Key Marketsというのはジェイソン・ウィリアムソンが子供の頃に母ちゃんに連れられて行ってたスーパーの名前ということだが、ダブルミーニングなのは間違いない。最近、英国の政界を震撼させているジェレミー・コービンという爺さんがいて、彼のことをテレビで評論家が語っていたとき、「彼はPRの賜物ではないが、まるでPRで作り上げた政治家のようによく出来ている。Key Marketsに間違いなく受けるキャラ」みたいなことを言っていて、いやーついに政治家を語る時にも「基幹市場」なんて言葉を使う時代になったか。いよいよ政治家も商品か。と感心したものだが、本作にはそういうことに対する憤懣がたぎっているよう感じられた。
あれは5月の総選挙直前。ある新聞が、労働党のミリバンド前党首が間抜けな顔をしてベーコンサンドウィッチを食べている写真を一面に大アップで掲げ、「こんな不細工な男が首相になってもいいのか」と言わんばかりのアンチ・キャンペーンを張った。これに激怒したのがコメディアンのラッセル・ブランドで、「顔の美醜をどうこうしてメディアが選挙前に世論操作しようとするようなアホな時代が来たか」と嘆き、「投票しない主義」から劇的なUターンを果たして労働党支持に回った。一部の英国の若者たちは、自分が変な顔をしてサンドウィッチを食べているセルフィー画像を続々とツイッターに投稿してミリバンドを擁護した。
が、ジェイソンにはそういう慈悲心はなかったようだ。ミリバンドもまた、まるで保守党のような政策しか打ち出さない「基幹市場」向けに売り出された(で、売れなかったが)商品だったからだ。商品だからこそリカちゃん人形のように顔をどうこうされる。
ミリバンドが不細工だといじめられた
それがどうだってんだ
あの甲高い声のクソたれが
国をズタズタにしようとしているのは見え見え
“In Quiet Streets”
エスタブリッシュメント政治に対するカウンターになる党。なんつうことを言って10年前には市民を期待させた(ブライアン・イーノまで期待させた)自由民主党のニック・クレッグが、つるっと5年前に保守党と連立を組んで政権に就き、エリーティズム全開の政治を行ってきたことへの恨みもジェイソンは忘れていない。
ニック・クレッグはもう一度チャンスが欲しいとよ
はあ?
“Face to Faces”
現在の英国で、総選挙について歌ったりするのは彼らぐらいのものだ。いつも卑語を連発し飲んだくれているようなイメージだが、彼らはいまどき珍しいほどストレートに政治的だ(最近のインタヴューを読むと、ジェイソンは選挙でみどりの党に入れたそうだが、結果を見て労働党に入れるべきだったと後悔している)。
昨年まで地方公務員だったジェイソンが、何の部署で働いていたのかわたしは最近ようやく知った。ノッティンガム・ポスト紙のインタヴューを読むと「ベネフィッツ・アドバイザー」だったそうだ。要するに、生活保護や障害者手当などを受けに来る市民の相談窓口に座っていたらしい(ちょっと職安で働いていたイアン・カーティスを思い出させる)。ということは、彼も、拙著『アナキズム・イン・ザ・UK』の後半に登場するような人びとと日々まみれながら、物凄くムカついたり嫌な気分になったりしながら働いていた筈である。5年前に保守党が緊縮政策をはじめてからは、英国の役所でも相談者を追い返す水際作戦が展開されているようなので、ジェイソンもそんなことをしていたのかもしれない。
何もせずに貰える金だぜ、兄ちゃん
ただこのフォームに記入するんだ
できなければ助けてやるから
“Face to Faces”
あの世界で働いた人間は、政治について考えてしまうだろう。それはよくわかる。
破天荒。とか、やさぐれ。とかいうより、わたしには彼らの音楽はやけに真摯に聞こえるのだが、なるほどな。と思った。
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音楽的には前作から大きく飛躍して、とかいうタイプの人びとではないので、安定のスリーフォード・サウンドだ。“Tarantula Deadly Cargo”を聴いてThe Fallの『Dragnet』とかを思い出してしまうのはやはりわたしが高齢者だからなんだろうが、アンドリュー・ファーンのトラックを聴いていると、70年代パンクのバンドがイントロのべースとドラムだけを延々と続けているというか、普通はその部分は数秒で終わってすぐにギターがぎゃーんと派手に入って来るものなのに、いつまで経ってもそれが入ってこない、みたいな、リズム隊だけがループ反復するアンチ・カタルシス感はアンチ・パンクみたいだ。
まあでも、70年代パンクなんてのも大いなるカタルシスを約束しているように見えたがほんとは全然くれなかったムーヴメントだし、プロによるロックやパンクはいまでも、そこでギターがぎゃーんと入って来て、的な古典的形態を保って「基幹市場」に売り出されているが、餅屋が焼いてない餅こそがパンクでもあったのだ。
そんなわかりきった展開でKey Marketsをなめくさるなよ。という動きがUK政治では盛り上がってるんだが、音楽はどうなるんだろうなあと思って見ている。




Traxman主宰のJuke/Footworkクルー、Tekk DJ'zに所属するオーストラリア在住のDJ。オーストラリアではGaming Cult Podcastという番組を仲間のBoomaらと配信しており、Gaming CultというレーベルとしてもDJ Deeon、DJ Clent、DJ Earl、D.J.Fulltonoらが参加したコンピレーション"Gaming Cult Trax vol.1"やBags & Works参加アーティストDJ TroubleのEP"Eye of the Circle"を発表している。また彼自身も曲を作り、その作品は前述した"Gaming Cult Trax Vol.1"やTekk DJ'zのコンピ"The Tekk DJ'z Compilation Volume 1 Part 2"で聞く事が可能。上記した作品はいずれもBandcampで購入できる。
Traxman主宰のJuke/Footworkクルー、Tekk DJ'zに所属するシカゴ在住のDJ。過去には韓国に住んでいた事もあり日本にも何度か訪れている親アジアな側面もある事から日本のJuke/Footwork愛好家達にも名が知られている。Tekk DJ'zのコンピ"The Tekk DJ'z Compilation Volume 1 Part 1"への参加の他、九州は小倉のJuke/Footwork DJ、naaaaaooooo氏監修のEP"KOKLIFE Vol.1"に参加。またSoundcloud上でも精力的に作品を発表。Bandcampにてこの夏新作EPの発表を予定している。
国内ジューク/フットワーク・シーン最初期から活動するオリジナル・ジャパニーズ・フットワーカー。その活動はアグレッシブな高速フットワーク/ダンスだけに留まらず、トラックメイク、DJもこなすオールラウンダーとして国内シーンを支え続けて来た。2014年初夏には日本トップレベルの足技を武器にフットワーク総本山シカゴやニューヨークへ渡り、現地アーティストやダンサーと交流を深め、世界最高峰のフットワーク・クルーTH王RAに電撃加入。日本のキャプテンに指名される。これまでに所属レーベルSHINKARONより「ON NUKES EP」、「ON NUKES LP」をリリースしているほか、外部レーベルのコンピレーションにトラックを複数提供。また、自身のSoundCloudでも定期的に作品を発表している。2015年4月26日に待望のデビュー・アルバム『THE FLOOR IS YOURS』をリリース。今、活躍が最も期待されるアーティスト。BTTではフットワーク・レッスンの講師も務める。
Hardfloorでシカゴハウスに目覚め、そんなサウンドをのらりくらりと追いかけつつ、Jukeレーベル「Booty Tune」のPR&ARをしております。
ジューク/フットワークDJ、トラックメイカー。SHINKARON主宰。2009年パーティー"SHINKARON"を始める。2012年より同名をレーベルとしても始動させ、自身のの他、Weezy、Boogie Mann、吉村元年やDJ Rocなど国内外様々なアーティストの作品をリリースし続けている。2014年3月に1stアルバム"LET DA MUZIK TALK"を発表した。
Mark McGuire 
