「IR」と一致するもの

KABUTO - ele-king

 KABUTOは千葉出身、東京在住のDJ。KABUTOが少年時代を送った1980年代~90年代はパンク以降の音楽、クラブ・カルチャーの隆盛、ファッション、スケート・ボード、あらゆるユース・カルチャーが混然となった時代である。当時10代のKABUTOは千葉の街で、日々次々と生み出される新しく刺激的なムーブメントの数々を、ヤンチャな遊びの過程で貪欲に吸収して育った。
 そして2000年代になり、KABUTOは地元の先輩であるDJ NOBUからの誘いで、始動間もない〈FUTURE TERROR〉に加入する。千葉という街で何の後ろ盾もなく、仲間たちによる手づくりで始められた〈FUTURE TERROR〉……それがどれだけ特別なものであるかは、インタヴュー本文でKABUTOの言葉から知ってもらうべきだろう。とにかくKABUTOは〈FUTURE TERROR〉のオリジナル・メンバーであり、後に彼は〈FUTURE TERROR〉を脱退し東京に移るが、いまでもKABUTOの言葉は〈FUTURE TERROR〉への愛と敬意にあふれている。それからKABUTOは〈FUTURE TERROR〉で得た大いなる経験と理想を胸に歩み、彼はいま、東京のダンスフロアからもっとも信頼されるDJのひとりとなった。頼るものはDJとしての心と技、ただそれだけだったであろうが、それゆえに彼の周りには、新しい仲間たちも集まってきた。

 現在のKABUTOのホーム・グラウンドは、全国の音楽好きから愛される東高円寺の〈GRASSROOTS〉で自らオーガナイズする〈LAIR〉。それと、和製グルーヴ・マスターと名高いdj masdaが運営し、ベルリン在住のyone-koも名を連ねる代官山UNITの〈CABARET〉である。KABUTOのプレイ・スタイルの片鱗は、2009年に〈DISK UNION〉からリリースしたMIX CDシリーズ"RYOSUKE & KABUTO - Paste Of Time Vol.1/2"や、この秋サウンドクラウドにアップされた"Strictly Vinyl Podcast 010"等でも触れてもらえると思う。だができることならぜひ、パーティの現場でこそ、彼のDJと人柄を味わってもらいたい。なお2013年12月13日、現時点でのKABUTOの最新のプレイのひとつである〈CABARET〉では彼は朝6時過ぎからブースに登場。ミニマルとディープ・ハウスを行き来し気持ちよく踊らせる持ち味を発揮した後、荒々しいシカゴ・ハウスをはさみつつどこまでも加速するようなKABUTOのプレイにダンスフロアの歓声はどんどん膨らんでいった。時計は7時半を回っていた。

 それではKABUTOの初めてのインタヴューをお届けする。KABUTOと長年交流する五十嵐慎太郎(〈Luv&Dub Paradise〉主宰)をインタヴュアーとして、過去、現在、そしてこれからについて存分に語ってもらった。


俺、全部同時進行なんです。「(特定の)この音楽で育った」っていうのはないんですよね。そういう音楽の聴き方をしていたのは先輩とかの影響もあるから、千葉での遊びがルーツとも言えるかもしれないですね。

■五十嵐:俺、カブちゃんとは常に会うような関係ではないけど、お互いの要所要所では何度も会って、熱い話をしてるんだよね。それこそカブちゃんが〈FUTURE TERROR〉を離れるにあたって考えていたこと、その当時の目標やヴィジョンなんかも含めて、個人的には以前にも話を聞いてるんだ。それからしばらく経って、KABUTO君の近年のDJ/オーガナイザーとしての活躍ぶりは、すごく注目されるべきものだと俺は強く思っていて。それでインタヴューという形で改めて、KABUTOというDJのこれまでの歩みや、何よりもKABUTO君がこの先、DJとしてやろうとしていることについて、じっくり話を伺おうと思ったんです。
 まず、カブちゃんが〈FUTURE TERROR〉を辞めたのはいつなんだっけ?

KABUTO:2008年に辞めたから、5年ですね。

■五十嵐:いきなり言っちゃうけど、その頃カブちゃんは、NOBU君が〈FUTURE TERROR〉というパーティを何もないところから作って、みんなの信頼を勝ち得るまでのものすごい大変さをわかった上で、「そこに挑戦したい」と言っていたんだよね。そして「それで、俺がDJとしていまより良くなっていったとしても、それは〈FUTURE TERROR〉のおかげなんだ」とも話していた。

KABUTO:本当にそう思います。

■五十嵐:これからあらためて聞くけど、カブちゃんがその頃から思ってきたことに、ここに来て近づいてきたのかなって俺は感じてるんだよね。

KABUTO:やっとちょっとは見えたかなって感じですね。

■五十嵐:まず、11月15日にカブちゃんがいま〈GRASSROOTS〉で主宰してる〈LAIR〉の6周年があったじゃない(その日のゲストはムードマンと、DJスプリンクルズことテーリ・テムリッツだった)。あれは本当に素晴らしかったね。あの雰囲気を作り上げたっていうのがさ。DJはもちろん良いに決まってるんだけど。

KABUTO:プラス皆の人間力ですよね。

■五十嵐:その一方で2013年になり〈womb〉や〈ageha〉の〈ARENA〉のような大きな会場のメインも務めたり、活躍の場を広げてきているよね。そんなこといろいろと思い出してたら、こないだの〈FUTURE TERROR〉の12周年(2013年11月23日)のフロアでさ、朝、俺がHARUKAのDJで踊っていたら、NOBU君がカブちゃんのところに来て、「お前、去年あたりからいい動きしてるよ」って、俺の目の前で話し出してさ(笑)。それを見た時に、お互いの気持ちをメチャメチャ感じて、何故か俺が感動しちゃって。俺が泣いてどうするんだっていう(笑)。

KABUTO:NOBU君とは、もう出会って20年ですよ。俺が17のとき。共通の知り合いがいて、ある日その人とNOBU君とで俺の地元に来たことがあって、そのときに初めて会って。凄い覚えてますね。RYOSUKE君(同じく元〈FUTURE TERROR〉)も17のときから知っていて、俺はRYOSUKE君が当時やっていたバンドをよく見に行ってましたね。

■五十嵐:RYOSUKE君がやってたのはハードコアのバンドだったんだっけ?

KABUTO:そうです。RYOSUKE君は、ハードコアだけじゃなくてレアグルーヴとかいろいろな音楽を聴いてる感じで、当時の俺はメチャメチャ影響受けてるんですよね。RYOSUKE君とは、高校生の頃、俺が船橋のバーみたいな所でDJしてたときに、初めて話したのは凄い覚えてます。

■五十嵐: RYOSUKE君も年上だよね? 当時のふたりはどんな関係だったんだろう。街の兄貴分みたいな感じ?

KABUTO:兄貴って、そこまで仲良くなれなかったですね。

■安田:遊びに行くといる、格好いい先輩みたいな?

KABUTO:そう。千葉に〈LOOK〉っていうライヴハウスがあって、そこによく遊びに行っていたんですけど、最初は話もできなかったですね。「ちわっす」「おつかれさまです」って感じで。

■五十嵐:ガハハハハ(笑)! そのときが17歳っていうと、1992、93年ぐらいか。そのときはどんなDJしてたの?

KABUTO:そのDJのとき、(ビースティー・ボーイズの)『CHECK YOUR HEAD』からのシングル・カットをかけてたんですよ。そうしたらRYOSUKE君が反応して、話かけてくれて。

■安田:KABUTO君の音楽のルーツっていうと何なんですか?

KABUTO:うーん、強いていうならスケート・カルチャーがルーツですね。スケートのビデオで使ってる音楽っていろいろじゃないですか。それをすごい観てたから、いろんな音楽を聴くようになったんですよ。
 あと姉が洋楽好きだったので、それでピストルズとかを聴いたのが小6とか。で、ガンズとかのハードロックからヘヴィー・メタル。スレイヤー、メガデス、というのが中1、中2ぐらい。
 で、中3になるとスケートもはじめて、メタリカ、アンスラックス、レッチリとかレニー・クラビッツを聴いていて、それからジミヘンやクラプトンとかも聴くようになりました。で、高校生になるとスーサイダル(・テンデンシーズ)とかバッド・ブレインズとかを聴く一方でHIP HOP、R&Bも聴いてて、テレビでは〈BEAT UK〉を観てたり。そういう感じで、聴いてきたものは皆とそう変わらないんだけど、ゴチャゴチャでいろいろ聴いてたんですよね。だから「昔何聴いてたの?」って聞かれると「全部!」って答えてて。レゲエやスカ、キンクスもスペシャルズも大好きだったし。昼間はスペシャルズ聴いて、夜になったらサイプレス(・ヒル)聴いて、みたいな(笑)。またゆったりしたい日にはスティーヴィー・ワンダーやプリンスも聴いてたし。だから「(特定の)この音楽で育った」っていうのはないんですよね。あと、そういう音楽の聴き方をしていたのは先輩とかの影響もあるから、千葉での遊びがルーツとも言えるかもしれないですね。

■五十嵐:ロックとクラブ・ミュージックが交わる時期というか、とにかくいろいろ新しいものが出てきた時代でもあったよね。

KABUTO:そうですね。アンスラックスとパブリック・エネミーの“ブリング・ザ・ノイズ”とか、ビースティーとかNASも人気があって、それで元ネタを掘り始めたりするんですよね。

■五十嵐:『パルプ・フィクション』等の影響でのレアグルーヴもあったしね。

KABUTO:映画の影響もありましたね。高校の時に『さらば青春の光』を見たり、マット・ヘンズリーの影響でVESPAが流行って乗ったりもしてましたね。

■五十嵐:90年代にはフィッシュとか、ジャム系のバンドも出てきたけどそういった音は?

KABUTO:俺はフィッシュとかは通ってないんですよ。その頃は俺、日本のハードコアがすごい格好いいと思ってた時期ですね。下北沢の〈VIOLENT GRIND〉とかもよく一人で行ってました(笑)。そういえば、NOBU君はニューキー・パイクスと繋がってたりして。

■五十嵐:そうなの?

KABUTO:そうなんですよ。そこでAckkyさんとも繋がるんですよ。

■五十嵐:なるほどね! Ackkyもニューキー・パイクスのライヴに客演で参加したこともあったみたいだもんね。
 そういう、90年代からいまへと連なる人の繋がりもあるわけだけど、ミクスチャーとかHIP HOPの世代の人たちから、バンドとDJの間の壁がまるっきりなくなったと俺は感じていて。要するにNOBU君世代ぐらいからなのかな。それまではクラブとバンド、ラップとバンドの垣根はすごく高かったように思うんだけど、サイプレス・ヒルとかガス・ボーイズが出てきたあたりから変わってきたんだよね。

KABUTO:それが、俺が高校生の頃ですね。俺、全部同時進行なんです。ハードコア聴いてる時期に〈MILOS GARAGE〉に行ったり、平日の青山〈MIX〉、あと〈BLUE〉とかも、千葉から遊びに行ってたし。四つ打ち行く前にアシッド・ジャズ、ラテンとかも聴いていて、ビバ・ブラジル(Viva Brazil)のスプリットのレコードを買ったらその逆面にサン・ラが入ってたりして。後に気付くんですけど、当時はサン・ラってわからず聴いてましたね。

■五十嵐:カブちゃんはバンドだけじゃなくDJの方にも、すんなり入っていったんだね。

KABUTO:クラブ・ミュージックの最初は、地元の仲良い年上の友だちが、兄弟でレコードすごい持ってて。その家がたまり場でよくDJして遊んでたりしてたんです。そこで電気グルーヴの『VITAMIN』や『オレンジ』とかを初めて聴いて、あとは〈ON-U〉とかのダブを聴いたり。高校のときはハウスとかテクノってあまりピンとこなかったんですけど、シカゴ・ハウスを聴いたときに「何だこれ!?」って思って衝撃を受けて、そこからハマってったんですよ。

■五十嵐:その頃、RYOSUKE君とかNOBU君はもうDJやってたの?

KABUTO:NOBU君は出会った頃はまだそんなにやってなかったはずですね。あまり正確には覚えてないんですけど。その頃トリップ・ホップも流行ってたじゃないですか。スカイラブ(SKYLAB)とか〈MAJOR FORCE〉、デプス・チャージ、セイバーズ・オブ・パラダイスとか、それでアンディ・ウェザオールが〈新宿リキッドルーム〉でやるときに、地元の友だちとNOBU君と一緒に行ったんですよ。それがクラブで初めての四つ打ち体験。19ぐらいの時かな?

■安田:四つ打ちを聴きはじめてからはどうなったんですか?

KABUTO:その後、ハタチぐらいからの何年か、毎年のようにアメリカに遊びに行ってた時期があるんですよ。地元のスケーター仲間がアメリカに住んでたから。いろんな街に旅行して、クラブもいろいろ行きました。ニューヨークに行ったときには(ジュニア・)ヴァスケス聴きに行ったりとか(笑)。NYでは他にも〈Sonic Groove〉と〈Drumcode〉の共同開催みたいなパーティとかにも行ったし。ちょうど年越し時期のフェスっぽいパーティで、NYのフランキー・ボーンズ、シカゴのマイク・ディアボーンやポール・ジョンソン、ヨーロッパからもアダム・ベイヤー、ニール・ランドストラムとか、いろいろ出てましたね。サンフランシスコではQ-BERTとか聴いてるけど、レコードはテクノを買って帰ってきました(笑)。ロスアンジェルスに行った時はたまたまカール・クレイグとステイシー・パレン、デトロイトのふたりが出るパーティがあったから、それに遊びに行ったりとかしてました。

■五十嵐:ここまで、若いときの音楽の話には「地元の仲間」という言葉が頻繁に出てくるから、やっぱり「千葉」はカブちゃんにとってとても重要な要素なんだね。カブちゃん自身は、住んでいたのは千葉のどのあたりなの?

KABUTO:僕は成田で、〈FUTURE TERROR〉の最初の4人のなかでは僕だけ住んでる所が離れてるんですよ。

五十嵐:成田ってどういう感じの街だったの?

KABUTO:成田山と空港くらいで田舎です(笑)。で、外国人が多い。地元の仲間はみんなスケーターでしたね。

■五十嵐:それにハードコアとか、バンドや音楽が好きな仲間も。

KABUTO:そうですね。皆で滑って、飲みに行ったり。その頃俺らまだ未成年だったけど、悪い先輩達と遊ぶのがすごい楽しかったし。そこからもう夜遊びの方にシフトしていくタイミングですね。

■五十嵐:俺の地元の静岡もそうだけどさ、そういうので生活は成り立たないじゃない。

KABUTO:成り立たないですね。

■五十嵐:どうしてたの?

KABUTO:普通に働いてました。まず車がほしいんで、お金貯めなきゃ、ってなって。高校卒業してすぐ車ゲットして。これで東京のクラブにも遊びに行ける! って。もうみんな乗せてパーティ行ったりとか、ウロチョロウロチョロしてましたね。俺、就職するとか大学に行くとか、全然考えなくて。まず遊び。

■五十嵐:ガハハハハ(笑)!

KABUTO:パーティの楽しさを知ってしまったので、もうひたすら遊びに行ってました。

■五十嵐:千葉で自分でパーティもやってたの?

KABUTO:いや、やってないです。俺が22歳くらいの時にRYOSUKE君が〈MANIAC LOVE〉でDJシャッフルマスターと〈HOUSEDUST〉っていうパーティでDJをやってて、それに結構遊びに行ってて。その頃にDJ RUSHとかPACOUみたいなDJを初めて現場で聞くんですよね。後で知るんですけど、その頃、KURUSU君(FUTURE TERROR)もRYOSUKE君と遊んでるんですけど、俺はその頃はまだKURUSU君のことは知らなくて、実際に知り合うのはもう少し後なんですよね。

■五十嵐:そうなんだ?

KABUTO:俺とKURUSU君がリンクしたのが、たしか(2000年前後に大人気だった)SUBHEADが来日した後くらいだったかな。
 SUBHEADが来日して、渋谷道玄坂の〈MO〉ってクラブでやってた〈Maximum Joy〉ってパーティでプレイしたことがあったんですけど、そのパーティがすごいヤバかったんですよ。ちなみに〈FUTURE TERROR〉の第1回目のゲストが、そのSUBHEADのフィルとMAYURIさん(metamorphose)なんですよ。
 その〈Maximum Joy〉には俺は客として遊びに行ってて、そこからクリスチャン・ヴォーゲルとか、No Future系にもハマっていくんですけど、そこにはNOBU君たちもいて。それから何年かして誘われるんですよね、〈FUTURE TERROR〉に。

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デトロイトで音を作っている人たちって、結構生活が厳しいながらも、やっぱり音楽の力を信じてやってたりしますよね。自分も(進学はせずに)仕事して、働いた後にパーティの準備するために集まったりしてたんで、そういうところが当時ちょっと自分とダブって感じて、デトロイトの音楽にハマったっていうのもあるかもしれないですね。

■五十嵐:〈FUTURE TERROR〉はこないだ12周年だったから、2001年ぐらいに始まってるわけだよね?

KABUTO:俺は1回目の〈FUTURE TERROR〉のときはDJじゃなくて。実は1回目は遊びにも行ってないんですよ(笑)。
 俺、その時パーティが開催されることを全く知らなかったんです。地元で仲良かった友だちはそれ行ってて、俺は後から聞いて「え、そんなのやってたの!?」みたいな。で、それが集客も良かったらしくて、レギュラーでやってみようかってなったらしいんですけど、俺はもう、全然知らずに。
 だけど、ちょっと経った頃に……当時よく、音楽好きな友だちと、家でいろんな音楽聴きながらDJしてたんですよ。そしたらある日、NOBU君からいきなり電話がかかってきて「DJやらない?」って言われて。「レコードあるんでしょ?」「はい」って、「今度こういうのやるんだけど、どう? RYOSUKEとKURUSUと4人で」って。だから正式には、俺は2回目からなんですよ。

■五十嵐:なるほどね。

KABUTO:その時は結婚式場を借りて、システムを入れてやるって話で。でも、その時俺はパーティのやり方がなんにもわかんないから。必死にDJやるだけでした。

■五十嵐:俺、その辺の話は静岡にいる時に、何かの雑誌で読んで知った。パーティを自分たちで一から作り上げて。千葉にね、静岡の自分と同じ気持ちの人たちがいるんだってシンパシーを感じてたんだよね。環境がなければ自分たちで作るしかないっていう。

KABUTO:俺はもう、右も左もわかんないし、DJしかやってなかったんですけど。ただ言われたことをひたすらやって。「この時間に集合ね」って言われたら行って、システムを運ぶのを手伝ったりとか、その程度でしたけどね。その前に、自分がパーティに行ってクチャクチャに遊んで、っていう経験はあるんですけど、それを自分がやるとなったらどうやればいいかっていうのは、わかってなかったですね。

■五十嵐:東京のクラブで遊んでて、それを地元の千葉で再現したいっていう気持ちだったの?

KABUTO:うーん、東京で遊んでて、なんだろう、その時期はRYOSUKE君も〈HOUSEDUST〉を辞めていて、NOBU君は空手に打ち込んでた時期なんですよね。たぶん、また遊びたくなったからはじめたんだと思うんですけど。パーティをやるスキルはみんなあったと思うんだけど、日本のシーンに対するアンチテーゼ的な感じで最初ははじまってるんで。

■五十嵐:商売気とかの部分かな?

KABUTO:当時の東京のノリにちょっと飽きちゃったというか。やっぱり地元でやりたいっていうのも強かったと思うんですよね。

■五十嵐:遊びではじめたことに、だんだん気持ちが入っていったって言う感じ?

KABUTO: 初めはNOBU君に誘ってもらったけど、なんで俺を誘ってくれたのかはわかんないですね。聞いたこともないですけど。
 最初の〈FUTURE TERROR〉でのDJは警察に止められて途中でダメになったし、それからは数々のいろんなことがあるわけですけど。当時は「地元でやろう」ということだけを考えてたと思うんですけどね。それが徐々に、徐々に大きくなっていくというか。結婚式場からレストランに移ったり、場所も変えつつ。あ、レストランの前に別の箱があって。潰れて空いてた箱なんですけど、そこでパーティできるって話になって、〈FUTURE TERROR〉で最初にテレンス・パーカーを呼んだのはそこなんですよ。そこでみんなで何日か前から集合して、ホコリだらけのところをみんなで掃き掃除から全部やったりして。そのパーティが凄く強烈でしたね。それまでのパーティも楽しかったんですけど、そこで気持ちが一気に入った感じですね。

■五十嵐:ゼロから自分たちで作っていった、っていう。

KABUTO:強烈に憶えてますね。

■五十嵐:テレンス・パーカーも感動して〈Chiba City〉っていうレーベルを作っちゃったりね。

KABUTO:すぐやめちゃいましたけどね(笑)。最初DJ引退するって言ってたんだけど、その時の〈FUTURE TERROR〉で「やっぱり辞めない」ってなって、それからいまだに辞めてないんですけど。テレンスもそれぐらい強烈なインパクトを感じたんだと思うんですよね。(壁や天井から)水滴も垂れるし、最前列はタバコの火も点かないぐらい酸欠で。みんなメチャクチャ踊ってて。本当、初めて「ハウス」を感じた日だったかもしれない。

■五十嵐:伝説として話は聞いてる。

KABUTO:あれ遊びに来た人はみんな結構憶えてるんじゃないかなぁ。当時はいろんなMIX音源を聴けるサイトは〈Deephouse Page〉ぐらいしかなくて、来日前はそれでチェックするしかなかったんだけど、テレンスはHIP HOPとかいろいろなセットも結構やってたから「当日はどんなDJやるんだろう?HIP HOPやったらどうする?」とか、心配したりもしてたんですよ(笑)。けど、その日はURから始まって、ゴスペルやらディスコやらを2枚使いでかけたりしてて、何じゃこのDJは! って皆ひっくり返ったっすね。

■五十嵐:みんなで何日も前から集まって準備してそこに至る、って、いいなぁ。

KABUTO:みんなでマスクして(笑)。でも千葉のそのDIYスタイルはずっとそうで。その後やった会場はレストランだったけど、そこも何日か前から集合して、壁に防音やったりしてました。そこで本当、パーティをつくるっていうのはこういうことだと教えてもらって……「教えてもらった」って言っても、言葉で何を言われるわけじゃないですけど。

■五十嵐:今日はいろいろ訊こうと思ってたんだけど、その全部の答えがいまの話に集約されていたというか。そういうパーティ体験があったからこそカブちゃんは、ただスキルを磨くだけのDJにはならなかったんだね。

KABUTO:DJのスキルがあっても気持ちがないと……NOBU君のDJを見てたらわかると思うんですけど、たまに(ミックスを)ミスりますよ、NOBU君でも。だけど人間力で持っていけるんですよ。あれはNOBU君にしかない部分だと思うんです。あのイケイケな感じでミックスしてオラーッて、フロアが盛り上がっちゃうんですよ。ああいうDJ、誰にでもできることじゃないから、それをずっと見てると、そういう感覚に陥っちゃうというか。

■五十嵐:スキルは大事だけど、パーティを楽しみたいという気持ちはもっと大切なんだよね。

KABUTO:そう。その気持ちがグルーヴになって現れるし。あとひとつ言えるのは、〈FUTURE TERROR〉のお客さんってメチャメチャ踊るんですよ。常にダンスフロア。そういうダンスフロアの雰囲気。踊った人にしかわからない感覚ってあるじゃないですか。DJの皆もそうで、その感覚を持ったDJが揃ったな、とは思いましたね。

■五十嵐:高橋透さんが同じこと言ってた。透さんはソウルのダンサーやってたの。チーム組んで。透さんが言うには、俺たちは音楽評論家じゃないんだ、ダンスして遊ぶ仲間なんだ、って。

KABUTO:やっぱり、踊ったときにしかわからない感覚、ダンスフロアにいる時にしかわからない聴こえ方、見え方って重要じゃないですか。それをみんな知ってるんですよね。それを言葉で確認したりしないですけど、自然とDJもそうなるというか。〈FUTURE TERROR〉が最初ハウスやってたのも、そこから今のテクノに移行していって耳がどんどん変化していくのも、踊ってる人ならではの感覚があるゆえにだと思います。

■五十嵐:ダンスの楽しさを、人一倍味わっちゃってる人たちなんだよね。

KABUTO:そうなんですよね。いまの〈FUTURE TERROR〉に来てる人は知らないかもと思うんですけど、最初は歌物がガンガンかかってましたからね。ゴスペルとか。デトロイト・ハウスが好きすぎて、実際みんなでデトロイトまで遊びにに行っちゃいましたし(笑)。
 デトロイトで音を作っている人たちって、結構生活が厳しいながらも、やっぱり音楽の力を信じてやってたりしますよね。自分も(進学はせずに)仕事して、働いた後にパーティの準備するために集まったりしてたんで、そういうところが当時ちょっと自分とダブって感じて、デトロイトの音楽にハマったっていうのもあるかもしれないですね。俺の勝手な妄想かもしれないですけど(笑)。仕事してキツいけど、その日のためにみんな気持ちをそこに持っていくというか。
 ひとつ、すげー嬉しかった話してもいいですか(笑)? さっき話したテレンスを呼んだ回の後なんですけど、デトロイトからテレンスとスティーヴ・クロフォードのふたりを一緒に〈FUTURE TERROR〉に呼んだ時があったんです。そこでNOBU君は(海外からゲストをふたり招く大切なパーティを)、テレンス、スティーヴ、俺、の3人だけで一晩やらせてくれたんですよ。そのときもお客さんパンパンで。すげー嬉しかったですね。任されたっていうのもあったし。スティーヴの前にやったんですけど、DJ変わるときお客さんすごい拍手してくれて、テレンスとスティーヴも来てくれてワーッってなって。本当嬉しかったですね。NOBU君はサラッと俺を指名してくれたというか。RYOSUKE君やKURUSU君でもいいはずなのに。でも俺に振ってくれたんです。

■五十嵐:それぞれがDJスキルを見せつけるためにパーティをやってるんじゃないんだよね。

KABUTO:それをすごい感じましたね。

■五十嵐:こないだ(2013年11月)、カブちゃんが〈ageha〉の〈ARENA(メインフロア)〉でやってたじゃない? 同じ日にNOBU君は〈ageha〉の中の〈ISLAND〉でやってたんだけど。いまの話を聞いて、その日のことともリンクすると思った。

KABUTO:俺は初めてNOBU君が〈ARENA〉でやるときも行ってたし、正直みんなも、〈ARENA〉はNOBU君だと思ってたと思うんですよ。最初話が来た時は、自分が本当に〈ARENA〉でやるとは思ってなかったし。今までやってきたことがちょっとずつ繋がってきた瞬間でもありました。

■五十嵐:カブちゃんが〈ARENA〉でやるって知ったときは、俺もめちゃめちゃ嬉しかった。11月にはその〈ARENA〉があって、インタヴューの最初に言った、〈FUTURE TERROR〉12周年におけるNOBU君の「お前、この1年いい動きしてるよ」という言葉があった。その時に俺は「やっぱり思ったとおりだな」って感じたんだよね。あれは同じクルーとしての言葉でもあるけれど、ひとりの男同士としての言葉なんだよね。

KABUTO:本来DJとしては、そういうの持ち込まない方がいいのかな、って思うところもあるんですけど、やっぱり千葉の人間ってそこが熱いのがいいところだから。そういうのがダメな人もいるんですよ。でもやっぱり俺はそういうところ出身の人間なんで。そういう人たちのパーティはやっぱ熱いから。泣けるっすよね。

■五十嵐:だからデトロイト・ハウスにも泣けるんだよね。

KABUTO:感動するし、流行り廃りじゃないスタイルで、本当にここ(胸に手を当てて)。気持ちの部分。いちばん芯の部分をちゃんとわかってる人にしかできないパーティというか。〈FUTURE TERROR〉もダメな人にはダメだと思うんですよ、でもそれはまだ、本当の〈FUTURE TERROR〉を知らないなって。 

■五十嵐:最近になってNOBU君を知った人には案外知られてない部分かもしれないし、もっとアナウンスをしたい部分だと思うんだよね。

KABUTO:常に100%。本気な人ですね。

■五十嵐:KABUTO君もそうなんだよ。

KABUTO:その影響を受けてるから。それは身体で教えられたというか、見せられましたね。言葉では何も言われてないですね。

■五十嵐:それで〈GRASSROOTS〉の〈LAIR〉も同じ11月に6周年。「本当に素晴らしかった」という感想は最初に伝えたけど、あの光景を見た時に、カブちゃんがいままで頭に描いてたことが、形になってきたことの表れだと俺は思ったんだよね。6年経って、それについてはどう?

KABUTO:元々は〈GRASSROOTS〉が10周年のときに、(店主の)Qさんから「カブちゃんやってみる?」って言われて、「いいんすか?」って、最初はホント気楽にはじめさせてもらったんです。そのときは〈FUTURE TERROR〉に在籍してたんで、〈LAIR〉はもうちょっとパーソナルなパーティ……自分のスタイルでパーティをやれたらいいかなと思ってました。その後すぐに〈FUTURE TERROR〉を抜けるんですけど、千葉で教わった、パーティを一から作っていくことを目標にしてやっていきたいと思ってましたね。6年本当あっという間でした。やっと少しは良い感じにやれてきたかなと。

■五十嵐:いま話してくれた、「結果的に〈FUTURE TERROR〉を辞めることになったけど、自由にやれることにもなったんで、千葉で教わった、パーティを一から作っていくことを目標にしてやっていきたいと思うんです」という話が実は、このインタヴュー冒頭で俺が言ったことなんだよね。俺がブッキングさせてもらった姫路の〈彩音〉で、酒でベロンベロンになりながら2時間ぐらい同じ話をずっとしてたよ(笑)。

KABUTO:だはは! ありましたね(笑)。元〈FUTURE TERROR〉の人間として、このパーティの凄さを、もっと知らしめたかったっていうのもありましたしね。

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これから厳しくなっていく環境のなかで、どれだけ工夫してサヴァイヴしていくか。それは、その人がこれまでやってきたことが全部出ちゃう部分だと思うけど、そこからいい音楽は絶対生まれてくると思っていますね。やっとみんな本気で考え始めたんじゃないかって思ってて。「なぜパーティをやってるのか」ということを。

■五十嵐:そして、〈LAIR〉が軌道に乗ってきた2009年には、カブちゃんとRYOSUKE君のスプリットのMIX CDシリーズ(『Paste Of Time』)を〈DISK UNION〉からリリースしたじゃない。あれは俺、いまだに聴いてる。さっきカブちゃんが「踊った人にしかわからない感覚を大事にしているDJが〈FUTURE TERROR〉には揃った」という発言をしていたけど、あのCDの空間の捉え方はまさしく、自宅ではない音の響き方を知ってる人たちのものだと思うんだ。
 去年、〈DOMMUNE〉の番組でベルナー・ヘルツォークの映画(『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』)を紹介する番組に俺が関わったときに、あの日の〈BROADJ〉をRYOSUKE & KABUTOにお願いしたのも、『Paste Of Time』からの流れなんだよ。あの映画は、それまで言われていた人間の起源を大きく塗り替えた、3万2千年前の洞窟壁画にまつわる作品なんだけど、それを〈DOMMUNE〉の番組前半で紹介するなら、番組後半の〈BROADJ〉は「あのふたりに頼んでみたい」と思ったんだ。

KABUTO:なんだろう、(『Paste Of Time』でやったように)空間をイメージするっていう行為というか、ある空間の中でダンスするとか、みんなパーティでやってることなんですよ。

■五十嵐:俺が素晴らしいと思ったのは、ふたりは映画に合った、洞窟という空間による音の響きを意識した選曲とミックスをちゃんとしてくれたのよ。空間プロデュースという側面でのDJの役割を見事に果たしてくれて、印象深いんだよね。

KABUTO:俺も、「洞窟」っていうテーマは初めてで(笑)、しかも何万年もさかのぼるっていうのは初めての感覚で、悩みましたけどね。

■五十嵐:何万年も前の人も、現代の人も、根本のところでは同じなんだよね。それを音で見事に表現してくれた。

KABUTO:あのときの録音はたまに自分でも聴いてます(笑)。でも、そうやっていろいろな現場でDJやれるのはありがたい話ですよね。いま、同じ〈CABARET〉チームのyone-koやmasda君と出会ったのもそうだし。yone-koに関しては、静岡にDJで行った時に、静岡のKATSUさんから「yone-koってのが東京にいるからよろしくね」って言ってもらったことがあって。でも実は俺は、当時から〈CABARET〉が気になってたんですよ。日本人の音源も結構チェックしてたから、The Suffraggetsも聴いてたし。で、静岡から戻ってきてから、〈CABARET〉に遊びに行って。そこで、「yone-ko君っすよね?」って、俺から話しかけたんですよ(笑)。「今度タイミング合ったら一緒にやろうよ」って。それがファースト・コンタクトですね。
 その後、さっき五十嵐さんが言った『Paste Of Time』を俺とRYOSUKE君とで出した時に、「リリース・パーティやらない?」って話になったんですね。それで「ふたりだけでやるのもなんだから、誰か呼ぼうか」ってなった時に、yone-koがいいんじゃないか、と。そのときにyone-koと初めて一緒の現場でDJやって、yone-koが俺らのDJにも反応してくれて。それですぐyone-koはわかってくれたと思うんですよね。その時、音楽の話はそんなにしてないと思うんですけどね。

■五十嵐:音で通じ合った。

KABUTO:そう、それで俺が「〈LAIR〉でもDJやってよ」って。逆にyone-koは自分が〈SALOON〉でやってた〈Runch〉に呼んでくれたり。そういう風に、とんとん拍子に。
〈CABARET〉のメンバーは、最初yone-koしか知らなかったんですよ。他のメンバーとは誰も喋った事なかったから。顔は知ってたんですけど(笑)、話しかけるのも照れくさいしって感じで。で、〈CABARET〉に遊びに行くようになって、yone-koと話してるときにmasda君が来て、「KABUTO君だよね?」って話しかけてくれて「よろしくっす」みたいな感じで。で、少し経ってyone-koはベルリンに行くんだけど、ある時にmasda君と話してて、「〈CABARET〉どうするの?」って聞いたときに、「パーティは続けたい。手伝ってくれない?」って言われて。で、俺、レギュラー・パーティも〈LAIR〉しかなかったから「いいよ」って。俺、最初、裏方の手伝いかと思ったんですよ。一足早く現場に入っていろいろケアしたりとか、そういう意味での手伝いを頼まれてるのかと思って返事したら「いや、DJで」って(笑)。

■五十嵐:そりゃそうだよ(笑)

KABUTO:それで2012年に〈CABARET〉に正式に入って、いきなりスコーンってやらせてもらって。そのとき思ったのが、「masda君、けっこう腹くくってんなぁ」って。本気だなって思ったんですよ。

■五十嵐:カブちゃんからの影響も強いと思うんだけど。

KABUTO:本当っすか。本気でやろうとしてる人には魅力を感じるし、そういう人じゃないとやりたくないし。

■五十嵐:一緒に本気でやれる新しい仲間ができて、それが〈CABARET〉ということなんだね。それじゃあ、この先の目標は? カブちゃんは〈FUTURE TERROR〉を離れるときから「DJとしても上を目指す」とも話していて、いまは事実、全国津々浦々に呼ばれるようになっているわけだけれど。

KABUTO:目標……大げさですけど、遊びに来てくれた人の人生を変えられるようなパーティをやることですかね。「このパーティがあったから、俺の人生変わっちゃったんだよね」って、来てた人に言わせてみたいですね。それだけかも。俺もパーティで人生狂わされたし(笑)。もちろんいい意味で。〈FUTURE TERROR〉で人生狂わされた人、価値観変わった人結構いると思うんですよ。それを伝えてくってわけじゃないですけど、人生巻き込み型パーティっていうか。生き方に対してもそうだし、全てにつながるじゃないですか。いろんな考えがあってもちろんいいんですけど、やっぱり音楽ってすごい原始的なもので、リズムはずっとあったものだから(人間にとってすごく大切なもの)。それはやっぱ、ずっと伝えないといけないっていうか。テクノだろうがハウスだろうが、基本、根っこの部分は一緒だと思うんですよ。お客さんの人生を変えるぐらいのパーティをしたいっていうのは、永遠のテーマですね。〈FUTURE TERROR〉を抜けてからですけど、やっぱりそれは常に目標というか。

■五十嵐:この生きづらい時代の、パーティの存在意義という話にもつながるよね。ただ楽しみたいだけなのに、どうにかして奪いに来ようとする奴らがいるからね。

KABUTO:それと戦う意味で音楽があると思ってるし。

■五十嵐: 〈LAIR〉に行ったときもさ、あのお客さんの優しさ。

KABUTO:そうなんですよね。

■五十嵐:あれはある意味理想郷だった。あれを目指したいと思ったよ。具合悪そうな奴がいたら「大丈夫ですか?」とか。「金なくて困ってる」っていう奴がいたら……。

KABUTO:一杯おごるとか。そういうことじゃないですか。助け合いの精神。「全てパーティから学んだ」って言ったら大げさかもしれないですけど……俺、元々は凄い人見知りなんですよ。さっきyone-koに自分から話しかけたって言ったじゃないですか。何かそれから、自分からいろんな人に話しかけるようになったんですよ。だいたい酔っ払ってんですけど(笑)。
 最近仲良くしてるSatoshi Otsuki君もそうで。(田中フミヤの)〈CHAOS〉にOtsuki君が来てたときに、「Otsuki君今度一緒にやろうよ!」って話しかけて、そうしたら「MIX聴いてましたよ」なんて言ってくれて「おっ!」みたいな。だからそういう、ベクトルが合う感覚というか、あ、この人全然大丈夫だわ、って嗅ぎ分ける感覚とか、そういうのもパーティから学んだし。だから、自分から行かないと何も開かない、待ってても何も来ない、っていうのは本当に、千葉にいたときに教わったことっていうか。

■五十嵐:ヴァイブスで繋がると、偏見も取れるしね。

KABUTO:そう。例えば〈CABARET〉はマニアックな音を出してるんだけど、みんなシュッとしてて、出で立ちもスマートじゃないですか。最初は俺、〈CABARET〉クルーとこんな仲良くなるなんて思ってなかったけど、なんだろう、〈CABARET〉に入るって決まったときに、俺のキャラがプラスに働くと想像できたんですよ。yone-koやmasda君みたいに知的で、膨大な知識のあるDJと、俺みたいなタイプのDJが一緒にやれたらいいパーティができるなっていうのが。バランスですよね。どっちが行き過ぎてもダメだから。お互い切磋琢磨して、バランスがとれてると凄くいい。それが今の〈CABARET〉なんですよ。

■五十嵐:違う人との調和ってことだよね。本当にここのところね、カブちゃんがずっと前から言ってたことが形になってるという感触を、きっと本人がいちばん感じているはずなんだよ。

KABUTO:そうですねぇ。感じられるようになったかな。

■五十嵐:周りも、そういうステージも用意してきているし。

KABUTO:なんか、DJ度胸じゃないけど、海外のDJが出るパーティで、そのゲストDJの後にやることが何回かあって。その時もまぁ普通に緊張はするんですけど、〈FUTURE TERROR〉のときに比べたら全然余裕、って正直思いましたね。当時は、NOBU君の後にDJすることほど、緊張するものはなかったですね。当時みんなNOBU君を観に来てるって感じもあって、お客さんはNOBU君で散々踊りつくして、DJ変わるとき「次DJ誰? まだ踊れるの?」みたいな空気があるじゃないですか。そういう現場を経験してきたから、外タレのときは緊張は少なくて。やっぱそれは、千葉でやってきた甲斐があったなぁ、っていうのは東京に出てきてから感じましたね。

■五十嵐:俺は、カブちゃんが実際いま好きな音楽とかも詳しくはチェックしてないんだけど、皆がカブちゃんやNOBU君に求めてるものっていうのは、パーティ=人なわけじゃん。

KABUTO:人生捧げてる人たちですから(笑)。

■五十嵐:だから俺はもう、今後の活躍を……。

KABUTO:「このまま散ってやるよ」って感じですね(笑)。

■五十嵐:ガハハハハ(笑)。

KABUTO:だからもう、そこの覚悟を決めてる人と決めてない人との違いは、俺のなかではものすごくデカいんですよ。東京でやってても、辞めちゃう人もいるじゃないですか。

■五十嵐:みんなセンスは凄くいいのにね。

KABUTO:そう。でもなんだかんだ言って、いまは東京で見せてナンボってところは実際あると思う。

■五十嵐:世界との玄関口だしね。

KABUTO:世界中見てもこんなクレイジーな街ってないと思ってるんですよ。本当、東京って独特な狂い方じゃないですか。だからそこで勝負できるっていう幸せも感じないといけないし、ここで生活することの大変さもそうだし、ここでDJできることのありがたみを感じながらプレイして、その気持ちをお客さんに伝えられるかどうかってことですよね。

■五十嵐:プレイがいいのは大前提としてね、そこに気持ちがないと、この街ではサヴァイブできないよね。

KABUTO:ニュースを見てても、これから厳しくなっていく環境のなかで、どれだけ工夫してサヴァイブしていくか。それは、その人がこれまでやってきたことが全部出ちゃう部分だと思うけど、そこからいい音楽は絶対生まれてくると思っていますね。

■五十嵐:だからいま、突きつけられてるんだろうね。

KABUTO:そう、やっとみんな本気で考えはじめたんじゃないかって思ってて。「なぜパーティをやってるのか」ということを。風営法(の問題)もあるし。デトロイトなんか2時までしかパーティできないですからね。それでもたくさんいい音楽が出てくる。普段の生活はキツかったりするのに。厳しい状況になればなるほど、音楽って良くなっていくじゃないですか。それに比べたら東京はまだ恵まれてるんですよ。すごい数のクラブやパーティがあるんですよ。

■五十嵐:本当に、いまの東京は凄いんだよね。

KABUTO:だけど実際は、(本気で)やれてる人はほんの一部じゃないですかね。でも歳とるとだんだん感覚が研ぎ澄まされてくるというか、同じような人が自然と集まってくるんですよね。どんどん辞めて抜けていくから、そういう人しか残んなくなってくるし。それでみんなで協力して盛り上げようとか、そういうことでもいいし。皆でできることがたくさんあると思うんです。

■五十嵐:こないだ俺、ele-kingのチャートで『求めればソウルメイトと必ず会える都内のDJ BAR&小箱10選 pt.1』ってやったけど、「ソウルメイト」ってそういうことなんだよね。若い人に「ソウルメイト」とか言うと笑われるかもしれないけど(笑)。

KABUTO:ジャンルとかじゃないんですよね。だから俺は〈GRASSROOTS〉でパーティやってるし。〈CABARET〉に入る前、〈LAIR〉にmasda君を呼んだ時なんですけど、秋本さん(THE HEAVYMANNERSの秋本武士)とかKILLER-BONGとかがフラッと来たことがあったんですよ。普段やってるクラブじゃ有り得ないですよ。masda君がDJやってるところに秋本さんがいるとか。で、Qさんが「これで秋本さんを踊らせたら凄いよね」とか言うんですよ。俺も本当、そう思って。ジャンルとかは無し。人と人。だから俺も、全然知らない人がやってるパーティ行ったりしてるんですよ。それで新しい感覚を覚えるし、いろんな考え方を知ることもできる。だから〈womb〉も〈AIR〉も遊びに行くし、逆にそこで遊んでる人たちが〈GRASSROOTS〉に来てくれるようになったりするんです。「こんなとこあったんだ、ヤバいね」って言ってくれて「でしょ?」って。でもキッカケがなかっただけで。そのキッカケづくりができたのはデカかったかな。そうすると「ひとりでGRASSROOTS来ちゃいました」とか言う人も出てくるんだけど、何でもいいんですよ。そうやっていろいろな音楽を聴いて、いろんな感覚や価値観を感じてもらえば、やってる意味があるというか。別にDJ巧い人でも、その感覚がなかったら俺はあんまり魅力を感じないし。NOBU君の凄さってそういうところにあるのかなって。〈BERGHAIN〉でやってて、〈GRASSROOTS〉でもやるっていう。

■五十嵐:それをやってたのは、ラリー・レヴァンなのかもね。

KABUTO:そういう感覚を身につけるのはすごい重要だと思いますね。場所を選ぶ嗅覚というか。その場の匂いを感じ取ってそこにガッと行けるというか。

■五十嵐:パーティがあれば幸せでしょ?

KABUTO:幸せですよ。パーティで皆で踊ったり、いろんな人と出会えたり、いろんなジャンルの音楽や人が交じり合う瞬間って、やっぱり楽しいし、幸せだって思います。それがいま自分がいちばん感じやすいのが〈GRASSROOTS〉なのかな、とか思ってますね。そこでいろいろなジャンルの人が交差して新しいものが生まれたら凄くいいし。「俺は違うことやるよ」って思うのもいいし。それを全部含めて、パーティでしかできない感覚というか。そこが全てですね。

■五十嵐:なんか、安心したよ(笑)。さっきからNOBU君、NOBU君、って言ってるけど、カブちゃんにとってはNOBU君発信だったものが、KABUTO君が発信することによって伝わっている人というのが、着実に増えているという風に俺は実感してるんだ。カブちゃんのいないところでね。それこそ、〈CABARET〉にしか行ったことのなかったお客さんが「KABUTOさん良かったです」と。そういうのを耳にしていると、おべんちゃらみたいだけど、カブちゃんは有言実行したんだな、と思う。

KABUTO:俺も意地ありますから(笑)。〈FUTURE TERROR〉を辞めた時の気持ちがずっと原動力になってますから。これからもずっと続いていくでしょうけど。

■五十嵐:いまでも〈FUTURE TERROR〉にはLOVEなんだね。

KABUTO:もちろん。当時〈FUTURE TERROR〉に関わった全ての人には本当感謝してます。お客さんとケンカしてるの五十嵐さんに見られたりとかあったけど(笑)。

■五十嵐:でもちゃんとその後仲直りしてたじゃん(笑)。音楽の前に人ありき、だもんね。

KABUTO:そういうところを感じられたら、また音楽が楽しくなるし。全てですよね、音楽と、人と、その人生。それについてくると思ってるんですよ、パーティって。そこにいるいろんな人に出会って、そこから生まれるものってたくさんあると思うんで。だから、グイグイ来る若い子に「シッシッ、あっち行け」なんて、絶対誰もやらないと思うんですよ。相当ヒドくない限りは(笑)。そういう若い子を増やしたいですね。ちょっとしたことでもいいんですよ。いいパーティだなって思って最後まで遊んだなら、グラス片付けたり、皆に「おつかれさまでした」って声かけてから帰るとか。なんでもいいんで、自分の方からパーティに関わって楽しんでほしいですね。そうすればもっと楽しくなるし。

■五十嵐:そろそろまとめようか。俺が話してほしかったこと、ほぼ全部言ってくれたよ。

KABUTO:あとは〈CABARET〉をよろしくお願いします。これから先も面白い動きがあるし。それで来年で〈CABARET〉は15周年だから、パーッと何かやるか、っていう話もしてて。DJも、〈CABARET〉関連デザインを担当してくれてるMAA君も含めてみんなでいいパーティやりたいと思ってます。

■五十嵐:常に応援してます。これからもその調子で頑張ってください。最近住居がご近所さんにもなったし(笑)。

KABUTO:まだまだ話したいエピソードは山ほどありますけど(笑)、今後の活動を楽しみにしててください。

■ KABUTO on line DJ MIX
CB-157 KABUTO
https://soundcloud.com/clubberia/cb-157-kabuto

Strictry Vinyl Podcast 10 KABUTO
https://soundcloud.com/strictlyvinylpodcast/svp010

■ DJ schedule
12/28(SAT) Mood and Voltage@cafe domina名古屋
12/30 (MON) KARAT@Solfa w DJ SODEYAMA
12/31 (TUE) TBA
1/10 (FRI) GRASSROOTS
1/18 (FRI) CABARET - a leap of faith edition - feat KAI from berlin
2/1 GIFT feat CASSY @AIR afterhours

Eccy - ele-king

ども、Eccyです。今年もあっという間に終わってしまいましたねー。
結局リリース出来ませんでした(泣)。が、しかし! 何か最近気合いも入ってきたしモチベーションも上がってきたので、来年はリリースすると思われます! いやします! しよう! する! 出来るかな? いやしなきゃ! するでごわす!するなっしー! するめいか! するーざふぁいやー! ちゃかかーん! ということで、2013年のベストアルバムトップ10を書きました。載せたいのもっといっぱいあったけど悩みに悩んで絞りました。ではわたくし、2014年はもっと頑張ります! みなさんよいお年を!(紅白あまちゃん特集楽しみっすね)

https://twitter.com/_Eccy_
https://soundcloud.com/eccyprodukt
https://yusukekiyono.tumblr.com/

10 Best Albums Of 2013


1
Oneohtrix Point Never - R Plus Seven (Warp)

2
Jon Hopkins - Immunity (Domino)

3
Bonobo - The North Borders (Ninja Tune)

4
Danny Brown - Old (Fool's Gold)

5
Atoms For Peace - AMOK (XL)

6
相対性理論 - TOWN AGE (みらいレコーズ)

7
Sky Ferreira - Night Time, My Time (Capitol)

8
Zomby - With Love (4AD)

9
Pusha T - My Name Is My Name (GOOD)

10
Quasimoto - Yessir, Whatever (Stones Throw)

 もういい歳こいてることは重々承知、僕は未だに自分の放浪癖を更正するすべを知らない。この原稿を書いている現在も、何の因果かヨーロッパを放浪している。これは、まあ、そのドリフト録とでも言うべきものだ。そもそもはふとした思いつきでLAに向かったことから始まるこの生活だが、今回の最終目的地もいちおうのところLA。僕の放浪はLAに始まりLAに終わるのだ。いや、終わればいいんだけれども。

 といいつつ、この記録を書きはじめた10月には、ローブドア(Robedoor)のヨーロッパ・ツアーのコラボレーターとして暗雲立ち籠める最悪の欧州をドリフトしていた。しかし彼らとの出会いは僕が初めてLAに長期滞在していた2009年に遡る。当時はLAの〈エコー・パーク〉をヤサにしていて、ローカルたちが集うギャラリーや人ん家で夜な夜な催されるアホなパーティーを通じて親交を深め云々、そこからずっとつながる縁である。

■Oct14th
 ローブドアのブリット(〈NNF〉主宰)とアレックスにベルリンにて久々の再会を果たし、昨年LAでの対バン以来初めて観る彼等のデュオ編成でのパフォーマンスに度肝を抜かしたのは言わずもがな、今回のツアーの前半戦をサポートしたスウェーデンからのナイスガイ、マーティンによる初めて見るサンド・サークルズ(Sand Circles)のライヴ・セットは素晴らしいものであった。〈NNF〉からの過去のテープはどちらもヴァイナルをプレスするにじゅうぶんなクオリティであるが、それを納得させるセットだ。
ショウ終了後、再会の感激冷めやらぬ我々はベルリンの寒さをものともせず、さらに寝床を提供してくれたお姉チャンの家が5階で勿論エレベーターが無いため全力で機材を持ち込むことによって全員熱気すら放ち、ヨーロッパの一般的ボロ・アパートの何たるかを忘れシャワーの順番を譲り、みなを起こさぬよう悲鳴を抑えながら3日ぶりのシャワーを冷水で浴びていた。

■Oct15th
 翌朝ムニャムニャのままプラハに向け出発。国境を越え、チェコに入国した途端に濃霧に包まれるハイウェイ。ようこそ暗黒のチェコへと言わんばかりの歓迎にテンションも上がる。幻想的なプラハの町並みに感銘を受けながらダンジョン感全開のハコでのショウ。この日のローブドアのセットは素晴らしかった。勿論この土地で得た僕の心象風景とローブドアのサウンドが相乗効果をもたらしたのであろうが。僕が嗜好するような音楽シーンがこの土地に根づいているのかはわからないが少なくともこの日集まった多くのオーディエンスが熱烈にソレを求めているのがビンビンに伝わってきた。この日の主催者たちが運営する〈アムディスクス(AMDISCS)〉等のDIYレーベルが放つ多くのリリースからもそれをうかがい知ることができる。


そしてこの画のように野暮ったい。しかし野暮なオーディンスこそがリアル。ノー・ハイプ・シット。見よ前列のお姉ちゃんを。

寝床への道中、マシンガントークで町のあっちこっちの歴史を熱弁するこの日のプロモーターの一人(名前失念)は最高だった。僕らのために用意してくれた寝袋のひとつがテントだったのは意味わからんかったけども。

■Oct 16th
全員が早起きした。宿先の正面にそびえ立つ重そうな教会前(Church of the most sacred heart of our load)で朝市が催されており、僕らは大量の新鮮な果物とチーズを購入し……って、そう、チーズ。ローブドアのアレックスは食品輸入関係の仕事をこなしているためか、とにかくチーズに目がなく、僕らはツアー全日程を通してあらゆるチーズをつねに喰っていたため、車内はつねにチーズ臭で充満していたであろう。
この日のショウはウィーンのフラック(Fluc)で移動時間に余裕のある僕らは満場一致でクトナー・ホラのセドレツ納骨堂に寄ることにした。メタル系バンドのジャケで写真が濫用されているアレである。ノリでホトケをLEGOのごとく積み上げてみました的な実物に感銘を受けながら僕らは今回初めての観光らしい観光に充足した。

 フラックで僕らを迎え入れてくれた〈ヴァーチャル・インスティテュート・ヴィエナ(VIV)〉を主催するステファンとシーラは間違いなくウィーンでもっともイケてるカップルだ。シーラは最高の手料理をふるまってくれ、サウンドチェック後に僕らはそれを堪能し、ステファンは自身のNHKヴァイヴなプロジェクトJung An Tagenでナイスなオープニング・アクトを務めてくれた。ハコのサウンドシステムもさることながら、この日はDJ陣が素晴らしかった。SKVLKRVSHと名乗るアンチャンは僕の今年度のヘヴィロテをほぼ網羅してくれたし(D.R.I.からピート・スワンソンのミックスとか最高過ぎる)、そして何故かジェノバ・ジャクジーが80'sゴス全開のDJを……。
どうやらヨーロッパ・ツアー中であったアリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティに参加していた彼女は、最高潮に達したメンバー間の不和によりツアー半ばにして脱退し、強引にソロ・ツアーを慣行していたらしい。アナーキー過ぎる……。


酔いどれアレックスとジャクジー。何でジャクジーなのよってツッコんだら超真顔で本名だからと仰っておりましたが……

■Oct 17th
 お次はチューリッヒへ、ちなみに僕は今回のドリフトに際してビザも帰りの航空券も取得しておらず、EU加盟国でないスイスに入国するのを危惧していたが、問題なく国境を通過できた。高架下とスケート・パークに隣接するハコ〈Klubi〉は、どことなく新大久保〈アースドム〉を彷彿させる構造と音作りで、爆音での演奏を熟知しているようだ。プロモーションからアテンド、サウンドメイキングまで手掛けてくれたロジャーはソルト(Soult)としてホーラ・ハニーズ(Hola Honeys)のプロモーション・ツアーでNHKと共に来日もしている。ソリッドなDJを担当していたお姉ちゃんが用意してくれた豪勢な食事は、あまりのうまさに全員が無言でガッついていた。
満腹で弛緩しながらも、このあまりにも勿体ない待遇の何たるかを、僕にとって初めてのヨーロッパ・ツアーであるがゆえのカルチャー・ショックなのか、それとももしかしたらヨーロッパにおけるミュージシャンシップはゲストを快く迎え入れることがひとつのステイタスなのかしらんなどなど夢想しながら眠りについた。

無駄にドリフトは続く……

Ultramarine - ele-king

 ウルトラマリンなんていったい誰が覚えているんだっていうの。誰も覚えていないよ。これだけ消費が速い世界で15年ぶりに新作を出したからといって、誰も騒ぐまい。誰もね。あの弱っちい清水エスパルスが試合で信じがたい逆転勝利を果たした次の週だったから、気分が良かったのだ。レコード店の新譜コーナーに面出しされている「Ultramarine」の文字に驚き、何も考えずに買って、そしてそのままだった……、それから後味の悪いリーグ最終戦の日に、家で聴かれないまま放置されているこのレコードに気がついて……で、わりと頻繁に聴いている。
 実は、僕はいまでも覚えている。1993年6月26日(27日だっけ?)、昼間の1時かそのぐらいだ。グラストンベリーの、心地良い初夏の風を浴びながら、NMEステージの芝生に寝っ転がって、ウルトラマリンの演奏を聴いていた。なかば微睡みながら聴いていたので、どんな音だったのかは思い出せないが、その演奏が素晴らしかったことだけは覚えている。素晴らしかったというのは、その時代のその時間帯にもっとも相応しい音を出していたということだ。
 ウルトラマリンとは、サマー・オブ・ラヴの余韻がまだ残る時代に、ハウスとダブとジャズとフォークとカンタベリー的な牧歌性とをかき回し、透明な音色と美しい旋律にろ過したバンドだった。いまとなっては90年代の音楽の秘密のひとつと呼べるかもしれない。ロバート・ワイヤットをゲストに招いたり、ケヴィン・エアーズの曲を歌ったり、後にカール・クレイグがリミックスを手がけていることからも、ウルトラマリンの音楽がどんな傾向のものだったのかお察しいただけると思う。ジャケに大きく「STAR」という文字の描かれた『Every Man And Woman Is A Star』(1991年)は忘れることのない名作だが、しかし同時に忘れたい作品でもある。あまりにも甘く、お茶目かつ無垢で、負けることにも慣れた大人が振り返るには気恥ずかしくもあるのだ。ウルトラマリンは、その後メジャーの〈Blanco Y Negro〉に移籍して、『United Kingdoms』(1993年)や『Bel Air』(1995年)など何枚かのアルバムをリリースしているのだが、当時、瞬間的だが多くのリスナーを惹きつけたウルトラマリンは、ゆっくりと忘却の彼方へと葬られていくのである。

 しかし、橋元あたりが「ドリーミー」という言葉をやたら使う度に、ウルトラマリンも知らないクセに何言ってんだか……と思っていたのも事実だ。それでは久しぶりに聴いてみようじゃないか。そして、試しに『Every Man And Woman Is A Star』に針を落とすと、「あれ、こんなだっけ、こんなだっけかな?」と、自分のなかで虚妄と化したグラストンベリーの思い出との落差に居心地の悪さを覚え、結局のところ、音楽作品というよりもウルトラマリンそのものがタルホ的な郷愁となっていることを悟る。
 が、『ディス・タイム・ラスト・イヤー』、衝動的だったとはいえ買ってしまった以上は、貧乏根性も手伝って、聴かなければと思って聴いていると、やはり良いナー、ウルトラマリン、こんなに良かったっけ……と感心する。本当に素晴らしい。尖っているわけではないが、むしろ尖っていないからこそ素晴らしい。彼ら自身も、15年ぶりに新作を出すからには、いまこの時代に自分たちの音楽の受け入れ先があることを感じているのだろう。音楽性の幅もあり、質の高い音響を作れるスキルを持っている連中だが、『ディス・タイム・ラスト・イヤー』は方向性も間違っていない。90年代の諸作と比較すると(もともと角が取れている連中だったが)さらにまた角が取れている。つまり、より平穏でアンビエントなテイストを注ぎながら、『Every Man And Woman Is A Star』の頃の淡い幻覚と切ない旋律も捨てることなく、ゆったりと展開する。その力の抜け具合が片足はクラブに浸かっていた昔よりも良い。ブラジリアンの混じった“ファインド・マイ・ウェイ”、フュージョン風の“アイコンタクト”、アシッド・ハウスのベースを透明なポスト・ロックにろ過した“デコイ・ポイント”、陶酔のアンビエント・ダブの“ウィズイン・リーチ”……いいぞいいぞ、完璧に現実逃避させてくれる。そして、聴き込んでいると、20年前の6月のサマセット州の農場で聴いた音はたしかにこんな感じだったと思えてくるのだ。……あのとき、「絶対にどんなことがあっても、自分はまたここに戻ってこよう」と29歳の自分は心に誓ったものだが、あれ以来行っていないし、残りの人生のなかでももう行かないんじゃないかと思う。いや、正確に言うなら、1993年6月のサマセット州は、もうあの場所にはないのだ。『Every Man And Woman Is A Star』は、2003年、〈ラフトレード〉によってリイシューされ、ボーナス盤には1993年のグラストンベリーでのライヴ演奏が1曲収録されている。僕はその1曲を聴くためだけに、いつかそのCDを買う可能性がないとは言えないが、極めてゼロに近い。 

泳ぐサウンドシステム! - ele-king

 ラッパーのルミがオーガナイズする船上パーティ〈BASSBOAT〉が12月22日(日)に開催される。横浜の海をクルーズする船の上にどでかいサウンドシステムを積んで、ベースをブンブン鳴らしてしまおうというこの気合いの入ったパーティは2012年からはじまり、今回で3回めとなる(出演者は下の情報欄でチェック!)。さすが、スーパーAKY(あえて空気読まない)、ルミ! やることが大胆だ。すでに病みつきになっている人が続出という〈BASSBOAT〉のルミ船長に、メールでこのパーティについて訊いてみた!

なぜ、船上でパーティを企画しようと思ったんですか?

ルミ船長:2011年にクロアチアの〈OUTLOOK FESTIVAL〉を体験したのがきっかけです。年に一度でも最高のシチュエーションを共有できる夢のようなパーティがしたいと思ったから!

〈BASSBOAT〉の醍醐味を教えて下さい!

ルミ船長:船ですので、出航したら最後、後からは誰も乗れません。音量制限もありませんので〈eastaudio soundsystem〉でブンブンに鳴らしますよ。そして視界は360度横浜の夜景!乗組員も粒ぞろい、満潮です。

〈BASSBOAT〉は今年で第3回目になります。2回の経験から、船上で楽しむために、初めて遊ぶ人にアドヴァイスを!

ルミ船長:遊ぶのにアドヴァイスなんている? とりあえずチケット買って港まで来てください、あとは最高の世界へお連れしますので。強いて言うなら、暖かくしてきてっていうのと、トイレは非常に混み合いますので乗船前に出し切り願います。

今回の見所を教えてください!

ルミ船長:なんといっても今回は“in Christmas mood”☆ 装飾もクリスマス仕様だし、スピーカーも前回より増量してます! 〈BASSBOAT〉から見る景色、ライヴは毎回全員で恋に落ちるような瞬間を生みます。あと何回できるかわからないし、もしかしたらこれで最後かもしれないです。是非〈BASSBOAT〉へ! お待ちしております。

 う~ん、これはかなり楽しそうだ。17時出航で20時にはパーティが終わるので、船を降りたあとに横浜の夜の街に繰り出すという遊び方もできてしまう。みなさん、〈BASSBOAT〉は要チェックですぞ。(二木)


■BASSBOAT in Christmas mood
2013/12/22(SUN)

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船上でメリークリスマス!
陸を離れて大海原へ出かけましょう!
BASSBOAT、出航します!!

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16:15集合→17:00出航(~20:00)

※16:30までに受付をお済ませください。
※当日に何らかの変更が合った際はSanagi Recordingsツイッターアカウント(@sanagirecording)にてお知らせいたします。

■TICKET
前売券 ¥4,000 / 当日券 ¥5,000
sanagi.jp限定トリオチケット ¥10,000

※前売販売が乗船限度人数に達した場合、当日券の販売はありません。

■MUSICIANs&DANCERs
ILL-TEE
K-BOMB
KEN2-D SPECIAL
LIL'MOFO
MaL from PART2STYLE
Militant B
三島 a.k.a.潮フェッショナル
ONE-LAW
RUMI
SKYFISH
TANiSHQ
WOLF24
YODEL

■Soundsystem
eastaudio soundsystem

■FOOD
虎子食堂

■TICKET
TICKET店頭販売
渋谷:虎子食堂
新宿:ドゥースラー
東高円寺:GRASSROOTS
下高井戸:トラスムンド
中野:HEAVYSICK ZERO
下北沢:DISC SHOP ZERO
ディスクユニオン(クラブミュージックショップ):[渋谷店][新宿店][下北沢店][横浜西口店]

※TICKET通信販売は締め切りました。

■ACCESS

MAP


・横浜大さん橋埠頭ビル前発着所への道順
みなとみらい線日本大通り駅3番出口(県庁・大さん橋)より徒歩8分。
みなとみらい線日本大通り駅の3番出口を出て右方向。
次の大さん橋入口交差点を左方向へ。
そのままみちなりに直進。
大さん橋に向かう1本道に入り、大さん橋の一番手前になる建物が大桟橋ふ頭ビルとなります。

■諸注意

・飲食物持ち込みは固くお断りします。
・天災地変等やむを得ない事態が発生した場合、出航を見合わせる場合があります(基本雨天決行です)。
・専用の駐車場はございませんので公共交通機関をご利用ください。
・未成年の方もご乗船いただけますが、酒類の販売はいたしかねます。
・船酔いが心配な方(酔い止め)、大音量に弱い方(耳栓)は各自対策の上ご乗船ください。
・海上は気温が下がります。ストーブ等用意しておりますが、暖かい服装でお越し下さい。

お問い合わせ:party@sanagi.jp
運営:Sanagi Recordings


loaded 久保憲司写真集 - ele-king

このすべての現場に立ち会った男に猛烈に嫉妬する
――田中宗一郎(CLUB SNOOZER)

ポストパンク、マッドチェスター、アシッド・ハウス、レイヴの狂騒。
ひたすら撮って歩いたあの時代が、いま鮮やかにリヴァイヴァルする――

日本を代表するロック・フォトグラファー、久保憲司がフィルムに収めた膨大な記録。
10代で飛び込んだロンドンの街並み、レイヴやフェスの熱気、一時代を築いたDJたち、ブリットポップやグランジの記憶――約20年間の懐かしくも新しい空気を、240ページ超にわたってヴォリューミーに収めた写真集です。

Psychic TV、The Jesus and Mary Chain、The Stone Roses、Happy Mondays、My Bloody Valentine、Oasis、Aphex Twin、Derrick May、
Andrew Weatherall、Sonic Youth、Nirvana、The Pastels、Radiohead…

★小さくて愛らしい版形の上製本。
★さりげなくガーリーなデザインはクリスマスのギフトにもぴったり。
★撮影メモや萩原麻理によるインタヴューも小気味よく写真を飾ります。
★いままでにない、クボケンのちょっと意外な一面が表れた作品です。

いまファッション誌でもリヴァイヴァルのはじまっている90年代を、貴重なヴィジュアル資料で振り返りましょう。

interview with MARIA - ele-king

 今年、ソロとしては初のアルバムをリリースしたシミラボの紅一点、MARIA。シミラボがいかに稀有で魅力的なヒップ・ホップ・ポッセであるか、ということについてはいまさら論を俟つまでもないが、ではMARIAとはどのようなアーティストなのか。巻紗葉『街のものがたり』以前には、もしかするとあまりシリアスな解釈は存在していなかったかもしれない。そして、女性からみたMARIA像というのもあまり知らない。聞き手が田舎のごく一般的な中流家庭に育った貧相なボディの文科系女子で申し訳ないのだが、たとえばこんなMARIA像、あなたはこの大きな愛と、それが肉と皮膚を離れずに音の実を結んでいることに驚くだろう。



MARIA・ザ・マザー

境遇、について

ヒップホップは近道ではない

欲深くて、愛しい

音楽と、ちょっとセクシーな話

人任せじゃダメなジェネレーション

アンチ・アンチ・エイジング

音楽と、けっこうセクシーな話



MARIA・ザ・マザー

あたしはまあ、「世界がアタシにひれふす」みたいなことをさんざん言ってきたかもしれないけど、みんなのことが好きなのもほんとだよって。うーん……母?

恐縮ながら、わたし自身はふだんコアなヒップホップに触れることが少ないんですが……

MARIA:いやいや、あたしもそうですよ。自分がやっておきながら全然詳しくないですから。

でも、かわいいとかちょっと踊れるとか、そういう性的なアピールとは別のところで、スキルのあるいちラッパーとしての存在感を確立していらっしゃいますよね?

MARIA:どうですかねえ……。でも、自分は女ですけど、自分が女であるというところにはまったく期待してないんですよ。

ええー(笑)? ほんとですか?

MARIA:化粧とかも最大限の身だしなみってノリでやっていて。とくに自分を可愛く見せたいとかってことはないですね。だから逆に、ラップとかも思いっきりやれるのかなって思います。

でも、自分を性的に見せないっていうことと、スキルを磨くとか研鑽を積むっていうこととはイコールではないですよね? やっぱりそこの努力や勉強っていうのはすごくされてるんだと思うんですよ。

MARIA:そうですかねえ。

その動機っていうのは何なんでしょうね?

MARIA:うーん、ぶっちゃけ、スキルうんぬんっていうよりもけっこう感覚でやっちゃうタイプなんですよ。あんまり誰に影響されたとかってこともなくて。まず、ビートが好き。ビートにインスパイアされる。そこではじめて生まれるラップっていう感じなんですね、あたしのは。だからスキルを磨くために何かやるっていうよりも、自分のイメージをふくらませるために、映画とか音楽を観たり聴いたりするっていうくらいかな。


Maria
Detox

SUMMIT

Tower HMV Amazon iTunes

映画についてはよくお話をされてますね。ラップも、トラックからのインスピレーションが先なんですね。――どうしてもMARIAさんっていうと、一面的なイメージとはいえ「強い」「正統派」という印象があるわけなんですが、今作『Detox』は、そんな「強い」MARIAのなかの弱い部分が出ていると言われる作品です。そして、それがはっきりと言葉によってリプリゼントされているとも感じます。だから、わりと日記みたいなものからできていても不思議はないなと思ったんですが、そういうわけではないんですね。

MARIA:今回は全曲トラックが先ですね。でも、言葉は後だけど、このアルバムはあたしひとりのアルバムだから誰の足を引っ張ることもないっていうか。ある意味、自分のことはどう思われてもいいっていう気持ちがあったからこそ、言えた部分があるかもしれない。シミラボ(Simi lab)だったら言えなったかもしれないけど、このアルバムでは、聴いてる人とあたしが1対1だから。
 (「強い」というイメージについても)自分としては、「アタシ世界一だから」っていうよりも、「そんな変わんないよ、うちら」っていうようなノリなんですよ。実際は。

そうなんですね。2曲め(“empire feat. DJ ZAI Produced by MUJO情”)なんかはまさに「世界がひれふすname」――アタシは強いんだぞっていうセルフ・ボーストなのかなと感じられるわけですが、実際よく聴くと「アイ・ラヴ・ユー」的な曲なんですよね。わたし、そこに感激して。その超展開に。

MARIA:なんか……バランス? ヒップホップって自分を主張するものかもしれないけど、英語ならともかく、日本語でグイグイくるのはあまりにストレートで……。そりゃもちろん「アタシ、アタシ」の音楽なんだけど、みんなありきのアタシだよっていう……。

ああー、「みんなありきのアタシ」。日本の風土やメンタリティを前提にしたセルフ・ボーストなんですね。

MARIA:そうそう。ひとりでやってきたわけじゃないしね。

なるほど。本来、ああいうのって、ちょっと笑いが生まれてしまうかもしれないくらい 「スゲーぜ、自分は」ってやるものなわけじゃないですか。だから、ふつうだったらどう「スゲー」のか、どうしてスゲーのかっていうことを説明するロジックがそこできちんと歌われているはずなんですよ。けど、あの2曲めにはそれがない。海とか世界が割れていくイメージとか、「アイ・ラヴ・ユー・オール」みたいなことが突如出てきて、「スゲー」ってことの理由がそれに飲み込まれていくんですよ。それがなんか、象徴的だと思って、素晴らしくて。

MARIA:あの最後んとこでしょ? あたしはまあ、見た目がこわいかもしれないけど、「世界がアタシにひれふす」みたいなことをさんざん言ってきたかもしれないけど、みんなのことが好きなのもほんとだよって。うーん……母?

そう! 母なんですよ。

MARIA:ああ……、マザー感が出ちゃってるんですね。

はは! マザー感(笑)。いや、笑いごとじゃなくて、それいつごろから出てるんですか?

MARIA:いや、どうだろう、高校……?

高校ですかハンパねぇ……。ほんとにね、この「love」、この愛、こんなデカいものがどこから出てくるんだ? ってふつうに驚くんですよ。

MARIA:はははは!



境遇、について

憐れまれるのが好きじゃなくて、お涙頂戴も好きじゃないんですよね。実際、あたしなんかよりもキツい人はいっぱいいるし、しかも日本にいるってこと自体がスーパー恵まれてるって思うから。

いや、ご本人に向かってうまく伝えられないんですけどね。パーソナルな話は恐縮なんですが、巻紗葉さんのインタヴュー本『街のものがたり』に、妹さんとほぼふたりで生きてこられた境遇が語られているじゃないですか。それから妹さんのお友だちも心配だから引き取っていっしょに暮らしている話とか。そういうことも思い出しました。音楽と無関係でないと思うんですね。

MARIA:ああ、いまもいっしょに住んでるし、この先もずっといっしょにいるかもしれないけど。なんか、高校の頃から変わんねーって言われますね、よく。昔からたぶんマザー感はあったんでしょうね(笑)。

あははは。……いえ、訊くのためらっていたんですが思いきって言ってしまうと、けっこう大変な境遇でいらっしゃいますよね。大変言い方は悪いですが、まったくそれがお涙頂戴にならないところというか、それに気づかせないところは、MARIAさんという個人の強さ、奥行きなのだなと思いました。

MARIA:憐れまれるのが好きじゃなくて、お涙頂戴も好きじゃないんですよね。実際、あたしなんかよりもキツい人はいっぱいいるから。だからここで泣いてもなあ……みたいな。しかも日本にいるってこと自体がスーパー恵まれてるって思うから、いろいろあったけど、それは人のいたみを知るのにちょうどよかったんじゃないかっていうところもあるかな。

もちろん、音楽のよさが境遇に寄りかかったものだという言い方をしているんじゃないんですよ。ただ、そういうことを隠しもしないし売りにもしないしっていう潔さみたいなものがMARIAさんの「強い」イメージの一部を作ってもいると思います。湿っぽいものを跳ねのける……。

MARIA:みんなそういうものが好きじゃないですか。そういう一面を見ると、それだけでそのアーティストや俳優を好きになったりってことがあって。でもやっぱり音楽として評価されたいですからね。あたしやっぱり見た目がこんなのだから、パッと見で薄っぺらい人間だと思われるというか、イイ感じのアメリカ人のパパと日本人のマミーがいて、甘い感じに育ってきたんじゃないの? みたいに見られることが多いんですよ。

ええー? でも、病んでるようには見えないですもんね。それが楽天的と解釈されるということですかね?

MARIA:そうそう、こいつほんとにわかってんのかよ? って思う人のほうが多いんじゃないかなあ。もちろんセルフ・ボーストだったり、オラオラな曲もいっぱい書くけど、この『街のものがたり』では実際あたしがどういうことに直面してきたか知ってもらおう、って感じで話しました。

フラットな言葉ですよね。

MARIA:そう、イージーなやつだって思われるかもしれないけど、それなりにあたしはあたしの経験の上で話してるよっていうことを知ってもらいたくて、そんなふうに書いてもらいました。

これまで公開したり話したりしてきたことばかりですか?

MARIA:いえ、こんなに話したのはこの本が初めて。

あえて言わないようにしてきたってところはあります?

MARIA:まあ、お涙頂戴で評価されてもなっていうのがあったからかな。でもそういうふうに感じなければ、自分のこと話したっていいかなと思って。実際いろいろあっても、どういう人生にするかは結局自分次第だよっていうことを伝えたかった。

ああ、なるほど……。そのメッセージはとても伝わりますよ。なんかMARIAさんにお話をきいていると、「物事をゆるす」っていう表現がぴったりくるように感じますね……。「ゆるす」っていうとすごく上からな感じがしますけれども、そうではなくて、あるがままを受け入れるというようなニュアンスでしょうか。世界がそうあるのならそのままそれを認める……ゆるしていく、っていう。

MARIA:でも極端ですよ、あたしの場合。MARIA大好きっていう人と、なにあいつ、っていう人がいるから。ちょっと男尊女卑的な考え方の男の人とかだと、お前女のくせに調子乗んなよ、みたいなノリ出されるし、女の子でもけっこうふたつに分かれるしね。でもあたしのことを知らないわけだからそれは当たり前で。
けど、何かを言われて傷つくことはあるけど、あんまりムカつかないんですよ、あたし。あっちもあたしのことを知らないけど、あたしもあっちを知らないから、ムカつきようがないっていうか。そいつがほんとに最悪なやつだったら嫌いになるかもしれないけど、メディアに出るってことはそういうことだっていうのもわかってるので。だからまあ、自分が何か言われてそれに対してふざけんなよって思うことはそんなにないかもしれない。


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MARIA・ザ・マザー
境遇、について
ヒップホップは近道ではない
欲深くて、愛しい
音楽と、ちょっとセクシーな話
人任せじゃダメなジェネレーション
アンチ・アンチ・エイジング
音楽と、けっこうセクシーな話

ヒップホップは近道ではない


やっぱり、みんながオラオラしてるあたしを期待してるわけじゃないですか。そして実際問題、あたしはそれに応えたくてしかたないんですよね。


そうなんですね。そういった話が引き出されてくるのも、シミラボではなくソロだからこそという感じがします。逆に、せっかくのソロだからということで、意識して取り組んだ部分っていうのはありますか?


Maria
Detox

SUMMIT

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MARIA:やっぱり、ビートですね。シミラボで作るってなると、やっぱり男が多いから男のセンス寄りになってると思う。みんなには悪いけどね(笑)。“ローラー・コースター”って曲があって(“Roller Coaster feat. JUMA,OMSB”)、超ノリノリなんだけど、たぶんシミラボでああいう曲をやることはないと思う。どちらかというと、「自分はこうで、お前はこうで、世界はこうなんだぜ」って言い聞かせるのも大事かもしれないけど、それよりもその場の一体感が好きで。みんなで楽しもうよっていう曲を意識したかもしれないです。

ああ、なるほど。わりと後半はアブストラクトな流れになるというか、サイケデリックでぼんやりとした曲調になっていきますよね。それは、より内面に向かっていくっていうようなこととリンクしていたりしますか?

MARIA:そうですね、ビート自体ははじめからこのテーマでいこう、というのがあって。ふだんいろいろと考えることが多くって、自分のアルバムだから自分の価値観で書いたっていうのが、後半は出ているかもしれない。もともとあった気持ちと、入ってきたビートがたまたまぴったり合ったっていうこともあるかも。後半の“ユア・プレイス”っていう曲と、“ディプレス”(“Depress feat. ISSUE”)、このふたつはちょうどぴったりきた感じですね。

後半のほうが、その意味ではストレートというかナイーヴな部分に触れるものなのかもなと思いました。

MARIA:そうですね。“キャスカ”とかは実際強く見られるけど、いまシミラボを何千人もの人が知ってくれるようになって、そのひとりひとりに「ちょっと待って、じつはあたしはこういう人で……」とかって説明できないじゃないですか。だから(自分のことは)言いたいように言ってくれよって思ってるんだけど、実際にラップをやってなかったら、あたしは超ふつうの人なわけだから――いまもふつうの人だけど――奥さんとかになって、彼氏とかに献身的に尽くしてたと思いますね。

うーん、尽くす。でも実際にラップをやってなかったら……って選択肢はあったんでしょうか?

MARIA:いまはほんと、そういうふうには考えられないけど、でもいまだにラップやってることが不思議なことはあるかな。子どもの頃がいちばん弱かった時期だから……。家庭もそうだし、自分が置かれている環境(米軍基地と日本の学校との往復)もそうだし、自分を打ちのめす出来事が多くて。でもそんななかで、ヒップホップの「ワルそう」な感じにはインスパイアされたんですよ。自分をオラオラさせてくれる。

そうか、本当に必要に迫られた、武装の手段でもあったわけですね。

MARIA:そうそう。だからいまでもそうなんですけど、ライヴするたびにすごく緊張するんですよ。やっぱり、みんながオラオラしてるあたしを期待してるわけじゃないですか。そして実際問題、あたしはそれに応えたくてしかたないんですよね。もちろん楽しんでほしいとも思うし、あたしのことを、あたし自身が憧れてきたラッパーたちみたいに思ってくれる子がいたらうれしいし。逆に、ヒップホップは自分にとっては武装だし居場所でもあったから、今度はあたしが逃げ場になってもいいなって思ってるかな。

ああ、すごい。MARIAさんは担いだ神輿に乗ってくれるんですよね。そして、ふだん多くの人が抱えている負の思いを引き受ける存在。まさにスターとかヒーローの役割です。言い方が少し大げさになりますが。



ヒップホップは自分にとっては武装だし居場所でもあったから、今度はあたしが逃げ場になってもいいなって思ってるかな。

MARIA:やっぱり同じ人間だからね。そういうネガティヴなこととか文句とか、同じような気持ちになることは多いと思うんですよ。ヒップホップはそういう方向で発信しやすいというか。

たとえば、細かい事情は抜きにして、わたしだったらMARIAさんのお父さんを許せるだろうか、とか素朴に思うわけです。でもMARIAさんはそういうことをひとつひとつ許していく。そしてその一方で、“ヘルプレス・ホー(Helpless Hoe)”みたいに攻撃もするわけですよね。その攻撃性っていうのはやっぱりヒップホップのひとつのフォームとして演じているものなんでしょうか? それとも分裂しているものなんでしょうか?

MARIA:最近、考えていたんですよ、矛盾について。人間って結局のとこ矛盾してるなって。その意味では演じているというよりは、このアルバム自体が人格で、だから矛盾してるって感じ。あたしってけっこう気分がコロコロ変わるから、いいときには「みんなおいで~」って感じだけど、そうじゃないときは、何か言ってやろうって思うこともあるんですよね。
この“ヘルプレス・ホー”に関しては女性だけじゃなくって、男性についても言えることなんですよ。なんか、自分のゴールに向かって努力するのはいいことだと思うんだけど、その努力の仕方ってものがあるじゃないですか。たとえば女だったら媚を売って、すり寄って、玉の輿を狙って……って、近道しようとする人たちがいるじゃないですか。そういう感じが好きじゃなくて。要は真実じゃない愛とか真実じゃない気持ちっていうのが嫌い。すごく嫌いです。それは男の人にとってもそうで、上っ面しかないものが嫌ですね。

MARIAさんの気高さですね。こうしたリリックのなかに出てくる「あなた」とか「you」っていうのは、特定の対象を指していたりしますか?

MARIA:曲によりますけどね。たとえば、“ユア・プレイス”なんかは完全に過去の男たちですね(笑)。やっぱり、もとからラップをやっている人間って知ってて、そこを認めてもらった上で付き合いはじめる人ばっかりじゃないから。男の人って、女のほうがグイグイ前に出るのは嫌じゃないですか、たぶん。だからプライドの高い人と一緒になると、なんか、終わるっていうかね……。お互い疲れちゃうんですよ。あの曲はやっぱり、そういうときに頭に浮かんでた男性について書きました。

ああー。そういう「you」も、曲になると普遍的なものに聴こえてきますよね。ヒップホップがとくに歌い手と「I」とが一致しやすい表現フォームだということなのかもしれませんが、音楽とか文学とかアートとかって、自分っていうものを切って売っていかなきゃ成立しないものだって思いますか?

MARIA:それは思わないですね。ヒップホップ=ストリートから生まれたもの、リアルなものっていう話になるけど、自分は妄想とか想像力があるんだかなんだか、ひとりで家にいてもマジでファンタジーな感じなんですよ。もちろんリアルな自分の気持ちとか言葉を発信するんだけど、でもやっぱり邪念とかそういうのをなくして、理性とかも捨てて、楽しい気分になりたいときがあるじゃないですか。そういう意味ではけっこうファンタジックで無責任な言葉もあるのかなって思います。

自分の思ったこととか感じたことを書いてるだけなんで、結局スーパー・ストレートなだけなのかもしれない。ただ自分は、自分のスーパー・ストレート自体が他の人とは少し違うのかなって思うところはあります。けっこうマイノリティっていうか、信念とかの話になるとけっこうみんなとズレてるって感じ。大人になると汚れるとは言わないけど、どんどんしゃあない、しゃあないって流していくようになると思うんですよ。でもその「しゃあない」ってなってるときに、気高いほうの自分がそれを見たらめちゃくちゃ食らうっていうか……。どうしてこんなにブレちゃったんだろうって、呆然としたことがあったんですよ、前に。そこから、何が何でもブレないようにって思うようになって。



欲深くて、愛しい

どんなに理性でいまこんな話をしていても、実際に人間でいる上は罪深い、っていうか。人として生きていく限り、絶対最悪な部分を持ってるから。
――でもやっぱり、愛が答え。それしかないって思った。

去年やっていたアニメなんですが、人々の心のなかの負の感情とか暴力衝動みたいなものを数値化できるテクノロジーがあって、その数値に沿って人間を管理することで自治と平和を守っている社会が舞台なんですよ。その数値が一定以上上がると自動的に処罰とか処刑の対象になるっていう……

MARIA:あ、何でしたっけ、それ? 知ってる! 見てないけど、友だちがおもしろいって言ってた。

『サイコパス』ですね。

MARIA:あ、言ってた。それだ。あたし、それらしいよ。

それ……? あ、主人公ですかね! そう、いままさに主人公に似てるって言おうと思ったんですよ。罪を犯しちゃうような心の数値が上昇するはずのところで上昇しない。「くそっ、こいつムカつく、死ねっ」みたいに思っても、そこで殺意とか暴力衝動みたいなものに結びつかない人って設定なんです、主人公は。その子のことを指して、作中に「(世界を)よしとしている」って表現が出てくるんですが、MARIAさんはまさにそれですよ。「よしとしている」。

MARIA:ただね、何でもかんでもよしとしててもアレだから、撃つとこは撃たないと。これとかもそうだけど(“ボン・ヴォヤージュ”)、「欲深い生き物め」ってところの一行めと三行めを男性、二行めと四行めを女性に向けて書いたんだよね。結局、男も女も欲深くて、女は自分の住みかや心が満たされたりするならそれのために何でもするっていうようなところがあるし、男は男で性欲とかを満たすために何でもする人が多い。女の人と男の人で、欲の種類は違うけど、それを満たすために何でもするところは同じ。戦争だってそうだし。だから、そういう意味では人間が大っ嫌いとも言える。

この「欲深い生き物」っていう言い方自体がすでに男とか女とかっていう区別を超えて、人間について言及されたものなんだろうなとは思いました。

MARIA:その欲のせいで力のないものが傷ついている ――動物とか子どもとか――と思うと許せないけど、でもやっぱり、愛が答え。それしかないって思った。結局そこに行きつくしかないって。

みんな強くも完璧でもない。その人間の欠けた部分を埋めるものは愛しかない、というようなことでしょうか? 

MARIA:そう、みんなそうじゃないからこそ、その部分を認めないと。自分にばっかり意識がいきがちだと思う。愛するっていうと大げさに聞こえるかもしれないけど、あたしけっこう何でも愛しいと感じる瞬間が多くて。仲間とか、動物なんてとくにそうですけど、対象物に対する愛しいっていう気持ちを持てるようになったら、みんなハッピーなんじゃないのって思う。まあ、感謝の気持ちを忘れないっていうような、学校の先生みたいな話になっちゃうけど。本当にそう思うんですよ。

すごくよくわかりますね。ただ、音楽がすごく生き生きとしていたり、何かがすごく魅力的だったりするのは、強烈に欠けた部分があるからだっていうふうには思うんですよ。絶対条件というわけではありませんが。

MARIA:それは絶対ある。どんなに理性でいまこんな話をしていても、実際に人間でいる上は罪深い、っていうか。人として生きていく限り、絶対最悪な部分を持ってるから。だから結局、衝動に負けることもあるし、衝動で楽しい方をえらんじゃたりとか。それはわかってるんだけど、でもやっぱりここに行き着くんじゃない? っていうような。


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境遇、について
ヒップホップは近道ではない
欲深くて、愛しい
音楽と、ちょっとセクシーな話
人任せじゃダメなジェネレーション
アンチ・アンチ・エイジング
音楽と、けっこうセクシーな話

音楽と、ちょっとセクシーな話

セクシーさね。それは超大事。親子の愛はピースだけど、男女の愛はピースじゃない。お互いが夢中になったら最高に気持ちいいわけじゃないですか、それって。


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最近、音楽にあまりセクシーさを感じないですよね。いや、セクシーな音楽もあると思うんですが、とくに国内は音楽カルチャー全体がそういうフェイズじゃないっていうか。MARIAさんの音楽には生々しい男女観があったりもして、そこが少し異質でもありますし、音楽のなかに確実にダイナミズムを生んでいるとも感じます。だからMARIAさんに訊きたかったんですが、音楽にとってセクシーさって何だと思います? あと、愛っていろんなニュアンスがありますけど、セクシーさに関係あります?

MARIA:セクシーさね。それは超大事。親子の愛はピースだけど、男女の愛はピースじゃない。お互いが夢中になったら最高に気持ちいいわけじゃないですか、それって。盲目なものだしね。それは人間の欲の部分でもあるし、ピュアな部分でもある。欠点だらけの男女の結びつきが大事だってこの本(『街のものがたり』)のなかで言ったと思うんだけど、それは崇高なものだと思うんだよね。どうでもいい相手なら何も思わないけど、どうでもよくない相手なら苦しい。自分を苦しめる人ほど大事な人だったりする。
 ただ、そこで勘違いしちゃいけないのが、その人だから苦しいのか、故意に苦しめられてるのかっていうことだけどね。でも結局、……あんまり大きい声で言っていいのかわかんないけど、あたしは少なくともセックスが好きなんですよ。

……あ、えっと、かっこいい。それはなんというか……、いいお話ですね。本質的というか。

MARIA:うん、マジで本質ですよ。どうでもいい奴とやったら、それこそ惨めになるだけですけど、べつに、付き合う付き合わないはともかく、大事だと思う人ならばその瞬間に最高に満たされるし、その後もいい思い出として終わるし。そのときだけの関係っていうのもいいと思うよ、とは言ってるんですよ、“ゴッド・イズ・オフ・オン・サンデイ”で。「See ya later 朝までmommy」っていうのは、「mommy」ってセクシーな女の人のことを言ったりするんですけど、「朝までmommy」ってことは、その人に朝まで呼ばれるってことなんですよ。でもそれは「よっぽどいい男んときの話」。

これはたしかにセクシーな曲ですね。

MARIA:そう、でもこの「よっぽどいい男」っていうのは見た目とかの話ではなくて、その人をリスペクトしているか、大事か、後悔しないか、みたいなこと。性的なものとアートはすごく結びついているから。愛情にしても恨みにしても、黒い気持ちってあるじゃないですか。愛とそういう黒い気持ちとは似ていると思うんですよ。ふつふつと沸きあがる感じとか。だから、そういうものと音楽を結びつけたらもう無限なんだろうなって思って作ってる。

なるほど。

MARIA:だから、アーティストはセックスとオナニーをいっぱいしたほうがいいんですよ。

なるほど!

MARIA:ほんとに(笑)。『ブラック・スワン』(ダーレン・アロノフスキー監督/2010年)って観ました? 映画。あれで、先生が「お前の表現力で足りない部分はそこだ」って言うじゃないですか。あたしめっちゃ共感できて。それは人間の本質だから。それを動かすものを知らないと、表現みたいなところでも出せないと思う。

わかります。でも、お訊きしたいんですが、時代はもうずいぶんしばらく「草食系」が引っ張ってきましたよね。音楽だって、ポップ・マーケットに限って言えばボカロ音楽やアニメ音楽がオルタナティヴに機能していて、それはめちゃくちゃざっくり言えば「いい男」ではなくてメガネ男子が象徴する世界なわけです。

MARIA:うんうん。

彼らは性的なものから疎外されているわけではけっしてないですけど、かといって『Detox』に出てくるようなワイルドで生々しいセクシーさに肉迫することもないと思うんです。そういうメガネ男子たちはどんなふうに見えているんですか?

MARIA:そうですねー、どうだろう。草食系の友だちもいるけど、実際、そういうふうに見えるだけで、意外とフタを開けると違ってたりね。それに自分が気づいてない、見えてないだけかもしれない。そういうものを受け止めてくれる人が出てきたときに、はじめて見えてくるものかもしれないし。……でも、正直、やっぱり自分には何も言えないですね、そのへんは。

なるほど、そうですよね。わたしはこんな仕事をしていなかったら、もしかしたらシミラボやMARIAさんを知らないままだったかもしれないトライブの人間なんですが、やっぱりなかなかそのワイルドさセクシーさに距離があって……。聴いて触れればすごくかっこいいのに、触れるまでに超えなきゃいけないものがあってちょっと時間がかかったんです。

MARIA:うーん、そうだよねー。あたしは直接話すしかないと思ってて。2ヶ月に1回シミラボでやっている〈グリンゴ〉っていうイヴェントがあるんだけど、そこではあたし、酒の瓶持って客全員に話しかけますからね。「どう、飲んでる? 楽しんでる~?」って。だから、ラップとかしてる人間ではあるけど、みんなと何にも変わらないよって思ってる。小学校行ったし、中学校行ったし、やなことあったし、みたいな。でもヒップホップはいろんな音楽の要素を入れることができるから、そのよさは壁を越えて伝えたいとは思う。



シミラボの男たちはみんな痛みを知っているし、嘘をつかないし。自分の信念とか自分の意志がちゃんとしてるから、すごい魅力的だと思う。

MARIAさんらしい、って言ってもいいでしょうか。とてもリスペクタブルなことだと思います。ところで、では世の中全般のこととして男子がどうかっていうふうに訊き直したいんですが、いまMARIAさん的に「いい男」っていうのはどんな感じなんですか。

MARIA:ぶっちゃけ少ないね。少ない。でも最近なんかキてるのかもしれないけど、マジやべえって思う男がふたりいた。

へえー。そういう男の特徴って何なんでしょう?

MARIA:なんだろう、やっぱり自分の意見をはっきり言える?

それは一般論として、日本男子には少ないイメージですよね。

MARIA:そうだね。あと、下心があったとしても、ちゃんと自立した男だったら、それがずる賢い感じで伝わってこないの。最近会ったその男たちに関して言えばそうだね。いやらしくないし、ずるくないの。正々堂々としてる。自立心と自分の意見、それが大事かな。

それはそのままMARIAさんの理想の男性像と考えてもいいですか?

MARIA:それももちろん含まれる。あとは人の痛みだよね。そういうことがわかるのが最高に理想。それを知らないで育って人を傷つけてたら意味がない。

シミラボの男性たちはその意味ではかなり理想の方々ではないですか?

MARIA:あ、シミラボのメンバーはね、メンバーだからこそ何もないけど、もう最高だと思いますよ。彼氏探してるいい女の子がいたら全然推す。シミラボやばいよって。シミラボの男たちはみんな痛みを知っているし、嘘をつかないし。もちろん相手との関係によって少し差は出てくるかもしれないけど、自分の信念とか自分の意志がちゃんとしてるから、すごい魅力的だと思う。

よく、こんな人たちが揃うなあって、人間性や個人的な特徴ももちろんだし、音楽のセンスとかスキル、ルーツみたいなことも含めてけっこう奇跡ですよね。

MARIA:たぶんいまのシミラボのなかで「なんかちがくない?」みたいな人がいたら、すぐいなくなると思う。

日本はやっぱり、海に囲まれつつほぼひとつの民族で歴史を紡いできた国なわけですし、みなさんそれぞれの出自というのがさまざまに摩擦を生んできた場面も多いと思います。そういった個人の背景にあるものが、絆を支える上で大きく関係していたりするんでしょうか?

MARIA:同じような環境にいるから、価値観が合うのかな。だから、なんでそんなことができるの? っていうような違和感もないし。みんな優しいんですよ。

その優しさっていうのも、自分に気持ちのよいことをしてくれる、という意味ではなくて、もっと自立した強さのあるものって感じがしますね。

MARIA:うん、愛情深いですよ。それに、あたしはヒップホップについてDJみたいに詳しいわけじゃないし、音楽がよければ聴いてる、みたいな感じだったんだけど、それを誰かと共有するということがいままでなかった。それをはじめて共有できたのがシミラボですね。



人任せじゃダメなジェネレーション

ちょっと遊んだらその月ギリギリみたいな。それでこの国終わってるよねーとかって言ってるくらいなら、あたしはあたしのまわりの少人数を動かすから、お前はお前のまわりの少人数を動かせよ。

OMSB(オムスビーツ)さんとかのインタヴューを読んでいたら、逆にMARIAさんが思ってもみなかったような、自由な発想を持ってきてくれるっていうようなことを言われてましたよ。音楽に凝り固まっていない人だからこそ見えるものっていうことなんでしょうね。

MARIA:そうなんだ(笑)。自由かどうかはわかんないけど、それはあるかも。音楽に入り込みすぎると、自分のなかでやばいと思う方向にしか行かないときがあって、それだとリスナーがついてこれなくなったりするんじゃないかと思う。

そっちの方にもっと突き進んでいくっていう選択肢はないんですか?

MARIA:あたし自身が、どっちかいうと楽しみたい派というか。あんまり深くというよりも、楽しみたいという感じ。内側からぐわーって出てくるものとか、頭が固くならないもののほうが好きかな。だから「あたしはこういうスタイルなんだ」っていうのはあんまりない。

このアルバムのなかにだって、メンツ的に見ればほとんどシミラボだなっていう曲もありますけど、そうじゃなくてMARIAのアルバムなんだっていう部分は、ご自身としてはどんなところだと思いますか?

MARIA:なんだろう……。“ムーヴメント”(“Movement feat. USOWA, OMSB, DIRTY-D”)とか、“ローラー・コースター”。パーティーしようよ、そんな固い話やめようよ、っていう。

MARIAさんだからこそシミラボから引き出せたっていうような部分ですかね。そういうところは他にもありませんか?

MARIA:“ローラー・コースター”に関しては、ファンキー感。みんなファンクが好きなので。シミラボの輩(ヤカラ)感?

あはは、そんな言葉があるんですね。ヤカラ感。なるほど。

MARIA:みんなね、殺してやろうみたいな考えが強いんですよ。「ぶっ殺そうぜ!」「何も言わせねえよ!」みたいな感じだから「えっ」ってなるんだけど、“ローラー・コースター”に関しては「まあ、まあ」みたいな。楽しくやりたくない? って。JUMAはもともと楽しいやつだけど、オムスもまあハッピーなやつなんだけど、よりハッピー感出せたんじゃないかなって思う。結局、シミラボ自体がすごく高い適応能力を持っているから、深く注文とかつけなくてもいいかってなるんですよね。USOWAとかも入っているけど。

せっかく“ムーヴメント”のお話が出たのでお訊きするんですが、「人任せじゃダメなジェネレーション」って詞が出てきますよね。これはMARIAさんの実感ですか?

MARIA:これはあたしが書いたフックなんです。やっぱり、政治とかでもそうですけど、自分が動かないと何もはじまらないじゃないですか。何かしたいと思う気持ちが、「でも自分ひとりが何かしたって(どうにもならない)……」って諦めの気持ちに消されて、ムーヴメントを起こそうとしない人が多いと思うの。自分の意見も言えないし。でも結局そんなんじゃ何にも動かないし。経済的にも、ちょっと遊んだらその月ギリギリみたいな。それでこの国終わってるよねーとかって言ってるくらいなら、あたしはあたしのまわりの少人数を動かすから、お前はお前のまわりの少人数を動かせよ、それではじめてムーヴメントが起こるんじゃないの? って。ちっちゃいところから動かしていけば絶対変わるよ、って気持ちがある。

その「変える」っていうのは、どんなこと、どんなイメージですか?

MARIA:さっき言ってたような人種問題とかがそうですね。ちょっと変わってると目立ちやすいじゃないですか、日本って。でもそれぞれの主張が強くなることで、バラエティのある国になると思う。あと、あたしストレートに言ったり書いたりしたことないんだけど、動物がマジ好きで、殺処分とか、本当に嫌なんですよ。ドイツとかだと保健所もないし、ペットショップもないんです。生体販売を行ってなくて。日本はオリンピック開催が決まったけど、そんな金につながりそうなところばっかり見てて、もっと大事なところを見てない。ペット業界もお金が入るからってことで産ませるし、売れ残ったら殺す。ゴミみたいな扱いだよね。あたしはそういうところでもムーヴメントを起こしたいって思ってるし、署名活動とかもやるし。あとは風営法。クラブなくなっちゃったら、もうヤバイじゃん。脳科学者も言ってるんですよ、ストレスをなくすには歌と踊りがいちばんって。それなのにクラブで踊れないって何だよって、ねえ? でも、その陰にはこっち側のマナー違反だてあるわけだし、人任せじゃなくて自分がしっかりしなきゃ。ちゃんとしてれば楽しいことも制限されないんだし。だから、ちょっとシャキッとしてくれよって思いますね。

なるほど。それぞれが自立しよう、小さいところから動きを起こそう、というのは年齢に関係のない普遍的なメッセージだと思うんですが、それが「人任せじゃダメなジェネレーション」ってふうに世代の問題として書かれてますよね。そこが興味深かったのですが、他じゃなくて、とくに自分たちの世代にそれが必要だって思うんですか?

MARIA:なんか、友だちにこういうこと言っても、「へー、すごいね。そんなこと考えてるんだ。」で終わっちゃう。「すごいねー」じゃない、お前たちのことなんだって思うんだよね。

それはうちらの世代特有、という感じですか?

MARIA:とくに多いんじゃないですか。逆に、自分たちより下の高校生とかのほうがちゃんと考えてるみたいに見えるんですよね。うちらの、いわゆるゆとり世代はちょっとどうかなって思うときはある。

快速東京の哲丸さんも自分たち「ゆとり」について興味深いお話をされていたんですが(『ele-king vol.10』参照)、やっぱりわりと強い横の意識があるんですね。

MARIA:自分と同じくらいの年のほうが意見が聞きやすいってこともありますけどね。

あ、それはそうですね。

MARIA:あと、あたしは一応、社会に出た経験もあるからね。親くらいの世代にもちゃんとしろよって思うことけっこうあった。大人になればほんといろんなことが「しょうがない、しょうがない」ってなっていく。あと、金に換算したりね。これだけ払ってるんだから、これだけのことをやれ、って。人間が、気持ちのあるものがそれをやってくれてるわけなのに、そこを考えないよね。人と人とのつながりが薄くなってきてるって感じる。

大人っていう問題は、他人事ではないですね。人間としてもそうですが、ミュージシャンとしてどう歳をとっていくかっていう問題もあると思います。さっき言っていたかっこいい男子たちやミュージシャンは、かっこよく30代、40代になれるのか。

MARIA:シミラボのみんなはそれなりに……なれるんじゃないですか(笑)。

あ、そうですね。

MARIA:いい味出るんじゃないですかね。少年の心を忘れないと思う。だからずっと若々しくいられると思う。あたしはわかんないな……もともと精神年齢が45(歳)とかって言われてるから。

はははは!

MARIA:自分がどうなるかはわかんないですね。

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ヒップホップは近道ではない
欲深くて、愛しい
音楽と、ちょっとセクシーな話
人任せじゃダメなジェネレーション
アンチ・アンチ・エイジング
音楽と、けっこうセクシーな話

アンチ・アンチ・エイジング

自分が中学生、高校生だったときに噛みしめていましたから。いまはいましかない。「若くいたい」って思いたくない。

新しいですね、「45歳」って。では、こうなりたいっていうのはありますか?

MARIA:うーん(笑)、あんまり変わりたくはないですね。きっと惑わされるものがたくさんあると思うんですけど。

女性誌とかファッション誌とかって読まれたりします?

MARIA:いやー、読まない。マジで本を読まない。セレブのゴシップ記事とかしか読まない。

ははは、ゴシップ記事限定。

MARIA:リアーナ、へー。みたいな。

服もコスメも髪型とかもとくに何を参照するでもなく?

MARIA:そういうのはネットで見ちゃう。あと、流行りがどうっていうよりも、こういうのしたーい! っていうのを調べるから。

調べていて手本になるというか、ビビっときた人はいますか? アーティストとかでも。

MARIA:アーティストとかもあると思うけど、あたしほど感覚で生きてるやつもそんないないと思うからなあ(笑)。ファッションじゃないけど、ビビっときたのは、セレーナ・ゴメス。最初はガキくさい顔してるから好きじゃないと思ってたんだけど、最近『カム・アンド・ゲット・イット』っていう曲を出して、そのPVを観たら腕と脚が超長いの。それが超セクシーで、人間が平等だって誰が言ったんだよ? ってレベルなの。彼女はいわゆるアイドルって感じに言われやすい人なんだけど、そのわりには実力派だと思う。プロデューサーがいいのかもしれないけど、アルバムもよくて。彼女はすごいいい感じに仕上がってきてると思う。

仕上がる(笑)。

MARIA:リアーナよりセレーナ・ゴメスって感じ。

へえー。リアーナとか超メジャーな存在でも、アメリカで黒人でセクシーでヒップホップでってなると、なかなか具体的にマネしたり目指すべきロールモデルとして考えにくいところがありまして……

MARIA:うーん、そうかもね。でも、“ウィ・ファウンド・ラヴ”って曲だっけな、このPVを見たときに、これはシドとナンシーだろうなって。完璧にコンセプトはコレでしょって感じで、今年はイギリスきてんのかなと思った。でも、女の人で憧れる存在か……、基本、巨乳なんだよね。

おお?

MARIA:巨乳は強いでしょ。

そうですね、「貧乳」「つるぺた」っていう革命的なキーワードもありますが……。

MARIA:そこは強くない。

ははは! 強くはないですねー。

MARIA:この間言ってたの。Eカップが最強だって。それを毎日見た男性は、何かの数値が高くて、長生きするって。

へえー……、ええ!? ぶっとび科学ですね。

MARIA:あ、憧れる女性ひとりいたわ。杉本彩。

それはまたセクシーですね。

MARIA:杉本彩と、マツコ・デラックスと……。

それは巨乳枠なんでしょうか(笑)。

MARIA:はは、あとアンジェリーナ・ジョリー。この3人かな。すごく好き。

みなさん強いですね、たしかに。あんまり日本人らしい日本人のなかにロールモデルはいなさそうですね。

MARIA:日本はないかな、やっぱり。体型が体型だしね。

アイドルとかももちろん……

MARIA:全然興味ないですね。

そうですよね。MARIAさんは黒髪時代も素敵でしたけど、きっと黒髪の意味が違いますもんね。

MARIA:うん。黒のほうが映えるかなってだけ。なんか、こんな適当な人いないよね。

いや、まったく適当ではないですよ。

MARIA:適当、適当。最低限、その人が立ち直れなくなっちゃうようなところまでは言わないようにしてる、ってくらいで、すごい適当だよ。

ははは、今日も話をお訊きしておきながら、なんだか聞いてもらっちゃってるような気持ちがしてきて。初対面なのに。そうか、これがMARIAという人のサイズかあ……って。これがマザーであり、「45」のサイズなんですね。

MARIA:そう、マザー。

みんなアンチ・エイジングなのに。「30代女子は大人ボーイッシュ」とか「かわイイ女」とか。

MARIA:ああ、大っ嫌い。電車とかで中吊り広告あるじゃないですか。もうほんとメンドクセって思いますよ。最近唯一興味持てたのが安達祐実のヌードくらい。

そんなことが……。

MARIA:そのくらいしかないですね(笑)。

そりゃ「カーディガンだけでオシャレ度アップ」とか読みませんよね(笑)。

MARIA:ほんと、どうでもいい。うるせーよ、って。

こういうのは、若返ること、若くいつづけることにコストをかけていく思考じゃないですか。それに対して「45」っていうのは新しいカウンターだと思いますよ(笑)。

MARIA:基本的に、若けりゃいいって考え方を改めたほうがいいと思うんだよね。

では、若さってことに対して特に思い入れたことがあまりないんですかね?

MARIA:自分が中学生、高校生だったときに噛みしめていましたから。いまはいましかない。いまの見た目はいましかない。歳とったひとも、まだ小さい人も、必ず一回通る場所だから、「若くいたい」って思いたくない。



音楽と、けっこうセクシーな話

でもね、結局その領域にまで踏み込まないとダメだって思う。日本はもっとみんなセックスしたほうがいいですよ。

でも、MARIAさんはすごい美貌でもいらっしゃるわけじゃないですか。それをとどめておきたいって気持ちはないのか……、セクシーってこととMARIAさんの容姿とは無関係ではないと思うんですけどね。

MARIA:セクシーではいたいですけどね。やっぱりやりたいから。……男を誘惑できなくなったら嫌じゃないですか。男がやりたいと思わない女になったら終わりだと思うんですよね。はははっ。

あー、なるほど。

MARIA:(笑)

ははっ、いや、流したわけではなくて! 本質的だなって、すごいなって思って。すみません。でも、セクシーさは見た目じゃないってことになりますよね。見た目じゃないセクシーさって何なんでしょう。

MARIA:えっとね、やっぱり、場数ですかね。

(笑)……具体的(笑)。

MARIA:あははは! 場数っていうか、回数っていうか……(笑)。結局イったことあるかどうかだと思いますよ。

おっと! ちょっと今日は、やばいですね!

MARIA:あはは! マジで? あたしなんて初めてイったのは……

いやいやいや、そこまでで(笑)!

MARIA:(笑)でもね、結局その領域にまで踏み込まないとダメだって思う。日本はもっとみんなセックスしたほうがいいですよ。

(一同笑)

なるほど、そうなんだ……

MARIA:そういう意味では、男の人も表現とか苦手だと思うんだけど。でも女性は褒められるとその褒め言葉が栄養になるから、もっと褒めてって言いたいな。

大変深いお話がきけました。じゃ、最後に『Detox』っていうこのアルバム・タイトルについてなんですけど、この「毒(解毒)」っていうのは、もともと身体の内側にあったものというイメージなんでしょうか? それとも外から入ってきたものって感じなんでしょうか?

MARIA:自分のなかにあったものですね。あたしが子どもの頃からコンプレックスを持ってきたもの。その塊。

ああー。世のなかにあるけがれみたいなものではなくて、内側で蓄積されていったもの、というイメージなんですね。

MARIA:でも結局世のなかのけがれについても歌ってるし、あたしのコンプレックスみたいなものについても言ってるし。両方にそんなに変わりはなくて、じゃあみんなでデトックスしようよ、みたいな感じです。CDの裏の方は真っ白なデザインなんですけど、それはデトックスされた、浄化されたというイメージですね。

説教くさくキレイになろうって言ってるんじゃない感じがよかったです。「デトックスしよう」って、ちょっと宗教がかったニュアンスになることもあるじゃないですか。

MARIA:うんうん。説教キライ。

MARIAさんの場合、そうならないところにセクシーさってものが絡んでくるって思います。

MARIA:それは、ラフさとか気軽さを意識したからでもありますね。教祖っぽくなったり説教になったりすると、お前誰だよ? ってことになるじゃないですか。そういうことになると、人は話に入ってこなくなると思うんですよ。なんで、そういうところでは気軽に話しかけてきてよって考えながら、作ってますね。

なるほど。今日はほんとに、話をお訊きしながら、むしろわたしが受け止めてもらったような感じがいたします。ありがとうございました!

“ボクの90年代” - ele-king

 日本を代表するロック・フォトグラファー、ご存知「クボケン」こと久保憲司氏の写真集が今週末ついにリリースとなる。初めて渡英してからの約20年分――80年代をスタートとし、90年代をメインに据えて、久保氏がフィルムに収めた膨大な記録からセレクト/収録。カジュアルながらもかなり厚みのある仕上がりになった。

 「このすべての現場に立ち会った男に猛烈に嫉妬する」

というのは、ぼくらのライヴァル、田中宗一郎さんから本書の帯にいただいたメッセージだ。過不足なく、この写真集がどういうものであるかを伝えてくれる。久保憲司は、とにかく“現場に立ち会った”男である。240ページ超にわたって収められたその点数、そして、ポストパンクからマッドチェスター、ブリット・ポップにアシッドハウス、グランジ、テクノ、ヒップホップ……と、UKを中心としながらもじつに広範なジャンルに及ぶアーティスト群像を眺めれば、必ずや当時の記憶と体験が湧き上がってくるだろう。
世代を異にする人々にとってもそれは同じ。“現場”とはそういうものなのだ。同じ時代に居合わせなくとも、それは生々しくよみがえり繰り返す。80年代回顧はいったんの落ち着きをみせているが、いま90年代がフレッシュに感じられるとすれば、本書はしっくりとその感覚に寄り添うだろう。

タナソウの言葉には、本当はつづきがあった。
「そして、そのすべてをフィルムに収めた偉大な写真家に心から感謝したい。」
レイアウトなどの都合でどうしても入らなかったのだが、嫉妬に感謝を重ねるこの名文句に、時代を超えて残る“現場”の輝き――クボケンがフィルムに収めたものが何だったのかということがありありと浮かび上がってくる。写真の横にはアーティスト名も明記。ちょっとしたエピソードが添えられているものもあり、ときどき笑いもこぼれてしまう。

 けっして敷居の高くない、可愛らしくカジュアルなつくり、お値段。どうぞクリスマス・プレゼントとしてもご検討ください!

久保憲司写真集、『loaded(ローデッド)』発売!

クボケンの“90年代”をエレキングが解体。インディ・ロック、アシッド・ハウス、レイヴの狂騒。
ひたすら撮って歩いたあの時代が、
いま鮮やかにリヴァイヴァルする――

日本を代表するロック・フォトグラファー、久保憲司がフィルムに収めた膨大な記録。
10代で飛び込んだロンドンの街並み、レイヴやフェスの熱気、一時代を築いたDJたち、ブリットポップやグランジの記憶――約20年間の懐かしくも新しい空気を、240ページ超にわたってヴォリューミーに収めた写真集です。

Psychic TV、The Jesus and Mary Chain、The Stone Roses、Happy Mondays、
My Bloody Valentine、Oasis、Aphex Twin、Derrick May、
Andrew Weatherall、Sonic Youth、Nirvana、The Pastels、Radiohead…

★小さくて愛らしい版形の上製本。
★さりげなくガーリーなデザインはクリスマスのギフトにもぴったり。
★撮影メモや萩原麻理によるインタヴューも小気味よく写真を飾ります。
★いままでにない、クボケンのちょっと意外な一面が表れた作品です。

いまファッション誌でもリヴァイヴァルのはじまっている90年代を、貴重なヴィジュアル資料で振り返りましょう。



 高畑勲監督のジブリ最新作映画『かぐや姫の物語』、ご覧になりましたか? 人目もはばからずふわわとあくびをし、カエルの真似をしてケロケロ這う無邪気な乳幼児時代のかぐや姫、激萌えでした。少女に成長してからも粗末な衣服を着て泥だらけで野山を駆け回っていた彼女は、翁からプレゼントされたピンクの薄衣を見るや目を輝かせ、衣を羽織って大喜びで家中を飛び回ります。ピンクの服、そしてお姫様として与えられた大きなお屋敷にときめくかぐや姫の気持ちは、きっと純粋なものだったはず。しかしそこからはじまる、欲望の客体「女」としてひたすら自我を殺すことを強要されるかぐや姫の怒りと絶望の描写には、娘を育てる身として大変心が痛んだものです(求婚しにきた浮気男を試すために本妻と入れ替わるという『ロンドンハーツ』みたいなドッキリには笑いましたけど)。

 純粋な気持ちでピンクやプリンセスに憧れているうちに、「客体として生きよ」という世間からのメッセージを刷り込まれる。狭苦しい「女」の領域から抜け出したいと願っても、世間との軋轢は免れ得ず、いつしか自我を手放して価値観を世間に同化させてしまう。最後まで抵抗しながらもすべての記憶と感情を失って月に帰ったかぐや姫は、こうした女性たちのあり方を暗示しているようにも見えます。この問題意識はアメリカの女性たちにはなじみ深いものであるらしく、問題解決のためのさまざまな試みが女性自身の手でなされているようです。

Girls.
You think you know what we want, girls.
Pink and pretty it's girls.
Just like the 50's it's girls.

ガールズ
私たち女の子が欲しがるものが何か、わかってると思ってるでしょ
ピンクにカワイイもの、それが女の子
まるで50年代みたい

You like to buy us pink toys
and everything else is for boys
and you can always get us dolls
and we'll grow up like them... false.

みんなピンクのおもちゃを私たちに買い与えたがる
それ以外のおもちゃはみんな男の子のもの
いつだって女の子には人形を与えておけばいい
そうすればお人形さんみたいに育つだろうってね
……なわけないし

It's time to change.
We deserve to see a range.
'Cause all our toys look just the same
and we would like to use our brains.
We are all more than princess maids.

今こそ変わるとき
女の子も広い選択肢を知る価値がある
女の子用のおもちゃはみんな同じに見えるけど
女の子だって頭を使いたいの
私たちはただのプリンセスのメイドじゃない

Girls to build the spaceship,
Girls to code the new app,
Girls to grow up knowing
they can engineer that.

宇宙船を造る女の子
新しいアプリをコーディングする女の子
女の子にだってそういうものが設計できるって
学びながら成長する女の子

Girls.
That's all we really need is Girls.
To bring us up to speed it's Girls.
Our opportunity is Girls.
Don't underestimate Girls.

ガールズ、それが女の子に本当に必要なこと
私たちにスピードを
女の子であることが、私たちのチャンス
女の子を見くびらないで


 これは女児向けのエンジニアリング玩具「Goldieblox」のプロモーション動画。音楽好きのみなさんならすでにお気づきのとおり、これはビースティ・ボーイズ“ガールズ”のパロディです。「皿を洗う女の子、俺の部屋を掃除する女の子、洗濯する女の子、俺たちが女の子に本当に求めてることはそれだけ」というヤンチャな歌詞が、見事に真逆の意味に入れ替わっています。

「Golodiebox」は大資本の企業が販売している玩具ではありません。スタンフォード大学でエンジニアリングを学んだデビー・スターリング(Debbie Sterling)というひとりの若い女性のアイディアから生まれたもの。小さな女の子にもエンジニアリングの楽しさを伝えるおもちゃが必要だと考えた彼女は、クラウドファンディング・サービス「Kickstarter」で目標額15万ドルをはるかに上回る28万ドルを獲得し、2012年10月に会社を設立。トイザらスと全国流通契約を結んだときに制作された、ピンクまみれの女児玩具コーナーを女児3人組が襲撃するというプロモーション動画がセンセーショナルだったこともあり、一躍ネットの注目を集めたのです。小さな女の子は、女児向けのカラーリングを施された玩具以外はすべて男の子向けだと考える傾向があると言われています。そのため、組み立て系の玩具が置いてあるコーナーに多くの女児は寄りつかないとも。そこで「Goldieblox」はピンク、ラベンダー、水色という定番の女児玩具カラーと、いるかのバレリーナや気の強いネコといったキャラクターを採用し、女児向けであることをわかりやすくアピール。さらにかわいい絵本風のブックレットも付け、物語に没入する感覚で組み立て玩具を楽しめるようになっています。

 上記の“ガールズ”パロディ動画は瞬く間にネットに広がり、700万回以上も再生される人気動画となりました。そして今年11月、「Goldieblox」の知名度をさらに高める出来事が起きました。ビースティ・ボーイズ側が、楽曲の使用許可を得ていないことを問いただすクレームをGoldiebloxに送ったのです。そしてこれを受けたGoldieblox側が、実際に訴えられる前に「著作権侵害ではない」とする先制攻撃的な訴訟を起こすという斜め上の展開に。このユニークな騒動は各メディアで取り上げられ、「Goldieblox」は多くの人の目に触れることとなりました。問題の動画がステレオタイプなジェンダー観を批評するパロディ作品と認められるのか、それともただの著作権侵害と判断されるのか、法律に疎い私はわかりません。ただ、LAタイムスの記事によれば、SNS上の反応は圧倒的にGoldieblox側に好意的だとのこと。だいたいにおいてフェミニスト的な主張は笑いものになって終わることが多いのですが、ひとりの女性の奮闘で世間の空気が変わるという事態に勇気づけられずにはおれません。訴えたわけでもないのに一方的に悪者にされてしまったビースティ・ボーイズはお気の毒ですが……。

※訴訟を起こされた後にビースティ・ボーイズが発表した公開書簡では、Goldiebloxへのリスペクトを表明しつつ、あくまで商品の宣伝に自分たちの楽曲を使わせないという従来からのバンドの方針を強調しています。この方針が昨年亡くなったビースティ・ボーイズのメンバー、アダム・ヤウクの遺志によるものであることを知ったGoldiebloxは著作権侵害を指摘された動画を取り下げ、ビースティ・ボーイズと和解する姿勢を見せました。なお、メンバーのアドロックことアダム・ホロヴィッツの奥さんは、筋金入りのフェミニストバンド「ビキニ・キル」のキャサリン・ハンナ。

「女の子は、“さすが〜”“知らなかった〜”“すご〜い”“センスいい〜”“そうなんだ〜”だけ言っていればいいんだよ」というような言説は、いまでも少なくありません。「ほ〜うまいことあいうえお作文にまとめたもんだね〜」と感心する気持ちもあるのですが、同時に女の子を育てるのが怖くなることがあります。「わたしこんなことできたの!」と報告されるたびに褒めて励まして自尊心を育むこと、これが将来生きていく上で全部裏目に出てしまうのではないかと。でも世間はうつろいやすく、知恵と技術とプレゼン能力さえあればほんの少しずつでも変えることができる、変えるのは、未来を生きる女の子自身。そう考えれば、女の子を育てることに希望がわいてきますし、自分にだって何かできることがあるのではないかと思えてきます。

 もしもかぐや姫に翁が与えたものが、ピンクの衣に大きなお屋敷ではなく、ピンクの大工道具だったら? はたまた自由にアプリをコーディングできる開発環境だったら? 無数に存在する幼いかぐや姫たちの、そのはつらつとした自我を守るためにできることを考えるのが、翁・媼サイドたる私たちの務めなのかもしれません。



ギークマム 21世紀のママと家族のための実験、工作、冒険アイデア
(オライリー・ジャパン)
著者:Natania Barron、Kathy Ceceri、Corrina Lawson、Jenny Wiliams
翻訳:星野 靖子、堀越 英美
定価:2310円(本体2200円+税)
A5 240頁
ISBN 978-4-87311-636-5
発売日:2013/10 Amazon

 11月といえばホリディ。今回はホリディ前後のイベント・レポートをお届けします。

■11/23 (Sat)
 ホリディ1週間前の週末は、NYから約4時間北のロードアイランド州のプロヴィデンスへ遠征。今までたくさんの伝説を作ってきたロフトビル’ビルディング16’の最後のショーが行われた。昔ライトニング・ボルトが住んでいたフォート・サンダー(コンタクトレコーズからの『u.s. pop life vol.11 トリビュート・トゥ・フォート・サンダーCD』に日本語で詳しく解説)の現在版とも言えるこのビルディング16。このショーを最後に、このビルは(も)立ち退きになる。住所は掲載していないのに、どこから集まったのかプロヴィデンスのキッズたちで大混雑。バスルーム近くに真っ赤な棺桶があり、ビルディング16にメッセージを書いて、カードを棺桶に入れるようになっている。ショーのクライマックスは、ハウス・バンドのワット・チアー・ブリゲイト。ボリウッド、バルカンズ、ニューオリンズ、サンバ等々をミックスした19人(!)のブラス・バンドで、子供から大人までを巻き込むお祭りバンドである。ステージに入りきらないので、フロアやスピーカーの上にもメンバーがいるし、観客が天井によじ上ったりするのは当たり前で、メンバーが観客にダイブし、ドラムごとドラマーを持ち上げたり、観客とバンドの盛り上がりの半端ない事。フィナーレでは、バンドがビルディング16の棺桶を、外に持ち出しマーチング(バンドは、外でもプレイを続ける)、観客はひとりひとり花火を渡され、棺桶に火をつけ燃やしてしまう。火力は相当強いし火事にならないのかと心配したが、勢い良く燃えて形がなくなって行く棺桶を見て、ぐっと心に突き刺さる物があった。長い間お疲れさま。これがプロヴィデンスのパーティ・スタイルのようだ。


ラストショーの写真集
https://everydayilive.com/bands/building16farewell/

Building 16

■11/25 (Mon)
 NYに戻ると、少し前から噂されていたロンドンのレコードショップ、ラフトレードのNY店がウィリアムスバーグ/グリーンポイント・エリアにオープンした(https://www.roughtradenyc.com)。元々HBOの倉庫だった場所(イースト・ロンドンの本店より3倍大きい)は、レコード店兼カフェ(byファイブ・リーヴス)、ギャラリー、音楽会場などの多目的スペース。初日(11/25)は、スカイ・フェレイラ(フリーw/CD購入)、チャールス・ブラッドリー(フリー)のインストアがあった。スカイはきっぱり諦め、チャールス・ブラッドリーを目指して行く。先に行った友だちは、ワンブロック以上の行列ができて入れなかったと言っていたが、タイミングよく前に5人ぐらい待っていただけで5分ぐらいで入れた。遅めに着いて正解。
 新譜100%の店内は、まだ空いている棚が多かったが、1階が新譜レコード/CD、メインドラッグが展開するギア・コーナー。2階には本&雑誌コーナー、ロンドンとNYをつなぐデジタル・ニュース、ガーディアンによるブース、アートギャラリーなどの分かれた小さいセクションがある。店内の作りがタワーレコード的、と思ったのはメガストアだからか。アートギャラリーの最初のキュレーターは、チルディッシュ・ガンビノで、彼は12/8でここでショーも行うのだが、ブライアン・ロッティンガーによるアート作品、ドナルド・グローバーのベッドルームの再現(サイケデリック・レインボウのライト・デザイン)が展示されていた。
 音楽会場は250人を収容、イスも設置されたバルコニーがあり、バワリーボールルームの縮小版のようだった。2階の後ろにはピンポンテーブルが2台設置されていた(チケット制のショーの時にはないとの事)。
 ジェイムス・ブラウンに影響を受けたというチャールス・ブラッドリーは、ステージにいるだけでカリスマ性があり、独特のソウルフルで無敵の動きを惜しげなく披露。彼を見ていると思わず笑顔になるし、バンドもとても楽しそうだ。近くで見れること自体がレアな、64歳の彼をオープニング・ナイトに持ってくるのは、さすがラフトレード。ショーの後も、追い出される事なくバーでハングアウトしたり、レコードを探しに行ったり、2階でピンポンしたり、ここはアミューズメント満載。ダニー・ブラウン、マシュー・E・ホワイトのフリーショー、ソールドアウトのテレヴィジョンのショーが終わり、12/3はジョン・グラント(フリーw/CD購入)、12/6はアンドリュー・バード(ソールドアウト)、12/6はアララス(ソールドアウト)、12/7はダイブ(ソールドアウト)、12/8はニック・ロウ(フリーw/CD購入)、などのフリー&チケット制のショーが続く。ブッキングを担当しているのがバワリー・プレゼンツなので、納得のラインナップである。
 キャプチャード・トラックスの記事でも書いたように、最近グリーンポイントエリアに、レコード店が密集している。
https://www.thelmagazine.com/TheMeasure/archives/2013/07/30/greenpoint-is-becoming-the-best-record-store-hood-in-brooklyn
 2013年にレコード店をオープンするという事自体が大胆だと思うが、それぞれのインディ・ショップは自分たちのカラーを売りにし、それに対抗するラフトレードは、長年の歴史もあり、レコードセレクションの特徴(ラフトレード限定版の物を多数扱う)と、多目的スペースにすることで、レコード店という場所の定義を変えるかもと期待が高まる。

https://www.roughtradenyc.com
https://www.brooklynvegan.com/archives/2013/11/some_very_initi.html
https://www.brooklynvegan.com/archives/2013/11/sky_ferreira_pl_3.html

rough trade nyc

■11/28 (Thu)
 音楽関係の仕事や、自営業をしている限り、ホリディと言っても、いつもと変わらずなのだが、アメリカ人は自分の田舎へと帰って行くため、ホリディNYは静かで、仕事をするには実はもってこい。夜になると、観光客と何処にも行けない移住者が集まりだし、ささやかにパーティをするのである。今年の著者のサンクスギヴィングは、ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドを主催するアーサーの仕事場兼のロフトでパーティ。来ている仲間はアーサーのアシスタントをはじめ、ファッション、音楽関係者達なので華やか。サンクスギヴィングと言えばターキー(=七面鳥)なのだが、探究心あるアーサーは今年はグース(=ガチョウ)に挑戦。ガチョウの首でスープを取ったり料理はこなれた感じ。付け合わせのスタッフィング、クランベリー・ソース、グレイビー、マッシュ・ポテト、ビーン・キャセロール、温野菜のグリル、特製のフレッシュ・ペストソースはすべてアーサー作。ゲストは、オックステイル・シチュー(絶品!)、ビーツ・サラダ、マック・アンド・チーズ、ポテト・サラダ、更にスナックなど、これでもかというぐらいのごちそうが振る舞われた。5時に集合をかけたが、みんなの料理&集合事情でディナーが始まったのは結局9時過ぎ。サンクス・ギヴィング・ディナーには良くある事で、料理が出来上がる頃には、つまみ食いをしすぎてお腹いっぱい。ディナーが終わると、来ていた別の友だちの家に移動。そこは、お手製チーズケーキ(プレーンw/ラズベリーソース&チョコ)、コーヒー&サイダー、そしてダンス・パーティと、別の天国が待っていた。月に3、4回ショーもホストする場所なので、パーティの用意は完璧。ディスコボールが周り、サウンドシステムも完備。チーズケーキのあまりのおいしさに倒れそうになり(おばあちゃんのレシピらしい)、ホストの自家製フレッシュミントをインフューズしたウィスキーなど、キャラクターのあるドリンク&楽しい仲間で、サンクスギヴィングという名目のパーティは夜な夜な続いた。この場所はワイルド・キングダム。ウエブサイトはないが、NYに来たら、目の前の高架を通る電車に野次をとばしながら、ベランダでハングアウトするには最高の場所である。

https://williamsburgfashionweekend.com
https://www.ele-king.net/columns/regulars/randomaccessny/001412/

thanks giving dinner

■11/29 (Fri)
 11月からはじまっているブルックリン・ナイト・バザーに参加。2011年からはじまったこのイベントは、ウィリアムスバーグのホリディショッピングの強い見方で、ホリディ時期になると、いろんなエリアに出没していた。今までは、毎年場所を移動していたが、今年はグリーンポイントにようやくパーマネントの場所を見つけ、1年を通してオープンする(夏には、アウトドアのビアガーデンがオープン!)。アジアン・マーケットの雑多な感じをモデルにしたというマーケットは、100ものアーティスト&クラフトショップ、20のフードベンダーなどがすらりと並ぶ。一角には、地元の媒体がオーガナイズするライブショーがあり(ベンダーがない時には1800人収容できる、ブルックリンで2番目に大きい会場となる)、ピンポン・テーブル、インドア・ミニゴルフ、WIFIもあり、仕事できるスペースもある。ラフトレと同じ多目的仕様。去年は、著者の大好きなパックマンのイヤリングを発見したのだが、今年は、キャラクター物はあまり見られず、ジュエリー、洋服からiPhoneケース、タオル・ヘアバンド、古本をベースにした時計、アート・レギンスなどアーティなお店が並ぶ。著者のお勧めブランド、RHLSも出店していた。この日のバンドは、ア・プレイス・トゥ・バリー・ストレンジャー、ドーン・オブ・ミディ、ポンティアック、ウッズマン。ショッピングに夢中になり、ア・プレイス・トゥ・バリー・ストレンジャーしか見れなかったが、映像とスモークで、ほとんどバンドが見えなかった(後で聞いたらスタイルのようだが)。毎週のようにバンドが見れ(オウ・レヴォワール・シモーヌ、ティーン、マーク・デマルコなど)、アーティストの作品が随時入れ替わり、アミューズメントもありで、ハングアウトリストがまた増えた。そして、今日はキャサリン・ハンナのパンク・シンガーの上映会へ。Q&Aやライヴもあるらしい。
https://bkbazaar.com

brooklyn night bazzar
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