「IR」と一致するもの

DJ DON (新宿ドゥースラー) - ele-king

Congo Natty All Time ベスト3&リリース作品等

SAKANA - ele-king

いつでも聴きたい元気が出る曲。

年代ジャンル問わず、いつになっても好きな曲、アガる曲を10曲選んでみました。
賑やかな曲ばかりですが、何よりラップものと女性ボーカルものにとにかく弱いです。

<Profile>
ダブステップ、グライム、ジューク、トラップを軸にベース・ミュージックを包括したパーティRAGEHELLを、2012年にK.W.A, YTGLSと共に始動。並行して、NODA、Zatoと「T.R Radio」開始。月に1度、ツイスト気味なDJミックスをライブ配信中。考えるより感じることに重きを置き、音楽と接する。
Soundcloud » https://soundcloud.com/sakanasakana
RAGEHELL » https://www.facebook.com/Ragehelltokyo
T.R Radio » https://mixlr.com/tr–2/

<出演情報>
KAHN & NEEKがブリストルより初来日いたします。是非遊びに来てください!
https://www.ele-king.net/news/004545/

2015/07/24 (FRI)
BS0 1KN
KAHN & NEEK Japan Tour in Tokyo
会場:
Star Lounge (渋谷)
時間:
Open/Start: 24:30
Act:
KAHN & NEEK / GORGON SOUND from Bristol
Bim One Production (Roots/Dancehall Set)
Soi Production (Jungle Set)
100mado 〈Back To Chill〉(Dubstep&100bpm)
SAKANA 〈Ragehell/T.R Radio〉(Weightless Set)
Host MC:Ja-ge
Sound System:eastaudio SOUND SYSTEM
料金:
advance: 3000yen (ドリンク代別途500yen)Limited 150!!!
door: 4000yen (ドリンク代別途500yen)
チケット情報:
https://bs-zero.tumblr.com/ticket
Web: https://bs-zero.tumblr.com/
TW: https://twitter.com/_b_s_0_
FB: https://facebook.com/BS0TOKYO
YouTube: https://bit.ly/BS0YouTube

Prayers - ele-king

 さて、今日は最新のダサい西海岸サブカルチャーでも紹介しようじゃないか。サンディエゴのダーク・ウェイヴ・デュオ、プレイヤーズ(Prayers)が掲げる新たなるムーヴメント、「チョロ・ゴス(Cholo Goth)」っていったいなんだよ! ……って読んで字のごとくメキシカン・ギャングスタ+メキシカン・ゴス、サブカルチャーとサブカルチャーが交錯する複合的サブカルチャーである。

 プレイヤーズのラファエルは幼少期に家族とともにメキシコのミチョアカンからサンディエゴへ不法入国し、10代の頃に地元マーケットの小ぜり合いから父を守るためシャーマン・グラント・ヒル・パーク27・ギャングに入団する。高校卒業後、父とともにサンディエゴで初のヴィーガン/ベジタリアン・メキシカン・レストランを開業し、父が亡くなるまでの18年間をレストランの経営に勤しんだ。2010年に第二級殺人罪でムショへブチ込まれ、新たな人生観に目覚めたラファエルは、塀の中でギャング/グラフィティ生活を題材とした自伝的小説、『リヴィング・デンジャラスリー』を執筆した。出所後、著書のプロモーションと自身のアートワークの展示を兼ねてLAを訪れ、成功を収めた。新たな表現を求め、ヴァンパイア(Vampire)やバプティズム・オブ・シーヴス(Baptism of Thieves)などでのバンド活動を開始し、それぞれの解散後にティワナ出身のデイヴとともにプレイヤーズを結成した。ミニマル/ダークウェイヴ・サウンドにギャングスタライフのリリックがのる「チョロ・ゴス」の誕生である。2013年にファースト・アルバム『SD KILLWAVE』をリリース後、一躍話題を呼び、翌年にはカルト(Cult)のツアー・オープニング・アクトとして抜擢される。

 僕が初めてLAを訪れたときからずっと思っているLAメキシカン・ゴス・カルチャーの根強さとはいったいなんであろうか。市内にはそういった連中が集まるバーやクラブがいくつも点在している。彼らが愛してやまないニュー・オーダー、ペットショップ・ボーイズにデペッシュ・モード、バウハウスといったバンドは暴力に支配されたラファエルの生活の中の救いであったようだ。「俺らはメキシカン・ギャングの暴力性の裏にある悲しみや哀れみ、ハートブレーキングを歌っているのさ」なるほどね。

 今年はじめにLAにてラファエルらがおこなったエキシビジョン、『ダーク・プログレッシヴィズム,メトロポリス・ライジング(Dark Progressivism, Metropolis Rising)』では、こういった南カリフォルニアでのユニークなカルチャーであるチカーノ/チョロとゴスが融合するストリート・アートを国際的にアピールし、地元からの絶大な支持をほしいままにしながら本作『ヤング・ゴッズ(Young Gods)』をリリース。

 どう? 僕にはもう何が何だかよくわからないけどもとりあえず歌下手だなぁー。

Congo Natty×Caspa来日ツアー2015 - ele-king

 コンゴ・ナッティの去年の来日公演は素晴らしいイベントでした。DJマッドの技巧派ダブステップ・セットのあとに、レベルMCとコンゴ・ダブスがステージに現れ、ボブ・マーリーの“スリー・リトル・バーズ”が流れ、ジャングルで揺れ、戦士たちの歴史が語られ……。あの日のフロアはいつも以上に国際色豊で、若者とベテランが入り交じっていました。ジャングルの持つ求心力はすごいです。あの光景が今年も見られますよ!

 しかも今回はダブステップの王様、キャスパが登場します。彼の曲でダブステップを聴きはじめたという方は多いのではないでしょうか? キャスパのレーベル〈ダブ・ポリス〉からはいくつものクラシックが生まれました。キャスパの重低音を操る力は今日も健在。先日発表されたニュー・アルバム『500』は、全体を凶器のようなドラムとベースが貫いています。アルバムのミックスの展開もすさまじい! イギリスでもなかなか見られない組み合わせが実現するdbsのステージですが、この日もその歴史を更新することでしょう。

 クラナカa.k.a 1945やパート2スタイル・サウンドといった、ラガをキーワードにジャングルとダブステップをつなぐアツい日本勢にも期待大。おそらく当日はレベルMCとともにライターを灯すことになるので、おひとつ持参することをおすすめします!

【東京公演】
UNIT 11th ANNIVERSARY
DBS "JUNGLE BASS SESSIONS"
CONGO NATTY x CASPA

2015.07.18 (SAT) @ UNIT
open/start 23:30
adv.¥3,300 door ¥3,800

feat.
CONGO NATTY a.k.a REBEL MC & DJ CONGO DUBZ
CASPA

with:
KURANAKA a.k.a 1945
PART2STYLE SOUND
JUNGLIST YOUTHS
DJ DON
JUNGLE ROCK

saloon:
KAN TAKAHIKO
NESSILL
HELKTRAM
SHINTARO

info. 03.5459.8630 UNIT
Ticket outlets:6/6 ON SALE!
PIA (0570-02-9999/P-code: 266-620)
LAWSON (L-code: 72753)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/https://www.clubberia.com/store/

渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)
TECHNIQUE(5458-4143)
GANBAN(3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)
Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)
JET SET TOKYO (5452-2262)、
disk union CLUB MUSIC SHOP (5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)
Dub Store Record Mart (3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)
disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

info. 03.5459.8630
UNIT >>> www.unit-tokyo.com
DBS >>> www.dbs-tokyo.com

【大阪公演】
7/19(SUN/祝前日)
出演:CONGO NATTY a.k.a REBEL MC & DJ CONGO DUBZ
CASPA
And more..
OPEN:23:00~
ADV:3,000yen DOOR:3,500yen
チケット情報
Peattix https://ptix.co/1ImJiDm
チケットぴあ P-CODE(267765)
ローソンチケット
イープラス https://eplus.jp/

会場:CIRCUS
〒542-0086 大阪府大阪市中央区西心斎橋 1-8-16 中西ビル 2F
TEL:06-6241-3822
https://circus-osaka.com

■ CONGO NATTY a.k.a REBEL MC (Congo Natty Recordings, UK)

ルーツ・レゲエを根底にヒップホップ、ラガの影響下に育ったレベルMCは、'80年代後半からスカとハウスのミックス等、斬新なブレイクビートサウンドで注目を集め、『BLACK MEANING GOOD』('91)、『WORD, SOUND AND POWER』('92)でジャングルの青写真を描く。また92年にボブ・マーリーの"Exodus"のリミックスを手掛ける。Tribal Bass、X-Projectレーベルを経て、JJフロスト、DJロンと共にCONQUERING LION名義で活動、ラガ・ジャングルの中核をなす。'94年にジャングルの総本山となるCongo Nattyを設立、自らもコンゴ・ナッティを称す。『A TRIBUTE TO HAILE SELASSIE I』 を始め、数多くのリリースを重ね、'02年にはMCテナー・フライをフィーチャーした『12 YEARS OF JUNGLE』を発表、初来日を果たす。'05年は足跡を伝える『BORN AGAIN』、'08年には入手困難なシングルをコンパイルした『MOST WANTED VOL.1』をリリースし、レベル自らDJとして新たなパフォーマンス活動に乗り出す。近年は息子のDJコンゴ・ダブス、ヴォーカルのナンシー&フェーベらファミリーも広がり、Glastonbury、Womad、Outlook等のフェスに出演。'13年にBig Dadaからアルバム『JUNGLE REVOLUTION』をリリースし、ルーツ・レゲエとジャングルのヴィジョンを深く追求する。レーベル名の"CONGO"はアフリカの民族音楽の太鼓、"NATTY"はラスタファリアンに由来し、彼らの音楽のインスピレーションは主にこの2つの要素から来ており、真のアイデンティティーはもちろんJAH RASTAFARIである。
https://congonatty.com/
https://www.facebook.com/CongoNattyOfficial
https://twitter.com/CongoNattyRebel

 

■ CASPA (Dub Police / Sub Soldiers, UK)

西ロンドン出身のキャスパはジャングル、ヒップホップを聞き育ち、UKガラージに触発され、DJを開始、トラック制作にも着手する。04年に自身のレーベル、Storming Productionsを立ち上げ、Rinse FMでのラジオショーも始まる。05年にはダブステップに特化したレーベル、Dub Policeを設立、自身の作品やNタイプ、ラスコ等のリリースでダブステップ・シーンの一翼をになう。07年にはラスコと共にロンドンのクラブ/レーベル、Fabricに迎えられ、DJ Mixシリーズ『FABRICLIVE.37』を手掛け、さらには新レーベル、Sub Soldiersからも精力的なリリースを展開する。08年にはGlastonbury, Global Gathering, Big Chill, Glade等のビッグフェスに出演した他、北米、ヨーロッパ各国をツアー。09年、1st.アルバム『EVERYBODY'S TALKING, NOBODY'S LISTENING!』をFabricからリリース、ダイナマイトMCらのラッパーをフィーチャーしたドープ&ファンクネスな世界を築く。12年にはザ・プロディジーのキース・フリントをフィーチャーしたシングル、"War" が大反響を呼び、13年に同曲を含む2nd.アルバム『ALPHA OMEGA』をDub Policeから発表する。その後も勢いは留まらずDub Policeのリリースは100タイトルを越し、キャスパ自身は新たなるヴィジョンとムーヴメントを生むべく制作を重ね、15年6月に待望の3rd.アルバム『500』がリリースされる。
https://caspa500.com/
https://www.dubpolice.com/
https://www.facebook.com/caspadubstep
https://twitter.com/Caspadubstep
https://soundcloud.com/caspaofficial


GODFLESHが再結成後2度めの来日! - ele-king

 マスター・マインド・オブ・インダストリアル・メタル、ゴッドフレッシュ(GODFLESH)が再結成後2度めの来日を果たそうとしている。ゴッドフレッシュが2010年にジャスティンKブロードリック、G.Cグリーンのデュオ編成での再結成、2014年にEP「Decline & Fall」を、そして完全新録アルバム「A World Lit Only By Fire」を発表、驚愕も冷めやらぬ約3年振りの来日公演をおこなう。

 エクストリーム・ミュージックに留まらないボーダレスな活動をおこなう東京が誇るデュオニュソス主義者ども、エンドン(ENDON)が今回のツアーの全サポートをおこなうだけでなく、東京公演ではレベル・ファミリア(REBEL FAMILIA)や、JK FLESHのワン・オフ・ショウではゴス・トラッド(GOTH-TRAD)が出演するなど、ゴッドフレッシュの存在がさまざまなシーンにおいて多大な影響を与えてきたことを物語る内容となっている。

 それはゴッドフレッシュはもちろんのこと、ヘッド・オブ・デイヴィッド(Head of David)にフォール・オブ・ビコーズ(Fall of Because)をはじめ、アイス(ICE)やテクノ・アニマル(Techno Animal)とジャスティンとグリーンがこれまで手掛けてきたプロジェクトがインダストリアル・ミュージック・シーンにとっていかに重要な存在であったのか、2015年現在われわれが目撃することのできる数少ないチャンスでもあるということだ。

■GODFLESH Japan tour 2015
with direct support:ENDON

**shows**

07/17(金)東京:代官山Unit w/ REBEL FAMILIA
open 18:00 / start 19:00
前売 6,000yen / 当日 未定 (ドリンク代別)
問い合わせ: Unit 03-5459-8630

07/18(土)愛知:名古屋今池Huck Finn
open 18:00 / start 19:00
前売 5,500yen / 当日 未定 (ドリンク代別)
問い合わせ: Huck Finn 052-733-8347 / Jailhouse 052-936-6041

07/19(水)大阪:東心斎橋Conpass
open 18:00 / start 19:00
前売 5,500yen / 当日 未定 (ドリンク代別)
問い合わせ: Conpass 06-6243-1666

**ticket**
4/18(土)より下記にて発売
東京: ぴあ(P:261-396)、ローソン(L:76756)、e+、会場
名古屋: ぴあ(P:261-317)、ローソン(L:47027)、e+、会場
大阪: ぴあ(P:262-227)、ローソン(L:55434)、e+、会場

■JK FLESH one-off show in Tokyo 2015
07/21(火)東京:渋谷O-nest w/ GOTH-TRAD, DREAMPV$HER
open 18:30 / start 19:00
前売 4,000yen (ドリンク代別)
問い合わせ: O-nest 03-3462-4420

**ticket**
05/02(土)より下記にて発売
東京: ぴあ(P:261-556)、ローソン(L:76926)、e+、会場


OG from Militant B - ele-king

ラガマフィンエクササイズ!

Pamela Samiha Wise - ele-king

 今年はアメリカからスピリチュアルなジャズ・アルバムの逸品が多発している。東海岸ニューヨークからはロンゲッツ・ファウンデーション(リーダーのステファン・ロンゲッツはフランス人だが、現在はNY居住)の『キス・キス・ダブル・ジャブ(Kiss Kiss Double Jab)』、西海岸ロサンゼルスからはカマシ・ワシントンの『エピック(Epic)』、そして中西部デトロイトからパメラ・ワイズの『キンドレッド・スピリッツ(Kindred Spirits)』がリリースされた。『キス・キス・ダブル・ジャブ』には大御所のゲイリー・バーツが参加し、カマシ・ワシントンはLAスピリチュアル・ジャズを代表するレーベルの〈ニンバス〉、〈テレサ〉時代のファラオ・サンダース、そしてビルド・アン・アークの系譜を受け継ぐなど、こうした作品は突如現れたわけではなく、アメリカのジャズの長い歴史の上に成り立つものである。そうした点で、『キンドレッド・スピリッツ』は1970年代から現在に至るデトロイトのジャズの流れから生まれている。

 パメラ・ワイズは日本ではほぼ無名だが、ウェンデル・ハリソンの妻といえば、彼女がいかにデトロイト・シーンにとって重要な人物かわかるだろう。ウェンデルは70年代に伝説のレーベル〈トライブ〉をフィル・ラネリンと創設し、その後80年代は自身のレーベルの〈ウェンハ〉や〈リバース〉を立ち上げたサックス奏者。パメラ自身はオハイオ出身だが、その後デトロイトへ移住してウェンデルと出会い、79年に結婚。彼女自身はピアニスト/キーボード奏者で、〈ウェンハ〉や〈リバース〉時代のウェンデルの作品に参加している。その後、ジャズと共に自身のルーツとして重要な位置を占めるアフロ・キューバン音楽のバンドを立ち上げ、ウェンデルを介してジェリー・ゴンザレス(キップ・ハンラハンの〈アメリカン・クラーヴェ〉からの諸作で有名なパーカッション奏者)とも知り合い、コラボする。初ソロ作『ソーニョ・フェスティヴィダッド(Songo Festividad)』(94年)はじめ、『ネグロ・コン・レチェ(Negre Con Leche)』(01年)や『パメラズ・クラブ(Pamela’s Club)』(06年)などは、そうしたアフロ・キューバン・ジャズ色が濃い作品だ。一般的にデトロイトとラテン音楽の関連というとピンと来ない人もいるかもしれないが、たとえばインナーゾーン・オーケストラに参加したフランシスコ・モラや、UR一派のジェラルド・ミッチェルなどラテンの血を引くアーティストも活動し、根付いている状況がわかるだろう。

 『パメラズ・クラブ』以来9年ぶりの『キンドレッド・スピリッツ』は、『Negre Con Leche』でも演奏した曲をいくつか再演し、やはり彼女のアフロ・キューバン・ルーツを継承するアルバムだ。その再演曲である“ダニズ・グルーヴ(Dani’s Groove)”は、ラテン・ファンクとブギーをミックスした現代的なアレンジ。土着的なパーカッション・トラック“アンセスターズ(Ancestors)”の一方、“カーリルズ・プロミス(Khalil’s Promise)”では叙情性に満ちた優美なピアノ演奏が際立ち、アフロ・キューバンの両面の魅力が味わえる。その両者が融合した最高の結果が“オード・ティ・ブラック・マザーズ(Ode Ti Black Mothers)”だ。また、ジャマイカの指揮者のマーカス・ガーヴェイの名を冠した曲には、彼女が影響を受けたラスタファリズムが表れており、この曲以外にも“ワールド・マスターズ(World Masters)”や“オード・ティ・ブラック・マザーズ”と、ポエトリー・リーディングがフィーチャーされた作品がいろいろとあるのも特筆すべき点だ。

 そして、同時に〈トライブ〉からの久しぶりの新録レコーディングという点も重要だ。09年のカール・クレイグ制作による『リバース』以来の〈トライブ〉作品であり、ウェンデルもプロデュースと演奏で参加。その象徴として、〈トライブ〉に残された名曲“フェアウェル・トゥ・ザ・ウェルフェア(Farewell To The Welfare)”(ウェンデルの73年作)や“ワット・ウィ・ニード(What We Need)”(ウェンデルとフィルの73年の双頭リーダー作)の素晴らしいカヴァーは、往年の〈トライブ〉ファンなら心躍らないはずがない。新たにウェンデルが書き下ろした“キャント・ユーズ・ア・セルアウト(Can’t Use A Sellout)”も〈トライブ〉らしい曲だ。ほかにもデトロイト賛歌“ホームタウン”、ウェイン・ショーターの“スピーク・トゥ・イーヴィル(Speak No Evil)”のソウルフルなヴォーカル入りカヴァーと充実しており、アフロ・キューバンとスピリチュアル・ジャズ、そしてソウルやファンクが結びついたデトロイト固有のジャズ・アルバムとして高く評価できる。

Shamir - ele-king

 2015年はレインボウ・カラーとシャミールのカラフルなポップスの年だったとのちに記憶されるだろう。いま、インターネット上にこれでもかと溢れる虹色に――ブーム化した「性の多様性」――僕などはアンビヴァレントな気分になりもするが、鼻にピアスを開けたこの1994年生まれの若者の(出自はムスリムだという)、かわいくデコレートされたディスコ・ミュージックはあっけらかんと現代のクィアネスを射抜いてくる。その若者、シャミールは自分のジェンダーを定義していないとインタヴューで言っているが、それはたぶん嘘のない発言だろう。フランク・オーシャンのカミングアウトの痛みはそこにはない。ジェンダーとセクシャリティにおいて、時代は本当に変わったのだ。

 しかもシャミールはヴィジュアルの打ち出し方がそれ以上ないほどに巧みだった。アーリー90sを思い起こさせるようなファッションやカラフルすぎてキッチュな色づかい、なによりもファンシーでフェミニンな本人の佇まい。昨年のシングル“オン・ザ・レギュラー”のヴィデオは、シャミールというアイコンのファッショナブルさとキャッチーさをパーフェクトにプレゼンしていた。FKAツィッグスに続いて〈XL〉がプッシュするニューカマーなわけである。

 音のほうもさまざまなトレンドが交錯する地点にいる。90sリヴァイヴァルとしてのハウスにディスコがまずあり、そこにここのところのR&Bブームが合流して……クィア・ラップからもそう遠くないだろう。リヴァイヴァルといっても古さが感じられないのは、カウベルを筆頭としたパーカッションの使い方にゼロ年代の〈DFA〉が取り組んだことの成果が反映されているからで、ということは遠景にアーサー・ラッセルのディスコも見えてくる。だが5分を超えるトラックはラストの“ヘッド・イン・ザ・クラウズ”のみ。前半5曲、なかでも“メイク・ア・シーン”、“オン・ザ・レギュラー”、“コール・イット・オフ”と3分以下のナンバーが続く目まぐるしい展開は、すぐに酔ってしまう高速のメリーゴーラウンドかのようだ。バンシーなビートと子どものイタズラみたいな声ネタ、腰をグラインドさせるベースライン、丸くて太いシンセ・リフと、それに乗っかるおきゃんなシャミールのヴォーカル。そのアンドロジナスなディスコ・サウンドからハーキュリーズ・アンド・ラヴ・アフェアとよく比べられるようだが、ハーキュリーズの暗さや妖しさはここにはない。唯一のスロウなバラッド“ダーカー”でも、陰よりも温かな安堵のフィーリングがある。

 この即効性の享楽をどう捉えるかでシャミールの評価は分かれるのだろう。ただ、これくらいの軽妙さが新時代のポップ・スターにはふさわしいのだろう。ブラック・ミュージックの美味しいところをつまみながら、いまのところ何かの主張を強く打ち出すことはしていない。が、少なくとも3分間は、シャミールのポップスは性の束縛からの自由を約束している。

interview with The Orb(Alex Paterson) - ele-king


THE ORB
MOONBUILDING 2703 AD

Kompakt / ビートインク

AmbientDubTechno

Tower HMV Amazon iTunes

 ジ・オーブの新譜が、すごく良い。これはちょっとした事件だ。彼らの作品だから当たり前のこと? もちろん、そうだ。だが、もはやその名を知らぬもののないアンビエント・テクノの第一人者であり、20年以上も活動しつづけるベテランが、こんなにも新鮮で、それでいて濃厚で、そのうえ生き生きと音の遊びとファンタジーを満ち溢れた現在進行形のアルバムを生み出したのだ。ここにはカビの生えたアンビエント・テクノなトラックなど1曲たりともない。

 同時にベテランだからこそ作り得る味わいも魅力的だ。まるで20世紀音楽の濃厚なスープとでもいうべきか。テクノを基調に、ダブ、ジャズ、ディスコ、エレクトロ、電子音楽、サントラ、ムード音楽など、さまざまな音楽のダシが見事に溶かされた絶妙な味わいがたまらない。「ミュージック・コンクレート・テクノ」とでも形容したいほどである。
まさに彼らのスキルのすべてが投入されたかのような驚異的な本作。あの傑作『オルヴス・テラールム』(1995)に匹敵するアルバムだとも思うのだが、どうだろうか?

 今回、われわれはジ・オーブのアレックス・パターソンに、この新作について質問を投げかけてみた。ブラックユーモアを繰り出しつつも、彼はこの作品への手ごたえを語っている。SF、月、〈コンパクト〉、制作の日々、サンプリング、ビート、DJ、盟友トーマス・フェルマンのことなど、本作をより深く聴くためのカギが、ここにある。壮大な20世紀音楽のカオスの中に込められた「音楽」とはいったい何か?

■The Orb / ジ・オーブ
アレックス・パターソンを中心に結成され、現在はトーマス・フェルマンとの二人体制にて活動、アンビエントやダブをキーワードにハウス/テクノのあり方を追求しつづけてきたベテラン、ジ・オーブ。両者の完全コラボ・アルバムとして〈KOMPAKT〉からリリースされた『OKIE DOKIE IT'S THE ORB ON KOMAPAKT』から10年、ジ・オーブ名義のフル・アルバムとしては『BAGHADAD BATTERIES』以来6年振りとなる、全世界待望のニュー・アルバム『MOONBUILDING 2703 AD』が本年2015年発表された。

グルっと大きくサイクルが周回した一枚というか。本作に至る道のりというのは長く複雑なストーリーだったんだ。

通訳:もしもし。

アレックス・パターソン(以下AP):うん?

通訳:取材をはじめてもオッケーですか? なんだか眠たそうな声ですけども……。

Ap:いや〜、大丈夫。俺はいつもこういう感じなんだ。

わかりました。それでは最初の質問です。新作『ムーンビルディング 2703 AD』は、大変素晴らしいアルバムで感動しました。さまざまな音楽的な要素を詰め込みつつも最高にジョイフルで快楽的。この作品が、これまでのアルバムと比べて、もっとも「変わった」と思うのはどのような点とお考えでしょうか?

Ap:うーん、もっとも変わったところといえば、ここしばらく俺たちはジ・オーブ以外の人びとといろんなコラボレーションをやってきたんだ。リー・“スクラッチ”・ペリーとかデイヴィッド・ギルモア、そしてユースといった面々だな。
 ところがこの新作は俺たちだけで作ったアルバムだ。その意味では『バグダッド・バッテリーズ』(2009)に非常に近い。あれはごく小さなイギリスのレーベルから発表したために、とても露出度が低くて、ほとんど知られていないような作品なんだけども――。だけど今回の自分たちは、このアルバムをプロモートするのに最適なレーベルを選んだっていうのかな。〈コンパクト〉のことだけど、彼らとは2005年にいっしょにアルバム(『オーキー・ドーキー・イッツ・ジ・オーブ・コンパクト・ディスコ』)をやったことがあってね。あのアルバムもトーマス(・フェルマン)と俺のふたりだけで作った作品だったから、その意味でもグルっと大きくサイクルが周回した一枚というか。そうはいっても、俺たちがいわゆる「成熟した」ってわけじゃなくて、ジ・オーブの最初のアルバム5枚でやったあらゆる要素を引っ張ってきて、それらを用いつつ、より新しく、かつ、もっとハッピーなサウンドをクリエイトしてみたっていう。

制作にはどれくらい時間がかかりましたか?

Ap:ハッハッハッハッハッ! まあ、実際、信じられないくらい長い時間がかかったよ!ほぼ4年を費やした……というのも、このアルバムと並行してほかのプロジェクトにも取り組んでいたからね(長く息を吸い込む)。
 もともとはロンドンにある〈コヴェント・ガーデン・オペラ・ハウス〉(※ロイヤル・オペラ・ハウスのこと)のために、とある音楽作品を作っていたんだ。ところが保守党(Tories)が最初に政権を握ったところで(※2010年に行われた総選挙。保守党党首デイヴィッド・キャメロンが英首相に就任し、今年の総選挙でキャメロンは再選され首相2期めに入っている)、連中は緊縮財政政策の名の下にいろんな規則や規制、予算削減案を打ち出していった。そこで芸術活動に対するさまざまな政府助成金も打ち切りになり、俺たちもまた――まあ、なにも俺たちだけって意味ではなくて――、そのプロジェクトそのものが立ち消えになってしまった。
 で、オペラ・ハウス側はそれまで作ってきた音楽の一部を俺たちに返却することになり、そこで俺たちはその音楽ピースの中からなんとなく「オペラ的」と呼んでいた要素群を排除して、こうして『ムーンビルディング 2703 AD』というアルバムが手に戻ってきた、ということだ!
 だから、本作に至る道のりというのは長く複雑なストーリーだったんだ。しかも、この企画(最初のオペラ企画および『ムーンビルディング 2703 AD』)と並行して、俺たちはリー・“スクラッチ”・ペリーとも仕事していたわけで。

通訳:この4〜5年は非常に多忙な時期だったようですね。

Ap:ああ、そうだね。それに、俺たちはその間にツアーもやっていたわけで。その忙しさのツケは、いま、間違いなく回ってきてるわけだけど(笑)。

俺はそのとある本から視覚的なインスピレーションを受けた。『月を作ったのは誰?』 ってタイトルのものなんだ。……「コンスピラシー本」に近いものだと思うけど。

今回のアルバム、音の変化がシーンの変化のようでとても映像的、というか映画を観ているような感覚になりました。何かインスピレーションを受けた映画などはあるのでしょうか?

Ap:いや、映画はないな。ただ、ある本があって(ちょっとおかしそうに)……。ということは、俺はそのとある本から視覚的なインスピレーションを受けた、音楽的なアイデアを本からもらったってことになるのかな? ともかく、その本は『フー・ビルト・ザ・ムーン?(Who Built The Moon?)』(「月を作ったのは誰?」)ってタイトルのものなんだ(※クリストファー・ナイト、2005年)。

通訳:いわゆる科学系の論文/リサーチ本なんですか? それともフィクションやSF本?

Ap:そうだなぁ、それよりも「コンスピラシー本」に近いものだと思うけど。

通訳:(爆笑)最近出版された本なんですか?

Ap:ああ、わりとまだ最近の本だよ。グーグルで調べてごらん。すごく興味深い本だから。で、あの本の大まかな内容というのは、月にまつわる神話というか、「地球の培養器としての月」という考えを述べたもので。
 月というのは、かいつまんでいえばそういう役割を果たしているんだよ。月によって地球の潮の満ち引きも生じているんだし、時間の測定にも月の満ち欠けが使われている。だから、俺たちは月の動きに従って生きているわけだ。で、月の周期にあたる28日間の中で、俺たちにはさまざまなことが起きる。それで、あの本の説は「われわれが知るこの月というのは人類のために造営されたもの、人類が現状どおりに棲息するために存在する惑星である」といった固定したアイデア/セオリーを打ち破って、何通りもの別のセオリーを導入するものだっていうね。「ほかにもこういう場所は何千も存在するにちがいない、月は無数に存在するんだ」って考え方だよね。
 で、そうした月のような存在は、スーパー・エイリアンたち、人類の文明を作り出した「超宇宙人たち」によって造り出されたものだ、と。

とても興味深いお話です(笑)。では次の質問です。本作は『オーキー・ドーキー・イッツ・ジ・オーブ・コンパクト・ディスコ』以来、久しぶりに〈コンパクト〉からのリリースですよね。もう少しだけその経緯などを教えてください。

Ap:そうだね、自然な流れだったよ。今回は俺たちとしても「〈コンパクト〉が出したいのなら、ああ、ぜひ!」って感じだったし。〈コンパクト〉との1枚めのアルバムは、「俺たちが〈コンパクト〉のために作品を作るとしたらこういうものだ」というのを提示する内容だったっていうのかな。
 だけど今回の新作は、そうした「規則」みたいなものにいっさい縛られなくてよかった。とくに4曲めの“ムーンビルディング 2703 AD”がそうなんだけど、あのトラックは曲が進むにつれてものすごく妙な感じになっていく。ほとんどジャズというのか、一部にダブまで混じってくる。だから「ひとつのミックス/音楽の混交体」として考えれば、ある意味すごいミックスなんだけど、そうは言ってもやっぱり最終的に多彩な要素を持つミックスの中にもテクノ・ビートの鼓動は一定してドクドク続いている。それに天使の奏でるような美しいストリングスだって聞こえるわけだし。うん、ほんと、これ以上、いうことなしだろ? ってもんだよ。

「ひとつのミックス/音楽の混交体」として考えれば、ある意味すごいミックスなんだけど、そうは言ってもやっぱり最終的にテクノ・ビートの鼓動は一定してドクドク続いている。

で、〈コンパクト〉そのものについていえば、そもそも俺たちとの相性は最高なわけだ。いうまでもなく、音楽作品のリリースを通じて彼らのことはとてもよく知るようになったし、それにトーマス(・フェルマン)は、アーティスト個人として2000年代初頭あたりから〈コンパクト〉と付き合いがあったんじゃないのかな?
 だから今回彼らとやることになったのは、古い友人に久々に再会して、そこでまたいい感じでウマが合った、みたいなもので、万事好調。それに〈コンパクト〉の連中もこのアルバムをすごく気に入ってくれている。うん、それは素晴らしいボーナスだよ。というのも、俺たちは――というかこのプロジェクトの進行そのものが、当初の予定よりもずいぶん遅れていたから。

通訳:〈コンパクト〉は、あなたたちをしっかりサポートしてくれている、と。

Ap:ああ、まったくその通り。ばっちり支援してくれてるし、それにこうした関係というのは、双方向に作用するものだから。

『ムーンビルディング 2703 AD』というアルバム名にはどのような意味、もしくはイメージが込められているのでしょうか?

Ap:それはさっき触れた本について話した部分ってことになるよね。オービアンズだとか、月は地球の培養器だとかいうアイデアとか。それにSF本をたくさん読んでいるような人間なら、彼らなりにSFな物語を作り上げることができる。べつに書物にかぎらずSF映画たくさん観ているってことでもでもいいんだけど。その手の本の書き手としては、フィリップ・K・ディックは非常に良い作家だ……。もちろん、いま言ったのはあくまでSF界のわかりやすい「たとえ」として挙げただけのことだよ。べつに彼(=P.K.ディック)がこのアルバムの参照点になってる、というわけじゃないんだ。それよりもこの作品ではさっき話した『フー・ビルト・ザ・ムーン?』って本、あれが大きい。

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リー・“スクラッチ”・ペリーはもうとにかく完全なる「天才」だったね。で、ミスター・ギルモアに関して言えば、彼は「閉じた孤高の人」って感じだったというか。


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メタリック・スフィアーズ』(2010)でデイヴィッド・ギルモア、『ジ・オーブザーバー・イン・ザ・スターハウス』(2012)でリー・ペリーとコラボレーションを行いましたが、それらの経験が本作に与えた影響などはありますか?

Ap:そうだなあ……フブブブブブブゥ〜ッ・ブルルルルブブブッ!(と唇を震わせながら、考え込んでいる模様)どうなんだろう? そういうのって簡単には答えにくい質問というか、というのも、何もかもがお互いに影響・作用しているわけだし、波紋みたいなもので、何もかも誰もかもが影響しあうし、いま、君のやることだってすべてに影響を与えているわけだし(笑)。
 だけど、まあ、リー・“スクラッチ”・ペリーのほうが、実際に「誰かと出会った!」って体験だったといえるかな。というか彼と対面する前から、彼の音楽からもそういう衝撃は感じていたんだけど。対してデイヴィッド・ギルモアは、なんだかんだいっても「ピンク・フロイド」だったっていうかな。
 えー、ともあれ! 彼らと実際にいっしょに仕事してみた経験がどうだったかと言えば、「英雄視している人間には、(会うと幻滅させられるから)実際に会わないにかぎる」ってのはよく聞くフレーズだけども、そのうちのひとり──これはリー・“スクラッチ”・ペリーのことだけど、彼はもうとにかく完全なる「天才」だったね。で、ミスター・ギルモアに関して言えば、彼は「閉じた孤高の人」って感じだったというか。「(重々しい口調で)俺様はデイヴィッド・ギルモアだ」みたいなノリで(笑)。こっちはグウの音も出ないよな。まあ、彼に対して失礼にならないように説明したまでだけども(笑)。
 ああ、そうだ! つい先週の話だったんだけど、ピンク・フロイドの現時点での最新作を共同プロデュースしたユースから連絡をもらってね。彼は目下のところデイヴィッド・ギルモアの新作ソロの共同プロデュースみたいなことをやっているところで、そのデイヴィッドの新作曲のリミックスをいくつかやってみないか、と誘いを受けたばかりなんだ。

通訳:おお、そうなんですか。

Ap:ジャジャーン! ジャーナリストさんにはうれしい「ホットな」ニュースじゃない?

通訳:これは明かしてもいんですか?

Ap:ああ、べつにかまわないんじゃないの?

俺たちも成熟して、いまやこうしてさまざまな歌のエレメントをひとつにして、その上で映画めいたシナリオへとまとめることができるようになったわけだよ。

今回のアルバムのトラックは、かつてのジ・オーブのスタイルを踏襲するかのように4曲とも長尺ですね。

Ap:オールド・スクールに陥らないようにしたってことだよ!(※このスタイルはジ・オーブの古典的なスタイルなので反語的な冗談)。
まあ、こういう構成にした点について、現時点ではいっさい批判の声は上がってなくてね。といずれこのアルバムが一般に広まることで、将来的には何らかの批判もされるだろうとは思うけど、そうは言ってもこのアルバムは非常に好調だし、そのうちに俺たちの耳に入ってくるであろう批判の声が届く前の、いまのこの段階では、聴いた誰もが気に入ってくれている。素晴らしいことだ。
 で、アルバムの曲を長いものにしたのは意図的なものだ。あれらの楽曲をオーパス(クラシック音楽で使われる作品番号:opのこと)みたいなものにしたかったんだ。要するにクラシック音楽作品のそれだよね。4分台の曲だとか6分台の曲っていうふうに。これはダンス・トラックです、これはポップな曲です、という具合に切れ切れで表示されるものではなく、これはひとつの「オーパス」であり、トータルな音楽作品なんだ、と。
 だから俺たちも成熟して、いまやこうしてさまざまな歌のエレメントをひとつにして、その上で映画めいたシナリオへとまとめることができるようになったわけだよ。その「映画的」という点は、すでに君自身も指摘してくれた話なわけで。うん、われながら今回は巧みにやれたなと思う(笑)! そう感じられること自体、いまの音楽界においては「ナイスなボーナスがついてきた」ってことなんだけどさ。
 で、そうだなあ、あとはもう映画むけのいい音楽を探している日本の映画プロデューサー氏が声をかけてくれるのを待つのみっていうか。こっちは準備万端だからね、お待ちしてます! (冗談っぽい、うさん臭い客引きを思わせる口調で)「これ、いいでしょ? どうです? やってみません?」(笑)。

通訳:プロデューサーの誰かがこのインタヴューを読んでくれるのを祈りましょう!

さまざまな音楽的な要素、テクノからエキゾ/エスノ、ディスコからダブまでが1曲の中に詰め込まれており、まるでミックスCDを聴いているように驚き満ちていました。このような長いトラックを作っていくにあたって構成のようなものを決めて作っていったのですか? それともいくつかの断片のようなものをDJのように繋いでいく手法だったのでしょうか?

Ap:そもそも、これはすべてサンプリングから成り立っている作品だ。俺が言いたいのはそれだけだな。で、そこから君たち自身で回答を導き出してもらいたいな。それくらいシンプルな話だよ。
 まあ、サンプリングだという点は、どれも非常に巧妙に隠してあるし、俺たちは何もかもすっきりと小綺麗にまとめていったわけだけども。

通訳:なるほど。アルバムの制作にこれだけ長い時間がかかったのも、道理なわけですね。

Ap:そうそう! ほんとそう。4年もかかったっていう。

ポップ・ソングの構成というのは「ヴァース/コーラス/ヴァース/コーラス/コーラス/コーラス/フィニッシュ!」みたいなものだけど、対してこの作品というのは、なんというか、すべての要素が思うままにいろんな方向に向かっていき、しかも好き勝手に戻ってくるみたいな構成で(笑)。

今回、ビートの組み方や音色が(とくに2曲め“ムーン・スケープス2703 BC”など)、これまでのジ・オーブとはちがう印象を受けました。新しいビートを創るということを意識されましたか?

Ap:っていうか、それはつねにそうなんだって! 俺たちは絶対に同じサウンドは繰り返し使わないし、トラックごとに別のサウンドへ、いや、サウンドばかりかBPMや楽曲の構成すら変えていく。その変化というのも君が前の質問で指摘してくれたことだけども。
 で、まあ、この話は今回のアルバム向けの取材で、毎回出てくる一種の「繰り返しのテーマ」みたいなものになっていてね。ひとつの曲の枠組みの中に、さらにまた別の構成が入れ子のように含まれているんだ。ポップ・ソングの構成というのは「ヴァース/コーラス/ヴァース/コーラス/コーラス/コーラス/フィニッシュ!」みたいなものだけど、対してこの作品というのは、なんというか、すべての要素が思うままにいろんな方向に向かっていき、しかも好き勝手に戻ってくるみたいな構成で(笑)。だからなんだよ、曲の尺がいちいち長いのも。それ以外に理由はないし。自分たちでもこういう作品をやっていてハッピーだし。同時に人びとも大いに喜んで聴いてくれてる気配もあって。
 うん、俺たちとしてもこの作品でいい成果を達成できたと思っているんだよ。(批判が出てこない)いままでのところは、ってことだけども。

4曲め“ムーンビルディング 2703 AD”はどこかモンドでエキゾチカな雰囲気から始まり、まるで世界旅行と時間旅行と音楽旅行を同時にするような感覚を味わいました。まるで「アンビエント・テクノのマーティン・デニー」のような雰囲気でした。

Ap:それは素晴らしい褒め言葉だね。

この曲を作るうえでコンセプトのようなものはありましたか?

Ap:うーん、俺とトーマスとの作業の仕方は、とても流動的で自然に流れるようなものなんだよ。俺たちの場合はあれこれ話し合ったりすることなく、とにかくやってみる。だから、俺たちふたりはいったんスタジオに閉じこもるとほかの誰も寄せつけなくなる。ガールフレンドも友人連中も消える。すべて追い払ってしまうんだよ。で、食べ物なんかもスタジオ内に持ち込んで、そうやって文字どおりスタジオに5日間住み込みで、ひたすら作業する。
 それはものすごくハードな作業だよ。俺たちは、スタジオに詰めている間は大体朝10時か11時ごろに起きて作業を開始して、午後2時ごろに昼食のためのブレイクを挟んで4時ごろにスタジオに戻る。そこから、サッカーの中継が混じることもあるな。じつは俺たちはどっちも大のサッカー・ファンなんだよ。だからテレビでサッカーの試合を観戦したりもする。ってのも、スタジオにいる間は何もかもから切り離されているわけで、ああやってサッカー試合を見ることで頭のスウィッチをしばし切ってリラックスできるし、テンションの高い状態から離れられるからね。
 で、またスタジオ作業に戻り、夕食をとった後に午前2、3時ごろまで仕事を続ける。そうして再び朝が来て、前の日と同じ作業パターンを繰り返す。で、作業の3、4日めあたりには、それまでの成果を聴いてもらうべく、ほかの人間をスタジオに呼ぶこともあるかな。俺たちはいつだってこういうやり方で作ってきたんだ。そうだなあ、かれこれこういうプロセスを20年近く続けてきたことになる。だからコンセプトっていうのは、俺たちが1日くらいをかけて何かに取り組んでいるうちに徐々に明らかになってくるようなものだ。しかもそこから実際にレコーディングするのに1年くらい費やす。

俺たちふたりはいったんスタジオに閉じこもるとほかの誰も寄せつけなくなる。ガールフレンドも友人連中も消える。文字どおりスタジオに5日間住み込みで、ひたすら作業する。

 このアルバムは完成させるまでに非常に長い時間がかかった作品だし、じつは、はじめた時点で手元にあったオリジナルのパーツを、俺たちは取り去ってしまったんだよ。そうした箇所は消えてしまって、もはや存在しない。そもそものアイデアはガイダンス程度というか、絵を描くときに近いっていうのかな。最初に描いた素描はあるわけだけど、その上に絵の具を重ねるからスケッチは見えなくなってしまう。だからほんと自分自身に見えているものの大まかな輪郭/ガイドラインに過ぎないんだ。ところがそうやって続けていくうちに、俺たちふたりにはやがてより大きな全体図が浮かび上がってくる。どうだ、参ったか! ってもんだよ。

日本盤にはボーナストラックが“ムーン・クエイク 1””、“ムーン・クエイク 3 ”の2曲が収録されています。これはアウトテイクのようなものでしょうか?

Ap:いいや、ちがうね。ってのも、俺たちはライヴでたくさんのミックスをやる。便宜上、番号をつけて呼ぶことにすれば、“ムーン・クエイク 2”だの“-4”、“-7”といった具合に、このいわゆる“ムーン・クエイク”・ミックス群がいくつも存在するんだ。それこそ35秒のものだってあるし。
 というわけでいろんな類いのサンプルを、エイブルトン上で曲の最後か何かにまとめて突っ込んで、俺たちはそのままレコーディング作業を続行していくことにした。自分たちでも何が出てくるかわからない状態のまま、いま言った特定のサンプル群のどのパーツが顔を出すか見てみることにした。“ムーン・クエイク”・ミックスの一部は、そういう過程の中から生まれたものなんだよ。要するに完全なるインプロってこと。コンピューターの能力を試すべくやってみた、そういうものだね。

では、“ムーン・クエイク 2”も存在する?

Ap:存在する……のかもしれないよ? あー、うん、俺には聴いた覚えがあるね。

ここ2、3年で何度かフランスを旅したことがあったんだけど、たぶんあの国にはいま現在でベストなクラブ・シーンが継続中だと思う。

これまでのジ・オーブは、作品ごとに「イギリス的」か「ドイツ的」といった音楽的な印象がありましたが、今作はイギリス的な雰囲気の中にドイツ的なビートが絡むように感じました。今回のアルバムではどんな景色をイメージしましたか?

Ap:そうねえ、「月世界に暮らす人びと」ってものじゃないの? で、それもまた、いま君が言ったような「ドイツ的/イギリス的」って考えから離れようってことだったんだろうし。
 そうは言ったって、俺たちはどちらも、それぞれにドイツの音楽から、そしてイギリスの音楽から影響を受けているのは間違いなくて。ただ、一方で俺はレゲエ・ミュージックから強く影響を受けたし、対してトーマス(・フェルマン)はジャズから大きく影響された。かつ、俺たちはどちらもアメリカ産ヒップホップを愛してもいる。それに俺はもうちょっとクールな領域も好きで、たとえば日本からは実験的なバンドがいくつも出て来たし、彼らはすごく興味深いと思っているよ。
 それにここ2、3年で何度かフランスを旅したことがあったんだけど、たぶんあの国にはいま現在でベストなクラブ・シーンが継続中だと思う。だからフランスの連中はドイツを越えたってことなんだけど、なのに誰もフランスのいまのクラブ・シーンについては語ってないっていう(笑)! それって奇妙な話だよな。だけど、俺たちにとっての最近のベストなショウ、過去3年間でのベスト・ギグと言えば、ひとつはパリ。もうひとつはリヨンで行ったライヴのふたつだったね。うん、彼らは素晴らしいよ。

今回のアルバムには不思議と「50年代」の雰囲気を感じました。50年代のSF映画やモンドなエキゾチックな電子音楽が現代のテクノでよみがえったような。50年代的な雰囲気を意識されましたか?

Ap:いや、それはなかったね。ただ、潜在意識の中ではそういうことは起きるものだろうっていう。ってのも俺たちはどっちも50年代生まれだから(笑)。それで充分な答えになってるんじゃないの?

通訳:なるほど(笑)。

Ap:うん、っていうか、見事な回答だよな。以上。

サンプリングという行為そのものを理解できるか? っていう。ミュージシャンの多くは、サンプリングが何なのかをまったく理解していないからね。

今回のアルバムでもサンプリングを多用されている、ということでしたが──

Ap:そうなのかもね〜(笑)?

先ほどそうおっしゃっていたので、サンプリングを多用したアルバムと考えることにして(笑)、サンプリングはサウンドにどんな効果をもたらすものですか?

Ap:サウンドそのものへの効果は極めて小さいものだよ。だから、サンプル音源の中からちょっとしたビートや細かなノイズだけを選び出して、それらをもとに俺たち自身のオリジナルな音楽を作り出していくわけだから。ドラム・キットを所有してドラムを叩きまくるってのに、ちょっと似てるんだ。要するに俺たちは細かなサンプル群をバシバシぶっ叩いて、そこから自分たちの音楽を作っている。

通訳:サンプリングからまったく別の音楽を作り出すというのは、気の遠くなるような作業ですね。

Ap:いや、だけどもサンプリングに長けた人間にとっては、あれはすごく有用なテクニックなんだよ。やるのが難しいかどうか云々といった話ではなくて、とにかくサンプリングという行為そのものを理解できるか? っていう。ミュージシャンの多くは、サンプリングが何なのかをまったく理解していないからね。で、そういう状況は俺としては大いに好都合! ってもんだ。うん、ほかの連中が無知なままの世界ってのは、俺は大歓迎だ。
 だからってなにも「サンプリングを使いこなせるからその人間は賢い」って言いたいわけじゃないんだよ。ただ、ほとんどの人間は「ビート」が何かをわかっちゃいないからね! 彼らはテンポを維持することすらできないし、したがって、彼らはDJをやることもできない。というのも、DJをやるときはふたつの異なるトラックをミックスするわけだし、テンポがズレてたらそれすらできないだろ? で、俺はたまたま、そういうことができるスキルを持った人間のひとりだっていう。
 だから俺たちがスタジオで作った音源のマッシュアップをやってみるときにしても、俺たちはその場でさまざまなリズム群を作り出すことになるわけだけど、ふたりとも自動的にわかるんだよ。同じピッチと同じチューニングへと、すぐに落ち着くことができる。というのも、俺たちはその面をしっかりとモノにしているから。
 だから(薄笑い)、4小節くらいのループを引っ張ってきて、それをサンプリングするみたいなお手軽なものじゃないってこと。俺たちがやっているのは、それこそミリ単位の、1秒程度の微小なサンプル音源っていうレベルの話だし、そこからその音源を別の何かに置き換えることだってできるし、もっと大きな何かへと発展させることも可能なんだ。ほんの小さい、短いサンプル音源がハイハット・サウンドにまで化けることだってあるんだしね!

4小節くらいのループを引っ張ってきて、それをサンプリングするみたいなお手軽なものじゃないってこと。

通訳:それは辛抱強い作業ですね……。

Ap:辛抱強さというのはいい性質だよ。で、まあ、基本的に俺たちは、あらゆる類いの音源をベースにして、それらをワイドなハイハット・サウンドにまで膨らませていった。だから、(サンプリングを使えば)何だってやりたいようにやるのが可能だ。とはいってもいま挙げたのはあくまで「例」であって、サンプリング・ソースは何も音楽作品に限った話じゃないしね。日常的なありふれた音からだって、サンプルをやることはできるんだよ。

最後の質問です。このアルバムに限らずですが、おふたりが長く共同作業をしていくうえでコツのようなものはありますか?

Ap:それぞれがちがう国で暮らすってことだね。

通訳:しょっちゅう彼と顔を付き合わせないですむ、という(笑)。

Ap:その通り! キモはそういうこと(笑)!

interview with Satoshi Tomiie - ele-king


Satoshi Tomiie
New Day

Abstract Architectur

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 ハウス・ミュージックの生みの親、フランキー・ナックルズにその才能を認められ、ハウス・シーン興隆の時代から現在まで世界の第一線で活躍しつづけるサトシ・トミイエ。90年代に世界中のハウス/R&Bファンから熱い支持を受けたデフ・ミックス・プロダクションズで不動のキャリアを確立した彼は、その豪華でソウルフルな表現から離れることをみずから選び、脱皮するようにスタイルを変化させてゆく。
 日本人でありながら、黒人文化から派生したハウス・シーンの中心で活躍した彼にとって、歌、とはなにか。なぜ徹底的に音を削ぎ落としてゆくのか。PCでのDJからレコードに回帰して見えてくるものや、いまだからこそアナログ機材に向き合うおもしろさ──。先日発表されたばかりのセカンド・アルバム『New Day』について、そして現在のハウス・シーンの状況も含めた幅広い内容について訊ねることができた。

東京出身のDJ、プロデューサー。1989年、故フランキー・ナックルズとの伝説のコラボレーション作「Tears」でデビュー。NYへ渡りDEF MIX PRODUCTIONS の一員としてハウス・ミュージックの礎を築き、ロバート・オーウェンズなどのアーティストとのコラボや、『Renaissance: The Masters』シリーズなどのミックス作品の発表、坂本龍一、デヴィッド・ボウイ、マイケル・ジャクソン、マドンナ、マライア・キャリー、U2ら有名アーティストへのリミックス・ワークなど、25年を超えるキャリアをつねに一線で活躍してきた。2015年、セカンド・アルバムとなる最新作『New Day』をリリースする。

いまは何でもできるから、逆に何でもできないほうに行ったのかもしれないです。

今回アルバムを聴かせていただいて、以前からの印象もあるのですが、ものすごく削ぎ落された曲作りを追求してらっしゃる印象があり、またシカゴ・ハウス的な雰囲気も感じました。収録曲のリミキサーにシェ・ダミエ(Chez Damier)やロン・トレント(Ron Trent)、DJスニーク(Sneak)といったシカゴ勢も起用していますし。でもデフ・ミックス・プロダクションズ(Def Mix Productions)に加入してバンバンやってらっしゃった頃のトミイエさんとは対極的な音ですよね。ただ、その当時もシカゴ・ハウス、というものも存在していたわけで……。この当時のトミイエさんにとっては、シカゴ・ハウスというのはどんなふうに聴こえていたのでしょう?

サトシ・トミイエ(以下S):たぶん、ちょうどこのときは、そういう流れが80年代の中盤から終わりにかけて盛り上がったあとだったので、ちょっと違うものをやりましょう、みたいなところはあったのかなと。時代的にも、すこし音を重ねる感じのプロダクションが流行っていましたよね。いろんなNYのリミキサー、たとえばマスターズ・アット・ワーク(Masters At Work)でも、ちょっと音が重なった感じで、すごいメロディがいっぱいあって。あと(シカゴ・ハウスに対して)こんなにシンプルでいいの? みたいな気持ちでしょうか。じつはそっちの方が難しかったりするんですけどね、ミニマルの方が。でも作っているほうは、時代的に考えても機材がいっぱい使えるようになって、かつそれで一日50万もするスタジオで作業をするのがわりと普通になるなかで変わっていったんじゃないでしょうか。

ただ、いまのトミイエさんはひとつひとつの機材やハードウェアと向き合って、シカゴ・ハウス的というか──たとえばラリー・ハード(Larry Heard)がシンセとか、打ち込みのものでしかできない美学みたいなものを追求していったような方法をとっておられるな、という印象があります。

S:いまはDAWだから、回しっぱなしにして、適当にやって、「いまのよかったな」ってところを取って、そこから曲を構築するみたいなことができる。以前もテープでできたけど、ループとか、その場でサンプラーで録って、とか、えらく面倒くさかった。だからそういうところよりは音のレイヤーなんかで違いを出そう、というほうが多かったですね。たぶん、そういう意味では使える機材にも左右されているのかもしれない。
で、いまは何でもできるから、逆に何でもできないほうに行ったのかもしれないです。制限があった方がチャレンジしようとするので。たとえば、シンセひとつでどこまでできるか、とか。実際はシンセひとつだけじゃなくて、DAWがあって、そのなかでいろいろできるから、なにかを中心にしていろいろ足していこうというようなこともできるし。で、あとはやっぱりこう、マウスで編集したりだとか、すごく感覚的ではないし。

そう、その、「感覚的」っていうところに最近は向かってるのかな、というイメージがすごく強いですね。

S:そうですね、もともと感覚的ですけどね(笑)。で、たとえばマウスだったら1回に1個のパラメータしか動かないのに対して、手だといくつか同時にできたり。いわゆる偶然性みたいなものを、いまはどんどん記録できるので。音をどんどん足さなきゃならないんじゃないかって迷っている時期もあったんですよ。この少ない機材でいいのか、みたいな。でもなるべく音を削ぎ落す方向に行って、それがいまはもう、迷いがなくなった。最初のアルバムが出て、ちょうど15年経ったんですけど、その間にどんどん音が薄くなっていったから。で、ひとつひとつの音をこう、立たせるほうにね。

今回のアルバムは、家で聴くと優しい印象もありますが、大バコで機能する鳴りを考えてらっしゃるなと思ったんですよね。トミイエさんはもう何千人規模の場所でのギグも多いですから、じゃあどういう音が鳴って気持ちいいのか、とか、そういう点をすごく意識してらっしゃるなあとは感じたんですけれど。

S:まあ、そうなんですけれども、音楽によって全部が大バコ対応ではないから。とはいえミキシングとかエンジニアリングは、もう、一生勉強なので。いまでも「こうすればいいのか!」という発見はあるし。僕はエンジニアリングの教育は受けてなくて、人がやっているのを見て、「ああ、こうやってやるのか」みたいに学んでいったので、けっこう適当なところもあるんです(笑)。


ミキシングとかエンジニアリングは、もう、一生勉強なので。

そのあたりが、いま楽しい、っていうことなのですかね?

S:そうですね、楽しい。またそうやって突き詰めると、アナログのアウトボードがいっぱい欲しいな、とか思ったりね。(実際は)プラグインでほとんどやってますけど、アナログをわっと並べるみたいなのも楽しそうだな、とか。でもメンテも大変だしね。メンテは大変だよ、もう、暑くなるしね。

Instagramで、ウーリッツァを弾いてらっしゃいましたよね。ウーリッツァとかもけっこうメンテナンスとかって大変ですよね?

S:ローズも以前から持ってるんだけど、ウーリッツァのほうがリードが折れやすいので、それもあって最近までゲットしなかったんです。いまでもパーツは買えるし、パーツ自体大した金額ではないんですけどね。アンプも含めて基本的な構造はシンプルなので直そうと思えばけっこう自分でもいけそうですけど。

今回ウーリッツァでソロを弾いたものも入れてらっしゃいますよね。“Odyssey”とか。

S:“Cucina Rossa”はリアルなウーリッツァ弾いてますが”Odussey”のソロには間に合わなかったので、あれは、ヴァーチャル音源。手で弾いてますけどね。でも、そう言ってしまうと結局のところはプラグインでいいじゃん、っていう話になるんだけど、実機はやっぱり楽しいので。そういうところですね。突き詰めれば、できるかできないか、ではなく、楽しいか楽しくないか、というところにいってしまいますよね。

“Cusian Rossa”でチェリストの方に多重録音してもらったとのことですが、そういう手間というのも楽しいというか、それがおもしろいという部分もあるということですね。

S:もちろん。以前ならオーケストラで、「せーの!」ってやってたことを一人のミュージシャンでできる。すごいなあと思いますね。しかもスタジオは3~40年前のスタジオで、そのときあったのと同じ機材でね。まあ、ああいうことができるのはPro Toolsがあるからなのだけど。
でも、当時やろうと思わなかったのは、同じ作業をするのにテレコが3台とか4台とかいるから、 作業効率的に考えてむしろオーケストラ25人雇った方が早い、みたいな。そういうテクノロジーの進化とこれまでにある技術の融合というところが、まあ、おもしろいかなと。で、いろいろできるからこそ、音がどんどん減ってゆく。

生音を今作に入れたのは、そのストリングスだけですか

S:結局そうですね、他にやってないですね、たぶん。

あとはもう、シンセと、ドラム・マシンと。

S: そうそう、そうですね。


やっぱり自分が楽しめないものは、人に対しても説得力がないと思うから。

トミイエさんを昔から知ってらっしゃる方には、デフ・ミックス・プロダクションズ(Def Mix Productions)ってピアノの印象がすごく強いので、トミイエさん自体にもピアノのイメージがあるかと思います。でも、ピアノを使った作品ってあんまり作っていないですよね。

S:まあ、一回やったからいいかな、っていうところがあるかな。

ダンス・ミュージックにおいて、ピアノの使われ方のパターンがけっこう決まってきてしまっている……っていったら変なんですけれども、そういうところにチャレンジ性がないからやらないのかな、って思いました。

S:そうですね、その通りです。

なんかもう、バンバン、と(和音を)打って、バンバンと盛り上げて、軽くヒットになってしまう。そういうことはできてもやらない、っていう話ですよね。

S:たぶん、自分自身アガらないと思うので。それをやってもね。

では基本的には自分自身がアガることしか、やれないっていう?

S:まあ、じゃないと音楽がよくならないと思うので。やっぱり自分が楽しめないものは、人に対しても説得力がないと思うから。「あんまり美味しくないと思うけど、どうぞ」みたいな(笑)。作っている人は「まあまあかな、でもみんな好きらしいしどうぞ」みたいな感じだとね。

でも、トミイエさんも感じてらしてらっしゃると思うんですけれど、多くのクリエイターが、売れるだろうからっていう要素を、「これが売れるよね」っていう感じでつくっていたりもしますよね。

S:いや、どうかなあ

純粋に楽しんでやってると思います?

S:EDMとかで売れてるものを作る人たちは、あの曲を作るのがすごい楽しいんだと思いますよ。

ああ、でもスティーヴ・アオキ(Steve Aoki)とかデヴィッド・ゲッタ(David Guetta)とかも、これからはディープ・ハウスをやる、なんて言っていたという話も聞きますよね。

S:飽きたんじゃない(笑)? 新しいディープ・ハウスっていわれているものを聴いたけれど、EDM延長線上にある感じで、少し地味になったヴォーカル・ハウスというか。そういうやつを長く聴いている人が聴くと、なにこれ? みたいな。

あの、〈スピニン・レコード(Spinnin’ Records)〉から出ている曲が、「ハウス」って書いてあるけど、音はEDMじゃん、っていう?

S:そうそう。だから、たぶん、ブランドを変えてるだけで。

私はそれが、売れつづけたいのかなっていうふうにみえちゃうんですよね。

S:まあ、それはそうでしょう。でも、トランスをやっている人が、「俺の音楽はトランスではない」って言っているようなこともあると思うんですよね。ずっとトランスで終わりたくない、っていう。以前に比べたらぜんぜん人気がなくなってきてるから、そう言われたくないというのもあるんじゃないかな。
あとはもう、やってて飽きたとか。まあ、やってる音楽は同じで、レーベルだけ違う、ってことじゃないかな。こう、ステッカー張り替えてね。


いつの時代もあることだけど、「ハウス」だと売れないけど「テック・ハウス」って付けると売ける、とかね。

まあ、そういう感じは言えますよね。ハウスって言った方が売れるんじゃないか、っていう。

S:そうそう。なんか、いつの時代もあることだけど、「ハウス」だと売れないけど「テック・ハウス」って付けると売ける、とかね。〈Beatport〉とかのタグ付けで。それで今度は「テック・ハウス」じゃなくて「ディープ・ハウス」という名前が売れ線ということになると、同じ音楽なのに「ディープ・ハウス」って付ける。

そうですね、試聴してても、「ディープ・ハウス」と「ハウス」、ジャンル分けで聴いても、なんかもう意味がわからなくなってくる(笑)。

S:そうそう。マーケティングがかなり絡んでくるから。でも音楽そのものはそんなに変わらなかったりするので。

そうなんですよね。トミイエさん自身としては、タグ付けするとしたら今回のアルバムはどれにしますか?

S:もう、昔からずっと、「いまどんな音楽やってるの?」「ハウスです」みたいな。結局は「ハウスです」って言ってますね。〈Beatport〉でもそうしていると思いますよ。でも、たとえばマーケティングにおいては「ディープ・ハウス」にしろとか、そういうのはあるかもしれないですね。

私はタイトル曲の“New Day”が本当に好きなんですよね。10年前とかに主流だった、まあいまでも私が聴いているUSハウスとかはそうですけれど、こう、歌ががーって盛り上がったら同じようにトラックが盛り上がって、という歌ものハウスとは対照的で。“New Day”はヴォーカルにしても、歌い上げるというよりはちょっと抑制されたというか、すごく繊細というか。で、トラックもそれに合わせていっしょに盛りあがっていくというよりは──

S:淡々としている。

ええ、逆に熱を冷ましていくことで美意識が生まれていくというような。本当に、トミイエさんは歌ものがお上手だな、と思うんですよね。

S:じつは、そんなに好きじゃないかもしれないですね。歌を作るのが。

そうなんでしょうね、って思うんですけれど。

S:(笑)


ヒップホップのときがそうだったんだけど、やっぱり、文化から入っていかないと簡単に理解できないような気がして。

その、歌っていうものに熱を入れすぎてないと言うと言いすぎかもしれませんが、歌をひとつの楽器のような解釈で考えていらっしゃるから、ああいうバランスができるのかなって思っていて。

S:そうです、その通りです。歌物は、たとえばソウルフルな歌物とかも過去にはやってたんですよね。でも、そういうのが実際にできる/できないではなく、なんて言うのかな……、ちょっと文化的な問題もあるから、ブラック・カルチャー的な。音楽が好きでも、自分がやるとなるとちょっと違うかな、というところもあるし。いわゆる「ソウルフル・ハウス」みたいなね。昔はけっこうあったでしょう? 黒人白人問わず、ソウルフルな歌のやつで。

もうTraxsourceでいまでもバンバンだしているような。

S:そうそう。で、ヒップホップのときがそうだったんだけど、やっぱり、文化から入っていかないと、簡単に理解できないような気がして。たとえばコミュニティ感とか。ヒップホップなんて本当にね、地元のあんちゃんが集まって、ムーヴメントを作り出したというようなところがあるでしょう? で、音はカッコいいけれど、そういうところで最終的には入っていけないのかなっていうのもあって、ヒップホップからハウスにいったんです。はじめはヒップホップでスクラッチやってたのね。それで、ハウスに出会ったときに、こっちの方が合ってるかも、って思った。それは、もっと音中心というか、なんて言うのかな、匿名性があったからというか。解ります?

わかります、もっとこう、ひとつの人種だったり文化だったりに固執していないような感じというか?

S:なんか、自分的に近いような気がして。

教会で歌ってる、みたいなのや、ポジティヴに生きよう、とか、そういうところで自分は生まれ育っていない、という?

S:そうそう。だから音楽そのものにとどまらない、ヒップホップのカルチャーそのものが自分の文化じゃない気がして。自分は生まれも育ちも東京の郊外でヒップホップのコアな文化とはもちろん無縁(笑)、どんなに音がカッコいいと思っても、音の先にあるカルチャー的なものは遠くにいるしやっぱりちょっとわかんないよな、って思っていました。黒人音楽への興味や憧れからダンス・ミュージックに入ってきてるんだけれど、最終的には、そこのコアなカルチャーの一員ではないので。ただそこから生まれてきた音楽や方法論とかは好き、っていうことなんだけど「これはもしかして、俺のやることではないかもしれない」っていうのは、やってみてわかったことです。少しずつエレクトロニックなほうに行ったのはその反動ですね。

ただ、最近の〈Beatport〉でウケている、たとえばテール・オブ・アス(Tale Of Us)みたいな感じの──私はああいう世界観は好きなんですけれども──

S:自分も好きですけど、音楽的にはロック方面から来てる感じしますよね。たとえば、〈ライフ・アンド・デス(Life & Death)〉とか。あとはテクノとかでも最近人気な人たち。言ってみればプログレッシヴ・ハウス的な。

マセオ・プレックス(Maceo Plex)とか?

S:マセオ・プレックスもそうだし。文脈的にいうなら、ダンス・ミュージックといっても、いわゆるソウル・ミュージック系ではなくてどっちかというとロックだと思うので。だからビートが似てて、使ってる楽器も似てるけど、いわゆるソウルフルさとは違う印象。

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少ない音でいかにおもしろくするか、っていうほうに行ってますね。「グルーヴ感、命」みたいな、方向なんですけど。


Satoshi Tomiie
New Day

Abstract Architectur

House

Tower HMV Amazon

そうですね、でもその“New Day”に関しては、黒か白かというよりはなんか違う──わからないんですけれど、黒いという印象ではなかった。

S:あれもヴォーカリストがロックの人だし。ソウルフルなものというよりも、なんかこう、ああいうヴォーカルが、当時作ってたものに合ったので、ばっちりかな、って。

そういうロック的な歌で、“New Day”みたいなヴォーカルものをつくるっていうことに対してはどうですか。バンバン作っていこう、っていう感じでもあまりない?

S:ない。ないっすね(笑)。

やっぱり、インストをこう。

S:インストで、より、音を少ない方向に。まあ、少ない音でいかにおもしろくするか、っていうほうに行ってますね。「グルーヴ感、命」みたいな、方向なんですけど。

ただ、やっぱりフロアで機能するグルーヴ感っていうのを作るとなると、どうしても足したくなりますよね。

S:そうですね、その通りです。

それを、足さずに足さずに、いかに作っていくかっていうことですね。

S:まあ、フロアで機能するだけのグルーヴは残しつつ、っていうことです。そこがメインで。で、無駄なものじゃないんだけど──あってもいいんだけれど、なくてもいいものってありますよね? そのなくてもいいものを削ぎ落していったときに、何ができるかなっていうことも考えているかもしれません。まあ、たとえばドラム楽器。自分の作った曲のなかでも「あれ、これってこの3トラックだけ聴くとカッコいいな、で、この、これとこれ、この3つのトラックを足すと、ぜんぜん違ったグルーヴ感だな」って、そういうのがあるでしょ。その3トラックで聴いているグルーヴ感みたいなところをちょっと延ばして、そしたらどこまでできるかな、みたいな。そういうことがおもしろいなって思います。逆に、機械でいろいろできちゃうから、音が少ない方が一音一音が立っていく。そっちのほうがおもしろいなあって思わないですか?
本当に、何でもいいから作れ、っていうのは簡単だから。ループとかそのへんにいくらでも落ちてるし、できあいのものもいっぱいあるし。音なんて、前みたいに一生懸命作らなくてもいいし。だったらね、逆にそういうほうがやってておもしろいわけじゃないですか。
でもアルバムに関して言えば、「ダンスフロアで機能する」という、自分のやってきた音楽の前提が見えるものではありますね。曲と曲がフロウするように、という。DJセットでやる場合も、1曲掛かって、その一方でぜんぜん関係ない曲が掛かって、ってなっちゃうと、踊ってるほうも踊りにくいしね。それを自分の作品でやるには、こうかな、って。

えっと、アルバムの中でもアシッド音を? ええとTB-303、いまはTB3を使ってらっしゃるんですかね?

S:TB3持ってないです。TB303昔から持ってて当時から使ってますけど、アシッド音はSH-101でもけっこう近い音出せるし、あと、Jupiter-8でもやったし。いろんなので出せるからいろんなシンセでやってます。


当時最初聴いたときに、なにこれ、延々と同じシンセが鳴ってて、ドラムがときどき出たり入ったりして、で、12分とかあるでしょう? あの頃に聴いて「ああ、すごいな」と思った印象があって。

12年に〈Systematic〉から出されてた“Straight Up”を聴いたときも思ったのですが、すごく上品で洗練されたアシッド・ハウスを作られている印象があって。トミイエさんにとってのアシッド音って、どういう位置づけなのでしょう?

S: DJピエール(DJ Pierre)の〈トラックス(TRAX)〉のやつとか(※)、当時最初聴いたときに、なにこれ、延々と同じシンセが鳴ってて、ドラムがときどき出たり入ったりして、で、12分とかあるでしょう? あの頃に聴いて「ああ、すごいな」と思った印象があって。
※フューチャー(Phuture)/“Acid Trax”

あ、それに対しての衝撃みたいなものは、もちろんあった、と。

S:もちろん。最初は何がカッコいいのかぜんぜんわかんないぐらい「なにこれ!?」 みたいなところから入っていって(笑)。逆にまったく新しいスタイルのものって、そういう反応もあると思うんですよね。で、アシッド・ハウスもいろいろあるから、いろいろ聴いていくうちに、あ、なるほど、ってなんとなく文脈が見えてきました。たぶんTB-303を買ったのは、二束三文、3万円しなかったような時代、80年代だったような気がしますが、その時から持ってはいても、やっぱり打ち込むの大変だし、MIDIもついていないし、シンクがめんどうだし、みたいなところもあって。SH-101と同時にスタジオには置いてあったのですが、長い期間放ったままでぜんぜん使わなかったですね。

最近TB3などのAIRAシリーズが出ましたが、シンクがしやすくなりましたよね。先日Rolandのスタジオにも行かれたみたいですが、どうですか? 実際に触ってみて。

S:(AIRAシリーズは)いくつか持ってますよ。System-1と、TR-8を買いました。TR-8はアップグレードすれば1台でドラム・マシーン4台分の音が出て便利だし、いろいろ機能がついていて、デジタルだからあたりまえだけどメンテナンスしなくていい。自分が持っている909より音がシャキッとしているんだけど、たぶん、909の実機も新品を買った時点ではあれに近い音がしたんだろうと思うんですよね。30年も経っていると、コンデンサーとか駄目になりますからね。自分のTR-909はかなり「枯れた」音がしてましたが、いまメンテナンスしてもらっているので、帰って来たときどんな音になってるか楽しみですね。TR-8とかはライヴとかで使えたらいいなとも思っています。

そういえば、7月にパリでケリ・チャンドラー(Kerri Chandler)といっしょにDJをやりますよね。

S:やりますね。

ケリ・チャンドラーは、最近はあまり日本には来てないのですが、以前来日していた際はブースに機材をならべて、DJ中にキーボードを弾いたりしていました。

S:うん、やってましたね。

で、今度いっしょにされるということで、ライヴという話もありましたけれど、DJ中にたとえばそういった、ビートとシンクできるAIRAみたいなものを使って、ぱっとしたインスピレーションをDJに組み込むというのは考えてらっしゃいますか?

S:DJに組み込むというよりは、やるならちゃんとライヴでやりたい。きっとDJ中にやると中途半端になってしまうので。DJをコンピューターでやって、っていうだけならば可能かもしれないけど、レコードもかけてとなると、「ああ、レコード終わっちゃった」みたいになってしまいそうで(笑)。ライヴでやることについては考えています。アルバムの曲でもいいし、またまったく別のちがう曲を用意してもいいし。でもライヴを、聴く感じの場所ではなくダンスフロアでやるならば、もう少しそれに対応した曲を新しく作ったほうがいい気もします。


全部(ライヴを)ハードウェアでやったらおもしろいかも、という話をしてます。

ビートにエッジが立っている、という感じの?

S:そうですね、ダンスフロア対応の、グルーヴ的なものを意識した曲。あともうひとつ考えてるいのは、イビザに住んでる友だちのトゥッチーロ(Tuccillo)が機材オタクで、ほんとうにハードウェアが大好きみたいで、たくさん持っているから、そんな彼と、全部(ライヴを)ハードウェアでやったらおもしろいかも、という話をしてます。そのための曲を作って、ハードウェアだけでライヴをやろう、っていう。
でも、またさっきの話に戻るけれど、シンクの問題という点だけでも、ハードウェアが前より使いやすくなったと思いますね。昔はバッチリ合わなかったから。シカゴ・ハウスのレコードとか聴いていると、ずれていくでしょ? たとえばあの、リル・ルイス(Lil Louis)“フレンチ・キス”だと、フィルインが曲のあいだじゅう、ちょっと遅れて鳴ってる。あれはあれで、味、なんですけどね。ただ、いまはコントロールが簡単になったから、ハードウェア使っても、そういうストレスが少ないからいい。メンテナンスしてるあいだに、「あ、今日一日終わっちゃった」で、明日になったら「もういいか」みたいなことが、やっぱりありましたから。

実際にはいま1曲にどのくらいの時間を使っているんですか?

S:時期的には2年経っているのもあるし、そうでないのもあるし、もっと長いのもありますね。やったりやらなかったり、あと、やってみて、うーん、やっぱりちょっと置いておこうって放置して、何ヶ月たってからまたやる、みたいな。だから、実働は3日程度かもしれません。逆に、短い時間にたくさん作る、という方法も、ちょっとちがった方向でおもしろいかな、とは思うんですけどね。ぱぱぱっと作れる、熟考していない曲。早く作れる人は、本当に早い。グティ(Guti)とかもすごい早い、音質とか、エンジニアリングとか、まったく気にしていないから(笑)。早いから数多くの曲ができるし、そうなるとたくさんリリースしたくなる。でも、そんなにリリースもできないから、結局ライヴや自分のパフォーマンスでしか使わない曲が増えていく、っていう。
でも、早く作るか、時間をかけて作るか、というのは、クオリティ・コントロールをどこにもっていくか、ということだから。僕は性格的に、ぱっとできたものを、こんなものでいいや、っていうのはできない質なんです(笑)。でも、それでできたほうがいい場合もあるのでしょうね。パッとできたもの。それはそう思います。

わかりました。ちょっとDJの話もききたいのですが、最近アナログを買ってらっしゃいますよね。トミイエさんはレーベルもやってらっしゃるから、必ずしもレコードのほうが音がいいってわけではないっていうのを知っていると思うのですが、それでも最近アナログを使いはじめるようになったっていうのはどうしてなのでしょう?

S:理由いろいろありますけど、いちばん大きいのは、デジタルで売っていない、アナログでしか出ていない曲がけっこうあるから。以前はレコード屋さんにときどき行って、アナログ・オンリーのレコードを買ったら、それを録音してデータにしてTraktoで掛けて、というのを繰り返していたのですが、面倒で。だったら最初からレコードで掛けたらいいじゃん、って思ってやってみたら、やっぱり楽しかった。そこからレコード屋に行く回数も増えていって。あと、いまはヨーロッパでのベースでもあるパリでは、レコ屋にチャリで行けるっていう地の利も働いてますね。


僕は基本的には、いまここにいるところがベースだって感じです。今日は東京だし。

今作がリリースされるのは〈アブストラクト・アーキテクチャー(Abstract Architecture)〉というトミイエさん自身の新しいレーベルで、NY/ベルリンがベースだそうですね。

S:レーベルの拠点について言わなきゃいけないからそう言いましたけれど、僕は基本的には、いまここにいるところがベースだって感じです。今日は東京だし。

あの、今作はリミキサーにベルリンの系のリミキサーとかを起用されてますし、ベルリン・ベースとのことですし、最近アナログも買っているそうなので──

S:ファッションっぽいよね(笑)。

いえ、ファッションぽいというか、ベルリンでの活動を考えてらっしゃるのかな、と。ベルリンでDJをするときにパソコンでDJをするとブーイングされるという話をよく聞きますし、そういう状況を意識しての動きなのかな、と。

S:じつはいまレーベルを手伝ってもらっている人が、フランス人だけれどベルリン・ベースなんです。それで(レーベルの拠点について)ああいう表現になった。でも、ヨーロッパのなかでプレイする場所がかたよっていたりするから、いままでそんなにやってないところで、もっとプレイしたいな、というのはあります。ベルリンもそうだし、パリとか。実際には、年に1回ギグがあるかないか、とか、そういう場所がけっこうある。ドイツ、フランスが、なぜかとても弱いんで。

なんか(その2つの国は)アナログが強いイメージはありますね。フランスもなんかちょっとそういうイメージがあります。

S:僕自身は、どんなフォーマットでDJしなくてはいけないっていうことはなくて、べつにTraktorでもいいじゃん、その人が好きなフォーマットでやればいいと思うのだけど。昔は100%レコードだったけれど、いままたレコードを掛けはじめると、レコードってコンピューターでの掛けかたと違ってくるのでそれがけっこうおもしろかったりするんですよね。デジタルだと、基本的にはプロモでもらっているのも毎回同じレーベルだし。デジタルにはない、みんなが持っていないものを探したい。少し違った物を混ぜることによって、いままで馴染みがある音楽に対して違った見方もできるし。
つまり、音楽的におもしろいほうに行った、っていうことです。実際にレコード屋にいくと「こっちのジャンルの方面に行くと、こんなものがあるんだ」みたいなことがデジタル配信とは違った方向で解りやすくていいし、自分でもリリースするようになったら、「どんなの出てるかな」って意識するじゃないですか。デジタルで、プロモをもらってBeatportで買い物する、みたいなのとは、また別のカルチャーがある。でも、ちょっと、「エリート的」な部分もあるから。

アナログが、っていうことですよね。

S:うん、俺のほうが偉いんだ、みたいなのが見える。それがちょっと鼻につくけれど(笑)。


(カセットは)昔は音が悪くて嫌だったけど、いまは逆に他のものが音がいいものばかりだから。

今回カセットも作るじゃないですか。カセットも、アナログも似たような感じがありますよね。

S:そういったちょっとしたエクスクルーシヴ感もあるよね。

「カセットで持ってるんだぜ」みたいな感じですよね。

S:それよりも今回アルバムをカセットでリリースしてみようと思うきっかけになったことがあって。実家にはいま母親が一人で住んでいるんだけど、一人だし一軒家からマンションに引っ越そうってなったときに、物をいろいろ整理しなきゃいけなかった。そうしたら子どもの頃に聴いてたジャズのカセットがいっぱい出て来て。NYに持って帰って当時録音したライヴのテープとか聴いてたら、軽く20年近く使ってなかったメディアだけに、知ってるのに新鮮、っていう再発見。制限がある音も独特なんだけど、ああいう昔のメディアをおもしろがってくれる人が世の中にいるし、それならば作ってみよう、ということになった。カセット自体は昔親しんだメディアなので、こんなところに戻ってきたんだな、というのもあります。スタジオ作業とかでも、テープの独特の質感とか生かせたらおもしろいかもとか思ってます。

カセットの鳴り、ということですよね。

S:昔は音が悪くて嫌だったけど、いまは逆に他のものが音がいいものばかりだから。

いまのようにクリアじゃないぶん、よけいに心地いい?

S:そう。たぶん、アナログ/レコードを好きなのは、それが理由でもある。同じようにちょっと高域の音が出ない感じで、あたたかくて。まあ実際には制限があるからなんだけれど。すこし上がひずんだりするのが楽しいし、カセットもその意味ではアリかな、と思いますね。

マスタリングに関しては全部同じですか?

S:マスタリングは、使ったスタジオでは全部で3種類作ってくれたんです。1つめは普通のデジタルの卓を通したもの。2つめが、ミキサーからハーフ・インチのテープを通して一回録音したものを再生して、またミキサーに戻したもの。そうすると、テープのサチュレーションがかかったりして違った効果が得られる。それから、デジタル配信用の音が大きいマスタリング。つまりマスタリングの行程でも、アナログというのを意識してました。でも、ちょっとテッキーな“0814”っていう曲の場合だと、テープを通すとアナログっぽすぎて上が丸くなりすぎてしまったので、ミキサーから直球のものを使いました。曲に合わせてマスタリング方法を選んで、それらをまとめて、ひとつのアルバム・パッケージにしたんです。そういう行程もおもしろいなあ、と思って。前にはなかった形だし。

では、3つのマスタリングの種類の中から、曲ごとに選んでいったんですね

S:あ、でも(配信用の)パキッとした物は使わなかったです。

これからの配信のリリースでも使わないんですか?

S:使わないですね、というのは、テープを通したものと、そうでないものでアルバムを組んでいったから。テープを通したものは配信用のマスタリング処理をしていないんです。
でも、音が大きいほうがいいですか?

(A&R)栃折氏: いや、とくに問題は。

S:まあでも、配信とか、音が大きい方がいいのかな?


試聴サンプルは配信対応のパキッとしたのを提出する、というのも手かもしれない。で、実際にダウンロードしてもらうのは、ちゃんとした音、というか、音圧を上げる処理をしすぎていないもの。

デジタル配信がはじまった当初は、音が大きいほうが、音がいいように聴こえてしまう感覚は否めませんでしたが、最近は試聴する側も聴きなれているので、パキッとするからいい、っていう印象も薄れてきた感じはします。

S:でも配信の試聴は、結局、ビットレートが低いから、もしかしたら音がデカくなる処理をしたほうが、iTunesとかの試聴用サンプルに出すのにはいいのかもしれない。

曲を試聴をしているときに、コンプがきつめで大きな音の曲が続いた後に、コンプがゆるめの曲が流れると、ちょっと弱い感じに聴こえてしまう、って言うことですよね。

S:そう考えると、試聴サンプルは配信対応のパキッとしたのを提出する、というのも手かもしれない。で、実際にダウンロードしてもらうのは、ちゃんとした音、というか、音圧を上げる処理をしすぎていないもの。サイトによっては1分の試聴用を出すところがあるでしょ、そこならできるから。TraxsourceやBeatportは勝手に(試聴用ファイルを)作るから、そういう対応はできないけれど。そうそう、ドイツのアナログ売っているDecks Records (https://www.decks.de) から、1分の試聴サンプルを要求されて、めんどうだなあ、って思いながら作ったんですよね。ディストリビューターに作ってくれって言われて。レーベル運営ってけっこう、音楽以外にやることがいっぱいあるんですよね。

(レーベル業務を)自分でやってらっしゃるんですか?

S:ほぼ自分でやってます、アシスタントみたいなのはいるけど。細かいこともけっこうありますね。まあ、自分でやらないと気がすまないっていうのもあるんですけど。大変です。
でも、このアルバムが(新レーベルの)一発めだから、まだそんなにやることが膨大というのではないし、ディストリビューターがやってくれるところもあるので、なんとかなるかと。(このレーベルについて)考えているのは、展示が入れ替わる、ギャラリー的なことを目指していて。いまはこの時期で、いまはこのアルバムの展示をやっていて、いろいろアルバムに関するものとかもあって、次は人とのコラボレーションを、というような。自分でギャラリーを持って、そこで展示をやる感じですね。普通のレコード・レーベル、というより、プロジェクトに近い。つまり、「次はこの人、その次はこの人」といったかたちでいろんなアーティストのリリースをするトラディショナルなレーベルとは、ちがうかもしれないです。普通に、A&Rをやって、デモを集めて、みたいないつもの形は、〈SAW Recordings〉でいままで通りやればいい。新しいレーベルでは、そうではないことをやろう、と。
それにしても今回は、タイミングといろんな人に恵まれて、よかったですね。ヴィジュアルもカッコいいのができたし。リミキサーとかも、いいタイミングで、いろんな人とできたという。ありがたいことです。


(東京は)音を作っている人もかなり増えたし、外国に行っちゃった人も含めて、シーンみたいなものも前よりおもしろくなっていると思う。他のメインな街に比べるとパイは小さいけれど、好きな人がずっと続けている、みたいなところもいいと思います。

先日、トミイエさんといっしょに来日したマーヤン・ニダム(Maayan Nidam)の“New Day”のリミックスは、いつ頃のリリースになるんですか?

S:いま”New Day”のビデオを作ってるんですけど、マーヤンのリミックスは、それを含めたパッケージでおそらく冬に近い頃になると思います。で、他にもいくつかリミックスを依頼しているので、それがまとまり次第ですね。その前にもう一枚、アルバム・サンプラーみたいのをリリースするんだけれど、それはまあ夏、8月ですね。“Landscape”って曲で、自分とフレッド・P(Fred P)がリミックスしています。ヴァイナル・オンリーで出るんですけど。「サンプラー」と言っても、1曲のヴァージョン違いを収録しているのだから、ちょっと「シングル」っぽいですね。日本は先行発売で早かったんですけど、アルバムが6月に出て、8月にアナログが出て、という流れでアピールしていこうかと。

リミキサーの人選は、アナログの鳴りがわかっているアーティストに依頼した、ということなのでしょうか?

S:というよりは、この曲にはこの人が合うかな、って選んでいったのが、結果的にはアナログを掛けたり、長くやったりしてる人になった。たとえばロン・トレントも長くやってるから、ぴったりの音になったし。あまり「flavor of the month(いま旬のもの)」的な人よりは、長くやっていて、わかっている人のほうに振れたから、結局は流行っぽいひとはリミキサーにはいなかったですよね。ただ、自分自身も、まさか20何年やっていて、ロン・トレントにお願いするとは思わなかった。

親交はあったのですか?

S:20年くらい前になんかいっしょにやろうよ、って話をしたんですけれど、それがやっと実現した感じですかね。

最後に、トミイエさんから見た東京というのはすごい窮屈に感じるとは思うのですが──

S:いや、僕がはじめた頃から20何年経ってるので、アーティスト、音を作っている人もかなり増えたし、外国に行っちゃった人も含めて、シーンみたいなものも前よりおもしろくなっていると思う。他のメインな街に比べるとパイは小さいけれど、好きな人がずっと続けている、みたいなところもいいと思います。
あと、インターナショナルに活動している海外のDJが、東京に来るとけっこうみんな楽しい思いをして、帰ったらみんなに「東京よかった」って自慢してるんですよね。いまは DJが世界中にあふれてるから、中途半端なレベルだと東京に呼んでもらえなかったりすることも多いと思う。だから、東京に行ければステイタスだし、「東京は最高だった」と自慢する。それはうれしいことだし、そうやって言ってもらってるうちに、東京でどんどん楽しいこと、おもしろいことをやっていって、シーンを上げていく感じに出来たらいいんじゃないかな。日本がクールだとみんなに思ってもらえているうちにね(笑)。


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