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Sleaford Mods

Sleaford Mods

Divide And Exit

A Harbinger Sound

Tower HMV Amazon

久保正樹 Aug 05,2014 UP

 スリーフォード・モッズのサウンドとヴォーカルを形容するたとえにスーサイド、ザ・フォール、ジョン・クーパー・クラーク、ジョン・ライドン、ポール・ウェラー、ザ・ストリーツなどが挙げられることが多いが、ここにアナーコ・パンクの雄=クラスのヴォーカリスト、スティーヴ・イグノラントも加えたい。そして、金太郎飴状態の簡素なリズムとベースライン、味つけ程度のエレクトロニクスが(逆に)暴力的なまでの空虚さを伴ってスタコラひた走るさまは、その方法論のみを拡大解釈し、パブで飲んだくれて四方八方にくだを巻く、暴徒化したヤング・マーブル・ジャイアンツと言ってもいいかもしれない。そう、つまり、ひどく悪意があり、ひどく滑稽なのである(彼らの直近2作品が、ザ・ニュー・ブロッケーダーズ、スメグマ、ラムレーらをリリースするUKの〈ハービンジャー・サウンド〉からリリースされていることからも、その特異さを察してもらえるだろう)。さらにつけ加えると、性急に言葉を詰めこみ、ツバを飛ばしまくりながら攻撃的にがなり立てるヴォーカルなんて(アルバム中の1/3は「ファック!」や「シット!」やらの悪態で満たされている)喉にタンがからまろうがおかまいなし、突然「おいっ! ダンカンっ!」とか叫びはじめても違和感がなかったりして、だんだんそのくぐもった声のアジテーションがビートたけしに聞こえてきたりするから笑える。

 ふてぶてしい反骨精神とその語感だけでやけに士気を煽る英国なまりを武器に、とことん鋭利なぼやきを担当するジェイソン・ウィリアムソン(ヴォーカル/ラップ/スポークンワード)。そして、機材(主にパソコン)の再生ボタンを押し、その後はアルコール片手にふらふらと所在なさげに踊っているだけのアンドリュー・ファーン(ビート/ベースライン)によるこのスリーフォード・モッズ。2006年よりノッティンガムを拠点に活動を始め、じつは最初のリリースから7年は経っているというからなかなかのベテランである。そんな地に足が着いているはずのおっさん2人が打ち鳴らすローファイ・エレクトロ・ヒップホップ・パンク。40越えたおっさん2人が、考える前にやってしまうささくれ立ったパンクの刹那と、永遠に完成形に到達しないまま進行するポストパンクの焦燥を携え、ベッドルームからストリートに飛び出して、酔いどれて、おぼつかない足取りながらも無骨に、そして正確に、クソまみれの日常に対してアイロニーを塗りこめたカウンターパンチを打ち込む。こいつがじわじわ効いてじつに小気味よい。

 彼らの単純明快にして誰にもマネできない「ミニマルぼやき芸」が確立した前作『オースタリティ・ドッグス』から1年。せっぱ詰まって袋小路から抜け出せずにいる「壊れた英国」において、市井の力強い支持だけでなく、いまやお高くとまったお偉方連中のスノビズムまでもくすぐる存在となりつつあるスリーフォード・モッズ(しかし、日本での反応はいまいち。これはザ・フォールの英国流皮肉と諧謔が日本では理解されにくく、知名度のわりにそれほど聴かれていない状況と似ているのかも)。だけど、彼らは攻撃の手をゆるめない。本作1曲め“エア・コンディショニング”〜“”タイド・アップ・イン・ノッツ”では過剰にディストートされて振りきれたベースラインと、マーク・E・スミスからインテリジェンスを抜いたようなジェイソンのぼやきが、いつになく力強い煽動力をもってあたりを挑発する。そして、スポークン・ワードのキレ味もネチこい巻き舌ももちろん良好なのだが、アンドリューが仕込んだトラックの勢いと厚み、立体感が幾分増していて(ミニマムなベースラインがマキシマムにかっこいい!)、これまで少し気になっていたサウンドののっぺり感もまったくなし。もうこれは愉快! 痛快! イントロでゲップをかます“ア・リトル・ディティ”、世の中すべてをおちょくるように、ビートの上に「バウ! ワウ!」とコーギーの吠え声をかぶせる“コーギー”、まるでミック・ジョーンズのギターが入っていないザ・クラッシュのような“ティスワズ”、(サー!)ポール・スミスを揶揄する“スミシー”、怒りのテンションが頂点に達する“ミドル・メン”など、手法は極めてシンプルながらもヴァリエーションに富んだミニマル・パンクが連続し、その畳み掛け、その心意気にイントロだけでふつふつと闘争心を駆り立てられる。

 かつて、1977年に「英国の見る夢に/未来なんてない」と絶叫したジョン・ライドン。しかし、26年後、MOSTを率いるPhew(彼女はオリジナル・パンクをロンドンでリアルタイムに体験している)が“パンク魂2003”のなかで叫んだように「NO FUTUREなんて嘘っぱち/未来はいやでも必ずやってくる」のだ。この突き放すのではなく、突きつけられる未来(現実)の重たさよ……。でも、しかし、末期症状を迎えた「英国の夢」の成れの果てに、インダストリアルでもダーク・アンビエントでもなく、かろうじでロックのフォーマットを維持した生活の臭いがするエレクトロ・パンクが現れ、ベッドルームとストリートの垣根を越えてどなり散らすさまに希望を感じずにはいられない。
 この偉大なるゴミ溜めモッズ野郎たちにミッドライフ・クライシス(中年の危機)なんて関係ない。この怒れる中年たちは、呼吸のタイミングを忘れるほどに全速力で造反し、怒りをこめてふり返る。過去のスローガンなんてもういらない。「Only trust over 40」——わたしは40歳以上だけを信じる!

久保正樹