ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Smith & Mighty ——ブリストル・サウンドのオリジネイター、スミス&マイティが久しぶりにアナログ盤をリリース
  2. The Fall ——上村彰子著『ザ・フォールの素晴らしき世界』が刊行
  3. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  4. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  5. Eli Keszler and Alpha Maid ──〈MODE〉が贈る2026年最後のプログラム、イーライ・ケスラーとアルファ・メイドの来日公演
  6. Arab Strap - Half-Told Tales | アラブ・ストラップ
  7. Eden Aurelius - Entre Nous / emer ft. Ugnė Uma - You and Me | エデン・オーレリウス、エメル、ウグネ・ウマ
  8. ジャパニーズ・ヒップホップ第二世代──あるDJの証言
  9. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  10. Protomartyr - Hotel Usona | プロトマーター
  11. ポピュラー文化がラディカルな思想と出会うとき──マーク・フィッシャーとイギリス現代思想入門
  12. ゲーセン波乱万丈の100年史
  13. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  14. Marcellus Pittman ──デトロイト・ハウス珠玉の逸材、マーセラス・ピットマンの来日ツアーが開催
  15. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  16. The Alchemist ──現代USヒップホップのキーパースン、ジ・アルケミストが来日
  17. Boy Harsher - GET MEAN | ボーイ・ハーシャー
  18. Helen - Linda's Head | ヘレン
  19. 三田 格
  20. aya × Violent Magic Orchestra ──初来日を果たす〈Hyperdub〉のアヤと、ブラックメタル・テクノ・プロジェクトVMOによる共同ツアー

Home >  Regulars >  スティル・ドリフティング――倉本諒のずっこけノイズ放浪記 > 矢立のはじめ:僕はいまなぜか片道切符でヨーロッパにいる

スティル・ドリフティング――倉本諒のずっこけノイズ放浪記

スティル・ドリフティング――倉本諒のずっこけノイズ放浪記

矢立のはじめ:僕はいまなぜか片道切符でヨーロッパにいる

倉本 諒 Dec 20,2013 UP

 もういい歳こいてることは重々承知、僕は未だに自分の放浪癖を更正するすべを知らない。この原稿を書いている現在も、何の因果かヨーロッパを放浪している。これは、まあ、そのドリフト録とでも言うべきものだ。そもそもはふとした思いつきでLAに向かったことから始まるこの生活だが、今回の最終目的地もいちおうのところLA。僕の放浪はLAに始まりLAに終わるのだ。いや、終わればいいんだけれども。

 といいつつ、この記録を書きはじめた10月には、ローブドア(Robedoor)のヨーロッパ・ツアーのコラボレーターとして暗雲立ち籠める最悪の欧州をドリフトしていた。しかし彼らとの出会いは僕が初めてLAに長期滞在していた2009年に遡る。当時はLAの〈エコー・パーク〉をヤサにしていて、ローカルたちが集うギャラリーや人ん家で夜な夜な催されるアホなパーティーを通じて親交を深め云々、そこからずっとつながる縁である。

■Oct14th
 ローブドアのブリット(〈NNF〉主宰)とアレックスにベルリンにて久々の再会を果たし、昨年LAでの対バン以来初めて観る彼等のデュオ編成でのパフォーマンスに度肝を抜かしたのは言わずもがな、今回のツアーの前半戦をサポートしたスウェーデンからのナイスガイ、マーティンによる初めて見るサンド・サークルズ(Sand Circles)のライヴ・セットは素晴らしいものであった。〈NNF〉からの過去のテープはどちらもヴァイナルをプレスするにじゅうぶんなクオリティであるが、それを納得させるセットだ。
ショウ終了後、再会の感激冷めやらぬ我々はベルリンの寒さをものともせず、さらに寝床を提供してくれたお姉チャンの家が5階で勿論エレベーターが無いため全力で機材を持ち込むことによって全員熱気すら放ち、ヨーロッパの一般的ボロ・アパートの何たるかを忘れシャワーの順番を譲り、みなを起こさぬよう悲鳴を抑えながら3日ぶりのシャワーを冷水で浴びていた。

■Oct15th
 翌朝ムニャムニャのままプラハに向け出発。国境を越え、チェコに入国した途端に濃霧に包まれるハイウェイ。ようこそ暗黒のチェコへと言わんばかりの歓迎にテンションも上がる。幻想的なプラハの町並みに感銘を受けながらダンジョン感全開のハコでのショウ。この日のローブドアのセットは素晴らしかった。勿論この土地で得た僕の心象風景とローブドアのサウンドが相乗効果をもたらしたのであろうが。僕が嗜好するような音楽シーンがこの土地に根づいているのかはわからないが少なくともこの日集まった多くのオーディエンスが熱烈にソレを求めているのがビンビンに伝わってきた。この日の主催者たちが運営する〈アムディスクス(AMDISCS)〉等のDIYレーベルが放つ多くのリリースからもそれをうかがい知ることができる。


そしてこの画のように野暮ったい。しかし野暮なオーディンスこそがリアル。ノー・ハイプ・シット。見よ前列のお姉ちゃんを。

寝床への道中、マシンガントークで町のあっちこっちの歴史を熱弁するこの日のプロモーターの一人(名前失念)は最高だった。僕らのために用意してくれた寝袋のひとつがテントだったのは意味わからんかったけども。

■Oct 16th
全員が早起きした。宿先の正面にそびえ立つ重そうな教会前(Church of the most sacred heart of our load)で朝市が催されており、僕らは大量の新鮮な果物とチーズを購入し……って、そう、チーズ。ローブドアのアレックスは食品輸入関係の仕事をこなしているためか、とにかくチーズに目がなく、僕らはツアー全日程を通してあらゆるチーズをつねに喰っていたため、車内はつねにチーズ臭で充満していたであろう。
この日のショウはウィーンのフラック(Fluc)で移動時間に余裕のある僕らは満場一致でクトナー・ホラのセドレツ納骨堂に寄ることにした。メタル系バンドのジャケで写真が濫用されているアレである。ノリでホトケをLEGOのごとく積み上げてみました的な実物に感銘を受けながら僕らは今回初めての観光らしい観光に充足した。

 フラックで僕らを迎え入れてくれた〈ヴァーチャル・インスティテュート・ヴィエナ(VIV)〉を主催するステファンとシーラは間違いなくウィーンでもっともイケてるカップルだ。シーラは最高の手料理をふるまってくれ、サウンドチェック後に僕らはそれを堪能し、ステファンは自身のNHKヴァイヴなプロジェクトJung An Tagenでナイスなオープニング・アクトを務めてくれた。ハコのサウンドシステムもさることながら、この日はDJ陣が素晴らしかった。SKVLKRVSHと名乗るアンチャンは僕の今年度のヘヴィロテをほぼ網羅してくれたし(D.R.I.からピート・スワンソンのミックスとか最高過ぎる)、そして何故かジェノバ・ジャクジーが80'sゴス全開のDJを……。
どうやらヨーロッパ・ツアー中であったアリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティに参加していた彼女は、最高潮に達したメンバー間の不和によりツアー半ばにして脱退し、強引にソロ・ツアーを慣行していたらしい。アナーキー過ぎる……。


酔いどれアレックスとジャクジー。何でジャクジーなのよってツッコんだら超真顔で本名だからと仰っておりましたが……

■Oct 17th
 お次はチューリッヒへ、ちなみに僕は今回のドリフトに際してビザも帰りの航空券も取得しておらず、EU加盟国でないスイスに入国するのを危惧していたが、問題なく国境を通過できた。高架下とスケート・パークに隣接するハコ〈Klubi〉は、どことなく新大久保〈アースドム〉を彷彿させる構造と音作りで、爆音での演奏を熟知しているようだ。プロモーションからアテンド、サウンドメイキングまで手掛けてくれたロジャーはソルト(Soult)としてホーラ・ハニーズ(Hola Honeys)のプロモーション・ツアーでNHKと共に来日もしている。ソリッドなDJを担当していたお姉ちゃんが用意してくれた豪勢な食事は、あまりのうまさに全員が無言でガッついていた。
満腹で弛緩しながらも、このあまりにも勿体ない待遇の何たるかを、僕にとって初めてのヨーロッパ・ツアーであるがゆえのカルチャー・ショックなのか、それとももしかしたらヨーロッパにおけるミュージシャンシップはゲストを快く迎え入れることがひとつのステイタスなのかしらんなどなど夢想しながら眠りについた。

無駄にドリフトは続く……

Profile

倉本 諒/Ryo Kuramoto倉本諒/Ryo Kuramoto
1983年生まれ東京都出身、住所不定無職。

COLUMNS