ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns Electronica Classics ──いま聴き返したいエレクトロニカ・クラシックス10枚  | Alva noto、Fennesz、Jim O'Rourke
  2. Rashad Becker - The Incident | ラシャド・ベッカー
  3. Jane Remover - Revengeseekerz | ジェーン・リムーヴァー
  4. Stereolab ——日本でもっとも誤解され続けてきたインディ・ロック・バンド、ステレオラブが15年ぶりに復活
  5. rural 2025 ──テクノ、ハウス、実験音楽を横断する野外フェスが今年も開催
  6. Columns Stereolab ステレオラブはなぜ偉大だったのか
  7. interview with aya 口のなかのミミズの意味 | 新作を発表したアヤに話を訊く
  8. Ami Taf Ra ──新たに〈Brainfeeder〉に加わったアミ・タフ・ラ、新曲はカマシ・ワシントンがプロデュース
  9. caroline ──まもなく2枚目のリリースを控えるキャロライン、ついに初来日が決定
  10. Shuta Hasunuma ──蓮沼執太フィルがブルーノート東京での2年ぶりとなるコンサートを発表
  11. interview with Nate Chinen カマシ・ワシントンの登場が歴史的な瞬間だったことは否定しようがない | 『変わりゆくものを奏でる』著者ネイト・チネン、インタヴュー(前編)
  12. Hüma Utku - Dracones | フーマ・ウツク
  13. Mark Turner - We Raise Them To Lift Their Heads | マーク・ターナー
  14. interview with Mark Pritchard トム・ヨークとの共作を完成させたマーク・プリチャードに話を聞く
  15. 別冊ele-king 渡辺信一郎のめくるめく世界
  16. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第2回 ずっと夜でいたいのに――Boiler Roomをめぐるあれこれ
  17. Columns 特集 エレクトロニカ“新”新世紀
  18. Columns ♯13:声に羽が生えたなら——ジュリー・クルーズとコクトー・ツインズ、ドリーム・ポップの故郷
  19. Columns Electronica “New” Essential Discs ──エレクトロニカの“新”新世紀、シーンを書き換える16枚の注目作  | NHK、Actress、Holly Herndon
  20. caroline - caroline | キャロライン

Home >  Reviews >  Album Reviews > Powell- 11 - 14

Powell

MinimalPost-PunkTechno

Powell

11 - 14

Diagonal/インパートメント

Amazon iTunes

野田努   Dec 15,2014 UP

 90年代のエレキングに寄稿していたイギリス人から「パウウェルを紹介しなきゃまずいだろ」と言われたので、聴いた。なるほど面白い。とくにリズムに個性がある。
 『11 - 14』は、アンダーグラウンドでの名声をたしかなものにした5枚のシングルの編集盤。2011年に自身の〈Diagonal〉からデビューした彼は、少ないリリースでリスナーの心掴み、自分のレーベルからはデス・コメット・クルー(ラメルジーが在籍したことで知られる)やラッセル・ハズウェル(メゴからの作品や秋田昌美との共作で知られる)といったアンダーグラウンドの大御所の作品まで出してファンの信頼をたしかなものにしている。〈ミュート〉傘下の〈Liberation Technologies〉(ローレル・ヘイローの新ユニットやマーク・フェルもソロを出している)からも作品を出し、〈The Death Of Rave〉からのシングルも話題になった。

 リズムが面白いといっても、パウウェルは、アフリカ直系のリズムではない。巷では、「インダストリル」という言葉で形容されているようだが、パウウェルのリズムは、ポリリズムを好むデリック・メイというよりは、スリーフォード・モッズのほうに似ている。ポストパンクめいているのだ。機能的なミニマル・テクノと違って、あるいは闇雲にドープなインダストリアルよりも明らかにパンキッシュで、たとえば6曲目の“Rider”などは現代版「デス・ディスコ」というか、PiLやフォールを、8曲目の“Grand Street”はザ・スリッツを、11曲目の“So We Went Electric”はワイヤーを、さらに骨組みだけに削ぎ落としたように思える。
 こう書いていると10年前のポストパンク・リヴァイヴァルを思い出す人もいるだろうけれど、パウウェルにはノスタルジーやディスコめいた感覚はないし、〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉ほどヴィジュアル重視でもない。アクトレスの1曲目をポストパンクに変換したというか、そういう意味で2014年は、アクトレスにはじまりアクトレスに終わったとも言えるのか……パンクが好きな人なら14曲目の“Fizz”なんか身体を動かさずにはいられないだろう。

 グローバリゼーションに牙をむく地方のちんぴらオヤジの最新パンク(しかもメンバーのひとりは元々はIDM系という考えさせられる経歴……以下、紙エレキングvol.15参照)と、ちょっとインテリジェントなロンドンのテクノ・ミュージックと同じ扱いにするには無理があるのかもしれないけれど、しかし、リズム感というのは本人の自覚が無くても何かを物語っていることが多い。
 

野田努