「AY」と一致するもの

MOTHERF**KER - ele-king

 1992年にスタートしたレーベル〈Less Than TV〉は、日本屈指のレーベルで、これまでU.G MAN、bloodthirsty butchers、ギターウルフ、DMBQ、BREAKfAST、ロマンポルシェ……2MUCH CREW……などなど、ひと癖もふた癖もあるようなハードコアなバンドを輩出してきたことで知られる、まだ活動中だというのに、あまりの個性の強さゆえか、最近ではなかば伝説となっているが、この度、レーベルの栄光の25年が映画となって公開されるぞ! すごい、とにかく、観てくれ!

『MOTHER FUCKER』
出演:谷ぐち順、YUKARI、谷口共鳴ともなり他バンド大量
監督・撮影・編集:大石規湖|企画:大石規湖、谷ぐち順、飯田仁一郎|制作:大石規湖+Less Than TV
製作:キングレコード+日本出版販売|プロデューサー:長谷川英行、近藤順也
1:1.78|カラー|ステレオ|98分|2017年|日本|配給:日本出版販売|©2017 MFP All Rights Reserved.

公式HP:mf-p.net
@MFP0826 / facebook.com/MFP0826

■出演バンド
idea of a joke (コピー)、VOGOS、TIALA、NICE VIEW、U.G MAN、PUNKUBOI、2MUCH CREW、MILK、ジョンのサン、SOCIAL PORKS、THE ACT WE ACT、HARD CORE DUDE、碧衣スイミング、Dancebeach、トゥラリカ、ColorMeBloodRed、ECD+ILLICIT TSUBOI、脳性麻痺号、THE人生ズ、森本雑感+FUCKER、ゲバルト、泯比沙子+岡崎康洋(蝉)+Nasca Car、その他の短編ズ、V/ACATION、CUBEc.u.g.p、オオクボ-T+GENTAROW、オクムラユウスケ、デラシネ、GOD'S GUTS、idea of a joke、BREAKfAST、bloodthirsty butchers、Suspiria、ANGEL O.D.、BAND OF ACCUSE、Rebel One Excalibur、ENERGISH GOLF、ジャンプス、SiNE、Gofish、Ohayo Mountain Road、トンカツ、FAAFAAZ、odd eyes、Test Pattern、DODDODO BAND、MASTERPEACE、黄倉未来、WARHEAD、DEATHRO、ロンリーFUCKER、ニーハオ!、Limited Express (has gone?)、チーターズマニア

8/26(土)〜9/8(金)|渋谷HUMAXシネマ
9/9(土)〜9/15(金)|シネマート心斎橋
9/16(土)〜9/22(金)|シネマート新宿
9/23(土)〜9/29(金)|名古屋シネマテーク
9/30(土)〜10/6(金)|広島・横川シネマ
10/21(土)〜10/27(金)|桜井薬局セントラルホール
10/28(土)〜11/3(金)|京都みなみ会館
以降神戸・元町映画館他全国順次公開!
限定ステッカー付き特別鑑賞券1,300円絶賛発売中!
上映劇場窓口、ディスクユニオン13店舗、Less Than TVライブ会場にて限定ステッカー付き特別鑑賞券1,300円発売決定!

<ディスクユニオン取扱店舗〉
オンラインショップ、新宿パンクマーケット、新宿日本のロック・インディーズ館、渋谷パンク/ヘヴィメタル館、お茶の水駅前店、下北沢店、吉祥寺店、町田店、横浜西口店、千葉店、柏店、北浦和店、大阪店

※以下、資料より抜粋
Less Than TVって何なんだよっ!?

〈最低〉だから〈最高〉すぎる! 面白い事だけを追求して25年。

 あなたはご存じだろうか? 知ってる人は知っている。知らない人はもちろん知らない。名前は知っているけど何をやっているのか良く分からない、そして、虜になった人もその魅力を説明できない…。25年の間、ある意味で正体不明、謎の音楽レーベルであり続ける集団がいる。1992年、とにかく面白い事を探していた北海道出身でGOD'S GUTSの“谷ぐち順”を代表にU.G MANのUG KAWANAMI、DMBQの増子真二を中心とした仲間たちがノリと勢いと情熱でアメリカのBLACK FLAGのレーベルSSTやShimmy Discなどに憧れ立ち上げた世界的にみても奇妙奇天烈な音楽レーベル、それが“Less Than TV”だ。パンク、ハードコアを基本としつつも彼らの感性の下、あらゆるタイプのアーティストが紹介されてきた。bloodthirsty butchers、ギターウルフ、DMBQ、BEYONDS、ロマンポルシェ。……等。“Less Than TV”が音源をリリースしてきた一癖も二癖もあるバンドたちは異彩を放ち、その後メジャーデビューしたものも少なくない。しかしレーベル自体は今もなおアンダーグラウンドを暴走し続けている。
 気をぬいたら負け、ぶちかませ!!!
 なぜ集うのか? 彼らはそこを選び、今夜も地下で激しく音と笑顔をぶつけ合う。
 Less Than TVには誰でも参加することが出来る。ジャンルの縛りや年齢制限、上下関係、酒の強要、打ち上げの参加義務と言った古き良きロックにありがちなしがらみは一切ない。そして、ステージ上のミュージシャンは極めて偉大では無い。そのかわり、ステージの上で遠慮は無いし、一切の妥協も許されない、〈気をぬいたら負け、ぶちかませ!!!〉才能が無くても、技術が無くても本気で面白いことを追及してさえいれば誰だって主役になれる。だからこそ、そこに集い“Less Than TV”の空間を作るオーディエンスこそが偉大な表現者なのかもしれない。そんなイベントはいつでも花見や夏祭りの様に笑顔で溢れている。一体どうしてこの様な集団が生まれたのか?その答えを探ろうにも、あろう事か商売っ気すらも持ち合わせていない代表である谷ぐち順がもっともその祭りを謳歌しているのであった……。
 カメラは“Less Than TV”と共鳴してドキュメンタリー映画を崩壊させる。
 魅了されてしまった映像作家、大石規湖映画監督デビュー!
 そして、8歳の少年もハードコア・デビュー!

Call And Response Records - ele-king

 近々、『Quit Your Band! (仮題:バンドやめようぜ!)』という翻訳本を出そうと思っているんですけどね。別冊エレキングの『コーネリアスのすべて』に登場して日本の音楽における「洋楽の引用/誤用」と「なぜ日本人はおかっぱ頭なのか」等々、なんとも興味深い話を展開しているイアン・マーティンさん、『ガーディアン』や『ジャパン・タイムス』に寄稿する在日13年の英国人音楽ジャーナリストの氏が昨年上梓した本で、欧米ではけっこう話題になっております。英語ですが、この記事を読めば、「むむ」っと来るかも
 簡単に言えば、イギリス人が日本のロック/ポップス・シーンをばっさりと論じた内容で、とくにJ-POPやアイドルに「?」(シニカル)な人には必読本でしょう。また、ライヴハウスで活動しているバンドには勇気が湧いてくるかもしれないです。
 で、そのイアンさん、自分でレーベル〈Call And Response Records〉なるレーベルも運営して日本のインディ・ロック・バンドをフックアップしています。先日、初のレーベル・コンピ『THROW AWAY YOUR CDS GO OUT TO A SHOW』がリリースされました。日本の音楽メディアが紹介しきれていない、商業主義とは縁のない、エネルギッシュなバンドの音源が収録されています。
 以下、レーベル資料から抜粋。
 「本コンピレーションアルバム「THROW AWAY YOUR CDS GO OUT TO A SHOW」は、イアン・マーティンによる6ヶ月間の日本47都道府県のローカルインディー音楽取材旅の際に構想を得たものであり、東京のみならず取材先で出会った東北、中部、関西、中国、九州からのバンドが参加している。本コンピリリースにあたり、各都市でリリースイベント実施予定! 」
 9月から11月にかけて 広島、福岡、仙台、京都、名古屋、東京でイベントあり。
 日本はインディ・ロック・バンドの宝庫である。ぜひ、注目して欲しい。


https://callandresponse.jimdo.com/releases/various-artists-throw-away-your-cds-go-out-to-a-show/

DJ Paypal × Makoto Taniguchi - ele-king

 8月19日から開催されるアートと音楽の新たな国際フェスティヴァル「インフラ INFRA 2017 」。食品まつりや竹村延和らが参加するそのフェスのメイン・イベント(8月23日)に、〈LuckyMe〉や〈Brainfeeder〉からのリリースで知られるジューク/フットワークの奇才、DJペイパルが出演する。タッグを組むのは映像アーティストの谷口真人。当日は両者がこのフェスのために制作したサウンド・パフォーマンス作品「リアニメーション」が発表され、またふたりによるトーク・セッションも予定されている。一夜限りのスペシャルなセットをぜひ。

https://www.infra-festival.com/ja/event/dj-paypal-x-makoto-taniguchi/

インフラ INFRA 2017 プレゼンツ
コンサート
at 山本現代
「リアニメーション」 by DJペイパル × 谷口真人
トーク
「アニマ」 by DJペイパル、谷口真人

「インフラ INFRA 2017」音楽とアートの国際フェスティバル関連プログラムでは、アーティスト、谷口真人によるアニメーションとDJペイパルによる、サウンド・アニメ・パフォーマンス、「リアニメーション」を開催します。
シカゴ発祥の音楽ジューク/フットワークを元に、ディスコ・ミュージックやJポップなどのポップ・ミュージックをサンプリングした独自のスタイルで、クラブ・シーンや実験電子音楽シーンから世界的評価を集めているミュージシャン、DJペイパル。そして、アニメーションというメディウムを元に画像、ナラティブの関係性を探るアーティスト、谷口真人。
本フェスティバルのために発表されるサウンド・パフォーマンス作品「リアニメーション」ではDJペイパルによるアッパーかつポップな音響の中で、谷口の作るアノニマスな雰囲気の漂うキャラクター「SOI」のアニメーションが巨大スクリーンに投影されます。谷口とペイパルがともに作り上げたストーリーのもと、主人公「SOI」がイメージの世界をめくるめく疾走し、アニメーション・キャラクターである自身のアイデンティティをリアニメーション=再生していきます。

また、コンサート後にはアニメーションの語源である「アニマ(霊魂)」を手がかりに、彼らが見てきたアニメーションや聴いてきた音楽のルーツ、そこから得た精神性まで掘り下げたトーク・セッションを行います。

記念すべきアートと音楽の祭典、第1弾「インフラ INFRA 2017」。
様々な情報が交わるインターネット時代以降における、新たな表現の可能性を音楽、パ
フォーマンス、リチュアルなどを横断し観客とともに探求する特別な機会を是非お楽しみください。

2017年8月23日(水)
インフラ INFRA Presents
コンサート「リアニメーション」by DJペイパル × 谷口真人
トーク「アニマ」DJペイパル、谷口真人

18:00 会場オープン
19:00−19:30 コンサート DJペイパル × 谷口真人「リアニメーション」
20:00−21:00 トーク DJペイパル、谷口真人「アニマ」

[チケット予約] 全席自由 一般2,000円
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01a5d9yzw84v.html#detail

会場: 山本現代
〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F
Tel: 03-6433-2988
Email: i@yamamotogendai.org
https://www.yamamotogendai.org

[アクセス]
電車をご利用の場合:
京急本線「新馬場駅」北口から徒歩7分
東京臨海高速鉄道りんかい線「天王洲アイル駅」B出口から徒歩8分
東京モノレール「天王洲アイル駅」南口から徒歩10分
JR「品川駅」港南口から徒歩20分

バスをご利用の場合:
品川駅港南口から品91,93,98(都営バス)で「天王洲橋」下車 徒歩3分
目黒駅から品93(都営バス)で「天王洲橋」下車 徒歩3分
新宿駅西口から品97(都営バス)で「北品川二丁目」下車 徒歩3分
渋谷駅から渋41(東急バス)で「新馬場駅」下車 徒歩8分

お車をご利用の場合:
渋谷方面より山手通を品川埠頭方面へ新東海橋信号を右折海岸通沿い右手
(品川駅港南口からタクシーでワンメーター)

[PROFILE]
■DJペイパル

シカゴ発祥の音楽ジューク/フットワークのジャンルにおいて最も注目すべきアーティストである。つかまえどころのないプロデューサーとして、ペイパルはこれまでにシカゴのTeklifeCrew、自身のMall Musicコレクティブ、グラスゴーのアングラリーダー〈LuckyMe〉やFlying Lotusの〈Brainfeeder〉などに属す中、オンライン・フットワーク・フォーラムやSoulseekでのデータ発掘を通し、国際的にいくつものトラックを共有してきた。フットワークを新しい方向へとまわし、ジャンルの目立たない遊び心にフォーカスをあてる。

■谷口真人
映像、ミクストメディア・オブジェクト、絵、インタラクティブ・インスタレーションなど複数の表現形態で現代の人間の存在感を探究する。主な個展に、2015「you」(AISHONANZUKA、香港)、2014「Untitled」(NANZUKA、東京)、2012「あのこのいる場所をさがして(2005)」(SUNDAY、東京)、2011「アニメ」(SUNDAY ISSUE、東京)、主なグループ展に、2014「美少女の美術史」(青森県立美術館 / 静岡県立美術館 / 島根県立石見美術館 (巡回))、2011-2012「Daughters of the Lonesome Isle Marlene MARINO / Makoto TANIGUCHI」(SPROUT Curation、東京)、2009「neoneo 展part1 [男子]」(高橋コレクション日比谷、東京)など。

企画:インフラ INFRA
共催:山本現代
協力:パークホテル東京、パイオニア
助成:アーツカウンシル東京

Molecule Plane - ele-king

 電子音楽はどこにいくのか。そして、どこにあるのか。「ここ」なのか。それとも「未来」なのか。たしに「電子音楽」という言葉の響きには不思議なテクノロジーへのロマンティシズムを感じるものだし、それは21世紀の現在でも変わらない。未来の音楽。未来への音楽。未来と音楽。未来/音楽。だがしかし未来とは論理的帰結であり、それゆえ抽象的存在でもある。そして未来とは「テクノロジー」の連鎖でもあり、それゆえ音楽とテクノロジー=技術工学は極めて密接な関係にある。楽器。録音技術。ステージング。そもそも、「音楽」自体は数学的な構造によって成立しているものだし、テクノロジカルな構造によって生成する現象でもある。となればいわゆる「電子音楽」は、構造/抽象の極限性ゆえ、つねに「音楽」の最先端=未来に位置する音楽といえる。アブストラクト(抽象性)に対する近似性の高さが原因であろう。同時に電子音楽には未知・未来への希求というロマンティシズムも横たわってもいる(シュトックハウゼンもクセナキスも私には途轍もないほどのロマンティシズムを感じる。むろん19世紀的なロマンティシズムを解体・炸裂させる戦争の世紀たる20世紀後半的な「光のロマンティシズム」だが)。ゆえに電子音楽は「工学」ではなく「芸術」なのだ。アブストラクトの余白にロマンティシズムがある。ロマンティシズムの向こうに厳密なテクノロジカルな論理と構造がある。そのテクノロジカルな論理構造の向こうに美がある。音階や旋律のむこうにある真のロマンティシズムへの希求は、ある地点においてはクールになり、その向こうで超越的な/逸脱的な美を希求する。電子音楽が永遠に先端である理由は、音楽の構成要素を一度、極限まで抽象化するからであり、「だからこそ」古くならない。すきまのようなものを生んでしまうから聴取が永遠に完結しないのだ。むろんテクノロジーと直結しているゆえ、音質の変化(新しさ・古さ)が表面化しやすいものだが、「完結しないという永遠」は、無限のロマンティシズムを生む。電子音楽の普遍性はそこにあるのではないか。それを強い「意志」として音響に定着したとき、人は真の電子音楽家に「なる」。そういえる音楽家/アーティストの数は決して多くはない。しかし、京都府出身の大塚勇樹は、数少ないそのひとりではないか。

 大塚勇樹(Yuki Ohtsuka)のソロ・プロジェクト、モレキュル・プレーンは、音色の生成と変化に焦点を当てたプロジェクトである。大塚のプロフィールに関してはリリース・レーベルのインフォメーションに詳しいのでそちらを読んでほしいのだが、一読してもわかるように大阪芸術大学で学んだ現代/電子音楽家である。彼は多層化空間音響システム「アクースモニウム」を研究・実践する電子音楽家であり(CCMC2012でMOTUS賞を受賞)、日本の電子音楽(ミュジーク・コンクレート)を牽引する人物だ(hirvi、synkメンバー。日本電子音楽協会会員)。しかし彼は自らの出自を踏まえたうえで、大きく跳躍・逸脱するアーティストでもある。Route09名義ではテクノ、エレクトロニカ、ノイズを越境し、2013年には京都の老舗電子音響レーベル〈シュラインドットジェイピー〉 から2013年に、imaとのユニットA.N.R.i.名義のアルバム『All Noises Regenerates Interaction』をリリースした(傑作!)。そのほかネットレーベルでのリリース、マスタリング・エンジニアとしての活動などその創作領域は多岐に渡る。大塚勇樹は、shotahiramaや松本昭彦などと並ぶ並び、現代日本の最先端(最前衛)に位置する新しい世代の電子音楽家といえる。

 2016年にリリースしたファースト・アルバム『アコースティコフィリア』は、音響に対して「そこにあるモノとしての圧倒的な存在」を与えようとしていた。つまり「そこに存在するマシン」のような電子音楽/音響作品であった。そして本年、〈きょうRECORDS〉から発表したセカンド・アルバム『SCHEMATIC』において、大塚はモレキュル・プレーンのさらなるアップデートを試みている。彼は、電子音楽の抽象性に、まず「モノ性」を与え、その向こうに未知の音響世界を見出した(『アコースティコフィリア』)。次は、その地点からあえてもう一度反転し、「時間」という抽象性=問題に立ち返る。オルタナティブな方法論で電子音響を構築・生成することで、「時間」も「空間」も「制圧」しようとしているように思える。聴き手の聴取上の距離感、空間意識、遠近法すら変えてしまうために。ファーストとセカンドで共通している点は、電子音楽の録音作品において「状況」を生みだそうとしている点であろう。そこに彼の本質的研究「アクースモニウム」の真髄があるのだろう(「状況」を生成するという意味において)。その意味で彼はミュジーク・コンクレートの(正当な)後継者であり、ピエール・アンリやリュック・フェラーリの系譜を継ぐ音楽家でもある。じじつ『SCHEMATIC』においても、さまざまなサウンド・マテリアルが圧倒的な高密度なコンポジションで持続・接続・生成している。その音響工作の手腕はため息が出るほど見事で、まさに若手随一の電子音楽家である。しかし同時に本作は最先端モードの電子音響作品でもある。〈ラスター〉や〈アントラクト〉の作品群と匹敵するほどに。

 1分47秒ほどの1曲め“ENFOLD”をオープニングとするように本作『SCHEMATIC』ははじまる。細やかな粒子の電子音が持続し、生成し、変化し、消えていく。大塚の鋭敏な耳の感覚をスキャンしたような緻密な細やかな音響は、本作全編に通じる質感である。続く2曲め“FILAMENT”は、“ENFOLD”のトーンを持続させながらも7分に及ぶ音響空間を一部の隙も構成によって聴き手の耳を「ハック/制圧」するように展開する。そして、この曲にも随所だが、本作のモレキュル・プレーンの電子音響はどこか神経的なのだ。聴き手の神経にアディクションするという意味だけではなく、音響それ自体が、どこか神経的なのだ。音と音、響きと響き、モノとモノが、複雑な(無数の)線(ネットワーク)でつながれ、音響・楽曲自体が自律している……、そんな聴取感があった。これは『アコースティコフィリア』でも感じた質感だが、『SCHEMATIC』の音響(の層)は、より神経化が促進/進化しているように思えた(「神経」とは「回路」か)。

 3曲め“SHELTER (Version)”において、その神経的な音響工作=交錯は、サウンド・エレメントの「時間」すら変形させてしまう。この曲には、本作特有の音響による持続=時間=空間の制圧行為がある。変化する持続音と乾いた物音は変形させられ、不規則の連続性の中で未知の電子音響を生成する。そして高音域の音が刺激的な4曲め“SCREAMER”では70年代的電子音楽を現代の音響的な精度で再(=差異)生成を行い、スタティック/ダイナミックな電子音響による聴覚の拡張を試みる。インタールード的な5曲め“UNFOLD”は刺激的な電子音響が耳に圧倒的な快楽を与える。短いトラックだがサウンド・マテリアルの生成、時間軸の操作、音響の接続と融解など極めて精度の高い曲だ。そして6曲め“DESTINY”と、13分に及ぶラスト曲“TIAMAT”において、『SCHEMATIC』の音響=時間=制圧/生成はクライマックスを迎える。アルバム全曲の技法を総括するような“DESTINY”と、それらの方法論をゼロ地点で一気に消失させた先に生まれたスタティック/マニシックな音響ドローン“TIAMATの実に鮮やかな対比=終焉!『SCHEMATIC』が提示する神経、状況、制圧の音響空間は一気に総括されていく感覚を覚えた。

 『SCHEMATIC』の自律的な神経/制圧感覚は、いわゆる「聴くこと」に依存しがちなこの種の音響作品において稀な感覚・体験であった。モレキュル・プレーンが真に重要な存在であるのは、電子音楽史に連なる「現代音楽」だからではなく、むしろ現代において、ありきたりな行為になってしまった音響聴取状況(通俗化したジョン・ケージの亜流のような?)に対する強烈な反抗心・抵抗心が、その端正な音響交錯のなかに息づいている点ではないか(事実、大塚はモレキュル・プレーンの活動を「ドローン・パンク」(!)と名付けている)。そして本作『SCHEMATIC』は、『アコースティコフィリア』と比べて(わずか1年ほどという制作期間の短さもあるだろうが)、その電子音響の生成/運動/質感がさらに強い吸引力を持っているように聴こえたのだ(むろん前作と新作、どちらが良いという話ではなない)。音響と聴き手の距離がより「近い」とでもいうべきか。サウンドへのアディクション力が強烈なのである。長尺の曲が多く占めるアルバムだが、長い曲(音響)を聴いたという感覚はない。まるで瞬間と持続が常に刷新されるような感覚を得た。これはどういうことか。

 あえて簡略化してみよう。前作『アコースティコフィリア』は「意志と存在の電子音楽作品」であった。対して、新作『SCHEMATIC』は「無意識と時間を制圧する電子音楽作品」である、と。徹底的に作り込まれた音響的精度がもたらすドローンと速度感覚、生成する音の快楽、イマジネーション喚起力の強さなどによって、本作のサウンドは聴き手の意識(ある意味、作り手ですら)の領域を超え、どこか「無=意識」の根底にアジャスト/アディクションする力をサウンドが持っている。無=意識へのハックは記憶と時間も制圧する。これは極めて興味深い現象である。なぜなら21世紀の現在、音楽はジャンルや形式を問わず、意識と無意識の領域を融解してしまう傾向が強いからだ。『SCHEMATIC』は、そんな音楽世界の感覚変容の問題に正統的ともいえる電子音楽によってアクセス/アジャストしていく。時間が、瞬間が、空間が、音響の中で、複座な回路/神経のように複雑に、緻密に、粒子のように、繊細に溶け合う。聴取の足場が揺らぐ。音響が記憶を制圧する。記憶が消失し、再生する。本作の聴取体験は強烈であり、美的であり、刺激的である。いまいちど、問い直そう。電子音楽はどこにいくのか。どこにあるのか。そのヒントは、この『SCHEMATIC』にある。

Between the Borders - ele-king

 8月20日日曜日午後14時から、下北沢の駅近く、ビルの一室と屋上を使った良い感じのパーティがあります。BUSHMIND企画なので、ゆるいダウンテンポからディープなハウス、テクノ、そしてヒップホップにサイケデリック・ロックなど、いろいろありそう。屋上もあるし、入場料も安いのも良いです。
 

Between the Borders
2017/8/20 (sun)
at下北沢レインボー倉庫 4F & 5F
open : 14:00 / 1st drink : 1000 yen

4F
KUBOTA,TAKESHI
OVERALL
HASSY THE WANTED
RYOSUKE
ETERNAL STRIFE
DJ PK
THE SNIGGLERS
BUSHMIND

5F
DJ SHOWER TIME
ICE DOGG
YOKOHAMA BAY
CHANG YUU
TEE-SHORT
THE TORCHES
BBH

SOUNDSYSTEM
SARUYAMA

Mark Templeton - ele-king

 カナダのサウンド・アーティスト、マーク・テンプルトンのソロ新作がリリースされた。彼は、コンテンポラリーダンス、映画、オーディオヴィジュアルなどの分野からも楽曲の委嘱を受けるなど幅広い活動を展開しているアーティストである。

 〈アンティサペイテト・レコーディングス(Anticipate Recordings)〉からリリースされたファースト・アルバム『スタンディング・オン・ア・ハミングバード』(2007)や、セカンド・アルバム『アイランド』(2009)などはポスト・フェネス的なセンチメンタル/ロマンティックなグリッチ・エレクトロニカといった印象があったものだが(ミッド/レイト・ゼロ年代ならではのエレクトロニカ/アンビエントの記憶……)、現在の作風はアナログ・テープによるテープ・ループをメインにした作風へと変貌を遂げている。その変化は、2011年に〈モール・オックス・ヴァーシュ〉のライヴ録音シリーズの一作としてリリースされた『モール・オックス・ヴァーシュ』をはさみ、2013年に〈アンダー・ザ・スパイア〉からリリースされた『ジェラス・ハート』あたりから表面化してきた。『ジェラス・ハート』からヴァイナル(とデータ)・リリースになったことも大きな変化として挙げられるだろう。まるで、デジタル・グリッチのセンチメンタリズムからアナログと記憶と電子音の領域を溶かすようにノスタルジックでロマンティックな音楽性/音響作品へと変貌したのである。人生の、記憶の、結晶のような音楽/音響。いわば映像的ノスタルジアな電子音楽/エレクトロニカ・アンビエント。

 『ジェラス・ハート』リリース以降は、2014年に、ジュゼッペ・イエラシの〈セヌフォ・エディションズ〉からのリリースでも知られるニコラ・ラッティとのコラボレーション・アルバム『リゾフォニック』を〈13〉から発表し、2015年に、自身が主宰するレーベル〈グラフィカル・レコーディングス〉から映像作家カイル・アームストロングとのコラボレーション作品『エクステンションズ』をリリースするなど、コンスタントに作品を送り出してはきたもののソロ作品は2013年以来、4年ぶりのこと。リリースは『エクステンションズ』同様に〈グラフィカル・レコーディングス〉からで、本作の映像作品もカイル・アームストロングによって制作されている。ちなみに新作『ジェントル・ハート』は、2011年のカセット作品『スコッチ・ハート』、2013年の『ジェラス・ハート』に続く「ハート・トリロジー」の3作めである。全11曲が収録されており、全曲が記憶を遡行するような物語のようなムードで展開している。
 
 1曲め“バーにング・ブラッシュ”から記憶の糸を手繰り寄せるようなテープ・ループの音響で幕を開ける。ノスタルジックな音楽の欠片の反復。古い映画の1シーンの音響のような質感。それらが重なり、滲み、記憶の中に染み入る。続く2曲め“レンジ・ロード”では、ループされつつも微妙にズレているビートを導入しており、コーネリアスの新譜との親近性を感じもする。3曲め“ポンド”は、壊れたテープ・マシンで再生した『エンドレス・サマー』といった感覚もある。以降、アルバムは記憶と音楽の層を溶かすかのように、もしくは記憶の色彩を音楽/音楽によってゆったりと滲ませていくように音楽は展開するだろう。その音響のゆらめきは穏やかな波のようであり、まるで16㎜フィルムに定着された海の映像のようでもある。その音の波は、やがて10曲め“ジェントル・ストーリー・パート1”と11曲め“ジェントル・ストーリー・パート2”にゆるやかに収斂していくだろう。

 本作のように霞んだテープ・ループを用いたアンビエントは、エレクトロニカ以降の新しい潮流でもある。イアン・ウィリアム・クレイグ、マーク・バロンなど何人かの音響作家が、即座に思い浮かぶ。作風はやや違うがヴァレリオ・トリコリなどもアナログのテープ・マシンを用いた録音・パフォーマンスでも知られている。デジタル以降の現代のレコーディング技術とアナログ・テープマシンのループよって生まれる霧のような音色の反復と持続と逸脱。本作もまた、そのような音響作品ならではの「穏やかな波」がゆったりと、しかし独自の音楽的方法論で生成し反復している。カイル・アームストロングによる本作のヴィデオを観れば、その「メロウ・ウェイブ」(!)感もより伝わると思う。

 そう、本作こそまさにフェネス以降=「00年代のデジタル・グリッチ以降のアンビエント/エレクトロニカ」のひとつの「進化」のカタチでもあり、ひとつの「成熟」のカタチなのだ。何かと騒がしい2010年代後半の「世界」にあって、まるでループホールのように、慎ましく存在している……、そんな貴重な作品である。

Jlin - ele-king

 アフリカ大陸を想起させる土着的なパーカッションの音を多用し、シャーマニックな声が響き渡る。まるでエレクトリックな音も巧みに操る部族が密林の奥地でおこなう儀式の音楽のようだ。『Dark Energy』、2015年にリリースされた、それまでのジューク/フットワークとは一線を画す突然変異的フットワーク・アルバムのタイトルである。米国中西部インディアナ州ゲイリー出身のジェイリン(Jlin)ことJerrilynn Pattonは、このアルバムでキャリアをスタートさせた。そしていまから1年ほど前に昼間の製鉄工場での仕事を辞め、より制作に時間を割ける環境を得て、2年ぶりとなる2ndアルバム『Black Origami』をリリース。『Dark Energy』からいかに進化したのかを解き明かしたいと思います。

 A1、アルバムタイトル曲”Black Origami”。彼女の場合、基本的にBPM80/160を3の倍数で割ったフレーズ、リズムがベースとなっていて、非常に細かく速く刻まれ、音の定位も細かく変化を加えられていて、とにかく複雑。この曲の場合、様々な音色のパーカッションが様々な音程とリズムを同時に刻むため、パーカッションだけでほとんどメロディを奏でているような感じで、そこに彼女の声とシンプルな上音やフレーズが乗るのですが、そのアンサンブルの妙が本当に素晴らしく、上音はひとつか、被ってもふたつくらいのもので、無駄が一切無く、必要最低限の要素だけで構築されているような感じです。
 冒頭からエレクトリックな音色のシンコペーションフレーズではじまり、ベースラインが刻まれ、キックが入り、パーカッションが複雑なリズムを刻み始めます。笛や銅鑼の音も入っています。そしてとにかくリズム楽器の音色、音程の多彩さに圧倒されます。ソリッドにそぎ落とされながらも複雑という、非常に高度なトラックメイキングだと思います。本当にオリジナルだなと感嘆。
 2015年5月か6月頃にC3の“Nandi”が出来て、これはいままでに作ったものとは違うと感じ、いま思うとこれが“Black Origami”制作のスタートだったとFADERのインタヴューに答えていたジェイリン。このアルバムタイトルトラックは2番目に完成、これもいままでとは違うサウンドだと感じたという。何をJlinは見つけたのか。それは音のまばらな配置だと彼女は言います。“Dark Energy”でも似たような音使いはしている。でもパーカッションはより多彩に、より高速に、より複雑に、転がるような流麗さで刻まれ、音の粒立ちがよりはっきりし、音と音の間の空白が際立つようになった。以前より速く複雑になっているにも関わらず。おそらくこれが彼女が「これでもっと深いところにいける」と感じた要因ではないかと僕は思います。空白。無。そこには底無しの深淵が口を開く可能性が秘められているからでしょう。それをこのアルバムでは追求していったのだと思います。

 タイトルトラックの“Black Origami”が出来て何かを掴んだ頃、彼女は“Dark Energy”が大好きだと言うダンサーAvril Stormy Ungerと出会います。彼女が踊っているヴィデオを見て、「Oh my god,これだ」と感じたと。Jlinのトラックに合わせて踊る彼女の動きはその音楽のリズムと音にぴったり合っていて、彼女は以降Jlinの良き制作パートナーとなり、今年も多くの共同パフォーマンスの予定が控えていて、ジェイリンはオーガナイザーとしても忙しく動いているようです。

https://www.native-instruments.com/en/specials/jlin/

 Jlinの音楽にインスパイアされて踊る彼女に、今度は逆にJlinがインスパイアされて、A2“Enigma”、B3“Hatshepsut”、C2“Carbon 7(161)”の3曲が完成したという、とてもクリエイティヴな循環が生まれています。“Enigma”は多彩なパーカッション、シンバルにベルなどの打楽器と彼女の声だけでほぼ曲が出来上がっていて、そこに時折ビリンバウの音が入るだけ。打楽器と声でメロディとリズムを奏で、そこに唯一付け足す要素としてビリンバウの音を選ぶこと、そして極限まで削ぎ落とされたビリンバウをどの音程でどこで鳴らすか。そこに彼女の考え抜かれた楽曲構成の妙が感じられます。

 “Hatshepsut”もほぼ打楽器だけで構成されています。この曲では彼女の声の代わりに『Dark Energy』の頃から彼女が好んでよく使う、唸りを上げるように弧を描くACIDYな電子音が打楽器に絡み付き、要所要所で吹奏楽器であるホイッスルが吹き鳴らされ、後半の展開部分ではそこにギロの音色が加わります。ちなみにHatshepsutとは古代エジプトの女王、ファラオの名前で、戦争を嫌い平和外交によってエジプトを繁栄させたと言われています。また旧約聖書の出エジプト記でモーセをナイル川で拾って育てたのは彼女だという説もあるそうです。Jlinは彼女に敬意を表したかったと。

 “Carbon 7(161)”がAvrilにインスパイアされて最初に作った曲で、比較的ゆったりとしたフロウを感じさせるトラックです。BPMは同じですが。Avrilがゆったりと踊っている時の動きにインスパイアされたのでしょう。全体的に低い音が使われていて重心が低く、低音の持続音が多用されています。下降していくベースラインはドラムンベースを想起させてくれます。

 A3”Kyanite”は「House of Flying Daggers」という映画のあるシーンにインスパイアされたということで、実際に見てみました。youtubeで検索すると出てきます。The Echo Game Sceneというやつです。チャン・ツィイーが盲目の女性役で、ずらっと円形に並ぶ太鼓に囲まれています。彼女の前に、テーブルに座っている男がいて、そこから石を投げて、当たった太鼓を音だけを頼りにそれと同じものを身につけている長いスカーフで叩くというシーンです。この荒唐無稽なシーンからしっかりと制作に繋げることが出来るジェイリンの真摯な姿勢に心を打たれました。ぜひ見てみて下さい。チャン・ツィイーの動きからこの曲にたくさん入っているカラカラ鳴るカウベルの音を想起したとのことです。

 Jlinは件のインタヴューでこのアルバムのなかからとくに好きな曲を3つ挙げています。それはB1“Holy Child”、D1“1%”、ラストトラックの“Challenge(To Be Continued)”で、そのなかでもとくに好きなのが“Holy Child”だと。なぜならこの曲はラシャドに捧げた曲だからだそうです。同時にこの曲はこれまででもっとも挑戦的なトラックであり、ベースラインがシンコペーションしまくりで、ペースもリズムも唐突に変化する、ラシャドの“I Don’t Give A Fuck”に近い世界観だと思います。ジェイリン自身の幽玄な世界へといざなうような声が、あの世とこの世を繋ぐかのように響きます。そしてこの曲ではかの“the disintegration loops”で有名なWilliam Basinskiがコラボレーターとしてクレジットされています。おそらく機材関係のサポートをしてくれたようで、この冥界的ムードの現出にも貢献しているのかも知れません。

 B2“Nyakinyua Rise”は先行12”のB面にも収録されていて、versionは同じようです。途中から野太い男性の声が合いの手を入れたり、チャーチャッチャー、チャーチャッチャーと叫びまくっていてかっこいい。リズムセクションも重心は低いけれど軽やかさも有ってコントラストが効いている。打楽器とベースラインと声だけで構成されています。

 C1“Calcination”はすごく短いのですが、RabitのレーベルHalcyon Veilから“Death Is The Goddess”をリリースし、〈Planet Mu 〉20周年のコンピでも“Ankou Celeste”でジェイリンと共演していたFawkesがふたたびその声を響かせています。彼女の声もまた浮遊感の有る霊的な雰囲気を纏っていて、折り重なる声とシンプルでゆったりとしたパーカッションによって儀式的ムードを充満させたかと思うと、あっという間に終わってしまいます。もっと長く聴いていたい曲。

 これはPlanet Mu 20周年コンピに収録されている共作曲です。


 C3“Nandi”。この曲にこれまで作ったどの曲にもないサウンドを感じ、結果的にアルバム“Black Origami”のなかでいちばん最初にできたという曲。パーカッションと声とベースだけで構成されていて、パーカッションの細かく割り振られた音の定位と、隙間を活かした構成。これほどまばらな音の配置はいままでにやったことがなく、この手法を使えばもっと深いところまで行けるとJlinは進化の糸口を掴みます。
 いま『Dark Energy』を念入りに聴き直してみると、たしかにこのアルバムほど細かく音の位置を変化させてはおらず、声や上音フレーズなどはよく左右にパンさせていますが、パーカッションは多少の変化は加えられているものの、大体中央に定位しています。恥ずかしながらChartに寸評を書いたときにはそこまで理解できていませんでした。“Infrared(Bagua)”ではこのアルバムほど複雑でも速くもありませんが、この手法の萌芽が感じられます。

 D1“1%”はHolly Herndonとの共作で、アルバムの中でも異色な音色なのはHollyのカラーが出ているのでしょう。一番エレクトリックな印象。リズムの組み方はジェイリン色が強いけれど、普段の乾いた生々しいパーカッションの音はエレクトリックな音に置き換わっている。Hollyは私と同じでとても細部にまで気を配るアーティストだとジェイリンは言っています。僕も大好き。

 D2“Never Created,Never Destroyed”。Dope Saint Judeをゲストに迎え、トラップとミュータント・フットワークを配合させた異色作。引きずるようなベースラインがかっこいい。ラスト手前に新しい試みを収録して、最後の曲“Challenge(To Be Continued)”と題されているのがなんとも頼もしい。

 D3”Challenge(To Be Continued)”。勇ましい曲で、挑戦は続くと宣言しています。一層多彩なパーカッション群が華やかに打ち鳴らされ、ホイッスルが高らかに響き、ジャケットにもなっている象までもが鳴き声をあげ、さながらカーニバルのようです。そして駆け抜けるかのように一瞬で終わってしまいます。Challengeという言葉の余韻を残して。

 シンプルな1枚の何も書かれていない紙。そこからどれだけの可能性を引き出せるか。それが折り紙というアートフォーム。このアルバムの複雑ながらシンプルな音使いで畳み掛けるように流れていくリズムは、シンプルな一枚の紙を複雑に細かく折りたたむことを、音によって表現しているかのようです。

 パーカッションのサンプルの種類は非常に多彩になり、それを緻密に使いこなし、細かく複雑に音を配置することによって、左右だけでなく奥行きまでをも感じさせる事を可能にしたジェイリン。広がりのある音の配置によって、そこに空間があるかのように感じることができます。パーカッション以外の音は厳密に選択し、無駄を削ぎ落とし、空間を残す。シンプルにすることで、逆に力強さを引き出すことに成功しています。

 この時点ですでにかなり踏み込んだ領域に到達していると思われるが、しかし彼女はどんどん次へと向かっていくでしょう。次はどんな風に進化して帰ってくるのか。それを心待ちにしながら、自分も頑張らないとと尻を叩く日々です。Challenge!!!!!

Oneohtrix Point Never × Ryuichi Sakamoto - ele-king

 これは事件です。最新作『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』のリリースを控えるOPNが、なんと坂本龍一のリミックスを手がけました。原曲は坂本の最新作『async』に収録されている“Andata”です。2015年にLIQUID ROOMで開催されたOPNの来日公演ではカールステン・ニコライが前座を務めていましたが、いやはや、ついに坂本龍一とも繋がってしまいましたか。そのこと自体ビッグ・ニュースではありますが、いや、これまたこのリミックスが良いんですよ。どういうふうに料理するのかとどきどきしながら再生ボタンを押すと……2分を過ぎたあたりで鳥肌が立ちました。OPN、おそるべし。なお、このリミックスは後日リリース予定の坂本龍一の作品(リミックス・アルバムでしょうか?)に収録される予定で、そこにはOPNの他にもコーネリアスアルカ、ヨハン・ヨハンソン、モーション・グラフィックス、エレクトリック・ユースなどが参加しているとのこと。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが坂本龍一をリミックス
- Ryuichi Sakamoto - Andata (Oneohtrix Point Never Rework) -

前衛的な実験音楽から現代音楽、そしてアートや映画の世界にまで、年々活躍の場を広げ、日本でも今年公開予定の映画『グッド・タイム』のサウンドトラックで、本年度のカンヌ・サウンドトラック賞も受賞したワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never)ことダニエル・ロパティン(Daniel Lopatin)が、坂本龍一の最新アルバム『async』収録曲「andata」のリミックス・ワークを公開した。

Ryuichi Sakamoto - Andata (Oneohtrix Point Never Rework)
https://soundcloud.com/milanrecords/ryuichi-sakamoto-andata-oneohtrix-point-never-remix/

本楽曲は、『async』に続く坂本龍一の最新作に収録され、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの他、コーネリアス、アルカ、ヨハン・ヨハンソン、モーション・グラフィックス、エレクトリック・ユースなどの参加が明かされている。

ますます注目を集めるワンオートリックス・ポイント・ネヴァー最新作『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』は8月11日(金)世界同時リリース! 国内盤には、ボーナストラック“The Beatdown”が追加収録され、解説書が封入される。iTunesでアルバムを予約すると、公開中の“Leaving The Park”と“The Pure and the Damned (feat. Iggy Pop)”の2曲がいちはやくダウンロードできる。


label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time Original Motion Picture Soundtrack

cat no.: BRC-558
release date: 2017/08/11 FRI ON SALE
国内盤CD: ボーナストラック追加収録/解説書封入
定価: ¥2,200+税

【ご購入はこちら】
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002171
amazon: https://amzn.asia/6kMFQnV
iTunes Store: https://apple.co/2rMT8JI

【商品詳細はこちら】
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Oneohtrix-Point-Never/BRC-558

8年ほど前、ぼくらは音楽に、あるいはワンオートリックス・ポイント・ネヴァーその人に興味を持っ た。ぼくはいつもダンの音楽(特に初期の頃の)を、まだ作ってもいない映画のサウンドトラックとして想像していた。『Good Time』でのコラボレーションから、それを取り巻く対話を通じて、ぼくらは深い友情と、もちろんこの色鮮やかでこの世のものとは思えないようなスコアを手に入れた。制作の前にダンとはコンセプトのことでよく話し合った。それがカンヌで花開くことになるとは……まるでハイレゾ・ファンタジーだね。 ― ジョシュア・サフディ

ぼくはワクワクしながら、ミッドタウンにある兄弟のオフィスを訪ねた。そこには彼らが好きなものが何でもあって、まるで聖地みたいだった。巨大な『AKIRA』のポスターと『King of New York』が並んでたよ。ふたりはぼくに、特殊な映画に取り掛かるつもりだと言った。ぼくから見たサフディ兄弟は、非常に特異なことに取り組みながらも、伝統を尊重する監督だ。ジム・ジャームッシュやクエンティン・タランティーノ、レオス・カラックスといった監督を思い浮かべても、彼らは映画の歴史を愛するがゆえに映画制作そのものから遠ざかりがちだが、いずれにせよあの独特の個性を失うことはない。ぼくらに共通しているのは、傷ついてボロボロになったものに対する愛着と敬意だ。たぶんぼくらは今現在の歴 史を守りたいという衝動を感じていると思う。昔の、ではなく。ぼくら自身の言葉でだ。 ― ダニエル・ロパティン


映画『グッド・タイム』
2017年公開予定
第70回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門選出作品

Good Time | Official Trailer HD | A24
https://youtu.be/AVyGCxHZ_Ko

東京国際映画祭グランプリ&監督賞のW受賞を『神様なんかくそくらえ』で成し遂げたジョシュア&ベニー・サフディ兄弟による最新作。

コニー(パティンソン)は、心に病いを抱える弟(ベニー・サフディ監督兼任)のため、家を買い安全に生活させてやりたいと考えていた。そこで銀行強盗をふたりで行うが、途中で弟が捕まり投獄されてしまう。弟は獄中でいじめられ、暴れて病院送りになる。それを聞いたコニーは病院へ忍び込み、弟を取り返そうとするが……。

出演:ロバート・パティンソン(『トワイライト』『ディーン、君がいた瞬間』)、ベニー・サフディ(監督兼任)、ジェニファー・ジェイソン・リー(『ヘイト・フルエイト』)、バーカッド・アブティ(『キャプテン・フィリップス』)
監督:ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟(『神様なんかくそくらえ』)

2017/アメリカ/カラー/英語/100分
(C) 2017 Hercules Film Investments, SARL

配給ファインフィルムズ

Island people - ele-king

 まるでSF映画のサウンド・トラックのようなサウンドだ。あくまでイメージだが21世紀版『惑星ソラリス』の音響のように聴こえる。そう、〈raster-media〉のファースト・リリースであるIsland people『Island people』のことである。とにかく素晴らしい電子音響作品だ。全14曲79分、アナログ盤だと2枚組の大作となっている。

 それにしても〈raster-noton〉がAlva notoの〈noton〉と、Byetoneの〈raster-media〉に分裂したことは、大きな時代の転換点だったと思う。90年代末期から00年代の先端音楽の中心を担っていたレーベルがひとつの終わりを迎えたわけだから。
 正直にいえば、Alva notoの個人レーベルになる〈noton〉の行く末にはそれほどの心配はなかった。Alva notoはAlva notoとして作品をリリースしていくだけだろう。むしろ彼が抜けた後の〈raster-media〉はどうなるのだろうかと思っていた。Byetoneを主宰とすることには何も心配はない。そうではなく両輪のひとつを失ってしまったレーベルなのだから、うまくコントロールができるのだろうかと勝手に心配していたのである。誠に勝手な話だ。だが、そんな心配はとりあえず無用だった。少なくとも、このIsland people『Island people』は傑作である。
 
 ミニマルなリズム、硬質なドローン、躍動する音響ノイズ、微かに音楽的なエレメント(和声・旋律の残滓)、架空のSF映画のサウンドトラックのようなドラマチックで壮大な構成など、アルバム全体の音楽的・音響的な質の高さは、まったく申し分のない。
それもそのはずである。このグループは、実は相当なメンバーたちが結集してるのだ。まずは、マスタリング・エンジニアのConor Dalton、そしてSilicone SoulのメンバーGraeme Reedie、さらにあのCraig Armstrongのプログラマー/コラボレーターであるDavid Donaldson(04年に公開されたRay Charlesの伝記映画『Ray』のサウンド・トラックの制作・エンジニアリングでグラミー賞を受賞している)、加えてギタリストIain 'Chippy' MacLennanも参加。彼らの拠点であるベルリンとグラスゴーで、3年ほどの月日をかけ、ファイル交換をしながら楽曲を完成していったという。
 じじつ、フィールド・レコーディングからノイズ、ギターから打楽器まで多様なサウンドを用いられた楽曲は、高品質なアトモスフィアを形成しており、何度も繰り返し聴ける質の高さを誇っている。まさに磨き上げられた宝石のごとき電子音響作品である。
 また、これほどまで「音楽的」な要素を持った作品は〈raster-noton〉の時代はあまりなく、彼らの作品を最初にリリースしたことは、byetoneなりの〈raster-media〉宣言といえるだろう。簡素にして深いキックの音に、複雑な環境音、硬いノイズ、ミニマルでに民族音楽的なリズムがレイヤーされていく1曲め“Ember”を耳にした瞬間に、本作がすばらしさを確信できるはずだ。素晴らしいトラックなのだ。

 同時に、Island peopleがバンドである点も重要に思える。レーベルが準備したアーティスト写真もいかにもバンド的なイメージである。むろんイメージだけではない。こういったアンビエントな楽曲を複数の音楽家によって制作されるという事実の方が重要に思える。アンビエント楽曲が個人の音の結晶から複数の人間の多層的な融合になったとき、そのサウンドはどう変化するのか。その最初の(?)の兆候のようなものを、このIsland peopleのファースト・アルバムには、確かに感じた。
 簡単に言えば音楽と音響のレイヤーに「複数性」があるのだ。アンビエント/電子音響のレディオヘッド? なんていう妄想が思い浮かんでしまったほどである。とはいえ今後もヴォーカルなどが加わらず、徹底的に音楽/音響のみで、そのスケール感を拡張していってほしいものだ。
 いずれにせよ、本年のエレクトロニック・ミュージックの中でも一際完成度の高いアルバムであることに違いはない。ノイズの空気と層が音楽/音響のなかに、まるで惑星を包みこむ大気のような音響空間と音楽が生成している。まさに必聴といえる。

interview with Songhoy Blues - ele-king


Songhoy Blues
Résistance

Transgressive / ホステス

AfricanBluesRock

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 デーモン・アルバーンによるアフリカ音楽プロジェクト〈Africa Express〉のスカウティングで、アマドゥ&マリアムを手掛けたマーク・アントワーヌ・モローに見いだされ、同プロジェクトのコンピ『Maison Des Jeunes』でデビュー。その勢いに乗ってヤー・ヤー・ヤーズのニック・ジナーらのバックアップで2015年にリリースされたデビュー・アルバム『Music In Exile』はブライアン・イーノらに大絶賛され、ジュリアン・カサブランカスやアラバマ・シェイクスのライヴにも登場。2012年のマリ北部紛争により、ジハーディスト集団に占拠された故郷を離れて生活することを余儀なくされたソンゴイ族の若者たちが、南部のバマコのキャバレーに集い奏でたバンド・アンサンブルは、様々な民族が集うマリの首都の夜を熱狂させただけに留まらず、いまや全世界から注目を集めるアフリカ新世代のサウンドとなった。

 そして『Music In Exile』から2年、プロデューサーにニール・コンバー(MIA、ジャンゴ・ジャンゴ、etc.)を迎えた、ソンゴイ・ブルース待望のセカンド・アルバムが届けられた。タイトルは『Résistance(レジスタンス)』。

 かつてアリ・ファルカ・トゥーレを輩出したソンゴイ族ならではの乾いたブルース・フィーリングを、B・B・キングやジョン・リー・フッカー、そしてジミヘンらアメリカのブルース~ロック由来のキャッチーでアグレッシヴなギター・ワークに反映させた小気味良いバンド・サウンドは今作でも健在だ。マーク・アントワーヌ・モローは、ソンゴイ・ブルースを初めて観たときの印象を「紛れもないロック・バンド、アフリカ云々は問題じゃなかった。マンチェスターやグラスゴー出身のロック・バンドとなんら変わりはなかった。そこが良かったんだ」と語り、プロデュースするにあたって「ワールド・ミュージックのシーンは徹底的に避けるようにした」と告白しているが、この清々しいまでに外連味のないロック・マナーのギター・アンサンブルの向こうに、アフリカの、マリの、ソンゴイ族ならではの濃密な音空間が聴くほどに広がるこの不思議こそ、このバンドの持つ堪えられない魅力だ。今作ではそこにさらにホーンやシンセが加わって、シンプルさはそのままに、よりダイナミックな仕上がりになっている。


 そのバックグラウンドにもかかわらず、もしくは、だからこそ、というべきか、彼らののびのびとした音楽的な佇まいを通して伝わってくるのは「ポジティヴなアフリカ」だ。今アルバムのリード・カットとなった“Bamako”のプレス・インフォには、ヴォーカルのアリユ・トゥーレのこんな言葉が添えられている。「アフリカっていうとネガティヴで、戦争や飢饉といった悪い報道しかされない。そんなイメージを払拭できて、誰もが共感できる曲にしたかった。土曜の夜に出かけることについて歌うことで、人びとが普段知らないアフリカを伝えたかった」。

 『Résistance』に納められたそれぞれの曲は、マリの状況に関する明確な意図を持つ、抵抗(レジスタンス)の音楽だという。それはまた、我々の一方的なアフリカ観、ステレオタイプなアフリカ音楽のイメージ、旧態依然としたアフリカ音楽の聴き方に対するレジスタンスでもあることにも気づく。

 ヴォーカルのアリユ・トゥーレに新作について訊いてみた。


 

僕にとってテレビは人の家の鍵穴から覗いて観るものだったよ。音楽は村の人みんなにとって日常だった。サッカーだってマリに到達したのは比較的最近だよ。マリはアフリカの中でもいちばん音楽的な国だと言っていいと思う。


通訳:このインタヴューは日本の音楽雑誌でwebzineの『ele-king』という媒体のためのものです。よろしくお願いします。

アリユ・トゥーレ(Aliou Touré、以下AT):マリで子どもの頃よく『ドラゴンボールZ』を観ていたんだよ! 日本に早く行きたいな。

デビュー作『Music In Exile』も素晴らしいアルバムでしたが、新作『Résistance』はそれをさらに上回る傑作になっていることに驚きました。新作についてはあとで訊かせていただくとして、あなたがた、マリのガオやトンブクトゥ周辺で暮らすソンゴイの人びとの暮らしというのはなかなか日本人には馴染みがありません。まずはあなたたちが幼少の頃の音楽的な環境から教えてください。生演奏、ラジオ……どのようにして音楽と接していたのでしょうか? 音楽は身近なものだったのでしょうか?

AT:マリの北の砂漠で育ったんだけど、当時のマリ北部には何もなかった。ラジオは94年に、テレビも96年から始まったからね。でも音楽はとても身近なものだった。というより音楽が唯一のエンターテインメントだったんだ。結婚式や洗礼式があるたびにミュージシャンが呼ばれて路上でパーティがおこなわれて、そこから音楽を学んでいったんだ。踊ること、歌うことをね。PlayStationなんかなかったから音楽が唯一の楽しみだったんだ。テレビなんてすごく高かったから家になかった。僕にとってテレビは人の家の鍵穴から覗いて観るものだったよ。音楽は村の人みんなにとって日常だった。サッカーだってマリに到達したのは比較的最近だよ。マリはアフリカの中でもいちばん音楽的な国だと言っていいと思う。マリはいろいろな文化に囲まれてる。モーリタニア文化、アラブ文化、セネガルのパーカッション、とにかくさまざまな文化の影響が混ざり合った国なんだ。

あなたはソンゴイ・ブルース結成以前から故郷のガオで音楽活動をしていたと聞いています。どのような経緯で人前で歌うようになったのでしょう?

AT:最初に組んだのはサラリーズ・ドゥ・ガオというバンドで思春期の衝動で作ったようなバンドだった。それから大学に行って歌詞が書けるようになって、ギターが弾けるようになってメロディが書けるようになって、と成長していった。それでマリでライヴをやるようになっていったんだ。マリがジハーディストたちに占領されて音楽が禁止されたりしている中、それぞれ他のバンドをやっていて顔見知りだったメンバーがバマコで会ってソンゴイ・ブルースが始まったんだ。北部出身者たちが南部のバマコで寄り合って同じ言葉を話してちょっとしたノスタルジーや安心感もあったと思う。そのうちジャム・セッションをするようになって、前座ライヴをするようになっていったんだけど、メインのバンドより受けちゃってね。一緒にやる運命なんじゃないか、と話してソンゴイ・ブルースを始めたんだ。

影響を受けた人物、アーティストなどがいたら教えてください。

AT:まずはマリのアーティスト、アリ・ファルカ・トゥーレ(Ali Farka Touré)、ティナリウェン(Tinariwen)、アマドゥ&マリアム(Amadou & Mariam)などの伝説的存在。こういったアーティストたちはラジオでも流れていたし結婚式や洗礼式でも彼らの音楽が演奏された。今はインターネットが普及して、ヒップホップ、レゲエ、ロック、ブルース――ブルースは僕たちの故郷が発祥の地だけどね――といった音楽もどんどん聴けるようになって、僕たちの音楽にも若い世代に好まれる音楽の影響が入ってきている。

(前作収録曲の)“Al Hassidi Terei”のPVを見たとき、ヘヴィな曲調にもかかわらずあなたがとても楽しそうに歌っているのに虚をつかれる思いがしました。困難な状況、理由でバンドをスタートさせたにもかかわらず、あなたはいつもじつに楽しそうに歌っていますね。

AT:音楽は瞑想方法なんだ。音楽を演奏しているときは音楽に没頭して不安や困難とは別の境地に達することができるんだ。


マリがジハーディストたちに占領されて音楽が禁止されたりしている中、それぞれ他のバンドをやっていて顔見知りだったメンバーがバマコで会ってソンゴイ・ブルースが始まったんだ。

バマコでの活動中から、バンドのコンセプトにもかかわらず、トゥアレグの人たちをはじめ、ソンゴイ族以外からも人気があったそうですね。どうしてそんなことが可能だったんでしょう?

AT:それが僕らの音楽のマジックなんだ。バマコのキャバレーで演奏しているとき、オーディエンスの中には13部族全部が混ざっていた。彼らの言葉や服装なんかでどこの部族かすぐにわかるからね。音楽を聴いているときは憎しみも消えるんだ。それが音楽を分かち合ういちばん重要なところだよ。僕たちの音楽の根底に流れている善良さにみんな惹きつけられた気がする。

〈Africa Express〉に関わったことで、ソンゴイ・ブルースの音楽性に何か変化はありましたか?

AT:そうだね、大きな変化へのきっかけになった。マリのクーデターの真っ最中にバマコに来てマリのバンドをサポートしたんだから彼には頭がさがるよ。デーモン(・アルバーン)はアフリカ音楽を本当によく理解しているし。あの政治的状況の中、50バンドのオーディションをして1週間かけてレコーディングしていったんだ。〈Africa Express〉をきっかけに僕たちのキャリアはガラッと変わった。

ニック・ジマーやマーク・アントワーヌ・モローがプロデュースをしたことでソンゴイ・ブルースのサウンドに変化はありましたか?

AT:もちろん。音楽的にもすごく成長したと思う。ニックは経験豊富で才能豊かで、彼からアレンジの新しいスタイルを学んだよ。その後にツアーに出て3年かけてさらにいろいろな経験を積んだんだ。いろんなバンドやプロデューサーに出会ってジャム・セッションをしたりしてね

前作『Music In Exile』には知る人ぞ知るハイラ・アルビー(Khaira Arby)が参加していました。彼女はどういう経緯でアルバムに参加したのでしょう? また彼女はマリの人びとにとって、そしてあなたがたソンゴイ・ブルースのメンバーにとってどういった存在でしょうか?

AT:北のディーヴァさ。彼女は僕たちのことを息子のように思ってくれているし、僕らも母のように慕っているよ。それでレコーディングの時に「参加してくれない?」って頼んだら、快く引き受けてくれたんだ。今までもクラブでジャムに参加してくれたことも2回ほどあった。ソンゴイ・ブルースのギタリストは、彼女のバンドの代打ギタリストとして彼女のコンサートによく参加していたから、僕らのこともよく知っていてくれた。それで朝に彼女に電話したら午後にはスタジオに来てくれて、リハも何もなくぶっつけ本番でレコーディングしてくれたんだ。


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マリの国民としてこれは不正な統治に対する抵抗であり、軍、権威などに対する抵抗の音楽なんだ。それぞれの曲がマリの状況に関する明確な意図があって書いてる。










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セカンド・アルバムの構想はいつくらいから練りはじめましたか? 今回のアルバムのテーマ、あるいは制作のモチベーションになったことなどがあれば教えてください。

AT:『Résistance』は『Music In Exile』を巡る冒険の延長線上にあるんだ。『Music In Exile』というとても特別なコンセプトのもとに作ったアルバムのツアー中にも曲を書いたんだけど、マリの国民としてこれは不正な統治に対する抵抗であり、軍、権威などに対する抵抗の音楽なんだ。それぞれの曲がマリの状況に関する明確な意図があって書いてる。それらの歌詞はツアー中に書いた。空港やホテルや車の中でね。でも何曲かは『Music In Exile』が出る前にすでに書かれていたものもあるんだ。

今回のアルバムはロンドンでレコーディングされていますが、アルバムの制作のためにメンバー全員で一度故郷であるガオやトンブクトゥに帰っていましたよね。アルバムを制作するにあたって、やはり故郷に戻る必要があったんでしょうか?

AT:ソンゴイ・ブルースを始めてから、それぞれが1週間か2週間のブレイクをツアー前にとるようにしてたんだ。家族に会って英気を養うためにね。マリの状況は変わりつつあるから新しいアルバムへのインスピレーションにもなったよ。

先行シングルである“Bamako”や“Mali Nord”には、前作にはなかったホーン・セクションやキーボードのサウンドが聴こえてきます。

AT:いろいろな音楽を聴くうちにホーン・セクションやキーボードのサウンドにも魅力を感じるようになってね。それにヨーロッパでの方が僕たちの故郷よりソンゴイ・ブルースが聴かれていることがわかって、ヨーロッパのオーディエンスにも合うようなサウンドを作りたかったんだ。

“Bamako”という印象的な、ある意味であなたがたの出発点になった街のタイトルを持つこの曲の歌詞を解説してください。

AT:“Bamako”からすべてが始まったから、オマージュを捧げたかったんだ。僕たちのバックグラウンドを理解するのに役立つ歌詞なんだよ。バマコは夜が本当に生き生きした街なんだ。ここ最近のバマコにまつわる暗いイメージを払拭したくてね。旅行に行ったり、働いたりすることをためらうような状況があるけど、バマコに行ったら面白いバンドが見られる、楽しい夜が過ごせるということを言いたかった。パリでテロがあったって、パリの街の魅力が損なわれたわけじゃないだろ? それはバマコも同じなんだ。

“Mali Nord”には(前作収録曲の)“Irganda”をサンプリングしていたグライムMCのエルフ・キッド(Elf Kid)が参加していますね。彼はどのような経緯で参加することになったのでしょう?

AT:(エルフ・キッドが)“Irganda”を使いたいということで、でき上がった曲を聴いたら僕たちの曲より素晴らしくて「OMG!」ってなったんだ。それでエルフ・キッドに会って、いい仕事をするだけじゃなくて良いヤツだってわかって、いつか一緒にできればとレーベルに話してたんだ。それでアルバムの制作時にこの曲にはラッパーが必要だってなって、すぐにエルフ・キッドに提案したっていうわけ。曲のテーマは難民。そして難民が亡命したければ受け入れるべきだということ。エルフ・キッドも同じ思いなんだ。



バマコは夜が本当に生き生きした街なんだ。ここ最近のバマコにまつわる暗いイメージを払拭したくてね。〔……〕パリでテロがあったって、パリの街の魅力が損なわれたわけじゃないだろ? それはバマコも同じなんだ。

“Ici Bas”の美しいコラの音とヘヴィなギター・サウンド、軽快なリズムのフュージョンにシビレました。あのコラを演奏しているのは誰ですか? マンディングのグリオの楽器であるコラをフィーチャーした理由はなんでしょう?

AT:トゥマニ・ジャバテ(Toumani Diabaté)の弟だよ。別のプロジェクトで一緒になってマリのスタジオで出会って、コラの演奏が素晴らしかったから「今度一緒にやらないか」と声をかけたんだ。演奏スタイルもマンディングだけど、そうやって別のスタイルや民族性を混ぜていくことが、美しいと思う。歌詞もマンディング語で歌ってる。モラルや人間同士の関係性についてだ。夫婦や親子、雇い主と雇われる側などいろいろな人間関係のそうあるべきあり方について歌っている。

他にアフリカ・サイドから参加しているアーティストがいれば教えてください。また彼らはどういう経緯で参加することになったのでしょうか?

AT:バッキング・ヴォーカルとンゴニくらいかな。ンゴニはマリの南から来てもらったバカラという友だちだよ。このアルバムではパーカッション、メロディ、歌詞、楽器などマリのあらゆる民族の音楽を取り入れているんだ。

イギー・ポップの参加には驚きました。どういった経緯で参加することになったのでしょう?


AT:“Sahara”をレコーディングした時、この曲のメッセージを伝えるには高みにあるアーティストに頼まないといけないね、と皆で話し合って、スタッフがイギーに頼んだんだ。曲を聴いてイギーは特に質問するでもなくすぐに引き受けてくれた。イギーは新人バンドをとても良くサポートしているけど、アフリカの砂漠から来た若いバンドとやるのは初めてだったようだよ。

“Hometown”は、タイトルとはうらはらにとてもハイブリッドな曲ですね。フィドルを弾いているのは誰ですか? またフィドルを加えた理由はなんでしょう?

AT:ロンドンの友だち。ロンドンのコンサートの後に楽屋に会いにきてくれて、ビールを飲んだりして話しているうちに意気投合して、レコーディングで声をかけるよ、ということになったんだ。

ニール・コンバーとのコラボレーションはいかがでしたか?

AT:ニールは最も人の言葉に耳を傾ける忍耐深いプロデューサーだよ。彼はものすごく経験が豊富なのに指図をしてくるのではなく、アーティストの意見をまず尊重してくれる。それはアーティストにとって理想だよね。僕たちには経験がないから、僕たちが欲しいと思っている音がなんなのかよくわからなくて口で「こういう音」と真似ることが多かったけど、そういうことにもいちいち付き合ってくれたよ。そしていつでも笑顔で熱心で僕たちを励ましてくれた。

今回のアルバムにテーマのようなものはありますか? バンドが目指したサウンドやメッセージがあれば教えてください。

AT:最後の曲“One Colour”の歌詞で歌っていることだね。皆が一緒になればこの世界は素晴らしいものになる。ギター、ドラム、ベースが一緒になったようにね。

あなたたちはマリという国の出身であるにもかかわらず、マリと同時に欧州のフランス語圏ではなくUKやアメリカなど英語圏を中心に活動し人気を博しています。あなたがたの故郷であるガオやトンブクトゥはニジェール川のほとりにあり、イスラム世界とアフリカの交易の中心地として栄えた大都市で、ひょっとしてオープンな、進取の気風があったりするのかなと思うんですが……どうでしょう?

AT:僕たちが欧米で受け入れられた大きな理由は、この世界情勢が僕たちの活動に与えた影響、そして僕たちの物語にオリジナリティをもたらしたと思う、そして僕たちの戦いに世界の人びと、欧米の人たちが共感してくれたんだと思う。


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