらに新しい動きがあるのも面白い。

そういった動きの紹介も含めて、新譜や旧譜に限らず、新しいクラブクラシックが3人の周りから出てくることを期待しています。では最後に、3人の今後について、展望や目標を教えてください。

ソウタロウ:毎週火曜日にAoyama TUNNELでやっている〈Tunnel Tuesday〉をもっと盛り上げたい。単純にもっと深く深くプレイを出来るようになりたくて、その為に毎週トライ&エラーを繰り返すのみだね。あと、なんとか時間を作って、今年こそはEDITモノなんかを作りたい。

マサキ:僕は地元が京都なので、もっと京都を面白くしたいというのが根底にあって。「TSUBAKI FM」含めていろんなことをやって地元に還元したいし、プラスにしていきたい。できれば、東京の人とかが「京都は東京よりも面白いことやってんな」って思ってもらいたい。最終的には、音楽だけじゃなくて街としてもっと面白くなったら、逆に音楽ももっとよくなるかなって。

ミドリ:やりたいことがめっちゃあるんだよね。全部やったら5年はかかるくらいあるんだけど、もちろん「TSUBAKI FM」は大きくしていきたい。違うな。もっと濃くして価値のあるものにしていきたい。結局さ、大きくしたいってなったら、数字とかSNSのフォロワーとかになっちゃうじゃん。「TSUBAKI FM」はそれだけを指標にしたくない。数字で見えないものにも価値をつけたいから。

数字で見えないものというのは?

ミドリ:具体的には2つあって。まずは日本をどうやって面白くしていくか。もっともっと東京以外にいるDJを探したいし、「TSUBAKI FM」でもプレイしてほしい。あとは若いアーティストだけじゃなく、ベテランでも、まだみんなに知られてないDJは紹介したい。もう1つは、今日本でやってることを海外に発信していくこと。自分も海外でツアーやってみて思ったけど、結局1人で頑張っても無理なんだよね。でも、「TSUBAKI FM」っていう器があることによって、新しいアーティストやDJを海外に紹介できると思った。2人にもガンガン海外でやってもらいたいし、やれるようにみんなで頑張りたい。ちゃんと海外のアーティストを日本に紹介していく作業と、日本のアーティストを海外に紹介していくって作業がうまいことできてくると、日本のシーンとカルチャーがもっと面白くなるんじゃないかな。

■Current Top 5

//Masaki Tamura//
Joe Cleen - Care While It Lasts
St Germain - Real Blues (Terry Laird & The Run Island mix Band Jazz mix)
Emma-Jean Thackray - Ley Lines
Jazzanova - Dance the Dance (Atjazz Remix)
Studio R - A+R feat.Capitol A (Llorca Remix)

//Souta Raw//
Frank Pisani - Please Don't Make It Funky
Special Touch - This Party Is Just For You
Joe Coleman - Get It Off The Ground
Kindred Spirit & Corina Flamma Sherman - Inner Languages
Manfredo Fest - Jungle Kitten

//Midori Aoyama//
14KT Presents IAMABEENIE - The Power Of Same ft Muhsinah
KOKOKO! - Malembe
Harvey Sutherland - Something In The Water ft. Jace XL
Wipe The Needle feat. Alex Lattimore - Enchanted (Original Mix)
Jaxx Madicine - Astral Changes


TSUBAKI FM

ABOUT

Tsubaki FM is a brand new platform for independent music, straight from the heart of Tokyo. We aim to bring new life to the underground music scene in Japan while also helping better connect artists and listeners worldwide. Get fresh tracks from diverse genres, music culture information, live broadcasts, and more.

東京発、インディペンデントミュージックを発信する新しい音楽プラットフォーム 『TSUBAKI FM』世界中から集まるクオリティの高いアーティストやリスナーをキュレーションしながら日本のシーンに対して新しい風を送ります。 様々なカルチャーや多彩な音楽そしてライブブロードキャストを中心に毎週日曜日 18:00~21:00 にしぶや道玄坂のウォーム・アップバー「しぶや花魁」から配信中

Web: https://tsubakifm.com
Facebook: https://www.facebook.com/tsubakifm/
Instagram: https://www.instagram.com/tsubaki.fm/
Mixcloud: https://www.mixcloud.com/tsubakifm/
Soundcloud: https://soundcloud.com/tsubakifm

 しぶや花魁を拠点にローカルからワールドワイドまでクオリティーの高いアーティスト / DJを招き、毎週日曜日18:00~21:00にライヴ・ブロードキャストを行うTSUBAKI FM。昨年は京都八坂や加賀山代温泉などの出張放送の実績もあるラジオ局が、東京、京都、福岡、広島にて初のジャパンツアーを行う。
 ツアーでは京都を代表するJAZZ / CROSSOVERイベント〈Do it JAZZ!〉を主催し、現在は Gilles Petersonがスタートしたオンライン・ラジオステーション〈Worldwide FM〉の京都サテライト〈WW KYOTO〉のDJも務めるMasaki Tamura。
 アンダーグラウンドディスコを軸に長年に渡り茶澤音學館のクルーとしてSadar Baharの来日サポートを務め、毎週火曜日のAoyama Tunnelをレギュラーに都内を中心にDJとして活躍中のSouta Raw。
 そして東京ハウス・ミュージックシーンの人気パーティー / レーベル〈Eureka!〉を仕掛け、TSUBAKI FMの発起人でもあるMidori Aoyamaの3人を中心に、特定のジャンルに縛られない様々なジャンルを発信するTSUBAKI FMとリンクした「音」にこだわりのある4会場のローカル・アーティストがコラボレーション。
 現地でのライヴ配信とイベントが融合したツアーショーケースを1ヶ月通して開催する。

interview with Autechre - ele-king


Autechre
NTS Sessions

Warp/ビート

Avant-Techno

  このインタヴューは去る6月15日13時30分からおよそ50分にわたって、渋谷のカフェでおこなわれた。来日ライヴの翌々日。梅雨のまっただなかで、朝から雨が降っていた。当日の通訳は原口美穂さんがやってくれたが、細かいところを訳すために片岡彩子さんにお願いして、英文起こしをしていただいた。せっかくなので英文のほうも(いちぶ聞き取りできない箇所もアリ)も掲載する。
 PCとインターネットが普及したことで、ベッドルーム・エレクトロニック・ミュージックの飽和状態はさらに過密化している今日この頃、専制的な均質化への抵抗としてのオウテカはいまだ健在だ。物語を持たない音の粉砕機械は、『Chiastic Slide』(1997年)でいっきに加速し、方向性すらもたない音のうごめきと複雑なテクスチャー、音の微粒子は『Confield』(2001年)でさらにまたギアが入っている。なんのことかわらないって? そう、まさに。そのなんのことかわからないことをオウテカは追求しているのだからしょーがない。誰もが慣れ親しんでいないことを、しかし親しんでもらうという矛盾で彼らを言い直すこともできるだろう。反エリート主義であり、徹底した反ポピュリズム。以下の取材でも彼らはSpotifyを激しく罵っているが、あらかじめ定められた目的別に音楽が消費されていく様は、彼らからしたらジョージ・オーウェル的な悪夢でしかないだろう。
 そういう意味でオウテカは、いま現在も長いものに巻かれないでいるし、逆らっていると言える。10人聴いたら10人が違う感想文を書くであろう音楽。この現実のようにカオスな音楽。それは感じる音楽であり、体験する音楽だ。先頃リリースされた8枚組(アナログ盤では12枚組)『NTS Sessions』でも同じことが言えるかもしれない。4つのセクションからなるこの大作だが、ぼくが驚いたのは、彼らがこのおよそ16時間をひとつの作品として考えていることだった。まあ、型破りな彼ららしい考えとも言えるが。
 90年代後半において、オウテカがビョークやレディオヘッドに影響を与えた作品は、『LP5』(1998年)や「EP7」(1999年)の頃で、そしてこれら『Chiastic Slide』以降のオウテカのひとつの節目としてリリースされたのが「Peel Session」(1999年)と「Peel Session2」(2000年)だったことを思い出す。『Confield』(2001年)以降を第三期オウテカと言えるなら、『NTS Sessions』はそれから『Exai』(2013年)までのオウテカ、近年の彼らの節目となりうる作品と見ることができるだろう。そしてそれは次なる段階へのドラフト(草案)なのだ。
 オウテカの2人と会ったのはものすごく久しぶり、ヘタしたら2000年代前半に、田中宗一郎と同じ車に乗って田舎の彼らのスタジオまで行ったとき以来ではないだろうか。それでもロブ・ブラウンとショーン・ブースは「あー、久しぶりだねー」みたいな感じで、1995年に彼らが初めて(ライヴのためではなく)来日したときに取材した頃とあんまり変わっていない。気さくで、オネストで、飾らず、良い奴らのままだった。

いまはそ完全に新しいものをいきなり出してもオーディエンスは付いてきてくれる。シュトックハウゼンが昔、オーディエンスは進化すると言っていたけど、それは本当だった。オーディエンスは進化したんだ。

この前のショウはとても良かったです。フロアは真っ暗で何も見えませんでしたが、ステージからフロアの様子は見えましたか?

ショーン:ぼくたちには(会場にいる)誰よりも見えているんだ。でも、耳を使っているんだ。観客が何をしてるか、耳で聞いている。
Sean:We see much better than everybody else. And.. But you can.. Mainly ears, you know, because you can hear what crowd are doing, what I think, you know... and...

ロブ:知覚を使って、場を感覚的に捉えることができる。会場の皆も、最初の真っ暗で何も見えない状態から、だんだん目が慣れてきて、最後の頃にはかなり見えていると思うよ。
Rob:You definitely get a feel for what it is. That’s more senses working part(?), but I think your initial feeling of the absolute darkness goes away all the time because people can see it by the end. People may get used it  

ショーン:少しはね、だって本当に暗いから……。
Sean:A little bit. Its very dark...

ロブ:リキッドルームはブラック・ボックスに向いている会場だね。
Rob: Liquid Room is good for black, box.

ライヴをしているほうからしてもオーディエンスの顔が見ないと思いますけれど、歓声やその場の雰囲気によってライヴの演奏は変わっていくものですか?

ショーン:そう、いろいろ変えることができる。リキッドルームでやったセットでは、オーディエンスを焦らしに焦らしたような気がする。このセットは、クラブでも着席するような場所でも、できるものだけれど……。このセットでヨーロッパをツアーしたんだけど、会場は(着席型の)コンサートホールが多かったんだ。
Sean:Yeah, we can change lots of things. It’s like the set in the Liquid Room, I had a sense that we were teasing the audience a lot, and it was.. we originally brought out the set so we could play either in clubs or a seated...In Europe, when we toured with the set, we played a lot in concert halls.

クラブやライヴハウスではなくコンサートホールってことですね?

ショーン:そう。クラブでも対応できるようにフレキシブルに作ってあるセットだけど、日本ならぼくたちが自由にやってもわかってくれると思ったし、リキッドルームはトラディショナルなクラブ・スペースだから、オーディエンスをどこまでプッシュできるか試してみたかったんだ。最後の最後まで、ビートがあるトラックはかけなかった。ビートを入れてからもそれを覆すようなことをした。オーディエンスを、できるだけ遠くまでプッシュしたかったんだ。それから、東京に来るのは久しぶりで、最後に来たときよりも、ぼくたちは進化していて、変化した部分がたくさんあるんだ。(あのセットは)それを短い時間でオーディエンスに伝える、ぼくたちなりのコミュニケーションの仕方だったと思う。
Sean:Yeah, so we made it so we can flex a little bit and play it in clubs, but for Liquid Room gig, because we felt like in Japan we can get away with more. And we thought it would be ok to play it in Liquid Room as a..., which is really a traditional, more of a club space, but to try and push the audience as far as we could. We left it until really close to the end before we gave them some tracks with beats. Even then, once we delivered that beat, we started to subvert it. We wanted to push the audience as far as we could. And, I think, it’s been a while since we’ve been to Tokyo, we have kind of evolved quite a bit since we were last here, and I guess it was our way of communicating very quickly.. a lot of changes to the audience.

ロブ:そうそう。
Rob: Yeah.

ショーン:Subvert (サブヴァート)したかったんだ。ぼくにとって、リキッドルームはトラディショナルなクラブ・スペースというイメージがある。ジェフ・ミルズを連想させるようなね。ジェフは、彼独特の方向に(ディレクション)にオーディエンスをプッシュするアーティストだ。ぼくたちはぼくたちの、オウテカのディレクションに、オーディエンスを出来るだけ遠くにプッシュしたいんだ。彼らが普段リキッドルームで体験するものとは、まったく違うものを聴かせたかった。
Sean:We wanted to.. subvert.. I think traditional Liquid Room is a club space, I mean, for me, I‘m in UK, so I don’t see every Liquid Room. I would associate Liquid Room with Jeff Mills. And Jeff is an artist who pushes audience in his direction very particularly. I think we want to push the audience in Autechre direction, as far as we can. Not give them what they traditionally get in Liquid Room. Give them something really really different.

ロブ:ヨーロッパで同じセットをやったけれど、オーディエンスは着席しているあいだなら静かにしている傾向にあった。東京のクラウド(観客)は、いつも静かだ。本当に聴き入ってるから。だから、リキッドルームはトラディショナルなクラブ・スペースだけれど、東京のクラウドならぼくたちのやりたい両方のことができると思ったんだ。
Rob:When we did the same set in Europe, like shows with more seated people, they tend to be quieter. Straight way. Tokyo crowd is always quiet, because they are really listening. So we knew the Liquid Room space would be the traditional club, but with Tokyo audience, so we could do both of our things.

ショーン:ヨーロッパだとオーディエンスに静かにしていてもらいたい場合は、彼らを座らせなきゃいけない。
Sean:In Europe, if you want people to be quiet, you have to sit them down.

ていうか、日本はマニアックなファンがすごく多いんですよ。欧米でもそうかもしれませんが。

ロブ:抑制が聴いていて、きちんと待っていてくれる。聴こえているんだ。
Rob: They are restrain and they wait. Because they would hear it.

ショーン:本当に静かだった。ベース(低音)も、かなり低いところまで持っていった。ダイナミック・レンジでいう低いところだ。
Sean:They were really quiet. There were some bass in the set, we were really trying to push it far down. Down in the dynamic range.

ベースにもいろいろあると?

ショーン:ラウドなベースとクワイエットなベースのどちらもが欲しいんだ。最近は、デプス(深度・奥行き)に惹かれている。だから、この辺りまでくるベースもあれば(ジェスチャーあり)、遠くて静かなものもある。コントラストがあるものが最近は多いんだ。
Sean:We wanted loud bass and wanted quiet bass. And at the moment I’m really into depth. So there are some bass that are really here, some bass kind of distant and very quiet. A lot of contrast at the moment.

ロブ:でも、空の両端にあるものとして結果は同じなんだ。静かだけれども、遠くないこともある。
Rob:But the resolution is the same at both ends of sky, you know? It’s quiet but not distant, as in, you just...but still perceivable.

ショーン:最近の音楽は、すべての音を同じように全面に押し出してミックスされている曲が多い。全部のレヴェルが同じで、どの音もよく聴こえる。何もかもが同じで、5分あったら5分、ずっとすべての音がダダダダダって同じような感じさ。正直言って、つまらないと思う。ぼくはすべてのエレメントがあからさまではない、シネマティックな奥行きにに惹かれるんだ。遠くにあるがゆえに、気配を気付けないものだってあるんだ。何て言うんだろう、いまのぼくはが興味があるのは、そういうことなんだ。
Sean:There are a lot of modern music.. is all about...the way a lot of modern music is mixed is about having every sound as close to.. very up front, all same level, every sound is very audible. Everything is the same, almost. It’s almost like for five minutes every sound is dididididi. And I’m bored with it, to be honest. I’m interested in most cinematic depth, where not every element is obvious. Some things are really in the background, and you might not notice it, you know. I guess that’s just where I am. It’s less about making a consumer product, and more like artistic thing, I don’t know .. I don’t know if that sounds bad. That’s where I am.

なるほど。

ショーン:いまのオーディエンスはとても洗練されている。インターネットを通して、さまざまなことを知ることができるから。でも、多くのアーティストが保身的だ。一般的な消費品を作りたがっている。インターネットの悪い面は、多くの人びとがフィット・インしたがるというか、いわゆるスタンダードなものを受け入れてしまうところだと思う。だから、規格品のような音楽になってしまうんだ。例えば、『ツイン・ピークス』の新作、もしあれがデイビッド・リンチではない誰かが作った作品だとしたら、ネット(ネットフリックス?)は受け入れなかったと思うんだ。でも彼には名声がある。だからできたんだ。それはオーディエンスにもわかっていたことだ。でも、オーディエンスのああいう反応の仕方、あれは誰にも(ネットも)予測がつかなかったものだと思う。
Sean:I think audiences now are actually quite sophisticated. We have the Internet, everybody can know about lots of things, but a lot of artists are very safe. And they want to make very broad spectrum consumer products. Because, the flip side of internet is that everybody wants to fit in, everybody wants to reach some standard, so this is standardized music. And I feel, at the moment, audiences are sophisticated enough to understand - you look at this, say, why Twin Peaks, the new series of Twin Peaks, if anybody other than David Lynch had made that, the net would have rejected it, but because he has the reputation, it can make the (estate?) and the audience understood it, they actually responded in the way that, may be the networks, that wouldn’t have predicted it....

ロブ:自信、自己肯定の話だね。
Rob:It’s a confident thing.

ショーン:企業もアーティストも人びとも、選択肢も消費者も多いから仕方ないけれど、完璧な消費音楽を作ろうとしているけど、もっといろいろできるはずなんだ。オーディエンスはインターネットを通してエデュケートされているんだから。だから、ぼくたちは最近はインタヴューをあまりやらないんだ。ただ音楽を作り発表する、それだけ。パトロン的なことは、もう一切しなくていい。
Sean:We have this thing where companies and artists and people are making music, and trying desperately...because there so much choice, consumers, everybody wants to make a perfect consumer product but actually the audience are very educated now because of internet, so you can do much more. And I guess, we kind of realized this now... this is why we do less interviews now and just do music and just put music out, because you don’t need to patronized the audience, at all anymore.

ロブ:アーティストは自分自身を満たそうしているように見える。そうする必要はないのに。ぼくたちはふたり組みだから、さまざまな意見を交換し合うことができる。ラッキーだよ。もしひとりだったら、ぼくたちがよくやるように、(同じ事柄に対する意見を)反映できる相手がいないじゃないか。
Rob: It is like artists are trying to fulfill their own self need for that... kind of..... they don’t have to. We are (lucky?) we are just two of us - we can perhaps… let’s do this and if it was just one person, there is no one to foil against. No one to reflect the same things and we do that a lot with our work.

ショーン:自信を持てないでいることはイージーだよ。さっきも言ったように多くの人(アーティストたち)がオーディエンスをひいき (patronize)している。それがどういうことかっていうと、ピッチフォークで良いスコアを取ることだったりするんだ。たぶんね。音楽をレート(採点)するアイディア自体が変だよ、五つ星、四つ星というように。音楽はケトルやトースターやラジオじゃない、機能品じゃないんだ。それにスコアをつけるなんて馬鹿げてる。
Sean:It’s easy to not be confident, with the audience and to think you need to... Like I say, a lot of people now patronize the audience, and what that going for is actually a good score on Pitchfolk, maybe. They are going for this, so...This whole idea of rating music with score and stars, like 5 stars and 4 stars, it’s kind of weird. Music isn’t a kettle, or toaster, or it’s not a radio .. it’s not functional in this way (?) and you don’t, you get out with a score is stupid.

ロブ:(音楽の)話をすること自体が難しいのに。それにスコアをつけるなんて……。
Rob:It’s hard enough to even just talk about it. Let alone (?) what you’ve said into 5 star...

ショーン:それによって音楽が変わっていってしまっている。ぼくにはそれが聴こえるよ。そんなことを気にしていたら、オーディエンスをプッシュすることはできないのに。
Sean:But it’s changing music, I can hear it’s changing music I think a lot about it - it’s a scare to push the audience.

ヨーロッパで同じセットをやったけれど、オーディエンスは着席しているあいだなら静かにしている傾向にあった。東京のクラウドは、いつも静かだ。本当に聴き入ってるから。

オウテカのライヴを聴いていると、距離の感覚がだんだんと崩れていって、普段自分が感じているような空間ではないような感覚を覚え、違う感覚が呼び起こされます。これまでも何度かライヴを拝見しましたが、オウテカのライヴがすごいのは、いまでもオウテカの音楽は未来の音楽ということです。90年代のノスタルジーにはならない。

ロブ:ノスタルジアで昔の曲をかけたことはいちどもないよ。
Rob:I don’t believe we have ever played our old tracks (out of nostalgy).

ショーン:もちろん、ぼくたちの仲間のなかには、昔はよかったなんて言う奴もいるよ、もうミドル・エイジだからね、自分たちも含めて(笑)。ノスタルジアばかりさ、周りはね。
Sean:Ok, so the artists I (grew), got along side, complain about this, who are middle aged now, like we are, and they have enjoyed early part of their lives more, so that ...(laugh). There is a lot of nostalgia around, basically.

あなたがたはまったくノスタルジーを感じないんですか?

ショーン:皆、少なからず、それはあると思うよ。年を取ったということだよ。でも、ぼくがノスタルジアを感じるのは、そういうことじゃないんだ。他のエレクトリック・ミュージシャンは、そういう音を作りたがるけど……。ぼくたちに常に完璧を求めてきてたんだ。
Sean:Well, we are all bit like that. We all got old. But I think I am nostalgic to different things, electronic musicians.. I think they want to make sound from them. which is we must be perfect all the time.

ロブ:まさしくそうだよ!
Rob: This is it, this is it.

ショーン:いまはそうでもなくなってきたけど。皆、型にハマりたがる。ぼくたちは、常に型破りでいたいと思っていた。
Sean:It’s becoming less so now.. everybody wants to fit in. We always wanted to not fit in.

ロブ:その通りだよ。ぼくたちがいまノスタルジックに感じているもの、それはある意味いまでも進行形なんだ。
Rob:Exactly, the idea is what we are nostalgic about now is that we are still doing it in a way. We are not nostalgic and presenting our old work. We are not really nostalgic in that sense, but what we would do is, still, not the....

ショーン:ぼくはときどき、音楽をたくさん買ってきて聴きまくることがあるんだけど、似たようなものが多いなと感じる。それがどんなものであれ。そして飽きてしまう。そして違うことがやりたくなる、自然とね。とくにこれらとは違うものを作ろう! と意気込んでいるわけじゃない。ただ、ああ、こういうものは、もうお腹がいっぱいって思うだけ。そして、スタジオに入ると全然違うものができあがってくる。ぼくたちは多かれ少なかれいつもこんな感じでやってきた。
Sean:I always kind of, if I listen to, if I buy a lot of music, which happens, sometimes I just buy a lot of music, they’d be kind of sameness, you know, similarity there, and usually I get bored of that. Whatever it is. And kind of wanna do something else. It’s just a natural thing. I don’t think, you know “I must make the opposite to this”, I just get… just (fatigue?) .. I just think “Ah I’ve had enough of that. But when I go into studio, something else comes out. That’s … kind of we have been always that way. 

ロブ:さっき君がオーディエンスとの距離のことを言っていたけど、それについて話してもいいかい? ぼくたちはフロアの端っこの方、DJたちがよくやる場所だよね、そこで十分ハッピーなんだ。ステージは人工的なバリアを作ってしまうメカニズムのようなもので、それを好むアーティストもいるけれど、ぼくたちはそうではないんだ。
Rob:Can I say .. you mentioned first the distance between the audience and us. I think we are often quite happy to be in the corner on the floor, like where a dj might be. So sometimes a stage is an artificial barrier-making-mechanism artists prefer. We are not really that way.

ショーン:で、いまのオーディエンスはとてもスマートだと心から思うよ。知識がある。ぼくたちがスタートした頃は、オリジナリティーを受け入れてもらうのは難しかったんだ。少しずつ少しずつオリジナリティーを出していくというか。いまはそんなことはなくて、完全に新しいものをいきなり出してもオーディエンスは付いてきてくれる。それを生かすべきだと思うんだ。シュトックハウゼンが昔、オーディエンスは進化すると言っていたけど、それは本当だった。オーディエンスは進化したんだ。いまは、皆、シュトックハウゼンが誰か知っている。ぼくたちがはじめたころは、シュトックハウゼンを知っている人なんてひと握りだった。シュトックハウゼンに限らずね、例をあげればの話しだよ。オーディエンスは本当に知識があって、柔軟だ。つねに多様な音楽に触れていると思う。
Sean:I really do believe that the audiences now are incredibly smart. They know way more. When we started out, the audiences was…you know, you had have to make small moves, you made small moves of originality back then. Whereas now you can do huge moves in the originality. You can make completely new things. But the audiences are still there with you. I think this is something you can work with. It’s like .. some of what Stockhausen said back in the day about audience would evolve, is true. Audiences have evolved. People now days know who Stockhausen is. When we started out, you’d meet may be three people who know Stockhausen. Not Stockhausen particularly.. I’m just using him as an example. I think, in general, I think audiences are far more educated and far more flexible. They are more exposed to more different things all the time.

ロブ:ダイナミック・レンジについてもっと言えば、とても大きな音を出すことはオーディエンスとの間にバリアをつくるようなものだ。でも、音量を下げることによって聴こえてくるディテイルを大切にすると、そのバリアから流れ出ることができるんだ。最近はオーディエンスと親密なコミュニケーションができると思っている。昔はできなかったように思う。
Rob:There is something more about the dynamic range as well. I guess people can play really loud. It almost presents senses of barrier, between the artists and the people. When you bring things low, and with detail, it’s almost like you flow over that barrier as well as you.. We find now that we can communicate with intimacy with the audience, and which wasn’t possible.. 

ショーン:以前はもっと難しかった、不可能ではなかったけど。いまは、ストレンジなことをしてもオーディエンスはオープンでいてくれる。奥行き、ダイナミック・レンジ、インティマシー、そういったものは互いに作用しあうんだ。
Sean:It was possible but it was more difficult before. I think now you can bring the audience in and exposed them to stranger thing and they are more open to it. And yeah its kind of depth and dynamic range and intimacy, they all relate to each other.

思い通りの展開をしない音楽に対してオープンないまの状況というのがあるとしたら、あなた方が開拓したと思います。

ショーン:本当にそう思うよ。インターネットによって、あらゆるものが入手できるようになった。インターネット上で20代前半の人たちと話すことがあるけど、本当に驚くよ。なんでも知っているんだ、アカデミックでストレンジな音楽のことをね。以前から知っている人はいたけれど、いまは誰もが知っているようなものになってきている。
Sean:Yeah I really think so, Internet has made everything available. You’d be surprised that you speak to the people through the internet, may be they are in their early 20’s, they know about loads of academic, strange music. I mean there was some before, but now it’s becoming like a thing that everybody knows..

ロブ:昔だったら、そういうものを知るためには人生体験が必要だったんだよ。ぼくらはラッキーだった、年上の友だちがいたから。コイルやクラフトワークの前身のような音楽やアーティストたちのことを教えてくれたんだ。それをリアルタイムで知るには、ぼくたちは若すぎたからね。インターネットを通すと、そういった知識を凝縮することができる、もちろん、きちんとした説明や、信用できる引用元や照合、貴重なメモなんかがあってのことだけれど。
Rob:You’d need a life experience to know about these things. We were lucky the older people we became friends with, would show us who coil was, would show us who early, pre-Kraftwerk artist … because were too young for experiencing it when it was alive. So I think some people can condense that now with Internet, as long as there are trusted report and trusted explanations, and interesting notes and verifications, or citations… that helps but..

ショーン:何もかも入手できる場所に皆が競って入っていこうとする。でも注目されるのは困難だ。なぜなら、多様なすべてのものがそこにあるから。逆を言えば、皆がさまざまなものに触れることができ、洗練され、新しいものにもオープンになっていく。
Sean:It has two things .. on one end, you got this huge array of.. everything is available and artists are competing to be in the space.. it’s very difficult to get someone’s attention, because there are so many (?) now and so much music and everything is all there. But the other side of that is people are exposed to all these different things, and so they become more sophisticated, and more (?) and more open to new things.

ロブ:ひとつのことが次のことにつながるんだ。
Rob:One thing lead to another..

ショーン:ぼくはポジティヴな側面に惹かれるよ、オーディエンスが洗練されているという部分にね。
Sean:I am more interested in the positive aspect, which is the audience is sophisticated.

ロブ:かなり若い頃からクラフトワークのことは知っていたけれど、年上の友だちのおかげだな。その人から良い音楽のことをいろいろ教わったんだ。
Rob:Yeah, I remember knowing Kraftwerk when I was really young, but It took an old friend.. It was an old friend that explained the finest earlier work.

ショーン:良い音楽を見つけ出すのに昔は時間がかかったよね。
Sean:It used to take time to discover too…

もちろんインターネットにはポジティヴな面とネガティヴな面があると思います。ネガティヴな面というのは情報量が多いところです。例えば、今の若い人はいろいろな情報をチェックしてどんどん頭でっかちになってしまい、肝心なところが抜けてしまっていると感じるときがあります。今日の最高におもしろい音楽のひとつにシカゴのフットワークがあると思いますが、彼らはそんなにインターネットをチェックせず、自分たちで作り上げたからあのようなものができたんじゃないかなと思います。インターネットによってフラットになった世界の怖さについてどう思いますか?

ショーン:フットワークのように、閉ざされた環境で育つシーンを見つけるのは難しいし、レアなことだよ。フットワークは、ある意味、ハウス・ミュージックの再資本化に対する、シカゴ独特のリアクションだと思うんだ。ハウスを作っていた多くの人がフットワークに携わっていて、いまは大勢のヨーロッパ人もハウスを作っているけど、それに対して彼らは「これは俺たちのゲームなんだ、俺たちがフットワークを作って、俺たちがやっていることなんだ」と思っている。ドリルなんかもそうだよね。
Sean:Ok, so, yeah, you do have these things where that it’s difficult and it’s very rare to find as a scene that’s developed in an isolation like Footwork. I think Footwork in a way, this, very Chicago reaction to the recapitalization of house music. A lot of the guys who are involved in the Footwork scene were making House, but now every European is making House, and they just got, “No no no, this is our game. We are doing this and make Footwork, which is almost inaccessible to white European audience, right? You get the similar thing out of Drill music in Chicago as well.

ロブ:ダンス・シーンとペアになったとき、アメリカ人とヨーロッパ人はコインの反対同士なんだ。
Rob:I think when it’s twined with dance scene, Americans and Europeans are the another sides of the coin - because… you can’t, they’re doing footwork dance, and in Europe, they’d be listening to it (embarrassed?) with backpack on going like this….

ショーン:音楽的にフットワークはとても面白いと思うけどね。 
Sean:I mean I really like Footwork from the music part of the perspective, I think it’s very interesting ..

ロブ:ダンスとペアにしてクリエイトするからね、ストリートで、子供たちも、年寄りも、皆フットワークで踊っている。イギリスではそんな幅広い年齢層では聴かれていないかな。
Rob: It’s just as nice but at the same time, it becomes exclusive to people to create it, because they create with the dancing, in the back of (car park?), on the street, young children, older people, you know, if you think of it all the ages dancing to Footwork. In England, or in Europe, there is a very narrow band of age listening to that (shit?)..

ショーン:フットワークは音楽的にとても面白いから、ヨーロッパ人に受けるんだ。それに、近づきがたいものだっていうのもヨーロッパ人好みなんだよ。
Sean:It’s also that, yeah, Footwork is one of those things where it’s musically very interesting and Europeans are going to response that because there is always.. almost a conversation between people in the UK and people in America. And it’s always like things like Footwork are more interesting to Europeans, because it’s otherwise unaccessible, so we…

そこは日本人もそうかも。

ショーン:手の届かないものであるべきだよね。
Sean:It shouldn’t be accessible ..

ロブ:手に届くとは思っていなかったというか。
Rob:You wouldn’t expect it to be accessible.

ショーン:ハウス・ミュージックのときも同じだった。80年代にハウスが出てきたときに、イギリスなんでハウスに夢中になったかと言うと、アメリカの文化のなかハウスのようなものは他にひとつもなかったからだよ。80年代のアメリカ文化といえば、ブラック・ラップ・ミュージックがあるけど、ハウスはメインストリームでは理解されなかった。フットワークは、ある意味現代のハウスだよ、アメリカのメインストリームが理解しないもの。売りつけられるものと買いたいものが違うようなものと言えばいいのかな。イギリスはアメリカのメインストリーム音楽を認めてないんだよ、ビヨンセのような大物以外はね。イギリスでグランジやハウスが受けたのは、イギリスはあまり知られていないアメリカものを好むからなんだ。
Sean:Same thing with House Music, when it came in the 80’s. The reason UK liked House Music so much in the 80’s was that there was nothing like that anywhere else in American culture. Predominantly in the 80’s American culture was Black Rap Music. And suddenly there was (?) which was coming from America but mainstream America didn’t seem to understand. Footwork is the modern House Music in a way - it’s the thing the mainstream America doesn’t understand. It’s kind of like a difference between somebody obviously selling you something, and you wanting to buy something, you know? For Europeans, for whatever reason, you want to pick and chose things that are like… kind of a.. it (?) you a sense of agency. It’s like… the reason Grunge music was popular and House music was popular - obscure American things are always more popular in UK than mainstream American things. UK does not buy mainstream American music apart of huge acts like Beyonce.

ロブ:(イギリス人は)誰にも指図されずに好きなものを選びたいのさ。
Rob:It’s like we want to retain our independent right to choose what we want…

ショーン:人種の問題ではないし、そうしたくもない、でも、イギリスはアメリカの白人音楽よりも黒人音楽を好むんだ。つねにそうだった。なんでかって……、単純に言うと、(黒人音楽の方が)良い音楽だからだろう。1994年、ぼくたちが初めてアメリカに行ったとき、取材でどんな音楽に影響を受けてきたか訊かれた。「エレクトロやハウス」と答えたら、ジャーナリストたちは理解してくれなかった。
Sean:I mean I don’t want to make this about race, because I don’t want it to be about race, but UK prefers Black American music to White American music. We always have, I don’t understand why. I think may be it’s just better music. When we first to went to America, and they said “What are your influences?” and we said “Electro. House Music”. This is in 1994. Most of the journalists, couldn’t understand.

ロブ:予想通りの答えじゃなかったのさ。
Rob:They expected us be to into…

ショーン:彼らにとって、(エレクトロやハウスは)どうでもいい音楽だった。インテリジェントだと言われている音楽をやっているはずのオウテカが影響を受けるほど、(エレクトロやハウスは)洗練されている音楽だとは思っていなかったんだ。黒人音楽がメインストリームの白人音楽よりも洗練されていると認めたくなかったんだ。でも、時代は変わった。インターネットがヒップホップをいまのメインストリームにのし上げた。それをアダプトしてみればいいんだよ。フットワークやジューク、ドリルみたいなジャンルが、いまはメインストリームに成りつつある。アメリカよりもヨーロッパで受け入れられているよ。インターネットがそのプロセスを早めているんだ。
Sean:They just didn’t … to them that sort of music was rubbish. It wasn’t sophisticated enough to influence a band like Autechre, which they thought very intelligent and all that. It’s kind of like the same reason that Americans invented the term IDM. Because they didn’t want to admit, that the local black music was more sophisticated than mainstream American which was very white, at the time, music. But things change and Internet forced Hiphop into the mainstream in America now. So, try and adapt that. And Footwork, genres like Footwork, things like Juke and Drill are now becoming mainstream because of the acceptance in Europe rather than in America. Internet is speeding up the process.

ロブ:そうだね。
Rob:Yeah

ショーン:90年代とは違うんだ。いまはインターネットがあるから、ヨーロッパ人にうけているってすぐわかる。さっきから言っているように、オーディエンスもシャープだし洗練されている。
Sean:In the 90’s that wasn’t really the case. But now, if the genre.. like yeah you can make those genres big in America now because Europeans like them. If Americans are on Internet, and if Americans see Europeans like it on the Internet, it’s this quick things now. And like I said, audiences are so sharp and sophisticated now, it’s different.

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1994年、ぼくたちが初めてアメリカに行ったとき、取材でどんな音楽に影響を受けてきたか訊かれた。「エレクトロやハウス」と答えたら、ジャーナリストたちは理解してくれなかった。彼らにとって、それらはどうでもいい音楽だったからね。

次の質問です。『Exai』というCD2枚組のアルバムを2013年にだして、その後CD5枚組の『elseq 1-5』を自分たちのサイトから出していて、今回の『NTS Sessions』 はCDなら8枚組ということで、なんだかどんどん作品の尺が長くなっています。それは自分たちが表現したいこと、作品に出したいことが1枚のCDではおさまりきらなくなっているということでしょうか?

ショーン:あれは偶然の産物なんだ。2年前頃、NTSでたんなるミックスだけれどDJをした。そうしたら、次は(8時間の)レジデンシーをやらないかと。普通のラジオのDJのようなものをね。8時間、DJをする時間はなかったし、やりたいとは思わなかった。でも、自分たちのマテリアルでなら面白いものが8時間できるだろうと考えた。だからそうしたんだ。8時間のDJをやらないかって言われたからこそ、発展したというか。
Sean:NTS thing happened by accident. About two years ago, we did a dj set for NTS. It was just a mix, you know. And they came back and said if we would do a residency. And the first this was just a regular radio dj thing they were asking us. But I didn’t want to do it, I didn’t have enough time to do 8 hours to dj mixes, you know. But we sat and thought about it, and we realized we could make 8 hours of material - because, that would be more interesting. So we did that. So it just happened just because they asked us....They asked us 8hrs of mixes and...

ロブ:2時間のセッションを4回ね。彼ら(NTS)のレジデンシーが、そういう仕組みなんだ。
Rob:Four two-hour sessions. Four two-hour shows in the most. It was their idea to stage this residency, because that’s how they work with the residency…

ショーン:時間はかかったよ。これをやるには時間がかかるけど、できるだろうか? ああ、できるよって(話し合って)取り組んだ。
Sean:So it took a while - I thought ok if we do this, it would be a long thing. It requires a lot of time, but we can do it. It’s one of these... “Can we do this? yeah, we can do it.” And we tried. I think we did it.

ロブ:NTSのレジデンシーだったら、DJをするのだろうと思うだろ? 今までも新しいアルバムを出す度にそうしてきていたしね。プロモーションの一環として、ラジオ番組で大きいプログラムを組んで、影響を受けたアーティストの曲をかけたりしてきた。自分達の曲ではなくてね。ぼくたちがラジオでオウテカの曲をかけるとは、誰も思っていなかったんだ。だから、あれ? この曲は? まさかオウテカじゃないよねって。でも、2時間もしたら、当然わかるよね。次のセッションまでの1週間、皆が興味深々でいてくれたのがわかったよ。
Rob::What makes it more special is that, if we did a residency like that for NTS’ invitation, you’d expect us to be djing for the people’s music. Like we had every time we put cd of our music. We would prep us a big radio show, playing influences, play tracks that are never ours. Hardly ever played our own tracks. So suddenly the idea that.. the radio show, what you will hear is still secret. You know with an album, it’s gonna be an Autechre album, but with a radio show, a lot of people might expect others’ music, so it was that really the nice thing that the revelation that.. “I have not heard this tune before, they are playing some new record of somebody.. Is this Autechre? Oh...” And after two hours, it’s very obvious it’s Autechre and it was another week to wait. Will this be… They are not doing Autechre, they are playing somebody else’s. And that lasted almost a week. (We knew in an advance, it was saying we were talking about ideas - you could expect this constant reawakening of the people, the interests?)

ショーン:ワープと契約する前の、1990~1991年頃、マンチェスターで3~4年、パイレート・ラジオをやっていたんだ。他のアーティストのレコードをかけていたけど、ときどき自分たちの曲も滑り込ませた。
Sean:Before we signed to Warp, in 1990, 1991, we played on a pirate radio station in Manchester. We did this for three years, four years. We would play other people’s record, but every now and then, we’d slip in our own track of ours.

ロブ:デモをね。
Rob: A demo.

ショーン:かけてみて、それに気づく人がいるか試していた。それに近い精神というか、何をやらかすかわらない遊び心というか。
Sean:Just play.. you know, see if anybody notices. And it was a little bit in that spirit, where the audience would not know what we would do, so we could play around..

ロブ:予測できないこと何かをね。
Rob: It’s unpredictable

ショーン:ぼくたちが新しいオウテカの曲を8時間もかけるなんて、誰も思わないだろうと考えたんだ。だって、馬鹿げているだろ。だからやったんだ(笑)。
Sean:Yeah so we thought nobody would expect us to play 8 hours of new Autechre. It was kind of absurd, you know, ridiculous. But.. so we did that.

ロブ:ぼくたちがラジオのブロードキャスティングのことをよく理解しているということ、それがショーンが言っていることの本質だよ。ラジオを聴くという行為、皆が一体になって聴いている瞬間というのかな、ある瞬間に、この曲誰だろうって思っている人は君ひとりじゃない。皆をシンクロさせるんだ。ライヴ・ストリームだったから世界のどこかで君と一緒に聴いている人がいたんだよ。深夜2時頃にやるのがぼくたちの定番だけどね、昼間じゃくて。夜、心に響く音楽だと思うんだ。世界のどこかでは、深夜のベストの時間帯になるから、(ストリーミングを)何時にやってもいいのかもしれないね。さざ波のように広がるのが面白かったよ。ある場所では夜中で、別の場所では仕事から帰ってきたばかりの時間。でも、少しはお互いにシンクロし合うんだ。皆がライヴ・チャットしていたのを見ていたよ。「いま帰ってきてばかりだけど、聴き入ってるよ!」とか「いま東京! 東京で聴いてる!」とかね。そうやって感情が反映されて広がっていくんだ。
Rob:It’s the nature of Sean talking about how we are very familiar with radio broadcasting, the idea of how people are actually listening together, is a combined moment where everyone knows, even if they don’t know - “who is that?” - then at least there is one more person is like that. Doing what they are doing. And.. Because it synchronizes everyone. What was quick with this was, they streamed this live, normally we would play it 2AM or it’s better earlier in the evening, not in the mid afternoon, but you knew this somewhere around the world, there are somebody (?) that, in that ideal window. At night time, that kind of music works a little better. And it meant that the radio show could be played almost (?) time of the day, because somewhere globally the stream is arriving at the ideal time for someone… They are kind of this funny ripply effect of people being accepting it later night and some people are like “no i’m just coming home from work, it’s not my ideal time” but they would synchronize each other a little bit. You could see people chatting live and say “I’m just coming home and suddenly immersed in this thing”. And some other people are like “I’m in Tokyo listening to this, oh man!” and you spread to reflect the feeling ..

ショーン:捉え方としては、ラジオ番組のプログラムと一緒なんだ。リリースはラジオをドキュメントしたものなんだ。だからタイトルがある。『NTS Session』と。
Sean:It’s conceived as programmed as the radio show. It’s very much… the release is a document of a radio show, which is why it has a title. NTS session because...

ロブ:アーカイブだね。
Rob: It’s an archival.

ショーン:そう、ラジオのアーカイブ・リリースだよ。
Sean:Yeah, it’s an archival release of a radio show. Yeah, it’s a...I guess that is what it is.

これはいつ放送されたものですか?

ショーン:4月だよ。やったばかり。
Sean:April. It’s very fresh, yeah.

ロブ:4月に4回、毎週木曜日だった。
Rob:It was every week , four Thursdays in April.

ショーン:前もって用意した作品だよ。スタジオでやった長いセッションを元にしているんだ。ピール・セッションを作った時のプロセスと同じようなやり方なんだ。
Sean:And it was prepared in an advance. But it was made.. originally from the long live sessions in the studio. It was a similar process to how we made the Peel Sessions. It was a very similar process to this.

4つのセッションはそれぞれテーマが決められているように感じました。セッション1はダンス・ミュージック、エレクトロ的なオウテカのルーツを感じるようなセッションで、セッション2は近年の『Exai』や『Oversteps』などすごくエクスペリメンタルで複雑なことをやっていた近年のオウテカというものがすごく出ているように感じました。セッション3は今までやっていなかったことをやろうとしているのかなという印象を受けて、セッション4はアンビエントやドローンなど聴いたことがないオウテカという印象を持ちました。それぞれのセッションはどのように作り分けているのですか?

ショーン:興味深い。
Sean:It’s interesting...

ロブ:ペース間隔が大切だったんだ。ラジオ・ステーションがベースになる作品であることはわかっていた。
Rob:They have to be paced, and we knew the pace had to work in a... we knew the records were gonna come out as well as the radio station was gonna be its basis.

ショーン:部分的には……、頭のなかのどこかで、経験として8時間の音が成り立っていたから。
Sean:It’s partly... as well, somewhere in the back of my mind, I had kind of 8-hour experience..

ロブ:頭のなかで。
Rob: In mind.

ショーン:そう、だから、全体的な流れがある。8時間通しで聴くことは、誰にも期待していないよ、でも可能にしたかった。(音の)旅だと思う。大まかなナレティヴもあると思う。そうだね、最初は直球にしたかった、ある意味、入って行きやすいもの。2番目は、ディープにしたかった。2番目のセッションは、ブシュシューと深いところに沈み込むような感じだ。そして3番目は、2番目の展開。4番目はディープな未来。なんて表現すればいいのかな、アイディアとして、深い深い未来、物事がありすぎるようで少なすぎるような……。
Sean:Yeah. So there is an overall flow. I don’t expect many people would listen to 8 hours all while they are sitting but I want it to be possible. And it’s kind of a journey. There is kind of a rough narrative...And yeah, it’s true, in the beginning I wanted it to be more straight forward.. Not necessarily... I guess “accessible” to a certain extent, and the second one, I want it to be deep. The session two was kind of a deep plunge, almost like an “boonpfft.... “, you know. And then three is a kind of like a development of two. Four is kind of a deep future. I don’t know how to describe it, kind of...idea is a deep deep future where it almost you can’t ... there is almost too much and too little at the same time..

ロブ:ぼくは個別に捉えている。1番目は……狭いところから始まり、だんだん広がっていく。アルバムにはイントロがよくあるように。2番目はもう少しわかりやすくて(入っていきやすい)、皆がどこまで遠くまで行けるか探っている。3番目は、とてつもなく広く、何でも起こり得るような場所。4番目は、ショーンが言ったように、ガスなのかアトミック・レベルなのかわからないけど、互いにコズミックな関係性のあるものが沈みこむような……引力と重力のある……
Rob: I see it individually in a way...the first one... it starts out narrow and widens out and widens out, and second one, yeah slightly more accessible for a reason, because some albums were with an introduction, yeah? And then, second one, exploring how far people can go. Third, you got so much width now, almost anything is possible. The fourth one, like Sean said, you don’t know what they are doing with the gas, or atomic level stuff or, and just as important, cosmic with one another. There is gravity and heaviness ..

セッション4最後の1時間近くあるトラック、“all end”のことですが、このような長尺のドローンはいままでなかったと思のですが……

ショーン:長いトラックを作ったことは前にもあった。ドローンのようなものも、「Quaristice.Quadrange.ep.ae」(2008年)というね、『Quaristice』の頃だよ。
Sean:Yeah, we’ve done long tracks before. We’ve done drone tracks.. We did the thing called Quadrange, around the time of Quaristice.

ロブ:レコード4枚分、ダウンロードのみのリリースでね。
Rob: It was a range of four records. Download only.

ショーン:『Quaristice』の頃のデジタル・リリースで、1時間あるトラックだった。だから、初めてじゃない。ドローンとは呼びたくないけど、こういったトラックはずっと作っていた。ドローンじゃないんだ、別物だよ、でも、まあ長い間、こういうものは作ってきていたんだ。
Sean:It was a digital release around the time of Quaristice, and was an hour long track. So it wasn't the first time, but it was very limited.We’ve been making this kind of tracks...I don’t want to call it drone.. It’s not really drone, it’s something else, but we have been doing this kind of stuff for a while.

ロブ:その曲は世界のようなものなんだ。複雑な……。文明のある天体球で、そのなかを覗くとひとつの完全な世界がある。あって欲しいと望んでいる。
Rob: It’s like they are worlds.. it’s complicated.. it’s a civilized sphere, but if you look inside it, there is a whole world.. I mean there is, hopefully.

ショーン:その表現はすごくいい。
Sean:That’s a really good way to say it.

ロブ:こうとしか言い表せないな。
Rob: I don't’ know what else to say it..

ショーン:こういうのはしばらくやってきていたよ。でも、ワープに(1曲で)1時間もあるアルバムを持っていったら、何考えているんだ? って言われるよ。でも、8時間分のリリースなら、そのなかに1曲、1時間のトラックがあってもOKだろ。
Sean:We’ve been doing this for a while.. but if we go to Warp with an hour long album, they’d be like “What?”. In an 8-hour release, it’s ok to have a track that’s an hour long.

ロブ:昔、パイレート・ラジオだけじゃなく、キス・マンシェスターでもやっていたんだ。毎週ね。ディスエンゲージドという番組で、キス(ラジオ)でやっていた。FM局のキスは、イギリス全国にあるサテライトステーションだから、ぼくたちもブライトンでやったり、ロンドンでやったりしたけど、マンシェスターではレジデントみたいな感じで何年もやっていた。毎週日曜、真夜中の番組。友だちを呼んで、GescomとかAndy Waddocks, Skam, Rob Hall, Darrell Fittonとか、皆でやったんだ。みんな、変わったものを持ってくるんだよ。それに近いフィーリングだよ、ラジオでいろいろなものを聴く(かける)というものに。
Rob:We used to do, not just a pirate radio, we did a legitimate radio on Kiss Manchester. Every week… It was called Disengaged, on Kiss Radio. Kiss FM spread out as Satellite stations in UK, so sometimes we’d be in Brighten, London, and then we had almost like a resident in Manchester, for years. We had friends involved, Gescom gang, we did a lot of Disengaged in Manchester, because they came regularly every Sunday. And it was really late at night. So we did a lot of late night radio. Gescom, Andy Waddocks, Skam, Rob Hall, Darrell Fitton, all contributed and we all did this together. But they (?) very weird wonderful kind of program material, so.. it’s similar to that kind of the feel that things could be… it’s radio so we could explore lots of different things.

Spotifyはクズだよ! なんでかって? アクティヴィティー・プレイリストなんてものがある、リラクゼーション・プレイリストとか? 最悪だよ。音楽を滅ぼしてしまっている。最低さ。ストリーミング・サービスは、ゆっくりと音楽を破壊の道へ導いている。

『NTS Sessions』のすべての曲にちゃんと曲名がありますよね。その1時間の曲は“all end”という曲で、曲名に意味を持たせようとしないオウテカにしては意味を感じる曲名だなと思いました。

ショーン:うーん、ピンとくるタイトルはあるよね。これの場合は、最後の曲で尺の長い作品だし……。
Sean:I don’t know...sometimes titles just feels right. It was the end, and it was long and all..

ロブ:他のトラックでも、こんな感じのサウンドが聴けるものはあるんだ。でも、これは最後のトラックでこの独特の音の世界を追求したものだね。
Rob:There is a moment where you can hear this kind of sound in another track and it was an end of this track, and this is all but it, it is all that stuff, it’s all the end as well..

ってことは、過去にやってきたことの集大成的な意味合いもあるんですか?

ロブ:ピール・セッションについて話すと良いのかな。ピール・セッションの場合は、──ジョン・ピールはUKのラジオDJで、もう亡くなっているんだけれど──、アーティストたちは、3、4曲、ジョン・ピールに曲を渡していたんだ。1~2曲の新しいトラックと、それらのオルタナティヴ・ヴァージョンのものをね。コクトー・ツインズやザ・フォールなど、皆、すでにあった曲のオルタナティヴ・ヴァージョンをピール・セッションとして提供した。よく知られたマテリアル、有名なトラックのものを。
Rob:I should say.. With Peel Sessions.. In the UK, we have.. he’s died, John Peel, was a radio DJ in UK, he is now dead. And.. what used to (?) with the Peel Session, so the artists would give him, say, four tracks, or whatever, three.. It’s traditional to give may be one or two new tracks, then some alternative versions of new material… Most of Peel Sessions back then .. Cocteau Twins, The Fall, all these different artists did the Peel Sessions, most track they did were alternative versions of existing material. Well known material - almost famous tracks, even.

ショーン:『NTS Sessions』を思いついたとき、オウテカのマテリアルを展開させた、オルタナティヴ・ヴァージョンを作りたいと考えたんだ。すでにあるトラックのエレメンツやパーツ、アイディアに言及するような作品を。そういったことはいままでにもやってきていたけれど、そのやり方で厳密に取り組んだのが『NTS Sessions』なんだ。
Sean:When we conceived this NTS Session, we wanted to make what we would do as developed alternative versions of existing Autechre material. So it’s kind of.. it refers to previous work of other tracks, elements, or parts, or ideas from previous work in the same way. Strictly for NTS Sessions, we kind of did that more. We always did that a bit, but with this we did that a lot. 

ロブ:それは大きいね。
Rob:Real big parts of it.

ショーン:“all end”は、『Exai』の“Bladelores”というトラックに似ている。そして、最後のセッションだ。“all end”は、『Exai』の“Bladelores”のアイディアのいくつかを展開したもので、NTSのためのスペシャル・ヴァージョンと言えるよ。だから“Bladlores”の終章、終りということだね。
Sean:All End is similar to a track called Bladelores from Exai. And it was the end session. All End is an expansion of some ideas from a track on Exai. Bladelores. Kind of a special NTS version of that track. So the name is about, how it’s the end of Bladlores.

ロブ:終りのすべて、全部。
Rob:And it’s all of it.

今回の『NTS Sessions』もそうですし、ひとつ前の『elseq 1?5』など、さらにその前にライヴ音源をいっきに自分たちのサイトでリリースするようになったと思いますが、さきほどの「インターネット」や「スマートなリスナー」を想定したリリースの仕方をしているのですか?

ショーン:ああ、インターネットを通して、オーディエンスとは直に繋がることができる。メディアは物事を簡略化しすぎるから。売るためにね。
Sean:Yeah, with the Internet, we can just go straight to the audience. So the media, which is always trying to oversimplify things to sell things.

ロブ:インターネットは、完成していないスペースだから常に余白がある。だから、ぼくたちも物質的なリミット無しで、ようやくライヴ音源を出すことができたんだ。(ライヴ音源は)本当にたくさんあるんだ。1時間ある1曲は出せたけれど、音源はもっとある。それを皆に届けるには、無制限のスペースが必要なんだ。
Rob:Internet is a non-finished space, there is always a room. So we could put our recordings of the live shows finally without any limitation of physical so… Because there are a lot of them. To put one item out that’s one hour long, is I guess ok but we have a lot more of those, so we need an infinitive space to provide them to people.

Spotifyでオウテカのアルバムが聴けると思いますが、入っているアルバムと入っていないアルバムがあります。どうでしてでしょうか?

ショーン:Spotifyはクズだよ! なんでかって? アクティヴィティー・プレイリストなんてものがある、リラクゼーション・プレイリストとか? 最悪だよ。音楽を滅ぼしてしまっている。最低さ。ストリーミング・サービスは、ゆっくりと音楽を破壊の道へ導いている。作った音楽を聴いてほしいのはわかる。でも、ぼくらの古くからの友人たちにもいるんだ、Spotifyのプレイリストにあげるためだけの音楽を作るようになってしまった。ぼくたちは、オルタナティヴなものを作りたい。
Sean:Spotify is Garbage! Why? Because they have activity playlists. You have relaxation playlists, everybody makes fucking (?) music. It’s just the worst thing. It’s destroying music. I hate it. I think streaming services are slowing destroying music. And.. I mean, ok, I understand people want to have their music heard. But now I actually know artists, who are my friends, I know them for years, they are now making music just so they can get them on Spotify playlists. It’s just so different to what we …. we wanna alternatively make what we want.

ロブ:ワープがSpotifyに渡す曲については、ぼくたちで厳選している。(ワープは)理解してくれているよ、ぼくたちがこういう事については選択的でうるさいということを
Rob:We are strict what Warp will give to Spotify. And they understand why. They understand how.. selective.

ショーン:だから、ぼくたちのサイトで視聴できるようにしたんだよ。ぼくたちのプロダクトを買いたくなくても聴くことはできる。
Sean:Yeah, and we made it so if people don’t want to buy our product, they can just listen on our site for free, so there are still streaming available… We don’t have to worry about Spotify (?) us in the background. We can just put it there.

今後AIが音楽をつくれるようになったら、人が作った音楽とAIが作った音楽とで区別する必要はあると思いますか?

ショーン:すべての音楽は人間が作ったものだよ。鳥の囀り以外はね。
Sean:All music is made by humans. I mean apart from birds song.

ロブ:それでもヒューマン・メイドだよ。
Rob:Still human made.

ショーン:ぼくはつねにアーティフィシャルなものに興味を持っていた。こういっては何だけれど、アーティフィシャルってマンメイドっていう意味だと思う。人間が人工的なものを作ったということを忘れがちだけれど。コンピュータもとても人間的だ。テクノロジーのことを人間がどう考えるかということ自体、とても人間的だと思うんだ。人間がつくったから劣るものだという考え方はやめたほうがいい。個人的に、ぼくはArt、Artificialなものが好きなんだ。なんて言ったら良いかな、ぼくにとって、アーティフィシャルのコンセプトは、人間がつくったものだということ。ロボットだって人間が作ったもの。ArtはArtificialの言葉のなかにもあるよね、関係しあうものだよ。
Sean:I’ve been always interested in Artificial things. I feel bad to pointing this out. Artificial means Manmade. I think it is easy to forget Artificial means humans made it. It means, you know, computers are very human thing. This whole… you know, what we think about our technology, it’s uniquely human. I think, we need to get over with this idea, that because human made something, it is somewhat not good. Personally, I like art, I like artificial things, I like... you know, I don’t know how to explain this. This is difficult because for me, the concept of artificial means people made it. People made robot. I know it is kind of obvious, but, it’s like word “Art”. It’s part of the word “Artificial”. There is a related concept.

ロブ:ツールだね。ロボットだって人間が作ったツールだ。
Rob: I guess they are still tools. Robots are still tools made by people.

ショーン:言語とテクノロジーによって人間的なものが生まれるんだ。それらをどう使うかによって。70年代に、メカニカル・マシン・ミュージックやエレクトロニック・ミュージックは人間的ではないと言われていたけれど、人間以外のどの動物がマシンを使って音楽を作る? 人間的ではないという意味がわからない。とても人間的だ。人びとが音楽を人間的だと形容するとき、ナチュラルだという意味で言っているんだと思う。ナチュラルって、人間が作ったものではないということだよ。ナチュラルの反対はアーティフィシャルだよ。だから、アーティフィシャルとは人間的ということ。皆、意味をあべこべに捉えてしまっている。なぜだかね。
Sean:I think humans… hrm, Because of language and technology, there are human things. Particularly by the way we use it. Often when we talk about mechanical machine music or electronic music.. In 1970’s, people would say it’s not human. What other animals use machines to make music. I don’t understand how that’s not human. That’s the most human ....I think people often say, with music, with regard to music, people often say human, when they mean natural. Natural means, not made by not human.. Natural opposites to Artificial. Artificial means human. Yeah it’s almost like people having it backwards. I don’t know why.

ロブ:ミステイクだね。
Rob:It's a mistake.

PROCARE Feat. POSHGOD - ele-king

 梅雨明けはいつになるやら。たまの晴れ間は猛暑だし、基本的にジメジメしてて陰湿な今の季節、外に出るのもおっくうになっちゃいますよね、わかりますよ。いざクラブに足を運んでも、エントランスに置いてた傘をパクられて濡れてタクシー拾うハメになるのなんてゴメンですよね、わかります。だけど、しばらくクラブで踊ってなかったり、イヤホンだけで音楽きいてもフラストレーション溜まっちゃうじゃないですか。だから本ちゃんの梅雨の期間である6月を乗り越えて7月になったらその溜まりに溜まったものを吐き出しにどこかへでかけませんか。
 7月7日、七夕の夜に開催される「PROCARE」と第された本パーティは、Anthony NaplesやButtechnoなんかを東洋化成製ヴァイナルで発売するレーベル「City-2 St. Giga」、原宿の外れに位置する刺繍屋さん「葵産業」が主催。この時点でメジャーな感じが一切香ってこないですが、それがイイですね。
 ラインナップはマイアミを拠点とするCSPGのPX$H6XDことPOSHGOD(Metro Zu! 懐かしい!)に、自称テクノおじさんことみんな大好きワンドリさん(1-Drink aka 石黒景太)、今年8月に日本をあとにするウルトラデラックスなDJ HEALTHYくん、などなど盛りだくさん。
パーティ会場では前述したPOSHGODと1-DRINKの音源を含む全12曲収録のコンピCD『PURE-FESSIONAL』がマーチャンダイズとして販売。Will DimaggioやUon、Khotinを含む全員が未発表音源を提供しているなかなかに豪華な仕様です。帯の文言、アートワークもなかなかダサくて(褒めてます)ついつい手を伸ばしちゃいそうですね。
 ここまで読んだみなさん、パーティのスローガン「安心・安定・安全」を合言葉に重くなった腰をどうにかして、この日は中目黒へ遊びにでかけましょう。

PROCARE Feat. POSHGOD
7月7日土曜日午後10:00

POSHGOD
1-DRINK
DJ HEALTHY
REFUND
KONIDANCE
KOKO MIYAGI

HIBI BLISS x POIPOI
BGKNB
VICK OKADA
NINA UTASHIRO
HIMAWARI

Venue:solfa www.nakameguro-solfa.com
Door:¥2000


PURE-FESSIONAL By PROCARE

Track List
1. Uon - door 2
2. Will DiMaggio - B (Broadcast Mix)
3. Khotin - Mornings ii (Live at New Forms)
4. 1-Drink - Untitled
5. Kareem Kool - Untitled
6. Ko Saito - Squala
7. James Massiah (DJ Escrow) - Twisted ("You're Too High To Leave Now!")
8. James Massiah (DJ Escrow) - Kane (In The Astral Plane)
9. Senmei - Okinawa
10. Konida - Jhetto Re
11. B.Y.M - ?
12. Posh-God - Untitled

試聴
https://soundcloud.com/professionalcare/sets/purefessional

Children Of Alice - ele-king

 いつまでも忘れられない人がいる。でももう二度とその人に会うことはできない。なぜなら、その人は死んでしまったから。
 大切な人を失ったとき、僕たちはとても奇妙な行動に出る。亡くなってしまった彼や彼女のことを、僕たちはいつまでも覚えていようと努力する。でも、なんで僕たちはそんな不思議なことをしてしまうのだろう? べつに試験があるわけでもなければ面接があるわけでもない。死んでしまった人のことをきれいさっぱり忘れてしまったところで、日常生活にはなんの支障もきたさない。なのに、どうして僕たちは死者のことを思い出してしまうのだろう?
 いつまでも君を忘れない。君はいつまでも僕のなかで生き続ける。そして君は永遠になる――Jポップならきっとそう歌うだろう。でも、本当にそうすることが良いことなんだろうか? それって、永遠に喪が明けないってことじゃない? それはつまり、死んでしまったはずの君を死んでいないと見做すことであり、要するに「死体蹴り」である。死者に対してそれ以上に暴力的な行為があるだろうか?
 思い出は、冒瀆である。じゃあ、すでに彼岸へと旅立ってしまった者に対して、いまだ此岸に留まらざるをえない者たちが為すべき最善のことって何だろう。死者に対して、愚かにも生き残ってしまった者たちが為しうる最良のことって何だろう。いずれは同じように死んでいく者たちが、先に存在しなくなってしまった者たちの、その「存在しなささ」を最大限に尊重する方法って何だろう。
 それは、忘れることだ。ちゃんと、忘れてあげることだ。

 トリッシュ・キーナンが亡くなってから6年が経つ。チルドレン・オブ・アリスは、かつてブロードキャストで彼女の相棒を務めていたジェイムス・カーギルが、同じく元ブロードキャストのロジ・スティーヴンスおよびザ・フォーカス・グループのジュリアン・ハウスとともに、2013年に開始したプロジェクトである。「チルドレン・オブ・アリス」というバンド名は、キーナンが好んだ小説『不思議の国のアリス』から採られており、そこには彼女へのトリビュートの念が込められている。感傷的なネーミングだが、まさにこのバンド名こそがかれらの音楽を決定づけてしまっていると言っていいだろう。「アリスの子どもたち」――それはキーナンをはじめとするキャロルの読者たちのことであり、そしてキーナンに先立たれたメンバー3人のことでもある。チルドレン・オブ・アリスは、そのはじまりからすでに死者にとり憑かれている。おそらくカーギルも他のメンバーも、キーナンのことをちゃんと忘れられていないのではないか。
 当たり前の話ではあるが、かれらの記念すべきこのデビュー・アルバムに、キーナンは参加していない。その不在はまずサウンドに表れ出ている。

 1曲めの“The Harbinger Of Spring”は20分を超える大作で、フォークロアを探求するレーベル〈Folklore Tapes〉のために2013年に作られた曲である。そこではさまざまな民俗的音塊が展示されていて、ミュジーク・コンクレートからの影響を聴き取ることもできるが、件のバンド名から連想するなら、これは穴に落っこちてしまったアリスが遭遇する摩訶不思議な世界、ということになるのかもしれない。しかし他方でこの曲はジョン・ウィンダムのSF小説『呪われた村』からも影響を受けているそうで、となれば次々と転がってくるそのフォーク・サウンドを、宇宙人(=西洋や近代や科学)によって侵略される村(=民俗的なもの)のメタファーとして捉えることもできる。が、曲の仕上がり自体はけっして重々しいものではなく、それぞれの音の連なりを単にフェティシズムの対象として消費することも可能だ。
 他の3つのトラックも〈Folklore Tapes〉のために2013年から2016年のあいだに作られたもので、いずれもフォーキーな音の数々を陳列している。そういう要素はブロードキャストにもなかったわけではないが、本作における民俗的なものへの志向はよりコンセプチュアルだ。カーギルが『クワイータス』に語ったところによれば、これらの曲は「ペイガン(pagan)=異教」というテーマに基づいているのだという。そんな話を聞くと、この3曲も先の『呪われた村』の喩えと同じように、侵略的な蒐集欲に突き動かされているように見えるが、それぞれの音の配置のしかたは非常にコラージュ感覚に溢れており、その遊び心はおそらくシュルレアリスムに由来している。同じ記事のなかでハウスはアンドレ・ブルトンに言及しているが、かつてブルトンはシュルレアリスムのルーツのひとつとしてルイス・キャロルの名を挙げ、『黒いユーモア選集』に『不思議の国のアリス』を収録したのだった。シュルレアリスムもまた「アリスの子どもたち」のひとりだったのである。

 でもたぶん、このアルバムの核心はもっと別のところにあるんだと思う。全4曲のなかでもっとも耳に残るのは、民俗的な要素とは別に妖しげな躍動感を携えた2曲め“Rite Of The Maypole”で、その微かなサイケデリアにはどこかブロードキャストの楽曲を思わせるところがある。この回想力・喚起力こそが本作の肝だろう。『Children Of Alice』は、全体としてはかつてブロードキャストが鳴らしていたサウンドとは異なる雰囲気を漂わせているが、その部分にはブロードキャストを想起させる音の数々が埋め込まれている(そしてそれはおそらく意図して生み出されたものではないのだろう)。それゆえ僕たちはこのアルバムを聴いたときに、トリッシュ・キーナンのことを思い出してしまうのである。もしこれらのフォーク・サウンドに、キーナンのメロディと歌声が乗っかったらどうなるのだろう、と。けれど彼女はもう、存在しない。ブロードキャストとは別の試みを実践しているはずのチルドレン・オブ・アリスは、しかし、不可避的にかつての良き日々を、あの頃の思い出を滲み出させてしまうのである。

 僕たちはいつも、忘却に失敗する。僕たちはちゃんと死者のことを忘れてあげることができない。僕たちはいつまでも、喪に服し続ける。それが良くないことだと知りながら。

 6/25に惜しまれながら閉店したアザー・ミュージックは、6/28に最後のインストアライブを行った。バンドは、75ダラービル、リック・オーウェン率いるドローンでジャミングなデュオである。5:30開演だったが、4:30にすでに長い行列が出来ていた。こんな人数が店内に入るのかなとの心配をよそに、時間を少し過ぎて、人はどんどん店の中に誘導されていく。すでにレコード、CDの棚は空っぽ、真ん中に大きな空間が出来ていた。こんながらーんとしたアザー・ミュージックを見るのは初めて。たくさんのテレビカメラやヴィデオが入り、ショーはリック・オーウェンの呼びかけでスタート。デュオではじまり、順々にスー・ガーナーはじめ、たくさんの友だちミュージシャンが参加し、ユニークで心地よいジャムセッションを披露した。たくさんの子供たちも後から後から観客に参加し、前一列は子供たちでいっぱいになった。私は、ジャム・セッションを聴きながら、いろんなアザー・ミュージックでの場面がフラッシュバックし、なきそうになった。インストア・ショーが終わると、彼らはそのままストリートに繰り出し、この後8時から、バワリー・ボールルームで行われる、「アザーミュージック・フォーエヴァー」ショーへ、マタナ・ロバート、75ダラービルなど、この日のショーで演奏するミュージシャンとプラスたくさんのアザー・ミュージックの友だちが、セカンドライン・パレード率い誘導してくれた。アザー・ミュージックの旗を掲げ、サックス、トランペット、ドラム、ギター、ベース、などを演奏しながら、アザー・ミュージックからバワリー・ボールルームまでを練り歩いた。警察の車も、ニコニコしながら見守ってくれていたのが印象的。バワリー・ボールルームの前で、散々演奏したあと、みんなはそのまま会場の中へ。


Geoff & daniel @ other music staff。私個人的にとってもお世話になりました。


Juliana barwick


Frankie cosmos

 バワリー会場内もたくさんの人であふれていた。コメディアンのジャネーン・ガロファロがホストを務め、バンドを紹介する(いつの間にか、アザー・ミュージックの共同経営者ジョシュ・マデルに変わっていたのだが)。ジョン・ゾーン、サイキック・イルズ、マタナ・ロバーツ、ビル・カラハン、ヨラ・テンゴ、ヨーコ・オノ、ジュリアナ・バーウィック、シャロン・ヴァン・エッテン、フランキー・コスモス、ヘラド・ネグロ、メネハン・ストリートバンド、ザ・トーレストマン・オン・アースがこの日の出演陣。ドローン、サイケデリック、ジャズ・インプロ、フォーク・ロック、ポップ、ロック、アヴァンギャルド、エレクトロ、インディ・ロック、ファンク、ラテン、ビッグ・バンド、などそれぞれまったくジャンルの違うアーティストを集め、それがとてもアザー・ミュージックらしく、ヘラド・ネグロのボーカルのロバート・カルロスは、「これだけ、さまざまなミュージシャンを集められるなら、アザー・ミュージックでミュージック・フェスティヴァルをやればいいんじゃない」、というアイディアを出していた。オーナーのジョシュが、バンドひとつひとつを思いをこめて紹介していたことや、お客さんへの尊敬も忘れない姿勢がバンドに伝わったのだろう。


Sharon Van etten

 サプライズ・ゲストのヨーコ・オノが登場したときは、会場がかなり揺れたが、ヨーコさんのアヴァンギャルドで奇妙なパフォーマンスが、妙にはまっていておかしかった。ヨ・ラ・テンゴとの息もばっちり。個人的に一番好きだったのは、トーレスト・マン・オン・アースとシャロン・ヴァン・エッテン、ふたりとも、個性的な特徴を持ち、いい具合に肩の力が抜け、声が良い。最後に、アザー・ミュージックの昔と今の従業員たちが全員ステージに集合し、最後の別れをオーナーのジョシュとクリスとともに惜しんでいた。スタッフを見ると、なんてバラエティに富んだ人材を揃えていたのか、それがアザー・ミュージックの宝だったんだな、と感心する。スタッフに会いにお店に通っていた人も少なくない(私もその中の一人)。バンド間でかかる曲も、さすがレコード屋、アザー・ミュージックでよく売れたアルバム100枚が発表されたが、その中からの曲がキチンとかかっていた。最後のアクトが終わり、みんなで別れを惜しみながら、写真を取ったり挨拶したり。会場で、最後にかかった曲はコーネリアスの“スター・フルーツ・サーフ・ライダー”だった。21年間、ありがとうアザー・ミュージック。

https://www.brooklynvegan.com/yoko-ono-yo-la-tengo-sharon-van-etten-bill-callahan-more-played-other-music-forever-farewell-pics-review-video/

■Other Musicで売れたアルバム100枚

1. Belle and Sebastian – If You’re Feeling Sinister
2. Air – Moon Safari
3. Boards of Canada – Music Has the Right to Children
4. Kruder and Dorfmeister – K&D Sessions
5. Yo La Tengo – And Then Nothing Turned Itself Inside Out
6. Os Mutantes – Os Mutantes
7. Neutral Milk Hotel – In the Aeroplane Over the Sea
8. Sigur Ros – Agaetis Byrjun
9. Arcade Fire – Funeral
10. Magnetic Fields – 69 Love Songs
11. Belle and Sebastian – Boy with the Arab Strap
12. Cat Power – Moon Pix
13. The Strokes – Is This It
14. Yo La Tengo – I Can Hear the Heart Beating As One
15. Talvin Singh Presents Anokha: Sounds of the Asian Underground
16. Joanna Newsom – Milk-Eyed Mender
17. Interpol – Turn on the Bright Lights
18. Cat Power – Covers Record
19. Cornelius – Fantasma
20. Serge Gainsbourg – Comic Strip
21. Belle and Sebastian – Tigermilk
22. Godspeed You Black Emperor – Lift Your Skinny Fists
23. Amon Tobin – Permutation
24. DJ Shadow – Endtroducing
25. Animal Collective – Sung Tongs
26. Dungen – Ta Det Lugnt
27. Beirut – Gulag Orkestar
28. Belle and Sebastian – Fold Your Hands Child, You Walk Like a Peasant
29. Clap Your Hands and Say Yeah – S/T
30. ESG – South Bronx Story
31. Cat Power – You Are Free
32. Broadcast – Noise Made by People
33. The Notwist – Neon Golden
34. Animal Collective – Feels
35. Mum – Finally We Are No One
36. Elliott Smith – Either/Or
37. White Stripes – White Blood Cells
38. Bjorn Olsson – Instrumental Music
39. Boards of Canada – In a Beautiful Place
40. Tortoise – TNT
41. Handsome Boy Modeling School – So How’s Your Girl?
42. Antony and the Johnsons – I Am a Bird Now
43. Zero 7 – Simple Things
44. Broken Social Scene – You Forgot It in People
45. Flaming Lips – Soft Bulletin
46. Devendra Banhart – Rejoicing in the Hands
47. Panda Bear – Person Pitch
48. My Bloody Valentine – Loveless
49. Kiki and Herb – Do You Hear What I Hear?
50. Thievery Corporation – DJ Kicks
51. Boards of Canada – Geogaddi
52. Yeah Yeah Yeahs – S/T EP
53. TV on the Radio – Desperate Youth
54. Yo La Tengo – Sounds of the Sounds of Science
55. Sufjan Stevens – Greetings from Michigan
56. Stereolab – Dots and Loops
57. Tortoise – Millions Now Living Will Never Die
58. Neutral Milk Hotel – On Avery Island
59. Le Tigre – S/T
60. ADULT. – Resuscitation
61. Langley Schools Music Project – Innocence and Despair
62. The Shins – Oh Inverted World
63. Slint – Spiderland
64. Air – Premiers Symptomes
65. Roni Size – New Forms
66. Shuggie Otis – Inspiration Information
67. Nite Jewel – Good Evening
68. Fennesz – Endless Summer
69. Bonnie ‘Prince’ Billy – I See a Darkness
70. Radiohead – Kid A
71. Stereolab – Cobra and Phases Group Play Voltage in the Milky Night
72. Franz Ferdinand – S/T
73. Amon Tobin – Supermodified
74. Fischerspooner – S/T
75. Stereolab – Emperor Tomato Ketchup
76. Cat Power – What Would the Community Think?
77. Elliott Smith – XO
78. TV on the Radio – Young Liars
79. UNKLE – Psyence Fiction
80. The Clientele – Suburban Light
81. Clinic – Walking with Thee
82. The xx – xx
83. Serge Gainsbourg – Histoire de Melody Nelson
84. Vampire Weekend – S/T
85. J Dilla – Donuts
86. Massive Attack – Mezzanine
87. Joanna Newsom – Ys
88. Sufjan Stevens – Illinoise
89. Portishead – S/T
90. Jim O’Rourke – Eureka
91. Pavement – Terror Twilight
92. Modest Mouse – Lonesome Crowded West
93. Sleater-Kinney – Dig Me Out
94. Tortoise – Standards
95. Sam Prekop – S/T
96. Blonde Redhead – Melody of Certain Damaged Lemons
97. Arthur Russell – Calling Out of Context
98. Aphex Twin – Selected Ambient Works Vol. 2
99. Grizzly Bear – Yellow House
100. Avalanches – Since I Left You

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BROADCAST - ele-king


WORK & NON-WORK / NOISE MADE BY PEOPLE / HAHA SOUND / TENDER BUTTONS / FUTURE CRAYON / BROADCAST AND THE FOCUS GROUP INVESTIGATE WITCH CULTS OF THE RADIO AGE

 かれこれ4年前ですか。2011年1月14日、ブロードキャストのヴォーカル=トリッシュ・キーナンが肺炎による合併症のため、42歳という若さで死去した。この一報、世間では小さな出来事だったかもしれないけれど、ある種の音楽ファンには大きすぎるショックを与え、筆者などはいまだもってブロードキャストの名前を見聞きするたびに静かに悲しみが押し寄せるのを感じて、それを恐れてしまい、好んで再生することが何年も訪れない状態にあった。

 しかし、彼女の死から2年後の2013年に突然リリースされた同名映画のサウンドトラックであり、トリッシュ生前最後の録音作『バーバリアン・サウンド・スタジオ』における幽玄清浄なトリッシュの歌声、そして、いまやブロードキャストただひとりのメンバーとなってしまったマルチ・インストゥルメンタリスト=ジェームス・カーギルによる偏執的サウンド・コラージュ/エフェクト(それはスティーヴン・ステイプルトンの音響寵愛っぷりと十二分にタメをはる!)に浸ると、そんな危惧はどこへやら。再び扉を開けてしまったブロードキャストのめくるめく音響世界から抜け出せなくなっている私がいるのだ。

 そんな折に、ブロードキャストの旧作がまとめて6タイトルもリイシューされる、というのだからじっとしていられない。まずは、初期のEPを集めた〈ワープ〉移籍後初の顔見せとなるコンピレーション盤『ワーク・アンド・ノン・ワーク』(1997)。ここでは、ステレオラブが運営する〈デュオフォニック〉からリリースされた初期の超名作EP『ザ・ブック・ラヴァーズ』を筆頭に、サイケデリック畑でゆらゆらゆらめく60年代ソフトロック〜アシッド・フォークを正しく継承したポップ・エレクトロニクスを存分に聞かせてくれる。トリッシュの陰影豊かな歌声はもちろん、5人のバンド編成によるアレンジのエレガントさはピカいちで——同世代を駆け抜けたものの、いまや多くがどこかに消えてしまったポスト・ステレオラブな「サイファイ一派」にくくられながらも——その繊細さと特異な陰りはどこまでも孤高で豪華だ。
 つづく『ザ・ノイズ・メイド・バイ・ピープル』(2000)は、前述のコンピレーションでもすでに完成していた彼らの美学が一枚の作品として丁寧に結実したファースト。前作から3年ということもあり、ブロードキャストの肝であるアレンジ力に格段と磨きがかかり、リズム隊のしなやかさとキーボードのトリップ感には耳がくらむばかり。

 セカンドの『ハハ・サウンド』(2003)では、これまでのシネマティックでエレガントなサウンドにミニマルでクラウト・ロック的な昂揚感が加わり、ときに荒々しく、ときに宇宙に溶け入りそうなアナログ・シンセがあちこちを飛び回る。それはまるで、60年〜70年代にロックと電子音楽(現代音楽)を融合させた先駆者たち、たとえば、シルヴァー・アップルズ、ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ、50フット・ホースらのもつ蛍光色のアシッド感覚を彷彿とさせるもので、どこか冷ややかながらもハハの温もりも秘めたトリッシュの歌声がそこに不純物のない透明感を注ぎ入れる。チェコ発ゴスロリ・ホラーの古典的映画『闇のバイブル 聖少女の詩』の主人公ヴァレリーに捧げられた“ヴァレリー”や“ビフォア・ウィ・ビギン”など極上のバラードも用意されていてうっとり。

 そんな『ハハ・サウンド』の延長上にありつつも、トリッシュとジェームスによるデュオ編成となり、結成10年めにリリースされたサード『テンダー・ボタンズ』(2005)は、彼らのシュールレアリスム志向が穏やかに爆発した作品だ。トリッシュによる「自動筆記」から生まれたリリックは、無意識が作り出す超現実世界を描き出し、いつになく危ういノイジーなサウンドとダイナミクスを増したメランコリアが、(まるでヴェルヴェッツの2枚めのように)白い光と白い熱を放ちながら通りすぎる。トリッシュの歌唱にニコの亡霊が宿っているとしか思えない“テンダー・ボタンズ”から、ストロボライトのように眩いばかりのシングル曲“アメリカズ・ボーイ”につながる美しさはほんと永遠。ほとほと聞き惚れてしまう。
 そして、アルバム未収録だったEP曲やオムニバス提供曲を寄せて集めた編集盤『ザ・フューチャー・クレヨン』(2006)を経てリリースされたのが、ザ・フォーカス・グループとのコラボ作品『インヴェスティゲイト・ウィッチ・カルツ・オブ・ザ・レディオ・エイジ』(2009)である。ブロードキャストの2人同様、膨大なレコード・コレクション/ライブラリー音源を駆使したSFサイケデリック・コラージュ作品をリリースし、レーベル〈ゴースト・ボックス〉も運営するザ・フォーカス・グループことジュリアン・ハウスとの相性はばっちり! おとぎ話のように幻想的で奇特なやりとりは驚くほどにつうかあで、とびきりのユーモアの背後を「ラジオ時代の悪魔崇拝の考察」というきな臭いタイトルがもの言うように、どこまでもアヴァンギャルドでモンドでオカルティックな彼岸的音響がゆあーんゆよーんと漂い遊ぶ。トリーシャの歌というよりも不吉な語りによる木霊なんて、ノイズ・ファンの間でカルト的人気を集める幻覚サイケ・エレクトロニクス・デュオ=モーヴ・サイドショーのそれを彷彿とさせる瞬間まであるではないか。

 そんな不吉な予感にみちた作品を残してこの世を去ったトリッシュ・キーナン。魔性の魅力で男を惑わせて破滅に導くはずの「ファム・ファタール」は、思いもかけない不慮の病で唐突に人生の幕を閉じた。思えば彼らが〈ワープ〉から登場したのも唐突であった。97年といえば、エイフェックス・ツインがEP『カム・トゥ・ダディ』を、オウテカが4枚めのアルバム『キアスティック・スライド』を〈ワープ〉からリリースした年で、エレクトロニカ以前のジオメトリックな暴力性と、インテリジェンスな皮肉さがものの見事に融合し、時代をリードした何度めかのテクノのたけなわ期である。そんなアンチ・ロック・ムードな時代に、シーフィールらとともにバンド編成による最新エレクトリック・ミュージックを実践するブロードキャストを発信させた〈ワープ〉の目のつけどころには恐れ入るばかりだ。そして当時、その異色のラインナップを耳にしたとき、自分が測り知れない新時代に立っているような、そんな妄想を抱かせてくれたものだ。

 闇の奥にぽっと青白い火花を発して、そのままふっと消えてしまったかのごときトリッシュ・キーナンの声と存在。その優しげながらもどこか遠い印象を与える洗練された空虚がいまも耳の底に残る。しかし、結成20年めのいま、あらためてブロードキャストの諸作品を聴くこと。この良きタイミングのリイシューによって、彼らをリアルタイムで知らない世代に光明がもたらされ、彼らを語る際につきまとっていた暗い悲しみの渦が、さらさらと明るい未来に流れ出すのを感じられるのは筆者だけではないはずだ。

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