「Low」と一致するもの

Slackk - ele-king

 ヴィジョニスやマーロなど、11月はグライム・シーンの最前線で活躍するアーティストたちの来日が決定しており、スラックの名前もそこに堂々と連なっている。彼は〈ローカル・アクション〉や〈アンノウン・トゥ・ジ・アンノウン〉といったレーベルからのリリースや、ロゴスらとともに開催するパーティ〈ボックスド〉を通し、グライムの可能性を開拓する第一人者だ。ジェイムス・ブレイクからニコラス・ジャーにいたるまで、幅広い音を提供し続ける老舗レーベル〈R&S〉からも、スラックはEP「ブラックワーズ・ライト」(2015)をリリースした。今回、その凶暴なビートと端麗なメロディが混在するサウンドを携え、スラックが初めて日本の現場へやってくる。
 来日公演は11月12日に大阪、翌日13日に東京で開催。大阪公演にはCE$や行松陽介ら関西シーンの立役者たちが出演し、フォトグラファーの横山純によるUKにおけるグライム・シーンの現在をおさめた写真展も行われる予定だ。東京公演には、1-ドリンク、DXやポータルといった多彩なプレイヤーたちが、「グライム」や「ベース」をキーワードに集う。グライム・ヘッズだけではなく、新しい音に飢えている方も是非お近くの現場へ。

Slackk - Bells - R&S Records - 2015

Slackk(Boxed / R&S Records/ Local Action Records)


(Photo credit: Jun Yokoyama)

 インスト・グライムのシーンにおいて指標となる存在、Slackk。彼が創設したロンドンにおける重要なクラブ・イベントであるBoxedでは、いままさに頭角を現さんとするプロデューサーと、時代の数歩先をいく音を探求するDJがステージに立つ。そこでの活動や、週一でレギュラーを務めるリンスFMでの彼のDJセットは、まさに次なるシーンの最前線において鳴らされる音の縮図だ。
 スラックは自身の楽曲においても、細分化するグライムの核心を突いており、〈Local Action〉、〈UTTU〉、〈Numbers〉そして〈Big Dada〉といったレーベルからリリースを重ねている。それらの作品で方々から賞賛の言葉を浴びた後、2015年には伝説的なレーベル〈R&S〉と契約し、EP「Blackwards Light」を発表した。


【大阪公演】
Hillraiser
日時:2015年11月12月 19:00開演
会場:Socore Factory
料金:2000円
DJ:
Slackk
CE$
行松陽介
satinko
ECIV_TAKIZUMI
Photo Exhibition:Jun Yokoyama

【東京公演】
T.R Radio presents Slackk From London at Forestlimit
日時:2015年11月13月 21:00開演
会場:幡ヶ谷Forestlimit
料金:2000円
DJ:
Slackk
Dx (Soi)
1-DRINK
BRF
Zodiak (MGMD)
PortaL (Soundgram / PLLEX)
NODA
Zato
Sakana
MC:Dekishi

Nickelus F & Shawn Kemp - ele-king

 活動停止後も過去音源の再発は一時間以内に完売、恐ろしい価格にてイーベイで取引され、続々と配信される未発表音源に誰もが狂喜乱舞するというカルト的人気を誇るリル・アグリー・メーン(Lil Ugly Mane)。DIYパンク/ノイズ的出自からのヒップホップ・ドリームという希有なサクセス・ストーリーはついにクライマックスを迎える!

 スイート・ピーティーことニッケラス・F(Nickelus F)は2000年頃、当時若干17歳でMCバトルの舞台にデビューを飾った神童である。04年までニック・フューリーとして活動し、数々の素晴らしいミックス・テープを発表している。中でも03年に発表した『ピストルズ・アンド・テックス』は、リル・アグリー・メーンことシャウン・ケンプ(Shawn Kemp)が友人のヴァンの中でメガ・ハイになりながらエンドレスで聴いていたと自らの思い入れを語る名作である。ニッケラス・Fとして改名後、米国のTV番組『ブラック・エンターテイメント・テレヴィジョン・106・パーク』によるフリースタイル・フライデイ内のバトルで7週連続チャンピオンを勝ち取り、07年度に殿堂入りを果たした。ドレイクとのコラボレーションもまた彼のメジャー・ラップ界における地位を後押ししたと言えよう。

 自身のラップを含む作品名義であるアグリー・メーンを凍結したトラヴィス・ミラーは、トラック・メーカーとしての活動名義「シャウン・ケンプ」がアクティヴであることを本作で証明した。いや、ひょっとしたらヴァージニア州リッチモンドという地元を共有するトラック・メーカー/ラッパーとして、多大なリスペクトに突き動かされたのかもしれない。本作、『トリック・ダイス』は正確にはアルバムとして制作されたものではない、両者の交流の中で制作された制作された個々のトラック、あるものはボツに、またはボツになったものを掘り起こし、再編集/再構築をおこなったコンピレーションに近いものである。トラヴィス自身、これまでない程にプロデューサー業に徹したと語るだけあり、本作は秀逸なトラックに満ちている。かつてないほどシンプルかつストレートなトラックへ落とし込むことでニックの豊潤なフロウを活かし、シャウン・ケンプの得意とするホラー・ムービー調のシネマティックなフックも外さない。同時期に発表されたニックの最新アルバム『トリフリン(Triflin')』(こちらも最高なのでぜひ)の超絶メロウかつチルい作風とは完全に異なる角度からニックの才能を最大限に引き出していると言えよう。

 ラストのトラックではトラヴィスもひさびさにラップを披露、アグリー・メーンの完全復活も近いことを示唆しているのか?

 ちなみにニッケラスFの最新アルバム『トリフリン』はスリムKによる全曲チョップド・ノット・スロップド・ヴァージョンがフリー・ダウンロードで公開されている。あぁ〜時が止まるくらいに最高だ……

https://slimkslowdown.com/nickelus-f-triflin-chopped-not-slopped/

JAH SHAKA JAPAN TOUR 2015 - ele-king

 昨年ジャー・シャカが東京でプレイしたとき、日本には〈リヴィティ・サウンド〉の3人、マムダンス、DJフェット・バーガーらがいた。それぞれ現代のテクノ、グライム、ディスコ・ダブを語る上で外すことはできないプレイヤーたちだ。そこには重低音という共通点があり、そのタイム・ラインの上流にはジャー・シャカがいる。ステージ上で踊るシャカを見ながら、音だけはなく、その歴史の広がりにも圧倒されてしまった。
 今回の来日でジャー・シャカは6都市を巡る。東京公演は11月2日に開催。なんとオープニングからラストまで彼が巨大なサウンド・システムの前に立つ。
そのセレクトを通して、日本のどこかでダブの歩んできた道を感じてみたい。ちなみに、王様は30年前、こんな姿をしていた。



King of Dub
JAH SHAKA
DUB SOUND SYSTEM SESSIONS JAPAN TOUR 2015

- An all night session thru the inspiration of H.I.M.HAILE SELASSIE I -

東京公演

日時:2015.11.2 (MON/Before Holiday) open/start: 23:30
料金:adv.3300yen door 3800yen
会場:代官山UNIT
出演:
JAH SHAKA
JAH IRATION SOUND SYSTEM + JAH RISING SOUND SYSTEM

Saloon:
E-JIMA(DISC SHOP ZERO)
RIBE WORKS(ORANGE STREET)
YO-JI (UP DOWN RECORDS/MILITANT ITES),
JUNGLE ROCK
KENJI HASEGAWA
info.:
UNIT
03-5459-8630
https://www.unit-tokyo.com

Ticket Outlets:NOW ON SALE
PIA (0570-02-9999/P-code:277-802)、LAWSON (L-code:73499)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/https://www.clubberia.com/store/

渋谷/TECHNIQUE (5458-4143)、disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、Coco-isle (3770-1909)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
代官山/UNIT (5459-8630)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、disk union CLUB MUSIC SHOP (5738-2971)
新宿/Dub Store Record Mart (3364-5251)、ORANGE STREET (3365-2027)、disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、Reggae Shop NAT (5337-7558)
三軒茶屋/ふろむ・あーす & カフェ・オハナ(5433-8787)
吉祥寺/disk union (0422-20-8062)
町田/UP DOWN RECORDS (042-725-8325)
横浜/北中45レコード(045-324-3452)
Jar-Beat Record (https://www.jar-beat.com/)

JAH SHAKA JAPAN TOUR 2015
10.31 (土) 沖縄 残波 JAM-----https://zanpajam.org/
11.02 (月・祝前日) 東京 UNIT-----https://www.unit-tokyo.com
11.03 (火・祝日) 横浜 ex Bodega-----https://www.facebook.com/events/1223377354354382/
11.06 (金) 大阪 ROCKETS---https://nambarockets.com/
11.07 (土) 名古屋 X-HALL -----https://x-hall.jp/
11.08(日)福岡 MUSK-----https://www.facebook.com/CLUBMUSK

Total info: dbs-tokyo.com

(出演者)

JAH SHAKA
ジャマイカに生まれ、8才で両親とUKに移住。'60年代後半、ラスタファリのスピリチュアルとマーチン・ルーサー・キング、アンジェラ・ディヴィス等、米国の公民権運動のコンシャスに影響を受け、サウンド・システムを開始、各地を巡回する。ズールー王、シャカの名を冠し独自のサウンド・システムを創造、'70年代後半にはCOXSON、FATMANと共にUKの3大サウンド・システムとなる。'80年に自己のジャー・シャカ・レーベルを設立以来『COMMANDMENTS OF DUB』シリーズを始め、数多くのダブ/ルーツ・レゲエ作品を発表、超越的なスタジオ・ワークを継続する。
30年以上の歴史に培われた独自のサウンドシステムは、大音響で胸を直撃する重低音と聴覚を刺激する高音、更にはサイレンやシンドラムを駆使した音の洪水 !! スピリチュアルな儀式とでも呼ぶべきジャー・シャカ・サウンドシステムは生きる伝説となり、あらゆる音楽ファンからワールドワイドに、熱狂的支持を集めている。heavyweight、dubwise、 steppersなシャカ・サウンドのソースはエクスクルーシヴなダブ・プレート。セレクター/DJ/MC等、サウンド・システムが分業化する中、シャカはオールマイティーに、ひたすら孤高を貫いている。


シンガーとしてのホルターを観てみたい! - ele-king

 クラシカルな音楽的素養をバックボーンとして、何にとらわれることもなく──ある意味では“わがまま”なまでの自由さで──自らの表現のフォームを築いてきたプロデューサー、ジュリア・ホルター。アンダーグラウンドの知性派レーベル〈リーヴィング〉等からのリリースを通じてシーンに新たな女流の系譜をつけ加えた存在のひとりである。

 今年リリースされた『ハヴ・ユー・イン・マイ・ワイルダーネス(Have You In My Wilderness)』は、〈ドミノ〉と契約してシンガーとしてのアイデンティティを確立したアルバム。ある意味ではキャリアにおいてもっともシンプルな作品だが、チェンバー・ポップの固定概念を崩す発想が随所に光っている。

 さて、そのジュリア・ホルターの初来日公演が決定した! ジュリアナ・バーウィックの来日に心躍らせたのも昨日のことのようだが、ようやくお目にかかれるホルターがどんなセットを見せてくれるのか。各都市の共演者たちにも注目したい。

■ flau presents: Julia Holter Japan Tour 2015

サイト:
https://www.flau.jp/events/juliaholter2015.html

ツアー詳細:

11/24 (火) 京都
@ METRO
open/start 18:30/ 19:30
adv./door 4,000 / 4,500yen(+1D)
共演:Cuushe
チケット取扱:
チケットぴあ (Pコード:272-626) TEL0570-02-9999
ローソンチケット (Lコード:55399)
e+ (https://eplus.jp/) (PC・携帯 共通)
メール予約・お問い合わせ:event@flau.jp

11/25 (水) 大阪
@ Conpass
open 18:30 / start 19:30
adv. 4,000 / door 4,500yen(+1D)
共演:Madegg、Noah
チケット取り扱い:
チケットぴあ (Pコード:272-634) TEL:0570-02-9999
ローソンチケット (Lコード:55294)
e+(イープラス) (PC・携帯 共通)
メール予約・お問い合わせ:event@flau.jp

11/26 (木) 東京
@ WWW
open/start 18:30 / 19:30
adv./door 4,500 / 5,000yen (+1D)
共演:Cuushe、Rayons with Predawn
PA:福岡功訓(Fly sound)
SHOP: LINUS RECORDS
チケット取り扱い:
チケットぴあ (Pコード:272-562) TEL:0570-02-9999
ローソンチケット (Lコード:70466)
e+(イープラス) (PC・携帯 共通)
お問い合わせ:03-5458-7685(WWW)

■Julia Holter

LA出身の女性シンガーソングライター/マルチ・インストゥルメンタリスト。アヴァンギャルド、ベッドルーム・ポップ、オペラ、クラシックなど様々な音楽的影響を融合させ、新しい感性でポップミュージックを更新する女性アーティスト、真のDIYコンポーザー。数々の限定リリースと共に「Tragedy」「Ecstasis」の 傑作アルバム2枚を発表。Dominoに移籍後、初のスタジオアルバムとなる『Loud City Song』をリリース。Karen DaltonのトリビュートアルバムやLinda Perhacs44年ぶりの新作への参加を経て、今年9月に待望のニューアルバム『Have You in My Wilderness』をリリース。昨年グラミー賞を受賞したプロデューサーCole Greif-Neilと共に地元ロサンゼルスでレコーディングされたJulia Holter史上最もインティメイトな傑作アルバムが完成した。

'Feel You'

 なんといってもバカバカしい。そして謎の高クオリティ。何の見返りもなしに、いまの日本のどこにこんなことのできる余裕があろうというのか……? いや、敬意を込めて。

 1985年に第1作めが公開され、一大ブームを巻き起こした傑作SF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ。第2作となる『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』では、主人公マーティが30年後の未来──2015年10月21日を訪れる。そう、日本時間にして今日この日である。

 国内でも本シリーズに登場する車型のタイムマシン「デロリアン」の再現イベントなどが大きな話題となっているが、その『PART2』劇中にて“2015年”に上映されている『ジョーズ19』(歴史は異なる道をたどったが──)と、実際に存在している『ジョーズ4 復讐編』の間に存在するはずの『ジョーズ5~18』を勝手に製作するという、ちょっとどうでもいい作業にかまけている人々もいるようだ。

『JAWS 5 :NEW HOPE』~『JAWS 18:WORLD WAR JAWS』
アーカイヴ
https://jaws-complete.tumblr.com/



 禁断の多数決……どこかできいたことのある名前である。

 ご存知、スティーヴン・スピルバーグ監督の大ヒット映画シリーズ『ジョーズ』。平和なビーチを襲うホオジロザメの恐怖をサスペンス的に描くスリラー映画の傑作だが、禁断の多数決によって撮られた、架空の欠番を埋める第1作めの名は『JAWS 5 :NEW HOPE』。カッコ笑と付け加えたい出落ちタイトルだが、笑えないほどよく作られた笑える作品で、まずは発句として、サメによる凄惨な襲撃事件とその復讐劇というモチーフがなぞられている。
 そうした笑いやお色気、また、うす柔らかいサイケデリアの中に現実世界のチープさないしはフェイクさをぺらりと露出させるこのバンドの手つきそのままに描き出された、奇妙なパロディだ。『JAWS 9 :SUPER DUPER』などフェイクドキュメンタリーとバラエティ番組を適当に組み合わせたような作品も、『ジョーズ』その後のシュミレーションとして穿っている。

 そして音楽ももちろんすべて禁断の多数決。シンセポップの甘美なリヴァイヴァル期は過ぎ去ったが、なるほどモードとしてではなく、彼らは本質的にシンセポップが好きなのだということが了解できる。ただチープなのでも懐古的なのでもない、フェティッシュに選択されたその音色が意外に沁みる。

 しかし、なんというか、これをつくってどうするんですか? と優秀な就活生諸氏などはツッコむことだろう。売り物でも、なにかのプロモーションでも、また、この企画自体をとくに宣伝しようという感じでもない。これだけの気合いが入っていながら、ソロバンの音がきこえてこない。つまりは損得や「いいね!」欲しさなどではないのだ。彼らはアーティスト。本気で遊ぶことのできる人々である。大人が、いい歳をして、なぜに──と頭の片隅では思いながらも、実験もハッタリもある、作品としての居ずまいをキリっと放ったこの楽しい「駄菓子屋映画」、そして彼らのどこかしら突き抜けたハローならぬグッバイワーク・メンタリティに一票を投じたい。

 さて、そもそもの『BTTF』を忘れかけてしまいそうだが、2015年を祝い呪うこの無償の作品群/作品愛にリスペクトを表しつつ、気まぐれに再生してみるとしよう。いまがご帰宅途中ならば、乗り換えまでに1本観られるかもしれません。

追記:
禁断の多数決は、もともとシアトリカルなライヴを行ったり映画をアルバムのモチーフにしたりと、映像表現へのモチヴェーションを強く抱いたバンドだったが、最近は本当にヴィジュアル制作に熱を傾けているようだ。中心メンバーのひとりであるほうのきかずなりも、近々アンディ・ウォーホルの『Kiss』にインスパイアされたというエロティックで幻想的なアートフィルムをリリース予定で(https://crbn.jp/)、音楽はもちろん禁断の多数決。サウンドトラックへと関心が向いているのも興味深い。そちらは80分に及ぶ「本腰の」作品であるようで、扇情的なトレーラーにびびりながらも期待される。

Kiss me, Kiss me, Kiss me
監督:ほうのきかずなり
出演:北見えり、みほの、湊莉久、水野しず、御茶海マミ
音楽:禁断の多数決
挿入歌:hakobune、Masaki Batoh、Rippei
カバーイラスト:大島智子
デコレーション:OLEO

詳細 https://crbn.jp/

禁断の多数決『Kiss feat.あの (ゆるめるモ!)』MV


予告編『Kiss me, Kiss me, Kiss me』



休まず動悸する音と映像 - ele-king

 エレクトロニカ、IDM、ダブステップ以降のクラブ・ミュージックの交錯点において確実に新たな流れを予感させるアーティストの一人、アルビノ・サウンド。まさにいま世に問われようとしているデビュー・アルバム『Cloud Sports』から、新たなミュージック・ヴィデオが公開された。

Albino Sound - Restless

 廃墟の壁や天井のカットアップにはじまり、塀を越える少年が映し出される。彼が歩きはじめてから駆け出すまでの奇妙な緊迫感は、やがてさまざまな建造物の映写に重なりながら増幅し、主体の出発/前進/衝動もしくは脱出/逃亡/混乱をオブセッシヴに描き出す。モノクロームなサウンドと乾いたビートは、いつしか映像の心拍数にシンクロして、早鐘を打つようにその動悸を高めていく──気鋭の若手ディレクター石田悠介が監督する、日本人離れしたMVセンスも楽しみたい。

 また、来月にはリリース・パーティーも予定されているようだ。あわせてチェックされたし!

電子音楽界の新たな才能、デビューアルバム『Cloud Sports』が好評のAlbino Sound<アルビノ・サウンド>が新MV「Restless」を公開した。映像は短編映画「Holy Disaster」の監督:石田悠介がドイツのベルリンで撮影した映像で作られている。

MVはアルバムのリード曲であり、都会の夜に合うアーバンな世界を持ちつつも、チル効果もあり、反復するビートが非現実的な中毒性を持った楽曲となっている。

またAlbino Soundはデビューアルバム『Cloud Sports』のリリースパーティーを11/19(木)中目黒solfaで開催する。詳細は後日公開予定。

■Albino Soundプロフィール
Albino Soundはプロデューサー兼マルチ・プレイヤー梅谷裕貴(ウメタニ・ヒロタカ)のソロ名義。今までに世界の第一線で活躍するアーティストをその卒業生に名を連ねるレッドブル・ミュージック・アカデミーが世界中から集まった応募者たちの中から選び抜いた日本人アーティスト。その活動は多岐にわたり、TAICO CLUBやRAINBOW DISCO CLUBへの出演の他、ウェブサイトTheDayMag.jp の制作した短編ドキュメンタリー・シリーズのサウンドトラックなどの提供を行っている。デビューアルバム『Cloud Sports』を10月7日にリリース、ミックスは日本を代表するエレクトロニカ/テクノ・アーティストAOKI takamasaが担当。マスタリングは中村宗一郎、MVの映像は短編映画「Holy Disaster」で知られる気鋭の若手ディレクター石田悠介が監督している。

■イヴェント
Albino Sound 『Cloud Sports』 リリースパーティー
日程:11月19日(木)
会場:中目黒solfa
詳細:後日公開

■リリース情報

Albino Sound / Cloud Sports
品番: PCD-20362
発売日:2015年10月7日
価格:¥2,000+税
発売日: 10月7日

<Track list>
01 Airports 1
02 Cathedral
03 Culture,Over again
04 library
05 Restless
06 Jump Over
07 Escape
08 Airports 2


HOUSE OF LIQUID - ele-king

 今週末金曜日、ハウス・ミュージックの魅力をとことんお伝えする、リキッドルーム主催の「ハウス・オブ・リキッド」。今回の出演者は、このパーティのレジデンツ、ムードマン、そしてフランスからはDJディープ(硬派とはこの人のことを言う)、そして我らが大先輩、高橋透──その復活の夜でもある。
 2015年といえば、キミはジェイミーXXやレヴォン・ヴィンセントに夢中になったかもしれない。だとしたら、自分の好奇心を信じて、もう一歩、階段を下りてみるのもいいだろう。このジャンルには、まだこんなにも面白いところがあったのかと、嬉しい発見が待っている。そして、ト・オ・ル……待ってました~。という黄色い歓声に包まれることだろう。

10月23日@恵比寿リキッドルーム
OPEN / 23:00~

ADV / DOOR
adv. 2,000yen / door 3,000yen(with flyer/HOUSE OF LIQUID MEMBERS/under 25:2,500yen)
LINE UP
feat.
DJ DEEP(Deeply Rooted)
TOHRU TAKAHASHI(GODFATHER)
MOODMAN(HOUSE OF LIQUID/GODFATHER/SLOWMOTION)
TICKET
チケットぴあ [277-115] ローソンチケット [76899] e+ LIQUIDROOM DISK UNIOIN(SHIBUYA CLUB MUSIC SHOP/SHINJUKU CLUB MUSIC SHOP/SHIMOKITAZAWA CLUB MUSIC SHOP/KICHIJOJI)、JET SET TOKYO、Lighthouse Records、LOS APSON?、TECHNIQUE、clubberia、RA
INFO
HOUSE OF LIQUID https://soundcloud.com/house-of-liquid https://www.mixcloud.com/house-of-liquid
LIQUIDROOM 03-5464-0800


アルカ(Arca)新作は11月! - ele-king

 アルカ。
 自主リリースのミックステープ『&&&&&』が話題となって、あれよという間にほぼ無名ながらカニエ・ウェストの『イールズ』に5曲参加、立て続けにFKAツイッグスのプロデューサーとしても『EP2』『LP1』とメモリアルな作品を残し、契約争奪戦の上で〈ミュート〉とのサインにいたり、傑作『ゼン』をリリース、今年はビョークのアルバム『ヴァルニキュラ』を共同プロデュースした、あのアルカだ。

 彼(女)の新作リリースが決定した。

 ポスト・インターネットを象徴し、アンダーグラウンドが時代とメジャーを動かすことを鮮やかに示してみせた彼(女)が、次のステージで表現するものは何か。自らのルーツや環境、社会的なコンフリクトと向かい合った上で踏み出される、その第2歩めに期待が高まる。

 「『ミュータント』は、デビュー・アルバム『ゼン』が内省的な作品だったのに対して、外に開かれ、そしてより大胆な作品となった」 プレス・リリースより

 制作上のパートナーとして、ヴィジュアル面を全面的に手掛ける鬼才ジェシー・カンダも、もちろん今回も切れっきれである。まずは新作ヴィジュアルと最新アー写、そして新作MVをお届けしよう。

■新着ミュージック・ヴィデオ「EN」

 我々の前に現れた突然変異(ミュータント)。デビュー作をはるかに圧倒する作品完成!
 昨年リリースされたデビュー・アルバム『ゼン』の尖鋭性、ビョーク、カニエ・ウェストやFKAツイッグスのプロデュース、奇妙で美しいヴィジュアル・アートとの融合作品…全世界に衝撃を与えたこれらの作品はアルカの才能のほんの序章だった。
 デビュー・アルバムから1年、アルカは、ミュータント(突然変異)というタイトルのセカンド・アルバムを早くも完成させた。まさに溢れ出るほどの才能が一気に解放されたような作品だ。

 デビュー作で末恐ろしい24歳と評され、時代の寵児となったアルカ、その今後の作品への可能性は、どきどきさせるようなものだった。そして本作はその通りの作品となった。
 デビュー作を下敷きとしながら、音楽的豊潤さ、表現力、全てにおいて圧倒している。そして彼はこれだけのことをやりながらも、まだ25歳ということも末恐ろしい。今作は全てにおいてレッド・ゾーンに突っ込んだようだ。

 発売は11月18日。

■アルカ / ミュータント
発売日:11月18日 日本先行発売 (海外:11/20)
品番:TRCP-190
JAN:4571260584884
定価:スペシャル・プライス2,100円(税抜)
ボーナス・トラック収録
解説: 佐々木渉(クリプトン)

■アルカ
アルカ(ARCA)ことアレハンドロ・ゲルシ(Alejandro Ghersi)はベネズエラ出身の24歳。現在はロンドン在住。2012年にNYのレーベルUNOよりリリースされた『Baron Libre』,『Stretch 1』と『Stretch 2』のEP三部作、2013年に自主リリースされたミックステープ『&&&&&』は、世界中で話題となる。2013年、カニエ・ウェストの『イールズ』に5曲参加(プロデュース:4曲/ プログラミング:1曲)。またアルカのヴィジュアル面は全てヴィジュアル・コラボレーターのジェシー・カンダによるもので、2013年、MoMA現代美術館でのアルカの『&&&&&』を映像化した作品上映は大きな話題を呼んだ。FKAツイッグスのプロデューサーとしても名高く、『EP2』(2013年)、デビュー・アルバム『LP1』(2014年)をプロデュース、またそのヴィジュアルをジェシー・カンダが担当した。2014年、契約争奪戦の上MUTEと契約し、10月デビュー・アルバム『ゼン』 (“Xen”)をリリース。ビョークのアルバム『Vulnicura』(2015年)は、ビョークと共同プロデュースを行い、その後ワールド・ツアーのメンバーとして参加した。2015年11月、2ndアルバム『ミュータント』リリース。

■ジェシー・カンダ
アルカのヴィジュアル・コラボレーター。アルカが14歳の時、とあるアーティストのオンライン・コミュニティーで知り合って以来の仲。「ジェシーと僕は知合ってからもう相当長いからね」とアルカが説明する。「何か疑問点があったとして、僕が音楽面でその疑問点をそのままにしてると、ジェシーがビジュアルでその答えを出してくるんだよね。ジェシーがそのままその疑問に映像で答えを出してなかった時は、それは音楽で答えを出すべきだ、という事だと思うんだ」。本作のアートワークもジェシー・カンダが担当。その加工されたヴィジュアルに関して「それは作品自身の内部で起こってる事を反映したもの」by ジェシー・カンダ。
https://www.jessekanda.com/

■ディスコグラフィー
1st AL『ゼン』(Xen) (2014年) TRCP-178 (TRCP-178X: HQCD仕様として2015年3月に再発)
2nd AL 『ミュータント』(Mutant) (2015年) TRCP-190

■デビュー・アルバム『ゼン』まとめ。
[Visual] https://bit.ly/1UUmQTd
[特集記事] https://bit.ly/1Dzi7iw

■リンク先
https://www.arca1000000.com
https://soundcloud.com/arca1000000
https://www.facebook.com/arca1000000
https://twitter.com/arca1000000
https://instagram.com/arca1000000
https://mute.com
https://trafficjpn.com

■公開中のミュージック・ヴィデオ「Soichiro」 *「Soichiro」とはジェシー・カンダのミドル・ネーム


第34回:This Is England 2015 - ele-king

 『The Stone Roses:Made of Stone』日本公開用パンフのためにシェーン・メドウズにインタヴューしたとき、「わたしは『This Is England』シリーズの大ファンです。『This Is England 90』はどうなってるんですか」などという素人くさい質問をぶつけてしまったことが含羞のトラウマとなり、『This Is England 90』には複雑な想いがあった。が、あれから早くも2年の月日が流れ、わたしは自宅の居間でイカの燻製を食いながら当該作を見ていた。
(このシリーズの歴史を説明するとそれだけで連載原稿が終わってしまうので、ここではすっ飛ばす。知りたい人は拙著『アナキズム・イン・ザ・UK』のP136からP145とか、あるいはネット検索すれば日本語でもそれなりの量の情報は手に入るし、こういう映像もある)


             *******


 『This Is England 90』は、チャンネル4で4回終了(最終回だけ長編の1時間半)のドラマとして放送された。ストーリー展開は『This Is England 86』に似ている。サブカル色濃厚、時代ジョーク満載の1回目で視聴者を大笑いさせつつノスタルジックな気持ちにさせ、2回目までそれを引っ張り、3回目でいきなりダークな方向へ走りはじめて、4回目はずっしりへヴィ。という、メドウズ進行の王道だ。

 わたしが前述の質問をしたとき、メドウズは「90年は俺のストーン・ローゼスへの愛が最高潮に達していた年だったから、そうしたことが何らかの形で『This Is England 90』にも出て来る」
 と答えたが、たしかにローゼスは主人公たちの物語の壁紙として梶井基次郎の檸檬のように黄色いアシッドな光を放っている。(ウディが『Fool’s Gold』のイントロを歌うシーンは今シリーズのハイライトだ)


 『This Is England 88』の最後で復縁したウディとロルの間には2人目の子供が生まれているし(1人目はウディの子供ではなく、ミルキーの子供だった)、ロルや妹のケリー、友人のトレヴは給食のおばちゃんとして働いていて、専業主夫になったウディやミルキー、カレッジをやめたショーンらのために子供たちの給食を職場からくすねているという、相変わらず底辺っぷりの著しい元ギャングたちの姿で本シリーズははじまる。

 1990年はマーガレット・サッチャーが首相官邸を去った年だ。
 それはわたしがけしからんフーテンの東洋人の姉ちゃんとしてロンドンで遊んでいた年でもあり、周囲にいた(やはりけしからん)若者たちが、サッチャーが官邸を去る日の模様をテレビ中継で眺めながら、「私はこの官邸に入った時よりもこの国を明らかに良い状態にして去ることができることに大きな喜びを感じています」というスピーチを聞いて、「私はこの国を無職のアル中とジャンキーの国にして去ることができることに大きな喜びを感じています。おほほほほほほ」とおちょくっていたことをよく覚えているので、メドウズがあの時のサッチャーの映像を『This Is England 90』の冒頭に持ってきた理由はよくわかる。

 「サッチャーを倒せ」「サッチャーはやめろ」と日本の現在の首相ばりに嫌われていたサッチャーは90年に退任した。ほなら労働者階級の若者たちも幸福になればいいじゃないか。が、彼らは全然ハッピーにならない。むしろ、不幸はより深く、ダークに進行して行く。
 ロルの妹のケリーは、ドラッグに嵌って野外パーティで輪姦される。さらに父親を殺したのは本当は姉のロルだったと知って家出し、ヘロインに手を出してジャンキー男たちのドラッグ窟に寝泊まりするようになる。
 一方、ロルの父親殺害の罪を被って刑務所に入っていたコンボの出所が間近に迫り、ロルとウディが彼の身柄を引き取るつもりだと知って、ミルキーは激怒する。黒人の彼には右翼思想に走っていた白人のコンボに暴行されて死にかけた過去があるからだ。「レイシストと俺の黒人の娘を一緒に暮らさせるわけにはいかない」と憤然と言うミルキーに、「お前だって俺の最愛の女を妊娠させたじゃないか。出産に立ち会ってたらお前の(黒人の)赤ん坊が出て来たんだぞ。それでも俺はお前を許したじゃないか。コンボを許せ」とウディは言うが、ミルキーの気持ちは変わらない。
 コンボは刑務所でキリスト教の信仰に目覚め、改心して子羊のような人間に生まれ変わっている。しかしミルキーは出所してきた彼に大変なことをしてしまう。
 というストーリーの本作は、1作目の映画版に話が回帰する形で終了する。
 一方でロルとウディがついに結婚するというおめでたい大団円もあり、ミルキーがコンボに復讐するというのも大団円っちゃあ大団円だが、こちらは真っ暗で後味が悪い。
 結婚式の披露宴にはケリーも戻って来て、みんなが幸福そうに酔って踊っている姿と、ひとり別室でむせび泣いているミルキーの姿とのコントラストで最終回は終わる。ふたつの全く異質な大団円を描いて終わったようなものだ。なんとなくそれはふたつの異なる中心点を起点にして描いた楕円形のようでもあり、おお。またこれは花田清輝的な。と思った。
それはサッチャーがいなくなっても幸福な国にはならなかった英国を体現するようで辛辣だが、同時にそれでもそこで生きてゆく人びとを見つめる温かいまなざしでもある。


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 以前、うちの息子の親友の家に行ったときのことである。
 うちの息子の親友はアフリカ系黒人少年であり、その父親は「黒人の恵比須さんみたいな顔で笑うユースワーカー」としてわたしのブログに以前から登場しており、拙著『ザ・レフト』のコートニー・パイン編のインスピレーションにもなった。
 彼には4人の息子がおり、長男はもうティーンエイジャーなのだが、うちの息子を彼らの家に迎えに行った折、長男の友人たちが遊びに来ていた。で、十代の黒人少年たちはソファに座ってゲームに興じていたわけだが、恵比須さんの長男がこんなことを言っていた。
 「いやあいつはバカっしょ。しかも赤毛。しかもレイシスト。粋がって『ニガー』とか言いやがるから、俺は言ってやったね。『ふん。女も知らねえくせに。ファッキン不細工なファッキン童貞野郎』って」
 「おー、言ったれ、言ったれ」みたいな感じで2人の友人は笑っている。
 と、エプロン姿でパンを焼いていた恵比須顔の父ちゃんが、いきおい長男の方に近づいて行って、ばしこーんと後ろ頭を叩いた。
 「痛えー、何すんだよー」
 と抗議する長男にエプロン姿の恵比須は言った。
 「どうしてそんなファッキンばかたれなことを言ったんだ」
 「だってあいつファッキン・レイシストなんだよ」
 「そういうことを言ってはいけない」
 「ふん、あんなアホにはヒューマンライツは適用されない。あいつは最低の糞野郎だ」
 「俺はPCの問題を言ってるんじゃない。レイシストに同情しろなんて言ってないし、糞野郎は糞野郎だ」
 血気盛んな十代の黒人少年たちの前に仁王立ちしたブラック恵比須は言った。
 「だが、俺たちの主張を正当にするために、俺たちはそんなことを言ってはいけないのだ」
 
 きっと彼は黒人のユースワーカーとして何人もの黒人のティーンにそう言って来たんだろう。ロンドン暴動の発端となったトテナムで長く働いたという彼の言葉にはベテランの重みがあった。少年たちはおとなしく食卓について父ちゃんが焼いたコーンブレッドを食べ始めた。
 わたしと息子もタッパーにコーンブレッドを詰めてもらって持って帰った。ブラック恵比須は竿と鯛を持たせたくなるぐらいにこにこしてエプロン姿で手を振っていた。

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 元右翼のコンボが黒人のミルキーの指図で殺されたことを暗示するような『This Is England 90』のラストシーンを見ながら、ブラック恵比須とミルキーは同じぐらいの年齢だと思った。
 1990年はもう四半世紀も前になったのだ。児童への性的虐待や近親相姦や殺人やレイプやドラッグ依存症は、まあ人間が生きてりゃそういうこともあるさー、お前らがんばれよ。と登場人物たちに乗り越えさせているメドウズが、レイシズムだけはそう簡単に乗り越えられない業の深いものとして最後に浮き立たせている。
 この認識を持って、この諦念に立脚して、それでもこの国の人たちはレイシズムに向き合ってきた。というか、向き合うことを余儀なくされてきたのだ。これは四半世紀経ったいま、移民・難民の問題として再び浮上している。
 ここに来て本作を見る者は、これは2015年のイングランドの話だと気づくのである。
 


 おまけ。もう一つの『This Is England 90』
(マーガレット・サッチャーVS ジェレミー・コービン。これも25年前だが、2015年の話でもある)

KOHH - ele-king

 KOHHのミックステープ・シリーズ『YELLOW T△PE』のパート3。すべての曲が、瞬間ごとに更新されていく、からっからに乾いた初期衝動の連続。聴きながら何度も爆笑した。実際、これを最初から最後まで吹き出さずに聴き終える人って、たぶんいないんじゃないか。
 アメリカ滞在を経たKOHHのボキャブラリはますます直感的。谷川俊太郎とジョン・ライドンのマッシュアップじみた、ストレートな言語感覚だ。日々のフラストレーションも幸福感も、夏休みの絵日記みたいな素直さで次々に殴り描きされていく。MOMAの現代アートとコンビニの前にたむろするヤンキーの落書きが並べられ、ジョアン・ミロの絵画と『世紀末リーダー伝たけし』が楽しげに衝突し、パリのシャトレ座とソウルの路上、ハーレムの喧噪とサウス・シカゴのビル風がグチャグチャに混ざりあって、北区王子の団地に吸い込まれる。アメリカ発のグローバル・カルチャーのカンバスに、日本の土着的な祝祭感覚がカラフルに塗りたくられ、絵の具まみれのKOHHが大きな笑い声を響かせている。
 ポップとアヴァンギャルドのめまぐるしいミックス。即興的なひらめきをフリースタイルでパックした、異文化ブリコラージュのドキュメント。才能あるアーティストが本気で遊んでいる現場を目撃することほど、感動的でスリリングなことはない。これはマジでとんでもない実験作だ。

 本作でも1曲目にぶちこまれた“IT G MA” が、いまのKOHHを取り巻くすべての状況の発端だ。今年の元旦、明らかにUSのマーケットを意識して無料配信で放たれたこの曲は、日韓の新鋭アーティスト5人が、とくに平和や国際親善を歌うわけでもなく、ギンギンに尖ったトラックのうえそれぞれの母国語で暴れまくる怪作だ。歴史問題をめぐって衝突の絶えない両国のアーティストの共作タイトルが「イッチマ(韓国語:忘れるな)」。憶測を呼ぶタイトルとは裏腹に、金やドラッグ、セルフ・ボースティングといったラップ・クリシェがえんえんと続いたかと思えば、最後に登場するKOHHはラスト・ヴァースで「過去の話すんのダサいから昔のこと忘れちゃったらいい」とキックする。さらにはその曲がUSで「エイジアン・トラップ」として爆発的にヒットし、おそらくは韓国語と日本語の区別もつかないであろうアメリカのオーディエンスがクラブで「IT G MA!!」と合唱するにいたっては……これだけでも文化現象として完全にイカれてる。それに本作でも告白されるKOHHの出自も考えあわせれば、どこか感慨深いことでもある。
 そして、なによりサイコーなのは、やってる本人たちがその錯綜する文化的コンテクストにあまり自覚的でないところだ。ようは当日その場に集まったメンツで、本能のおもむくままにクールであろうとした結果が、この怪物的なオリジナリティだったということ。コデインやグリルズといった現在のUSラップの様式美を換骨奪胎して、アジア人の身体性を動物的にデフォルメする表現は、日本や韓国はもちろん、アメリカのシーンにとっても新鮮だったようだ。

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 とにかくクールでフレッシュなものをつくる、というシンプルな創作本能は、このミクステ全体にもつらぬかれている。収録曲されたほとんどは、この1年でリリースされた海外勢とのものを含む客演、そして半分ほどはビートジャックのチューン。ミックステープということで、やはり目を引くのは後者だ。
 目立つものをさらっておくと、DRAKEの”6 GOD”にのせて日常のストレスをアートに昇華させる”全部余裕”、FETTY WAPの”TRAP QUEEN”を若干むりやりぎみに日本語に置き換えた”周り全部がいい”、 KANYE WESTの“ALL DAY”の直球カヴァー”毎日だな”、””AYO”のCHRIS BROWNのコーラスとTYGAのラップを一人二役でこなす”IIKO”、BIG SEANの”I DON’T FUCK WITH YOU”のフロウを忠実になぞる”どうでもいい”あたりか。どれもオリジナリティ幻想を吹き飛ばす、徹底したフロウのトレースぶりだ。
 こうしたフロウの模倣は、これまでの『YELLOW T△PE』シリーズでも試みられてきた手法で、リリックの内容も、原曲のキーワードが絶妙なズレとともに踏襲されている。ビートジャックそのものはミクステ・カルチャーとしてはとくに珍しくないものの、KOHHの場合、それが異言語間の翻訳として表現されるところに強みがある。USのシーンから盗みとられた最新のスタイルが、逐一日本語に置き換えられることで、日本語によるラップの文法そのものが書き換えられ、やがて独自のフロウが生み出されていく。同時に、英語と微妙に音を重ねられた異言語のライミングは、日本語をまったく理解しない海外のリスナーにも、新鮮な驚きをもたらすだろう。結果としてこのフロウをめぐる冒険は、単なるトレンドの翻訳を超えた、重要な音楽的実験になっている。そのアウトプットは、最終曲“MOMA”などのオリジナル曲の異彩のクオリティをみても明らかだ。

 コピーライトをガン無視して大胆不敵に他人のアートを奪い尽くし、カスタムした盗品を売りさばいて金や名声を手に入れる。その行為が、創作上の突然変異を生み、音楽的なイノベーションにさえつながる。マルセル・デュシャンがモナリザのコピーにヒゲを描き足し、自分の作品として発表したのと同じメンタリティで、KOHHはこのワールドワイドな文化的侵犯行為を楽しんでいる。ネット社会がどうとか複製技術がどうとか議論したがる賢しらな連中を置き去りにする、やったもの勝ちの美学。『YELLOW T△PE』シリーズは、形態としては国内流通のフィジカルCDだとしても、実質的にはUSを中心としたグローバルなミクステ・シーンの勢力圏で製作されている。ラフなミックスと音質は、この音楽が密輸入品であることの証だ。ファーガソンの暴動でドサクサにまぎれて商品を盗み出していく暴徒にも似た野蛮さが、このミクステにはみなぎっている。

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 著作権の冒涜、アートの略奪、創造的な万引……どう呼んでもいいけれど、こうした音楽的な海賊行為は、ミックステープというメディアの本質でもある。1980年代にDJの小遣い稼ぎ的な副業として隆盛したミクステ・カルチャーは、いつしかラッパーやDJたちの重要なプロモーションのインフラに変化し、2000年代以降には、インターネットでの無料配信を基本とする壮大な音楽の実験場となった。カセット・テープから電子データにかたちを変えても、ミックステープは著作権にかんしてグレーゾーンを歩むことで、有名無名のアーティストの創造性の源泉であり続けている。
 現在プラットホームとなっているいくつかのUSのサイトには、すでに金やキャリアを手にしたビッグ・ネームからまったくの新人によるものまで、無数の作品が毎日のように無料でアップロードされる。その状況がアーティストにとって天国か地獄かはわからないが、適者生存(SUVIVAL OF THE FITTEST)を信条とするラッパーたちがやるべきことははっきりしている。過酷な生存競争であり、共喰いだ。ミクステというメディアはいまや、ラップのクリエーション面でのイノベーションの最前線となっていると言っても過言ではない。
 興味深いのは、こうしたインターネット上の開放的なバトルフィールドの出現が、これまでアメリカの巨大音楽産業を中心に動いてきたラップ・ゲームを、より脱中心的で、グローバルなものへと変質させつつあることだ。“IT G MA”のヒットをきっかけにUSシーンに攻勢をかけているKIETH APEなどの韓国勢が典型だけれど、日本や韓国といったアジア地域は、グローバルなミクステ・シーンにおいて、魅力的なフロンティアとして浮上している。
 いまや非英語圏出身のラッパーにとって、母国語によるラップはハンディキャップではない。というか本来、地元のチンピラが目の前の相手をぶっ飛ばす/自分たちがぶっ飛ぶためにヤバい音を鳴らしたら、それが勢いあまって地球の裏側まで届いてしまった、っていうのがこのカルチャーの醍醐味だったわけで、JAY-ZだってA$APだってケンドリックだって、ようはそういうことだ。よそゆきの不自然なアティチュードでつくられたラップなんてなんの魅力もない。すくなくともラップ/ヒップホップにかんしては、非英語圏のアーティストが全編英語詞の作品でアメリカのマーケットに乗り込む時代は終わりつつある。

 たとえば、限定で先行シングル・カットされた、オール日本語の“結局地元”。本人たちがどこまで計算しているのかは不明だけれど、そのミュージック・ヴィデオで、東京郊外北区王子のモノクロの風景が、“PARIS”の夜のパリの路上と接続されていることは、とても象徴的だ。仕事帰りの普段着、スカジャンと和彫りの刺青、エミリンや違法薬物の影……。商品としての洗練からはほど遠い、こうしたアンダークラス的な記号は、いったんグローバルなコンテクストに置かれたとたん、アジア産のラップ/ヒップホップならではの、エキゾティックな魅力を発揮する。サウス・シカゴの鬼才DJ YOUNG CHOPのビートでハーレムのJ $TASHとマイクリレーする“HOOD RICH”も同様だが、やはりこの日本版のゲットー・ファビュラス的なリアリティは、巨大な消費空間としての渋谷や六本木といった場所からはけして生まれないだろう。
 どうせ広告代理店あがりのどっかのインテリが、ひと昔前なら「下流」だとか、最近なら「マイルド・ヤンキー」だとか、ガラパゴス的なマーケティング用語で解説してわかったつもりになるんだろう。そんなものまったく無意味だ。ここには、ケニー・ディクソン・ジュニアが「デトロイトの毎日をもがくリアルなニガーはただ生き、そして食って、息をしている」と呟くときと同じなにかが、たしかに存在している。
 思えば、シリーズ前作のラスト・ナンバーでは、凍てつくようなスクリュード・ヴォイスで母親の生活保護と薬物中毒がカミング・アウトされ、KOHHはそこで「LIFE IS A BITCH/I DON’T GIVE A SHIT /哀しくないでしょ?/普通の話」そうラップしていた。そのKOHHが、本作では「人生最高」と何度となく繰り返している。絶えまなくスタイルを変化させ続けるKOHHに核心があるとすれば、生まれ育った北区王子に対する愛情なのだ。へたをすれば浪花節にもなりかねないその感動や感傷を、きわどいアート表現として提示できるところに、KOHHのアーティストとしての非凡なセンスはある。

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 すぐれたポップはつねに、すぐれたアヴァンギャルドでもある。先鋭的なポップ・ミュージックは、社会に共有されたクールさのハードルを軽々と飛び越えるだけでなく、クールさの基準そのものを前衛的に更新していく。「ナシをアリにする」の言葉通り、破天荒な実験が繰り広げられる本作は、標準化されたポップに飼い馴らされた耳にノイズを呼びこみ、新たな地平を切りひらくものだ。その実験の成果は、すでに告知も出ているサード・アルバムに結実しているんだろう。
 とりあえずこれは、世界中から密輸入したパーツで組み立てられた、現時点での日本製の最高級品。『L.H.O.O.Q.』の刺青をいれた芸術的な泥棒が、真似するんじゃなくて奪いとってきた戦利品だ。オリンピック・エンブレムの盗作問題でお偉いさんがたが右往左往するのを尻目に、21世紀平成日本のアートの最先端は、今日も路上でふてぶてしく危険な遊びを楽しんでいる。アートの略奪。文化の簒奪。リーガルとイリーガルのはざまで、共喰いを繰り返して突然変異するハイブリッド。指をくわえて傍観している場合じゃない。いますぐこの略奪に参加しろ。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294